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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015714
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】サッシの改修方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20240130BHJP
   E06B 1/64 20060101ALI20240130BHJP
   E06B 1/28 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E06B1/56 B
E06B1/64 Z
E06B1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117967
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕樹
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA03
2E011KA01
2E011KB04
2E011KC02
2E011KC03
2E011KC04
2E011KC07
2E011KD04
2E011KH02
2E011LA02
2E011LB02
2E011LD02
2E011LD03
2E011LD04
2E011LD07
2E011LF01
2E011LF04
(57)【要約】
【課題】躯体開口部に接着剤で固定された既設のサッシを、新設のサッシに容易に交換できるサッシの改修方法を提供すること。
【解決手段】躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、既設枠と開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで接着剤を切断し、既設枠を躯体開口部から取り外す工程と、開口内周面の室外側端部に新たな室外シール材65を設ける工程と、躯体開口部に新設枠である窓枠2Bを配置し、新設枠の内周側から躯体開口部にネジ100を螺合して窓枠2Bを室外シール材65に当接させた状態で躯体開口部に固定する工程と、窓枠2Bの室内側端縁と、開口内周面との間を止水する室内シール材66を設ける工程と、窓枠2Bの室内側に内装材を施工する工程と、を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、
前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、
前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、
前記開口内周面の室外側端部に新たな室外シール材を設ける工程と、
前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の内周側から前記躯体開口部にネジを螺合して前記新設枠を前記室外シール材に当接させた状態で前記躯体開口部に固定する工程と、
前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間を止水する室内シール材を設ける工程と、
前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、
を有することを特徴とするサッシの改修方法。
【請求項2】
躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、
前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、
前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、
前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間に四周連続して接着剤を塗布して前記新設枠を前記躯体開口部に固定する工程と、
前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、
を有することを特徴とするサッシの改修方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサッシの改修方法において、
前記既設枠の室外側には、外装材を見切る見切り材が設けられており、
前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程において、前記見切り材は切断せずに前記躯体開口部に取り付けた状態に維持する
