(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157165
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】放射空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20241030BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20241030BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20241030BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
F24F3/00 Z
F24F3/14
F24F13/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071332
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏原 正志
(72)【発明者】
【氏名】前羽 誠
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BC01
3L080AC01
3L080BA00
3L080BB01
(57)【要約】
【課題】空調対象空間の少なくとも一部分について空調性能を向上できる放射空調システムを提供する。
【解決手段】放射空調システム1は、空調対象空間10の天井に設置される複数の放射パネル2と、外気ダクト6を介して導入された外気の温度を調整する空調機5と、空調機5から複数の放射パネル2の少なくとも一部の放射パネル2Aに外気を導出する給気ダクト7と、を備え、空調機5は、外気と放射パネル2に供給される熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器52を含み、少なくとも一部の放射パネル2Aは、放射プレート20を下面とした箱型を呈し、かつ、放射プレート20には、給気ダクト7を介して該放射パネル2Aに導入された外気を空調対象空間10に通わせる複数の通気孔200が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の天井に設置される複数の放射パネルであって、熱媒体が流れるパイプ及び前記パイプ内を流れる熱媒体から受熱した熱を放射する放射プレートを含む複数の放射パネルと、
外気ダクトを介して導入された外気の温度を調整する空調機と、
前記空調機から前記複数の放射パネルの少なくとも一部の放射パネルに外気を導出する給気ダクトと、
を備え、
前記空調機は、外気と前記放射パネルに供給される熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器を含み、
前記少なくとも一部の放射パネルは、前記放射プレートを下面とした箱型を呈しており、かつ、前記放射プレートには、前記給気ダクトを介して該放射パネルに導入された外気を空調対象空間に通わせる複数の通気孔が形成されている、放射空調システム。
【請求項2】
前記複数の放射パネルの前記少なくとも一部の放射パネル以外の放射パネルにおいて、前記放射プレートには、空調対象空間の空気を天井裏空間に通わせる複数の通気孔が形成されている、請求項1に記載の放射空調システム。
【請求項3】
前記少なくとも一部の放射パネルは、ペリメータゾーンの天井に設置される、請求項1に記載の放射空調システム。
【請求項4】
前記空調機は、前記外気ダクトを介して導入された外気の湿度を低下させる除湿機をさらに含む、請求項1に記載の放射空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射パネルを用いた放射空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井等に施工した放射パネルにより室内の冷暖房が行われている。放射パネルは、基板(放射プレート)の片面にパイプを取り付けた構造である。パイプを流れる水等の熱媒体と基板との熱交換により基板が冷却又は加熱され、冷却又は加熱された基板により室内の冷暖房が行われる。熱媒体は、基板を冷却又は加熱した後、例えばヒートポンプチラーや吸収式冷温水機等により温度が下げられ又は温度が上げられて、再び放射パネルに送られる。特許文献1の放射冷暖房装置では、室内の冷暖房とともに室内の換気を行っている。特許文献1の放射冷暖房装置では、外調機から天井裏チャンバーに取り込んだ外気を放射パネルに形成された複数の通気孔から室内に供給しており、外気を、外調機において放射パネルを通過後の熱媒体との熱交換により所定の温度に調整して、天井裏チャンバーに送っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば室内の空間は、外壁又は外窓に近い空間であるペリメータゾーンと、外壁又は外窓から遠い空間であるインテリアゾーンとに分けられる。