(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015711
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】緩衝装置、把持装置、ロボットアーム及び治具
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B25J17/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117960
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 研介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707BT18
3C707CY32
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS27
3C707HT22
(57)【要約】
【課題】ロボットアームの手首の中心軸と把持部材の中心軸との同軸度を高める。
【解決手段】緩衝装置は、把持部材が取り付けられる支持部材と、ロボットアームが取りつけられるベース部材と、を備える。前記支持部材は、前記把持部材に加わった衝撃によって伸縮する弾性部と、前記伸縮による前記把持部材の変位に応じて前記把持部材とともに直動する直動部と、を備える。前記ベース部材は、前記把持部材の中心軸と同軸上となる位置に設けられる孔を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部材が取り付けられる支持部材と、
ロボットアームが取りつけられるベース部材と、
を備え、
前記支持部材は、
前記把持部材に加わった衝撃によって伸縮する弾性部と、
前記伸縮による前記把持部材の変位に応じて前記把持部材とともに直動する直動部と、
を備え、
前記ベース部材は、
前記把持部材の中心軸と同軸上となる位置に設けられる孔を備える、
緩衝装置。
【請求項2】
前記弾性部と、前記直動部と、前記把持部材とは、前記孔が延在する方向に対して交差する方向に並んで配置される、請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記支持部材を平行移動させて、前記孔と前記中心軸との同軸性を調整できるスライド機構を備える、請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記孔は貫通孔であり、
前記ベース部材が前記ロボットアームの先端部に取り付けられた状態において、前記ロボットアームの先端部の回転軸と同軸上に設けられる、請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の緩衝装置を備え、
前記把持部材のモータの中心軸が、前記孔と同軸となるように調整される把持装置。
【請求項6】
請求項5に記載の把持装置を備え、
前記把持部材のモータの中心軸が、前記ロボットアームの先端部の回転軸と同軸となるように調整されるロボットアーム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の緩衝装置の前記孔に対応する位置に形成された第1の凸部と、前記把持部材に形成された凹部又は孔に対応する位置に形成された第2の凸部とを備える治具。
【請求項8】
前記第1の凸部と、前記第2の凸部とは、軸方向において一直線上に位置しない、請求項7に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝装置、把持装置、ロボットアーム及び治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームに取り付けられた把持部材がワーク等へ接触した際に生じる衝撃を吸収する、ロボットアーム用の緩衝装置が知られている。例えば、ハンド部およびアーム部のいずれか一方と接続される第1部材と、第1部材と間隔を介して配置され、ハンド部およびアーム部のいずれか他方と接続される第2部材と、第1部材に対する2部材の相対的な位置を変更可能な状態で、第1部材と第2部材とを連結する連結部材と、第2部材に対して第1部材が離れるように第1部材を付勢するともに、伸縮可能である弾性部材とを備えるロボットハンド用接続部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-136809号公報
【特許文献2】特開2000-158374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットアームの作業精度は、ロボットアームの手首の中心軸と把持部材の中心軸との同軸度に影響される。緩衝装置がロボットアームに取り付けられる場合、把持部材がロボットアームに直接取り付けられる場合に比べて、同軸度が低くなることで、ロボットアームの手首が回転すると、把持部材の先端が偏心しやすくなる。把持部材の先端が偏心すると、ロボットアームの作業精度が低下する場合がある。
【0005】
