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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157140
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】安全弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F16K17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071293
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚起
(72)【発明者】
【氏名】小澤 武治
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA03
3H059BB04
3H059BB06
3H059CA17
3H059CA27
3H059CA28
3H059CB17
3H059CB27
3H059CB28
3H059CD04
3H059EE01
3H059FF15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体漏れを抑制しつつ、安定した開弁圧を確保でき、さらに円滑な動作を可能とする安全弁を提供する。
【解決手段】安全弁1は、流体の導入路24、流体の排出路21b及び内周面21aを備えた金属製の本体2と、前記本体の内周面に対して軸線方向に摺動可能な摺動面を備えた金属製の弁体3と、前記本体と前記弁体のうち一方に配置され、他方が当接するゴム又は樹脂製の第1のシール部材25と、前記本体と前記弁体のうち前記他方に配置され、前記一方が当接するゴム又は樹脂製の第2のシール部材34と、前記本体に対して前記弁体を前記導入路側に付勢する付勢部材5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の導入路、流体の排出路及び内周面を備えた金属製の本体と、
前記本体の内周面に対して軸線方向に摺動可能な摺動面を備えた金属製の弁体と、
前記本体及び前記弁体との間をシールする複数のシール部材と、を有し、
前記複数のシール部材の一部が前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、前記複数のシール部材の他部が前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接する、
ことを特徴とする安全弁。
【請求項2】
前記複数のシール部材は、前記本体と前記弁体のうち一方に配置され、他方が当接する第1のシール部材と、前記本体と前記弁体のうち前記他方に配置され、前記一方が当接する第2のシール部材と、を有し、
前記安全弁が、前記本体に対して前記弁体を前記導入路側に付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の安全弁。
【請求項3】
前記安全弁の開弁時において、流体の流れ方向における最上流側に前記第2のシール部材が配設され、流体の流れ方向における最下流側に前記第1のシール部材が配設され、
前記第1のシール部材の硬度は、前記第2のシール部材の硬度より低く、
前記第1のシール部材の軸線方向厚みは、前記第2のシール部材の軸線方向厚みより小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の安全弁。
【請求項4】
前記第1のシール部材は前記本体に設置され、前記弁体の環状脚部が当接可能であり、
前記第2のシール部材は前記弁体に設置され、前記本体の弁座に当接可能であり、
前記第1のシール部材と前記環状脚部との当接による第1のシール円は、前記第2のシール部材と前記弁座との当接による第2のシール円よりも径方向外側に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の安全弁。
【請求項5】
前記第2のシール部材は、流体の流れ方向における最上流側に配設される内方シールと、前記内方シールよりも下流側に配設される外方シールとを有し、
前記本体は、前記内方シールに当接可能な内方弁座と、前記内方弁座の径方向外側にて前記外方シールに当接可能な外方弁座とを有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の安全弁。
【請求項6】
前記内方シールの硬度は、前記外方シールの硬度より高く、
前記内方シールの軸線方向厚みは、前記外方シールの軸線方向厚みより大きい、
ことを特徴とする請求項5に記載の安全弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記第1のシール部材と当接可能な内側環状脚部と、前記内側環状脚部の径方向外側において前記第1のシール部材と当接可能な外側環状脚部とを有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の安全弁。
【請求項8】
前記環状脚部と前記弁座の端部は、軸線直交方向断面が略半円形状を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の安全弁。
【請求項9】
前記第1のシール部材は環状板状であって前記弁体に設置され、前記本体の環状平面に面接触で当接可能であり、
前記第2のシール部材は円錐筒状であって前記本体に設置され、前記弁体のテーパ外周面にシール円で当接可能であり、
前記シール円は、前記環状平面の径方向内方に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の安全弁。
【請求項10】
前記第2のシール部材は、内方シールと外方シールとを有し、
前記弁体は、前記内方シールに当接可能な内側テーパ面と、前記内方シールの径方向外側にて前記外方シールに当接可能な外側テーパ面とを有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の安全弁。
【請求項11】
前記安全弁の軸線に対する、前記テーパ外周面の傾斜角θ1は、前記第2のシール部材の内周面の傾斜角θ2より小さい、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の安全弁。
【請求項12】
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材は、ゴム又は樹脂製である、
ことを特徴とする請求項2に記載の安全弁。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍サイクル内で冷媒が所定値以上に高圧となると開弁して、高圧冷媒を逃がすことにより、冷凍サイクル機器を異常高圧から保護する安全弁が知られている。
【0003】