ペリメータゾーンは、日射や外気温等の熱的影響を受けやすいため、ペリメータゾーンについては空調の効きが悪くなることが頻繁に起こる。よって、室内全体でムラのない空調を行うためには、例えばペリメータゾーン等の室内の空間の一部分について空調の負荷を大きくしたり補助空調を設ける必要があるが、特許文献1の放射冷暖房装置ではその点が何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決することに着目してなされたものであり、空調対象空間の少なくとも一部分について空調性能を向上できる放射空調システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の放射空調システムを主題とする。
【0007】
項1.空調対象空間の天井に設置される複数の放射パネルであって、熱媒体が流れるパイプ及び前記パイプ内を流れる熱媒体から受熱した熱を放射する放射プレートを含む複数の放射パネルと、
外気ダクトを介して導入された外気の温度を調整する空調機と、
前記空調機から前記複数の放射パネルの少なくとも一部の放射パネルに外気を導出する給気ダクトと、
を備え、
前記空調機は、外気と前記放射パネルに供給される熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器を含み、
前記少なくとも一部の放射パネルは、前記放射プレートを下面とした箱型を呈しており、かつ、前記放射プレートには、前記給気ダクトを介して該放射パネルに導入された外気を空調対象空間に通わせる複数の通気孔が形成されている、放射空調システム。
【0008】
また本発明の放射空調システムは、上記項1に記載の放射空調システムの好ましい態様として、以下の項2に記載の放射空調システムを包含する。
【0009】
項2.前記複数の放射パネルの前記少なくとも一部の放射パネル以外の放射パネルにおいて、前記放射プレートには、空調対象空間の空気を天井裏空間に通わせる複数の通気孔が形成されている、項1に記載の放射空調システム。
【0010】
また本発明の放射空調システムは、上記項1から項2に記載の放射空調システムの好ましい態様として、以下の項3に記載の放射空調システムを包含する。
【0011】
項3.前記少なくとも一部の放射パネルは、ペリメータゾーンの天井に設置される、請求項1又は項2に記載の放射空調システム。
【0012】
また本発明の放射空調システムは、上記項1から項3に記載の放射空調システムの好ましい態様として、以下の項4に記載の放射空調システムを包含する。
【0013】
項4.前記空調機は、前記外気ダクトを介して導入された外気の湿度を低下させる除湿機をさらに含む、項1から項3のいずれか一項に記載の放射空調システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の放射空調システムによれば、空調対象空間の少なくとも一部分について空調性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は一実施形態の放射空調システムの概略構成図である。
【
図2】
図2(A)は放射パネルの概略斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)の底面図である。
【
図3】
図3(A)は放射パネルの概略斜視図であり、
図3(B)は
図3(A)の底面図である。
【
図4】
図4は他の実施形態の放射空調システムの概略構成図である。
【
図5】
図5は他の実施形態の放射空調システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の放射空調システムは、例えば、オフィス、店舗、病院、図書館、商業施設(ショッピングモール、スーパー、デパート等)、娯楽施設(映画館等)の各種建物内の空間の空調を行う技術に関する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る放射空調システム1の概略構成図である。本実施形態の放射空調システム1は、空調対象空間10の天井に設置される複数の放射パネル2と、複数の放射パネル2に供給する熱媒体を生成する熱源機3と、複数の放射パネル2及び熱源機3の間で熱媒体を循環させるための循環流路4と、空調機5と、空調機5に外気を導入するための外気ダクト6と、空調機3から複数の放射パネル2の少なくとも一部の放射パネル2Aに外気を導出するための給気ダクト7と、天井裏空間11に設置される排気ファン8と、天井裏空間11の空気を外部に導出するための排気ダクト9と、を備える。
【0018】
以下では、まずは、放射空調システム1を構成する構成要素について説明する。
【0019】
複数の放射パネル2は、
図1から
