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特開2024-157109コアドリル及びこれを用いた削孔方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157109
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】コアドリル及びこれを用いた削孔方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20241030BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20241030BHJP
   B23B 45/14 20060101ALI20241030BHJP
   B23B 47/34 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/00
B23B45/14
B23B47/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071240
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 輔
(72)【発明者】
【氏名】越前谷 航
(72)【発明者】
【氏名】久末 美月
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏司
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
3C036EE13
3C036HH00
3C069AA04
3C069BA09
3C069BC01
3C069BC04
3C069CA01
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き抜けるようにする。
【解決手段】このコアドリルDでは、支柱2は固定支柱21と回転支柱22とからなる。この支柱2の回転支柱22の上部に、支持部材8が、回転支柱22の上部から水平にかつ平面視少なくともコアドリル本体3と重なり合わない方向に延び、支柱2の回りで旋回可能に取り付けられる。この支持部材8に、レバーブロック9などの荷揚げ装置が取り付けられて吊り下げられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物等に取り外し可能に設置固定されるベースと、ベースに縦設され、ラックを添設される支柱と、前記ラックに噛合されるピニオンを有し、前記支柱に昇降可能に装着されるスライドブロック、前記スライドブロックに設けられ、前記ピニオンを回転操作するハンドル又は前記ピニオンを回転駆動する送りモーター、前記スライドブロックに搭載される回転モーター、及び前記回転モーターに作動連結され、前記支柱と平行に配置されるコアビットを有するコアドリル本体とを備え、前記コアビットを前記回転モーターにより回転させて、前記ハンドルの操作により又は前記送りモーターの駆動により、コンクリート構造物等に削孔を行うコアドリルであって、
前記支柱は、前記ベースに固定される下部側の固定支柱と、前記固定支柱の上部に回転可能に連結される上部側の回転支柱とからなり、
前記回転支柱の上部に取り付けられて前記回転支柱の上部から水平にかつ平面視少なくとも前記コアドリルと重なり合わない方向に延び、前記支柱の回りで旋回可能な支持部材と、
前記支持部材に取り付けられて吊り下げられ、コンクリート構造物等において前記コアビットにより削孔されて生じる削孔ガラに連結して当該削孔ガラを引き上げ可能な荷揚げ装置と、
を併せて備え付け、
前記コアドリル本体でコンクリート構造物等を削孔する毎に、前記コアドリル本体を前記回転支柱まで上昇させて、前記支持部材を前記回転支柱の回転とともに旋回し、前記荷揚げ装置を削孔ガラ上に配置して、前記荷揚げ装置で削孔ガラを引き上げ、引き抜く、
ことを特徴とするコアドリル。
【請求項2】
支持部材は、支柱の上部から水平方向に延びる水平部と、前記水平部の先端側から垂直方向に延びる垂直部とを有する請求項1に記載のコアドリル。
【請求項3】
支持部材の水平部は、当該水平部の延びる方向に所定の間隔で荷揚げ装置のための複数の吊り下げ部を有する請求項2に記載のコアドリル。
【請求項4】
支持部材の垂直部は下端にローラーを有する請求項2に記載のコアドリル。
【請求項5】
