IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ACS株式会社の特許一覧

特開2024-157129カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム
<>
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図1
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図2
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図3
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図4
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図5
  • 特開-カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157129
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】カッティング装置、カッティング方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20241030BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20241030BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B23Q15/00 301J
G05B19/4093 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071276
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】513161689
【氏名又は名称】ACS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳史
【テーマコード(参考)】
3C024
3C269
【Fターム(参考)】
3C024AA07
3C269BB05
3C269CC02
3C269CC07
3C269EF02
3C269EF56
3C269GG01
(57)【要約】
【課題】従来に比して更に切断時間を短縮することができるカッティング装置、カッティング方法、及びプログラムを提案する。
【解決手段】カッティング装置1は、材料WにおけるカットラインLが占める領域が中央境界予定線CLによって第一領域A1と第二領域A2に区画され、且つ第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さが略同一である状態において、制御手段5は、第一移動手段3に対して、第一領域A1における第一端部E1から中央境界予定線CLに向かって第一切断手段SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送るとともに、第二移動手段4に対して、中央境界予定線CLから第二領域A2における第二端部E2に向かって第二切断手段SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに載置した材料を切断するカッティング装置であって、
前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、
前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、
前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、
前記制御手段は、
前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るカッティング装置。
【請求項2】
前記カットラインは、少なくとも一つの包絡部を含んでいて、
前記制御手段は、
前記第一領域に含まれる前記カットラインの長さと前記第二領域に含まれる前記カットラインの長さが略同一であって、且つ前記包絡部と前記中央境界予定線が交差せずに該包絡部が前記第一領域及び前記第二領域の何れかに含まれるように該中央境界予定線の位置を設定する境界予定線設定手段と、
前記第一領域における前記包絡部をカットする順番を、前記第一端部から前記第二端部に向かう順に設定し、且つ前記第二領域における前記包絡部をカットする順番を、前記第一端部から前記第二端部に向かう順に設定するカット順設定手段と、
前記第一移動手段に対して、前記カット順設定手段で設定した順に前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記カット順設定手段で設定した順に前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る指令手段と、を備える請求項1に記載のカッティング装置。