図3に示すように、例えば平面視で長方形状であり、縦横に整列して配置されることで空調対象空間10の天井を構成している。つまり、複数の放射パネル2は、室内等の空調対象空間10と天井裏空間11との境界に位置しており、複数の放射パネル2の上方が天井裏空間11である。
【0020】
なお、空調対象空間10は、一般的に、
図1の二点鎖線で示すように、外窓又は外壁(以下、「外壁等12」という。)に近い空間であるペリメータゾーンと、外壁等12から遠い空間であるインテリアゾーンとに分けられる。インテリアゾーンは、日射や外気温等の熱的影響を受けにくい中央領域である。これに対して、ペリメータゾーンは、外壁等12に面しているために日射や外気温等の熱的影響を受けやすい外周領域であり、外壁等12から内側に3mから5mの範囲内の領域である。複数の放射パネル2は、インテリアゾーン及びペリメータゾーンの両者にわたって設置される。つまり、複数の放射パネル2の一部の放射パネル2Aはペリメータゾーンに設置され、複数の放射パネル2の一部の放射パネル2A以外の放射パネル2Bはインテリアゾーンに設置される。
【0021】
それぞれの放射パネル2は、
図2及び
図3に示すように、放射プレート(基板)20及びパイプ21を少なくとも含む。放射プレート20及びパイプ21は例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄又は鉄合金等の金属製である。パイプ21は、放射プレート20上に固定されている。放射プレート20上にパイプ21を固定する方法は、特に限定されず、従来から公知の種々の方法を用いることができる。
【0022】
放射プレート20は、本実施形態では平板状である。放射プレート20には複数の通気孔200が形成されている。通気孔200は放射プレート20を厚み方向に貫通している。通気孔200は、
図2(B)及び
図3(B)では、平面視で丸い小穴の形態とされているが、例えば細長いスリットの形態であってもよく、通気孔200の形態は特に限定されない。通気孔200を通って放射プレート20の上から下に向かってあるいは下から上に向かって空気を通わせることができる。
【0023】
パイプ21の内周面及び外周面には、耐蝕性を高めるためにポリエチレン等からなる樹脂層が設けられる。パイプ21は、平面視でジグザグ状に蛇行している。パイプ21の一端は、一方に隣り合う放射パネル2のパイプ21の他端にジョイント管により接続されており、パイプ21の他端は、他方に隣り合う放射パネル2のパイプ21の一端にジョイント管により接続される。
【0024】
少なくともペリメータゾーンに設置される放射パネル2Aは、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、放射プレート20を下面とした箱型を呈しており、放射パネル2Aの内部の放射プレート20上にパイプ21が固定される。放射パネル2Aの上面には、給気口201が形成されている。給気口201には、給気ダクト7が接続される。特に限定されないが、
図1では、給気ダクト7は、三つの放射パネル2Aに外気を導入できるように、下流側が三つの支流部70に分かれていて、それぞれの支流部70が対応する放射パネル2Aの給気口201に接続されている。放射パネル2Aには、空調機3において温度調整された外気が給気ダクト7を介して導入される。放射パネル2Aに導入された外気は、放射パネル2Aの内部で放射プレート20と接触しながら放射プレート20に形成された複数の通気孔200を通って空調対象空間10に供給される。
【0025】
インテリアゾーンに設置される放射パネル2Bは、ペリメータゾーンに設置される放射パネル2Aと同様に箱型を呈していてもよいし、箱型を呈していなくてもよい。インテリアゾーンに設置される放射パネル2Bが
図3(A)及び
図3(B)に示すように箱型を呈する場合、放射パネル2Aの上面には、下面の放射プレート20と同様に複数の通気孔200が形成される。空調対象空間の空気は、
図1に示すように、インテリアゾーンに設置される放射パネル2Bに形成された複数の通気孔200を通って天井裏空間11に戻される。天井裏空間11に戻された空気は、天井裏空間11に設置された排気ファン8の駆動により排気ダクト9を通って外部に排出される。
【0026】
それぞれの放射パネル2は、熱源機3から供給される熱媒体がパイプ21内を流れ、放射プレート20がパイプ21内を流れる熱媒体から受熱した熱を放射することで、空調対象空間10の温度を調整する。放射パネル10から放射される熱は、冷房時は冷熱であり、暖房時は温熱である。なお、「冷熱を放射する」というのは、厳密にいえば、放射パネルから冷熱が放射されるのではなく、例えば空調対象空間に存在する人間や機器等から放射された熱が、温度の低い放射パネルに吸収されて反射されないために納涼感が生ずるのであるが、本開示においては便宜上、冷熱についても「放射する」と表現する。
【0027】