一般的な安全弁においては、ばねにより付勢された状態で、金属製である環状の弁座にゴム製である円盤状の弁体が当接することにより、流体漏れなく閉弁状態を確保している。しかしながら、長期間にわたって弁座が弁体に対して付勢されていると、弁体の当接部位にへたりが生じ、弁座と弁体の食いつきが生じて開弁圧が変動する恐れがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、第2の突起3bが弾性環状区域2bに当接することにより閉弁動作を実現するとともに、外部水圧が増大した場合には、第1の突起3aが剛性環状区域2aに着座することにより、第2の突起3bが弾性環状区域2bに食い込みすぎることを抑制できる安全弁が開示されている。かかる安全弁によれば、第2の突起3bが弾性環状区域2bに食い込みすぎることを抑制できることから、弾性環状区域2bのへたりの抑制も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-199975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の安全弁においては、弁蓋3の細いシャフトが外筒5の頂壁に形成された開口に摺動可能に嵌合しており、開口に対してシャフトが傾きやすいという問題がある。開口に対してシャフトが傾くと、開口とシャフトとの競り合いが生じ摺動が阻害される。また、シャフトの周囲に第1の突起3aと第2の突起3bが形成されているため、開口に対してシャフトが傾くと、第2の突起3bと弾性環状区域2bとの当接が周方向において不均一となり、それにより流体漏れを生じる恐れもある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、流体漏れを抑制しつつ、安定した開弁圧を確保でき、さらに円滑な動作を可能とする安全弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の安全弁は、
流体の導入路、流体の排出路及び内周面を備えた金属製の本体と、
前記本体の内周面に対して軸線方向に摺動可能な摺動面を備えた金属製の弁体と、
前記本体及び前記弁体との間をシールする複数のシール部材と、を有し、
前記複数のシール部材の一部が前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、前記複数のシール部材の他部が前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体漏れを抑制しつつ、安定した開弁圧を確保でき、さらに円滑な動作を可能とする安全弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態の安全弁の軸線方向断面図である。
図2図2は、第1の実施形態の安全弁の弁座周辺を拡大して示す図である。
図3図3は、変形例にかかる安全弁の図2と同様な断面拡大図である。
図4図4は、別の変形例にかかる安全弁の図2と同様な断面拡大図である。
図5図5は、第2の実施形態の安全弁の軸線方向断面図である。
図6図6は、第2の実施形態の安全弁の弁座周辺を拡大して示す図である。
図7図7は、変形例にかかる安全弁の図6と同様な断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、ここでは本発明を、主としてカーエアコンなどの冷凍サイクルに使用される安全弁に適用した例を説明するが、本発明に係る安全弁は、冷凍サイクル以外にも様々なものに適用することができる
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の安全弁1の軸線方向断面図である。図2は、安全弁1の弁座周辺を拡大して示す図である。安全弁1の中心線を軸線Lとする。
【0013】
図1において、安全弁1は、本体2と、弁体3と、ねじ部材4と、コイルばね(付勢部材)5とからなる。金属製(例えば真鍮製)である本体2は、外周が例えば六角筒状であり、内周が例えば円筒状である周壁21と、周壁21の一端を遮蔽する端壁22と、端壁22の中央に形成された軸部23とが連設されてなる。軸部23の周囲には、雄ねじ23aが形成されている。
【0014】
軸線Lに沿って、軸部23及び端壁22を貫通する導入路24が形成されている。導入路24は、本体2内に開口している。導入路24の周囲において、環状の弁座(本体環状部ともいう)22aが端壁22の周壁21側の面に形成されている。弁座22aの径方向外側における端壁22の設置平面22bは、軸線Lに直交する平坦面である。設置平面22bには、環状板状の第1のシール部材25が、例えば加硫接着により固定される。第1のシール部材25は、弁座22aから周壁21の内周まで延在する。第1のシール部材25を形成する材料は、例えば樹脂(PTFE等)であり、さらに樹脂の一例としてはゴムである。ゴムは、天然ゴム及び合成ゴムを含む。
【0015】
本体2の周壁21は、端壁22側の縮径内周部21aと、端壁22とは反対側になる端部側の拡径内周部(排出路ともいう)21bとを有する。縮径内周部21aと拡径内周部21bとは、テーパ内周部により接続されていてよい。拡径内周部21bには、雌ねじ21cが形成されている。
【0016】
縮径内周部21aの内周に対し、弁体3が軸線Lに沿って摺動可能に配置されている。金属製(例えば真鍮製)である弁体3は、外周が略四角筒状(ただしそれに限られず、例えば断面が多角形状となる筒状でもよい)であり内周が例えば円筒状である外壁31と、導入路24側の端部近傍において外壁31を遮蔽する仕切り壁32と、仕切り壁32から端壁22側に突出する環状脚部33とが連設されてなる。外壁31の外周を構成する四平面のうち隣接するもの同士は、軸線Lに同軸な部分円筒面により接続されている。この部分円筒面が縮径内周部21aに対して摺動可能な摺動面31aとなっている。
なお、弁体3は、断面が多角形状となる筒状に形成されることに限定されない。弁体3は、本体2の内周面に対して摺動する摺動部と摺動しない部分とを有し、当該摺動しない部分と本体2の内周面との間に流路を構成できる形状であればよい。この一例としては弁体3の形状は断面が多角形状となる筒状であり、略四角筒状はその一例である。
【0017】
環状脚部33の内径は、外壁31の内径に略等しいが、環状脚部33の外径は、外壁31の最大外寸より小さい。仕切り壁32の中央には、開口32aが貫通して形成されている。外壁31は、仕切り壁32から離間するにつれて拡径するテーパ内周面を有すると好ましい。開口32aは、環状脚部33内に後述する第2のシール部材34を取り付ける作業中において、仕切り壁32、環状脚部33、及び第2のシール部材34で構成される空間内の空気を排出するための開口である。
【0018】
図2において、環状脚部33は、先端側の薄肉部33aと、段部33bと、端壁22から離間するにつれて拡径するテーパ部33cとを有している。薄肉部33aの外周と、外壁31の外周とは、段部33bとテーパ部33cを介して接続される。
【0019】