ことを特徴とするサッシの改修方法。
【請求項4】
請求項1に記載のサッシの改修方法において、
前記既設枠の室外側には、外装材を見切る見切り材が設けられており、
前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程において、前記見切り材は切断せずに前記躯体開口部に取り付けた状態に維持し、
前記室外シール材を設ける工程では、前記見切り材と前記躯体開口部の開口内周面とが交差する角部に前記室外シール材を設ける
ことを特徴とするサッシの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体開口部に取り付けられた既設のサッシを取り外して新設のサッシを取り付けるサッシの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工場において躯体開口枠にサッシをネジによって取り付けて壁面ユニットを製造し、この壁面ユニットを建築現場に搬送して建物の躯体に取付けるパネル工法の壁面ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-65503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
躯体開口枠とサッシの枠体との十分な固定強度を確保するためには相当数のネジが必要となり、ネジ固定時の作業性も低下する。また、枠体を躯体開口枠にネジで固定する場合、躯体開口枠と枠体間の気密・防水構造は、別途、スペーサ、パッキン材、防水シートなどを設けて形成する必要があり、部品点数が多く、作業性も低下する。
このため、本出願人は、枠体を四周連続する接着剤を用いて躯体開口枠に固定することで、ネジやパッキン材などを使用せずに、枠体の固定と気密・防水構造とを両立できる取付構造を開発している。
ところで、建物の躯体開口部に取り付けられるサッシでは、長期間使用した場合などに新設のサッシに交換して改修することが求められる。このため、接着剤を用いて枠体を固定するサッシにおいても、新設のサッシに交換することが求められる。
【0005】
本発明は、躯体開口部に接着剤で固定された既設のサッシを、新設のサッシに容易に交換できるサッシの改修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、前記開口内周面の室外側端部に新たな室外シール材を設ける工程と、前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の内周側から前記躯体開口部にネジを螺合して前記新設枠を前記室外シール材に当接させた状態で前記躯体開口部に固定する工程と、前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間を止水する室内シール材を設ける工程と、前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明は、躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間に四周連続して接着剤を塗布して前記新設枠を前記躯体開口部に固定する工程と、前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、躯体開口部に接着剤で固定された既設のサッシを、新設のサッシに容易に交換できるサッシの改修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】既設のサッシを含む壁面ユニットの内観姿図である。
図2】前記壁面ユニットの縦断面図である。
図3】前記壁面ユニットの横断面図である。
図4】前記壁面ユニットの上枠および上材部分の縦断面図である。
図5】前記壁面ユニットの縦枠および縦材部分の横断面図である。
図6】サッシの改修方法における内装材を撤去する工程と、接着剤を切断する工程とを説明する図である。
図7】サッシの改修方法における既設枠を躯体開口部から取り外す工程を説明する図である。
図8】サッシの改修方法における新たな室外シール材を設ける工程を説明する図である。
図9】サッシの改修方法における新設枠を躯体開口部に固定する工程を説明する図である。
図10】サッシの改修方法における新たな室内シール材を設ける工程を説明する図である。
図11】サッシの改修方法における新たな内装材を施工して改修作業が完了した新設のサッシを示す縦断面図である。
