(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157162
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】制御装置、コンバインドサイクル発電プラント、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F01K 23/10 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F01K23/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071329
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 諭
(72)【発明者】
【氏名】岸 真人
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BC07
3G081DA14
(57)【要約】
【課題】GTCCの蒸気タービン入口側の蒸気温度を、高効率運転を実現するような温度に制御することができる。
【解決手段】制御装置は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御装置であって、排熱回収ボイラの状態量を取得する取得部と、コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された状態量に基づいて、冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における排熱回収ボイラと蒸気タービンを模擬し、所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する計算部と、計算部が算出した冷却水の流量に基づいて、冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御装置であって、
前記排熱回収ボイラの状態量を取得する取得部と、
前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する計算部と、
前記計算部が算出した前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する際には、前記蒸気タービンの入口での蒸気温度が、熱応力の制約から定められた所定の上限温度以下となるような前記冷却水の流量を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記効率は、前記所定区間における前記蒸気タービンの出力の積分値である
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記効率は、前記排熱回収ボイラで吸収した熱量を、前記排熱回収ボイラ入口の排ガスのエネルギーで除算した値の前記所定区間における積分値である、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記効率は、前記蒸気タービンの出力を、前記排熱回収ボイラ入口の排ガスのエネルギーで除算した値の前記所定区間における積分値である、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予測モデルが、前記排熱回収ボイラが備える節炭器、加熱器、蒸発器を流れる排ガス、蒸気、水の温度と圧力については、応答遅れを考慮せずに計算し、前記排熱回収ボイラが備えるドラムの圧力については、応答遅れを考慮して計算し、前記節炭器、前記加熱器、前記蒸発器、前記ドラムの伝熱面の温度については応答遅れを考慮して計算するよう構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項7】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンと、前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統と、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁と、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置と、
を備えるコンバインドサイクル発電プラント。
【請求項8】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御方法であって、
前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、
前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、
前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップと、
を有する制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する処理であって、
前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、
前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、