薄肉部33aの端部は、例えば、設置平面22bに向かって突出する曲面に形成されている。本実施形態では、図2に示す軸線Lに沿った断面において、薄肉部33aの端部形状は略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、環状脚部33は第1のシール部材25の対向する面に当接可能となっている。弁座22aの端部は、例えば弁体3に向かって突出する曲面に形成されている。本実施形態では、図2に示す軸線Lに沿った断面において、弁座22aの端部は、略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、弁座22aは第2のシール部材34の対向する面に当接可能となっている。
【0020】
第1のシール部材25は、第2のシール部材34より硬度が低く、かつ、本体2の軸線方向に沿う厚みが第2のシール部材34より薄い。第1のシール部材25は、コイルばね5の付勢力によって潰れて圧縮された初期状態で、圧縮された部分の厚みが第2のシール部材34の圧縮された部分に比較して薄くなるように設定される。その結果、第1のシール部材25の圧縮された部分は、へたりが生じても、へたりに起因する変形量を小さく抑えることができる。すなわち、環状脚部33の最先端から設置平面22bまでの距離の変化を小さく抑えることができる。
【0021】
本実施形態においては、第1シール部材25の硬度及び厚みは、コイルばね5の付勢力によって環状脚部33と設置平面22bとを互いにメタルコンタクトに近い状態となるように設定されているので、環状脚部33の最先端から設置平面22bまでの距離の変化の程度を、より一層小さくできる。
【0022】
より具体的に説明すると、環状脚部33は、安全弁1の閉弁状態において設置平面22bに設置された第1のシール部材25に当接する。第1のシール部材25は、環状脚部33の当接によりシールを構成する。第1のシール部材25は、環状脚部33が第1のシール部材25に当接してシールを構成している状態において、コイルばね5の付勢力に従い環状脚部33の先端に押圧されるが、初期状態から、ほとんど圧縮されない(環状脚部33の最先端と設置平面22bとの距離がほとんど変化しない)。これにより、環状脚部33が設置平面22bとメタルコンタクト(金属同士が当接)している状態に近くなるので、長時間が経過しても第1のシール部材25の当接部がへたりにより圧縮されることがほとんどない。一方、環状脚部33の最先端の周囲においては、第1のシール部材25がわずかに弾性変形を生じることで、環状脚部33との接触面積を増大させて環状脚部33との密着度を向上し、後述する本体2及び弁体3で構成されるシールに比較して高いシール性を有する。なお、例えば第1のシール部材25に、環状脚部33の先端に対応した環状凹部または小開口を予め形成することにより、上述の作用効果を高めることもできる。
【0023】
また、仕切り壁32の導入路24側に対向する面には、第2のシール部材34が、例えば加硫接合により固定されている。第2のシール部材34は、例えば円板状に形成されており、第2のシール部材34の外周は環状脚部33の内周に当接している。第2のシール部材34は、弁体3に弾性変形可能に保持されている。
【0024】
第2のシール部材34は、安全弁1の閉弁状態において弁座22aが当接して弁座22aとの間にシールを構成する。第2のシール部材34は、弁座22aが第2のシール部材34に当接してシールを構成している状態において、当接前の状態に比較して潰れや凹みなどの変形を生じることで弁座22aとの接触面積を増大させて弁座22aとの密着度を向上し、高いシール性を有する。
【0025】
このような第2のシール部材34を形成する材料は、例えば樹脂であり、さらに樹脂の一例としてはゴムである。ゴムは、天然ゴム及び合成ゴムを含む。
【0026】
ここで、第1のシール部材25の硬度を、第2のシール部材34の硬度より低くすることにより、環状脚部33と第1のシール部材25との気密性を確保できる。本実施形態で言う硬度は、コイルばね5の付勢力によるシール部材の変形のしやすさを示しており、一例として後述するようにデュロメータ硬度を用いることから、硬度が低いほど、変形を生じやすいことを示す。すなわち、それぞれ同一荷重を受けたとき、第1のシール部材25は、第2のシール部材34より変形しやすい。
【0027】
例えば第1のシール部材25の硬度をデュロメータ硬さ試験で80未満とし、第2のシール部材34の硬度をデュロメータ硬さ試験で80以上とすることができる。
【0028】
なお、デュロメータ硬度は、第1のシール部材25及び第2のシール部材34の硬度を示す一例であり、これに限定されない。第1のシール部材25及び第2のシール部材34の硬度は、例えば、ロックウェル硬度で表されてもよい。第1のシール部材25及び第2のシール部材34の硬度は、それぞれを構成する材料に適した硬度で表されてよい。本実施形態では、第1のシール部材25及び第2のシール部材34は一例としてゴムであるため、弾性体であるゴムに適したデュロメータ硬度やロックウェル硬度が例として用いられている。
【0029】
また第1のシール部材25の軸線方向厚み(例えば2mm以下)を、第2のシール部材34の軸線方向厚み(例えば3mm以上)より薄くすることにより、たとえ第1のシール部材25にへたりが生じた場合でも、環状脚部33と設置平面22bとの距離の変化度合いを抑制できる。すなわち、環状脚部33が設置平面22bとメタルコンタクトしている状態に近づけることができる。第1のシール部材25の軸線方向厚みは、第2のシール部材34の軸線方向厚みより1mm以上薄いことが望ましい。
【0030】
本実施形態のように、シール部材が2つある場合においては、導入路24に近い側(冷媒の流れ方向の最上流側)におけるシール部材の硬度を、拡径内周部21bに近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)におけるシール部材の硬度より高くし、かつ導入路24に近い側におけるシール部材の軸線方向厚みを、拡径内周部21bに近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)におけるシール部材の軸線方向厚みより大きくすることが望ましい。以下の実施形態においても同様である。
【0031】
なお、第1のシール部材25及び第2のシール部材34の材料は、安全弁1が用いられる装置を流れる流体、換言すると安全弁1が開弁した状態において安全弁1を通過する流体に対して十分なシール性を有する材料であれば樹脂以外であってもよく、例えば厚紙などの紙であってもよい。
【0032】
図1において、ねじ部材4は、大径部41と、小径部42とが連設されてなる。大径部41は、軸線Lに平行に貫通する複数の貫通開口41aと、外周の雄ねじ41bとを有する。雄ねじ41bを本体2の雌ねじ21cに螺合させることで、ねじ部材4は本体2に取り付けられる。後述する開弁圧調整を経て、ねじ部材4は本体2に対して封止剤等で封止固定される。ただしねじ部材4は、カシメにより本体2に対して固定されてもよい。
【0033】
