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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157125
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071267
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖隆
(72)【発明者】
【氏名】川又 修平
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056FA13
2C056JA01
2C056JA04
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
2C056JB15
2C056JC25
2C056KC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗浄液供給部材に供給された洗浄液を、確実に洗浄液供給部材に保持できるように構成されたワイプユニットを備えるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材91bと、を有し、前記洗浄液供給部材91bの下面には、前記洗浄液が排出される開口101aと、前記開口101aから排出された前記洗浄液が接触可能な凸部92と、が形成されている。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、
前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、
前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を有し、
前記洗浄液供給部材の下面には、前記洗浄液が排出される開口と、前記開口から排出された前記洗浄液が接触可能な凸部と、が形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記凸部は複数個であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記凸部の先端面はR面状であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記移動方向において前記開口に対応して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記移動方向と交差する方向に隣り合う前記開口間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記ブレードが前記ノズル面に接触して移動する際の移動開始位置と前記開口との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給部材は、
前記ノズル面から離間した離間位置と、前記離間位置よりも前記ノズル面に近く、前記ブレードが前記ノズル面に接触して移動するワイプが行われる際の前記洗浄液供給部材の位置であるワイプ位置と、の間を移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記洗浄液供給部材に前記洗浄液を供給する供給部を更に備え、
前記洗浄液供給部材は、前記離間位置において前記供給部から前記洗浄液を供給され、供給された前記洗浄液を保持したまま、前記供給部から離れて前記ワイプ位置へ移動することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記プレードと前記洗浄液供給部材とを備えた、ワイプユニットを更に備え、
前記ワイプユニットが移動することで、前記ブレード及び前記洗浄部材が移動することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを拭き取るワイプユニットを備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを拭き取るワイプユニットが備えられている。ワイプユニットは、ノズル面に接触して、移動開始位置から移動終了位置まで一方向に移動するブレードを備え、インクジェットヘッドの下方のワイプ位置と、インクジェットヘッドの下方から離間した離間位置と、の間を移動可能である。ワイプ時には、ワイプユニットをワイプ位置に移動させ、ブレードをノズル面に接触させて移動開始位置から移動終了位置まで移動させることで、ノズル面に付着したインクがブレードで拭き取られる。
【0003】
また、インクジェット記録装置には、ブレードの移動方向において移動開始位置よりも下流側に洗浄液を供給する洗浄液供給部材が備えられる場合がある。特許文献1に記載のインクジェット式記録装置においては、洗浄液供給部材が、インクジェットヘッドのノズル面に隣接して設けられている。ワイプ時には、洗浄液供給部材から洗浄液が供給され、ブレードによって洗浄液と共にノズル面に付着したインクが拭き取られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-108711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、洗浄液供給部材がインクジェットヘッドのノズル面に隣接して設けられている。つまり、洗浄液供給部材がインクジェットヘッドに一体に設けられているので、印字時にも、洗浄液供給部に供給されたインクがノズル面に隣接した状態となる。このため、印字時にインクジェットヘッドの下方を通過する用紙が上向きに湾曲した場合、洗浄液供給部材に用紙が接触し、洗浄液で用紙が汚染されたり洗浄液供給部材が用紙によって損傷したりすることがある。
【0006】