前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップと、
を有する処理、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、コンバインドサイクル発電プラント、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)における蒸気タービン入口側の蒸気温度を検出し、検出した蒸気温度と設定値の偏差に基づいて、排熱回収ボイラの過熱器を冷却する冷却水の流量を制御し、蒸気タービン入口側の蒸気温度を一定に保つ制御が開示されている。特許文献1の制御では、ガスタービンの排ガス温度の変化から蒸気温度に変化が出現するまでの時間遅れを補償するよう、先行的に冷却水を増減することによって蒸気温度を所望の温度に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガス温度の変化に応じて蒸気温度の時間遅れを解消することにより、蒸気温度を設計上、高効率となる温度に維持することができたとしても、特に負荷が過渡的に変化する状況などでは、蒸気温度を一定に制御することが高効率運転とならない場合がある。プラントの運転状態によらず、常に高効率運転を維持できるように蒸気温度を制御する方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、コンバインドサイクル発電プラント、制御方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の制御装置は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御装置であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得する取得部と、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する計算部と、前記計算部が算出した前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示のコンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンと、前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統と、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁と、上記の制御装置と、を備える。
【0008】
本開示の制御方法は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御方法であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する処理であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップと、を有する処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の制御装置、コンバインドサイクル発電プラント、制御方法及びプログラムによれば、蒸気タービン入口側の蒸気温度を、高効率運転となるような温度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るプラントの要部の概略図である。
【
図2】実施形態に係る最適化計算を行うシステムの構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る最適化問題の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る予測モデルの構成例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る最適化計算の一例を示すフロー図である。
【
図6】実施形態に係る制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図7】実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
(構成)
以下、本開示に係る冷却水の制御方法について、
図1~
図7を参照して説明する。
図1に、GTCC(コンバインドサイクル発電プラント)100の要部の概略を示す。GTCC100は、ガスタービン10と、HRSG(Heat Recovery Steam Generator:排熱回収ボイラ)20と、蒸気タービン30と、発電機G1,G2と、制御装置40と、を備える。ガスタービン10には発電機G1が接続され、発電機G1を駆動する。蒸気タービン30には発電機G2が接続され、発電機G2を駆動する。ガスタービン10から排出される排ガスはHRSG20へ送られる。HRSG20は、排ガスから熱を回収し、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気を生成し、それらを蒸気タービン30へ供給する。蒸気タービン30は、低圧タービン31と、中圧タービン32と、高圧タービン33と、を備える。低圧タービン31と、中圧タービン32と、高圧タービン33には、それぞれ、HRSG20によって生成された低圧蒸気、中圧蒸気、高圧蒸気が供給される。
【0013】
