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特開2024-157158学習システム、移動体自律運転システム、学習方法、移動体自律運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157158
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】学習システム、移動体自律運転システム、学習方法、移動体自律運転方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241030BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G05D1/02 H
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071324
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】樽谷 葵
【テーマコード(参考)】
2D003
5H301
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA07
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003DB07
2D003DC07
2D003FA02
5H301AA01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG12
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】移動体が不整地を自律運転が可能な制御モデルを生成する。
【解決手段】出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める学習システムであって、前記領域の凹凸が測定された3次元点群データと、前記領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、前記領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、前記領域の面に沿って移動する移動体の車輪の速度と車輪の向きを表す行動データと、の関係を学習する学習部を有し、前記学習部は、前記移動体が前記行動データに基づいて前記出発地から移動し、前記目的地に到着した場合に高い報酬を、前記移動中に前記移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める学習システムであって、
前記領域の凹凸が測定された3次元点群データと、前記領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、前記領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、
前記領域の面に沿って移動する移動体の車輪の速度と車輪の向きを表す行動データと、
の関係を学習する学習部を有し、
前記学習部は、
前記移動体が前記行動データに基づいて前記出発地から移動し、前記目的地に到着した場合に高い報酬を、前記移動中に前記移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行う
学習システム。
【請求項2】
前記学習部は、前記移動体が前記出発地から出発してからの経過時間が長くなるほど低い報酬を与える
請求項1に記載の学習システム。
【請求項3】
前記3次元点群データの示す情報について平面上をグリッド状に割り、当該グリッドに該当する位置の点群データに基づいて、前記平面の第1方向を行によって表し、前記平面の当該第1方向に直交する第2方向を列によって表し、高さの値を成分とした行列を生成する前処理部を有する
請求項1または2に記載の学習システム。
【請求項4】
前記前処理部は、前記3次元点群データに基づく地形モデルを正規化する処理を行う
請求項3に記載の学習システム。
【請求項5】
請求項1に記載の学習システムによって学習された学習済みモデルを用いて移動体を制御することで自律運転させる移動体自律運転システム。
【請求項6】
出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める学習方法であって、
学習部が、
前記領域の凹凸が測定された3次元点群データと、前記領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、前記領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、
前記領域の面に沿って移動する移動体の車輪の速度と車輪の向きを表す行動データと、
の関係を学習し、
前記学習することは、
前記移動体が前記行動データに基づいて前記出発地から移動し、前記目的地に到着した場合に高い報酬を、前記移動中に前記移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行うこと
を含む学習方法。
【請求項7】
請求項6の学習方法によって学習された学習済みモデルを用いて移動体を制御することで自律運転させる
移動体自律運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体のための学習システム、移動体自律運転システム、学習方法、移動体自律運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場において掘削工事や造成工事を行う場合、一般的に不整地走行車両としてキャタピラ型のバックホウなどが熟練技術者により操縦される。近年は、土砂ピット内に堆積した土砂を掘削し、ダンプトラックに積み込む自律運転システムを搭載し、自律運転するバックホウも利用されている。このような自律運転する建機は、不整地を走行する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-145767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不整地を建機に走行させるためには、操縦が難しく、バランスを崩した場合には、転倒する事故を引き起こす可能性がある。不整地において建機を走行させる場合、移動経路の選択は、操縦者の経験的判断にゆだねられており、安全かつ効率的な移動経路を検討する余地がある。