また、洗浄液タンクから洗浄液供給部材に供給された洗浄液が、洗浄液供給部材から漏れて移動することのないように、確実に洗浄液供給部材に保持する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、洗浄液供給部材に供給された洗浄液を確実に洗浄液供給部材に保持できるように構成されたワイプユニットを備えるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を有し、前記洗浄液供給部材の下面には、前記洗浄液が排出される開口と、前記開口から排出された前記洗浄液が接触可能な凸部と、が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記凸部は複数個であることを特徴としてもよい。あるいは、本発明において、前記凸部の先端面はR面状であることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明において、前記凸部は、前記移動方向において前記開口に対応して配置されていることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明において、前記凸部は、前記移動方向と交差する方向に隣り合う前記開口間に配置されていることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明において、前記凸部は、前記ブレードが前記ノズル面に接触して移動する際の移動開始位置と前記開口との間に配置されていることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明において、前記洗浄液供給部材は、前記ノズル面から離間した離間位置と、前記離間位置よりも前記ノズル面に近く、前記ブレードが前記ノズル面に接触して移動するワイプが行われる際の前記洗浄液供給部材の位置であるワイプ位置と、の間を移動可能であることを特徴としてもよい。
【0014】
本発明において、前記洗浄液供給部材に前記洗浄液を供給する供給部を更に備え、前記洗浄液供給部材は、前記離間位置において前記供給部から前記洗浄液を供給され、供給された前記洗浄液を保持したまま、前記供給部から離れて前記ワイプ位置へ移動することを特徴としてもよい。
【0015】
本発明において、前記プレードと前記洗浄液供給部材とを備えた、ワイプユニットを更に備え、前記ワイプユニットが移動することで、前記ブレード及び前記洗浄部材が移動することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開口から排出された洗浄液が凸部に集まり、凸部からぶら下がって保持されるので、排出された洗浄液が任意の方向に移動して落下する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構造を模式的に示す正面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンス装置を模式的に示す平面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンス装置を模式的に示す正面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッドを示す側面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッドを示す下面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のキャップユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニット及び洗浄液供給機構を示す斜視図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットのキャリッジ及び洗浄液供給部材を示す斜視図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットのキャリッジ及び洗浄液供給部材を示す側面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットの洗浄液収容部材を示す下面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットの洗浄液収容部材を示す側面図である。
図8A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、移動開始位置に移動したキャリッジを示す斜視図である。
図8B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、移動終了位置に移動したキャリッジを示す斜視図である。
図9A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、供給位置に移動した洗浄液供給機構を示す側面図である。
図9B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、離間位置に移動した洗浄液供給機構を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部を示すブロック図である。
図11A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ホームポジション時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図11B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(洗浄液供給機構上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示すある。