固定支柱の軸心上にスクリューシャフトを係合可能に雌ねじを有し、回転支柱の軸心上に前記スクリューシャフトを挿通可能に貫通孔を有し、前記固定支柱上に前記回転支柱が両者間に前記スクリューシャフトを通されて回動可能に連結され、前記回転支柱上で前記スクリューシャフトにナットを締結されて固定され、支持部材の水平部は管材からなり、その一端にスクリューシャフト挿通部を有し、前記スクリューシャフト挿通部は前記水平部の前記回転支柱の上部に当接される下面側を前記スクリューシャフトの前記ナットの径よりも大きいコ字形に切り欠かれて、上面側に前記スクリューシャフトを嵌挿可能に孔を穿たれてなり、前記水平部は前記スクリューシャフト挿通部に前記スクリューシャフトを通し前記回転支柱上の前記スクリューシャフトの上端にさらにナットを締結して取り付けられる請求項2に記載のコアドリル。
【請求項6】
荷揚げ装置は手動式の荷揚げ装置又は自動式の荷揚げ装置から選択される請求項1に記載のコアドリル。
【請求項7】
コンクリート構造物等にコアドリルを設置固定して、前記コアドリルによりコンクリート構造物等を削孔する削孔方法であって、
前記コアドリルに請求項1に記載のコアドリルを用いた、
ことを特徴とする削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、アスファルト、レンガ、タイル、石材、岩石等(以下、これらを総称して「コンクリート構造物等」という。)を削孔するのに使用するコアドリル及びこれを用いた削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコアドリル及びこれを用いた削孔方法が特許文献1、2により提案されている。
【0003】
これらの文献1、2のコアドリルは、ベース、ベースより直立し、一側にラックを直立方向に配設された支柱、支柱に昇降可能に装着され、内部にラックと噛み合うピニオンを有するドリルヘッド、ドリルヘッドの出力軸に着脱可能にシャンクで取着されるコアビット、ドリルヘッド上に設けられ、コアビットを回転駆動させる減速機付きのモーター、ピニオンの軸と一体をなす軸部にスライド可能に嵌挿され、ピニオンを回動操作するためのハンドルなどを備えて構成される。
【0004】
かかるコアドリルを用いてコンクリート構造物等を削孔する際は、ベースをコンクリート構造物等にアンカーボルトにより固定し、ドリルヘッドを止めねじで支柱に固定した後、ハンドルを操作してコアビットをモーターにより回転させて削孔を行う。
【0005】
なお、この削孔によりコアビット内に残る削孔ガラ(コアガラ)は、コアビットをコンクリート構造物等の削孔面から引き上げてから、人力によって引き抜かれる。この場合、削孔ガラは、このコアビットの径、長さによって、長さや大きさが変わり、削孔ガラが長い又は大きい場合は、削孔ガラを長さ方向の途中で折って分割し、削孔ガラを短くして又は小さくして引き上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-199405公報
【特許文献2】特開平8-224726公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにこの種のコアドリルを用いた削孔作業では、コアビットの削孔により生じた削孔ガラを人力により引き抜くので、作業者の体の負担が非常に大きく、高齢の者や女性では作業が極めて困難である、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のコアドリル及びこれを用いた削孔方法において、特にコンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き抜くことができるようにして、作業者の体の負担を大幅に軽減すること、最低1人の作業者でも、また高齢の者や女性でも削孔ガラの引き抜き作業を容易に行えること、また、施工場所が狭くても使用、実施することができ、しかもこれらを低コストに実現すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
コンクリート構造物等に取り外し可能に設置固定されるベースと、ベースに縦設され、ラックを添設される支柱と、前記ラックに噛合されるピニオンを有し、前記支柱に昇降可能に装着されるスライドブロック、前記スライドブロックに設けられ、前記ピニオンを回転操作するハンドル又は前記ピニオンを回転駆動する送りモーター、前記スライドブロックに搭載される回転モーター、及び前記回転モーターに作動連結され、前記支柱と平行に配置されるコアビットを有するコアドリル本体とを備え、前記コアビットを前記回転モーターにより回転させて、前記ハンドルの操作により又は前記送りモーターの駆動により、コンクリート構造物等に削孔を行うコアドリルであって、
