(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157118
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】気分状態の改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20241030BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241030BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20241030BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A23L33/18
A61P43/00 111
A61P25/22
A61K38/01
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071256
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000135151
【氏名又は名称】株式会社ニッピ
(72)【発明者】
【氏名】楠畑 雅
(72)【発明者】
【氏名】桑葉 くみ子
(72)【発明者】
【氏名】水野 一乘
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF12
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA43
4C084BA44
4C084MA16
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4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZC021
4C084ZC022
(57)【要約】
【課題】コラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤や疲労感改善食品を提供する。
【解決手段】微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを主成分として含有する。このコラーゲンペプチドを体調を崩しやすいと自覚する健康な方に経口投与したところ、POMS2で評価される疲労-無気力(FI)評価、および活気-活力(VA)評価が統計的有意差をもって改善させることができた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤。
【請求項2】
微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の疲労感改善食品。
【請求項3】
微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の前向きな気分向上・維持食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、皮膚や腱・軟骨などの構成タンパク質であり、-(Gly-X-Y)n-(X,Yは任意のアミノ酸)の繰り返し単位を有し、かつ翻訳後修飾によるヒドロキシプロリンを含む点で特異なタンパク質である。コラーゲンの大半は、生体内で分子量約100,000のポリペプチド鎖が3本螺旋状に結合した三重らせん構造を有するが、これは酵素や酸、アルカリによって分解すると、分解の程度や酵素の相違に応じた鎖長や組成のポリペプチドとなる。例えば、ゼラチンをクロストリジウム由来のプロテアーゼで分解すると-(Gly-X-Y)n-(X,Yは任意のアミノ酸)が主成分のポリペプチドとなり、ショウガ根茎由来酵素で分解するとX-Hyp-Gly(Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基)で示すペプチド組成物が得られる(特許文献1)。
【0003】
ショウガ根茎由来酵素で分解されたコラーゲンペプチドを経口摂取すると血中にPro-Hypが遊離し、これが海馬細胞の増殖を促進し抗うつ様作用を奏するとの報告がある(非特許文献1)。
【0004】
また、コラーゲンペプチドに関し、DPP-4阻害剤(特許文献2)、免疫賦活化(特許文献3)、骨形成促進剤(特許文献4)、アンジオテンシン変換酵素阻害(特許文献5)などの報告がある。
【0005】
一方、過重労働により様々な健康障害が引き起こされることが知られ、厚生労働省は、労働者本人が疲労蓄積度をセルフチェックできるサイトを設けている(非特許文献2)。身心の疲労を早期に発見することで過労を回避し、生活習慣病やうつ病の罹患を予防し、生活の質を向上させることができる。特定のアミノ酸配列を有するペプチドを含むホエイタンパク質酵素分解物を有効成分とする注意機能の向上、維持および/または改善用組成物や(特許文献6)、ホタテガイの外套膜抽出物を含み、活力の向上や、ふさぎこみを抑制し疲労回復させる、体調不良改善食品がある(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6075656号
【特許文献2】国際公開第2013/065832号
【特許文献3】国際公開第2016/076276号
【特許文献4】特許第6860877号
【特許文献5】特許第7048270号
【特許文献6】特許第7011984号