図12A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図12B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ワイプユニット移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図13A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図13B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(キャリッジ移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図14A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す平面図である。
図14B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(キャリッジ移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図15A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ワイプユニット移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図15B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(洗浄液供給機構下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図17A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、洗浄液収容部材の変形例を示す下面図である。
図17B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、洗浄液収容部材の変形例を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0019】
最初に、図1図2A及び図2Bを参照して、インクジェット記録装置1の全体の構成について説明する。図1はインクジェット記録装置1の内部を模式的に示す正面図である。図2Aはヘッドユニット11及びメンテナンス装置13を模式的に示す平面図、図2Bはヘッドユニット11及びメンテナンス装置13を模式的に示す側面図である。以下、図1における紙面手前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とする。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0020】
インクジェット記録装置1(図1参照)は、インクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。インクジェット記録装置1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3の内部の下部には、普通紙、コート紙等のシートSが収容される給紙カセット5と、給紙カセット5からシートSを送り出す給紙ローラー7と、が設けられている。給紙カセット5の上方には、シートSを搬送する搬送ユニット9が設けられている。搬送ユニット9の上方には、4つのヘッドユニット11M、11C、11Bk、11Y(ヘッドユニット11と総称する)と4つのメンテナンス装置13(図2A及び図2Bも参照)とが設けられている。本体ハウジング3の左上部には、画像が形成されたシートSを排出する排出ローラー対15と、排出されたシートSが積載される排出トレイ17と、が設けられている。
【0021】
本体ハウジング3の内部には、給紙カセット5から搬送ユニット9を経て排出ローラー対15に至る搬送路19が設けられている。搬送路19には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー対21が設けられている。また、搬送路19には、搬送ユニット9よりも搬送方向上流側に、レジストローラー対23が設けられている。
【0022】
搬送ユニット9について、図1を参照して説明する。搬送ユニット9は、無端状の搬送ベルト25を備えている。搬送ベルト25には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔(図示省略)が開けられている。搬送ベルト25は、左右に離間して配置された駆動ローラー27Aと従動ローラー27Bとに巻き掛けられている。駆動ローラー27Aは、モーター(図示省略)により駆動されて回転する。駆動ローラー27Aが回転することで、搬送ベルト25は図1の反時計回り方向に走行する。上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25が、図1の右から左に向かう搬送方向に沿ってシートSが搬送される搬送路19を形成している。
【0023】
搬送ベルト25の中空部には、搬送板29と、吸引装置31と、が備えられている。搬送板29には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が開けられている。搬送板29は、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25の内面に接触する。吸引装置31は、搬送板29の下方に設けられて、搬送ベルト25の貫通孔と搬送板29の貫通孔を介して空気を吸引することで、シートSを搬送ベルト25に引き付ける。
【0024】
次に、ヘッドユニット11について説明する。4つのヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mは、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクに対応しており、搬送ベルト25の上方に、搬送方向に沿って所定の間隔を開けて配置されている。4つのヘッドユニット11には、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ33Y、33Bk、33C、33M(インクコンテナ33と総称、図1参照)が接続されている。各ヘッドユニット11は、図2A及び図2Bに示されるように、3個のインクジェットヘッド37と、3個のインクジェットヘッド37を支持するプレート39と、を備える。3個のインクジェットヘッド37には、対応するインクコンテナ33からインクが供給される。