小径部42の周囲において、弁体3の仕切り壁32と大径部41との間にはコイルばね5が配置されており、ねじ部材4を介して、本体2に対して仕切り壁32を端壁22に向う側に付勢している。かかる付勢力に応じて、環状脚部33は第1のシール部材25に対し軸線Lを中心とした第1のシール円で当接し、また弁座22aも第2のシール部材34の対向する面に、第1のシール円より径方向内側となる第2のシール円で当接する。このため、安全弁1は二重のシール円を持つこととなり、安全弁1の流体漏れ抑制効果が高まる。第2のシール円の径方向幅が、第1のシール円の径方向幅より大きくなると好ましい。これにより第2のシール円においてシール面積を確保しつつ、第1のシール円において開弁時の抵抗が増大することを抑制している。「シール円」とは、全周にわたって当接がなされる円状領域をいう。
【0034】
また、第1のシール部材25と第2のシール部材34の硬度および厚みを適切に設定することにより、金属の弁座22aが第2のシール部材34に当接する際に、第2のシール部材34の弾性変形が生じたのちに環状脚部33と第1のシール部材25とを当接させることができる。これにより、部品精度を高めることなく、環状脚部33と第1のシール部材25と、弁座22aと第2のシール部材34との当接を両立させることができる。
【0035】
本実施形態によれば、環状脚部33と第1のシール部材25とがメタルコンタクトに近い状態で当接しているため、第2のシール部材34に対する弁座22aの押圧力を制限できる。このため、コイルばね5の付勢力が本体2と弁体3との間に長期間にわたって付与された場合でも、弁座22aと第2のシール部材34との軸線方向位置が変化せず、第2のシール部材34のへたりを抑制できる。これにより、安全弁1に設定された初期開弁圧を長期間にわたって安定して確保できる。
【0036】
また、本実施形態において、第1のシール部材25に当接する環状脚部33の薄肉部33aの径(すなわち第1のシール円の径)は、本体2の周壁21に摺動可能に嵌合する弁体3の外壁31の径よりも小さい。このため、本体2に対して弁体3に傾きが生じた場合に、第1のシール円の径が外壁31の摺動面径よりも大きい場合に比べると、設置平面22bに対する薄肉部33aの軸線方向変位量が抑えられ、それにより流体漏れを抑制できる。同時に、弁座22aと第2のシール部材34の軸線方向変位量も抑制できるため、第2のシール部材34のへたりを抑制できることとなる。さらに、軸線Lから比較的遠い位置に摺動面31aがあるので、本体2に対する弁体3の傾きも抑制でき、それにより本体2に対する弁体3の変位もスムーズに行える。
【0037】
(安全弁の動作)
安全弁1は、冷凍サイクルにおける冷媒(流体)が通過する不図示の配管や機器のねじ穴に、軸部23の雄ねじ23aを螺合させることで取り付けられる。冷媒の圧力は、冷媒が導入される導入路24を介して安全弁1内に伝達される。このとき、仕切り壁32には、弁座22a側の冷媒圧力による力Faと、本体2の内部圧力による力Fbと、コイルばね5の付勢力Fcと、第2のシール部材34の復元力(圧縮変形したときの弾性力)Fdが付与される。このため、安全弁1が閉弁状態であるときは、以下の式(1)の関係が成立する。
Fa<Fb+Fc+Fd (1)
【0038】
ここで、Fb+Fc+Fdに対応する圧力が、安全弁1の開弁圧となる。安全弁1の周囲圧力(気圧)はほぼ一定であるから、力Fbは一定となる。したがって、本体2に対するねじ部材4の螺合量を調整することで、上記(1)式における付勢力Fcの値が増減するため、開弁圧の調整が可能となる。
【0039】
冷凍サイクルの動作時に、冷媒の圧力が高まると導入路24の内圧が増大し、それにより増大した力Fa’が生じる。力Fa’が閾値を超えると、以下の式(2)の関係となるため、安全弁1が開弁状態となる。
Fa’>Fb+Fc+Fd (2)
【0040】
上記(2)の関係が成立すると、導入路24内の圧力により、コイルばね5の付勢力に抗して、周壁21の内周面に対して外壁31の摺動面31a(部分円筒面)が摺動しつつ本体2に対して弁体3が開弁方向(図1で右方向)に変位させられ、それにより弁座22aと第2のシール部材34とが離間し、その間の隙間を介して冷媒が径方向外方に流出する。
【0041】
なお、第2のシール部材34の変形が小さい場合は、第2のシール部材34の復元力の影響も小さくなるため、第2のシール部材34の復元力を略ゼロとみなして、式(2)について、Fa’>Fb+Fcと考えることもできる。
【0042】
さらに、本体2に対して弁体3が開弁方向に変位させられると、環状脚部33が端壁22の第1のシール部材25から離間する。このとき、導入路24を通過した冷媒が、弁座22aと第2のシール部材34との間の隙間を介して径方向外方に流出し、さらに環状脚部33と第1のシール部材25との間の隙間から流出し、周壁21と、薄肉部33a、テーパ部33c及び外壁31の略四角筒状である外周との間の隙間を通過して、排出路としての拡径内周部21bを通り、ねじ部材4の貫通開口41aを介して外部へと流出する。
【0043】
導入路24内の冷媒圧力が低下して、上記式(1)の関係を満たすようになると、弁座22aと第2のシール部材34とが当接し、また環状脚部33と第1のシール部材25とが当接する。これにより安全弁1は、冷媒の流出を停止させる。
【0044】
(変形例1)
図3は、変形例にかかる安全弁の図2と同様な断面拡大図である。本変形例においては、第1の実施形態に対して、本体2A、第1のシール部材25A及び第2のシール部材34Aの構成が主として異なる。より具体的には、本体2Aには、端壁22Aに、内方弁座22A1と、内方弁座22A1よりも径方向外方に同軸に配置された外方弁座22A2とが形成されている。
【0045】
内方弁座22A1の端部は、例えば弁体3に向かって突出する曲面に形成されている。本変形例では、図3に示す軸線Lに沿った断面において、内方弁座22A1の端部は、略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、内方弁座22A1は第2のシール部材34の対向する面に当接可能となっている。
【0046】
外弁座22A2の端部は、例えば弁体3に向かって突出する曲面に形成されている。本変形例では、図3に示す軸線Lに沿った断面において、外方弁座22A2の端部は、略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、外方弁座22A2は、内方弁座22A1の径方向外側で第2のシール部材34の対向する面に当接可能となっている。
【0047】
一方、第2のシール部材34Aは、内方環状シール(内方シールともいう)34Aaと、内方環状シール34Aaの外周に嵌合する(ただし嵌合に限定されない)外方環状シール(外方シールともいう)34Abとからなる。さらに外方弁座22A2と周壁21との間の設置平面22Abに、第1のシール部材25Aが配置されている。それ以外の構成は、上述した実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0048】
内方弁座22A1の先端が、内方環状シール34Aaに当接して第1のシール円が形成され、外方弁座22A2の先端が、外方環状シール34Abに当接して第3のシール円が第1のシール円より径方向外側に形成され、環状脚部33が第1のシール部材25Aに当接して第2のシール円が第3のシール円より径方向外側に形成される。このため、内方弁座22A1及び外方弁座22A2と第2のシール部材34Aとの当接は、当接面積が比較的大きな面接触となり、これにより流体漏れをさらに抑制することができる。