図12】サッシの改修方法における新たな内装材を施工して改修作業が完了した新設のサッシを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、壁面ユニット10を室内側から見た内観姿図であり、図2および図3は、壁面ユニット10の縦断面図および横断面図である。ここで例示する壁面ユニット10は、建築物に取り付ける際に単一の構造体として取り扱われるものであり、建具であるサッシ1および躯体開口枠5を備えている。なお、以下の説明において、壁面ユニット10の左右方向をX軸方向とし、壁面ユニット10の上下方向をY軸方向とし、壁面ユニット10の見込み方向(屋内外方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0011】
躯体開口枠5は、図1に示すように、上材であるまぐさ51と、下材である窓台52と、左右の縦材53、54とを備えている。この躯体開口枠5によって、サッシ1が固定される躯体開口部が構成されている。
サッシ1は内開き窓であり、既設枠である窓枠2と、窓枠2内にヒンジ26によって開閉可能に配置された既設の障子3とを備えた既設のサッシ1である。窓枠2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を四周枠組みすることで構成されている。障子3は、上框31、下框32および左右の縦框33、34とこれらに囲まれた面材35とを備えている。なお、図2図6では、図面を見やすくするために、窓枠2や障子3の主要構造材については、断面を示すハッチングを省略している。
【0012】
窓枠2の上枠21、下枠22および左右の縦枠23、24は、図2、3に示すように、同一断面形状を有した枠材で形成されている。これらの枠材は、合成樹脂製の押出形材で構成され、窓種である内開き窓に応じた断面形状とされている。また、各枠材の外周面つまり躯体開口枠5に対向する見込み面には、凹部が形成されている。
縦枠23、24には、位置決め部品であるブラケット40が設けられている。ブラケット40は、金属製の板材であり、図5にも示すように、室外側は縦枠23、24の見込み面に沿って折曲されて縦枠23、24にネジ48でネジ止めされ、室内側は外側に折曲されて縦材53,54の室内面に当接されてネジ49でネジ止めされている。このブラケット40によって、縦枠23、24つまり窓枠2は、縦材53、54つまり躯体開口枠5に対して見込み方向に位置決めされている。本実施形態では、窓枠2の室外側の見付け面と、躯体開口枠5の室外面とが、ほぼ面一となるように位置決めされている。
なお、本実施形態では、ブラケット40は、縦枠23、24の上下方向の中間位置に配置されているが、縦枠23、24の高さ寸法に応じて、複数箇所に配置してもよい。また、本実施形態では、上枠21には位置決め部品であるブラケットは設けられていないが、例えば、上枠21の長手寸法が大きい場合、つまり窓枠2の左右の幅寸法が大きい場合には、例えば上枠21の左右方向の中間位置にブラケットを設けてもよい。
また、図2に示すように、下枠22の外周面の凹部にはスペーサ27が取り付けられている。これにより、下枠22に加わる荷重は、下枠22およびスペーサ27を介して窓台52で支持される。
【0013】
障子3は、矩形状を成す面材35の四周に上框31、下框32および左右の縦框33、34を装着して構成されている。上框31、下框32および左右の縦框33、34は、同一断面形状を有する合成樹脂製の押出形材である。面材35は、ガラスである。
障子3は、室内側から見て左側に位置する縦框34と縦枠24との間にヒンジ26を設け、上下に沿ったヒンジ軸を中心として障子3が室内側に開くように構成した内開き窓である。室内側から見て右側に位置する縦框33には、室内に臨む見付け面にハンドル36が設けてある。
【0014】
躯体開口枠5は、図1に示すように、まぐさ51と、窓台52と、左右の縦材53、54とを備えて枠状に構成されている。縦材53,54の上端側は、まぐさ51よりも上方に延長され、縦材53,54の下端側は、窓台52よりも下方に延長され、縦材53、54の上端間および下端間にはそれぞれ横材55、56が取り付けられている。まぐさ51、窓台52、左右の縦材53、54、横材55、56は、例えば木材によって構成されている。
上端側の横材55とまぐさ51との間と、窓台52と下端側の横材56との間には、図2に示すように、それぞれ断熱材57が配置されている。また、躯体開口枠5の室外面には表面材58が取り付けられている。
なお、壁面ユニット10の高さ寸法と、サッシ1の高さ寸法との関係によっては、横材55、56の一方または両方を設けずに躯体開口枠5を構成してもよい。
【0015】
