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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157167
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電動機の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20241030BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241030BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20241030BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
H02K9/19 A
H02P29/62
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071334
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山口 直志
(72)【発明者】
【氏名】大図 達也
(72)【発明者】
【氏名】山中 翔生
【テーマコード(参考)】
5H501
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H501AA01
5H501AA20
5H501BB08
5H501LL39
5H501MM05
5H501MM09
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC05
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE26
5H601GA02
5H601GB05
5H601GE02
5H601GE14
5H601KK18
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609QQ05
5H609QQ10
5H609RR26
5H609RR36
5H609RR46
(57)【要約】
【課題】ステータ全体を均等に冷却でき、連続駆動に寄与できる電動機の冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置1のステータコア5は、筒状のバックヨーク7と、バックヨーク7から径方向に沿って突出する複数のティース8と、周方向で隣り合うティース8の間に形成される複数のスロット9と、バックヨーク7にスロット9と連通しないように周方向に沿って設けられ、冷媒が流れる冷却路12と、バックヨーク7に形成され、冷却路12に冷媒を供給するための冷媒供給口16と、を備え、冷却路12は、周方向に少なくとも2つに分割して構成され、冷却路12ごとに冷媒供給口16が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを有する電動機の冷却装置であって、
前記ステータは、
ステータコアと、
前記ステータコアに巻回されるコイルと、
を備え、
前記ステータコアは、
筒状のバックヨークと、
前記バックヨークから径方向に沿って突出する複数のティースと、
周方向で隣り合う前記ティースの間に形成される複数のスロットと、
前記バックヨークに前記スロットと連通しないように周方向に沿って設けられ、冷媒が流れる冷却路と、
前記バックヨークに形成され、前記冷却路に前記冷媒を供給するための冷媒供給口と、
を備え、
前記冷却路は、周方向に少なくとも2つに分割して構成され、
前記冷却路ごとに前記冷媒供給口が形成されている、
ことを特徴とする電動機の冷却装置。
【請求項2】
前記ステータコアは、前記ステータコアを被固定体に固定するための締結部を有し、
前記締結部は、前記被固定体に固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通孔を有し、
前記冷媒供給口は、前記ボルト挿通孔に連通されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機の冷却装置。
【請求項3】
各前記冷媒供給口に前記冷媒を供給するポンプと、
前記ポンプから各前記冷媒供給口にそれぞれ供給される前記冷媒の流量を制御する流量制御装置と、
前記ステータの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記流量制御装置を制御し、前記冷媒供給口に供給する前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機の冷却装置。
【請求項4】
前記ステータは、車体に中心軸線が車幅方向に沿うように固定され、
各前記冷媒供給口に前記冷媒を供給するポンプと、
前記ポンプから各前記冷媒供給口にそれぞれ供給される前記冷媒の流量を制御する流量制御装置と、
