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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157098
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】載荷試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
G01M7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071214
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】本白水 博文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕明
(72)【発明者】
【氏名】三浦 淳
(72)【発明者】
【氏名】松本 豪
(57)【要約】
【課題】試験中のX加振機の倒れ込みモードの共振時の振動変形を抑制することができる載荷試験装置を提供する。
【解決手段】XYZ座標系のXY平面に沿う上面を持つ基台と、前記基台に支持されたテーブルと、前記基台上に設置されてX方向に前記テーブルを加振するX加振機と、前記X加振機に取り付けられ、前記X加振機の作動に伴ってX方向に振動する動吸振器とを備えた載荷試験装置を提供する。好ましくは、前記動吸振器は、Z方向において前記X加振機の重心よりも前記基台から遠い位置で前記X加振機に連結する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ座標系のXY平面に沿う上面を持つ基台と、
前記基台に支持されたテーブルと、
前記基台上に設置されてX方向に前記テーブルを加振するX加振機と、
前記X加振機に取り付けられ、前記X加振機の作動に伴ってX方向に振動する動吸振器と
を備えた載荷試験装置。
【請求項2】
請求項1の載荷試験装置において、
前記動吸振器は、Z方向において前記X加振機の重心よりも前記基台から遠い位置で前記X加振機に連結されている
載荷試験装置。
【請求項3】
請求項1の載荷試験装置において、
前記基台上に設置されてZ方向に前記テーブルを加振するZ加振機を備え、
前記基台は、前記Z加振機を支持する基部と、前記基部からZ方向に立ち上がって前記X加振機を支持する立上り部とを有する
載荷試験装置。
【請求項4】
請求項1の載荷試験装置において、
前記動吸振器は、1自由度のバネマス系を構成する
載荷試験装置。
【請求項5】
請求項4の載荷試験装置において、
前記動吸振器の質量は、前記X加振機の質量の1%~10%である
載荷試験装置。
【請求項6】
請求項1の載荷試験装置において、
回転中心線が鉛直な回転軸と、
前記回転軸に支持されて前記回転軸と共に回転する回転腕と、
前記回転腕に対して揺動可能に吊り下げられた揺動架台と、
前記回転軸を駆動する駆動装置とを備え、
前記揺動架台は、前記基台を備えており、
前記揺動架台の揺動に付随して前記XYZ座標系が揺動する
載荷試験装置。
【請求項7】
請求項6の載荷試験装置において、
前記動吸振器は、YZ平面に沿って延びる片持ち支持構造である
載荷試験装置。
【請求項8】
請求項7の載荷試験装置において、
前記動吸振器は、鋼材製である
載荷試験装置。
【請求項9】
請求項7の載荷試験装置において、
前記動吸振器の質量は、前記X加振機の質量の1%~10%である
載荷試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状のテーブルの上に供試体を設置し、テーブルを加振することにより供試体を用いた耐震試験を行う載荷試験装置が知られている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-368518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、テーブルに対し面方向(X方向とする)に揺らして供試体に横揺れを加える場合、典型的には、基礎上にX加振機を設置し、X加振機によりテーブルをX方向に加振する。しかし、試験中、X加振機自体もX方向に慣性力を受ける。X加振機の下部が基礎に固定される場合、慣性力の作用によりX加振機の上部がX方向に倒れ込むように揺動する。特に、X加振機の上部が倒れ込む固有振動数付近で加振する場合は、共振によりX加振機の倒れ込み変形が過大になり、加振機の加振力がテーブルに十分に伝わらず、所定のテーブルの加振性能(振動加速度)を得ることができないことがある。