まぐさ51、縦材53、54および横材55、56は、断面矩形状に形成されている。一方、窓台52は、室外側に段部521が形成された形状とされている。すなわち、窓台52は、下枠22が載置される上面と、上面の室外端から下方に向かって設けられた鉛直面と、鉛直面の下端から室外側に向かって設けられた水平面とを有している。これにより、窓台52には、鉛直面および水平面で区画される段部521が形成されている。窓台52の上面から鉛直面、水平面を介して窓台52の室外側に設けられる表面材58まで防水シート59が取り付けられている。
【0016】
躯体開口枠5の内周側に配置された窓枠2の上枠21、縦枠23、24は、室内側の接着剤61と、室外側の接着剤62とで、まぐさ51、縦材53、54に固定されている。また、下枠22は、室内側の接着剤61で、窓台52に固定されている。
なお、躯体開口枠5の開口内に窓枠2をスムーズに配置するため、躯体開口枠5の開口寸法は窓枠2の寸法よりも僅かに大きくされている。このため、窓台52の上面に下枠22を載置した際に、上枠21とまぐさ51との間や、縦枠23、24と縦材53、54との間には僅かな隙間が生じる。このため、図4および図5にも示すように、接着剤61、62の一部は、前記隙間部分にも充填されている。
【0017】
室内側の接着剤61は、上枠21、下枠22および縦枠23、24の室内面と、まぐさ51、窓台52および縦材53、54の内周面とに跨がって設けられている。この接着剤61は、上枠21、下枠22および縦枠23、24の全長に亘って四周連続して設けられている。なお、接着剤61は、窓枠2の室内面と躯体開口枠5の開口内周面との交差配置される2つの面に跨がって塗布されるため、断面形状は略三角形状とされている。このため、薄板状のブラケット40が配置されている部分においても、接着剤61は、ブラケット40を跨いで連続して塗布されている。
以上のとおり、室内側の接着剤61は、躯体開口枠5と窓枠2との室内側の隙間を四周連続して塞ぐことで固定しており、気密性および水密性が確保されるとともに、窓枠2を強固に固定することができる。
【0018】
室外側の接着剤62は、上枠21および縦枠23、24の室内面と、まぐさ51および縦材53、54の室外面とに跨がって設けられ、下枠22と窓台52との間には設けられていない。すなわち、接着剤61は、上枠21および縦枠23、24の全長に亘って設けられ、四周のうち、下枠22部分を除く三方の隙間を連続して塞ぐことで固定しているため、これらの隙間部分の気密性および水密性が一層向上し、窓枠2の固定強度も向上する。
【0019】
接着剤61、62は、窓枠2を躯体開口枠5に固定可能なものであれば利用でき、例えば、ホットメルト型、2液混合型、湿気効果型などの各種の接着剤が利用可能である。接着剤61と接着剤62とは同じ種類でも異なる種類でもよい。また、接着剤61は塗布箇所によって異なる種類を用いてもよく、同様に接着剤62は塗布箇所によって異なる種類を用いてもよい。
【0020】
図2および図3に示すように、躯体開口枠5の室外面には、上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84が取り付けられている。
【0021】
上カバー材81は、図4に示すように、表面材58に固定される固定片811と、固定片811から室外側に延出された見切り片812と、見切り片812の基端側から下方に延出された被覆片813とを備えて構成されている。
固定片811の上端縁と、上下方向の略中間位置とには、室内側に向かって突出する突出片8111、8112が形成され、上カバー材81を固定するネジ819は、突出片8111、8112の間に配置される。
見切り片812は、固定片811から連続する水平面部8121と、水平面部8121から連続して設けられて斜め下方に延出した傾斜面部8122と、傾斜面部8122の室外端から下方に延長された鉛直面部8123とを備える。また、見切り片812の下面にはビスホール814が形成されている。このビスホール814には、縦カバー材83、84と上カバー材81とを連結する図示略のネジが螺合される。
被覆片813は、下端部が室内側に突出した断面略L字状に形成されている。
上カバー材81の固定片811および被覆片813は、躯体開口枠5の室外面および上枠21の室外面に跨がって配置されて接着剤62の室外側に位置している。このため、上カバー材81は、上枠21を躯体開口枠5に固定する接着剤62が室外側に露出しないように覆うカバー材として用いられる。また、見切り片812が後述する外装材91の端部見込み面に対向配置されるため、上カバー材81は外装材91を見切る見切り材としても用いられる。
【0022】