それぞれの放射パネル2に供給される熱媒体の温度は、例えば冷房時では18℃から20℃程度であり、暖房時では28℃から30℃程度である。
【0028】
熱源機3は、
図1に示すように、所定温度の熱媒体を生成して放射パネル2に供給する。熱源機3は、冷房時には放射パネル2や空調機3を通過して温度が上昇した熱媒体から熱を回収して熱媒体を所定温度に調整し、暖房時には放射パネル2や空調機3を通過して温度が低下した熱媒体に熱を付与して熱媒体を所定温度に調整する。熱媒体は、液体又は気体であり、好ましくは水(冷水又は温水)である。熱源機3には、例えばヒートポンプチラー、吸収式冷温水機等を用いることができるが、これらには限定されず、例えばチラー又は冷凍機とボイラとの組み合わせであってもよい。
【0029】
熱源機3で生成された熱媒体は、ポンプPの駆動により熱源機3から圧送され、循環流路4の往路管40を介して空調機3及び放射パネル2に送られた後、循環流路4の復路管41を介して熱源機3に戻る。熱源機3から送出される熱媒体の温度は特に限定されないが、例えば冷房時では10℃から15℃程度であり、暖房時では35℃から40℃程度である。熱源機3から送出される熱媒体の温度は、放射パネル2に供給される熱媒体の温度よりも低温又は高温である。熱源機3から送出される熱媒体は、まず、第一往路管40Aを介して空調機3に送られ、空調機3の熱交換器52においてその温度が調整された後、第二往路管40Bを介して放射パネル2に送られる。
【0030】
空調機5は、
図1に示すように、外気の温度、湿度、清浄度、気流等を調整し、温度等が調整された調和外気を空調対象空間10に供給する。空調機5は、送風機50と、フィルター装置51と、熱交換器52と、除湿機53とを含む。空調機5は、これらの機器をケーシングに組み込んでパッケージ化したものを用いることができる。なお、空調機5は、送風機50、フィルター装置51、熱交換器52及び除湿機53をパッケージ化することなく別々に設ける構成としてもよい。
【0031】
送風機50は、例えばファンやブロア等の従来から公知のものを用いることができる。空調機5には外気を導入するための吸気口に外気ダクト6が接続されており、送風機50の駆動により外気が外気ダクト6を介して空調機5に導入される。
【0032】
フィルター装置51は、空調機5に導入された外気中に混入する塵埃等の異物を除去する。フィルター装置51は、従来から公知の種々のものを用いることができ、例えばエアフィルターを用いることができる。
【0033】
熱交換器52は、循環流路4の第一往路管40Aにより熱源機3から送出される熱媒体が供給される。熱交換器52は、熱媒体と外気との間の熱交換により、熱媒体の温度を調整する。冷房時には、例えば夏季の高温の外気により熱媒体に熱を付与する(すなわち熱媒体を加熱する)ことによって熱媒体の温度を上げる。暖房時には、例えば冬季の低温の外気により熱媒体から熱を回収する(すなわち熱媒体を冷却する)ことによって熱媒体の温度を下げる。温度が調整された熱媒体は、循環流路4の第二往路管40Bにより放射パネル2に送られる。
【0034】
また熱交換器52は、熱媒体と外気との間の熱交換により、外気の温度を調整する。冷房時には、高温の外気を熱媒体により冷却することによって、外気の温度を下げる。暖房時には、低温の外気を熱媒体により加熱することによって、外気の温度を上げる。温度が調整された調和外気は、除湿機53に送られる。
【0035】
熱交換器52は、従来から公知の種々のものを用いることができ、例えば冷温水コイル(コイル式熱交換器)を用いることができる。
【0036】
除湿機53は、調和外気中の湿気(水分)を取り除いて調和外気の湿度を低下させる。除湿器53は、調和外気中の湿気を乾燥剤に吸着させて除去する従来から公知のデシカント方式の除湿機を用いてもよいし、調和外気を冷却器で冷却することで湿気を水滴にして回収する従来から公知のコンプレッサー式の除湿機を用いてもよい。
【0037】
空調機5には調和外気を導出するための送気口に給気ダクト7が接続されており、送風機50の駆動により、調和外気が給気ダクト7を介して所定の放射パネル2Aに導出される。
【0038】
なお、空調機5は、上述した機器以外に、加湿器やエリミネータ等のその他の空調に関する機器を含んでいてもよい。
【0039】
次に、上記構成の放射空調システム1の作用効果について説明する。
【0040】
まず冷房時について、ポンプPの駆動により熱源機3から熱媒体として例えば10℃から15℃程度の冷水が循環流路4の第一往路管40Aを通って空調機5の熱交換器52に導入される。冷水の流量は、例えばポンプPの回転数制御、あるいは、第一往路管40Aに設けるバルブの開閉制御により、所定の流量に調整される。また、送風機50の駆動により空調機5には例えば夏季の高温多湿の外気が導入される。外気の流量は、送風機50の回転数制御、あるいは、外気ダクト6に設けるダンパー又はバルブの開閉制御により、所定の流量に調整される。