【0025】
インクジェットヘッド37について、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3Aはインクジェットヘッド37を示す側面図、図3Bはインクジェットヘッド37を示す下面図である。インクジェットヘッド37は、シートSの搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に長い直方体形状を有している。インクジェットヘッド37は、インクが供給される多数のノズル(図示省略)と、ノズルごとに設けられた圧電素子(図示省略)と、を備えている。多数のノズルの吐出口は、インクジェットヘッド37の下面に開口している。圧電素子が駆動されることで、ノズル内のインクがノズルの吐出口から下方に吐出される。図3Bに示されるように、吐出口が開口した領域をノズル面Nとする。
【0026】
3個のインクジェットヘッド37は、図2Aに示されるように、幅方向に沿って千鳥状に配置されて、図3Aに示されるように、下端部がプレート39から突き出るようにプレート39に支持されている。
【0027】
各ヘッドユニット11は、ヘッドユニット移動機構41(図1図2A及び図2Bには図示省略、図10参照)によって、印字位置と退避位置との間を上下方向に移動可能に支持されている。印字位置は、各ヘッドユニット11のインクジェットヘッド37のノズル面Nが、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25と、所定の間隔(例えば1mm)を開けて対向する位置である(図1参照)。退避位置は、搬送ベルト25に対して印字位置よりも上方に離間して、搬送ユニット9の上方に、後述するメンテナンス装置13のキャップユニット51及びワイプユニット53が収容可能な空間を形成する位置である。印字位置を、ヘッドユニット11のホームポジションとする。ヘッドユニット移動機構41(図10参照)は、制御部201(図1図10参照)と電気的に接続されている。
【0028】
次に、メンテナンス装置13について、図4及び図5も参照して説明する。図4はキャップユニット51を示す斜視図、図5はワイプユニット53及び洗浄液供給機構57を示す斜視図である。メンテナンス装置13は、キャップユニット51(図4参照)と、ワイプユニット53(図5参照)と、キャップユニット51とワイプユニット53を収容するハウジング55(図2A及び図2B参照)と、ワイプユニット53に洗浄液を供給する洗浄液供給機構57(図5参照)と、を備えている。メンテナンス装置13は、ヘッドユニット11毎に設けられて、対応するヘッドユニット11に搬送方向に隣り合う配置されている。この例では、図2A及び図2Bに示されるように、対応するヘッドユニット11の左側(シートSの搬送方向の下流側)に隣り合って配置されている。
【0029】
まず、ハウジング55(図2B参照)について説明する。ハウジング55は、幅方向に長い直方体状を有している。ハウジング55の上面及び右側面(対応するヘッドユニット11に対向する面)は開口している。なお、メンテナンス装置13は、対応するヘッドユニット11の右側(搬送方向の上流側)に設けられてもよい。この場合は、ハウジング55の左側面が開口する。
【0030】
次に、キャップユニット51について、図4を参照して説明する。キャップユニット51は、支持プレート61と、支持プレート61に支持された3つのキャップ63と、を備えている。支持プレート61は、幅方向に長い矩形状に形成されている。3つのキャップ63は、ヘッドユニット11の3個のインクジェットヘッド37と同様に、幅方向に沿って千鳥に配置されている。各キャップ63は、上面が開口した凹部63aと、凹部63aの底部に設けられた排出口(図示省略)と、を備える。凹部63aは、1つのインクジェットヘッド37のノズル面Nを包囲する大きさを有する。
【0031】
キャップユニット51は、図2Bに示されるように、ハウジング55の下部空間に収容されている。キャップユニット51は、キャップユニット移動機構(図示省略)によって、ハウジング55に収容される離間位置(図2B参照)と、ハウジング55の開口を通って右方向に引き出されたキャップ位置と、の間を移動可能である。
【0032】
次に、ワイプユニット53及び洗浄液供給機構57について、図5を参照して説明する。まず、ワイプユニット53について説明する。ワイプユニット53は、支持プレート71と、3つのキャリッジ73と、3つの洗浄液供給部材75と、3つの廃液トレイ77と、を備えている。
【0033】
支持プレート71には、幅方向に沿った3つの一対のレール79が設けられている。3つの一対のレール79は、ヘッドユニット11の3個のインクジェットヘッド37と同様に、幅方向に沿って千鳥に配置されている。
【0034】
次に、キャリッジ73と洗浄液供給部材75とについて、図6A及び図6B図7及び図7Bも参照して説明する。図6Aはキャリッジ73及び洗浄液供給部材75を示す斜視図、図6Bはキャリッジ73及び洗浄液供給部材75を示す側面図である。図7A及び図7Bは洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の先端部91bを模式的に示す下面図及び側面図である。
【0035】
まず、キャリッジ73について説明する。図6A及び図6Bに示されるように、キャリッジ73は、移動体81と、ブレード83と、ブレード83を支持すると共に移動体81に支持されるホルダー85と、を有している。移動体81は、支持プレート71に形成されたレール79に係合して、キャリッジ移動機構87(図6A図6Bには図示省略、図10参照)によって、移動開始位置と移動終了位置との間をレール79に沿って移動可能である。移動開始位置及び移動終了位置は、キャリッジ73が、幅方向(前後方向)において、インクジェットヘッド37のノズル面Nの両外側に対応する位置である。この例では、移動開始位置はノズル面Nよりも後方に対応する位置であり、移動終了位置はノズル面Nよりも前方に対応する位置である。移動開始位置から移動終了位置へ向かう方向(この例では、後ろから前へ向かう方向)を、キャリッジ73の移動方向X1とする。移動開始位置を、キャリッジ73のホームポジションとする。キャリッジ移動機構87は、制御部201(図10参照)と電気的に接続されている。