水切り材82は、図2に示すように、窓台52の段部521に防水シート59を挟んで載置されている。この水切り材82は、斜め下方に延出した傾斜片部821と、傾斜片部821の室外端から下方に延びた先端部822と、表面材58に沿って配置されてネジ829で表面材58および窓台52に固定される固定片部823とを備えて構成される。
水切り材82の傾斜片部821の下面には2つのビスホールが形成されている。室外側のビスホールには、縦カバー材83、84と水切り材82とを連結する図示略のネジが螺合される。室内側のビスホールには、水切り材82の中空部の左右両端の開口を塞ぐ蓋材を固定する図示略のネジが螺合される。
また、窓台52の段部521の上方には、下枠22の一部が配置されているので、水切り材82の段部521に配置された部分は、平面視で下枠22と重なって配置されている。また、図2および図5に示すように、傾斜片部821の室外側端部は縦カバー材83、84よりも室外側に突出しており、この突出部分の小口を塞ぐ端部キャップ85が装着されている。水切り材82は、外装材91の端部見込み面に対向配置されるため、外装材91を見切る見切り材としても用いられる。
【0023】
縦カバー材83、84は、左右対称の同一断面形状であるため、図5に示す縦カバー材84で構造を説明する。
縦カバー材84は、表面材58に固定される固定片841と、固定片841から室外側に延出された見切り片842と、見切り片842の基端側から内周側に延出された保持片843とを備えて構成されている。
固定片841の外周縁と、左右方向の略中間位置とには、室内側に向かって突出する突出片8411、8412が形成され、縦カバー材83、84を固定するネジ849は、突出片8411、8412の間に配置される。
見切り片842は、室外側先端が外周側に突出した断面略L字状に形成されている。
保持片843は、縦枠23、24の室外面に当接する止水部材86を保持する保持溝8431を有する。止水部材86はAT(エアータイト)材で構成されている。
縦カバー材83、84の固定片841は、躯体開口枠5の室外面および縦枠23、24の室外面に跨がって配置されて接着剤62の室外側に位置している。このため、縦カバー材83、84は、縦枠23、24を躯体開口枠5に固定する接着剤62が室外側に露出しないように覆うカバー材として機能する。また、見切り片842が後述する外装材91の端部見込み面に対向配置されるため、縦カバー材83、84は外装材91を見切る見切り材としても用いられる。
【0024】
躯体開口枠5の室外面には、図4および図5に示すように、防水テープ71、72および防水シート73が貼られている。
防水テープ71は、表面材58側の片面が粘着面とされ、表面材58から接着剤62の表面まで貼られている。これにより、表面材58と接着剤62との間からの浸水を防止している。
防水テープ72は、両面が粘着面とされ、防水テープ71から、上カバー材81や縦カバー材83、84の表面まで貼られている。防水シート73は、表面材58から防水テープ72の表面に貼られている。これらの防水テープ72および防水シート73により、上カバー材81、縦カバー材83、84と表面材58との間からの浸水を防止している。
【0025】
躯体開口枠5の室外側には、図2および図3に示すように、縦胴縁92や横胴縁93を介して外装材91が取り付けられている。外装材91は、上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84で区画される開口部分を除いて取り付けられている。外装材91と、上カバー材81および縦カバー材83、84との間には、バックアップ材75およびシーリング材76が配置されている。また、水切り材82と下枠22の下面との間にも、バックアップ材75およびシーリング材76が配置されている。
躯体開口枠5の室内側には、サッシ1が配置される開口部分を除いて内壁材94が取り付けられている。また、躯体開口枠5の開口内周面には、内壁材94を見切る額縁95が四周に取り付けられている。すなわち、躯体開口枠5の室内側には、内装材として、内壁材94および額縁95が取り付けられている。
【0026】
[壁面ユニットの組立工程]
次に、壁面ユニット10を組み立てる工程について説明する。
サッシ1の製造工場において、サッシ1を組み立てる。この組立方法は、一般的なサッシ1と同一であるため、説明を省略する。
躯体開口枠5の組立工場では、まぐさ51、窓台52、左右の縦材53、54、横材55、56を枠組みし、表面材58を取り付けるとともに断熱材57を配置して躯体開口枠5を組み立てる。
【0027】
次に、壁面ユニット10の組立工場において、躯体開口枠5にサッシ1を取り付けて壁面ユニット10を組み立てる。なお、壁面ユニット10の組立は、サッシ1の製造工場や躯体開口枠5の組立工場と同じ工場で行ってもよいし、別の工場でもよい。