【請求項3】
ベースに載置した材料を切断するためのカッティング方法であって、
前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、
前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、
前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、
前記制御手段は、
前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る工程を有するカッティング方法。
【請求項4】
コンピュータで実行され、ベースに載置した材料を切断するカッティング装置のためのプログラムであって、
前記カッティング装置は、
前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、
前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、
前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、
前記制御手段は、
前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る、ようにコンピュータを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースに載置した材料を切断するカッティング装置、カッティング方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベースに載置した材料を切断する装置として、特許文献1には、第一工作ヘッドを移動させる第一移動機構と第二工作ヘッドを移動させる第二移動機構とを備える工作装置が示されている。
【0003】
特許文献1の装置は、第一移動機構と第二移動機構を移動させた際にこれらが衝突(機械的干渉)しないようにするべく、同文献の図8に示されているように材料を切断する領域を3つ(第一工作領域、第二工作領域、第三工作領域)に分割している。ここで第一工作領域は、第一移動機構で第一工作ヘッドを移動させて材料を切断する領域であり、第二工作領域は、第二移動機構で第二工作ヘッドを移動させて材料を切断する領域である。また第一工作領域と第二工作領域は、第一移動機構と第二移動機構が同時に移動しても互いに機械的干渉が生じない範囲となっている。なお第三工作領域は、第一工作領域と第二工作領域を除いた範囲であって、第一工作領域と第二工作領域で材料の切断を行った後、第一移動機構又は第二移動機構によって材料の切断を行う領域である。
【0004】
このように、材料を切断する領域を第一工作領域、第二工作領域、第三工作領域に分割することにより、第一工作領域で材料の切断を行うと同時に第二工作領域で材料の切断を行うことができるため、材料を切断する時間を短縮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4425677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1の装置では、第一工作領域と第二工作領域では材料の切断を同時に行えるものの、その後に行う第三工作領域での切断は、第一移動機構と第二移動機構の何れか一方のみでしか行うことができない。すなわち特許文献1の装置は、2つの工作ヘッドをそれぞれ移動させる2つの移動機構を備えているが、1つの工作ヘッドを1つの移動機構で移動させる場合の切断時間に対して、これを半分近くの時間にすることができる訳ではない。
【0007】
このような点に鑑み、本発明は、従来に比して更に切断時間を短縮することができるカッティング装置、カッティング方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースに載置した材料を切断するカッティング装置であって、前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、前記制御手段は、前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るものである。
【0009】
このようなカッティング装置において、前記カットラインは、少なくとも一つの包絡部を含んでいて、前記制御手段は、前記第一領域に含まれる前記カットラインの長さと前記第二領域に含まれる前記カットラインの長さが略同一であって、且つ前記包絡部と前記中央境界予定線が交差せずに該包絡部が前記第一領域及び前記第二領域の何れかに含まれるように該中央境界予定線の位置を設定する境界予定線設定手段と、前記第一領域における前記包絡部をカットする順番を、前記第一端部から前記第二端部に向かう順に設定し、且つ前記第二領域における前記包絡部をカットする順番を、前記第一端部から前記第二端部に向かう順に設定するカット順設定手段と、前記第一移動手段に対して、前記カット順設定手段で設定した順に前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記カット順設定手段で設定した順に前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る指令手段と、を備えることが好ましい。