【0036】
ブレード83は、ノズル面Nの幅よりも広い幅を有する板状の部材であり、可撓性を有する樹脂等で作成されている。ブレード83は、移動方向X1において上流側に傾斜すると共に移動方向X1(前後方向)と交差するブレード幅方向X2(左右方向)において傾斜した姿勢で、下端部がホルダー85に支持されている。ホルダー85の下端部は、ブレード83よりも移動方向X1の上流側で、移動体81に回動軸89(図6B参照)を中心として回動可能に支持されている。これにより、ブレード83は、回動軸89を中心として、ホルダー85と共に移動方向X1の上流側及び下流側に回動可能である。また、ホルダー85は、ブレード幅方向X2に離間して、上方に延びる一対のアーム85aを有している。
【0037】
次に、洗浄液供給部材75について説明する。洗浄液供給部材75は、キャリッジ73とは別に設けられ、洗浄液収容部材91と、洗浄液収容部材91を支持して支持プレート71に支持される一対のホルダー93と、を有している。洗浄液収容部材91は矩形の板状部材であり、上面は平坦に形成されている。洗浄液収容部材91の下面には、ブレード幅方向X2に沿って凹部91aが形成されている。凹部91aの、移動方向X1の下流側の側面は、移動方向X1の下流側に向かって傾斜している。洗浄液収容部材91は、凹部91aよりも移動方向X1の下流側の先端部91bと、上流側の基端部91cと、を有している。先端部91bは、基端部91cよりも厚さが薄く形成されている。
【0038】
先端部91bには、洗浄液が収容される中空部が設けられている。また、先端部91bの下面は平面状に形成されている。先端部91bの天板には、上下方向に貫通して中空部に連通する供給孔95が開けられており、先端部91bの底板には、上下方向に貫通して中空部に連通する複数個の排出孔97が開けられている。複数個の排出孔97は、ブレード幅方向X2に沿って配置され、先端部91bの下面に開口している。中空部の底面には、メッシュ部材(図示省略)が設けられている。なお、メッシュ部材は必ずしも設ける必要はない。さらに、先端部91bの下面には、移動方向X1の下流側に突出するシート部材99が貼り付けられている。シート部材99には、先端部91bの複数個の排出孔97と連通する貫通孔101(図6B参照)が開けられている。貫通孔101は、シート部材99の下面に開口している。
【0039】
図7A及び図7Bに示されるように、先端部91bの下面には、シート部材99の各貫通孔101の開口101aよりも移動方向X1の上流側(後側)に一つの凸部92が形成されている。凸部92の先端面は半球状(R面状)に形成されている。
【0040】
一対のホルダー93のそれぞれは、側面から見てL字の板状部材である。ホルダー93の一方の端部は、洗浄液収容部材91の基端部91cの側面に回動軸103を中心とした所定の範囲内を回動可能に支持されている。ホルダー93の他方の端部は、移動開始位置に移動したキャリッジ73よりも移動方向X1の上流側において、支持プレート71に回動軸105(図6B参照)を中心として回動可能に支持されている。詳細には、回動軸105は、支持プレート71に設けられた凹部71aに収容されている。これにより、ホルダー93は回動軸105を中心として上下方向に回動可能であり、上方に回動することで、洗浄液収容部材91がホルダー93と共に上方に回動し、下方に回動することで、洗浄液収容部材91がホルダー93と共に下方に回動する。回動軸105にはねじりコイルバネ(図示省略)が外嵌している。ねじりコイルバネは、ホルダー93を下方に回動するように付勢している。また、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aは、洗浄液収容部材91の基端部91cと一対のホルダー93との間を通って上方に延びている。
【0041】
図8A及び図8Bを参照して、キャリッジ73の移動について説明する。図8A及び図8Bはワイプユニット53を示す斜視図である。図8Aは移動開始位置に移動したキャリッジ73を示し、図8Bは移動終了位置に移動したキャリッジ73を示す。図8Aに示されるように、キャリッジ73が移動開始位置に移動すると、ブレード83の先端部は、洗浄液収容部材91の凹部91aに収容される(図6A及び図6Bも参照)。キャリッジ73は、キャリッジ移動機構87(図10参照)によって、移動開始位置から、図8Bに示される移動終了位置へ移動する。ここで、洗浄液供給部材75は、前述のように支持プレート71に移動不能に支持されているので、キャリッジ73が移動しても、洗浄液供給部材75は移動しない。
【0042】
図2Bに示されるように、ワイプユニット53は、ハウジング55の上部空間に収容されている。ワイプユニット53は、ワイプユニット移動機構111(図2Bには図示省略、図10参照)によって、ハウジング55に収容される離間位置(図2B参照)から、ハウジング55の開口から右方向に引き出されたワイプ位置に移動可能である。後述するように、ワイプ位置においては、ワイプユニット53の各ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nに接触可能であり、離間位置においては、ワイプユニット53の各ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nから離間する。離間位置を、ワイプユニット53のホームポジションとする。 別の表現をすれば、ワイプユニット53が移動することにより、洗浄液供給部材75は、ノズル面Nから離間した離間位置と、離間位置よりもノズル面Nに近く、ブレード83がノズル面Nに接触して移動するワイプが行われる際の洗浄液供給部材75の位置であるワイプ位置と、の間を移動する。ワイプユニット移動機構111は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0043】