一つの側面では、ロボットアームの手首の中心軸と把持部材の中心軸との同軸度を高めることができる緩衝装置、把持装置、ロボットアーム及び治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、緩衝装置は、把持部材が取り付けられる支持部材と、ロボットアームが取りつけられるベース部材と、を備える。前記支持部材は、前記把持部材に加わった衝撃によって伸縮する弾性部と、前記伸縮による前記把持部材の変位に応じて前記把持部材とともに直動する直動部と、を備える。前記ベース部材は、前記把持部材の中心軸と同軸上となる位置に設けられる孔を備える。
【0007】
一つの態様によれば、ロボットアームの手首の中心軸と把持部材の中心軸との同軸度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における緩衝装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるロボットアームの一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す底面斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態におけるロボットアームに取り付けられる把持装置の一例を示す分解側面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における把持装置のベースプレート部材を取り外した状態の一例を示す底面斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す側面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態における組み立て後の把持装置の一例を示す側面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す側断面図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態における支持部材の位置が変更された把持装置の一例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態におけるベースプレートと支持部材との接続状態の一例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における把持装置と、把持装置に取り付けられる治具の一例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態におけるベースプレートを取り外した把持装置の一例を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する緩衝装置、把持装置、ロボットアーム及び治具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、後に説明する爪41a及び41bが延在する方向をY軸方向とし、爪41a及び41bが移動する方向をZ軸方向とする座標系を図示する場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態における緩衝装置2について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態における緩衝装置の一例を示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態におけるロボットアームの一例を示す側面図である。
図4は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す底面斜視図である。
図5は、第1の実施形態におけるロボットアームに取り付けられる把持装置の一例を示す分解側面図である。
図6は、第1の実施形態における把持装置のベースプレート部材を取り外した状態の一例を示す底面斜視図である。
図1に示すように、本実施形態における把持装置1は、把持部材4と、
図2に示す緩衝装置2とを備える。把持装置1は、
図3に示すロボットアーム6等に、緩衝装置2のベースプレート20を介して取り付けられる。
図3に示すロボットアーム6は、第1の実施形態とは異なる把持部材40が、手首61に連結された場合を示す。把持部材40と手首61とは、例えば中心軸AX9が同軸となるように取り付けられる。なお、ロボットアーム6は、
図3に示される垂直多関節型のロボットアームに限られない。例えば、ロボットアーム6は、スカラ型(水平多関節型)、直角座標型又はパラレルリンク型等のどのような産業用ロボットであってもよい。
【0011】
図2に示すように、緩衝装置2は、ベースプレート20と、支持部材30とを備える。支持部材30は、固定部31と、リニアガイド32と、コイルばね33a及び33bと、背板35と、調整ネジ36a及び36bとを備える。
【0012】
ベースプレート20は、
図3に示すロボットアーム6と接続される。なお、ベースプレート20は、ベース部材の一例である。ベースプレート20には、
図2に示す貫通孔29と、
図4に示す長孔27a及び27bと、孔28とが形成される。
【0013】
