IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ部品 図1
  • 特開-タイヤ部品 図2
  • 特開-タイヤ部品 図3
  • 特開-タイヤ部品 図4
  • 特開-タイヤ部品 図5
  • 特開-タイヤ部品 図6
  • 特開-タイヤ部品 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157145
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】タイヤ部品
(51)【国際特許分類】
   A63H 17/26 20060101AFI20241030BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A63H17/26 B
B60C7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071303
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(74)【代理人】
【識別番号】100217892
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 諒
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 輝
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 俊二
【テーマコード(参考)】
2C150
3D131
【Fターム(参考)】
2C150AA13
2C150CA08
2C150DK01
2C150EH16
2C150FB43
2C150FB46
2C150FD01
3D131AA27
3D131AA51
3D131BB16
3D131BB19
3D131BC25
3D131BC51
3D131BC55
3D131CC01
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】ホイールからのタイヤ部品の脱落を抑制でき、且つ、ホイールへのタイヤ部品の装着を容易に行うことが可能なタイヤ部品を提供する。
【解決手段】タイヤ部品100は、玩具用のタイヤ部品100であって、弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部10と、タイヤ本体部10と一体成形されているとともにタイヤ本体部10の内周面11に露出している膜部20と、を有し、膜部20は、タイヤ本体部10よりも低伸長性のものであり、膜部20は、タイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されており、当該タイヤ部品100にホイール30が挿入されたときに、膜部20がホイール30の外周面31に対して当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している膜部と、
を有し、
前記膜部は、前記タイヤ本体部よりも低伸長性のものであり、
前記膜部は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記膜部が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品。
【請求項2】
前記タイヤ本体部の内周面の幅方向における端部において、前記膜部は、径方向外側に向けて屈曲した屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記タイヤ本体部によって内周側から覆われている請求項1に記載のタイヤ部品。
【請求項3】
前記膜部の幅方向における端は、前記タイヤ本体部の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置において終端している請求項1又は2に記載のタイヤ部品。
【請求項4】
前記膜部の幅方向における端は、前記タイヤ本体部の幅方向における端に達している請求項1又は2に記載のタイヤ部品。
【請求項5】
前記膜部は、織布又は不織布により構成されている請求項1又は2に記載のタイヤ部品。
【請求項6】
玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している布と、
を有し、
前記布は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記布が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品。
【請求項7】
玩具用のタイヤ部品であって、
円筒状のタイヤ本体部を有し、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されて、前記ホイールに当該タイヤ部品が装着された状態で、8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持されるタイヤ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の動力により自走するミニ四駆(登録商標)やラジコンカー等の走行玩具用のタイヤ部品は、一般的にはゴム材料などの弾性体のみにより構成されている。