躯体開口枠5に対してサッシ1の窓枠2を取り付けて壁面ユニット10を構成するには、窓枠2にブラケット40をネジ48で固定し、躯体開口枠5にブラケット40をネジ49で固定して窓枠2を位置決めする。そして、接着剤61で窓枠2の室内側を躯体開口枠5に固定し、さらに、接着剤62で窓枠2の室外側を躯体開口枠5に固定する。また、窓台52部分から表面材58に亘って防水シート59を貼り付ける。
なお、接着剤61、62を吐出する作業は、作業者が手動で行うこともできるが、壁面ユニット10を工場で組み立てているので、ロボットなどを用いて自動化することができる。
【0028】
[壁面ユニットの現場施工作業]
以上の組立作業によって、壁面ユニット10が完成する。この壁面ユニット10を施工現場に搬送し、家屋等の建築物に取り付ける方法は、特許文献1と同様に行えば良いため説明を省略する。
壁面ユニット10を家屋等に取り付けた後、表面材58および接着剤62の表面に防水テープ71を貼り付けた後、上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84を取り付ける。この際、上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84は、四方組んだ状態で躯体開口枠5に取り付けてもよいし、各部材毎に躯体開口枠5に取り付けてもよい。
なお、壁面ユニット10を家屋等に取り付ける前、例えば、壁面ユニット10の工場での組立時や、施工現場に壁面ユニット10を搬送後、家屋に設置する前に、防水テープ71、上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84を壁面ユニット10に取り付けてもよい。
さらに、上カバー材81および縦カバー材83、84の表面に防水テープ72、防水シート73を貼り付けた後、縦胴縁92、横胴縁93を取り付けて外装材91を設置する。その後、バックアップ材75、シーリング材76を配置して、外装材91と上カバー材81、縦カバー材83、84との間と、下枠22および水切り材との間をシールする。また、壁面ユニット10の室内側に、内壁材94および額縁95を取り付けて仕上げる。
【0029】
[サッシの改修方法]
次に、図6図12を参照して、サッシ1の改修方法について説明する。なお、図6図10において、(A)はサッシ1および躯体開口枠5の縦断面図、(B)は要部の横断面図である。
サッシ1の改修方法は、建築物に取り付けられた壁面ユニット10の躯体開口枠5、つまり躯体開口部から既設のサッシ1を取り外して新たなサッシ1Bを取り付ける方法である。
まず、図6に示すように、内装材つまり内壁材94および額縁95を取り外し、躯体開口枠5と、窓枠2との隙間にカッターなどの切断器具200を差し込んで、接着剤61、接着剤62、バックアップ材75、シーリング材76を切断する。また、ブラケット40を固定するネジ49も取り外す。一方、見切り材である上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84は切断せずに躯体開口枠5に取り付けた状態に維持する。
【0030】
次に、図7に示すように、既設のサッシ1を躯体開口枠5から室内側に取り外す。そして、水切り材82の表面からバックアップ材75、シーリング材76を除去する。また、躯体開口枠5の開口内周面に接着剤61が残っていれば、その接着剤61も除去する。さらに、上カバー材81、縦カバー材83、84において、室内側に露出する面に接着剤62が残っていればその接着剤62を除去する。なお、上カバー材81、縦カバー材83、84と表面材58との間の接着剤62はそのまま残してよい。
【0031】
次に、図8に示すように、上カバー材81、縦カバー材83、84と、まぐさ51の表面材58、縦材53、54の表面材58とに跨がる部分に先打ちの室外シール材65を塗布する。室外シール材65は、水密性を確保するためのものであり、粘着性を有するものである。
次に、図9に示すように、作業者は、新設のサッシ1Bを躯体開口枠5の開口内周に配置し、窓枠2Bの内周側からネジ100を差し込み、窓枠2Bおよび補強材28を介してネジ100を躯体開口枠5に螺合する。これにより、窓枠2Bは躯体開口枠5に固定される。この際、窓枠2Bの上枠21Bおよび縦枠23B、24Bの室外側端縁は、室外シール材65に押し付けて密着させる。
【0032】
窓枠2Bを躯体開口枠5にネジ100で固定した後、図10に示すように、窓枠2Bの室内面と躯体開口枠5の内周面とに跨がって後打ちの室内シール材66を塗布する。これにより、新規の窓枠2Bと躯体開口部との間の止水性を確保する。