なお、ベースプレート20は、固定部31の可動範囲を限定するストロークエンド23が挿通される孔24と、ロボットアーム取付部26とをさらに備えてもよい。ロボットアーム取付部26は、例えばY軸方向に延在する、複数の孔又は凹部である。ロボットアーム取付部26には、ロボットアーム6とベースプレート20とを固定するボルト等が挿通される。第1の実施形態において、ベースプレート20には、ロボットアーム6の形状の違いに応じて、位置や大きさが異なる、複数種類のロボットアーム取付部26が形成される。
【0014】
長孔27a及び27bは、Y軸方向に延在する、断面がX軸方向に長い略長円形状の貫通孔である。長孔27a及び27bには、ベースプレート20と背板35とを固定するボルト7a及び7bがそれぞれ挿通される。孔28は、Y軸方向に延在する、断面が略円形状の貫通孔である。孔28には、
図6に示す固定ピン8のうち、Y軸負方向側に突出する部分が挿通される。固定ピン8は、背板35のピン挿通部38に挿通されることにより、背板35がベースプレート20に対してガタつくことを抑制する。
【0015】
貫通孔29は、ベースプレート20をY軸方向に貫通する孔である。貫通孔29は、例えば
図5に示す把持部材4の中心軸AX4と同軸上となる位置に固定される。貫通孔29には、
図5に示すロボットアーム6の接続部69の係合突起69aと、
図5に示す位置合わせピン9とが嵌合される。
【0016】
支持部材30の背板35は、ベースプレート20に固定される。背板35は、レール32bを備える。レール32bには、固定部31に装着される移動ブロック32aが、Y軸方向に移動可能に固定される。なお、レール32b及び移動ブロック32aは、直動部の一例であるリニアガイド32を構成する。
【0017】
また、背板35は、
図6に示すように、ネジ穴37a及び37bと、ピン挿通部38とを、Y軸負方向側の面に備える。ネジ穴37a及び37bは、例えばY軸方向に延在する、断面が略正円径状の凹部である。ネジ穴37a及び37bには、ベースプレート20と背板35とを固定するボルト7a及び7bが螺合される。
【0018】
ピン挿通部38は、例えばY軸正方向に形成される凹部であり、断面がX軸方向に長い略長円形状に形成される。ピン挿通部38には、固定ピン8が挿通される。
【0019】
固定部31のX軸正方向側には、把持部材4が固定される。固定部31は、リニアガイド32に沿って、
図2の矢印にしめす方向(Y軸方向)に対して移動可能に、背板35と連結される。
【0020】
固定部31は、コイルばね33a及び33bと、調整ネジ36a及び36bとを備える。また、固定部31のX軸正方向側の面には、突起部34aが形成される。また、固定部31には、複数のボルト34bがX軸負方向側からX軸正方向側に挿通されていてもよい。固定部31は、例えば、調整ネジ36a及び36bが取り外され、レール32bからY軸方向に抜き取られることにより、背板35から取り外される。
【0021】
図5に示すように、コイルばね33a及び33bと、リニアガイド32と、把持部材4とは、X軸方向、すなわち、貫通孔29が延在する方向(Y軸方向)と交差する方向に並んで配置される。
【0022】
コイルばね33a及び33bは、把持部材4から加わる衝撃を吸収する。一対のコイルばね33a及び33bは、Z軸方向において対向して配置される。なお、コイルばね33a及び33bは、弾性部の一例である。
【0023】
調整ネジ36a及び36bは、それぞれコイルばね33a及び33bを固定部31に取り付けるとともに、コイルばね33a及び33bの付勢力を調整し、又は固定部31のY軸方向における位置を調整する。
【0024】
把持部材4は、
図1に示すように、爪41a及び41bと、移動ブロック42a及び42bと、レール43と、本体部44と、駆動部45と、フレーム50とを備える。
【0025】
一対の爪41a及び41bは、ワーク(把持対象物)を把持する部分であり、
図1に示すように、Z軸方向において対向して配置される。爪41a及び41bは、それぞれ移動ブロック42a及び42bにボルト等により固定され、移動ブロック42a及び42bとそれぞれ連動して、矢印に示す方向(Z軸方向)に移動する。
【0026】
一対の移動ブロック42a及び42bは、レール43に沿って、Z軸方向に移動可能に配置される。レール43は、移動ブロック42a及び42bをX軸方向において挟むように対向して配置される。レール43は、例えばボルト等により、本体部44に固定される。
【0027】
駆動部45は、例えばモータを備えており、外部から供給される電力等により駆動する。本体部44は、ラックアンドピニオン機構、カム機構、リードスクリュー機構、ベルト機構等の伝達機構を備えており、駆動部45の駆動力により、移動ブロック42a及び42bを移動させる。
【0028】
フレーム50は、本体部44及び駆動部45を保持する。フレーム50は、Y軸正方向側に位置する上面51と、X軸負方向側に位置する側面52と、Y軸負方向側に位置する底面53とを備える。上面51には、本体部44が、例えばボルト等により固定される。また、上面51には、駆動部45がY軸方向において挿通される、図示しない孔が形成されてもよい。
【0029】
側面52は、支持部材30の固定部31に形成される突起部34aとそれぞれ対応する位置に、孔54aを備える。また、側面52は、固定部31に挿通される複数のボルト34bとそれぞれ対応する位置に、複数のネジ穴54bを備える。側面52は、緩衝装置2に固定される。具体的には、