また、バックホウの自律運転システムでは、土砂の採掘とダンプトラックへの積み込み等の作業を行うことができるが、このような作業を行うだけでなく、その作業を行う場所へ移動するまでの間に、不整地があったとしても、自律運転によって移動できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、移動体による不整地での自律運転が可能な制御モデルを生成することが可能な学習システム、移動体自律運転システム、学習方法、移動体自律運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める学習システムであって、前記領域の凹凸が測定された3次元点群データと、前記領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、前記領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、前記領域の面に沿って移動する移動体の車輪の速度と車輪の向きを表す行動データと、の関係を学習する学習部を有し、前記学習部は、前記移動体が前記行動データに基づいて前記出発地から移動し、前記目的地に到着した場合に高い報酬を、前記移動中に前記移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行う学習システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める学習方法であって、学習部が、前記領域の凹凸が測定された3次元点群データと、前記領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、前記領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、前記領域の面に沿って移動する移動体の車輪の速度と車輪の向きを表す行動データと、の関係を学習し、前記学習することは、前記移動体が前記行動データに基づいて前記出発地から移動し、前記目的地に到着した場合に高い報酬を、前記移動中に前記移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行うことを含む学習方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、移動体による不整地での自律運転が可能な制御モデルを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による学習システムSの構成を示す概略ブロック図である。
図2】学習システムSの処理の流れを説明する図である。
図3A】3次元点群データの一例を示す図である。
図3B】3次元点群データの一例を示す図である。
図4】高さ行列の一例を説明する図である。
図5】正規化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による学習システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による学習システムSの構成を示す概略ブロック図である。
学習システムSは、地形測定部11、3次元点群データ取得部12、距離測定部13、距離データ取得部14、前処理部15、シミュレーション部16、学習部17、記憶部
18を有する。学習システムSは、1台のコンピュータによって実現してもよいし、学習システムSの機能を複数台のコンピュータに分散させ、これら複数のコンピュータが連携して処理をするようにしてもよい。また、学習システムSの少なくとも一部の機能がクラウドサーバのようにクラウド上に設けられたコンピュータに搭載されてもよい。
【0011】
学習システムSは、出発地から目的地までの間に不整地が含まれる領域を走行する移動体の移動経路と運転の制御内容とを求める。
地形測定部11は、出発地から目的地までの間の領域の地形を測定する。この領域の少なくとも一部には不整地が含まれる。また、領域は、例えば、建設現場である。出発地と目的地は、掘削工事や造成工事を行うために移動体が移動する起点となる位置が出発地であり、終点となる位置が目的地である。移動体は、建設現場において利用される車両であり、例えば、不整地走行車両としてキャタピラ型のバックホウである。また、移動体は、ダンプトラック等の建設機械であってもよい。このような移動体は、熟練技術者により操縦される場合もあるが、自律運転可能な機能を有し、建設現場内において自律運転することで移動が可能である。不整地の走行面には凹凸がある。
【0012】
地形測定部11は、建設現場における領域の地形を測定する。地形測定部11は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)であり、ドローン等の無人飛行体に搭載され、地形の凹凸を測定し、地形を表す3次元点群データを生成する。
3次元点群データ取得部12は、地形測定部11から3次元点群データを取得する。
距離測定部13は、移動体から周囲の物体までの距離を測定する。距離測定部13は、例えば、LiDARであり、移動体に搭載され、移動体の進行方向正面側の計測領域を測定する。
距離データ取得部14は、距離測定部13から計測結果を取得する。
【0013】
前処理部15は、3次元点群データ取得部12によって取得された3次元点群データと、距離データ取得部14によって取得された距離データとを入力し、前処理を行う。
シミュレーション部16は、3次元点群データによって表される地形を移動体が走行する際の挙動をシミュレーションする。ここでは、シミュレーション部16は、移動体が不整地において移動、転倒、衝突等の種々の挙動をシミュレーションする。
学習部17は、前処理部15によって前処理が行われたデータを用いて学習をする。学習は、強化学習である。
【0014】
学習部17は、領域の凹凸が測定された3次元点群データと、領域における測定位置から周囲の物体までの距離が測定された測定データと、領域に設定される基準点をもとに移動体の位置を表す自己位置データとを表す環境データと、領域の面に沿って移動する移動体の車輪の回転速度と車輪の向きを表す行動データと、の関係を学習する。学習部17は、移動体が行動データに基づいて出発地から移動し、目的地に到着した場合に高い報酬を与え、移動中に移動体が横転または衝突した場合に低い報酬を与える強化学習を行う。