【0049】
このように本変形例の安全弁は、三重のシール円を持つこととなり、シールの接触面積を増大させることができるため、流体漏れをさらに抑制することができる。なお、第2のシール部材34Aに当接する弁座を3つ以上設けてもよい。
【0050】
第1のシール部材25Aの硬度は、内方環状シール34Aa及び外方環状シール34Abの硬度よりも低く、また第1のシール部材25Aの軸線方向厚みは、内方環状シール34Aa及び外方環状シール34Abの軸線方向厚みより薄い。冷媒の流れ方向最上流側にある内方環状シール34Aaの硬度は、それより下流側の外方環状シール34Abの硬度よりも硬いと好ましいが、それに限られない。また、内方環状シール34Aaの軸線方向厚みは、外方環状シール34Abの厚みよりも厚いと好ましいが、それに限られない。
【0051】
ただし、シール部材が3つ以上ある場合において、導入路24に近い側(冷媒の流れ方向の最上流側)におけるシール部材の硬度を、それ以外のシール部材(ただし排出路に最も近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)のシール部材を除く)の硬度に等しいか又はより高くすることが望ましい。あるいは、排出路に近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)におけるシール部材の硬度を、それ以外のシール部材(ただし導入路24に最も近い側(冷媒の流れ方向の最上流側)のシール部材を除く)の硬度に等しいか又はより低くすることが望ましい。より好ましくは、導入路24から排出路に向かうにつれて、シール部材の硬度を順次低くすることである。以下の変形例においても同様である。
【0052】
また、シール部材が3つ以上ある場合において、導入路24に近い側(冷媒の流れ方向の最上流側)におけるシール部材の軸線方向厚みを、それ以外のシール部材(ただし排出路に最も近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)のシール部材を除く)の軸線方向厚みに等しいか又はより厚くすることが望ましい。あるいは、排出路に近い側(冷媒の流れ方向の最下流側)におけるシール部材の厚みを、それ以外のシール部材(ただし導入路24に最も近い側(冷媒の流れ方向の最上流側)のシール部材を除く)の厚みに等しいか又はより薄くすることが望ましい。より好ましくは、導入路24から排出路に向かうにつれて、シール部材の厚みを順次薄くすることである。以下の変形例においても同様である。
【0053】
なお、本体又は弁体がシール部材に対して曲面(3次元)で当接する場合には、第2のシール円(または第3のシール円)とは、当接した曲面を軸線Lに沿って、軸線Lに直交する平面に投影した際におけるその投影像の円をいい、また第2のシール円(または第3のシール円)の径方向幅とは、その投影像の径方向幅をいうものとする。
【0054】
また、内方弁座22A1及び外方弁座22A2の形状に対応して、予め第2のシール部材34Aの対向面に、環状の凹部34Ac、34Adを形成してもよい。
【0055】
(変形例2)
図4は、別の変形例にかかる安全弁の図2と同様な断面拡大図である。本変形例においては、第1の実施形態に対して、弁体3B及び第2のシール部材34Bの構成が主として異なる。より具体的には、弁体3Bの仕切り壁32Bには、外側環状脚部33B1と、外側環状脚部33B1の径方向内側に同軸に形成された内側環状脚部33B2とが形成されている。
【0056】
外側環状脚部33B1は、先端側の薄肉部33B1aと、段部33B1bと、端壁22から離間するにつれて拡径するテーパ部33B1cとを有している。薄肉部33B1aの外周と、外壁31の外周とは、段部33bとテーパ部33cを介して接続される。
【0057】
薄肉部33B1aの端部は、例えば、設置平面22bに向かって突出する曲面に形成されている。本変形例では、図4に示す軸線Lに沿った断面において、薄肉部33B1aの端部形状は略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、環状脚部33B1は第1のシール部材25の対向する面に当接可能となっている。
【0058】
内側環状脚部33B2は、先端側の薄肉部33B2aを有し、薄肉部33B2a以外は円管状となっている。
【0059】
薄肉部33B2aの端部は、例えば、設置平面22bに向かって突出する曲面に形成されている。本変形例では、図4に示す軸線Lに沿った断面において、薄肉部33B2aの端部形状は略半円状(または円弧状)となっており、組付けた状態で、環状脚部33B2は、外側環状脚部33B1の径方向内側で第1のシール部材25の対向する面に当接可能となっている。
【0060】
また第2のシール部材34Bは、内側環状脚部33B2の径方向内方に配置される。それ以外の構成については、第1のシール部材25及び第2のシール部材34Bの硬度や厚みを含め、上述した実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0061】
弁座22aの先端が、第2のシール部材34Bに当接して第1のシール円が形成され、内側環状脚部33B2の先端が、第1のシール部材25に当接して第3のシール円が第1のシール円より径方向外側に形成され、外側環状脚部33B1の先端が第1のシール部材25に当接して第2のシール円が第3のシール円より径方向外側に形成される。このため、内側環状脚部33B2及び外側環状脚部33B1と第1のシール部材25との当接は、当接面積が比較的大きな面接触となり、これによりへたり及び流体漏れをさらに抑制することができる。
【0062】
このように本変形例の安全弁も、三重のシール円を持つこととなり、シールの接触面積を増大させることができるため、流体漏れをさらに抑制することができる。なお、第1のシール部材25に当接する環状脚部を3つ以上設けてもよい。
【0063】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の安全弁1Cの軸線方向断面図である。図6は、安全弁1Cの弁座周辺を拡大して示す図である。安全弁1Cの中心線を軸線Lとする。
【0064】
図5において、安全弁1Cは、本体2Cと、弁体3Cと、ねじ部材4Cと、コイルばね5Cとからなる。金属製(例えば真鍮製)である本体2Cは、外周が例えば略六角筒状(ただしそれに限られず、例えば略多角形状でもよい)であり内周が例えば円筒状である周壁21Cと、周壁21Cの一端を遮蔽する端壁22Cと、端壁22Cの中央に植設された軸部23Cとが連設されてなる。軸部23Cの周囲には、雄ねじ23Caが形成されている。
【0065】
軸線Lに沿って、軸部23C及び端壁22Cを貫通する導入路24Cが形成されている。導入路24Cは、本体2C内に開口している。
【0066】