図5に示すように、側面52に形成された孔54aが、
図2に示す緩衝装置2の突起部34aに係合する。また、複数のボルト34bは、複数のネジ穴54bにそれぞれ螺合する。なお、把持部材4は、例えば、緩衝装置2の固定部31が背板35から取り外された状態で、固定部31に取り付けられる。
【0030】
底面53には、
図5及び
図6に示すように、把持部材4の中心軸となる位置に、貫通孔59が形成される。なお、底面53には、例えばベースプレート20やロボットアーム6と連結されるボルトが挿通される、その他の貫通孔55が形成されていてもよい。
【0031】
ロボットアーム6は、手首61を含む、複数の関節を備える。第1の実施形態におけるロボットアーム6は、
図3に示すように、6つの関節61乃至66を備える。また、6つの関節61乃至66は、ベース部67に連結されている。
【0032】
ロボットアーム6は、例えば、手首61が、接続部69を介してベースプレート20に連結されることにより、緩衝装置2と連結する。具体的には、
図5に示す接続部69の嵌入部69cが手首61に嵌合した状態で、接続部69の係合突起69aが、ベースプレート20の貫通孔29に挿通される。この場合において、接続部69の接触部69bは、Y軸方向においてベースプレート20と接触する。その際、接続部69は、係合突起69aが、手首61の中心軸AX1と同軸上に位置するように、手首61に嵌合される。また、接触部69bには、ベースプレート20のロボットアーム取付部26とボルトにより連結される貫通孔又は凹部が形成されていてもよい。
【0033】
そして、
図5に示すように、ロボットアーム6に連結された緩衝装置2に、把持部材4がフレーム50を介して、連結される。その際、緩衝装置2は、把持部材4の中心軸AX4が、ロボットアーム6の手首61の中心軸AX1と同軸上に位置するように、把持部材4と連結される。
【0034】
把持部材4は、爪41a又は41bが移動する際に把持対象物やトレイ等に接触した場合や、積み上げられた把持対象物が倒れて爪41a又は41bに衝突した場合等に加わる衝撃により変位する場合がある。この場合において、把持部材4が、緩衝装置2を介してロボットアーム6に連結されることにより、緩衝装置2のリニアガイド32により変位の方向がY軸方向に限定され、異なる方向に把持部材4がぶれることが抑制される。また、コイルばね33a及び33bにより衝撃が吸収されることで、Y軸方向における変位も抑制される。これにより、把持部材4に衝撃が加わった場合にも、把持部材4の変位が抑制される。
【0035】
一方、緩衝装置2のY軸方向における中心軸は、
図3に示すロボットアーム6の手首61の中心軸AX1とも、
図5に示す把持部材4の中心軸AX4とも同軸とならない。この場合においては、ロボットアーム6と把持部材4とを直接連結する場合と比較して、部材が複数介在することによる誤差の累積で、ロボットアーム6の中心軸と把持部材4の中心軸との同軸性が低下する。
【0036】
そこで、第1の実施形態において、位置合わせピン9と、ベースプレート20の貫通孔29と用いることにより、把持部材4とロボットアーム6の手首61との同軸性を調整する方法について、
図5乃至
図10を用いて説明する。
図7は、第1の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す側面図である。
図8は、第1の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す拡大斜視図である。
図9は、第1の実施形態における組み立て後の把持装置の一例を示す側面図である。
図10は、第1の実施形態における把持装置の一例を示す側断面図である。
図8は、
図7の枠F1に示す部分を拡大した斜視図である。
図10は、
図1に示す緩衝装置2に、位置合わせピン9とロボットアーム6とが連結された状態を、
図1のA-A線で切断した断面を示す。
【0037】
図5及び
図10に示すように、ロボットアーム6は、手首61の中心軸AX1が、ベースプレート20の貫通孔29に挿通されるように、緩衝装置2に取り付けられる。その際、ベースプレート20の貫通孔29には、
図5に示す位置合わせピン9がさらに挿通される。なお、
図10に示すように、ロボットアーム6の接続部69の係合突起69aは、接触部69bとは別部材により構成されていてもよい。
【0038】
図10に示すように、位置合わせピン9は、フランジ部91と、凸部94及び96とを備える。凸部94は、フランジ部91に対してY軸正方向側に形成され、凸部96は、フランジ部91に対してY軸負方向側に形成される。
【0039】
緩衝装置2に把持部材4が取り付けられる際に、
図7及び
図8に示すように、フレーム50の底面53に形成された貫通孔59に、位置合わせピン9の凸部94が挿通されるように、把持部材4とベースプレート20との位置関係が調整される。
【0040】
図7に示すように、把持部材4がY軸負方向側に押し下げられる際、把持部材4の底面53の貫通孔59に、位置合わせピン9を挿通させるように、把持部材4のX軸方向における位置が調整される。これにより、緩衝装置2と把持部材4とを備える把持装置1において、把持部材4のモータの中心軸が、フレーム50の貫通孔59と同軸になるように取り付けることが容易になる。