【0005】
本発明の目的は、試験中のX加振機の倒れ込みモードの共振周波数での加振時においても所定のテーブル加振性能を得ることができる載荷試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、XYZ座標系のXY平面に沿う上面を持つ基台と、前記基台に支持されたテーブルと、前記基台上に設置されてX方向に前記テーブルを加振するX加振機と、前記X加振機に取り付けられ、前記X加振機の作動に伴ってX方向に振動する動吸振器とを備えた載荷試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試験中のX加振機の倒れ込みモードの共振時の振動変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る載荷試験装置の全体構成を模式的に表す図である。
図2図1の載荷試験装置において供試体を搭載する揺動架台の詳細構造を表す図である。
図3図2中のIII-III線による矢視断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る載荷試験装置に備わった動吸振器の斜視図である。
図5図4に示した動吸振器が振動する様子を表す図である。
図6】X加振機に動吸振器を装着しない場合の試験中のテーブル及びその周辺の構造物の変形を強調して表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
-載荷試験装置-
図1は本発明の一実施形態に係る載荷試験装置の全体構成を表す模式図である。図1に示した載荷試験装置は、平板状のテーブル11の上に供試体10を設置し、テーブル11を加振することにより供試体10を用いた耐震試験を実施するための装置である。供試体10は、評価対象物の強度や耐性等の性能を確認するために作成される試料であり、例えば地盤上に建築物を建てた縮小模型である。
【0011】
特に本実施形態の載荷試験装置は、供試体10に遠心加速度を与える遠心載荷試験装置であり、回転軸1、回転腕3、揺動架台5a、5b、及び駆動装置6を備え、テーブル11は揺動架台5aに備えられている。
【0012】
回転軸1は、その回転中心線2を鉛直に延ばした姿勢で建屋9に支持されている。回転軸1の上部は、軸受等を含む上部支持部材7を介して建屋9の上部床9aに回転自在に支持され、下部は軸受等を含む下部支持部材8を介して建屋9の下部床9bに回転自在に支持されている。下部支持部材8の内部には上記駆動装置6が配置されている。駆動装置6はモータや変速機等を含む装置であり、駆動装置6の出力軸が回転軸1の下端にカップリング(不図示)等を介して連結されている。駆動装置6により駆動されて、回転軸1が回転中心線2周りに回転(自転)する。
【0013】
回転腕3は、回転軸1に支持されて回転軸1と共に回転中心線2周りに回転する。回転腕3は、回転軸1から水平に延び、長手方向に延びるその中心線3oは回転軸1の回転中心線2に直交する。回転腕3の重心は、例えば回転中心線2上に存在する。本実施形態の回転腕3は、回転軸1に固定されるセンタフレーム3a、センタフレーム3aから水平方向に延びるサイドフレーム3b、サイドフレーム3bの両端に位置するエンドフレーム3cを含んで構成されている。例えば、サイドフレーム3bは、回転軸1を挟んで板状のものが一対設けられており、図1では紙面奥側のサイドフレーム3bが見えている。センタフレーム3a及び両端のエンドフレーム3cは、例えば一対のサイドフレーム3bの間に位置し、一対のサイドフレーム3bを連結している。回転軸1を挟んだ両側において、センタフレーム3a、サイドフレーム3b及びエンドフレーム3cで囲われた空間3sがそれぞれ確保されている。