【0041】
熱交換器52に導入された冷水は、空調機5に導入されかつフィルター装置51を通過して異物が除去された外気と熱交換し、例えば16℃から20℃程度に昇温する。昇温した冷水は、循環流路4の第二往路管40Bを通って複数の放射パネル2のそれぞれのパイプ21に導入される。複数の放射パネル2のそれぞれにおいては、パイプ21を流れる冷水が放射プレート20との熱交換により放射プレート20を冷却する。放射プレート20は、受熱した冷熱を空調対象空間10に放射する。これにより、空調対象空間の空気が冷やされるので、該空間10の温度を低下できる。
【0042】
空調対象空間の冷房に利用されて温度が上昇した冷水は、循環流路4の復路管41を通って熱源機3に導入され、例えば10℃から15℃程度まで降温されて、再び、空調機5の熱交換器52及び複数の放射パネル2のそれぞれに供給される。
【0043】
一方、空調機5に導入されかつ熱交換器52において冷水と熱交換した外気は、例えば20℃から24℃程度に降温し、その後、除湿器53を通過して湿度が低下することで調和される。温度、湿度が調整された調和外気は、給気ダクト7を通って複数の放射パネル2の一部の放射パネル2A、すなわち、空調対象空間10のペリメータゾーンに設置された少なくとも一つの放射パネル2Aに導出される。放射パネル2Aに導入された調和外気は、通気孔200から空調対象空間10に取り入れられ、これに応じて空調対象空間10の空気は、空調対象空間10のインテリアゾーンに設置された少なくとも一つの放射パネル2Bの通気孔200を通って天井裏空間11に流れ出る。これにより、空調対象空間10の空気が新鮮な調和外気に入れ換えられるので、空調対象空間10を換気できる。
【0044】
天井裏空間11に排出された空調対象空間10の空気は、天井裏空間11に設置された排気ファン8の駆動により排気ダクト9を通って外部に排出される。
【0045】
次に暖房時について、ポンプPの駆動により熱源機3から熱媒体として例えば35℃から40℃程度の所定流量の温水が循環流路4の第一往路管40Aを通って空調機5の熱交換器52に導入される。また、送風機50の駆動により空調機5には例えば冬季の低温低湿の所定流量の外気が導入される。
【0046】
熱交換器52に導入された温水は、空調機5に導入されかつフィルター装置51を通過して異物が除去された外気と熱交換し、例えば28℃から32℃程度に降温する。降温した温水は、循環流路4の第二往路管40Bを通って複数の放射パネル2のそれぞれのパイプ21に導入される。複数の放射パネル2のそれぞれにおいては、パイプ21を流れる温水が放射プレート20との熱交換により放射プレート20を加熱する。放射プレート20は、受熱した温熱を空調対象空間10に放射する。これにより、空調対象空間の空気が温められるので、該空間10の温度を上昇できる。
【0047】
空調対象空間の暖房に利用されて温度が低下した温水は、循環流路4の復路管41を通って熱源機3に導入され、例えば35℃から40℃程度まで昇温されて、再び、空調機5の熱交換器52及び複数の放射パネル2のそれぞれに供給される。
【0048】
一方、空調機5に導入されかつ熱交換器52において温水と熱交換した外気は、例えば24℃から28℃程度に昇温し、その後、必要に応じて加湿器により加湿されることで調和される。温度等が調整された調和外気は、給気ダクト7を通って複数の放射パネル2の一部の放射パネル2A、すなわち、空調対象空間10のペリメータゾーンに設置された少なくとも一つの放射パネル2Aに導出される。放射パネル2Aに導入された調和外気は、通気孔200を通って空調対象空間10に取り入れられ、これに応じて空調対象空間10の空気は、空調対象空間10のインテリアゾーンに設置された少なくとも一つの放射パネル2Bの通気孔200を通って天井裏空間11に流れ出る。これにより、空調対象空間10の空気が新鮮な調和外気に入れ換えられるので、空調対象空間10を換気できるとともに調湿できる。
【0049】
天井裏空間11に排出された空調対象空間10の空気は、天井裏空間11に設置された排気ファン8の駆動により排気ダクト9を通って外部に排出される。
【0050】
上述した本実施形態の放射空調システム1によれば、複数の放射パネル2は、パイプ21内を流れる熱媒体により放射プレート20が冷却あるいは加熱され、放射プレート20からの熱の放射により空調対象空間10が冷房あるいは暖房される。この際に、複数の放射パネル2の少なくとも一部の放射パネル2Aには、給気ダクト7によって温度が調整された調和外気が導入され、この調和外気は放射パネル2A内から通気孔200を通って空調対象空間10に流入する。このように、複数の放射パネル2の少なくとも一部の放射パネル2Aに調和外気が積極的に導入され、調和外気(冷房時には低温の空気、暖房時には高温の空気)が該放射パネル2Aの放射プレート20に接触することで、該放射パネル2Aでは放射プレート20による熱の放射性能が向上する。よって、空調対象空間10において該放射パネル2Aが設置された部分について冷暖房による空調性能を向上できる。特に、該放射パネル2Aが空調対象空間10のペリメータゾーンに設置されている場合、日射や外気温等の熱的影響を受けるために一般的に空調の効きが悪いペリメータゾーンに対して熱を効果的に放射できるので、ペリメータゾーンを快適な空間に空調できる。その結果、例えばペリメータゾーンについて空調の負荷を大きくしたり補助空調を設けたりする必要がなくなる。