そのようなタイヤ部品には、走行玩具の走行時にホイールから脱落するという課題がある。
【0003】
特許文献1には、タイヤ本体部(同文献の「成形部」)の内周面に沿って帆布等の保形用部材を備えるタイヤ部品(同文献の「タイヤ」)について記載されている。このタイヤ部品は、保形用部材の内周面に沿って配置されたゴム材料層を更に備えている。
同文献には、タイヤ本体部の内周面に沿って保形用部材を設けたことにより、高速回転によるタイヤ部品の変形を防止できる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-308773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者等の検討によれば、特許文献1の技術では、ホイールへのタイヤ部品の装着を容易に行うことができるようにする観点で、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ホイールからのタイヤ部品の脱落を抑制でき、且つ、ホイールへのタイヤ部品の装着を容易に行うことが可能なタイヤ部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している膜部と、
を有し、
前記膜部は、前記タイヤ本体部よりも低伸長性のものであり、
前記膜部は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記膜部が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している布と、
を有し、
前記布は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記布が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、玩具用のタイヤ部品であって、
円筒状のタイヤ本体部を有し、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されて、前記ホイールに当該タイヤ部品装着された状態で、8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持されるタイヤ部品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホイールからのタイヤ部品の脱落を抑制でき、且つ、ホイールへのタイヤ部品の装着を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るタイヤ部品を有するホイール付きタイヤ部品を示す断面図(軸心に沿った断面図)である。
図2】実施形態に係るタイヤ部品を示す断面図(軸心に沿った断面図)である。
図3】実施形態に係るタイヤ部品を示す断面図(軸心に対して直交する平面で切断した断面図)である。
図4図4(a)は変形例1に係るタイヤ部品を示す断面図(軸心に沿った断面図)、図4(b)は変形例2に係るタイヤ部品を示す断面図(軸心に沿った断面図)、図4(c)は変形例3に係るタイヤ部品を示す断面図(軸心に沿った断面図)である。
図5】実施例に係るタイヤ部品を撮像した写真を示す図である。
図6】実施例に係るタイヤ部品と比較例に係るタイヤ部品の脱落時の回転速度を示す図である。
図7】タイヤ部品の脱落時の回転速度を判定する試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0013】
先ず、図1から図3を用いて実施形態を説明する。
図3図2のA-A線に沿った断面図であり、図2図3のA-A線に沿った断面図である。
以下の説明では、タイヤ部品100の軸心を中心とする径方向を単に径方向と称する場合がある。また、以下の説明における幅方向とは、図1図2等に示す幅方向Wの方向であり、タイヤ部品100の軸心に沿った方向である。また、以下の説明では、タイヤ部品100の軸心の周りに周回する方向を単に周方向と称する場合がある。
【0014】
図1から図3に示すように、本実施形態に係るタイヤ部品100は、玩具用のタイヤ部品100であって、弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部10と、タイヤ本体部10と一体成形されているとともにタイヤ本体部10の内周面11に露出している膜部20と、を有する。膜部20は、タイヤ本体部10よりも低伸長性のものであり、膜部20は、タイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されている。タイヤ部品100にホイール30(図1)が挿入されたときに、膜部20がホイール30の外周面31に対して当接する。
【0015】
ここで、「玩具用」とは、ミニ四駆(登録商標)やラジコンカーなどの走行玩具用である。走行玩具とは、人が乗車可能な車両よりも小さい車両型の玩具である。
タイヤ本体部10を構成する弾性体は、ゴム(合成ゴムや天然ゴム)又はサーモプラスチックエラストマー(熱可塑性樹脂ゴム弾性体)のような弾力性に富む材質のものである。
膜部20は、典型的には布(織布又は不織布)であるが、タイヤ本体部10よりも伸びにくい(低伸長性)のものであれば、金属膜や樹脂膜であってもよい。
「膜部20がタイヤ本体部10よりも低伸長性」であるとは、膜部20及びタイヤ本体部10のそれぞれについて、互いに同一寸法(同一の厚み寸法、同一の幅寸法、及び同一の長さ寸法)の試験片を作製し、それら試験片を同一の引っ張り荷重で長さ方向に引っぱったときに、膜部20の方がタイヤ本体部10よりも伸びにくいことを意味する。
膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されているとは、膜部20が内周面11に沿って半周(180°)を超える範囲に亘って配置されていることを意味する。膜部20は、好ましくはタイヤ本体部10の内周面11に沿って270°以上の範囲に亘って配置されており、より好ましくは実質的にタイヤ本体部10の内周面11の全周に亘って配置(355°以上に亘って配置)されており、更に好ましくはタイヤ本体部10の内周面11の360°全周に亘って配置されている。
膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に露出しているとは、膜部20の少なくとも一部分が内周面11に露出していることを意味する。膜部20は、好ましくはタイヤ本体部10の内周面11に沿って半周(180°)以上の範囲に亘って露出しており、より好ましくはタイヤ本体部10の内周面11に沿って270°以上の範囲に亘って露出しており、更に好ましくは実質的にタイヤ本体部10の内周面11の全周に亘って露出(355°以上の範囲に亘って露出)しており、一層好ましくはタイヤ本体部10の内周面11の360°全周に亘って露出している。膜部20は、好ましくはタイヤ本体部10の内周面11の幅方向における半分以上の範囲に亘って露出しており、より好ましくはタイヤ本体部10の内周面11の幅方向における70%以上の範囲に亘って露出している。
膜部20は、タイヤ本体部10を構成する材料(ゴム材料や熱可塑性樹脂材料)が含浸した状態でタイヤ本体部10の内周面11に露出していてもよいし、タイヤ本体部10を構成する材料を含浸せずにタイヤ本体部10の内周面11に露出していてもよい。
【0016】
本実施形態に係るタイヤ部品100によれば、タイヤ本体部10よりも低伸長性の膜部20が、タイヤ本体部10と一体成形されているとともにタイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されている。これにより、タイヤ本体部10が膜部20によって拘束されるので、遠心力によりタイヤ本体部10の径が広がってしまうことを抑制できる。その結果、高速回転時にもタイヤ部品100がホイール30から脱落してしまうことを抑制できる。
しかも、膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に露出しており、タイヤ部品100にホイール30が挿入されたときに、膜部20がホイール30の外周面31に対して当接する。このため、タイヤ部品100をホイール30に嵌める際のホイール30とタイヤ部品100との摩擦抵抗を抑制することができる。すなわち、ホイール30の外周面31に対して膜部20を接触させながらタイヤ部品100をホイール30に嵌めることができるため、タイヤ部品100を滑りよくホイール30に装着することができる。よって、低年齢などの非力なユーザであっても、ホイール30へのタイヤ部品100の装着を容易に行うことができる。これに対し、特許文献1の技術では、保形用部材の内周面に沿ってゴム材料層が配置されているため、ホイールへのタイヤ部品の装着に際し、ゴム材料層とホイールの外周面との間で摩擦抵抗が生じてしまい、ホイールへのタイヤ部品の装着が必ずしも容易ではない。
また、タイヤ本体部10が円筒状に形成されているため、タイヤ本体部10が断面コ字状(断面U字状)に形成されている場合と比べて、ホイール30へのタイヤ部品100の装着を容易に行うことができる。これに対し、特許文献1の技術では、タイヤ本体部が円筒状ではなく、断面コ字状(断面U字状)であるため、タイヤ本体部が円筒状である場合と比べて、タイヤ部品をホイールに対してスムーズに装着することが困難である。
このように、本実施形態によれば、ホイール30からのタイヤ部品100の脱落の抑制とホイール30へのタイヤ部品100の嵌めやすさとの両立が可能となる。
【0017】
また、本実施形態の場合、膜部20は、布により構成されている。
すなわち、本実施形態に係るタイヤ部品100は、玩具用のタイヤ部品100であって、弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部10と、タイヤ本体部10と一体成形されているとともにタイヤ本体部10の内周面11に露出している布(膜部20)と、を有する。布は、タイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されており、タイヤ部品100にホイール30が挿入されたときに、布がホイール30の外周面31に対して当接する。
この場合も、布は、タイヤ本体部10よりも低伸長性であることが好ましいが、必ずしもタイヤ本体部10よりも低伸長性でなくてもよい。
この場合も、布(膜部20)がタイヤ本体部10と一体成形されているとともに、布(膜部20)がタイヤ本体部10の内周面11に沿って周回状に配置されている。これにより、タイヤ本体部10が膜部20によって拘束されるので、遠心力によりタイヤ本体部10の径が広がってしまうことを抑制できる。その結果、高速回転時にもタイヤ部品100がホイール30から脱落してしまうことを抑制できる。布(膜部20)がタイヤ本体部10よりも伸びやすい場合でも、布が追加されたことにより、タイヤ本体部10が膜部20によって拘束されるので、ホイール30からのタイヤ部品100の脱落を抑制できる。