前記支柱は、前記ベースに固定される下部側の固定支柱と、前記固定支柱の上部に回転可能に連結される上部側の回転支柱とからなり、
前記回転支柱の上部に取り付けられて前記回転支柱の上部から水平にかつ平面視少なくとも前記コアドリルと重なり合わない方向に延び、前記支柱の回りで旋回可能な支持部材と、
前記支持部材に取り付けられて吊り下げられ、コンクリート構造物等において前記コアビットにより削孔されて生じる削孔ガラに連結して当該削孔ガラを引き上げ可能な荷揚げ装置と、
を併せて備え付け、
前記コアドリル本体でコンクリート構造物等を削孔する毎に、前記コアドリル本体を前記回転支柱まで上昇させて、前記支持部材を前記回転支柱の回転とともに旋回し、前記荷揚げ装置を削孔ガラ上に配置して、前記荷揚げ装置で削孔ガラを引き上げ、引き抜く、
ことを要旨とする。
【0010】
また、このコアドリルは各部が次のように具体化されることが好ましい。
(1)支持部材は、支柱の上部から水平方向に延びる水平部と、前記水平部の先端側から垂直方向に延びる垂直部とを有する。
この場合、支持部材の水平部は、当該水平部の延びる方向に所定の間隔で荷揚げ装置のための複数の吊り下げ部を有する。
この場合、支持部材の垂直部は下端にローラーを有する。
この場合、固定支柱の軸心上にスクリューシャフトを係合可能に雌ねじを有し、回転支柱の軸心上に前記スクリューシャフトを挿通可能に貫通孔を有し、前記固定支柱上に前記回転支柱が両者間に前記スクリューシャフトを通されて回動可能に連結され、前記回転支柱上で前記スクリューシャフトにナットを締結されて固定され、支持部材の水平部は管材からなり、その一端にスクリューシャフト挿通部を有し、前記スクリューシャフト挿通部は前記水平部の前記回転支柱の上部に当接される下面側を前記スクリューシャフトの前記ナットの径よりも大きいコ字形に切り欠かれて、上面側に前記スクリューシャフトを嵌挿可能に孔を穿たれてなり、前記水平部は前記スクリューシャフト挿通部に前記スクリューシャフトを通し前記回転支柱上の前記スクリューシャフトの上端にさらにナットを締結して取り付けられる。
(2)荷揚げ装置は手動式の荷揚げ装置又は自動式の荷揚げ装置から選択される。なお、荷揚げ装置は、既知のもの、つまり、一般に知られているものでよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、
コンクリート構造物等にコアドリルを設置固定して、前記コアドリルによりコンクリート構造物等を削孔する削孔方法であって、
前記コアドリルに請求項1に記載のコアドリルを用いた、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコアドリル及びこれを用いた削孔方法では、上記の構成により、コアドリル本体でコンクリート構造物等を削孔する毎に、コアドリル本体を回転支柱まで上昇させて、支持部材を回転支柱の回転とともに旋回し、削孔ガラ上に荷揚げ装置を配置して、この削孔ガラを荷揚げ装置により引き上げ、引き抜くようにしたので、コンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き上げ、引き抜くことができ、これにより、作業者の体の負担を大幅に軽減し、最低1人の作業者でも、また高齢の者や女性でも削孔ガラの引き抜き作業を容易に行うことができ、また、施工場所が狭くても使用、実施することができ、しかもこれらを低コストに実現することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るコアドリルの構成を示す図((a)はコアドリル本体でコンクリート構造物等を削孔する場合の側面図(b)は荷揚げ装置で削孔ガラを引き上げる場合の側面図)
図2】同コアドリルの特に支柱及び支持部材の構成を示す図((a)は支柱の構成を示す側面図、支持部材の水平部の一端の構成を示す(部分)平面図、(部分)側面図、(部分)底面図(b)は支柱に支持部材を取り付ける前の支柱及び支持部材の構成を示す側面図(c)は支柱に支持部材を取り付けた後の支柱及び支持部材の構成を示す側面図)
図3】同コアドリルを用いた削孔方法を示す図
図4】同コアドリルを用いた削孔方法で、特に削孔後の削孔ガラの引き抜き作業を示す図
図5】本発明の他の実施の形態に係るコアドリルの構成を示す図(側面図)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にコアドリルを示している。
図1に示すように、コアドリルDは、ベース1と、支柱2と、スライドブロック4、ハンドル5又は送りモーター、回転モーター6、及びコアビット7(図3図4参照)を有するコアドリル本体3とを備えて構成される。