【0014】
揺動架台5a、5bは、回転腕3に対してピン4を介して揺動可能に吊り下げられている。ピン4の中心線は、回転軸1の回転中心線2及び回転腕3の長手方向の中心線3oを含む鉛直平面(図1の紙面)に直交する。揺動架台5a、5bをそれぞれ支持する各ピン4は、回転中心線2から等距離であり、揺動架台5a、5bは回転中心線2について対称の位置に配置されている。揺動架台5a、5bは、回転腕3の停止時には、図1に実線で示したように鉛直に吊り下がった状態にある。一方、駆動装置6により回転軸1が駆動されて回転腕3が回転すると、揺動架台5a、5bは、遠心力を受けて図1に点線で示したように空間3sの内部で水平に振り上がる。供試体10は、揺動架台5aに設置されたテーブル11上に搭載される。また、揺動架台5bに作用する遠心力が揺動架台5aに作用する遠心力と同じになるように、揺動架台5bにはバランスウエイト(不図示)が搭載される。揺動架台5aに設置される供試体10の構成や重量に応じて、バランスウェイトにより揺動架台5bの重量や重心位置が調整され、これにより試験時の遠心載荷装置の回転振動が抑制される。
【0015】
-揺動架台-
図2は供試体10を搭載する揺動架台5aの詳細構造を表す図、図3図2中のIII-III線による矢視断面図である。図2図3中のII-II線による矢視断面図に相当する。図2及び図3に示したXYZ座標系は、揺動架台5aについての座標系であり、ピン4を支点とする揺動架台5aの揺動に付随して揺動する。以下の説明において、揺動架台5aの上下方向は、図2中の上下方向に対応しかつZ方向と同義であり、例えば「テーブル11の上面」といった場合には、テーブル11のピン4側を向く面を指す。本実施形態において、そのテーブル11の上面はXY平面に平行であり、テーブル11の上面に直交する方向がZ方向、つまり上下方向である。
【0016】
揺動架台5aは、テーブル11の他、側板12、基台13、Z加振機14、X加振機15を含んで構成されている。
【0017】
揺動架台の側板12は、回転腕3にピン4により揺動可能に支持され、図3に示したようにY方向に2枚が対面して配置されている。これら側板12は、Z方向においてピン4と反対側の部分、つまり下部が基台13を介して連結されている。
【0018】
基台13は、1つの基部13aと、基部13aのX方向両端部において基部13aから上方に立ち上がる複数(本例では2つ)の立上り部13bとを有している。これら基部13aと立上り部13bとで、基台13は図2に示したようにXZ断面がU字型に形成されている。基部13a及び立上り部13bの各上面は、XYZ座標系のXY平面に沿う例えば平面である。立上り部13bの上面に対して基部13aの上面は下方に位置し、基部13aの上面と立上り部13bの上面はZ方向に段差を有している。
【0019】
Z加振機14は、基台13の基部13a上に設置され固定されており、Z方向に往復運動するZピストン14aを有している。Zピストン14aは、Zベース16、Xリニアガイドレール17a、及びXリニアガイドブロック17bを介してテーブル11に接続しており、テーブル11をZ方向に加振する。Zベース16は、XY平面方向に広がる平板状の部材であり、Zピストン14aの上面に接している。Xリニアガイドレール17aは、Zベース16の上面に設置されており、X方向に延在している。Xリニアガイドブロック17bは、Xリニアガイドレール17aにX方向に摺動可能に支持されており、テーブル11を直接支持している。こうしたZ加振機14等を含む支持構造により、テーブル11は基台13に対してX方向にスライド可能に支持されている。
【0020】
なお、本実施形態において、Z加振機14は、図3に示したようにX方向に2列、Y方向に2列の計4つ設けられているが、載荷試験装置の仕様によりZ加振機14の数量やレイアウトは適宜変更され得る。
【0021】