【0051】
さらに、本実施形態の放射空調システム1によれば、換気のために空調対象空間の送られる温度や湿度が調整された外気が空調対象空間10のペリメータゾーンに供給されるので、ペリメータゾーンにおける冷暖房による空調性能をさらに向上できる。
【0052】
このように、空調性能が向上すれば、空調対象空間10の天井に設置する放射パネル2の総面積を減らすことができるので、コスト低減にもつながる
【0053】
また、熱源機3から送出される熱媒体の温度が、複数の放射パネル2に供給するために必要な熱媒体の温度よりも冷房時には低く暖房時には高い場合があり、この場合、熱源機3から送出される熱媒体の温度を調整しなければならない。本実施形態の放射空調システム1によれば、換気のために空調対象空間に送る外気と熱媒体との熱交換により熱媒体の温度調整を行っており、熱媒体の温度調整のために特別なエネルギーを必要としないため、エネルギーの効率的利用を図ることができ、エネルギーロスを防ぐことができる。
【0054】
また、本実施形態の放射空調システム1によれば、空調対象空間10の空気が複数の放射パネル2の一部の放射パネル2Bの通気孔200を通って天井裏空間11に流出する。天井裏空間11としては、空調対象空間の調温、調湿等された空気が取り入れられるので、天井裏空間11の環境(温度、湿度)を空調対象空間10の環境(温度、湿度)に近づけることができる。そのため、天井裏空間11における結露の発生を防止できる。
【0055】
以上、本発明の一つの実施形態について説明したが、上記実施形態は、あくまでも例示であって制限的なものではない。そのため、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0056】
例えば上記実施形態では、複数の放射パネル2を直列につないで熱源機3からの熱媒体を循環させている。他の実施形態としては、
図4に示すように、複数の放射パネル2のうち、例えばペリメータゾーン側の一部の放射パネル2Aを直列につなぎ、インテリアゾーン側の一部の放射パネル2Bを直列につなぎ、ペリメータゾーン側の複数の放射パネル2Aとインテリアゾーン側の複数の放射パネル2Bにそれぞれ熱源機3からの熱媒体を循環させるように構成してもよい。
【0057】
図4に示す実施形態では、循環流路4の第二往路管40Bは、ペリメータゾーン側の複数の放射パネル2Aとインテリアゾーン側の複数の放射パネル2Bに熱媒体を導入できるように、下流側が二つの支流部400に分かれていて、それぞれの支流部400がペリメータゾーン側の上流端の放射パネル2Aのパイプ21、インテリアゾーン側の上流端の放射パネル2Bのパイプ21に接続されている。また、循環流路4の復路管41は、ペリメータゾーン側の複数の放射パネル2Aとインテリアゾーン側の複数の放射パネル2Bから熱媒体が導出されるように、下流側が二つの支流部410に分かれていて、それぞれの支流部410がペリメータゾーン側の下流端の放射パネル2Aのパイプ21、インテリアゾーン側の下流端の放射パネル2Bのパイプ21に接続されている。
【0058】
その他、例えば上記実施形態では、空調対象空間10のペリメータゾーンに設置される放射パネル2Aについて給気ダクト7を接続して熱の放射性能を向上させている。他の実施形態としては、複数の放射パネル2のうち、空調対象空間10のペリメータゾーン以外の部分に設置される一部の放射パネル2について給気ダクト7を接続して熱の放射性能を向上させるように構成してもよい。
【0059】
その他、他の実施形態として、
図5に示すように、複数の放射パネル2の全てについて給気ダクト7を接続して熱の放射性能を向上させるように構成してもよい。
図5に示す実施形態では、空調対象空間10の天井又は外壁に排気口を設けることで、放射パネル2の通気孔200を通って空調対象空間10に調和外気が取り入れられることに応じて、空調対象空間10の空気を外部に排出する。これにより、空調対象空間10の空気が新鮮な調和外気に入れ換えられるので、空調対象空間10を換気できる。
【符号の説明】
【0060】
1 放射空調システム
2 放射パネル
2A 放射パネル
2B 放射パネル
3 熱源機
4 循環流路
5 空調機
6 外気ダクト
7 給気ダクト
8 排気ファン
9 排気ダクト
10 空調対象空間
11 天井裏空間
20 放射プレート
21 パイプ
52 熱交換器
53 除湿機
200 通気孔