【0010】
また本発明は、ベースに載置した材料を切断するためのカッティング方法であって、
前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、前記制御手段は、前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る工程を有するカッティング方法でもある。
【0011】
また本発明は、コンピュータで実行され、ベースに載置した材料を切断するカッティング装置のためのプログラムであって、前記カッティング装置は、前記ベースに対して第一切断手段を移動させる第一移動手段と、前記ベースに対して前記第一移動手段と略同速度で第二切断手段を移動させる第二移動手段と、前記第一移動手段及び前記第二移動手段に指令を送り前記第一切断手段及び前記第二切断手段をカットラインに沿って移動させて前記材料を所定の形状に切断する制御手段と、を備え、前記材料における前記カットラインが占める領域が中央境界予定線によって第一領域と第二領域に区画され、且つ該第一領域に含まれる該カットラインの長さと該第二領域に含まれる該カットラインの長さが略同一である状態において、前記制御手段は、前記第一移動手段に対して、前記第一領域における前記中央境界予定線に対向する第一端部から該中央境界予定線に向かって前記第一切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送るとともに、前記第二移動手段に対して、前記中央境界予定線から前記第二領域における該中央境界予定線に対向する第二端部に向かって前記第二切断手段を前記カットラインに沿って移動させるように指令を送る、ようにコンピュータを実行させるプログラムでもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカッティング装置では、上記のように、第一領域に含まれるカットラインの長さと第二領域に含まれるカットラインの長さが略同一である状態において、制御手段は、第一移動手段に対して第一端部から中央境界予定線に向かって第一切断手段を移動させるように指令を送るとともに、第二移動手段に対して中央境界予定線から第二端部に向かって第二切断手段を移動させるように指令を送るため、材料を切断する際の第一移動手段と第二移動手段との衝突を防止し、また1つの切断手段を1つの移動機構で移動させる場合に比して切断時間を半分近くに短縮することができる。
【0013】
ところで、カットラインに包絡部が含まれる場合、この包絡部が第一領域と第二領域の両方に跨がっていると、第一切断手段で切断した部分と第二切断手段で切断した部分境界でカットラインが一致しないおそれがある。これに対して上記のような境界予定線設定手段、カット順設定手段、及び指令手段を備えるカッティング装置によれば、包絡部を第一切断手段又は第二切断手段の何れか一方のみで切断することができるため、このようなカットラインの不一致が防止されて切断品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従うカッティング装置の一実施形態を概略的に示した平面図である。
図2図1の第一移動手段を側面視で示した概略図である。
図3図1の第一移動手段を正面視で示した概略図である。
図4】カッティング装置のブロック図である。
図5】カットラインを付して示した材料の平面図である。
図6】第一領域に含まれるカットラインと第二領域に含まれるカットラインの分散状態を確認する方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従うカッティング装置、カッティング方法、及びプログラムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した本実施形態のカッティング装置1は、材料Wを、図2図3に示した切断刃Sによって切断するものである。まず、材料Wと切断刃Sについて説明する。
【0016】
材料Wは、本実施形態では平面視において矩形状をなし、平板状に形成されたものである。なお、図示した材料Wの形状は一例であって、これに限定されるものではない。また材料Wの材質は、段ボールのような紙製品や、薄板状の合成樹脂板あるいは金属板、更には比較的厚みのあるポリエチレンや発泡材など、種々のものが含まれる。本実施形態の材料Wは、図5に示すカットラインLに沿って切断されるものとする。カットラインLは、図示した円形、楕円形、正方形、長方形のように始点と終点が一致し且つ途中で自分自身と交わることのない単純閉曲線状の閉じたラインになる複数の包絡部LE(本実施形態においては、包絡部LEa、包絡部LEb・・・包絡部LEj・・・)と、図示した波線のように始点と終点が離れて開いたラインになる複数の解放部LR(本実施形態においては、解放部LRa、解放部LRb)とで構成されている。なお、図示したカットラインLの形状、長さ、位置等は一例であって、適宜変更可能である。またカットラインLは、包絡部LEのみで構成されていてもよいし、解放部LRのみで構成されていてもよい。