X加振機15は、基台13の立上り部13b上に設置され固定されており、X方向に往復運動するXピストン15aを有している。Xピストン15aは、Zリニアガイドブロック18b、及びZリニアガイドレール18aを介してテーブル11に接続しており、テーブル11をX方向に加振する。Zリニアガイドブロック18bは、Xピストン15aのテーブル11との対向端面に装着されている。Zリニアガイドレール18aは、テーブル11のX加振機15との対向端面に設置されてZ方向に延在しており、Zリニアガイドブロック18bをZ方向に摺動可能にガイドする。こうしたX加振機15等を含む支持構造により、テーブル11は基台13に対してZ方向にスライド可能に支持されている。
【0022】
なお、本実施形態において、X加振機15は、図3に示したようにX方向に2列、Y方向に2列の計4つ設けられているが、載荷試験装置の仕様によりX加振機15の数量やレイアウトは適宜変更され得る。
【0023】
以上の構成により、載荷試験装置は、回転軸1を駆動して揺動架台5aを水平に振り上げて供試体10の縮尺に応じた遠心加速度を作用させ、実物大の環境を模擬した状態で供試体10を用いた耐震試験を実施する。耐震試験は、X加振機15及びZ加振機14の少なくとも一方を駆動してテーブル11を加振することにより行われる。各X加振機15を駆動し各Xピストン15aを同期して往復運動させると、テーブル11がXリニアガイドレール17aにガイドされてX方向に加振され、横揺れが模擬される。また、各Z加振機14を駆動し各Zピストン14aを同期して往復運動させると、テーブル11がZリニアガイドレール18aにガイドされてZ方向に加振され、縦揺れが模擬される。
【0024】
-動吸振器-
各X加振機15には、X加振機15の作動(Xピストン15aの往復運動)に伴ってX方向に振動するように構成された動吸振器19がそれぞれ少なくとも1つずつ取り付けられている。動吸振器19は、好ましくは、Z方向においてX加振機15の重心よりも基台13(立上り部13bの上面)から遠い位置でX加振機15に連結される。本実施形態では、Xピストン15aを除くX加振機15(X加振機15のボディ)の外壁面の上部(X加振機15のボディの上半部分)に取り付けられる。動吸振器19の配置はX加振機15の上端に近いほど好ましく、本実施形態においては加振機15のボディの上端付近に動吸振器19を設置した構成例を示している(図2)。
【0025】
なお、本実施形態においては、加振機15におけるテーブル11と反対側を向く側面に動吸振器19を設置した構成を例示している。X加振機15のテーブル11との対向面側は、Xピストン15aが存在する他、X加振機15やZ加振機14の各種ケーブルとの干渉の問題があるが、これらが問題にならない場合はX加振機15のテーブル11との対向面に動吸振器19を設置することもできる。同様に、X加振機15のY方向を向く側面、又は上面に動吸振器19を設置することもできる。
【0026】
図4は動吸振器19の斜視図、図5は動吸振器19が振動する様子を表す図である。図4及び図5に例示した動吸振器19は、図2に示したようにX加振機15のテーブル11とは反対側を向く側面に装着することを想定した構成である。
【0027】
本実施形態の動吸振器19は、バネ部19a、連結部19b、及びマス部19cを含んで構成され、1自由度のバネマス系を構成する。動吸振器19は連結部19bを固定端とする片持ち支持梁構造であり、X加振機15に装着されると断面S(後述)の短辺をX方向に向けた姿勢でYZ平面に沿って延びる。動吸振器19は、例えば鋼材製である。また、動吸振器19の1つ当たりの質量は、好ましくはX加振機15の1つ当たりの質量の1%~10%であり、例えば各X加振機15の質量が500kg程度であれば、各動吸振器19の質量の1つの目安は5-50kg程度である。
【0028】
バネ部19aは、動吸振器19の振動方向を規定する長尺の棒状の部位であり、1自由度のバネマス系のバネに相当する部位である。バネ部19aの断面Sは、短辺と長辺の長さが異なる矩形状であり、図5に示したように、長辺が延びる方向(図5ではZ方向)には振動し難く、短辺が延びるX方向に振動し易い。本実施形態においては、動吸振器19をX方向に振動させるため、動吸振器19のバネ部19aは、断面Sの短辺をX軸方向に延ばした姿勢でYZ平面に沿って(図示した構成例ではY方向に)延在する。