【0015】
ベース1は、コンクリート構造物等に取り外し可能に設置固定されるもので、この場合、略平板状のプレートからなり、一端側の中央に支柱取付部10を有し、四隅にアンカー1aのための挿着部11が設けられる。
【0016】
支柱2は、ベース1に縦設され、ラック23を添設される。この場合、支柱2は1本の断面略四角形の支柱からなり、そのベース1の一端側に対応する一側面にラック23が支柱2の長さ方向に設けられ、ベース1の一端側の支柱取付部10にボルトBにより固定されて取り付けられる。
【0017】
コアドリル本体3は、既述のとおり、スライドブロック4と、ハンドル5又は送りモーターと、回転モーター6と、コアビット7とを有してなる。
【0018】
スライドブロック4は、ラック23に噛合されるピニオン43を有し、支柱2に昇降可能に装着される。この場合、スライドブロック4は、支柱2の周囲に係合可能な平断面略口字形のブロック本体41と、このブロック本体41の一端側に突設され、回転モーター6を支持するためのホルダー42とを有し、ブロック本体41の支柱2のラック23を有する面に対向する内面に、支柱2のラック23に噛合可能にピニオン43が配設されてなる。
【0019】
ハンドル5は、スライドブロック4に設けられて、ピニオン43を回転操作するもので、この場合、ブロック本体40の内面のピニオン43の回転軸に作動連結されて、スライドブロック4の側面に配設される。このハンドル5の手動による回転操作により、ピニオン43が回転されて支柱2のラック23上で転動され、スライドブロック4が支柱2に沿って上下動可能になっている。
【0020】
送りモーターは、特に図示していないが、スライドブロック2に設けられ、ピニオン23を回転駆動するもので、ブロック本体40の内面のピニオン41の回転軸に作動連結されて、スライドブロック4の側面に配設される。この場合、送りモーターは減速機付きのモーターで、この送りモーターにより、ピニオン43が回転駆動されて、支柱2のラック23上で転動され、スライドブロック4が支柱2に沿って上下動可能になっている。
【0021】
回転モーター6は、コアビット7を回転駆動するもので、スライドブロック4に搭載される。この場合、回転モーター6は減速機付きのモーターで、スライドブロック4のホルダー42上に回転軸61を下方に向けて保持され、回転軸61がスライドブロック4のホルダー2の下方に配置される。
【0022】
コアビット7(図3(1)参照)は、回転モーター6に作動連結され、支柱2と平行に配置される。この場合、コアビット7は、先端を開口され、基端が閉塞された全体が略円筒状をなし、先端に刃部71としてダイヤモンドチップが設けられ、基端の中心に回転軸61に連結するための連結部70が設けられる。このコアビット7は連結部70が回転モーター6の回転軸61に同芯的に連結されて回転モーター6に取り付けられる。
【0023】
かくしてこのコアドリルDは、コアビット7を回転モーター6により回転駆動して、ハンドル5の回転操作により又は送りモーターの駆動により、コンクリート構造物等に削孔を行うようになっている。
【0024】
そして、このコアドリルDにおいては特に、支柱2が、ベース1に固定される下部側の固定支柱21と、固定支柱21の上部に回転可能に連結される上部側の回転支柱22とからなり、回転支柱22の上部に取り付けられて回転支柱22の上部から水平にかつ平面視少なくともコアドリルD(特にコアドリル本体3)と重なり合わない方向に延び、支柱2の回りで旋回可能な支持部材8と、支持部材8に取り付けられて吊り下げられ、コンクリート構造物等においてコアビット7により削孔されて生じる削孔ガラに連結してこの削孔ガラを引き上げ可能な荷揚げ装置9と、を併せて備える。
【0025】
支柱2は、既述のとおり、1本の断面略四角形の支柱からなり、この場合、そのベースの一端側に対応する一側面にラック23が支柱2の長さ方向に設けられているので、固定支柱21は所定の長さ(高さ)の断面略四角形の柱状で、ベース1の一端側に対応する一側面に固定支柱側のラック231が固定支柱21の長さ方向に設けられ、回転支柱22もまた、同様に、所定の長さ(高さ)の断面略四角形の柱状で、ベース1の一端側に対応する一側面に回転支柱側のラック232が支柱の長さ方向に設けられる。なお、この場合、固定支柱21の長さ(高さ)が長く(高く)、回転支柱22の長さ(高さ)が短く(低く)なっていて、各ラック231、232もまた。同様である。
【0026】