本体2Cの周壁21Cは、端壁22C側の縮径内周部21Caと、端壁22Cとは反対側になる端部側の拡径内周部(排出路ともいう)21Cbとを有する。縮径内周部21Caと拡径内周部21Cbとは、テーパ内周部により接続されていてよい。拡径内周部21Cbには、雌ねじ21Ccが形成されている。
【0067】
端壁22Cは、軸線直交方向に延在し本体2Cの内部を向いた環状平面22Caと、環状平面22Caから離間するにつれて縮径しつつ導入路24Cに接続するテーパ内周面22Cbとを有する。
【0068】
縮径内周部21Ca内に弁体3Cが、軸線Lに沿って摺動可能に配置されている。金属製(例えば真鍮製)である弁体3Cは、外周が例えば略四角筒状(ただしそれに限られず、例えば略多角形状でもよい)であり内周が例えば円筒状である外壁31Cと、導入路24C側の端部に配置された円錐状のコーン壁(コーン部ともいう)32Cと、外壁31Cとコーン壁32Cとをつなぐ接続壁部33Cとが連設されてなる。コーン壁32Cは、テーパ内周面22Cbに対向するテーパ外周面32Cbを有し、また接続壁部33Cは、環状平面22Caに対向する設置平面33Caを有する。コーン壁32Cの導入路24C側の端部は、組付けられた状態で導入路24C内に進入する平坦面となっており、その中央に円錐状の凹部32Caが形成されている。なお、弁体3Cは、断面が多角形状となる筒状に形成されることに限定されない。弁体3Cは、本体2Cの内周面に対して摺動する摺動部と摺動しない部分とを有し、当該摺動しない部分と本体2Cの内周面との間に流路を構成できる形状であればよい。この一例としては弁体3Cの形状は断面が多角形状となる筒状であり、略四角筒状はその一例である。
【0069】
テーパ内周面22Cbには、円錐筒形状である第2のシール部材34Cが加硫接合により固定されている。第2のシール部材34Cの導入路24C側の端部は、導入路24Cと同径または略同径であると好ましく、第2のシール部材34Cの環状平面22Ca側の端部は、環状平面22Caと面一または略面一となる平面を有すると好ましい。
【0070】
設置平面33Caには、環状板状である第1のシール部材25Cが例えば加硫接合により固定されている。第1のシール部材25Cは、テーパ外周面32Cbまで径方向内方に延在している。このため、第1のシール部材25Cの一部は、第2のシール部材34Cの端部に重なり密着可能となっている。
【0071】
図6に示す断面において、軸線L(実際の位置とは異なる)に対するテーパ外周面32Cbの傾斜角θ1は、第2のシール部材34Cの内周面の傾斜角θ2より小さくなっている。このため、テーパ外周面32Cbは、第2のシール部材34Cに対して(図6の点P1で)全周にわたって線接触する。点P1は、図6に示す断面における、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの接点であり、点P1は、第2のシール部材34Cの弁体3に面する面のうち、導入路24C側の縁に相当する。
【0072】
外壁31Cの外周を構成する四平面のうち隣接するもの同士は、軸線Lに同軸な部分円筒面により接続されている。この部分円筒面が縮径内周部21Caに対して摺動可能な摺動面31Ca(図6)となっている。
【0073】
環状平面22Caは、安全弁1Cの閉弁状態において設置平面33Caに設置された第1のシール部材25Cに面で当接する。第1のシール部材25Cは、環状平面22Caが第1のシール部材25Cに当接してシールを構成している状態において、コイルばね5の付勢力に従い環状平面22Caに対して押圧されるが、ほとんど圧縮されない(環状平面22Caと設置平面33Caとの距離が変化しない)。これにより、環状平面22Caが設置平面33Caとメタルコンタクトしている状態に近くなるので、長時間が経過しても第1のシール部材25Cがへたりにより圧縮されることがほとんどない。
【0074】
このような第1のシール部材25Cを形成する材料は、例えば樹脂(PTFE等)であり、さらに樹脂の一例としてはゴムである。ゴムは、天然ゴム及び合成ゴムを含む。
【0075】
一方、第2のシール部材34Cは、安全弁1Cの閉弁状態においてテーパ外周面32Cbが当接してテーパ外周面32Cbとの間にシールを構成する。第2のシール部材34Cは、テーパ外周面32Cbが第2のシール部材34に当接してシールを構成している状態において、当接前の状態に比較して潰れや凹みなどの変形を生じることでテーパ外周面32Cbとの接触面積を増大させてテーパ外周面32Cbとの密着度を向上させることができる。
【0076】
このような第2のシール部材34Cを形成する材料は、例えば樹脂であり、さらに樹脂の一例としてはゴムである。ゴムは、天然ゴム及び合成ゴムを含む。
【0077】
第1のシール部材25Cの硬度を、第2のシール部材34Cの硬度より低くすることにより、環状平面22Caと第1のシール部材25Cとの気密性を確保できる。例えば第1のシール部材25Cを形成する材料の硬度をデュロメータ硬さ試験で80未満とし、第2のシール部材34Cを形成する材料の硬度をデュロメータ硬さ試験で80以上とすることができる。
【0078】
本実施形態で言う硬度は、コイルばね5の付勢力によるシール部材の変形のしやすさを示しており、一例として後述するようにデュロメータ硬度を用いることから、硬度が低いほど、変形を生じやすいことを示す。すなわち、それぞれ同一荷重を受けたとき、第1のシール部材25Cは、第2のシール部材34Cより変形しやすい。
【0079】
なお、デュロメータ硬度は、第1のシール部材25C及び第2のシール部材34Cの硬度を示す一例であり、これに限定されない。第1のシール部材25C及び第2のシール部材34Cの硬度は、例えば、ロックウェル硬度で表されてもよい。第1のシール部材25C及び第2のシール部材34Cの硬度は、それぞれを構成する材料に適した硬度で表されてよい。本実施形態では、第1のシール部材25C及び第2のシール部材34Cは一例としてゴムであるため、弾性体であるゴムに適したデュロメータ硬度やロックウェル硬度が例として用いられている。
【0080】
また第1のシール部材25Cの軸線方向厚み(例えば2mm以下)を、第2のシール部材34Cの軸線方向厚み(例えば3mm以上)より薄くすることにより、たとえ第1のシール部材25Cにへたりが生じた場合でも、環状平面22Caと設置平面33Caとの距離の変化度合いを抑制できる。すなわち、環状平面22Caが設置平面33Caとメタルコンタクトしている状態に近づけることができる。第1のシール部材25Cの軸線方向厚みは、第2のシール部材34Cの軸線方向厚みより1mm以上薄いことが望ましい。
【0081】
なお、第1のシール部材25Cと第2のシール部材34Cの材料は、安全弁1Cが用いられる装置を流れる流体、換言すると安全弁1Cが開弁した状態において安全弁1Cを通過する流体に対して十分なシール性を有する材料であれば樹脂以外であってもよく、例えば厚紙などの紙であってもよい。
【0082】
上述したように、弁体3Cのテーパ外周面32Cbの傾斜角θ1が、第2のシール部材34Cの内周面の傾斜角θ2より小さくなっているため、点P1を通る第1のシール円と、第1のシール部材25Cとの間には、円錐状の空間TSが生じる。
【0083】