前記車体の傾きを検出する傾き検出部と、
前記傾き検出部によって検出された傾きに基づいて前記流量制御装置を制御し、前記冷媒供給口に供給する前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機は、コイルが巻回されたステータと、ステータに対して回転自在に設けられたロータと、を備える。コイルに通電を行うとステータに所定の鎖交磁束が形成され、ロータが継続的に回転する。ステータはコイルの通電抵抗によって発熱するので、ステータを冷却するためのさまざまな技術が提案されている。
【0003】
例えば、円筒状に構成されるとともに、内周にステータを収容するハウジングと、ハウジングの外周を覆い、冷媒の流入口と流出口とを有するカバーと、を有する技術が開示されている。ハウジングには、流入口と連通する第1流路溝、及び、流出口と連通する第2流路溝が形成されている。各流路溝は、環状に形成されている。
このような構成のもと、流入口に供給された冷媒は、まず、第1流路溝によってハウジングの外周を一周した後、第2流路溝へと流れる。さらに、冷媒は、第2流路溝によってハウジングの外周を一周した後、流出口から排出される。これにより、ステータの外周全体を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-4658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、流入口から流出口に至る間のうち、下流側の冷媒であるほどステータによって加熱されてしまう。このため、ステータの下流近傍での冷却効率が低下してしまい、電動機の連続駆動が制限されてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ステータ全体を均等に冷却でき、連続駆動に寄与できる電動機の冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る電動機の冷却装置(例えば、実施形態の冷却装置1)は、ステータ(例えば、実施形態のステータ3)を有する電動機(例えば、実施形態の電動機2)の冷却装置であって、前記ステータは、ステータコア(例えば、実施形態のステータコア5)と、前記ステータコアに巻回されるコイル(例えば、実施形態のコイル6)と、を備え、前記ステータコアは、筒状のバックヨーク(例えば、実施形態のバックヨーク7)と、前記バックヨークから径方向に沿って突出する複数のティース(例えば、実施形態のティース8)と、周方向で隣り合う前記ティース間に形成される複数のスロット(例えば、実施形態のスロット9)と、前記バックヨークに前記スロットと連通しないように周方向に沿って設けられ、冷媒が流れる冷却路(例えば、実施形態の冷却路12)と、前記バックヨークに形成され、前記冷却路に前記冷媒を供給するための冷媒供給口(例えば、実施形態の冷媒供給口16)と、を備え、前記冷却路は、周方向に少なくとも2つに分割して構成され、前記冷却路ごとに前記冷媒供給口が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、ステータコアの周方向に分割された冷却路に、それぞれ別々に冷媒を供給することができる。このため、ステータ全体を均等に冷却でき、電動機の連続駆動に寄与できる。
【0009】
(2)上記構成において、前記ステータコアは、前記ステータコアを被固定体(例えば、実施形態の車体101)に固定するための締結部(例えば、実施形態の締結部14)を有し、前記締結部は、前記被固定体に固定するためのボルト(例えば、実施形態のボルト11)が挿通されるボルト挿通孔(例えば、実施形態のボルト挿通孔10)を有し、前記冷媒供給口は、前記ボルト挿通孔に連通されていてもよい。
【0010】
このように構成することで、ボルト挿通孔を利用し、冷媒供給口を介して冷却路に冷媒を供給することができる。このため、冷媒供給口の加工コストを低減できるとともに、冷媒供給口を形成することによるバックヨークへの影響を最小限に抑えることができる。
【0011】
(3)上記構成において、各前記冷媒供給口に前記冷媒を供給するポンプ(例えば、実施形態のポンプ17)と、前記ポンプから各前記冷媒供給口にそれぞれ供給される前記冷媒の流量を制御する流量制御装置(例えば、実施形態の制御バルブ20)と、前記ステータの温度を検出する温度検出部(例えば、実施形態の温度センサ21)と、前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記流量制御装置を制御し、前記冷媒供給口に供給する前記冷媒の流量を制御する制御部(例えば、実施形態の制御部22)と、を備えてもよい。
【0012】
このように構成することで、ステータの温度に応じて各冷却路の冷媒の流量を制御できる。このため、ステータ全体をさらに均等に冷却でき、電動機の連続駆動に確実に寄与できる。
【0013】