ガスタービン10の後段に設けられたHRSG20は、低圧節炭器21L、低圧蒸発器(不図示)、低圧ドラム(不図示)、低圧加熱器(不図示)、中圧節炭器(不図示)、中圧蒸発器(不図示)、中圧加熱器(不図示)、中圧ドラム(不図示)、高圧節炭器(不図示)、高圧蒸発器22H、高圧一次加熱器23H1、高圧二次加熱器23H2、一次再熱器24H1、二次再熱器24H2、高圧ドラム25Hなどを備える。
【0014】
高圧一次加熱器23H1と高圧二次加熱器23H2を接続する配管L2には、冷却水系統L1を通じて霧状の冷却水が供給され、高圧一次加熱器23H1から高圧二次加熱器23H2へ配管L2を通じて流れる蒸気は、冷却水のスプレイによって冷却される。冷却水系統L1には、冷却水の流量を調節するための流量調節弁V1が設けられている。流量調節弁V1の開度を調節することにより、配管L2を流れる蒸気の温度を調節することができる。配管L2を流れる蒸気は、高圧二次加熱器23H2で加熱された後、高圧タービン33へ供給される。つまり、流量調節弁V1の開度を調節することにより、蒸気タービン30の入口の蒸気温度(高圧)を制御することができる。
【0015】
一次再熱器24H1と二次再熱器24H2を接続する配管L4には、冷却水系統L3を通じて霧状の冷却水が供給され、一次再熱器24H1から二次再熱器24H2へ配管L4を通じて流れる蒸気は、冷却水のスプレイによって冷却される。冷却水系統L3には、冷却水の流量を調節するための流量調節弁V2が設けられている。流量調節弁V2の開度を調節することにより、配管L4を流れる蒸気の温度を調節することができる。配管L4を流れる蒸気は、二次再熱器24H2で加熱された後、中圧タービン32へ供給される。つまり、流量調節弁V2の開度を調節することにより、蒸気タービン30の入口の蒸気温度(中圧)を調整することができる。
【0016】
流量調節弁V1,V2は、制御装置40によって制御される。一般に蒸気タービン30の入口側の蒸気温度を設定値(設計上、高効率が実現できる温度)に保つことによって、蒸気タービン30の効率を高効率に保とうとする。しかし、蒸気温度を一定に保つことによって、常に高効率を維持できるとは限らない。そこで、本実施形態では、蒸気温度を一定に保つのではなく、蒸気タービンの熱応力を考慮しつつ、HRSG20および/または蒸気タービン30を高効率で運転できるような蒸気タービン30の入口側の蒸気温度を算出し、当該蒸気温度を実現することができるよう、流量調節弁V1,V2の開度を調節する。
【0017】
制御装置40は、取得部41と、計算部42と、制御部43と、を備える。
取得部41は、GTCC100に設けられたセンサから各種の状態量を取得する。例えば、取得部41は、HRSG20のメタル部分(加熱器、節炭器、蒸発器などの伝熱面)の温度(メタル温度と称する。)、ドラム圧力(不図示の低圧ドラムの圧力、不図示の中圧ドラムの圧力、高圧ドラム25Hの圧力)などの計測値を取得する。また、取得部41は、GTCC100へ入力される負荷指令値を取得する。
【0018】
計算部42は、HRSG20と蒸気タービン30に生じる熱応力が上限を超えることなく、且つ、HRSG20および/または蒸気タービン30の効率を最適化(最大化)できるような蒸気温度および流量調節弁V1を流れる冷却水の流量と流量調節弁V2を流れる冷却水の流量(スプレイ流量と称する場合がある。)を算出する最適化計算を行う。
制御部43は、計算部42が算出したスプレイ流量に基づいて、流量調節弁V1,V2の開度を制御する。
【0019】
(最適化計算)
図2に、HRSG20および/または蒸気タービン30の運転効率を最適化するスプレイ流量を算出するシステムの構成図を示す。
GTCC100には、負荷指令iと制御量uが入力され、制御量uに基づいて、負荷指令iが示す出力を達成できるように運転される。制御量uは、流量調節弁V1のスプレイ流量と流量調節弁V2のスプレイ流量であり、これらの値は、計算部42によって算出される。計算部42は、状態量推定部421と、予測制御部422と、を備える。
【0020】
状態量推定部421は、GTCC100で観測されたHRSG20のメタル温度の計測値およびボイラ圧力の計測値と、後述する予測モデル423によって予測されたメタル温度の予測値およびボイラ圧力の予測値とを取得し、HRSG20と蒸気タービン30の状態量(例えば、HRSG20のメタル温度、ボイラ圧力)を推定する。状態量推定部421は、推定した状態量を予測制御部422へ出力する。
【0021】
予測制御部422は、状態量推定部421が推定した状態量に基づいて、HRSG20および/または蒸気タービン30の効率を最適化する流量調節弁V1,V2のスプレイ流量を算出する最適化計算を行う。予測制御部422は、予測モデル423と、定式化部424と、最適化ソルバー425とを備える。
【0022】
予測モデル423は、GTCC100の挙動・状態を模擬することができるシミュレーションモデルである。予測モデル423は、ガスタービン10の挙動・状態を模擬する予測モデル4231と、HRSG20の挙動・状態を模擬する予測モデル4232と、蒸気タービン30の挙動・状態を模擬する予測モデル4233とを備える。例えば、予測モデル423に負荷指令iを入力すると、予測モデル423は、負荷指令iに応じた出力を実現できるようなGTCC100の挙動・状態を模擬し、ガスタービン10の排ガス温度や流量、HRSG20および蒸気タービン30の各部における蒸気や水の温度、圧力、流量等を算出する。また、予測モデル423に所定の予測区間におけるプラントの模擬を指示すると、予測モデル423は、予測区間における時系列のGTCC100の挙動・状態を模擬する。