【0041】
なお、把持装置1の組み立て後、位置合わせピン9は、把持部材4が移動する際に妨げとなるので、位置を合わせた後に抜去することが望ましい。例えば、把持部材4をY軸負方向側に押し下げる際に圧縮されていたコイルばね33a及び33bを解放すると、支持部材30のリニアガイド32により、把持部材4は、X軸方向及びZ軸方向における位置が変わることなく、Y軸正方向側に移動する。これにより、
図10に示すように、位置合わせピン9がフレーム50の貫通孔59から離脱するので、把持部材4とロボットアーム6の手首61との同軸性を維持したまま、位置合わせピン9を抜去できる。
【0042】
また、把持部材4をX軸方向において位置合わせした結果、把持部材4が連結された支持部材30が、
図11に示すように、ベースプレート20に対して幅W1だけX軸方向にオフセットした状態となる場合がある。
図11は、第1の実施形態における支持部材の位置が変更された把持装置の一例を示す斜視図である。
【0043】
この場合において、ボルト7a及び7bがベースプレート20及び背板35に挿通される際、背板35のネジ穴37a及び37bは、
図6に示すように、略正円形状の断面に形成される。これに対し、ベースプレート20の長孔27a及び27bは、
図12に示すように、断面がX軸方向に長い略長円形状に形成される。
図12は、第1の実施形態におけるベースプレートと支持部材との接続状態の一例を示す斜視図である。なお、
図12においては、ベースプレート20を破線で示し、かつロボットアーム取付部26等の一部の構造の図示を省略している。
【0044】
かかる構成によれば、ボルト7a及び7bを、長孔27a及び27bの中心からX軸方向にオフセットした位置において固定することにより、
図11に示すように、支持部材30をベースプレート20に対してX軸方向においてオフセットした位置に固定できる。また、固定ピン8は、例えば背板35のZ軸方向における略中央部に挿通される。この場合において、固定ピン8をY軸方向における回転軸として、背板35を回転させることにより、背板35のY軸方向に対する角度を微調整できる。
【0045】
一方、背板35に形成され、固定ピン8が挿通されるピン挿通部38は、ベースプレート20の長孔27a及び27bと同様に、X軸方向に長い略長円形状の断面を備える。かかる構成によれば、
図11に示すように、背板35がベースプレート20に対して幅W1だけX軸方向にオフセットされた状態で固定された状態においても、背板35のピン挿通部38に挿通された固定ピン8の一部を、ベースプレート20の孔28に挿通させることができる。なお、第1の実施形態において、ボルト7a及び7b並びに固定ピン8と、ベースプレート20の長孔27a及び27b並びに孔28と、背板35のネジ穴37a及び37b並びにピン挿通部38とは、スライド機構を構成する。
【0046】
かかる構成によれば、
図12に示すように支持部材30がベースプレート20に対してX軸正方向側にスライドした状態においても、支持部材30とベースプレート20とのガタつきを抑制することができる。
【0047】
以上説明したように、第1の実施形態における緩衝装置2は、把持部材4が取り付けられる支持部材30と、ロボットアーム6が取りつけられるベース部材20と、を備える。支持部材30は、把持部材4に加わった衝撃によって伸縮する弾性部33a,33bと、前記伸縮による把持部材4の変位に応じて把持部材4とともに直動する直動部32と、を備える。ベース部材20は、把持部材4の中心軸と同軸上となる位置に設けられる孔29を備える。かかる構成によれば、ロボットアームの手首の中心軸と把持部材の中心軸との同軸度を高めることができる。
【0048】
また、第1の実施形態において、緩衝装置2は、支持部材30を平行移動させて、貫通孔29と、把持部材4の中心軸AX4との同軸性を調整できるスライド機構を備えてもよい。これにより、把持部材4を、中心軸AX4がロボットアーム6の手首61の中心軸AX1と同軸になるように固定する場合において、把持部材4とロボットアーム6とのガタつきを抑制できる。
【0049】
(第2の実施形態)
以上第1の実施形態について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、
図13乃至
図16に示すように、フレームA50の底面A53において、把持部材4の中心軸となる位置に貫通孔が形成されない構成であってもよい。
図13は、第2の実施形態における把持装置と、把持装置に取り付けられる治具の一例を示す斜視図である。
図14は、第2の実施形態におけるベースプレートを取り外した把持装置の一例を示す斜視図である。
図15は、第2の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す斜視図である。
図16は、第2の実施形態における把持装置の組み立て中の状態の一例を示す拡大斜視図である。
図16は、
図15の枠F2に示す部分を拡大した図である。なお、以下の各実施形態及び各変形例において、先に説明した図面に示す部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