【0017】
切断刃Sは、図2図3に示すように平刃状になるものであり、図3に示すように平板状になる延在面S1の側縁部には、材料Wを切断する刃先S2が設けられている。切断刃Sは、後述するホルダー29に対して取り外し可能であって、ホルダー29に保持される部位から先端の切先S3までの長さが比較的長い長尺の切断刃や、長さの短い短尺の切断刃の他、刃先S2が延在面S1の両側に設けられた両刃のものや片側だけに設けられた片刃のものなど、種々の切断刃Sを取り付けることができる。
【0018】
次に、図示したカッティング装置1について説明する。本実施形態のカッティング装置1は、ベース2、第一移動手段3、第二移動手段4を備えている。第一移動手段3と第二移動手段4は、上述した切断刃Sを保持している。なお、本実施形態の第一移動手段3と第二移動手段4が保持する切断刃Sは同一であるが、第一移動手段3と第二移動手段4で異なる切断刃Sを用いてもよい。第一移動手段3が保持する切断刃Sは、本明細書等における「第一切断手段」に相当し、第二移動手段4が保持する切断刃Sは、本明細書等における「第二切断手段」に相当する。
【0019】
ベース2は、材料Wを載置するものであって、材料Wを載置する表面は、本実施形態では図1に示したXYZ直交座標系に対して、そのXY平面に平行に延在しているものとする。なお、本実施形態でXY平面は水平方向に延在するものであり、Z方向は高さ方向である。またθ方向とは、図3に示すようにZ軸を周回する方向であり、α方向とは、図2に示すようにX軸を周回する方向である。
【0020】
ベース2の表面には、負圧によって材料Wを吸着保持するための吸着穴(不図示)が設けられている。またベース2には、カッティング装置1に設けられる各種手段を駆動するための電源、エア源等に接続するための付帯設備の他、カッティング装置1を制御するための制御手段5(図4参照)が設けられている。制御手段5は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)やPC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータで具現化される。なお、コンピュータの内部記憶装置やこれに接続される外部記憶装置(以下、記憶手段6と称する)には、カッティング装置1の動作を制御するプログラムが記憶されていて、制御手段5はこのプログラムに基づいてカッティング装置1の動作を制御する。また記憶手段6には、カットラインLに関する情報も記憶されていて、制御手段5は、記憶手段6に記憶されているカットラインLに関する情報を読み出し、この情報に基づいて第一移動手段3と第二移動手段4を移動させ、第一移動手段3が保持する切断刃Sと第二移動手段4が保持する切断刃Sで材料Wを切断する。
【0021】
図4に示すように本実施形態の制御手段5は、境界予定線設定手段5a、分散確認手段5b、カット順設定手段5c、指令手段5dを備えている。なお、境界予定線設定手段5a、分散確認手段5b、カット順設定手段5c、指令手段5dに関する詳細な内容は後述する。
【0022】
第一移動手段3は、ベース2に対して第一移動手段3で保持した切断刃Sを移動させる機能を有する。本実施形態の第一移動手段3は、ベース2に対して切断刃Sを、X方向、Y方向、Z方向、θ方向、α方向に移動させることができる。そして第二移動手段4は、ベース2に対して第二移動手段4で保持した切断刃Sを移動させる機能を有していて、本実施形態では第一移動手段3のように保持した切断刃SをX方向、Y方向、Z方向、θ方向、α方向に移動させる機能を有する。なお、本実施形態における第二移動手段4の構成は図示した第一移動手段3と同一であるため、第二移動手段4に関する詳細な説明は省略する。
【0023】
本実施形態の第一移動手段3は、Y方向に延在するとともにベース2に対してX方向に間隔をあけて設けられる一対のY軸レール(不図示)と、Y軸レールを摺動するY軸ナット(不図示)と、Y軸ナットに保持されるX軸フレーム10(図2参照)と、X方向に延在するとともにX軸フレーム10に対してZ方向に間隔をあけて設けられる一対のX軸レール11と、X軸レール11を摺動するX軸ナット12と、X軸ナット12に保持されるX軸移動ベース13を含んで構成されている。また第一移動手段3は、X軸フレーム10やX軸移動ベース13を移動させるための駆動手段(不図示)も備えている。本実施形態の駆動手段はサーボモータであるが、他のモータ(ステッピングモータなど)を用いてもよい。また、第一移動手段3で用いられる直動機構は、上述したレールとナットとの組み合わせに限られず、タイミングベルトとプーリを利用した機構、ボールねじを用いた機構、ラックとピニオンを利用した機構を用いてもよい。