(4)上記構成において、前記ステータは、車体(例えば、実施形態の車体101)に中心軸線(例えば、実施形態の中心軸線A)が車幅方向に沿うように固定され、各前記冷媒供給口に前記冷媒を供給するポンプと、前記ポンプから各前記冷媒供給口にそれぞれ供給される前記冷媒の流量を制御する流量制御装置と、前記車体の傾きを検出する傾き検出部(例えば、実施形態の傾きセンサ30)と、前記傾き検出部によって検出された傾きに基づいて前記流量制御装置を制御し、前記冷媒供給口に供給する前記冷媒の流量を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0014】
このように構成することで、車体の傾きに応じて各冷却路の冷媒の流量を制御できる。このため、ステータの姿勢が変化しようともステータ全体を均等に冷却でき、電動機の連続駆動に寄与できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動機の冷却装置によれば、ステータ全体を均等に冷却でき、電動機の連続駆動に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態における車両を車幅方向からみた側面図である。
図2】本発明の実施形態における冷却装置の概略構成図である。
図3】本発明の実施形態におけるステータの一部を拡大した斜視図である。
図4】本発明の実施形態におけるステータの一部断面図である。
図5】本発明の実施形態における各バルブの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態におけるトルクセンサを用いて各バルブの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図7】本発明の実施形態における冷却装置の変形例を示す概略構成図である。
図8】本発明の実施形態における傾きセンサを用いて各バルブの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図9】本発明の実施形態における冷媒供給口の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<車両>
図1は、本発明に係る冷却装置1が搭載された車両100を車幅方向からみた側面図である。図2は、冷却装置1の概略構成図である。
図1図2に示すように、車両100は、車体101と、車体101に搭載された電動機2を冷却する冷却装置1と、を備える。本実施形態では、冷却装置1は、電動機2を含むものとする。
【0019】
<冷却装置>
<電動機>
電動機2は、車体101の車輪(例えば後輪)102を回転駆動させるモータである。電動機2は、円筒状のステータ3と、ステータ3を収納するケース4と、ステータ3の径方向中央に配置され、ケース4に回転自在に支持された図示しないロータと、を備える。
ロータの回転力を車輪102に伝達することにより、車輪102が回転される。ロータの回転軸線は、車体101の車幅方向に沿っている。ステータ3の軸中心Aは、ロータの回転軸線と一致している。以下の説明において、電動機2を説明する場合には、ステータ3の軸方向を単に軸方向、ステータ3の径方向を単に径方向、ステータ3の周方向(ロータの回転方向)を単に周方向と称して説明する。
【0020】
図3は、ステータ3の一部を拡大した斜視図である。図3では、説明を分かりやすくするために後述のステータコア5の外側面を透過して示している。図4は、ステータ3の一部断面図である。
図2から図4に示すように、ステータ3は、円筒状のステータコア5に巻回されたコイル6と、を備える。ステータコア5は、複数の電磁鋼板を積層して形成される。ステータコア5は、円筒状のバックヨーク7と、バックヨーク7の内周面から径方向の内側に突出する複数のティース8と、を備える。
【0021】
複数のティース8は、周方向に等間隔に並んで配置されている。周方向で隣り合う2つのティース8の間にスロット9が形成される。スロット9にコイル6が挿通され、各ティース8にコイル6が巻回される。図3図4では、説明を分かりやすくするためにコイル6の図示を省略している。
このような構成のもと、コイル6に通電を行うと各ティース8に所定の鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束の磁気的な影響により、図示しないロータが継続的に回転される。
【0022】
バックヨーク7の外周面7aには、4つの締結部14が径方向の外側に向かって突出形成されている。4つの締結部14は、周方向に等間隔で配置されている。締結部14は、例えばケース4にステータ3を締結固定するためのものである。締結部14には、軸方向に貫通するボルト挿通孔10が形成されている。ボルト挿通孔10にボルト11を挿通し、このボルト11をケース4等に締め付けることにより、ケース4にステータ3が締結固定される。
【0023】
