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特開2024-157132ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂のヒートシール包装体
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  • 特開-ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂のヒートシール包装体 図1
  • 特開-ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂のヒートシール包装体 図2
  • 特開-ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂のヒートシール包装体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157132
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂のヒートシール包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241030BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071283
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】長村 直弥
(72)【発明者】
【氏名】村岡 銀地
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086AD04
3E086AD30
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB51
4F100AJ05A
4F100AK16B
4F100AK41D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100EH46B
4F100GB15
4F100JC00D
4F100JK06
4F100JL11
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】セロファンを基材とする包装材を用い、表面がポリ塩化ビニリデン系樹脂同士である従来のフィルムよりも低温でヒートシール可能にする。
【解決手段】セロファン11にポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工して積層したPVDC層12の表面と、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、またはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層13とをヒートシールした接着部15を有する包装体を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロファンにポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工して積層したPVDC層の表面と、
ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、またはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層と、をヒートシールした接着部を有する包装体。
【請求項2】
セロファンの一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工してPVDC層が積層され、他方の面にポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートまたはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層が積層された両面ヒートシール性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂コートセロファンと生分解性樹脂との組み合わせでヒートシールした包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂素材でヒートシールにより包装材料を作成したり、内容物を封緘したりする際には、ヒートシール強度を確保するため、通常は同じ材質の樹脂面同士を重ねてヒートシールする。しかし、用いる樹脂によっては、包装体としての適性を損ねることがあり、包装体の構成が制限されることがある。
【0003】
透明のフィルム素材として知られるセロファンは、静電気を帯びにくい上に、引き裂きやすいという特徴があるので、包装材として用いると内容物が粉体であるときは取り扱いやすく、また消費者が購入した後に開封しやすい。しかし、セロファンはセルロースからなるため、吸湿性が高く、そのままでは使いにくい場合がある。また、単独では性質上ヒートシールできない。
【0004】
そこで、セロファンにポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工した包装用フィルムが提案されている(例えば特許文献1)。基材にセロファンを用いることで、帯電防止性や引き裂きやすさを確保しつつ、塗工されたポリ塩化ビニリデン系樹脂により防湿性とヒートシール性とを兼ね備えたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50-63021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工したセロファンの塗工層同士をヒートシールするには要求される温度が高く、加熱時に収縮するおそれがあるため、より低温でのヒートシール性が求められた。
【0007】
そこでこの発明は、セロファンを基材として用い、従来の表面がポリ塩化ビニリデン系樹脂同士でヒートシールした包装体よりも、防湿性を維持したまま、低温でヒートシール可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
セロファンにポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工して積層(コート)した樹脂層の表面と、
ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、またはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層とをヒートシールした接着部を有する包装体により、上記の課題を解決したのである。