また、図2に示すように、この支柱2では、固定支柱21上に回転支柱22がスクリューシャフト24を介して回動可能に連結される。この場合、固定支柱21の軸心上にスクリューシャフト24を係合可能に雌ねじ21Sを有する。この固定支柱21では、固定支柱21の軸心上で上部の所定の範囲にスクリューシャフト24が係合可能に雌ねじ21Sが形成される。また、回転支柱22の軸心上にスクリューシャフト24を挿通可能に貫通孔220を有する。この回転支柱22では、回転支柱22の軸心上に回転支柱22の全長に亘って、スクリューシャフト24を挿通可能に、貫通孔220が形成される。そして、スクリューシャフト24は外周面全体にねじ24Sが切られていて、一端(取り付け時の下端)の所定の範囲が固定支柱21の雌ねじ21Sに対する係合部で、他端側(取り付け時の上端側)に固定支柱21上に回転支柱22を固定するためのナットN1が螺着される。
かくして固定支柱21上に回転支柱22が、両者間にスクリューシャフト24を通されて(つまり、スクリューシャフト24が回転支柱22の貫通孔220に挿通され、固定支柱21の雌ねじ21Sに締結されて)、回動可能に連結される。そして、回転支柱22上でスクリューシャフト24にナットN1を締結されて、固定支柱21上に回転支柱22が固定される。
【0027】
このようにして、図2(a)に示すように、固定支柱21が、ベース1の一端側中央の支柱取付部10に縦置きされ、固定支柱側のラック231をベース1の一端方向に向けられて、固定支柱21の一端(下端)が支柱取付部10にボルトBにより固定されて取り付けられる。そして、この固定支柱21の他端(上端)上に回転支柱22が(回転支柱22の一端(下端)を対向当接させて)同心的に、回転支柱側のラック232をベース1の一端方向に向けて載せられ、回転支柱22の他端(上端)から回転支柱22の貫通孔220にスクリューシャフト24を通され、このスクリューシャフト24の一端(下端)の係合部が固定支柱21の上部の雌ねじ21Sに螺合されて、固定支柱21上に回転支柱22が回転可能に連結される。そして、回転支柱22の他端(上端)から突出されるスクリューシャフト24の他端(上端)にナットN1が締結されて、固定支柱21上に回転支柱22が回転可能に固定される。
【0028】
支持部材8は、図1に示すように、支柱2の上部から水平方向に延びる水平部81と、水平部81の先端側から垂直方向に延びる垂直部82とを有する。
【0029】
水平部81は管材、特に角バー(角パイプ)からなり、支柱2の長さよりも短い所定の長さを有する。この水平部81には、この水平部81の延びる方向に所定の間隔で荷揚げ装置9のための複数の吊り下げ部811を有する。この場合、複数の吊り下げ部811は複数の穴からなる。これらの穴は、長シャックル812を取り付け可能に、水平部81の両側面の中間部に所定の間隔に両側面間で相互に対向して形成される。かくして、これらの穴に選択的に長シャックル812が通されて、この長シャックル812を介して荷揚げ装置9が取り付けられ、水平部81から吊り下げられる。
【0030】
また、この水平部81の一端にはスクリューシャフト挿通部813を有する。このスクリューシャフト挿通部813は、図2(a)に示すように、水平部81の回転支柱22の上部に当接される下面側をこの一端縁から他端縁方向にスクリューシャフト24のナットN1の径よりも大きいコ字形に切り欠かれて切り欠き813aが形成され、上面側にスクリューシャフト24を嵌挿可能に円形の孔813bを穿たれてなる。
【0031】
垂直部82は管材、水平部81と同様に、角バー(角パイプ)からなり、支柱2の長さと略同じか少し長い所定の長さを有する。この垂直部82の下端にはローラー821を有する。このローラー821は所謂搬送台車などに用いられるローラーでよい。この垂直部82は、水平部81の先端に、管材(角パイプ)からなるT型ジョイント83を介して、垂直下方に向けて取り付けられる。
【0032】
このようにして支持部材8は、水平部81が、スクリューシャフト挿通部813に支柱2の上部、すなわち、回転支柱22の上部のスクリューシャフト24を通して、回転支柱22上に連接され、この場合、水平部81が回転支柱22の上部から水平にかつ平面視少なくともコアドリルD(コアドリル本体3)と重なり合わない方向に、ここでは、コアドリルD(コアドリル本体3)とは正反対方向に延ばされる。そして、この回転支柱22上のスクリューシャフト24の上端にさらにナットN2を締結されて、回転支柱22の上部に取り付けられる。この場合、図2(a)に示すように、固定支柱21上に回転支柱22をスクリューシャフト24及びナットN1で連結固定した後でも、図2(b)、(c)に示すように、水平部81を回転支柱22の上部のスクリューシャフト24に後付けしてナットN2により固定することができる。これにより、コアドリルDに支持部材8を荷揚げ装置9とともに容易に取り付けることができ、その取り外しも容易に行うことができる。かくして支持部材8は水平部81、垂直部82により逆L字形に形成されて、支柱2とともに門形に構成され、支柱2を中心に支柱2の回りで旋回可能になっている。