次に、洗浄液供給機構57について、図5と、図9A及び図9Bを参照して説明する。図9A及び図9Bは、離間位置と供給位置とに移動した洗浄液供給機構57を示す側面図である。
【0044】
洗浄液供給機構57は、ワイプユニット53の各洗浄液供給部材75に、洗浄液(例えば、水)を供給する供給部を備える。図5に示されるように、洗浄液供給機構57は、支持プレート121と、支持プレート121に支持された3つの供給管123と、を備えている。供給管123は、本発明の供給部の一例である。支持プレート121は、ワイプユニット53の支持プレート71と同様の大きさを有する矩形状の部材である。3つの供給管123は、ワイプユニット53の3つの洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の供給孔95に上方から対向するように配置されて、下端部が支持プレート121から下方に突き出ている。3つの供給管123の上端部は、チューブ125に接続されている。各チューブ125は、ポンプ127を介して洗浄液タンク129に接続している。ポンプ127が駆動されることで、洗浄液タンク129から洗浄液が汲み上げられ、チューブ125を通って各供給管123に供給されるようになっている。ポンプ127は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0045】
さらに、図9A及び図8Bに示されるように、支持プレート121の下面には、ブレード幅方向X2における供給管123の両側に、一対の円筒状の位置決めピン131が形成されている。さらに、支持プレート121の下面には、各供給管123よりも移動方向X1の上流側に、ブレード幅方向X2に離間した一対の直方体状の突部133が形成されている。
【0046】
洗浄液供給機構57は、昇降機構137(図5図9A及び図9Bには図示省略、図10参照)によって、供給位置(図9A参照)と離間位置(図9B参照)とに上下方向に移動可能に支持されている。図9Aに示されるように、供給位置においては、一対の位置決めピン131が、洗浄液収容部材91の先端部91bの上面に当接し、供給管123の下端部が、洗浄液収容部材91の供給孔95に挿入される。さらに、一対の突部133が、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aを押し下げる。これにより、ホルダー85が移動体81に対して回動して、ブレード83が移動方向X1の上流側に傾斜する。供給位置を、洗浄液供給機構57のホームポジションとする。また、図9Bに示されるように、離間位置においては、各供給管123の下端部が供給孔95から上方に離間する。昇降機構137は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0047】
図5に示されるように、廃液トレイ77は、キャリッジ73の移動領域を覆う大きさを有し、移動領域の下方に対応するように支持プレート71に支持されている。
【0048】
次に、図10を参照して、制御部201について説明する。図10は制御部201のブロック図である。制御部201は、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11を印字位置と退避位置とを含む複数の位置に上下方向に沿って移動させる。制御部201は、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を、移動開始位置と移動終了位置とを間を移動させる。制御部201は、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53をワイプ位置と離間位置との間を、左右方向に沿って移動させる。制御部201は、ポンプ127を動作させて、洗浄液タンク129から洗浄液の汲み上げを開始及び汲み上げを停止させる。また、制御部201は、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を供給位置と離間位置とに上下方向に沿って移動させる。
【0049】
上記構成を有するインクジェット記録装置1において、画像形成動作とメンテナンス装置13におけるワイプ動作について、図11A図16を主に参照して説明する。図11A図16は、ワイプユニット53とインクジェットヘッド37とを模式的に示す図であり、各図の左側の図は平面図、各図の右側の図は正面図を示す。キャップ動作については説明を省略する。
【0050】
画像形成動作及びワイプ動作は、制御部201が各移動機構やポンプ等を制御することで実行される。初期状態において、ヘッドユニット11、ワイプユニット53、キャリッジ73、洗浄液供給機構57は、ホームポジションに移動している。すなわち、ヘッドユニット11は印字位置に移動し、ワイプユニット53は離間位置に移動し、キャリッジ73は移動開始位置に移動し、洗浄液供給機構57は供給位置に移動している。
【0051】
まず、画像形成動作について説明する。外部のコンピューター等からインクジェット記録装置1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー7によって給紙カセット5から搬送路19にシートSが送り出される。送り出されたシートSは、レジストローラー対23によって斜行が補正された後で、所定のタイミングで搬送ユニット9に送り出される。シートSは、搬送ベルト25に引き付けられて搬送方向に搬送される。この際、制御部201がシートSの搬送と同期させてヘッドユニット11の各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。画像が形成されたシートSは、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0052】