【0024】
また第一移動手段3は、Z方向に延在するとともにX軸移動ベース13に対してX方向に間隔をあけて設けられる一対のZ軸レール14と、Z軸レール14を摺動するZ軸ナット15と、Z軸ナット15に保持されるZ軸移動ベース16と、Z軸モータ17と、Z軸モータ17の回転によってZ軸移動ベース16を移動させるボールねじ18を備えている。
【0025】
更に第一移動手段3は、Z方向に間隔をあけて設けられる一対のベアリング19と、ベアリング19に回転可能に支持されるθ回転軸20と、θ回転軸20に保持されるθ軸ベース21(図3参照)と、θ回転軸20に取り付けられるθ軸プーリ22と、タイミングベルトを介してθ軸プーリ22を回転させるθ軸モータ23を備えている。
【0026】
また第一移動手段3は、図3に示すようにθ軸ベース21に回転可能に支持されるα回転軸24と、α回転軸24に取り付けられるα軸プーリ25と、図2に示すようにタイミングベルトを介してα軸プーリ25を回転させるα軸モータ26と、α回転軸24とともに回転するスプラインケース27と、スプラインケース27に対して進退可能に設けられるスプライン軸28と、スプライン軸28の先端に設けられ、切断刃Sを保持するホルダー29を備えている。
【0027】
更に第一移動手段3は、切断刃Sをその長手方向に振動させる振動手段と、切断刃Sで材料Wを切断する際に材料Wを押えておく材料押圧手段を備えている。
【0028】
本実施形態の振動手段は、スプライン軸28の後端に連結するクランク30と、回転可能に軸支されるとともにクランク30を進退移動させる偏心カム付きシャフト31と、偏心カム付きシャフト31に取り付けられる振動付与用プーリ32と、ベルト(タイミングベルト)を介して振動付与用プーリ32を回転させる振動付与用モータ33とを含んで構成されている。すなわち、振動付与用モータ33によって偏心カム付きシャフト31が回転すると、その偏心量の振幅をもってクランク30が振動し、これによりホルダー29を取り付けたスプライン軸28も振動するため、ホルダー29に保持される切断刃Sを長手方向に沿って振動させることができる。
【0029】
材料押圧手段は、切断刃Sの近傍に設けられる押圧板34と、押圧板34をZ方向に移動可能に支持するガイド35と、押圧板34を材料Wに対して押圧するための弾性体36とを含んで構成されている。
【0030】
次に、カッティング装置1を用いて材料Wを切断するカッティング方法の一例に関し、図5に示したカットラインLに沿って切断刃Sを移動させて材料Wを切断する方法について説明する。
【0031】
材料Wを切断するにあたり、制御手段5は、記憶手段6に記憶されているカットラインLに関する情報を読み出し、材料WにおけるカットラインLが占める領域(全体領域A)を特定する。本実施形態の全体領域Aは、材料WにおけるX方向中央及びY方向中央に位置しているが、材料Wに対して片寄った位置に設けられていてもよい。
【0032】
次いで制御手段5は、境界予定線設定手段5aによって中央境界予定線CLを設定し、全体領域Aを第一領域A1と第二領域A2に区画する。本実施形態の中央境界予定線CLは基本的にX方向に延在していて、第一領域A1と第二領域A2がY方向に横並びになるように全体領域Aを区画する。ここで境界予定線設定手段5aは、中央境界予定線CLを、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さが略同一であるように設定する。ここで、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さが略同一であるように設定するとは、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さの差を第一領域A1に含まれるカットラインLの長さで除した(割った)値が所定の値以下になることをいい、一例として10%以下になる場合をいう。
【0033】
また境界予定線設定手段5aは、中央境界予定線CLを、包絡部LEと中央境界予定線CLが交差せずに包絡部LEが第一領域A1及び第二領域A2の何れかに含まれるように設定する機能を有する。
【0034】
カットラインLが図5に示したものである場合、本実施形態の境界予定線設定手段5aは、まず全体領域Aに含まれるカットラインL(包絡部LEと解放部LR)の全ての長さを算出し、X方向に直線状に延在する中央境界予定線CLでこの長さが半分になるように仮設定することにより全体領域Aを第一領域A1と第二領域A2に仮で区画する。そして仮で設定した中央境界予定線CLと包絡部LEが交差する場合は、図5に示すように中央境界予定線CLの一部を+Y方向又は-Y方向に移動させて、中央境界予定線CLと包絡部LEが交差しないように設定することができる(図5における包絡部LEf、包絡部LEg、包絡部LEjを参照)。なお、中央境界予定線CLの一部を+Y方向に移動させるか-Y方向に移動させるかは、仮で区画した第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと仮で区画した第二領域A2に含まれるカットラインLの長さの差ができるだけ小さくなる条件で決定される。