第2の実施形態の把持装置A1において、把持部材A4のフレームA50の底面A53には、
図14に示すように、把持部材A4の中心軸からオフセットした位置に、貫通孔A55a及びA55bが形成される。貫通孔A55a及びA55bは、例えばX軸方向に並んで形成される。また、底面A53には、その他の複数の貫通孔A55cも形成される。貫通孔A55a、A55b及びA55cは、例えば緩衝装置2を介さずに把持部材A4をロボットアーム6に取り付ける際のボルト等が挿通される。なお、第2の実施形態において、貫通孔A55aは、Z軸方向に長い略長円形の断面形状を備え、貫通孔A55bは略円形状の断面形状を備える。
【0051】
第2の実施形態においては、把持部材A4とベースプレート20との位置合わせをする際に、
図13に示す治具A9が用いられる。治具A9は、フランジ部A91と、凸部A94a及びA94bと、凸部A96とを備える。なお、凸部A96は、第1の凸部の一例であり、凸部A94a及びA94bは、第2の凸部の一例である。
【0052】
フランジ部A91は、Z軸方向に長い略矩形形状に形成される。凸部A94a及びA94bは、フランジ部A91に対してY軸正方向側に形成され、凸部A96は、フランジ部A91に対してY軸負方向側に形成される。
【0053】
凸部A96は、Z軸方向における略中央に形成される。凸部A96は、緩衝装置2のベースプレート20の貫通孔59に対応する位置に形成される。
【0054】
凸部A94a及びA94bは、Z軸方向において、中央からオフセットした位置にそれぞれ形成される。凸部A94a及びA94bは、把持部材A4のフレームA50の貫通孔A55a及びA55bと対応する位置にそれぞれ形成される。この場合において、凸部A94a及びA94bは、Y軸方向において、凸部A96と一直線上に位置していない。
【0055】
第2の実施形態においても、
図5に示すロボットアーム6の接続部69の係合突起69aは、緩衝装置2のベースプレート20の貫通孔29に、Y軸負方向側から挿通される。そして、第2の実施形態においては、治具A9が、貫通孔29に、Y軸正方向側から挿通される。
【0056】
この場合において、治具A9の凸部A94a及びA94bが、把持部材A4のフレームA50の貫通孔A55a及びA55bに挿通されることにより、把持部材A4の中心軸AX5が、ロボットアーム6の手首61の中心軸AX1と同軸となるように、把持部材A4と緩衝装置2とロボットアーム6とが連結される。
【0057】
以上説明したように、第2の実施形態における治具A9は、緩衝装置2の孔29に対応する位置に形成された第1の凸部96と、把持部材A4に形成された凹部又は貫通孔A55a、A55bに対応する位置に形成された第2の凸部A94a,A94bとを備える。かかる構成によれば、把持部材に、ロボットアーム6の手首61の中心軸と同軸上に位置する孔又は凹部が形成されていない場合においても、同軸度を向上できる。
【0058】
以上本発明の各実施形態について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、把持部材4及びA4は、3つ以上の爪を備えていてもよく、また吸着型等の任意のエンドエフェクタであってもよい。
【0059】
また、孔29は貫通孔に限られず、例えばY軸正方向側とY軸負方向側とに同軸上に形成される2つの凹部であってもよい。また、孔29の径がY軸正方向側とY軸負方向側とで異なる、いわゆる段付き孔であってもよい。フレーム50の孔59、孔54b等、その他の孔についても同様である。
【0060】
また、支持部材30のガタつきを防止するために固定ピン8を用いる構成について説明したが、これに限られず、例えばベースプレート20と支持部材30とをX軸負方向側から支持する、別の部材を用いるような構成であってもよい。
【0061】
また、孔28及びピン挿通部38の形状は、いずれか一方の断面が略長円形状であり、他方の断面が略正円形状であればよく、例えば孔28が長孔であり、ピン挿通部38の断面が略正円形状であってもよい。なお、
図10に示す孔28は、段付きの貫通孔であるが、これに限られず、段のない貫通孔であってもよく、またY軸正方向側から負方向側に切り欠かれた、貫通していない凹部であってもよい。
【0062】
以上、本発明を各実施形態及び各変形例に基づき説明したが、本発明は各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1,A1 把持装置、2 緩衝装置、4,A4 把持部材、6 ロボットアーム、7a,7b ボルト、8 固定ピン、9 位置合わせピン、20 ベースプレート、27a,27b 長孔、28 孔、29 貫通孔、30 支持部材、31 固定部、32 リニアガイド、32a 移動ブロック、32b レール、33a,33b コイルばね、35 背板、36a,36b 調整ネジ、37a,37b ネジ穴、38 ピン挿通部、40 把持部材、41a,41b 爪、42a,42b 移動ブロック、43 レール、44 本体部、45 駆動部、50,A50 フレーム、51 上面、52 側面、53,A53 底面、A55a~A55c 貫通孔、59 貫通孔、61 手首、61~66 関節、A9 治具、91,A91 フランジ部、94,A94a,A94b,96,A96 凸部