このように、画像形成動作時、ヘッドユニット11は印字位置に移動している。ヘッドユニット11の各インクジェットヘッド37には、図3Bに示されるように、洗浄液を供給する構成が備えられていない。したがって、洗浄液が誤ってシートSに接触するような不具合が発生しない。
【0053】
次に、ワイプ動作について説明する。図11Aに示されるように、初期状態において、ワイプユニット53は離間位置に移動し、キャリッジ73(ブレード83)は移動開始位置に移動し、洗浄液供給機構57は供給位置に移動している。すなわち、洗浄液供給機構57の各供給管123の下端部が、ワイプユニット53の各洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の供給孔95に挿入されている。さらに、洗浄液供給機構57の一対の突部133が、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aを押し下げ、ブレード83が移動方向X1の上流側に傾斜している(図9A参照)。
【0054】
次に、制御部201はポンプ127を動作させる。これにより、洗浄液タンク129から洗浄液が汲み上げられ、チューブ125を通って各供給管123に供給される。制御部201は、所定時間後ポンプ127の駆動を停止する。各供給管123に供給された洗浄液は、供給孔95から洗浄液収容部材91の中空部に収容される。収容された洗浄液は、メッシュ部材に保持され、洗浄液収容部材91の先端部91bの排出孔とシート部材99の貫通孔101を通り、貫通孔101の開口101aから、下方に凸のメニスカスを形成する。
【0055】
この際、開口101aから洗浄液が漏れ出た(排出された)場合、洗浄液は、シート部材99や先端部91bの下面を伝って凸部92に集まり、凸部92にぶら下がった状態で保持される。すなわち、凸部92が存在しない場合、開口101aから漏れ出た洗浄液は、シート部材99や先端部91bの下面に沿って比較的自由に移動しやすい。このため、下面が傾斜したような場合、任意の一カ所に集まり、そのまま落下しやすくなる。しかし、凸部92を設けた場合、漏れ出た(排出された)洗浄液が凸部92に集まるので、ブレード幅方向X2において洗浄液を均一に分散して保持させることができる。
【0056】
次に、制御部201は、図11Bに示されるように、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を供給位置から離間位置へ上昇させる。その後、図12Aに示されるように、制御部201は、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を印字位置から退避位置へ移動させる。その後、図12Bに示されるように、制御部201は、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53を離間位置からワイプ位置へ移動させる。すなわち、ワイプユニット53は洗浄液供給機構57の下方から離間する。この際、ワイプユニット53は、シート部材99の貫通孔101の開口101aに、下方に凸のメニスカスを形成した洗浄液を保持したまま移動する。
【0057】
次に、制御部201は、図13Aに示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、各インクジェットヘッド37の下面(ノズル面N)が、ワイプユニット53の各洗浄液収容部材91の先端部91bの下面と面一となる高さまでヘッドユニット11を下降させる。すると、ワイプユニット53の各キャリッジ73は、移動開始位置(ノズル面Nよりも移動方向X1の上流側の位置)に位置し、インクジェットヘッド37の下面に各キャリッジ73のシート部材99(図6A及び図6B参照)の上面が当接する。このシート部材99により、インクジェットヘッド37の下面と洗浄液収容部材91の先端部91bの下面との間の隙間が封止される。
【0058】
次に、制御部201は、図13Bに示されるように、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を移動開始位置から移動終了位置へ移動させる。すると、キャリッジ73と共にブレード83が移動する。ブレード83は、まず、洗浄液収容部材91の凹部91aの側面に沿って移動方向X1の上流側に弾性変形して湾曲し、先端部91bの下面に達すると、まず、凸部92からぶら下がった洗浄液を拭き取り、その後、開口101aに保持された凸状のメニスカスを形成した洗浄液を拭き取る。この際、洗浄液収容部材91の先端部91bがブレード83で押し上げられ、洗浄液収容部材91がホルダー93に対して回動軸103を中心として上方に回動すると共に、ホルダー93が回動軸105を中心として上方に回動する(図6A及び図6B参照)。
【0059】
その後、ブレード83は、洗浄液と共にシート部材99を介してインクジェットヘッド37のノズル面Nに沿って移動する。これにより、ノズル面Nに付着したインクが拭き取られる。このように、ヘッドユニット11が移動したワイプ位置は、ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nに接触する位置である。拭き取られたインクや洗浄液は、下方の廃液トレイ77に落下する。なお、前述のように、洗浄液供給部材75は移動してない。また、ブレード83がシート部材99から離間すると、ホルダー93はねじりコイルバネで付勢されて下方に回動する。
【0060】
次に、制御部201は、図14Aに示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を退避位置へ移動させる。これにより、各インクジェットヘッド37のノズル面Nがブレード83から上方へ離間する。その後、制御部201は、図14Bに示されるように、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を移動終了位置から移動開始位置へ戻す。その後、前述の拭き取り動作を繰り返してもよい。