【0033】
荷揚げ装置9は手動式の荷揚げ装置又は自動式の荷揚げ装置から選択される。なお、荷揚げ装置9は、既知のもの、つまり、一般に知られているものでよい。ここでは、手動式の荷揚げ装置9として、レバーブロック(登録商標)が使用される(以下、レバーブロック9という。)。この場合、レバーブロック9の上部フック91を支持部材8の水平部81の吊り下げ部811に長シャックル812を介して係止することにより、支持部材8の水平部81にレバーブロック9が吊り下げられる。
【0034】
このようにしてこのコアドリルDでは、支持部材8及びレバーブロック9を備え付け、コアドリル本体3でコンクリート構造物等を削孔する毎に、コアドリル本体3を回転支柱22まで上昇させて、支持部材8を回転支柱22の回転とともに旋回し、レバーブロック9を削孔ガラ上に配置して、このレバーブロック9で削孔ガラを引き上げ、引き抜くようになっている。
【0035】
図3図4に、コンクリート構造物等にコアドリルを設置固定して、コアドリルでコンクリート構造物等を削孔する削孔工事(削孔方法)を例示して、特にコアドリルに本コアドリルDを用いた施工例を示している。
【0036】
図3(1)に示すように、この種の削孔工事では、まず、コンクリート構造物等にベース1をアンカー1aにより固定する。この場合、コアドリル本体3をベース1の一端側に配置して、コアドリル本体3の先端をコンクリート構造物等の削孔面の所定の削孔位置に対向させる。このコアドリル本体3の配置により、支柱2上部に連結される支持部材8はベース1の他端側に向けて配置される。続いて、図3(2)に示すように、ハンドル5を回転操作して又は送りモーターを駆動して、コアビット7を下降し、コアビット7の先端刃部71をコンクリート構造物等の削孔位置に対向させる。そして、回転モーター6の回転駆動によりコアビット7を回転させて、コンクリート構造物等に削孔を行う。
【0037】
コンクリート構造物等を削孔すると、先述したとおり、コアビット7内に削孔ガラが残るので、その都度、図3(3)に示すように、コアドリル本体3をコンクリート構造物等の削孔面から上昇させてコアビット7を削孔面下から引き上げてから、削孔面下の削孔ガラを引き抜く必要がある。
【0038】
そこで、このコアドリルDでは、備え付けのレバーブロック9を使って、削孔ガラを引き上げ、引き抜く。
【0039】
この削孔ガラの引き抜き作業では、まず、図3(4)に示すように、支持部材8を支柱2を回転中心として水平方向に旋回し、支持部材8を削孔ガラ上に配置する。この場合、支持部材8の垂直部82の下端にローラー821を有するので、支持部材8全体を支柱2を旋回中心として容易に旋回することができる。なお、この支持部材8の配置により、コアビット本体3は支持部材8とは正反対に、すなわち、削孔ガラとは反対側に、配置される。
【0040】
続いて、図3(4)、図4(5)に示すように、レバーブロック9を削孔ガラに連結する。なお、この場合、支持部材8の水平部81に、この水平部81の中間部に所定の間隔でレバーブロック9のための複数の吊り下げ部811が設けられているので、削孔ガラの大きさによって異なる削孔ガラの中心の上方の吊り下げ部811に合わせてレバーブロック9を取り付けることができ、このようにすることで、レバーブロック9を削孔ガラの中心上方に簡単に吊り下げることができる。そして、削孔ガラの上面の中心にフック付きのアンカー9aを固着し、このアンカー9aのフックにレバーブロック9の下部フック92を連結する。このとき、コアドリル本体3が支持部材8とは正反対に、つまり、削孔ガラとは反対側に配置されているので、コアドリル本体3が削孔ガラの引き抜き作業の邪魔にならない上、この作業中に、作業員が頭をコアドリル本体3にぶつけることもなく、作業を安全に行うことができる。
【0041】
そして、レバーブロック9で削孔ガラを引き上げ、引き抜く。この場合、図4(6)に示すように、レバーブロック9のレバー93を引き、チェーン94を上昇させて、削孔ガラを引き上げ、引き抜く。このとき、作業者は、レバーブロック9の操作のみで、削孔ガラを引き上げ、引き抜くので、作業者の体の負担は大幅に軽減され、最低1人の作業者でも、また高齢の者や女性でも削孔ガラの引き抜き作業を容易に行うことができる。また、このレバーブロック9はコアドリルDに常態として備え付けられているので、施工場所が狭くてもこのレバーブロック9を使用することができ、削孔ガラの引き抜き作業を確実に実施することができる。