【0023】
定式化部424は、最適化計算の問題を定式化する。定式化された最適化問題の一例を
図3に示す。
図3の式(1)は、最適化問題の目的関数である。右辺のMW
ST(x
n(t)、u
n(t))は、最適化する指標、例えば、蒸気タービン30の出力を算出する関数である。蒸気タービン30の出力とは、低圧タービン31の出力と中圧タービン32の出力と高圧タービン33の出力の合計である。x
n(t)は時刻tにおける状態量(例えば、蒸気温度、メタル温度、ボイラ圧力)、u
n(t)は時刻tにおける制御入力(例えば、流量調節弁V1のスプレイ流量と流量調節弁V2のスプレイ流量)である。本実施形態では。この関数MW
ST()は、予測モデル423に組み込まれている。式(1)の右辺では、時刻t
k~t
k+Nで規定される予測区間(例えば、数分間)内での蒸気タービン30の出力の積分値を計算し、最小化問題として扱うために-1を乗じている。
【0024】
図3の式(2)は、x
n+1が、予測モデル423がnステップでの状態量x
nに基づいて予測したn+1ステップにおける各種の状態量であることを定義している。f
mpodは、状態量x
n(t)と制御入力u
n(t)を入力パラメータとする予測モデル423である。
【0025】
図3の式(3)は、高圧タービン33の入口蒸気温度の変化レートと中圧タービン32の入口蒸気温度の変化レートが、共に閾値ΔT
max(℃/min)以下となることを制約する制約式である。|ΔT
hp|は高圧タービン33の入口蒸気温度の変化レートの絶対値である。|ΔT
ip|は中圧タービン32の入口蒸気温度の変化レートの絶対値である。
図1のプラント構成の場合、低圧タービン31ではスプレイを使用しないためT
lpに対する制約は含まれていない。
【0026】
図3の式(4)は、高圧タービン33、中圧タービン32の入口蒸気温度が、熱応力の観点からT
max以下でなければならないことを制約する制約式である。一般に蒸気タービン30入口の蒸気温度が高い方が効率は向上する。しかし、過度に蒸気温度が高いと、熱応力による損傷などを招く。そこで、式(4)の制約条件を加えることで、熱応力の制約を違反しない範囲で、効率を最大化するスプレイ流量を算出する。
【0027】
図3の式(5)は、制御入力Unが取り得る範囲を、U
nmin~U
nmax(ton/hour)の範囲に制限することを制約する制約式である。式(5)により、流量調節弁V1,V2のスプレイ流量が取り得る範囲を制約している。
【0028】
定式化部424によって定式化される
図3に例示する最適化問題を解くことによって、蒸気タービン30の熱応力の制約を満たしつつ、所定の予想区間(t
k~t
k+N)における蒸気タービン30の出力の積分値を最大化するスプレイ流量を算出することができる。積分値を最大化することにより、経済的効率を最大化することができる。
【0029】
図3の式(1)では、HRSG20および/または蒸気タービン30の効率を最適化する指標の一例として蒸気タービン30の出力(低圧タービン31の出力+中圧タービン32の出力+高圧タービン33の出力)を例示したがこれに限定されない。他の効率の指標として、例えば、(a)HRSG20の効率、(b)HRSG20と蒸気タービン30の効率などを用いることができる。
【0030】
(a)のHRSG20の効率については、以下の式(1a)で計算することができる。
HRSG20の効率=HRSGで吸収した熱量/HRSG20入口の排ガスのエネルギー ・・・(1a)
※排ガスのエネルギーは排ガス温度×排ガス流量で計算する。
※HRSGで吸収した熱量は、HRSG20入口の排ガスのエネルギー-HRSG20出口の排ガスのエネルギーで計算することができる。
【0031】
(b)のHRSG20と蒸気タービン30の効率については、以下の式(1b)で計算することができる。
HRSG20と蒸気タービン30の効率=蒸気タービン30の出力/HRSG20の入口の排ガスエネルギー ・・・(1b)
※蒸気タービン30の出力は、式(1)の右辺で計算する。HRSG20の入口の排ガスエネルギーは、HRSG20の入口で測定される排ガス温度×排ガス流量で計算する。
【0032】
これら式(1a)、(1b)の計算式も予測モデル423に組み込まれており、後に
図5を用いて説明する手順で、蒸気タービン30の熱応力の制約を満たしつつ、所定の予想区間(t
k~t
k+N)におけるHRSG20の効率の積分値又はHRSG20と蒸気タービン30の効率の積分値を最大化するスプレイ流量を算出することができる。
【0033】
最適化ソルバー425は、一般に提供されている最適化計算を行うソルバーである。最適化ソルバー425は、定式化部424が定式化した最適化問題を解く。すなわち、最適化ソルバー425は、様々なスプレイ流量の条件下で、予測モデル423に基づいて、未来の予想区間における蒸気タービンの出力等の積分値を予測し、熱応力の制約を満たしつつ、HRSG20および/または蒸気タービン30の効率(積分値)を最大化する蒸気温度とスプレイ流量を探索する。
【0034】
(予測モデルの構成)
図4に、実施形態に係る予測モデル423の構成の一例を示す。