バックヨーク7には、周方向に沿って延びる冷却路12が形成されている。冷却路12は、バックヨーク7内に形成されており、外部に開口されていない。冷却路12は、周方向に4分割されている。各冷却路12の周長は同一長さで、かつ1/4周長よりも若干短く形成されている。このため、各冷却路12同士は連通されていない。図2では、分かりやすくするために、ステータコア5の一部を破断して冷却路12を示している。
【0024】
各冷却路12は、締結部14に対応するように配置されている。すなわち、各冷却路12の周方向中央における径方向の外側に、それぞれ締結部14が位置されている。
冷却路12の軸方向の幅は、例えばバックヨーク7の軸方向の幅の1/3程度である。しかしながらこれに限られるものではなく、冷却路12は、外部に開口されないように形成されていればよい。冷却路12は、バックヨーク7の軸方向の中央に配置されている。
【0025】
バックヨーク7には、軸方向からみて冷却路12と重なる位置に複数の冷媒排出口15が形成されている。冷媒排出口15は冷却路12を介してバックヨーク7の軸方向に貫通している。すなわち、冷媒排出口15は、冷却路12に連通されている。冷媒排出口15は、周方向に等間隔に並んで配置されている。
バックヨーク7には、ボルト挿通孔10と冷却路12とを連通させる冷媒供給口16が形成されている。冷媒供給口16は、分割された冷却路12ごとに形成されている。冷媒供給口16は、径方向に沿って形成されている。冷媒供給口16は、バックヨーク7の軸方向の中央に配置されている。
【0026】
図2に戻り、冷却装置1は、電動機2の他に、冷媒を吐出するポンプ17と、ポンプ17から吐出された冷媒を冷却する熱交換器18と、熱交換器18を介してポンプ17と電動機2とを連結する冷媒供給配管19及び冷媒戻り配管23と、冷媒供給配管19の途中に設けられた制御バルブ20と、ステータ3に設けられた温度センサ21と、制御バルブ20の駆動制御を行う制御部22と、を備える。
【0027】
ポンプ17は、図示しないタンクに貯留された冷媒を汲み上げて吐出する。
冷媒供給配管19は、熱交換器18から各冷却路12に対応するように4本に分岐され、それぞれボルト挿通孔10に連結される。すなわち、冷媒供給配管19は、熱交換器18及びボルト挿通孔10を介してポンプ17と冷媒供給口16とを連結する。
冷媒戻り配管23は、図示しないタンクとケース4とを連結する。
【0028】
制御バルブ20は、分岐された各冷媒供給配管19に設けられている。各制御バルブ20は、それぞれ対応する冷媒供給配管19に流れる冷媒の流量を制御する。
温度センサ21は、ステータ3の温度を検出し、この検出結果を信号として制御部22に出力する。温度センサ21は、例えばステータ3の最も温度が高くなるコイル6上に設けられる。
制御部22は、温度センサ21の検出結果に基づいて制御バルブ20の駆動制御を行う。以下、冷却装置1の具体的な動作の詳細について説明する。
【0029】
<冷却装置の動作>
冷却装置1の動作の説明では、分かりやすくするために、電動機2の設置姿勢に応じて各冷却路12、各冷媒供給配管19、及び各制御バルブ20の名称をそれぞれ以下のように区別して称する場合がある。すなわち、図2に示すように、車両100が水平な路面上に位置している状態では、電動機2は、4つの締結部14が上下(紙面上下)にそれぞれ1つずつ、前後にそれぞれ1つずつ位置された姿勢となる。図2に示す電動機2の姿勢は、車両100が水平な路面上に位置している状態を示しているものとする。
【0030】
このような姿勢において、図2中、紙面上方向を0時方向、紙面右方向を3時方向、紙面下方を6時方向、紙面左方向を3時方向と称する。0時方向の冷却路12を0時冷却路12aと称する。3時方向の冷却路12を3時冷却路12bと称する。6時方向の冷却路12を6時冷却路12cと称する。9時方向の冷却路12を9時冷却路12dと称する。
【0031】
0時冷却路12aにボルト挿通孔10及び冷媒供給口16を介して連結されている冷媒供給配管19及びこの冷媒供給配管19に設けられている制御バルブ20をそれぞれ0時供給配管19a、0時バルブ20aと称する。3時冷却路12bにボルト挿通孔10及び冷媒供給口16を介して連結されている冷媒供給配管19及びこの冷媒供給配管19に設けられている制御バルブ20をそれぞれ3時供給配管19b、3時バルブ20bと称する。6時冷却路12cにボルト挿通孔10及び冷媒供給口16を介して連結されている冷媒供給配管19及びこの冷媒供給配管19に設けられている制御バルブ20をそれぞれ6時供給配管19c、6時バルブ20cと称する。9時冷却路12dにボルト挿通孔10及び冷媒供給口16を介して連結されている冷媒供給配管19及びこの冷媒供給配管19に設けられている制御バルブ20をそれぞれ9時供給配管19d、9時バルブ20dと称する。
【0032】
<冷却装置の通常運転>
まず、冷却装置1の通常運転について説明する。
通常運転では、ポンプ17によって図示しないタンクから汲み上げられた冷媒を、各冷却路12a,12b,12c,12d、ボルト挿通孔10、及び冷媒供給口16を介し(図3図4における矢印Y1参照)、各冷却路12a,12b,12c,12dに供給する。