【0042】
削孔ガラの引き抜き後、図4(6)、(7)に示すように、支持部材8を支柱2を回転中心として水平方向に旋回して、削孔ガラをコンクリート構造物等の削孔面から外れた吊り下ろし位置まで水平移動する。そして、図4(8)に示すように、削孔ガラの吊り下ろし位置で、レバーブロック9の操作により、削孔ガラを吊り下ろし、レバーブロック9の下部フック92と削孔ガラのアンカー9aとを切り離す。そして、支持部材8の旋回により、支持部材8をコンクリート構造物等の次の削孔位置とは正反対側に配置することにより、コアドリル本体3をコンクリート構造物等の削孔面の次の削孔位置に配置して、同様の作業を繰り返す。このようにしてコンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き抜くことができる。しかも、これらの作業をコアドリルDと一般的なレバーブロック9を使って行えるので、大掛かりな施工にならず、施工を低コストに実行することができる。
【0043】
以上説明したように、このコアドリルDでは、支柱2を、ベース1に固定する下部側の固定支柱21と、固定支柱21の上部に回転可能に連結する上部側の回転支柱22とにより構成する。この支柱2の回転支柱22の上部に、支持部材8を、回転支柱22の上部から水平にかつ平面視少なくともコアドリル本体3と重なり合わない方向に延び、支柱2の回りで旋回可能に取り付ける。この支持部材8に、コンクリート構造物等をコアビット7により削孔して生じる削孔ガラに連結してこの削孔ガラを引き上げ可能なレバーブロック9を取り付けて吊り下げる。このようにして、コアドリル本体3でコンクリート構造物等を削孔する毎に、コアドリル本体3を回転支柱22まで上昇させて、支持部材8を回転支柱22の回転とともに旋回し、レバーブロック9を削孔ガラ上に配置して、このレバーブロック9で削孔ガラを引き上げ、引き抜くようにしている。しかして、コンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き上げ、引き抜くことができる。これにより、作業者の体の負担を大幅に軽減し、最低1人の作業者でも、また高齢の者や女性でも削孔ガラの引き抜き作業を容易に行うことができる。また、施工場所が狭くても、このレバーブロック9付きのコアドリルDを使用して、削孔作業、削孔ガラの引き抜き作業を連続的に実施することができる。しかも、これらを、コアドリルDの他に、支持部材8、レバーブロック9のみで、低コストに実現することができる。
【0044】
また、このコアドリルDによれば、さらに次のような利点を有する。
(1)支持部材8は、支柱2の上部から水平方向に延びる水平部81と、水平部81の先端側から垂直方向に延びる垂直部82とを有するので、支持部材8全体を安定させて、この支持部材8にレバーブロック9を確実かつ安全に吊り下げることができ、削孔ガラの引き抜き作業を安全に実施することができる。
(イ)この場合、支持部材8の水平部81は、この水平部81の延びる方向に所定の間隔でレバーブロック9のための複数の吊り下げ部811を有するので、削孔ガラの大きさによって異なる削孔ガラの中心の上方の吊り下げ部811に合わせてレバーブロック9を取り付けることができる。したがって、レバーブロック9を削孔ガラの中心の上方に吊り下げることができ、削孔ガラの引き抜き作業を確実かつ安全に実行することができる。
(ロ)この場合、支持部材8の垂直部82は下端にローラー821を有するので、支持部材8全体の支柱2を旋回中心とする旋回動作を容易に行うことができる。
(ハ)この場合、固定支柱21の軸心上にスクリューシャフト24を係合可能に雌ねじを有する。回転支柱22の軸心上にスクリューシャフト24を挿通可能に貫通孔220を有する。固定支柱21上に回転支柱22が両者間にスクリューシャフト24を通されて回動可能に連結され、この回転支柱22上でスクリューシャフト24にナットN1を締結されて固定される。支持部材8の水平部81は管材からなり、その一端にスクリューシャフト挿通部813を有する。このスクリューシャフト挿通部813は水平部81の回転支柱22の上部に当接される下面側をスクリューシャフト24のナットN1の径よりも大きいコ字形に切り欠かれて、上面側にスクリューシャフト24を嵌挿可能に孔を穿たれてなる。水平部81はスクリューシャフト挿通部813にスクリューシャフト24を通し回転支柱22上のスクリューシャフト24の上端にさらにナットN2を締結して取り付けられる。このようにしたことで、固定支柱21上に回転支柱22をスクリューシャフト24及びナットN1で連結固定した後でも、支持部材8を回転支柱22の上部のスクリューシャフト24に後付けしてナットN2により固定することができ、コアドリルDに支持部材8をレバーブロック9とともに容易に取り付けることができ、その取り外しも容易に行うことができる。