【0009】
ヒートシール性と防湿性を備えたポリ塩化ビニリデン系樹脂と他の材料とを組み合わせるとしても、例えばポリエチレンやポリプロピレンを用いた場合は十分なヒートシール特性は得られなかった。本発明では、ポリ塩化ビニリデン系樹脂と組み合わせる材料として、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、またはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂を選択すると、ポリ塩化ビニリデン系樹脂同士のヒートシールで求められる温度よりも低温でヒートシールできることを見出したものである。
【0010】
この発明では、セロファンの一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂がコートされ、他方の面にポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートまたはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層を積層した両面ヒートシール性フィルムを用い、一方の面と他方の面とを接着することで上記の包装体とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる包装体は、両面がポリ塩化ビニリデン系樹脂である包装体が120℃以上でのヒートシールでなければ十分な接着強度が得られないのに対して、110℃のヒートシールでも十分な接着強度を達成することができ、低温で接着しやすく生産効率が高い防湿性包装体として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)この発明の第一の実施形態を構成するヒートシール性フィルム同士の接着構造を示す断面図、(b)接着部を生じさせた包装体の断面図
図2】(a)この発明の第二の実施形態を構成する接着構造を示す断面図、(b)接着部を生じさせた包装体の断面図
図3】実施例におけるヒートシールと切断の方向を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明について詳細に説明する。この発明は、セロファンを基材として少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗工して積層(コート)した表面を有し、その表面と、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートまたはポリブチレンアジペートテレフタレートである生分解性樹脂からなる相対接着層とをヒートシールした接着部を有する包装体である。
【0014】
この発明の第一の実施形態を、図1を用いて説明する。この発明にかかる包装体を構成する両面ヒートシール性フィルム10は、基材としてセロファン11を有し、セロファン11の一方の面(図では上側)の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC」と略記する。)によるPVDC層12が塗工されている。セロファン11の他方の面(図では下側)の面に、ポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」と略記する。)やポリブチレンサクシネートアジペート(以下、「PBSA」と略記する。)、またはポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」と略記する。)である生分解性樹脂からなる相対接着層13が形成されている。
【0015】
セロファン11は一般的なセロファンフィルムが利用可能である。セロファン11が基材となることで、セロファンフィルム特有の帯電防止性や引き裂きやすさが発揮され、包装体として内容物が粉体の場合は取り扱いやすく、また包装を解く際に人手で引裂きやすくなる。セロファンフィルムの厚さとしては15μm以上50μm以下であると好ましい。薄すぎると塗工時や利用時に意図せず破れてしまうおそれが高くなってしまう。一方で、厚すぎるとセロファンの製膜が困難になってしまう。
【0016】
PVDC層12は、PVDCをセロファン11の一方の表面に塗工することで形成できる。通常は、液状のポリ塩化ビニリデンラテックスを塗工した上で硬化させる。PVDC層12の塗工量は、2g/m以上10g/m以下であると好ましい。少なすぎるとヒートシールした際の接着強度が不十分になるとともに、防湿性が不十分になるおそれもある。一方で、多すぎると、塗工方法によっては製造が困難になる上に、必要以上に塗工量を上げても、付加される効果が頭打ちとなって意味があまりなく、無駄になってしまう。
【0017】
相対接着層13は、PBS、PBSAまたはPBATである生分解性樹脂をセロファン11の他方の表面に積層させたものである。積層させる方法としては、セロファン上に押出ラミネート加工して形成してもよいし、一旦形成させたフィルムを貼り合わせてもよい。PBS、PBSA及びPBATはどちらもPVDCとの間で、110℃程度で十分な接着強度でのヒートシールが可能である。これらの生分解性樹脂を相対接着層13に用いることで、この包装体にはPVDCを用いているにも関わらず、セロファンとともに高い生分解性度を確保することができるので、環境に対する負荷を抑制しながら本発明による低温ヒートシール性を発揮させることができる。これらの生分解性樹脂の中でも、石油由来のPBATに比べて、PBSはバイオマス度が高いため、セロファンとともに高いバイオマス度と生分解性度を確保できるので特に望ましい。
【0018】
相対接着層13の厚さは、押出ラミネート加工とフィルムの貼り合わせなどの積層方法によっても異なるが、5μm以上50μm以下であると好ましい。厚さが小さすぎると、ヒートシール強度が十分確保できなかったり、積層自体が困難になったりするおそれがある。一方で、大きすぎると、積層が困難になったり、フィルムの製造が困難になったりする他、コスト面でも不利になるおそれがある。
【0019】
この発明の第一の実施形態にかかる包装体は、両面ヒートシール性フィルム10を用いて、PVDC層12と相対接着層13とを対向して密着させ、加熱することで十分な接着強度を有する接着部15を生じさせることができる。例えば、被包装体を包む一枚の両面ヒートシール性フィルム10の、一方の端部側のPVDC層12と、被包装体を包んで一周した他方の端部の相対接着層13とを容易に接着させることができる。
【0020】