また、水切り材82と、下枠22Bとの間に、新たなバックアップ材75B、シーリング材76Bを設ける。これにより、水切り材82と、下枠22Bとの間の止水性を確保する。
その後、図11および図12に示すように、新たな内装材、すなわち内壁材94Bおよび額縁95Bを施工する。以上により、新設のサッシ1Bへの改修が完了する。
【0033】
新設のサッシ1Bは、新設の窓枠2Bと、新設の障子3Bとで構成されている。
新設の窓枠2Bは、図11,12にも示すように、上枠21B、下枠22B、縦枠23B、24Bを備え、各枠の中空部には、角筒状の金属製の補強材28が配置されている。窓枠2Bの内周面およびこの内周面に対向する補強材28の対向面には、ネジ100を挿通する挿通孔が予め形成されている。
また、新設の障子3Bは、上框31B、下框32B、縦框33B、34B、面材35Bを備えており、既設の障子3と同様の構成である。
【0034】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、内装材である内壁材94や額縁95は取り外す必要はあるが、外装材91や上カバー材81、水切り材82、縦カバー材83、84を撤去したり、破壊することなく、サッシの改修を行うことができる。このため、既設のサッシ1を、短期間かつ低コストで新設のサッシ1Bに改修することができる。
既設のサッシ1の取外作業や、新設のサッシ1Bの取付作業を躯体開口枠5の室内側からの作業で行うことができるため、改修時の作業性や安全性を向上できる。
既設の窓枠2は、接着剤61、62で躯体開口枠5に固定しているので、カッターなどの切断器具200で容易に切断できる。また、新設の窓枠2Bは、新設の室外シール材65および室内シール材66で止水性や気密性を確保でき、ネジ100を用いて躯体開口枠5に固定しているので窓枠2Bを強固に固定できる。特に、窓枠2Bに補強材28を配置し、この補強材28にネジ100の頭を係止しているので、ネジ100による固定強度を向上できるとともに、窓枠2B自体の強度も向上できる。
新設のサッシ1Bを取り付ける際に、窓枠2Bを先付けの室外シール材65に当接させることで見込み方向に位置決めできるので、窓枠2Bに位置決め部品であるブラケット40を取り付ける必要が無く、ブラケット40を不要にできて後付けの室内シール材66の塗布作業などの作業性も向上できる。
【0035】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は本発明に含まれる。
例えば、新設の窓枠2Bは、ネジ100で躯体開口枠5に固定されるものに限らず、既設の窓枠2と同様に、接着剤を用いて固定してもよい。すなわち、改修作業の施工現場において、後付けの室内シール材66を塗布する代わりに室内側の接着剤61を塗布して窓枠2Bを躯体開口枠5に接着してもよい。このような改修作業を行えば、既設の窓枠2と同様に窓枠2Bの室内側に四周連続する接着剤61を設けるため、窓枠2Bの固定とともに、止水性も確保できる。
この際、窓枠2Bの室外側には、前記実施形態と同様に先付けの室外シール材65を設けてもよいし、先付けの室外シール材65の代わりに、室外側の接着剤62を設けてもよい。
【0036】
また、既設の窓枠2の室内側に設けられた内装材を撤去する工程では、額縁95のみを撤去し、内壁材94は残しておいてもよい。この場合、新設の窓枠2Bを取り付けた後に新設の額縁95Bのみを取り付ければよいため、改修時の作業性を向上できる。なお、ブラケット40は、ネジ49を取り外した後、ブラケット40を切断したり折り曲げることで、縦材53、54と内壁材94との間に配置された折返し部をX軸方向に抜きとって除去すればよい。
【0037】
新設の下枠22Bと水切り材82との間のシールは、バックアップ材75Bおよびシーリング材76Bを用いた湿式のシール構造に限定されず、乾式のシール構造を採用してもよい。乾式のシール構造を採用すれば、シーリング材76Bの打設作業を不要にできて改修時の作業性をより向上できる。また、新設の窓枠2Bに位置決め用のブラケット40を設けて、窓枠2Bをブラケット40によって見込み方向に位置決めしてもよい。
【0038】
既設のサッシ1および新設のサッシ1Bは、合成樹脂製に限定されず、アルミニウム等の金属製の押出形材で構成してもよい。
既設のサッシ1および新設のサッシ1Bは、内開き窓に限定されず、FIX窓、外開き窓、上げ下げ窓など、様々な建具を利用できる。FIX窓の場合、ガラスを保持する框材が躯体開口枠5に直接固定されるため、前記框材が枠体となる。
また、新設のサッシ1Bは、既設のサッシ1と同じ窓種や材質でもよいが、異なる窓種や材質でもよい。
【0039】
[まとめ]