【0035】
ここで、包絡部LEの大きさや形状等によっては、中央境界予定線CLの一部を+Y方向又は-Y方向に移動させる量が大きくなり、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さの差が所定の値を超えて、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さが実質的に相違することがある。この場合は、後述する切断時間を短縮する効果が十分に得られないおそれがある。一方、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さの差を所定の値に収めることを優先すると、中央境界予定線CLが包絡部LEに交差することがある。この場合は、後述するカットラインの不一致を防止する効果が損なわれることになる。このような点に鑑み、境界予定線設定手段5aは、切断時間を短縮する効果とカットラインLの不一致を防止する効果の何れを優先するかが選択でき(都度選択できるようにしてもよいし、予め何れかを選択していてもよい)、その選択に応じて中央境界予定線CLが決定されるように構成されていてもよい。すなわち、切断時間を短縮する効果を優先させる場合は、例えば中央境界予定線CLはX方向に直線状に延在するものと設定される。
【0036】
また境界予定線設定手段5aは、カットラインLに含まれる解放部LRと交差しないように中央境界予定線CLを設定する機能を備えていてもよい。この場合に境界予定線設定手段5aは、カットラインLに含まれる解放部LRと交差しないように中央境界予定線CLを設定するにあたり、切断時間を短縮する効果とカットラインLの不一致を防止する効果の何れを優先するかが選択でき(都度選択できるようにしてもよいし、予め何れかを選択していてもよい)、その選択に応じて中央境界予定線CLが決定されるように構成されていてもよい。本実施形態の境界予定線設定手段5aは、カットラインLに含まれる解放部LRと交差しないように中央境界予定線CLを設定する機能、及びカットラインの不一致を防止する効果よりも切断時間を短縮する効果を優先して中央境界予定線CLが決定される機能を有している。なお図5に示した解放部LRを構成する解放部LRa、解放部LRbは、何れもY方向に長く延在しているため、中央境界予定線CLの一部を+Y方向又は-Y方向に移動させても、中央境界予定線CLが解放部LRaと解放部LRbに交差することになる。このため本実施形態の境界予定線設定手段5aは、中央境界予定線CLが解放部LRaと解放部LRbに交差する位置を、解放部LRaと解放部LRbの長さが約半分になるところに設定している。
【0037】
また本実施形態では、境界予定線設定手段5aによって中央境界予定線CLを設定して全体領域Aを第一領域A1と第二領域A2に区画したが、第一領域A1と第二領域A2の区画は、例えば作業員が行ってもよい。作業員が全体領域Aを第一領域A1と第二領域A2に区画する場合は、カットラインLの長さが約半分になるように、且つ包絡部LEa、包絡部LEb・・・と交差しないように中央境界予定線CLを設定する。そして第一領域A1には、包絡部LEa、包絡部LEb、包絡部LEc、包絡部LEd・・・包絡部LEh・・・と、図5における解放部LRa及び解放部LRbの左側部分が含まれ、第二領域A2には、包絡部LEe、包絡部LEf、包絡部LEg、包絡部LEj・・・と、図5における解放部LRa及び解放部LRbの右側部分が含まれることを記憶手段6に記憶させておけばよい。
【0038】
ここで、第一領域A1における中央境界予定線CLに対向する端部を第一端部E1と称し、第二領域A2における中央境界予定線CLに対向する端部を第二端部E2と称する。本実施形態の第一端部E1は、図5に示すように、基本的にX方向に延在する中央境界予定線CLに対し、この中央境界予定線CLに対向していて第一領域A1におけるX方向に延在する端部である。また第二端部E2は、図5に示すように、基本的にX方向に延在する中央境界予定線CLに対し、この中央境界予定線CLに対向していて第二領域A2におけるX方向に延在する端部である。
【0039】
ところで、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さが略同一になる場合でも、カットラインLの分散状態が異なっていると、第一移動手段3と第二移動手段4が衝突するおそれがある。例えばカットラインLとして、同一サイズの円形の包絡部LEが図6(a)に示すように並んでいる場合、第一領域A1に含まれる包絡部LEの数と第二領域A2に含まれる包絡部LEの数は等しいため、第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さは同一になる。しかし包絡部LEは、第一領域A1ではY方向に沿って第一領域A1の全域に及ぶように並んでいて、第二領域A2では中央境界予定線CLに近いところでX方向に並んでいることから、第二領域A2で包絡部LEを切断している第二移動手段4は中央境界予定線CLに近いところに留まる一方、第一領域A1で包絡部LEを切断している第一移動手段3は中央境界予定線CLに近づいていくことになるため、第一移動手段3と第二移動手段4が衝突するおそれがある。