【0029】
連結部19bは、動吸振器19をX加振機15に連結するための取り合い部であり、YZ平面に沿って延びるバネ部19aの基端からX方向に(X加振機15に向かって)突出する。ボルトや溶接等の適宜の方法により連結部19bがX加振機15に連結されることで、動吸振器19がX加振機15に装着される。
【0030】
マス部19cは、1自由度のバネマス系のマスに相当する部位であり、マス部19cの質量やバネ部19aのバネ定数に応じて動吸振器19の固有振動数が定まる。本実施形態において、マス部19cは、YZ平面に沿って延びるバネ部19aの先端からX方向(X加振機15から離れる方向)に突出しているが、例えばZ方向に突出する構成であっても良い。また、振動時にX加振機15に干渉しなければ、マス部19cがばね部19aからX加振機15に向かって突出する構成であっても良い。
【0031】
動吸振器19の固有振動数は、X加振機15がX方向に倒れ込むモードの固有振動数に一致又は近似することが好ましく、目標固有振動数に応じて、例えばバネ部19aの長さや断面積、マス部19cの質量や位置が調整される。動吸振器19は、X加振機15のX方向の倒れ込みモードの固有振動数に応じて設計、製作することができる。また、動吸振器19は、例えばバネ部19aに対してマス部19cが脱着可能な構成とし、バネ部19a及びマス部19cの組み合わせや、マス部19cの数量調整、マス部19cの位置調整により、固有振動数が可変な構成とすることもできる。
【0032】
なお、図2図4では、動吸振器19(バネ部19a)がY方向に延びる姿勢でX加振機15に装着される例を図示しているが、動吸振器19はYZ平面に沿っていれば、Z方向に延びる姿勢、又はY軸及びZ軸に傾斜する姿勢でX加振機15に装着されても良い。また、例えば動吸振器19をX加振機15の上面に取り付ける場合、動吸振器19は、X加振機15に装着した状態で、連結部19bからバネ部19aを上方に延ばし、かつ断面Sの短辺がX方向に延びる構成とすれば良い。また、動吸振器19をX加振機15のY方向を向く側面に取り付ける場合、動吸振器19は、X加振機15に装着した状態で、連結部19bからバネ部19aをYZ平面に沿って延ばし、かつ断面Sの短辺がX方向に延びる構成とすれば良い。この場合も、動吸振器19は、YZ平面に沿っていれば、Z方向に延びる姿勢、又はY軸及びZ軸に傾斜する姿勢、のいずれの姿勢でX加振機15に装着されても良い。いずれにしても動吸振器19(バネ部19a)がYZ平面に沿って延びる構成とする。
【0033】
また、図2図4の例では、バネ部19aの断面Sが矩形である構成を例示したが、バネマス系の自由度を実質的に1自由度に制限することができれば、バネ部19aの断面形状は矩形に限定されず適宜変更可能である。
【0034】
-比較例-
図6はX加振機15に動吸振器19を装着しない場合の試験中のテーブル11及びその周辺の構造物の変形を強調して表した説明図である。試験中においては、Xピストン15aの往復運動によりX加振機15にX方向に慣性力が作用し、X加振機15が基台13と固定された下端を支点としてX方向に倒れ込むように揺動する。特に本実施形態においては、X加振機15とZ加振機14を併設する構成であり、基台13のZ加振機14の設置面とX加振機15の設置面との段差を確保するため、X加振機15は基台13の基部13aから立ち上がる立上り部13bに設置されている。そのため、X加振機15に作用する慣性力により、X加振機15と共に立上り部13bも図6に強調的に示したようにX加振機15の上部がX方向に倒れ込むように変形する。そして、特に、X加振機15の上部がX方向に倒れ込む固有振動数付近で加振する場合は、共振によりX加振機15の倒れ込み変形が過大になり、X加振機の加振力がテーブルに十分に伝わらず、所定のテーブルの加振性能(振動加速度)を得ることができないことがある。
【0035】
-効果-