本発明は、躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、前記開口内周面の室外側端部に新たな室外シール材を設ける工程と、前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の内周側から前記躯体開口部にネジを螺合して前記新設枠を前記室外シール材に当接させた状態で前記躯体開口部に固定する工程と、前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間を止水する室内シール材を設ける工程と、前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、外装材を撤去したり、破壊することなく、サッシの改修を行うことができる。また、ネジの固定作業やシールの打設作業は、作業者が施工現場で通常行う作業であるため、改修作業を容易にかつ確実に行うことができる。
【0040】
本発明は、躯体開口部の開口内周面に対して接着剤により固定された既設枠を有するサッシの改修方法であって、前記既設枠の室内側に設けられた内装材を撤去する工程と、前記既設枠と前記開口内周面との隙間に室内側から切断器具を差し込んで前記接着剤を切断し、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程と、前記躯体開口部に新設枠を配置し、前記新設枠の室内側端縁と、前記開口内周面との間に四周連続して接着剤を塗布して前記新設枠を前記躯体開口部に固定する工程と、前記新設枠の室内側に内装材を施工する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、外装材を撤去したり、破壊することなく、サッシの改修を行うことができる。また、新設のサッシを四周連続する接着剤によって建物開口部に取り付けているので、新設枠の固定と共に止水性を確保できる。このため、新設枠をネジで固定し、止水性確保のためにシールを設ける場合に比べて改修時の作業工程を少なくできる。
【0041】
本発明のサッシの改修方法において、前記既設枠の室外側には、外装材を見切る見切り材が設けられており、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程において、前記見切り材は切断せずに前記躯体開口部に取り付けた状態に維持することが好ましい。
既設枠の室外側に見切り材を設けているので、外装材の端縁と見切り材との間にシーリング材などを充填して止水性を確保しながら仕上げることができる。また、サッシの改修時に見切り材は切断せずに躯体開口部に取り付けた状態に維持しているので、外装材との間に充填されているシーリング材もそのまま利用することができ、改修作業性を向上できる。
【0042】
本発明のサッシの改修方法において、前記既設枠の室外側には、外装材を見切る見切り材が設けられており、前記既設枠を前記躯体開口部から取り外す工程において、前記見切り材は切断せずに前記躯体開口部に取り付けた状態に維持し、前記室外シール材を設ける工程では、前記見切り材と前記躯体開口部の開口内周面とが交差する角部に前記室外シール材を設けることが好ましい。
既設枠の室外側に見切り材を設けているので、外装材の端縁と見切り材との間にシーリング材などを充填して止水性を確保しながら仕上げることができる。また、サッシの改修時に見切り材は切断せずに躯体開口部に取り付けた状態に維持しているので、外装材との間に充填されているシーリング材もそのまま利用することができ、改修作業性を向上できる。さらに、見切り材と躯体開口部の内向内周面とが交差する角部に室外シール材を設けているので、止水性を向上できる。
【符号の説明】
【0043】
1…サッシ、1B…サッシ、2…既設枠である窓枠、2B…新設枠である窓枠、3…障子、3B…障子、5…躯体開口部である躯体開口枠、10…壁面ユニット、21…上枠、21B…上枠、22…下枠、22B…下枠、23…縦枠、23B…縦枠、24…縦枠、24B…縦枠、28…補強材、31…上框、31B…上框、32…下框、32B…下框、33…縦框、33B…縦框、34…縦框、34B…縦框、35…面材、35B…面材、48…ネジ、49…ネジ、51…まぐさ、52…窓台、53…縦材、54…縦材、58…表面材、61…接着剤、62…接着剤、65…室外シール材、66…室内シール材、75…バックアップ材、75B…バックアップ材、76…シーリング材、76B…シーリング材、81…上カバー材、82…水切り材、83…縦カバー材、84…縦カバー材、91…外装材、94…内壁材、94B…内壁材、95…額縁、95B…額縁、100…ネジ、200…切断器具。
図1
図2
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図12