図5において、例えば短円筒状のねじ部材4Cは、弁体3C側の面に円筒孔4Caを形成し、外側を向いた面に、不図示の工具を係合可能な係合孔4Ccを、円筒孔4Caと連通して有する。ねじ部材4Cの外周には、雄ねじ4Cbが形成されている。雄ねじ4Cbを、本体2Cの雌ねじ21Ccに螺合させることで、ねじ部材4Cは本体2Cに取り付けられる。開弁圧調整を経て、ねじ部材4Cは本体2Cに対して封止剤等で封止固定される。ただしねじ部材4Cは、カシメにより本体2Cに対して固定されてもよい。
【0084】
弁体3Cの外壁31C及び円筒孔4Caの内側において、コイルばね5Cが配置されている。コイルばね5Cの内方端は、接続壁部33Cの対向する面に当接し、その外方端は、円筒孔4Caと係合孔4Ccの段部に当接している。コイルばね5Cは、ねじ部材4Cを介して、本体2Cに対して弁体3Cを導入路24C側に付勢している。かかる付勢力に応じて、第2のシール部材34Cは、テーパ外周面32Cbに第1のシール円で当接し、また環状平面22Caは、第1のシール部材25Cに面接触(径方向幅が大きい第2のシール円ともいう)で当接する。このため、安全弁1Cは二重のシール円を持つこととなり、安全弁1Cの流体漏れ抑制効果が高まる。
【0085】
第1のシール部材25Cは、第2のシール部材34Cより硬度が低く、かつ、本体2Cの軸線方向に沿う厚みが第2のシール部材34Cより薄い。第1のシール部材25Cは、コイルばね5Cの付勢力によって潰れて圧縮された初期状態では、圧縮された部分の厚みが第2のシール部材34Cの圧縮された部分に比較して薄くなるように設定される。その結果、第1のシール部材25Cの圧縮された部分は、へたりが生じても、へたりに起因する変形量を小さく抑えることができる。すなわち、設置平面33Caから環状平面22Caまでの距離の変化を小さく抑えることができる。
【0086】
本実施形態においては、第1シール部材25Cの硬度及び厚みは、コイルばね5Cの付勢力によって設置平面33Caと環状平面22Caとを互いにメタルコンタクトに近い状態となるように設定されているので、設置平面33Caから環状平面22Caの距離の変化の程度を、より一層小さくできる。
【0087】
本実施形態によれば、環状平面22Caと第1のシール部材25Cとが当接しているため、第2のシール部材34Cに対するテーパ外周面32Cbの押圧力を制限できる。このため、コイルばね5Cの付勢力が本体2Cと弁体3Cとの間に長期間にわたって付与された場合でも、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの軸線方向位置がほぼ変化せず、第2のシール部材34Cのへたりを抑制できる。それにより、安全弁1Cに設定された初期開弁圧を長期間にわたって安定して確保できる。
【0088】
また、本実施形態において、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの当接部は、本体2Cの周壁21Cに摺動可能に嵌合する弁体3Cの外壁31Cの摺動面31Caよりも径方向内側に位置する。このため、本体2Cに対して弁体3Cに傾きが生じた場合に、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの当接部が外壁31Cの摺動面31Caよりも径方向外側に位置する場合に比べると、テーパ外周面32Cbに対する第2のシール部材34Cの軸線方向変位量が抑えられる。このため、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの間の流体漏れや、第2のシール部材34Cのへたりを抑制できることとなる。さらに、軸線Lから比較的遠い位置に摺動面31Caがあるので、本体2Cに対する弁体3Cの傾きも抑制でき、それにより本体2Cに対する弁体3Cの変位もスムーズに行える。
【0089】
(安全弁の動作)
冷凍サイクルの動作時に、冷媒の圧力が高まると導入路24Cの内圧が増大する。該内圧が開弁圧を超えると、コイルばね5の付勢力に抗して、周壁21Cの内周面に対して外壁31Cの摺動面31Ca(部分円筒面)が摺動しつつ本体2Cに対して弁体3Cが図5で右方(開弁方向)に変位させられる。それにより第2のシール部材34Cに対してテーパ外周面32Cbが離間し、その間の隙間を介して冷媒が流出する。流出した冷媒は、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとの間の空間TSを通過して第1のシール部材25C側に向かう。さらに第1のシール部材25Cと環状平面22Caとが離間することで、冷媒は、その間の隙間を通過し、さらに周壁21Cと外壁31Cの略四角筒状である外周との間の隙間を通過し、ねじ部材4Cの円筒孔4Ca及び係合孔4Ccを介して外部へと流出する。
【0090】
ここで、テーパ外周面32Cbに当接する第2のシール部材34Cが弾性変形しているため、まずテーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとが離間し、次いで第1のシール部材25Cと環状平面22Caとが離間することとなる。これにより、テーパ外周面32Cbと第2のシール部材34Cとが離間した直後において、空間TSの圧力を均一に高めることができ、弁体3Cの傾きを抑制しつつ、本体2Cに対して弁体3Cをスムーズに変位させることができる。
【0091】
導入路24C内の冷媒圧力が低下して、開弁圧が閾値を下回ると、第2のシール部材34Cとテーパ外周面32Cbとが当接し、また第1のシール部材25Cと環状平面22Caとが当接するため、安全弁1Cを介する冷媒の流出は停止される。
【0092】
(変形例)
図7は、変形例にかかる安全弁の図6と同様な断面拡大図である。本変形例においては、第2の実施形態に対して、弁体3D及び第2のシール部材34Dの構成が主として異なる。より具体的には、弁体3Dは、コーン壁32Dにおいて、第1のテーパ外周面(内側テーパ面ともいう)32Dbと、第2のテーパ外周面(外側テーパ面ともいう)32Dcとを有する。第1のテーパ外周面32Dbと、第2のテーパ外周面32Dcの軸線Lに対する傾斜角は略等しく、両者間に傾斜面を挟んでいる。
【0093】
一方、第2のシール部材34Dは、内方環状シール(内方シールともいう)34Daと、内方環状シール34Daの外周に嵌合する外方環状シール(外方シールともいう)34Dbとからなる。内方環状シール34Daの内周と外方環状シール34Dbの内周とは、段差なくつながっていると好ましい。それ以外の構成について、第1のシール部材25C及び第2のシール部材34Dの硬度や厚みを含め、第2の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0094】