このとき、ボルト挿通孔10にはボルト11が挿通されている。しかしながら、ボルト挿通孔10とボルト11との間には隙間Gが形成されるので、この隙間Gを通って冷媒供給口16に冷媒が流れ込む。
【0033】
この後、各冷却路12a,12b,12c,12dの全体に渡って冷媒が流れ込み(図3における矢印Y2参照)、この冷媒によってステータコア5の全周が冷却される。そして、ステータコア5から受熱された冷媒は、冷媒排出口15を介してケース4内に排出される。
ケース4内に排出された冷媒は、冷媒戻り配管23を介して図示しないタンクに還流される。そして、再びポンプ17によって汲み上げられ、冷媒供給配管19に冷媒が吐出される。ポンプ17から吐出された冷媒は、熱交換器18を介して冷却され、再び各冷却路12a,12b,12c,12dへと供給される。
【0034】
<各バルブの駆動制御>
次に、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行う場合について説明する。
上述の通常運転では、各バルブ20a,20b,20c,20dの開度はおおよそ中間の開度である。各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行う場合、これら各バルブ20a,20b,20c,20dの開度を制御することによって、各冷却路12a,12b,12c,12dに供給される冷媒の流量を制御する。
【0035】
各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御の説明の前に、まず、温度センサ21の位置について説明する。温度センサ21は、0時方向に位置するコイル6上、及び6時方向に位置するコイル6上にそれぞれ配置されている。これは、ステータコア5において0時方向と6時方向とが最も温度差が大きくなる傾向にあるからである。すなわち、冷媒排出口15から排出された冷媒は、下方(6時方向)に垂れ落ちる。冷媒排出口15から排出された冷媒は、ステータコア5から受熱されているので、各冷却路12a,12b,12c,12dに供給された当初の温度と比較して温度が高い。
【0036】
ステータコア5のうち、比較的温度の高い冷媒が垂れ落ちる6時方向は温度が上昇しやすい傾向にある一方、0時方向は温度が上昇しにくい。このため、温度センサ21は、0時方向に位置するコイル6上、及び6時方向に位置するコイル6上にそれぞれ配置されている。このような構成のもと、冷却装置1は、以下のように動作する。
【0037】
図5は、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図2図5に示すように、ポンプ17を駆動した状態で、まず6時方向の温度センサ21によって検出された温度(以下、6時温度と称する)と0時方向の温度センサ21によって検出された温度(以下、0時温度と称する)との差が、所定の乗数よりも大きいか否かの判断を行う(ステップST101)。この所定の乗数とは、予め設定された許容温度差である。
【0038】
ステップST101による判断が「No」、つまり、6時温度と0時温度との差が所定の乗数以下である場合、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行わずに終了する。すなわち、通常運転が維持される。
【0039】
ステップST101による判断が「Yes」、つまり、6時温度と0時温度との差が所定の乗数よりも大きい場合、6時バルブ20cの開度を大きくする(ステップST102)。すると、6時供給配管19c及び6時冷却路12cにおける冷媒の流量が増大され、ステータコア5のうち6時方向の冷却が促進される。
【0040】
続いて、0時バルブ20aの開度を小さくする(ステップST103)。すると、0時供給配管19a及び0時冷却路12aにおける冷媒の流量が減少される。このため、6時供給配管19c及び6時冷却路12cにおける冷媒の流量が増大されてもポンプ17からの冷媒の総吐出量の変化を防止できる。
【0041】
続いて、6時温度と0時温度との差が所定の乗数以下となったか否かの判断を行う(ステップST104)。
ステップST104による判断が「No」、つまり、6時温度と0時温度との差が所定の乗数よりも大きい場合、引き続きステップST104による判断を行う。
ステップST104による判断が「Yes」、つまり、6時温度と0時温度との差が所定の乗数以下となった場合、各バルブ20a,20b,20c,20dを同開度とする(ステップST105)。つまり、通常運転とする。以上により、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を終了する。
【0042】