図4に示すように、予測モデル423が模擬するHRSG20の挙動・状態のうち、低圧、中圧、高圧それぞれの節炭器、加熱器、蒸発器を流れる水や蒸気の圧力については、その時々の瞬時値だけを計算し、ダイナミクス(時系列の動的な挙動)を考慮しない。これに対し、低圧、中圧、高圧それぞれのドラムの圧力については、ダイナミクスを考慮した計算、例えば、ドラムの圧力に影響する事象が発生してから、それがドラムの圧力に反映されるまでの遅れ時間を考慮して圧力の計算を行う。
【0035】
低圧、中圧、高圧それぞれの節炭器、加熱器、蒸発器、ドラムの排ガス、蒸気、水の温度については、その時々の瞬時値だけを計算し、節炭器、加熱器、蒸発器、ドラムのメタル部分の温度については、ダイナミクスを考慮する。これは、排ガス、蒸気、水などは応答遅れが少なく瞬時値だけ計算すれば予測精度が保たれるのに対し、メタル部分に関しては温度の変化が遅れて生じるので、ある時刻の事象が将来の温度変化に与える機構(ダイナミクス)を考慮に入れた計算を行わなければ、予測精度が保てない為である。
【0036】
また、蒸気タービン30の出力の模擬についてはダイナミクスを考慮せず、蒸気タービン30を流れる蒸気の流量についてもダイナミクスを考慮しない。このように、予測モデル423は、応答遅れを考慮しなくてよい状態量についてはダイナミクスを考慮せずに計算を行い、そうでない状態量についてはダイナミクスを考慮した計算を行うよう構成されている。これにより、計算負荷の低減と予測精度の向上を実現している。
【0037】
実際にGTCC100を運転しているときに、リアルタイムに、効率を最大化する流量調節弁V1,V2のスプレイ流量を計算し、その結果を実際の流量調節弁V1,V2の制御に適用するためには、高速かつ高精度に計算を行わなければならない。
図4に例示するように、状態量の計算におけるダイナミクス考慮の有無を切り分けることで、リアルタイム且つ高精度な流量調節弁V1,V2の制御を実現している。
【0038】
この他にも予測モデル423では、以下のようにして各種の状態量が計算される。例えば、HRSG20に流入する排ガスの流量と温度については、負荷指令値に応じて決定される。冷却水の流量については、流量や熱量の保存側を表した計算式に基づいて計算される。熱交換器(蒸発器)の温度についてはメタルの温度変化のダイナミクスを表した計算式に基づいて計算される。蒸気の流量は、ドラムの圧力と下流の主蒸気の差圧から計算され、ドラムの圧力は、質量収支と熱収支のダイナミクスを表した計算式に基づいて計算される。
【0039】
(最適化計算のフロー)
次に
図5を参照して、
図2の構成を前提とした場合の最適化計算の流れを説明する。予測制御部422は、GTCC100への負荷指令i(501)を取得し、予測モデル423を使って(504)、現在の排ガス流量と排ガス温度の予測値を予測する(505)。予測制御部422は、排ガス流量と排ガス温度の予測値を、予測モデル423の予測モデル4232に入力して(506)、HRSG20の現在のメタル温度の予測値(507)と現在のドラム圧力の予測値(508)を予測する。このときの制御量u(スプレイ流量)には、現在の流量調節弁V1のスプレイ流量と流量調節弁V2のスプレイ流量が用いられる。スプレイ流量は、計測値でもよいし、1つ前の制御ステップで算出されたスプレイ流量の値でもよい。予測制御部422は、現在のメタル温度とドラム圧力の予測値を状態量推定部421へ出力する。
【0040】
一方、状態量推定部421は、HRSG20のメタル温度の計測値(502)とドラム圧力の計測値(503)を取得する。状態量推定部421は、メタル温度の予測値(507)と、ドラム圧力の予測値(508)と、メタル温度の計測値(502)と、ドラム圧力の計測値(503)と、に基づいて、現在運転しているGTCC100の真のメタル温度とドラム圧力を推定する(509)。例えば、状態量推定部421は、メタル温度の予測値とメタル温度の計測値の加重平均によって、真のメタル温度を推定する。例えば、状態量推定部421は、ドラム圧力の予測値とドラム圧力の計測値の加重平均によって、真のドラム圧力を推定する。計測値と予測値への御重み付けは任意である。例えば、状態量推定部421は、GTCC100の運転状態が安定している状況では計測値により大きな重みを付し、負荷が変化している状況では、計測遅れが生じる計測値よりも予測値により大きな重みを付して、メタル温度とドラム圧力の真の値を推定するようにしてもよい。状態量推定部421は、推定した真のメタル温度(HRSGメタル温度推定値510)と真のドラム圧力(HRSGドラム圧力推定値511)を予測制御部422へ出力する。
【0041】
予測制御部422は、HRSGメタル温度推定値510とHRSGドラム圧力推定値511を取得し、予測モデル423にフィードバックする(512)。これにより、予測モデル423が模擬するGTCC100の状態を、より精緻にGTCC100の実際の運転状態に合わせる。その後、予測制御部422は、HRSGメタル温度推定値510とHRSGドラム圧力推定値511を予測モデル4232に入力して(513)、所定の予測区間におけるGTCC100の挙動・状態を模擬させる。このとき、所定の予測区間における負荷指令値iを予測モデル423に入力する。そして、予測制御部422は、未来のHRSG20の蒸気タービン30入口の蒸気温度の予測値(514)と蒸気タービン30の出力の予測値(515)を予測する。予測制御部422は、最適化ソルバー425を使って、最適化計算を実行し(516)、スプレイ流量指令を出力する(517)。
【0042】