この発明にかかる第二の実施形態を、図2を用いて説明する。この発明にかかる包装体を構成するのは、セロファン11の片面(図では上側)にPVDC層12が積層されたPVDC片面コートセロファン20と、PBS、PBSAまたはPBATである生分解性樹脂からなる相対接着層13を有する相対接着体21である(図2(a))。相対接着層13を固定する基材部14は特に限定されるものではなく、PBS、PBSAまたはPBATと積層しやすく、かつその包装体で求められる性質を満たすものであればよい。基材部14としては、フィルムの他にプラスチックカップや紙、アルミなどの金属箔などのその他の基材を用いてもよく、形状もシート状に限定されるものではない。
【0021】
なおここでは、相対接着体21がその他の基材部14に相対接着層13が積層されたものを例として図示しているが、基材部14がなく相対接着層13のみのフィルムでもこの発明は実施可能である。
【0022】
この発明にかかる第二の実施形態にかかる包装体は、PVDC片面コートセロファン20のPVDC層12と、相対接着体21の相対接着層13とを対向して密着させ、加熱することで十分な接着強度を有する接着部15を生じさせることができる(図2(b))。例えば、容器である基材部14の縁に相対接着層13が形成されており、そこに透明なPVDC片面コートセロファン20を接着させるといった使い方も可能である。
【0023】
いずれの実施形態でも、PVDC層12と相対接着層13とは、従来のPVDC同士の接着に必要な120℃以上の加熱がなくても、110℃程度で十分な接着強度を発揮した包装体が得られる。さらに、相対接着層13の材質として、特にPBSAを用いると、100℃程度でも高い接着強度が期待できる。
【0024】
この発明にかかる包装体としては、例えば次のような実施形態が挙げられる。セロファン11の片面にPVDCラテックスを塗工してPVDC層12を形成させ、セロファン11のもう片面に、PBSを押出ラミネートで塗工して相対接着層13を形成させた両面ヒートシール性フィルムは、ペットボトルの胴巻きラベルとして容易に両端を接着して巻き付け固定できる。同様の実施形態としては、結束帯、キャラメル/タバコ包装、まんじゅう袋などが挙げられる。また、セロファン11の片面にPVDCラテックスを塗工してPVDC層12を形成させたPVDC片面コートセロファンと、基材層14などがなく相対接着層13のみの相対接着体21となるPBSフィルムを重ねて、矩形状に四方向をシールして、セロファン側が透明な袋とすることができる。さらに、前記のPVDC片面コートセロファンを蓋材とし、基材部14となるポリプロピレンにPBSを押出ラミネートした材料を成形したカップ状の相対接着体21と接着させてシールカップとすることもできる。その他、ストリップ包装として利用することもできる。
【実施例0025】
次に、この発明を実際に実施した実施例を挙げて、この発明をさらに具体的に示す。まず、用いた試料について列挙し、次に評価方法について記載する。
【0026】
<フィルム>
・PVDC片面コートセロファン(レンゴー(株)製)として、PVDCの塗工量が3g/mであるものを「KPT1」、同4g/mであるものを「KPT2」と以下表記する。
・相対接着体1「PTPBS」・・片面にPBSを30μmの厚さで押出ラミネート加工したセロファン
・相対接着体2「PTPBSA」・・片面にPBSAを15μmの厚さで押出ラミネートしたセロファン
・相対接着体3「PBAT」・・PBATフィルム(BASFジャパン社製:エコフレックス)
【0027】
<ヒートシール強度測定方法>
2枚の矩形状フィルムの接着する面同士を互いに密着させ、0.154MPa(1kgf)×1秒間の条件で、図3に示すようにMD方向にヒートシールした後、15mm幅にカットして試験片を作製した。その直後に試験片の2枚のフィルムのそれぞれの端部(図中下側)を、50Nのロードセルを備えた引張試験機((株)エー・アンド・デイ製:テンシロン)を用いてそれぞれ反対方向へ速度300mm/分で引っ張り、最高強度をヒートシール強度とした。この測定を試験片3サンプルで行い、その平均を測定値(N/15mm)とした。なお、接着しなかったものは「不可」とした。
【0028】
試料のフィルムを下記表1のように組み合わせて、上記の測定方法を実施した。実施例1はPTPBSとKPT1との組み合わせで接着させるものであり、実施例2は実施例1のKPT1の代わりにKPT2としてPVDCの塗工量を増加させたものである。実施例3は実施例1のPTPBSの代わりにPTPBSAを、また実施例4はPBATを用いたものである。一方、比較例1はKPT1同士、比較例2はPTPBS同士、比較例3はPBAT同士を対向させて接着を試みたものである。
【0029】
【表1】
【0030】
<ヒートシール強度評価>
KPT1のPVDC層同士をヒートシールする場合(比較例1)、温度110℃では十分なヒートシール強度が得られず、実用的なヒートシール強度を得るには120℃以上の高いヒートシール温度が必要であった。これに対して、実施例1~4のいずれも、PVDC層と相対接着層とが温度110℃でも十分なヒートシール強度を発揮できた。特に、実施例3のPTPBSAとKPT1の組み合わせの場合は、他の組み合わせでは接着しなかった温度100℃でも高いヒートシール強度を示した。
【0031】
<防湿性:水蒸気透過度測定方法>
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製:PERMATRAN-W3/33)に、KPT2のPVDCコート面からセロファン側に測定器の調整ガスが流れるように設置し、JIS K7126 B法に準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度(WVTR)を測定した。さらに比較として、KPT2のセロファン面にPBSを厚さ20μmで押出ラミネート加工したフィルムでも同様に測定した。その結果、KPT2の水蒸気透過度は8.9g/m/dayであったのに対して、KPT2のセロファン面にPBSを厚さ20μmで押出ラミネート加工したフィルムでも水蒸気透過度は8.9g/m/dayとなり、PBSの押出ラミネート加工によって水蒸気バリア性(防湿性)は変化しないことが確認された。
【0032】
<結果の検証>
上記の結果から、KPT1,2の非コート面にPBSやPBSA、PBATを押出ラミネート加工した場合には、1枚の両面ヒートシール性フィルムとして水蒸気バリア性と低温ヒートシール性とを付与させることができることが確かめられた。
【0033】
<蓋材としての利用の確認>
また、KPT1を蓋材として、そのPVDCコート面をPBSが積層された成形容器にカップシールしたところ、十分な接着強度が得られ、包装用途に使用できることが確かめられた。
【符号の説明】
【0034】
10 両面ヒートシール性フィルム
11 セロファン
12 PVDC層
13 相対接着層
14 基材部
15 接着部
20 PVDC片面コートセロファン
21 相対接着体
図1
図2
図3