【0040】
このような第一移動手段3と第二移動手段4との衝突を防止するため、本実施形態の制御手段5は、分散確認手段5bによって第一領域A1に含まれるカットラインLと第二領域A2に含まれるカットラインLの分散状態を確認し、材料Wの切断を行うか否かを判断している。具体的に説明すると、分散確認手段5bは、図6(a)に示すように第一領域A1を、第一端部E1から中央境界予定線CLに向かって複数の第一領域部分に分割し(本実施形態では第一領域第一部分A1-1、第一領域第二部分A1-2、第一領域第三部分A1-3、第一領域第四部分A1-4の4つに分割)、また第二領域A2を、中央境界予定線CLから第二端部E2に向かって第一領域部分と同じ態様で複数の第二領域部分に分割する(本実施形態では第二領域第一部分A2-1、第二領域第二部分A2-2、第二領域第三部分A2-3、第二領域第四部分A2-4の4つに分割)。ここで、第一領域部分と同じ態様で複数の第二領域部分に分割するとは、第一領域A1を複数の第一領域部分に分割する数と第二領域A2を複数の第二領域部分に分割する数が同一になるようにし、且つ、第一端部E1から中央境界予定線CLに向かう順での第一領域部分と、中央境界予定線CLから第二端部E2に向かう順での第二領域部分は、それぞれ幅が等しいことをいう。すなわち図6(a)では、上記のように第一領域A1と第二領域A2はともに4つに分割されていて数は同一であり、また第一領域第一部分A1-1と第二領域第一部分A2-1の幅(Y方向長さ)が等しく、第一領域第二部分A1-2と第二領域第二部分A2-2の幅が等しく、第一領域第三部分A1-3と第二領域第三部分A2-3の幅が等しく、第一領域第四部分A1-4と第二領域第四部分A2-4の幅が等しくなるように分割されている。
【0041】
そして分散確認手段5bは、第一領域部分のそれぞれに含まれるカットラインLの長さと第二領域部分のそれぞれに含まれるカットラインLの長さを算出し、対応する第一領域部分と第二領域部分でのカットラインLの差の割合が所定値以下であるかを確認する。すなわち図6(a)に示した例では、分散確認手段5bは、第一領域第一部分A1-1、第一領域第二部分A1-2、第一領域第三部分A1-3、第一領域第四部分A1-4のそれぞれに含まれるカットラインLの長さを算出し、また第二領域第一部分A2-1、第二領域第二部分A2-2、第二領域第三部分A2-3、第二領域第四部分A2-4に含まれるカットラインLの長さを算出する。そして、第一領域第一部分A1-1に含まれるカットラインLの長さと第一領域第一部分A1-1に対応する第二領域第一部分A2-1に含まれるカットラインLの長さの差を、第一領域第一部分A1-1に含まれるカットラインLの長さ(第二領域第一部分A2-1に含まれるカットラインLの長さでもよい)で除した(割った)値が所定の値以下になるかを確認する。そして、第一領域第二部分A1-2と第二領域第二部分A2-2、第一領域第三部分A1-3と第二領域第三部分A2-3、及び第一領域第四部分A1-4と第二領域第四部分A2-4でも同様の確認を行うことで、第一領域A1に含まれるカットラインLと第二領域A2に含まれるカットラインLの分散状態を確認することができる。図6(a)に示した例では、第一領域第一部分A1-1と第二領域第一部分A2-1でのカットラインLの差の割合が大きく、また他の部分についても同様に大きいことから、制御手段5は、カッティング装置1での材料Wの切断を停止する。これにより、第一移動手段3と第二移動手段4の衝突を防止することができる。なお第一移動手段3と第二移動手段4の衝突は、第二移動手段4が中央境界予定線CLの近傍に留まっているときに第一移動手段3が近づくことで起こりうる。すなわち、中央境界予定線CLから離れたところで、第一領域部分と第二領域部分のカットラインLの差の割合が大きくなっていても第一移動手段3と第二移動手段4の衝突にはつながりにくいため、上述したカットラインLの差の割合は、中央境界予定線CLに近いところだけ確認するようにしてもよい。
【0042】
一方、図6(b)に示した例では、第一領域第一部分A1-1と第二領域第一部分A2-1でのカットラインLの差の割合は所定値以下であり、他の部分についても同様であるため、制御手段5は、以下に説明するようにカッティング装置1での材料Wの切断を継続する。
【0043】
次いで制御手段5は、カット順設定手段5cによって、第一領域A1における包絡部LEをカットする順番を、第一端部E1から第二端部E2に向かう順に設定し、且つ第二領域A2における包絡部LEをカットする順番を、第一端部E1から第二端部E2に向かう順に設定する。