最適化計算(516)では、制御量uを様々に変化させて運転したときの所定の予測区間(tk~tk+N)における、その時々の負荷指令値iに応じたガスタービン10と、HRSG20と、蒸気タービン30の挙動・状態が模擬され、その結果として、蒸気タービン30入口での高圧と中圧の蒸気温度と蒸気タービン30の出力の予測値が予測モデル423によって算出される。そして、最適化の指標が蒸気タービン30の出力であれば、予測区間の出力の予測値を積分して出力積分値が計算され、出力積分値が最大となるときの流量調節弁V1,V2のスプレイ流量が算出される。あるいは、上記の指標(a)、(b)を用いる場合であれば、それぞれ式(1a)、式(1b)で計算された値の積分値によって、予測区間におけるHRSG20の効率、HRSG20+蒸気タービン30の効率が予測され、効率を最大化する流量調節弁V1,V2のスプレイ流量が算出される。また、最適化計算の際には、単に出力積分値を最大化するだけではなく、熱応力の制約を考慮し、蒸気温度の上限等を超過しないスプレイ流量指令(517)が計算される。
【0043】
(動作)
次に
図6を参照して、制御装置40の動作について説明する。制御装置40は、GTCC100の運転中、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し行う。
まず、取得部41が、現在および予測区間における負荷指令、現在のHRSG20のメタル温度およびドラム圧力の計測値を取得する(ステップS1)。
【0044】
次に、計算部42が、予測モデル423が模擬する状態を現状のプラントの状態に合わせる(ステップS2)。この処理は、
図5の501~512に対応する。
次に、計算部42が、最適化計算を行う(ステップS3)。この処理は、
図5の513~517に対応する。計算部42は、予測モデル423を使って、予測区間での負荷指令iに応じた時系列のGTCC100の挙動・状態を模擬し、様々なスプレイ流量の条件下で、予測区間の各時刻における蒸気タービン30の出力等を予測し、熱応力の制約内で効率を最大化するスプレイ流量を探索する。計算部42は、予測区間における効率を最大化する流量調節弁V1,V2のスプレイ流量指令を制御部43へ出力する。
【0045】
次に、制御部43が、スプレイ流量指令に基づいて冷却水調整弁を制御する(ステップS4)。制御部43は、流量調節弁V1を流れる冷却水の流量が、流量調節弁V1のスプレイ流量指令となるように、流量調節弁V1の開度を制御する。制御部43は、流量調節弁V2を流れる冷却水の流量が、流量調節弁V2のスプレイ流量指令となるように、流量調節弁V2の開度を制御する。これにより、GTCC100にて、熱応力の制約をみたしつつ、RSG20および/または蒸気タービン30の効率を最大化する運転が行われる。
【0046】
次に、制御装置40は、制御を終了するかどうかを判定する(ステップS5)。例えば、GTCC100が停止する場合、制御を終了すると判定し、そうでない場合、制御を終了しないと判定する。制御を終了しない場合(ステップS5;No)、ステップS1からの処理を繰り返し行う。これにより高効率運転が維持される。制御を終了する場合(ステップS5;Yes)、
図6のフローチャートを終了する。
【0047】
(効果)
以上説明したように、制御装置40によれば、蒸気温度が熱応力の制約を違反しない範囲で、RSG20および/または蒸気タービン30の効率が常に最大化するようにスプレイ流量を制御することができる。本実施形態では、GTCC100の運転状態に応じて蒸気タービン30入口の蒸気温度を、効率を最大化する温度に制御することができるので、過渡的な負荷状態でも効率を最大化することができる。また、プラントに投入する燃料等を変更するのではなく、コストがかからないスプレイ流量の制御により、効率を最大化する運転を実現するので、経済的な効率性を最大化することができる。また、高精度かつ計算負荷を低減した予測モデル423によって、近い未来の効率を予測しつつ、効率を最大化するスプレイ流量を算出するので、リアルタイムなプラント制御を実現することができる。
【0048】
なお、
図2の構成では、予測モデル423によって、現在のGTCC100の状態を模擬することとしたが、状態量推定部421の内部に予測モデル423と同様の予測モデルを実装し、
図5の501~511の処理を、状態量推定部421にて行うように構成してもよい。
【0049】
図7は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の制御装置40は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0050】
制御装置40の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0051】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0052】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、コンバインドサイクル発電プラント、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0053】