【0061】
拭き取り動作が終了した後、制御部201は、図15Aに示されるように、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53をワイプ位置から離間位置(ホームポジション)へ移動させ、その後、制御部201は、図15Bに示されるように、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を離間位置から供給位置(ホームポジション)へ下降させる。次に、制御部201は、図16に示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を退避位置から印字位置(ホームポジション)へ下降させる。
【0062】
上記説明したように、本発明によれば、洗浄液供給面の開口101aから漏れ出た(排出された)洗浄液が凸部92に集まり、凸部92からぶら下がって保持される。このため、漏れ出た(排出された)洗浄液が任意の方向に移動して落下するようなことがない。また、凸部92は、ブレード幅方向X2に沿って配置されているので、ブレード幅方向X2に洗浄液を均一に分散させて保持できる。したがって、ブレード幅方向X2において均等な量の洗浄液を供給できる。
【0063】
また、凸部92の先端面は半球状であるので、ブレード83が接触した際に、ブレード83が損傷しにくい。さらに、ブレード83は、凸部92に保持された洗浄液を拭き取った後で、開口101aに保持された洗浄液を拭き取る。凸部92に保持された洗浄液の量は、開口101aに保持された洗浄液の量よりも少ない。このため、ブレード83が、比較的少ない量の洗浄液を抱えた状態で凸部92を乗り越えることになる。凸部92を乗り越える際、ブレード83と凸部92との間には隙間があくが、抱えている洗浄液の量が比較的少ないので、洗浄液が隙間から漏れ出しにくい。
【0064】
図17A図17Bを参照して、洗浄液収容部材91の変形例について説明する。図17A図17Bは、洗浄液収容部材91の先端部91bの下面図である。
【0065】
図17Aに示されるように、開口101aに対して複数個の凸部92が設けられてもよい。例えば、3個の凸部92を、移動方向X1の上流側に一つ、下流側に二つ配置する。この場合、複数の凸部92に洗浄液がまとまって集まりやすくなる。また、図17Aでは、3個の凸部92が1つの群を成しており、群は全体で4つある。隣り合う群において最も近くに位置にしている凸部92の間の距離は、群の中において隣り合って配置されている凸部92の間の距離よりも長くなっている。このようにすると、洗浄液は群ごとにまとまって集まりやすくなる。さらに、凸部92間の空間にも洗浄液を保持することができる。あるいは、図17Bに示されるように、凸部92が、ブレード幅方向X2に隣り合う開口101aの間に設けられてもよい。あるいは、複数の凸部を、開口101aの周囲に設けてもよい。これらの場合も、開口101aから漏れ出た(排出された)洗浄液が凸部92に集まるので、漏れ出た(排出された)洗浄液を確実にブレード83で拭き取ることができる。
【0066】
また、ワイプユニット53がブレード83と洗浄液供給部材75とを備え、画像形成動作時には離間位置に移動している。つまり、ヘッドユニット11に洗浄液供給部材75が備えられていないので、画像形成動作時にシートSが誤って上方に湾曲したような場合でも、洗浄液供給部材75から供給される洗浄液がシートSに付着したり、洗浄液供給部材75にシートSが接触したりすることがない。したがって、洗浄液によるシートSの汚染やシートSによる洗浄液供給部材75の損傷を防止できる。
【0067】
また、洗浄液供給部材75に洗浄液を供給する洗浄液供給機構57の供給管123は、供給位置と離間位置とに上下方向に移動するのみで、左右方向には移動しない。このように、供給管123の移動距離が比較的短いので、供給管123に接続するチューブ125が折れ曲がって供給不良になることを抑制できる。さらに、狭い空間内でチューブ125の引き回しを行うことができる。
【0068】
また、ワイプ位置において、洗浄液供給部材75の洗浄液供給面(下面)とインクジェットヘッド37のノズル面Nとが面一であるので、ワイプユニット53のキャリッジ73を移動させた際に、洗浄液供給面からノズル面Nへブレード83を円滑に接触させることができる。
【0069】
さらに、ワイプユニット53は、洗浄液供給部材75の洗浄液供給面とノズル面Nとの間の隙間を塞ぐシート部材99を備えるので、ワイプユニット53とインクジェットヘッド37とが多少位置ずれしたような場合でも、ブレード83によって、洗浄液供給面からノズル面Nへシート部材99を介して洗浄液を確実に供給することができる。
【0070】
本実施形態では、4個のヘッドユニット11がインクの色毎に設けられ、メンテナンス装置13がヘッドユニット11毎に設けられている例について説明した。しかし、4個のヘッドユニット11が一体に設けられ、メンテナンス装置13が、4個のキャップユニット51と4個のワイプユニット53とが一体に設けられるように構成されてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ヘッドユニット11が印字位置と退避位置とに上下方向に移動し、搬送ユニット9が移動不能である例について説明した。しかし、搬送ユニット9が、印字位置と退避位置とに上下方向に移動し、搬送ユニット9が移動不能であってもよい。この場合は、メンテナンス装置13は、搬送ユニット9が退避位置に移動した後に形成される空間に移動可能に設けられる。
【0072】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェット記録装置
37 インクジェットヘッド
75 洗浄液供給部材
83 ブレード
92 凸部
101a 開口
123 供給管(供給部)

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図17B