【0044】
図5に示した第一領域A1には、包絡部LEa、包絡部LEb、包絡部LEc、包絡部LEd・・・包絡部LEh・・・が含まれている。ここで、第一端部E1に最も近い位置にラインがあるものは包絡部LEdであり、次は包絡部LEaであり、次は包絡部LEbであり、次は包絡部LEcであり、・・・次は包絡部LEhである。従ってカット順設定手段5cは、第一領域A1における包絡部LEをカットする順番を、包絡部LEd、包絡部LEa、包絡部LEb、包絡部LEc・・・、包絡部LEh・・・の順に設定する。また第二領域A2には、包絡部LEe、包絡部LEf、包絡部LEg、包絡部LEj・・・が含まれている。ここで、第一端部E1に最も近い位置にラインがあるものは包絡部LEfであり、次は包絡部LEjであり、次は包絡部LEeであり、次は包絡部LEgである。従ってカット順設定手段5cは、第二領域A2における包絡部LEをカットする順番を、包絡部LEf、包絡部LEj、包絡部LEe、包絡部LEg・・・の順に設定する。
【0045】
なおカット順設定手段5cには、第一領域A1における包絡部LEをカットする順番を、第一領域A1における解放部LRも含めて設定でき、また第二領域A2における包絡部LEをカットする順番を、第二領域A2における解放部LRも含めて設定できる機能を設けることが好ましい。また第一領域A1における包絡部LEをカットする順番と第二領域A2における包絡部LEをカットする順番は、例えば作業員が判断して記憶手段6に記憶させてもよい。
【0046】
次いで制御手段5は、第一移動手段3に対して、第一端部E1から中央境界予定線CLに向かって第一移動手段3が保持する切断刃SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送るとともに、第二移動手段4に対して、中央境界予定線CLから第二端部E2に向かって第二移動手段4が保持する切断刃SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送る。ここで制御手段5は、第一移動手段3と略同速度で第二移動手段4を移動させるように指令を送る。なお略同速度とは、例えば第一移動手段3の速度と第二移動手段4の速度の差を第一移動手段3の速度で除した(割った)値が所定の値以下になることをいい、一例として10%以下になる場合をいう。本実施形態においては、上述したように、第一領域A1における包絡部LEをカットする順番が第一端部E1から第二端部E2に向かう順に設定され、第二領域A2における包絡部LEをカットする順番が第一端部E1から第二端部E2に向かう順に設定されている。また制御手段5が備える指令手段5dは、第一移動手段3に対して、カット順設定手段5cで設定した順に第一移動手段3が保持する切断刃SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送るとともに、第二移動手段4に対して、カット順設定手段5cで設定した順に第二移動手段4が保持する切断刃SをカットラインLに沿って移動させるように指令を送るように構成されている。
【0047】
このように指令手段5dから指令を送ると、第一領域A1では、第一移動手段3が保持する切断刃Sが第一端部E1に近い包絡部LEから切断を開始し、第二領域A2では、第二移動手段4が保持する切断刃Sが中央境界予定線CLに近い包絡部LEから切断を開始する。すなわち、第一移動手段3と第二移動手段4は、Y方向に間隔をあけた状態で材料Wの切断を開始し、また両者は基本的に同方向(+Y方向)に移動するため、材料Wを切断する際に第一移動手段3と第二移動手段4が衝突することがない。また第一領域A1に含まれるカットラインLの長さと第二領域A2に含まれるカットラインLの長さは略同一であるため、本実施形態のカッティング装置1によれば、1つの切断刃を1つの移動機構で移動させる場合に比して切断時間を半分近くに短縮することができる。更に、1つの包絡部LEは、第一移動手段3が保持する切断刃S、又は第二移動手段4が保持する切断刃Sのみで切断されるため、上述したカットラインの不一致が防止されて切断品質を高めることができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0049】
例えば図2図3に示した第一移動手段3の構成は一例であって、第一切断手段や第二切断手段を他の構成で移動させてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:カッティング装置
2:ベース
3:第一移動手段
4:第二移動手段
5:制御手段
5a:境界予定線設定手段
5b:分散確認手段
5c:カット順設定手段
5d:指令手段
A1:第一領域
A2:第二領域
CL:中央境界予定線
E1:第一端部
E2:第二端部
L:カットライン
LE:包絡部
S:切断刃(第一切断手段、第二切断手段)
W:材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6