【0015】
記憶部18は、各種データを記憶する。例えば、記憶部18は、3次元点群データ取得部12が取得した3次元点群データ、距離データ取得部14が取得した距離データ、前処理部15が前処理を行った結果、シミュレーション部16がシミュレーションを行う上で必要なデータ、学習部17が学習をする際に必要なデータ、学習部17が学習をすることで生成する学習済みモデル等を記憶する。
【0016】
記憶部18は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部18は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0017】
学習システムSにおいて、3次元点群データ取得部12、距離データ取得部14、前処理部15、シミュレーション部16、学習部17は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0018】
本実施形態における学習システムSは、不整地での経路探索、自律制御において、A*アルゴリズムなどの経路探索アルゴリズムや、条件分岐による運転の自律制御を行わず、強化学習により不整地での経路生成、運転の試行錯誤を繰り返すことで、安全かつ効率的な経路生成や運転の制御方法を学習させ、制御モデルを作成する。
【0019】
ここで、図2は、学習システムSの処理の流れを説明する図である。
(ステップS101)
建設現場における領域の地形を環境として表すデータとして入力する。ここでは、地形測定部11によって地形が測定され、3次元点群データが生成され、3次元点群データ取得部12が、3次元点群データを取得する。
図3A図3Bは、3次元点群データの一例を示す図である。
図3A図3Bに示すように、3次元点群データは、不整地の地面の形状を表す。
ここでは、実際の不整地を測定することで3次元点群データを得るようにしてもよい(図3A)。また、地形は1つだけでなく複数種類にした方が試行数を増やすとともに、地形が変わっても制御することができる(図3B)。例えば、取得された3次元点群データとは異なる不整地の地形を表す複数の3次元点群データを生成するようにしてもよい。これにより、並列して複数の異なる不整地に対して、建設機械をランダムな位置に配置し、建設機械の挙動をシミュレーションする環境を得ることができる。
【0020】
また、ここでは、3次元点群データを測定した地形において、建設機械を実際に走行させつつ距離測定部13によって距離データを測定することで、建設機械の現在地から見た、周辺物体の表面までの距離データ(角度と距離)を得るようにしてもよい。ここでは、建設機械から様々な方向に対して距離データを得る。
また、複数の異なる不整地としてコンピュータによって生成された3次元点群データが示す地形については、シミュレーション上において、建設機械を配置して距離測定部13によって距離を測定することで、距離データを得るようにしてもよい。
【0021】
次に、学習システムSは、学習の際に制御する行動情報、周囲の情報を認識させるための状態情報、行動に対しての報酬情報からなる環境を表すデータが入力されると、将来的に得られる報酬が最大化される制御方法の学習を行う。
【0022】
(S102)
次に、学習システムSは、状態情報を入力することで、建設機械の状態を設定する。
ここでは、前処理部15は、3次元点群データが示す不整地について、平面上をグリッド状に割り、当該グリッドに該当する位置の点群データに基づいて、行列を生成する。
図4は、高さ行列の一例を説明する図である。
画像400は、3次元点群データを上空からみた場合を表す図であり、縦方向と横方向に対応する位置における高さに応じて異なる色によって表現されている。また、画像400には、移動体401が配置されている。そして、画像400にグリッドを設定し、グリッドの縦方向と横方向が交差する複数の点(例えば点402等)が設定される。グリッドの間隔は学習の収束度合いに応じて調整してよい。
このような画像400の縦方向と横方向に沿って高さを表す値が表現されているが、これに基づいて、高さ行列410が生成される。
例えば、画像400におけるグリッドの横方向と縦方向について行と列とし、グリッドに対応する位置(複数の点)における高さの値を行列の値として設定する。これにより、座標の行列平面方向における各位置における高さを表す高さ行列(高さを表す値が、画像のピクセルのように並べられたデータ)を生成することができる。これにより建設機械の周囲の不整地の凹凸の情報を把握可能なデータを得ることができる。
また、3次元点群データからグリッド状にデータを間引いているため、地形データをダウンサンプリングすることができ、さらに高さの値が配置された行と列で高さを計測した点の水平方向の位置を示すことで、x軸,y軸の2軸分の情報空間を省くことができ、これにより、状態データを簡略化できる。なお、前処理部15は、3次元点群データにおける平面のx軸方向が行であり、y軸方向が列であり、高さの値を成分とした行列を生成してもよい。また、前処理部15は、3次元点群データにおける平面のy軸方向が行であり、x軸方向が列であり、高さの値を成分とした行列を生成してもよい。
【0023】
また、前処理部15は、地形における建設機械の自己位置を認識可能なデータを付与する。ここでは、前処理部15は、ダウンサンプリングされた地形を内接するように取り囲む直方体状のモデルを付加することで地形モデルを生成し、この生成された地形モデルを正規化する。
図5は、正規化の一例を示す図である。
地形モデルは、地形の位置を座標によって3次元の座標(x,y,z)によって表したデータである。
前処理部15は、正規化する前の地形モデルC1を正規化することで地形モデルC2を生成する。この正規化は、例えば、地形モデルC1内のいずれかの頂点を原点とする座標を設定し、他の頂部の座標については、その座標の位置に応じて0または1とすることで正規化する。正規化することで、建設現場における領域の広さ(縦方向、横方向)や凹凸の高低差(高さ方向)が様々に異なっていたとしても、学習システムSの学習対象として簡単に取り扱うことができる。
【0024】