このように、上述の実施形態では、バックヨーク7には、周方向に沿って延びる冷却路12が形成されている。冷却路12は、周方向に4分割されている。各冷却路12a,12b,12c,12dごとに冷媒供給口16が形成されている。このため、各冷却路12a,12b,12c,12dにそれぞれ別々に冷媒を供給することができる。よって、冷媒によるステータコア5の冷却ムラを抑制でき、ステータ3の全体を均等に冷却でき、電動機2の連続駆動に寄与できる。
【0043】
ステータコア5は締結部14を有している。締結部14は、ボルト挿通孔10を有している。このボルト挿通孔10に冷媒供給口16が連通されている。このため、ボルト挿通孔10を利用し、冷媒供給口16を介して各冷却路12a,12b,12c,12dに冷媒を供給することができる。したがって、冷媒供給口16の加工コストを低減できる。
【0044】
また、ボルト挿通孔10を利用するので、冷媒供給口16を形成することによるバックヨーク7への影響を最小限に抑えることができる。すなわち、バックヨーク7に無駄に孔が増大されると磁気回路が阻害されてステータ3全体として所望の鎖交磁束を得られなく場合がある。しかしながら、ボルト挿通孔10を利用する分、バックヨーク7に形成される孔を最小限にすることができる。このため、冷媒供給口16を形成することによるバックヨーク7への影響を最小限に抑えることができる。
【0045】
冷却装置1は、電動機2の他にポンプ17と、制御バルブ20(バルブ20a,20b,20c,20d)と、温度センサ21と、制御部22と、を備える。制御部22は、温度センサ21によって検出された温度に基づいて制御バルブ20を制御し、各冷媒供給口16に供給する冷媒の流量を制御している。このため、ステータ3の温度に応じて各冷却路12a,12b,12c,12dの冷媒の流量を制御できる。よって、ステータ3の全体をさらに均等に冷却でき、電動機2の連続駆動に確実に寄与できる。
【0046】
[変形例]
上述の実施形態では、ステータ3の0時方向と6時方向の2箇所に温度センサ21を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、温度センサ21は1つでもよいし、3つ以上でもよい。温度センサ21が1つの場合、ステータ3の6時方向に温度センサ21を設けることが望ましい。この場合、例えば温度センサ21によって検出される温度に応じてステータ3の0時方向との温度差の変化を予めグラフや表として制御部22に記憶しておいてもよい。そして、上記のステップST101やステップST104(図5も併せて参照)において、グラフや表を参照して判断を行うようにしてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、温度センサ21によって検出された温度に基づいて制御バルブ20を制御する場合について説明した。しかしながらこれ限られるものではなく、ステータ3の温度を予測できるセンサを用いて制御バルブ20を制御してもよい。この種のセンサとしては、例えば、電動機2(ロータ)の回転数を検出する回転数検出センサ、電動機2のトルクを検出するトルクセンサ29(図2参照)、電動機2の潤滑油の温度を検出する温度センサなどが挙げられる。センサの種類によって予め閾値を設定し、閾値を超えたか否かの判断等によって制御バルブ20を制御すればよい。以下、例えば電動機2のトルクセンサ29を用いた場合の具体例について説明する。
【0048】
<各バルブの駆動制御>
図6は、トルクセンサ29を用いて各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図6に示すように、ポンプ17を駆動した状態で、まずトルクセンサ29によって検出されたトルク値(以下、単にトルク値と称する)が、所定の乗数よりも大きいか否かの判断を行う(ステップST201)。この所定の乗数とは、予め設定された指定トルク値である。
【0049】
ステップST201による判断が「No」、つまり、トルク値が所定の乗数以下の場合、ステータ3の温度上昇は抑制できていると判断される。このため、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行わずに終了する。すなわち、通常運転が維持される。
【0050】
ステップST201による判断が「Yes」、つまり、トルク値が所定の乗数よりも大きい場合、電動機2に高負荷がかかっているため、ステータ3の温度が上昇していると予想される。このため、6時バルブ20cの開度を大きくする(ステップST202)。すると、6時供給配管19c及び6時冷却路12cにおける冷媒の流量が増大され、ステータコア5のうち6時方向の冷却が促進される。
【0051】
続いて、0時バルブ20aの開度を小さくする(ステップST203)。すると、0時供給配管19a及び0時冷却路12aにおける冷媒の流量が減少される。このため、6時供給配管19c及び6時冷却路12cにおける冷媒の流量が増大されてもポンプ17からの冷媒の総吐出量の変化を防止できる。
【0052】
続いて、トルク値が所定の乗数以下となったか否かの判断を行う(ステップST204)。