その他、上述したのと同様の効果が得られる。すなわち、この場合も、ホイール30からのタイヤ部品100の脱落の抑制とホイール30へのタイヤ部品100の嵌めやすさとの両立が可能となる。
【0018】
また、本実施形態に係るタイヤ部品100は、玩具用のタイヤ部品100であって、円筒状のタイヤ本体部10を有し、タイヤ部品100にホイール30が挿入されて、ホイール30に当該タイヤ部品100が装着された状態で、8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持される。
この場合、タイヤ本体部10は円筒状であればよく、必ずしも上述した構成に限らない。また、タイヤ部品100は必ずしも膜部20を備えていなくてもよい。ただし、タイヤ本体部10は上述した構成であることが好ましく、タイヤ部品100は上述の膜部20を備えていることが好ましい。
この場合、ホイール30にタイヤ部品100が装着された状態で、8000rpmという高速でホイール30及びタイヤ部品100を回転させたときにも、ホイール30に対するタイヤ部品100の装着状態が維持される。この場合も、高速回転時にもタイヤ部品100がホイール30から脱落してしまうことを抑制できる。
また、タイヤ本体部10が円筒状に形成されているため、タイヤ本体部10が断面コ字状(断面U字状)に形成されている場合と比べて、ホイール30へのタイヤ部品100の装着を容易に行うことができる。
よって、この場合も、ホイール30からのタイヤ部品100の脱落の抑制とホイール30へのタイヤ部品100の嵌めやすさとの両立が可能となる。
【0019】
ここで、ホイール30にタイヤ部品100が装着された状態で8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持されるとは、タイヤ部品100をホイール30に装着して8000rpmで1分間回転させる実験を複数回行って、実験回数の50%超において外れないことを意味する。
ホイール30にタイヤ部品100が装着された状態で8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持されることを確認するための実験においては、タイヤ部品100の内径は、ホイール30の外径に対して96%以上99%以下とする。この実験は、図7に示す実験装置(後述)を用いて、タイヤ部品100を従動輪220(後述)の外周面に対して5N以下の押し付け荷重で常時接触させながら回転させることによって行われる。
【0020】
以下、より詳細に説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態の場合、タイヤ本体部10の内周面11の幅方向における端部において、膜部20は、径方向外側に向けて屈曲した屈曲部21を有する。屈曲部21は、タイヤ本体部10によって内周側から覆われている。
膜部20の端部の屈曲部21がタイヤ本体部10によって覆われているため、すなわち屈曲部21がタイヤ本体部10によって保護されているため、タイヤ部品100をホイール30に装着する際に、ホイール30との摩擦により膜部20が剥離してしまうことを抑制することができる。
ここで、膜部20は、幅方向における少なくとも一方の端部に屈曲部21を有していればよい。本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、膜部20は、幅方向における両方の端部に屈曲部21を有する。
屈曲部21の断面形状(タイヤ部品100の軸心に沿った平面で切断した断面形状)は、例えば、弧状(円弧状)であるが、直線状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0022】
ここで、本実施形態の場合、膜部20における屈曲部21を除く部位の全体、すなわち、一方の屈曲部21と他方の屈曲部21との間の部位の実質的に全体が、タイヤ本体部10の内周面11に露出している。ただし、本発明は、この例に限らず、一方の屈曲部21と他方の屈曲部21との間の部位についても、部分的に、タイヤ本体部10によって内周側から覆われていてもよい。
【0023】
本実施形態の場合、膜部20の幅方向における端20aは、タイヤ本体部10の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置において終端している。すなわち、端20aは、タイヤ本体部10の幅方向における端には達しておらず、タイヤ本体部10の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置に配置されている。
これにより、タイヤ部品100をホイール30に装着する際に、ホイール30の側面との接触により膜部20が剥離してしまうことを抑制することができる。
ここで、膜部20の少なくとも一方の端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置に配置されている。本実施形態の場合、膜部20の両方の端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置に配置されている。
【0024】
本実施形態の場合、図3に示すように、膜部20は、タイヤ本体部10の内周面11の360°全周に亘って配置されており、周方向における膜部20の一端部20bと他端部20cとは互いにオーバーラップしている。
【0025】
タイヤ部品100のタイヤ本体部10及び膜部20よりも内周側の部位は、空洞になっており、ホイール30が嵌入される嵌入孔100aを構成している。図1に示すように、嵌入孔100aにホイール30が配置されるようにして、タイヤ部品100をホイール30に嵌めることによって、タイヤ部品100がホイール30に装着される。
なお、ホイール30の径方向における中央部には、軸が固定される固定孔32が形成されている。軸とは、走行玩具の車軸であり、例えば、走行玩具の駆動用のモータの出力軸などである。
【0026】
本実施形態に係るホイール付きタイヤ部品は、図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ部品100とホイール30とを備えており、タイヤ部品100をホイール30に装着することにより構成されている。
また、本実施形態に係る走行玩具(不図示)は、モータ等の動力により自走するミニ四駆(登録商標)やラジコンカー等の走行玩具であって、本実施形態に係るホイール付きタイヤ部品を備えている。典型的には、走行玩具は、4つのホイール付きタイヤ部品、すなわち左右一対の前輪を構成する2つのホイール付きタイヤ部品と、左右一対の後輪を構成する2つのホイール付きタイヤ部品と、を備える。
【0027】
膜部20は、織布又は不織布により構成されている。膜部20の形態安定性の観点から、膜部20は、帆布等の織布により構成されていることが好ましい。
膜部20を構成する繊維は、特に限定されず、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、ウレタンなどの合成繊維であってもよいし、綿、麻、絹、毛などの天然繊維であってもよい。
【0028】
タイヤ部品100は、タイヤ本体部10を構成する弾性体の成形用材料(ゴム材料や熱可塑性樹脂材料)と、膜部20と、を成形型を用いて一体成形することにより作製することができる。
タイヤ本体部10の材料は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、ACM(アクリルゴム)、VMQ(ビニルメチルシリコーンゴム)又はIIR(ブチルゴム)とすることができる。
【0029】
<変形例1>
次に、図4(a)を用いて変形例1に係るタイヤ部品100について説明する。
本変形例に係るタイヤ部品100は、屈曲部21を有していない点で、上記の実施形態に係るタイヤ部品100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るタイヤ部品100と同様に構成されている。
この場合、図4(a)に示すように、膜部20は、その幅方向における全域に亘ってタイヤ本体部10の内周面11に露出していることが好ましい。
【0030】
<変形例2>
次に、図4(b)を用いて変形例2に係るタイヤ部品100について説明する。
本変形例に係るタイヤ部品100は、膜部20の幅方向における端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端に達している点で、上記の実施形態に係るタイヤ部品100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るタイヤ部品100と同様に構成されている。
本変形例によれば、膜部20の幅方向における端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端に達しているので、より広範囲に亘って膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に露出した構造を実現できる。よって、より広範囲に亘って、タイヤ部品100とホイール30との摩擦抵抗を低減することができる。
【0031】
<変形例3>
次に、図4(c)を用いて変形例3に係るタイヤ部品100について説明する。
本変形例に係るタイヤ部品100は、膜部20の幅方向における端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端に達している点で、上記の変形例1に係るタイヤ部品100と相違しており、その他の点では、上記の変形例1に係るタイヤ部品100と同様に構成されている。
本変形例によれば、膜部20の幅方向における端20aが、タイヤ本体部10の幅方向における端に達しているので、より広範囲に亘って膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に露出した構造を実現できる。よって、より広範囲に亘って、タイヤ部品100とホイール30との摩擦抵抗を低減することができる。
【実施例0032】
以下、実施例及び比較例を説明する。
【0033】
(実施例)
実施例では、上記の実施形態と同様のタイヤ部品100を作製した。ただし、上記においては、周方向における膜部20の一端部20bと他端部20cとは互いにオーバーラップしている例を説明したが、実施例では、膜部20の一端部20bと他端部20cとがオーバーラップしてはおらず、一端部20bと他端部20cとが若干離間しているタイヤ部品100を作製した。実施例のタイヤ部品100の内径は20.0mm、外径は25.5mmであった。タイヤ本体部10の材料としてはブチルゴムを用いた。膜部20としては、ビニロン繊維の織布(帆布)を用いた。