(1)本実施形態によれば、試験中、X加振機15に取り付けられた動吸振器19が、X加振機15の作動に伴ってX方向に振動する。X加振機15がX方向に倒れ込むモードの固有振動数付近で加振される場合、この動吸振器19の振動がX加振機15の振動に干渉し(X加振機15に対し動吸振器19が逆相で振動することによりX加振機15の振動を打ち消す)、X加振機15の振動が抑制される。このように、簡易かつ軽量な構造の動吸振器19をX加振機15に装着するのみで、前述したような試験中のX加振機15の倒れ込みモードの共振時の振動変形を効果的に抑制することができ、所定のテーブル加振性能を得ることができる。
【0036】
(2)動吸振器19をZ方向においてX加振機15の重心よりも基台13から遠い位置でX加振機15に連結したことにより、X方向への振幅が大きなX加振機15の上部に動吸振器19を作用させることができる。これにより、効果的にX加振機15の振動を抑制することができる。
【0037】
(3)本実施形態の載荷試験装置は、X加振機15に加えてZ加振機14を備えるため、基台13の立上り部13bにX加振機15を設置する構成上、前述した通りX加振機15の振幅が増加し得る。そのため、X加振機15の振動を動吸振器19で抑制する構成を適用することで得られる効果が大きい。
【0038】
但し、Z加振機14、ひいては基台13の立上り部13bを持たない載荷試験装置にあっても、X加振機15に動吸振器19を設置して上記効果を得ることはできる。
【0039】
(4)動吸振器19が1自由度のバネマス系を構成するため、抑制目的であるX加振機15のX方向への振動を効果的に抑制できる。
【0040】
(5)動吸振器19は軽過ぎては効果が得られず、例えばX加振機15の質量の1%以上の質量を動吸振器19が有することで一定の効果が見込める。その一方で、動吸振器19が重過ぎると揺動架台5aの重量増加や大型化の観点で好ましくなく、動吸振器19の質量は例えばX加振機15の質量の10%以下に抑えることが好ましい。そのため、動吸振器19の質量は、目安としてX加振機15の質量の1%~10%程度が適当である。
【0041】
(6)本実施形態の載荷試験装置は、回転軸1を駆動して揺動架台5aを振り上げ、供試体10に遠心加速度を作用させる遠心載荷試験装置であるため、試験中は動吸振器19にも遠心加速度が作用する。例えば、仮にコイルばねとウェイトでバネマス系を構成する代替の動吸振器をX加振機15に装着した場合、代替の動吸振器のバネが自重や遠心加速度の作用により過度に変形し意図する効果が得られない可能性がある。
【0042】
それに対し、本実施形態では、動吸振器19をYZ平面に沿って延びる片持ち支持構造とすることで、動吸振器19の作動に対する遠心加速度の影響を抑制することができ、X加振機15の制振に係る高い効果が期待できる。
【0043】
但し、動吸振器19は供試体10に遠心加速度を作用させない載荷試験装置のX加振機に装着しても相応の効果を得ることができる。また、供試体10に遠心加速度を作用させない載荷試験装置のX加振機に適用する動吸振器であれば、図4に例示したような片持ち支持梁構造ではなく、コイルばね等でバネマス系を構成する動吸振器を適用することも可能である。
【0044】
(7)動吸振器19が鋼材製であることで、動吸振器19を容易に構成することができる。また、材質の面でも前述した遠心加速度の影響を抑制しつつ高い制振効果を得る上で有利である。
【0045】
-変形例-
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、その技術思想を逸脱しない範囲内で設計変更(例えば構成の追加、削除、置換、変更)が可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、動吸振器19のバネ部19aに対するマス部19cの位置を制御可能な構成とした場合、供試体10の設置後のX加振機15のX方向倒れ込みモードの固有振動数に応じて動吸振器19の固有振動数の調整する作業(チューニング)を自動化することも考えられる。
【符号の説明】
【0047】
1…回転軸、3…回転腕、5a、5b…揺動架台、6…駆動装置、11…テーブル、13…基台、13a…基部、13b…立上り部、14…Z加振機、15…X加振機、19…動吸振器
図1
図2
図3
図4
図5
図6