ステップST204による判断が「No」、つまり、トルク値が所定の乗数よりも大きい場合、引き続きステップST204による判断を行う。
ステップST204による判断が「Yes」、つまり、トルク値が所定の乗数以下となった場合、各バルブ20a,20b,20c,20dを同開度とする(ステップST205)。つまり、通常運転とする。以上により、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を終了する。
【0053】
このように構成することで、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
上述の実施形態では、温度センサ21、電動機2の潤滑油の温度を検出する他の温度センサ、及びステータ3の温度を予測できる回転数検出センサやトルクセンサ29等を用いて制御バルブ20を制御する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、車体101(電動機2)の傾きを検出する傾きセンサ30(図7参照)を用いて制御バルブ20を制御してもよい。
【0055】
傾きセンサ30としては、例えば物体の傾斜角をそのまま検出する傾斜センサ、及び加速度を利用して傾斜角を導き出す加速度センサやジャイロセンサ等の慣性センサを用いることができる。傾きセンサ30は、電動機2の傾き、延いては車体101の傾きを検出できように設けられていれば、いずれの箇所に設けられていてもよい。以下、傾きセンサ30を用いた各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御について説明する。
【0056】
図7は、冷却装置1の変形例を示す概略構成図である。
図7では、車両100が例えば坂道を走行中で、車体101(電動機2)の0時方向が3時方向(紙面上の時計回り方向)に傾いている状態を示している。このような場合、図7に示すように、0時冷却路12aと9時冷却路12dとが上方に位置され、3時冷却路12bと6時冷却路12cとが下方に位置される。
【0057】
ここで、前述した通り、各冷却路12a,12b,12c,12dに供給された冷媒は、ステータコア5から受熱された後、冷媒排出口15を介して下方に垂れ落ちる。このため、ステータコア5のうち、下方に位置する3時冷却路12bと6時冷却路12cとに対応する箇所は温度が上昇しやすい。一方、ステータコア5のうち、上方に位置する0時冷却路12aと9時冷却路12dとに対応する箇所は冷媒の流量が減少する傾向にある。このため、ステータコア5のうち、下方の冷媒の流量を増大しつつ、上方の冷媒の流量について一定の流量を確保することが望ましい。このような状況のもと、冷却装置1は、以下のように動作する。
【0058】
<各バルブの駆動制御>
図8は、傾きセンサ30を用いて各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行う場合のフローチャートである。
図8に示すように、ポンプ17を駆動した状態で、傾きセンサ30によって検出された車体101の傾きが、所定の乗数よりも大きいか否かの判断を行う(ステップST301)。この所定の乗数とは、予め設定された車体101の許容傾きである。
【0059】
ステップST301による判断が「No」、つまり、車体101の傾きが所定の乗数以下の場合、車両100は水平な路面上に位置している状態に近似していると判断される。すなわち、各冷却路12a,12b,12c,12dは、それぞれほぼ所定の上下前後方向に位置していると判断される。このため、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を行わずに終了する。すなわち、通常運転が維持される。
【0060】
ステップST301による判断が「Yes」、つまり、車体101の傾きが、所定の乗数よりも大きい場合、車両100が上り坂、又は下り坂を走行していると予想される。このため、各冷却路12a,12b,12c,12dのうち、傾きによって姿勢が起こされた側の2つの冷却路に対応するバルブ20a,20b,20c,20dの開度を大きくする(ステップST302)。
【0061】
例えば図7に示す姿勢では、6時バルブ20c及び9時バルブ20dの開度を大きくする。例えば図7の姿勢とは逆方向(車体101の0時方向が9時方向(紙面上の反時計回り方向)に傾いている状態)では、3時バルブ20b及び6時バルブ20cの開度を大きくする。すると、ステータコア5のうち、下方の冷媒の流量が増大されて下方の冷却が促進されつつ、上方の冷媒の流量について一定の流量が確保される。
【0062】
続いて、各冷却路12a,12b,12c,12dのうち、各冷却路12a,12b,12c,12dのうち、傾きによって姿勢が伏せられた側の2つの冷却路に対応するバルブ20a,20b,20c,20dの開度を小さくする(ステップST303)。
【0063】