図5は実施例に係るタイヤ部品100の写真を示す。
図5に示すように、膜部20がタイヤ本体部10の内周面11に露出しており、タイヤ部品100にホイール20が挿入されたときに、膜部20がホイール30の外周面31に対して当接するようになっている。
【0034】
(比較例)
比較例に係るタイヤ部品(不図示)は、膜部20を有していない点で実施例に係るタイヤ部品100と相違し、その他の点では実施例に係るタイヤ部品100と同様のものである。
【0035】
実施例に係るタイヤ部品100がホイール30から脱落する回転速度(回転数)と、比較例に係るタイヤ部品がホイール30から脱落する回転速度(回転数)と、を調べる実験を行った。
ここで、ホイール30としては、幅方向において外径寸法がテーパ状に変化し最大外径が20.7mm、最小外径が20.5mmのものを用いた。
実験の結果を図6に示す。図6において、「ブチルゴム+布」は実施例を示し、「ブチルゴムのみ」は比較例を示す。
【0036】
ここで、実験に用いた実験装置について、図7を用いて説明する。
実験装置は、出力軸である回転軸211を有する試験用モータ210と、回転軸211に一体に設けられているホイール30と、を有する。
実験装置は、更に、ホイール30に装着されたタイヤ部品(実施例に係るタイヤ部品100又は比較例に係るタイヤ部品)の外周面に接触してタイヤ部品に伴って回転する従動輪220を備えている。従動輪220は、従動輪220と一体に設けられた従動回転軸230により支持されている。従動回転軸230の両端は、それぞれ支持体240、250により回転可能に軸支されている。実験装置は、試験用モータ210の回転軸211の回転速度(回転数)を検出する回転速度検出部(不図示)を備えており、回転速度検出部による検出結果に基づいて、タイヤ部品の回転速度(回転数)を判定できるようになっている。
【0037】
実施例の実験では、実施例に係るタイヤ部品100をホイール30に装着して、タイヤ部品100の外周面を従動輪220の外周面に対して5N以下の押し付け荷重で常時接触させながら、試験用モータ210を駆動させることによりホイール30及びタイヤ部品100を回転させて、ホイール30からタイヤ部品100が脱落するときのタイヤ部品100の回転速度(回転数)を判定した。
一方、比較例の実験では、比較例に係るタイヤ部品をホイール30に装着して、実施例と同様にホイール30からタイヤ部品が脱落するときのタイヤ部品の回転速度(回転数)を判定した。
【0038】
図6に示すように、比較例では7000rpmで脱落したのに対し、実施例では16000rpmで脱落した。つまり、実施例では比較例と比べて2倍以上の回転速度でもホイール30からタイヤ部品100が脱落しなかった。
【0039】
以上、図面を参照して各実施形態及び変形例を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0040】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している膜部と、
を有し、
前記膜部は、前記タイヤ本体部よりも低伸長性のものであり、
前記膜部は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記膜部が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品。
(2)前記タイヤ本体部の内周面の幅方向における端部において、前記膜部は、径方向外側に向けて屈曲した屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記タイヤ本体部によって内周側から覆われている(1)に記載のタイヤ部品。
(3)前記膜部の幅方向における端は、前記タイヤ本体部の幅方向における端よりも幅中心寄りの位置において終端している(1)又は(2)に記載のタイヤ部品。
(4)前記膜部の幅方向における端は、前記タイヤ本体部の幅方向における端に達している(1)又は(2)に記載のタイヤ部品。
(5)前記膜部は、織布又は不織布により構成されている(1)から(4)のいずれか一項に記載のタイヤ部品。
(6)玩具用のタイヤ部品であって、
弾性体により構成されている円筒状のタイヤ本体部と、
前記タイヤ本体部と一体成形されているとともに前記タイヤ本体部の内周面に露出している布と、
を有し、
前記布は、前記タイヤ本体部の内周面に沿って周回状に配置されており、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されたときに、前記布が前記ホイールの外周面に対して当接するタイヤ部品。
(7)玩具用のタイヤ部品であって、
円筒状のタイヤ本体部を有し、
当該タイヤ部品にホイールが挿入されて、前記ホイールに当該タイヤ部品が装着された状態で、8000rpmで回転させたときにも装着状態が維持されるタイヤ部品。
【符号の説明】
【0041】
10 タイヤ本体部
11 内周面
20 膜部(布)
20a 端
20b 一端部
20c 他端部
21 屈曲部
30 ホイール
31 外周面
32 固定孔
100 タイヤ部品
100a 嵌入孔
210 試験用モータ
211 回転軸
220 従動輪
230 従動回転軸
240 支持体
250 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7