正規化の後、シミュレーション部16は、自己位置ベクトルを生成する。ここでは、正規化された後の地形モデルC2に対して、建設機械を出発地に対応する位置に配置し、地形モデルC2の原点を基準として、建設機械の現在位置に向かうベクトルを自己位置ベクトルとして生成する。行動ステップに移行した際に、建設機械が移動し、建設機械の現在位置が変わることに応じて、自己位置ベクトルも新たに生成される。
また、シミュレーション部16は、建機から周辺物体表面までの距離を計測する。この計測は、シミュレーション上において行う。
【0025】
次に、シミュレーション部16は、行動(制御値)として与えられた車輪の回転速度、車輪の向きを取り込み、ステップS101において準備された環境とステップS102において設定された状態とを元に、不整地を移動体が移動するシミュレーションを実行する。ここではシミュレーション部16は、環境と移動体の姿勢に基づいて車輪から移動体の重心までのベクトルを求め、移動体が転倒するか否かについてもシミュレーションする。例えば、シミュレーション部16は、3次元点群データにおける移動体の位置を特定し、その位置における地形の傾きを求め、その傾きがある状況に移動体が置かれたときの移動体の姿勢(移動体の向き、傾き)を求める。そして、シミュレーション部16は、その姿勢に基づいて、移動体の車輪から移動体の重心までのベクトルを求め、当該ベクトルの向き及び値の組み合わせが、予め定められた基準値を越えたか否かを判定し、越えた場合には、横転したと判定するようにしてもよい。また、シミュレーション部16は、移動体が横転した場合には、走行ができないと判定するようにしてもよい。
これにより、移動体が置かれた環境や、条件(行動として与えられた制御値や、制御値の履歴に基づいて定まる走行経路)に応じて、横転するか否かの観点に基づいて当該移動体が走行できるか否かを把握することができる。
【0026】
また、シミュレーション部16は、距離データに基づいて、ステップS101において設定された環境において、移動体が走行した場合の現在位置を基準として、距離データが表す距離が、予め決められた距離基準値以下であるか否かを判定することで、移動体が障害物に衝突したか否かを判定する。距離基準値は、0であってもよいし、衝突したと見なせる程度の距離に応じた数値を用いるようにしてもよい。
シミュレーション部16は、移動体が衝突した場合には、走行ができないと判定するようにしてもよい。
これにより、移動体が置かれた環境や、条件(行動として与えられた制御値や、制御値の履歴に基づいて定まる走行経路)に応じて、移動体が衝突するか否かの観点に基づいて当該移動体が走行できるか否かを把握することができる。
【0027】
(ステップS103)
学習部17は、シミュレーション部16によってシミュレーションが行われた結果に基づいて、報酬を与える。ここでは、学習部17は、報酬情報として、掘削ポイント(目的地)に到達した場合にはプラスの報酬を与え、横転や衝突をした場合にはマイナスの報酬を与える。また、学習部17は、出発地から移動を開始した時点からの経過時間が長くなるほどマイナスの報酬(低い報酬)を与える。
これにより、目的地に到達できる経路、車輪の回転速度、車輪の向き向きについて正解であるとする学習が進み、横転や衝突をしてしまう経路、車輪の回転速度、車輪の向きについて正解ではないとする学習を進めることができる。
また、出発地から移動を開始した時点からの経過時間が長くなるほどマイナスの報酬(低い報酬)を与えるようにしたので、出発地から目的地(掘削ポイント)までの移動時間が短いほど、報酬が下がりにくいため、より短い時間で目的地まで移動する経路を得ることができ、移動に関して効率化を図ることができる。
【0028】
(ステップS104)
学習部17は、ステップS103において与えられた報酬に基づいて、将来的に得られる報酬が最大化されるように行動方策(制御モデル)を更新する。
【0029】
(ステップS105)
学習部17は、更新された制御モデルに基づいて、制御値として、車両の車輪の回転速度、車輪の向きを与える。
【0030】
これより、ステップS101において与えられた環境に対して、ステップS105において与えられた新たな制御値を元にしてステップS102における状態データとして取り込み、シミュレーション部16がシミュレーションをする。
そして、学習部17が、シミュレーション結果に基づいて、報酬を与える(ステップS103)。
【0031】
このような処理を繰り返して実行することで、建設機械のおかれた環境(不整地の凹凸情報=高さ行列、自己位置ベクトル、周辺物体までの距離)を表す環境データと、建設機械がとる行動(車輪の回転速度、車輪の向き)との関係に基づいて、建設機械の行動に対する結果に応じた報酬(ポイント)を与える強化学習をシミュレーション上で繰り返すことができる。これにより、建設機械が不整地を通り掘削現場へより安全に移動するための経路生成が行われた制御モデルを生成することができる。また、この制御モデルを学習済みモデルとして利用することができる
【0032】
また、上述した実施形態によれば、障害物の発生、レイアウトの変化に対応する制御モデルを得ることができる。
【0033】
また、上述した実施形態によれば、不整地の凹凸をウェイトに置き換えた経路探索手法に加えて、横転や衝突をせずに本当に車両が通れるのかといった車両の運転制御と組み合わせた検討をすることができる。
【0034】
また、上述した学習システムSによって学習されることで得られる制御モデル(学習済みモデル)を用いて、実際の建設現場において稼働する建設機械の運転を制御するようにしてもよい。これにより、実際の建設現場において、移動体を自律的に運転させる自律運転システムを実現することができる。また、学習システムSと自律運転システムとが別のシステムであってもよい、学習システムSを自律運転システムに組み込むようにしてもよい。
【0035】
上述した実施形態における学習システムSをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0036】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0037】
S…学習システム、11…地形測定部、12…3次元点群データ取得部、13…距離測定部、14…距離データ取得部、15…前処理部、16…シミュレーション部、17…学習部、18…記憶部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5