(1)第1の態様に係る制御装置は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御装置であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得する取得部と、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンの状態を模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する計算部と、前記計算部が算出した前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御する制御部と、を備える。
これにより、蒸気タービン入口側の蒸気温度を、排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する温度に制御することができる。
【0054】
(2)第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記効率を最大化する前記冷却水の流量を算出する際には、前記蒸気タービンの入口での蒸気温度が、熱応力の制約から定められた所定の上限温度以下となるような前記冷却水の流量を算出する。
これにより、熱応力の制約を違反しない範囲で、効率を最大化する蒸気温度とスプレイ流量を算出することができる。
【0055】
(3)第3の態様に係る制御装置は、(1)~(2)の制御装置であって、前記効率は、前記所定区間における前記蒸気タービンの出力の積分値である。
これにより、蒸気タービンの効率を最大化することができる。
【0056】
(4)第4の態様に係る制御装置は、(1)~(3)の制御装置であって、前記効率は、前記排熱回収ボイラで吸収した熱量を、前記排熱回収ボイラ入口の排ガスのエネルギーによって除算した値の前記所定区間における積分値である。
これにより、排熱回収ボイラの効率を最大化することができる。
【0057】
(5)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記効率は、前記蒸気タービンの出力を、前記排熱回収ボイラ入口の排ガスのエネルギーによって除算した値の前記所定区間における積分値である。
これにより、蒸気タービンと排熱回収ボイラを合わせたユニットの効率を最大化することができる。
【0058】
(6)第6の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記予測モデルが、前記排熱回収ボイラが備える節炭器、加熱器、蒸発器を流れる排ガス、蒸気、水の温度と圧力については、応答遅れを考慮せずに計算し、前記排熱回収ボイラが備えるドラムの圧力については、応答遅れを考慮して計算し、前記排熱回収ボイラの伝熱面の温度については応答遅れを考慮して計算するよう構成されている。
これにより、高速かつ精度よく、コンバインドサイクル発電プラントを模擬することができる。
【0059】
(7)第7の態様に係るコンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンと、前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統と、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁と、(1)~(6)に記載の制御装置とを備える。
これにより、コンバインドサイクル発電プラントがどのような運転状態にあるときでも、常に高効率で運転することができる。
【0060】
(8)第8の態様に係る制御方法は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する制御方法であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップと、を有する。
【0061】
(9)第9の態様に係るプログラムは、コンピュータに、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含むコンバインドサイクル発電プラントにおける前記排熱回収ボイラに設けられた冷却水供給系統を流れる冷却水の流量制御により、前記蒸気タービン入口の蒸気温度を制御する処理であって、前記排熱回収ボイラの状態量を取得するステップと、前記コンバインドサイクル発電プラントを模擬する予測モデルと、取得された前記状態量と、に基づいて、前記冷却水の流量を変化させたときの未来の所定区間における前記排熱回収ボイラと前記蒸気タービンを模擬し、前記所定区間における排熱回収ボイラおよび/または蒸気タービンの効率を最大化する前記冷却水の流量を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記冷却水の流量に基づいて、前記冷却水供給系統に設けられた流量調節弁を制御するステップとを有する処理を実行させる。
【符号の説明】
【0062】
100・・・GTCC
10・・・ガスタービン
20・・・HRSG
30・・・蒸気タービン
31・・・低圧タービン
32・・・中圧タービン
33・・・高圧タービン
21L・・・低圧節炭器
22H・・・高圧蒸発器
23H1・・・高圧一次加熱器
23H2・・・高圧二次加熱器
24H1・・・一次再熱器
24H2・・・二次再熱器
25H・・・高圧ドラム
40・・・制御装置
41・・・取得部
42・・・計算部
43・・・制御部
G1,G2・・・発電機
L1、L3・・・冷却水系統
L2、L4・・・配管
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース