(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157159
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】地下海水における調査用井戸の調査方法
(51)【国際特許分類】
E21B 47/00 20120101AFI20241030BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
E21B47/00
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071325
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】308039425
【氏名又は名称】株式会社タシマボーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】田島 大介
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB25
2D129BA26
2D129EA11
2D129GA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、地下海水井戸に必要な水質や地質の調査を簡単に実現できる地下海水における調査用井戸の調査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法は、中空で先端にインナービット23を有するインナーロッド2と、インナーロッド2を収容し先端にリングビット13を有するアウターケーシング1とからなる二重管100を備え、インナーロッド2内が給水路となり、インナーロッド2とアウターケーシング1の間が排水路となって調査用井戸を掘削工程と、アウターケーシング1が後退して溜まった地下水を吸引する採水工程と、からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で先端にインナービットを有するインナーロッドと、該インナーロッドを収容し先端にリングビットを有するアウターケーシングとからなる二重管を備え、前記インナーロッド内が給水路となり、前記インナーロッドと前記アウターケーシングの間が排水路となって調査用井戸を掘削する掘削工程と、
前記アウターケーシングが後退して溜まった掘削先端の地下水を吸引する採水工程と、
からなることを特徴とする地下海水における調査用井戸の調査方法。
【請求項2】
前記採水工程において、前記インナーロッドと入れ替えられた採水管を用いることを特徴とする請求項1に記載の地下海水における調査用井戸の調査方法。
【請求項3】
前記採水工程において、前記インナーロッドを用いることを特徴とする請求項1に記載の地下海水における調査用井戸の調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下海水における調査用井戸の調査方法に関して、詳しくは、中空で先端にインナービットを有するインナーロッドと、該インナーロッドを収容し先端にリングビットを有するアウターケーシングとからなる二重管を備えて掘削する、地下海水における調査用井戸の調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1である農林水産省の「地下海水を用いた陸上養殖適地調査事業報告書」の「背景」には、「自然環境等に左右されない陸上での地下海水を用いた養殖適地を開発することが重要である。特に、水温が周年安定している清浄な地下海水を活用した陸上養殖については、波浪が激しい日本海等において有望な養殖手法である。」と記されている。
【0003】
陸上養殖は、一般の海面養殖とは異なり、陸上に設置した水槽で魚を飼育する漁業である。そして、養殖に用いる海水は水質の安定した地下海水であることから、高品質な魚を安定的に飼育することができる。また、陸上養殖については、注目度も高まり、ニーズの拡大によって新規に陸上養殖を始めようとする事業者も増えている。陸上養殖における一番の要は、地下海水の確保と言える。そして、この地下海水は、ボーリング技術によって確保することができる。
本出願の出願人は井戸の掘削事業だけでなく、非特許文献2に記されているように、地下海水を用いた陸上養殖の事業を行っている。
【0004】
この地下海水を利用するためには上記のように井戸を掘る必要があるが、井戸の掘削には数百万というような高額な費用や時間を要する。そこで、本格的な井戸を掘削する前に、地下海水が出るのか否か、地下海水が陸上養殖に適する水質か否か、賦存量はどのくらいか、どのような地質なのか、概ねの賦存量イメージ等、このようなことを調査するための調査用井戸を掘ることで、その結果を基に(本格的な)井戸を掘るのか否か等を判断し、費用の削減や時間の短縮を図ることが考えられる。
【0005】
特許文献1には、先端が閉塞された中空管体の先端側の外側面に螺旋羽根を設け、中空管体の螺旋羽根の上方に貫通孔を設け、貫通孔から管内に流入する地下水の有無を検知することで、水脈の探索と井戸掘り工事を同時に行うことが記載されている。
【0006】
また、この特許文献1を背景技術とする特許文献2には、先端が開放された中空管体の先端側の外側面に螺旋羽根を設け、掘削中は中空管体内に収容されて先端側の開放部を閉結するストレーナ部材を備え、掘削後に中空管体が逆回転することで中空管体内が後退すると共にストレーナ部材の先端が中空管体から露出し、その露出部に設けられた採水孔から地下水を吸引する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-129527号公報
【特許文献2】特許第4413079号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】農林水産省「地下海水を用いた陸上養殖適地調査事業報告書」 検索日:令和5年3月13日〈https://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/R1itaku/R1ippan/attach/pdf/index-364.pdf〉
【非特許文献2】(株)タシマボーリング 地下海水井戸陸上養殖事業 検索日:令和5年3月13日〈https://tashima-boring.com/ido/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、地下海水は、通常海面よりも低い位置に存在しているが、陸上養殖は場所によって海面から数十mのような高いところで行われることもある。そこで、実際に地下海水の掘削を行う場合には、非特許文献2の「事業実施内容」にも記載されているが、地下海水の井戸の掘削深さが15m~50mというようなこともある。
【0010】
このような深度の掘削を行う場合、特許文献1、特許文献2のような螺旋羽根の回転による掘削工法によると、深くなる程周面摩擦が大きくなってしまうことから、あまり深く掘削することができないという問題がある。また、この掘削ではあまり固い地層にあたってしまうとそれ以上掘削できなくなってしまうという問題がある。これは、本出願の出願人がボーリングの事業者であることからも知られている事実である。
【0011】
また、特許文献1は、そもそも水脈の検索と井戸の採掘を同時に行うというものであり、結局のところ実際に使用することになる井戸の掘削が行われてしまう。また、特許文献1は、単に地下水の有無を検知することだけであり、水質調査や地質調査については記されていない。同様に、特許文献2は、地下水の調査はできても、その構造上地質の調査までは行うことができない。
そこで、本発明は、地下海水井戸に必要な水質や地質の調査を簡単に実現できる地下海水における調査用井戸の調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法は、中空で先端にインナービットを有するインナーロッドと、該インナーロッドを収容し先端にリングビットを有するアウターケーシングとからなる二重管を備え、前記インナーロッド内が給水路となり、前記インナーロッドと前記アウターケーシングの間が排水路となって調査用井戸を掘削する掘削工程と、前記アウターケーシングが後退して掘削先端の地下水を吸引する採水工程と、からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法によれば、例えば、深度50mのような場所まで、深く掘削することができるので、地下海水の調査用井戸の調査を行うことができる。また、本発明は、掘削工程においてインナーロッド内を給水路として、インナーロッドとアウターケーシングの間を排水路として掘削することから、排水からその地質を知ることができる。従って、掘削工程による地質の調査、採水工程による水質の調査を行うことができる。
【0014】
とくに、地下海水における調査用井戸は複数掘削することも多くなる。何故ならば、陸上養殖のために地下海水井戸を設置する場合、できるだけ飼育水槽に近いこと、電源が近くにあることが理想となる。これは、長距離の配管によって生じる送水抵抗や水温ロスは飼育においての損失となるからである。また、電気工事や配管のコストを抑えることができるためである。このよう理由から、地下海水井戸は、できるだけ飼育水槽に近く、電源が近くにあることが理想となるが、このような理想的な地下海水井戸を設けるには、敷地内に賦存する地下海水の情報を如何に多く得るかが重要である。そのためには調査用井戸を複数掘削することで多くの情報を得ることができるからである。
【0015】
このような理由から、地下海水における調査用井戸は、1つで済むことは少なく、複数掘削することが非常に多い。従って、できるだけ効率よく低コストで行うことが望ましい。本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法によれば、1つの調査用井戸につき、数十万円程度のコストで実現することも可能となる。
【0016】
なお、温泉のような掘削になってしまうと多くの場合、1000m以上の掘削が必要になってしまうので、本発明のような地下海水に必要な深さとは比較にならない深さまでの掘削が必要となる。このような深さまで調査用井戸を掘削することは、本発明のような方法であっても、コスト面から現実的とは言えなくなってしまう。従って、本格的な井戸を掘削する前の調査用井戸の掘削が現実的に活用できるという点からも、本発明は、陸上養殖に資するものであり、そのために行う地下海水における調査用井戸の調査方法というものである。
【0017】
また、本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法は、前記採水工程において、前記インナーロッドと入れ替えられた採水管を用いることが好ましい。
この採水管としては、中空管の底部が閉塞しており、側面の所定高さの位置に複数の採水孔が設けられているものが好ましい。これにより、底部付近の濁りを避けて地下水を採水することができる。
また、本発明の地下海水における調査用井戸の調査方法は、前記採水工程において、前記インナーロッドを用いることが好ましい。
掘削工程において、給水路として用いたインナーロッドを、給水ではなく排水に切り替えるだけで簡単に地下水の採水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ボーリングマシンの概要を示す模式図である。
【
図2】実施形態1の二重管による地下水採取の概要を示す断面図である。
【
図3】Aはアウターケーシングのリングビットを示す撮像であり、Bはインナーロッドの先端に取り付けられるインナービットを示す撮像である。
【
図4】実施形態1によって調査される、さく井柱状図の第1例である。
【
図5】実施形態1によって調査される、さく井柱状図の第2例である。
【
図6】実施形態2の二重管による地下水採取の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0020】
[実施形態1]
本実施形態は、陸上養殖として使用する地下海水の井戸を本確的に掘削する前に、地下海水が出るのか否か、地下海水が陸上養殖に適する水質か否か、賦存量はどのくらいか、地質はどのようになっているのか、のようなことを調査するための地下海水における調査用井戸の調査方法に関するものである。
【0021】
図1~
図3を用いて、本実施形態の調査方法の要部を説明する。本方法は、インナーロッド2と、インナーロッド2を収容するアウターケーシング1とからなる二重管100を備え、この二重管100を用いて調査用井戸を掘削する掘削工程と、掘削工程の後、アウターケーシングが後退して溜まった地下水を吸引する採水工程と、からなる。
【0022】
より具体的には、まず二重管100は、
図1に示すように、地中に回転しながら入り込んで井戸を掘削するもので、ボーリングマシン200によって回転され、また、引き上げられる。なお、このボーリングマシン200は、油圧式ダブルロータリーボーリングマシンと呼ばれるものであり、具体的には、例えば、ソイルメック社製の「SM10GT」を用いることができる。
【0023】
図2aに示すように、掘削工程における掘削時の二重管100は、中空のアウターケーシング1と、アウターケーシング1に収容される中空のインナーロッド2と、からなる。
【0024】
このアウターケーシング1は、1つの先端管11と、掘削の深さに応じて先端管11に継ぎ足される継ぎ管12と、からなる。アウターケーシング1の先端にはリング状に並んだ超硬のビット131(
図3A参照)からなるリングビット13が固着されている。
【0025】
またインナーロッド2もアウターケーシング1と同様に、1つの先端管21と、掘削の深さに応じて先端管21に継ぎ足される継ぎ管22と、からなる。そして、インナーロッド2の先端には超硬のビット231(
図3B参照)が固着されたインナービット23が取り付けられている。
【0026】
図2c、
図2dに示すように、採水工程における採水時の二重管100は、掘削時と同じアウターケーシング1と、アウターケーシング1に収容される中空の採水管3と、からなる。
【0027】
この採水管3は、1つの先端管31と、掘削の深さに応じて先端管31に継ぎ足される継ぎ管32と、からなる。また、採水管3の先端である底部は閉塞されており、先端からわずかに離れた位置(例えば、10cm程度)に地下水が吸引される複数の採水孔33が設けられている。なお、本実施形態においては、採水孔33をわかりやすく示すため、採水孔33のみとなっているが、その表面を更にメッシュ状のシートで覆っても構わない。このような構成によれば、砂礫等による採水孔33の詰まりを防止することができる。
【0028】
[実施形態1:掘削工程と採水工程]
図2を用いて調査用井戸の掘削の方法を説明する。
図2aに示すように、アウターケーシング1とインナーロッド2がボーリングマシン200によって回転されながら、地下水を吸引する深さまで掘削する。掘削するときには、インナーロッド2の空部24を通してインナービット23内に設けられた給水孔25(
図3B参照)から給水される。この給水によって掘削時の発熱が冷やされると共に摩擦力が低減され、また、土が軟らかくなる。また、給水された水はアウターケーシング1とインナーロッド2の間の空部14を介して上部から排水される。この排水により、掘削された砂礫等が採取される。そしてこの採取された砂礫等により地質や色など地質の構造がわかるので、地質調査を行うことができる。
そして、二重管100が地下水を採水する深さまで掘削したら、暫く給水を継続して行い、掘削された砂礫等を排出する。
【0029】
その後に、インナーロッド2が抜かれ(
図2b)、インナーロッド2と入れ替わりに採水管3がアウターケーシング1に差し込まれる(
図2c)。このとき、採水管3の閉塞された先端が掘削した穴の底に当らないように僅かに浮かせてもよい。これにより、採水管3の当接によって生じる穴の底にある地下水の濁りを低減する。
【0030】
そして、
図2dに示すように、採水管3の採水孔33がアウターケーシング1から露出するように、アウターケーシング1が所定の高さ(例えば、50cm程度)まで戻される。このアウターケーシング1の後退により、露出した帯水層の地下水が掘削先端に溜まり、採水管3の空部34に入り込む。この入り込んで溜まった地下水を採水管3の内部を介して吸引することで採水される。
【0031】
なお、吸引の最初は、掘削時の排水が混入しているので、採水の塩分や温度やpHなどの調査値が安定するまで、例えば10分程度は採水による調査を行わないでおき、水質が安定してから採水による調査を行うのがよい。また、この地下水の水質の調査そのものは既存の水質の検査方法等で行えばよい。
【0032】
図4は、本実施形態によって調査を行った地層結果を表した所謂さく井柱状図の第1例である。また、
図5は、陸上養殖を検討する敷地内において、第1例の場所から大体50m程度離れた場所で調査を行った第2例である。
【0033】
なお、地下海水は、数10m場所が異なるだけでも検査結果が大きく変わってしまうこともある。地下海水井戸を設置する場合、できるだけ飼育水槽に近いこと、電源が近くにあることが理想であり、理想的な地下海水井戸を設けるには、敷地内に賦存する地下海水の情報を如何に多く得るかが重要となる。そのためには調査用井戸を複数掘削することで多くの情報を得ることができる。したがって、本実施形態では、第1例、第2例という二つの調査用井戸を例示しているが、二つに限るものではない。
【0034】
図4に示すように、さく井柱状図の第1例では、海面水位2.8m、海面塩分濃度3.01%、海面温度8.8℃、掘削径150mm、掘削の深度は30mである。掘削の深度30mに対する地下水の塩分濃度と水温並びに地質を記録する。
【0035】
そして、第1例では、上位の玉石砂礫層において深度2.5~8.0mの間で2.5~2.7%程度の塩分濃度を有する地下海水が確認された。これは、8.0mまでの玉石混じり砂礫層での高い透水性により賦存する伏流地下海水であると考えられる。一方、深度8.0m以深においては極端に塩分濃度が薄まり、深度14.0m付近からはほぼ真水の状態で確認された。この結果から中間から下層に掛けては難透水性の地質によって地下海水の浸透が妨げられていることが分かり、この位置において井戸を設置する場合は8.0mまでを取水するケーシング構造とすることが望ましいと考えられる。そこで、実際の井戸仕上げとして相応しいケーシング及びストレーナ位置は、
図4の井戸構造案に示す案で検討するのが良いと言える。
【0036】
第2例では、海面水位2.8m、海面塩分濃度3.1%、海面温度8.4℃、掘削径150mm、掘削の深度は30mである。第1と同じく、掘削の深度30mに対する地下水の塩分濃度と水温並びに地質を記録する。
【0037】
この第2例では、第1例と比較すると、玉石混じり砂礫の層厚が薄く帯水層として地下水が存在しにくい地層状況であると言える。また、全体に塩分濃度も低く、深度8.0m付近からは鉄分濃度が1~1.5mg/Lで確認されたことから、第1例と比較すると養殖に使用する飼育水としては良くない結果であった。これは地質条件以外にも海面からの距離による海水浸透の生じにくさと、内陸側からの地下水圧力も相まっていることが要因と考えられ、鉄分濃度からもそれを裏付ける結果であったと言える。