【特許文献7】特許第7105456号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Prolyl‐hydroxyproline, a collagen‐derived dipeptide, enhances hippocampal cell proliferation, which leads to antidepressant‐like effects in mice”, The FASEB Journal 34 (4), 5715-5723, 2020-03 Wiley
【非特許文献2】https://kokoro.mhlw.go.jp/fatigue-check/worker.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、コラーゲンペプチドの効能に関して種々の報告があり、非特許文献1では抗うつ作用を報告するが、特許文献6や特許文献7に記載される精神的疲労や体調不良改善などとコラーゲンペプチドとの関係は明確でない。認知症やうつ病患者などを対象とせず、脳機能に問題のない健康な方でも気分が落ち込むことがある。例えば、疲労には精神的原因と身体的原因とがあり、精神的疲労は、傾眠(眠気)や無気力等として現われる。生体成分に由来するコラーゲンペプチドによって精神的疲労を予防または改善することができれば、安全性に優れ、作業効率を維持向上させたり、気分改善によって各人の生活の質を向上させることができる。
【0009】
上記現状に鑑み、本開示は、コラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤や健康な方の疲労感改善食品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示者等は、体調を崩しやすい健康な方に、微生物由来プロテアーゼで分解されたコラーゲンペプチドを8週間投与し、POMS2(Profile of Mood States 2nd Edition)(商標)で気分状態を評価したところ、プラセボ群に対して統計的有意差をもって疲労-無気力(FI)および活気-活力(VA)のスコアを向上させることを見出し、本開示を完成させた。
【0011】
すなわち本開示は、微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤を提供するものである。
【0012】
さらに、微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の疲労感改善食品を提供するものである。
【0013】
加えて、微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の前向きな気分向上・維持食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善薬や健康な方の疲労感改善食品等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、微生物由来プロテアーゼで分解された平均分子量500~12,000のコラーゲンペプチドを含む、健康な方の気分状態の改善剤や気力向上剤、健康な方の疲労感改善食品、および健康な方の前向きな気分向上・維持食品である。以下、本開示を詳細に説明する。
【0016】
本開示で使用するコラーゲンペプチドの平均分子量は500~12,000、好ましくは1,000~10,000、より好ましくは2,000~8,000、特に好ましくは4,000~8,000である。平均分子量とは、重量平均分子量を意味する。コラーゲンは、-(Gly-X-Y)n-(X,Yはアミノ酸を示す)で示される「コラーゲン様配列」を有する。酸やアルカリで加水分解することができるほか、リゾプス属由来、アスペルギルス属由来、バチルス属由来、ストレプトマイセス属などの微生物由来プロテアーゼや、ショウガ根茎酵素など植物由来プロテアーゼで分解することができる。使用するプロテアーゼによって生成するペプチド組成が異なり、例えばクロストリディウム属細菌はYとGlyの間を切断する酵素特定により、N末端がグリシンの-(Gly-X-Y)n-(X,Yはアミノ酸を示す)配列が主成分のコラーゲンペプチドを得ることができる。一方、ショウガ根茎由来酵素で分解すると、C末端から2番目のアミノ酸残基がProやHypのX-Hyp-Gly、X-Pro-Gly、Gly-Pro-X(Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基)で示すペプチド組成物を得ることができる。本開示で使用するコラーゲンペプチドは、上記平均分子量となるように、微生物由来プロテアーゼで分解されたものである。低分子コラーゲンペプチドの中には消化耐性を有し、経口摂取で生理活性を奏するものがある。前記非特許文献1に記載するように、ショウガ根茎由来酵素分解物を摂取するとPro-Hypが血中に存在し、脳機能に影響を与え、抗うつ作用を発揮する。そこで、ショウガ根茎由来酵素分解物と微生物由来プロテアーゼ分解物とを5g摂取したヒトのPro-Hypの血中濃度を比較したところ、摂取後30分値でのショウガ根茎由来酵素分解物は8.1±5.4nmol/ml、微生物由来プロテアーゼ分解物は4.6±3.0nmol/mlであって、統計的有意差(p<0.05)をもって微生物由来プロテアーゼ分解物の方が低値であり、摂取後6時間に至るArea Under the Curveも、統計的有意差(p<0.05)をもって微生物由来プロテアーゼ分解物の方が低値であった。しかしながら、微生物由来プロテアーゼで分解してなる上記コラーゲンペプチドは、後記する実施例に示すように、疲れやすく体調を崩しやすい健康な方に対し、国際的に利用されているPOMS2(商標)で評価する気分状態を改善させることができ、疲労感を軽減し、活気や活力が向上させることができることが判明した。
【0017】
本開示で使用するコラーゲンペプチドは、ティラピア、タイ、シャケなどの魚類、鳥類、ブタ、ウシ、その他のいずれの動物種に由来するものであってもよく、魚鱗、真皮、腱、骨などのいずれの組織から抽出されたものであってもよい。好ましくは、魚鱗、ブタ、ウシ、トリ由来である。また、コラーゲンは、I型~XXVIII型まで知られているが、何れの型でもよい。好ましくは、I型コラーゲンである。なお、製造方法によってコラーゲンペプチドの等電点が相違するが、本開示では等電点が7.0~9.5であることが好ましく、より好ましくは7.5~8.5である。
【0018】
本開示において「健康な方」とは、疾病や疾患に罹患しておらず心身ともに健やかな者を意味する。また、「気分状態の改善剤」とは、疲労感の軽減、意欲や活力の向上を意味する。
【0019】
本開示の気分状態の改善剤や健康な方の疲労感改善食品、健康な方の前向きな気分向上・維持食品は、その効果を損なわない範囲で、矯味矯臭剤、賦形剤、増粘剤、甘味料、植物エキス、ビタミン類が添加されるものであってもよい。また、剤型は、コラーゲンペプチドの安定性が確保されることを条件に、粉末、顆粒、丸剤、カプセル、錠剤、液剤、懸濁剤、その他のいずれであってもよい。粉末や顆粒の場合は、水や温水に可溶で、その溶液を冷却してもゲル化しないことが好ましい。
【0020】
本開示において、食品とは、ヒトを含む動物が食べるために直接使用できる、食用可能な状態のものとする。従って、上記食品をそのまま、および上記食品の形態を単に粉末状、顆粒状、ペレット状などに変更したものを食品としてもよい。また、上記食品に水と、必要に応じて加える増粘剤、矯味矯臭剤を添加した液状またはゼリー状の飲料、上記食品を寒天やゼラチンで固めたゼリーなどであってもよい。
【0021】
本開示の健康な方の疲労感改善食品、健康な方の前向きな気分向上・維持食品の投与方法としては、経口投与の他、経管投与などであってもよい。本開示において「食品」には、サプリメントなどの栄養補助食品;経鼻、経腸、その他の経管栄養剤を含むものとする。食品として使用する場合、上記食品に添加する他の成分については、食品として使用できるものであることを条件に、特に限定はない。水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を成分として配合することができる。
【0022】
栄養補助食品としては、上記食品をそのまま、または上記食品組成物を粉末状、顆粒状、ペレット状などに加工し、上記食品に水や増粘剤を添加した液状、ゼリー状物を例示することができる。また、従来公知のサプリメントのいずれかに上記食品組成物を添加してもよい。
【0023】
摂取量は、前記コラーゲンペプチド量に換算して、1日0.1~30g、より好ましくは2~10gである。コラーゲンに特徴的なアミノ酸としてヒドロキシプロリンがあり、コラーゲンペプチドの含有量の算出に際しては、ヒドロキシプロリン量を基準にコラーゲンペプチド量を概算することができる。1日に複数回に分けて服用してもよい。
【0024】
本開示の気分状態の改善剤や健康な方の疲労感改善食品、健康な方の前向きな気分向上・維持食品は、食事の前後、食間、その他のいずれに摂取してもよく、食材に混入して調理し、このように調理した食材を摂取したり、調理済みの食材に振りかけて摂取してもよい。
【0025】
本開示の改善剤や健康な方の疲労感改善食品、健康な方の前向きな気分向上・維持食品は、健康な方に投与することで気分状態を維持することができる。また、プレッシャーなどで心が疲れてしまう精神的疲労感を有する者、無気力、その他の精神的疲労感を有する者や体調を崩しやすい健康な方にも有用である。精神的疲労は、眠気や無気力等として現われる。精神的疲労を予防または改善することで気分を改善させ、日常生活の質を向上させることができる。
【実施例0026】
次に実施例を挙げて本開示を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本開示を制限するものではない。
【0027】
(実施例1)
株式会社オルトメディコに委託し、POMS2日本語版を用いて、ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験にて評価した。POMS2の65の設問に加え、リッカートスケール法によるオリジナルアンケート、日誌による体調アンケートも追加設問した。
【0028】
本実験の被験者は、20歳以上の疲れやすく体調を崩しやすい健康な方とした。スクリーニング時における疲労-無気力(FI)が相対的に高いエントリー者から選抜した。解析対象者は、被験食品群とプラセボ群とのそれぞれ31名で、年齢、性別、身長、IgE量に有意差が生じないように2群に振り分けた。解析はPPS(Per protocol analysis set)解析およびFAS(Full analysis set)にて行った。
【0029】
被験者には、(i)悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞の治療中もしくは既往歴がある者、(ii)ペースメーカーや植え込み型除細動器を埋め込んでいる者、(iii)不整脈、肝障害、腎障害、脳血管障害、リウマチ、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、その他の慢性疾患治療中の者、(iv)特定保健用食品、機能性表示食品、その他の機能性が考えられる食品/飲料を日頃から摂取している者、(v)乳酸菌飲料、発酵食品等、乳酸菌を高含有する食品を1週間に2日以上食べる者、(vi)コラーゲン/ゼラチンを高含有する食品(牛すじ、レバー、モツ・ホルモン、豚足、鶏もも肉、鶏手羽先・皮、鶏軟骨、魚の皮、ハモ、ウナギ、あんこう、煮こごり、コラーゲン鍋、ゼラチン、グミ、マシュマロ等)を1週間に2日以上食べる者、(vii)医薬品(漢方薬を含む)・サプリメントを常用している者、(viii)アレルギー(医薬品・試験食品関連食品)がある者、特に魚類、コラーゲン、ゼラチンにアレルギーがある者、(ix)花粉症に罹患している者、(x)同意書取得日以前の1年間において、インフルエンザ等感染症のワクチンを接種した者、(xi)喫煙中または同意書取得日以前1年間において禁煙を開始した者、(xii)妊娠中、授乳中、あるいは試験期間中に妊娠する意思のある者、を含まない。
【0030】
被験食品群で使用した試験薬はコラーゲンペプチド顆粒(商品名「FCP-AG」、ティラピアI型コラーゲン由来、微生物由来食品用プロテアーゼ(リゾプス属、アスペルギルス属、バチルス属、ストレプトマイセス属由来)分解、平均分子量4,000~8,000)であり、プラセボ群で使用したプラセボはデキストリン粉末である。両群とも、1回5g、1日2回(朝食後および夕食後)に、コップ半分程度の水または温水に溶かして服用した。なお、服用期間は8週間である。
【0031】
スクリーニング時、摂取開始時(摂取前)、摂取4週間後、摂取8週間後にPOMS2の65の質問に回答させた。該回答を項目ごとに緊張-不安(TA;Tension-Anxiety)、抑うつ-落込み(DD;Depression-Dejection)、怒り-敵意(AH;Anger-Hostility)、活気-活力(VA;Vigor-Activity)、疲労-無気力(FI;Fatigue-Inertia)、混乱-当惑(CB;Confusion-Bewilderment)、友好(F;Friendliness)の7尺度で算出し、およびTMD(Total Mood Disturbance)得点で評価した。
【0032】
各時点の測定値は、スクリーニング時の値をベースライン値とし、共変量、時点、群、時点と群の交互作用、ベースライン値と時点の交互作用、試験参加者を因子とした線形混合モデルで時点ごとに群間比較した。
【0033】
POMS2の結果は以下の通りであった。
(1)疲労-無気力(FI)の実測値を下記表に示す。被験食品群は経時的にFI値を低減させたが、摂取8週間後には統計的有意差(P=0.045)をもってプラセボ群よりもFI値を低減させた。
【0034】
【0035】
(2)疲労-無気力(FI)の実測値を下記表に示す。被験食品群は経時的にVA値を向上させたが、摂取8週間後には統計的有意差(P=0.002)をもってプラセボ群よりもVA値を向上させた。
【0036】
【0037】
(3)FIおよびVAを除くPOMS2のスクリーニング時、摂取開始時、摂取4週間後、摂取8週間後の実測値を以下に示す。TMD(Total Mood Disturbance)、怒り-敵意(AH)、混乱-当惑(CB)、抑うつ-落込み(DD)、緊張-不安(TA)は、経時的にスコアが低減する傾向を示したが、統計的有意差は検出されなかった。また、友好(F)はスコアが変動し、統計的有意差も検出されなかった。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
また、スクリーニング時、摂取開始時、摂取4週間後、摂取8週間後に、リッカートスケール法によるオリジナルアンケートを実施した。質問は、1.「肩こりや腰痛がある」、2.「便秘気味である」、3.「下痢気味である」、4.「一晩寝ても疲れがとれない」、5.「はっきりとした理由がないが疲れている」、6.「肌の調子が悪い」、7.「手が荒れやすい」以下の7項目であり、1.「まったくあてはまらない」、2.「ほとんどあてはまらない」、3.「あまりあてはまらない」、4.「少しあてはまる」、5.「かなりあてはまる」、6.「非常にあてはまる」の6段階で回答させた。測定値の中央値(Median)、第1四分位数(Q1)、第3四分位数(Q3)を算出し、Mann-WhitneyのU検定を用いて群間比較した。結果を下記表に示す。摂取開始8週間後に、「一晩寝ても疲れがとれない」の項目で、プラセボ群と被験食品群との間に、統計的有意差(P<0.05)が検出された。
【0043】
【0044】
加えて、日誌形式による体調アンケート(1.「熱っぽさ」、2.「鼻汁」、3.「鼻閉」、4.「のどの痛み」、5.「せき」、6.「全身倦怠感」、7.「筋肉痛」、8.「関節痛」、9.「寒気」)を行った。各症状の試験参加者ごとの累積発症日数をt検定で群間比較したところ、何れの症状も統計的有意は検出されなかった。
【0045】
(総括)
被験食品群の個別項目の結果を見ると、摂取8週間後検査時において、VAの下位項目である「7.生き生きする」、「12.積極的な気分だ」、「55.心配事がなくていい気分だ」、「57.活気がわいてくる」、「60.やる気でいっぱいだ」、「62.活動的だ」がプラセボ群と比較して有意に高値を示し、FIの下位項目である「45.うんざりだ」、「59.精根尽き果てた」がプラセボ群と比較して有意に低値を示した。さらにオリジナルアンケートでは、被験食品群において摂取8週間後検査時における「一晩寝ても疲れがとれない」がプラセボ群と比較して有意に低値を示した。これらの結果から、被験食品の摂取により、疲労や無気力に関する気分状態が減弱し、活気や活力に関する気分状態や睡眠による疲労回復が亢進したことで、主観的な疲労感や感冒症状の出現が減少したと考えられた。
【0046】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。