第1のテーパ外周面32Dbが、内方環状シール34Daに点P1で当接して第1のシール円が形成され、第2のテーパ外周面32Dcが、外方環状シール34Dbに点P2で当接して第3のシール円が第1のシール円より径方向内側に形成される。点P1は、図7に示す断面における、第1のテーパ外周面32Dbと内方環状シール34Daとの接点であり、点P1は、内方環状シール34Daの弁体3Dに面する面のうち、導入路24C側の縁に相当する。点P2は、図7に示す断面における、第2のテーパ外周面32Dcと外方環状シール部材34Dbとの接点であり、点P2は、外方環状シール34Dbの弁体3Dに面する面のうち、径方向における内側縁と外側縁の間に位置する。また、第1のシール部材25Cが環状平面22Caに対して、第3のシール円より径方向外側で面接触する(径方向幅が大きい第2のシール円が形成されるともいう)。この3つのシール円により、流体漏れをさらに抑制することができる。
【0095】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【0096】
例えば、弁体と本体のうち一方と第1のシール部材との当接によるシール円の数は、少なくとも1つあればよく、例えば、2以上あってもよい。また、弁体と本体のうち他方と第2のシール部材との当接によるシール円の数は、少なくとも1つあればよく、例えば2以上あってもよい。
【0097】
その他、コイルばねは、付勢部材の一例であり、他の例ではコイルばね以外のばねであってもよい。
また、上述の実施形態では、安全弁1、1Cは、複数のシール部材を備える構成の一例として、第1のシール部材及び第2のシール部材を備える例が説明されたが、複数のシール部材は、第1のシール部材及び第2のシール部材に限定されない。例えば、3つ以上のシール部材を有してもよい。このような複数のシール部材のそれぞれは、本体または弁体に配置される構成、とは、複数のシール部材の一部が本体に設けられ、他部が弁体に設けられる構成と、複数のシール部材の全てが本体または弁体に設けられる構成とを含む。上述の実施形態の構成は、これら構成の一例である。
【0098】
(他の変形例)
第2の実施形態の変形例として、第1のシール部材25Cを本体2に設けることもできる。かかる場合、テーパ内周面22Cbに第2のシール部材34Cを例えば接着により固定したのち、環状平面22Caに第1のシール部材25Cを例えば接着により固定すればよい。
【0099】
さらなる変形例として、第1のシール部材25Cと第2のシール部材34Cとを接合して一体化されたシール部品とし、このシール部品を本体2に例えば接着により固定することもできる。
【0100】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の形態)
流体の導入路、流体の排出路及び内周面を備えた金属製の本体と、
前記本体の内周面に対して軸線方向に摺動可能な摺動面を備えた金属製の弁体と、
前記本体及び前記弁体との間をシールする複数のシール部材と、を有し、
前記複数のシール部材の一部が前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、前記複数のシール部材の他部が前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記本体に設けられ、前記弁体に対して前記軸線方向に当接し、または前記複数のシール部材の全てが前記弁体に設けられ、前記本体に対して前記軸線方向に当接する、
ことを特徴とする安全弁。
【0101】
(第2の形態)
前記複数のシール部材は、前記本体と前記弁体のうち一方に配置され、他方が当接する第1のシール部材と、前記本体と前記弁体のうち前記他方に配置され、前記一方が当接する第2のシール部材と、を有し、
前記安全弁が、前記本体に対して前記弁体を前記導入路側に付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする第1の形態の安全弁。
【0102】
(第3の形態)
前記安全弁の開弁時において、流体の流れ方向における最上流側に前記第2のシール部材が配設され、流体の流れ方向における最下流側に前記第1のシール部材が配設され、
前記第1のシール部材の硬度は、前記第2のシール部材の硬度より低く、
前記第1のシール部材の軸線方向厚みは、前記第2のシール部材の軸線方向厚みより小さい、
ことを特徴とする第2の形態の安全弁。
【0103】
(第4の形態)
前記第1のシール部材は前記本体に設置され、前記弁体の環状脚部が当接可能であり、
前記第2のシール部材は前記弁体に設置され、前記本体の弁座に当接可能であり、
前記第1のシール部材と前記環状脚部との当接による第1のシール円は、前記第2のシール部材と前記弁座との当接による第2のシール円よりも径方向外側に位置する、
ことを特徴とする第3の形態の安全弁。
【0104】
(第5の形態)
前記第2のシール部材は、流体の流れ方向における最上流側に配設される内方シールと、前記内方シールよりも下流側に配設される外方シールとを有し、
前記本体は、前記内方シールに当接可能な内方弁座と、前記内方弁座の径方向外側にて前記外方シールに当接可能な外方弁座とを有する、
ことを特徴とする第3の形態又は第4の形態の安全弁。
【0105】
(第6の形態)
前記内方シールの硬度は、前記外方シールの硬度より高く、
前記内方シールの軸線方向厚みは、前記外方シールの軸線方向厚みより大きい、
ことを特徴とする第5の形態の安全弁。
【0106】
(第7の形態)
前記弁体は、前記第1のシール部材と当接可能な内側環状脚部と、前記内側環状脚部の径方向外側において前記第1のシール部材と当接可能な外側環状脚部とを有する、
ことを特徴とする第3の形態~第6の形態のいずれかの安全弁。
【0107】
(第8の形態)
前記環状脚部と前記弁座の端部は、軸線直交方向断面が略半円形状を有する、
ことを特徴とする第4の形態~第7の形態のいずれかの安全弁。
【0108】
(第9の形態)
前記第1のシール部材は環状板状であって前記弁体に設置され、前記本体の環状平面に面接触で当接可能であり、
前記第2のシール部材は円錐筒状であって前記本体に設置され、前記弁体のテーパ外周面にシール円で当接可能であり、
前記シール円は、前記環状平面の径方向内方に位置する、
ことを特徴とする第3の形態の安全弁。
【0109】
(第10の形態)
前記第2のシール部材は、内方シールと外方シールとを有し、
前記弁体は、前記内方シールに当接可能な内側テーパ面と、前記内方シールの径方向外側にて前記外方シールに当接可能な外側テーパ面とを有する、
ことを特徴とする第9の形態の安全弁。
【0110】
(第11の形態)
前記安全弁の軸線に対する、前記テーパ外周面の傾斜角θ1は、前記第2のシール部材の内周面の傾斜角θ2より小さい、
ことを特徴とする第9の形態又は第10の形態の安全弁。
【0111】
(第12の形態)
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材は、ゴム又は樹脂製である、
ことを特徴とする第2の形態~第11の形態のいずれかの安全弁。
【符号の説明】
【0112】
1、1C 安全弁
2、2B、2C 本体
22a、22A1、22A2 弁座
24、24C 導入路
25 第1のシール部材
3、3C、3D 弁体
33、33B1、33B2 環状脚部
34、34A、34C、34D 第2のシール部材
4、4C ねじ部材
5、5C コイルばね
L 軸線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7