例えば図7に示す姿勢では、0時バルブ20a及び3時バルブ20bの開度を小さくする。例えば図7の姿勢とは逆方向(車体101の0時方向が9時方向(紙面上の反時計回り方向)に傾いている状態)では、0時バルブ20a及び9時バルブ20dの開度を小さくする。これにより、冷媒の流量が減少されるので、ポンプ17からの冷媒の総吐出量の変化を防止できる。
【0064】
続いて、車体101の傾きが所定の乗数以下となったか否かの判断を行う(ステップST304)。
ステップST304による判断が「No」、つまり、車体101の傾きが所定の乗数よりも大きい場合、引き続きステップST304による判断を行う。
ステップST304による判断が「Yes」、つまり、車体101の傾きが所定の乗数以下となった場合、各バルブ20a,20b,20c,20dを同開度とする(ステップST305)。つまり、通常運転とする。以上により、各バルブ20a,20b,20c,20dの駆動制御を終了する。
【0065】
このように構成することで、前述の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、ステータコア5のうち、下方の冷却を促進しつつ、上方の冷媒の流量について一定の流量を確保できる。
【0066】
上述の実施形態では、各冷媒供給口16はボルト挿通孔10に連通されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ボルト挿通孔10に連通させずに冷媒供給口16を形成してもよい。以下、具体的に説明する。
【0067】
図9は、冷媒供給口16の変形例を示す斜視図である。図9は、前述の図3に対応している。図9では、説明を分かりやすくするためにステータコア5の外側面を透過して示している。
図9に示すように、各冷媒供給口16はそれぞれ締結部14の近傍に形成されている。冷媒供給口16は、バックヨーク7の外周面7aのうち、締結部14の近傍から径方向の内側へと延び、冷却路12に連通されている。
【0068】
このような構成のもと、冷媒供給配管19(図2図7参照)は、直接各冷媒供給口16に連結される。このため、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
上述の実施形態では、冷却路12は周方向に4分割されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、冷却路12は少なくとも2分割されていればよい。冷却路12は、5分割以上に分割されていてもよい。
上述の実施形態では、冷却装置1は、車体101に搭載された電動機2の冷却用として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな用途の電動機の冷却用として冷却装置1を用いることができる。
【0070】
上述の実施形態では、冷媒の流量を調整する流路制御装置として、制御バルブ20を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、冷媒の流量を調整できる構造であればよい。例えば、供給配管19a,19b,19c,19dごとに別々に可変容量型のポンプを設け、ポンプの吐出容量を調整する部位を流路制御装置としてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、車体101(電動機2)の傾きを検出する傾き検出部として、傾きセンサ30を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、車体101(電動機2)の傾きを検出できればよい。傾き検出部として、あらゆる手段を採用できる。例えば、車両100の運転条件より演算によって傾きを予想する構成を傾き検出部としてもよい。この場合、具体的には例えば電動機2のトルク値と実際の車両100の走行速度とを検出する。トルク値から予想される予想走行速度に対して実際の走行速度が遅かったり速かったりする場合、車体101が傾いていると予想できる。予想走行速度と実際の走行速度との差により、車体101の傾き角度を予想してもよい。
【0072】
その他、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0073】
1…冷却装置(電動機の冷却装置)
2…電動機
3…ステータ
5…ステータコア
6…コイル
7…バックヨーク
8…ティース
9…スロット
10…ボルト挿通孔
11…ボルト
12…冷却路
12a…0時冷却路(冷却路)
12c…3時冷却路(冷却路)
12d…6時冷却路(冷却路)
12e…9時冷却路(冷却路)
14…締結部
16…冷媒供給口
17…ポンプ
20…制御バルブ(流量制御装置)
20a…0時バルブ(流量制御装置)
20b…3時バルブ(流量制御装置)
20c…6時バルブ(流量制御装置)
20d…9時バルブ(流量制御装置)
21…温度センサ(温度検出部)
22…制御部
30…傾きセンサ(傾き検出部)
101…車体
A…中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9