(2)荷揚げ装置にレバーブロック9など手動式のものを使用することで、削孔ガラの引き抜き作業を容易かつ確実に、しかも低コストに実施することができる。
【0045】
そして、コンクリート構造物等にコアドリルを設置固定して、コアドリルによりコンクリート構造物等を削孔する削孔方法では、コアドリルにこのコアドリルDを用いることで、コンクリート構造物等の削孔後の削孔ガラを、引き続き行われる削孔作業の支障になることなしに、簡単に引き抜くことができる。これにより、作業者の体の負担を大幅に軽減し、最低1人の作業者でも、また高齢の者や女性でも削孔ガラの引き抜き作業を容易に行うことができる。また、施工場所が狭くてもこの荷揚げ装置付きのコアドリルDを使用することで、削孔ガラの引き抜き作業を確実かつ安全に、しかも低コストに実施することができる。
【0046】
なお、この実施の形態では、支持部材8は、支柱2の上部から水平方向に延びる水平部81と、水平部81の先端側から垂直方向に延びる垂直部82とを有するものとしたが、この支持部材8から垂直部82をなくし、水平部81のみとしてもよい。この場合、支持部材8全体の安定性が低下するが、比較的重量の軽い削孔ガラであれば、使用可能である。
このようにしても上記実施の形態と概ね同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
また、この場合、垂直部82の下端にローラー821を有するものとしたが、ローラー821はなくてもよい。この場合、支持部材8全体の旋回動作の円滑性が低下するが、支持部材8を旋回することはできる。
このようにしても上記実施の形態と概ね同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、この実施の形態では、荷揚げ装置に手動式のレバーブロック9を使用するものとしたが、レバーブロック9に代えて、図5に示すように、手動式のウィンチを用いてもよい。なお、ここで、ウィンチをウィンチ9、このウィンチ9操作用のレバーをレバー93という。また、このウィンチ9に巻き付けられて、繰り出されるワイヤーロープをワイヤーロープ94、ワイヤーロープ94の先端(下端)に取り付けられるフックをフック92という。この場合、支持部材8の水平部81上にウィンチ9が搭載され、この水平部81にウィンチ9のための複数の吊り下げ部811として、水平部81の延びる方向に所定の間隔で複数のプーリー(ここで各プーリーをプーリー811Pという。)が取り付けられる。このようにしてウィンチ9から繰り出されるワイヤーロープ94が、削孔ガラの大きさに応じて削孔ガラの中心の上方にある適宜位置のプーリー811Pに巻き掛けられて、削孔ガラの中心に向けて吊り下げられる。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
さらに、この実施の形態では、コアドリルに用いられる荷揚げ装置を手動式の荷揚げ装置として例示したが、この荷揚げ装置は手動式の荷揚げ装置又は自動式の荷揚げ装置から任意に選択される。この荷揚げ装置を手動式のものに代えて、自動式のものを使用することで、手動式のものに比べてコストは増大するが、削孔ガラの引き上げ作業をより容易かつ確実に実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
D コアドリル
1 ベース
10 支柱取付部
11 挿着部
1a アンカー
B ボルト
2 支柱
21 固定支柱
21S 雌ねじ
22 回転支柱
220 貫通孔
23 ラック
231 固定支柱側のラック
232 回転支柱側のラック
24 スクリューシャフト
24S ねじ
N1 ナット
3 コアドリル本体
4 スライドブロック
41 ブロック本体
42 ホルダー
43 ピニオン
5 ハンドル
6 回転モーター
61 回転軸
7 コアビット
70 連結部
71 刃部
8 支持部材
81 水平部
811 吊り下げ部
812 長シャックル
813 スクリューシャフト挿通部
813a 切り欠き
813b 孔
N2 ナット
82 垂直部
821 ローラー
83 T型ジョイント
9 荷揚げ装置(レバーブロック又はウィンチ)
91 上部フック
92 下部フック(又はフック)
93 レバー
94 チェーン(又はワイヤーロープ)
9a フック付きのアンカー
図1
図2
図3
図4
図5