【0038】
以上のことから、地下海水井戸を設ける場合は第1例側にて設置することが望ましいと言える。また、井戸の取水可能量を加味して考えた場合、最低でも井戸は2~3本設けることとし、その揚水試験結果によって汲み上がる適正揚水量を把握し、井戸設備計画の検討を進めていくことが望ましいと言える。
【0039】
また、
図4や
図5のさく井柱状図やその結果からも言えることだが、地下海水を用いた陸上養殖を行う場合、単に地下海水の塩分濃度だけでなく、その海水の存在する帯水層の地質等も、安定した取水、飼育魚の種類等の点から陸上養殖を行う上で非常に重要となる。
【0040】
[実施形態2]
次に
図6を用いて、実施形態2の地下海水における調査用井戸の調査方法を説明する。
本実施形態の調査用井戸の調査方法においては、実施形態1の調査方法と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
本実施形態の掘削工程(
図6a)は実施形態1の掘削工程(
図2a)と同じである。
【0041】
そして、
図6bに示すように、本実施形態のインナーロッド2Aの先端管21Aには先端のインナービット23からわずか離れた位置に地下水が吸引される複数の採水孔26が設けられている。
【0042】
採水工程においては、二重管100Aは、アウターケーシング1とこのインナーロッド2Aを用いる。すなわち、実施形態1と異なり本実施形態では採水工程において採水管3は使用しない。
二重管100Aが地下水を吸引する深さまで掘削したら、暫く給水を継続して掘削された砂礫等を全て排出する。
【0043】
その後に、
図6bに示すように、インナーロッド2Aの採水孔26がアウターケーシング1から露出するように、アウターケーシング1が所定の高さまで戻される。これにより、露出した帯水層の地下水がインナーロッド2Aの空部24に入り込み、この地下水がインナーロッド2Aの空部24を介して吸引され上部から採水される。なお、吸引の最初は、掘削時の排水が混入しているので、採水の調査値が安定するまで採水が続けられる。安定した調査値がその位置での水質として記録される。
【0044】
本実施形態の地下海水における調査用井戸の調査方法では、インナーロッド2Aをアウターケーシング1に収容したまま、アウターケーシング1をわずかに戻して、給水を排水に切り替えるだけで採水する。したがって、短時間で安価に地下水を吸引することができる。
【0045】
なお、実施形態1の採水管3の採水孔33と本実施形態のインナーロッド2Aの採水孔26はいずれも先端からわずか離れた位置に設けられているので、掘削穴の底の濁った地下水の吸引を低減することができる。また、掘削穴の底の濁った地下水の吸引を低減するために、採取するときの吸引力を弱くすることが好ましい。
【0046】
本実施形態の地下海水における調査用井戸の調査方法は、二重管100を用いて掘削を行うので、例えば、深度50mのような場所まで、深く掘削することができるので、地下海水の調査用井戸の水質調査を行うことができる。
【0047】
また、掘削工程において、インナーロッド2内が給水路となり、インナーロッド2とアウターケーシング1の間が排水路となって掘削を行うため、排水路を介して採取された砂礫等により地質や色など地質の構造がわかるので、地質調査を行うことができる。
【0048】
また、採水工程においては、アウターケーシング1が後退するだけなので回りの土が掘削された掘削穴の内側に戻り難いので、これによる水質への影響が少なく、また、採水によって水質調査を容易に行うことができる。
【0049】
そして、このような本発明による地下海水における調査用井戸の調査方法は、地質調査と水質調査を効率的に行うことができるため、非常に低コストで実現することができる。また、地質調査や水質調査によって得た情報を基にして地下海水井戸の井戸設計を行うことができるので、結果的に低コストで地下海水井戸を設けることができる。
【0050】
なお、本願の出願人は、上記のような地下海水における調査用井戸の調査方法については、実施形態で説明したような、油圧式ダブルロータリーボーリングマシンを使用し、二重管による所謂垂直ダブル回転式水循環によって地層を掘削すると同時に、各地層における地下海水の賦存状況等を把握する工法として説明し、「ターゲットポイント工法」と命名している。
【符号の説明】
【0051】
100、100A…2重管
200…ボーリングマシン
1…アウターケーシング
13…リングビット
14…空部
2、2A…インナーロッド
23…インナービット
24…採水孔
25…空部
26…給水孔
3…採水管
33…採水孔
34…空部