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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157168
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/06 20060101AFI20241030BHJP
   B23C 5/24 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B23C5/06 A
B23C5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071335
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】596018218
【氏名又は名称】株式会社入曽精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清和
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022HH09
3C022HH18
3C022NN01
(57)【要約】
【課題】容易に刃の位置の調整ができる切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具100は、工作機械に取り付けられ、被加工部材を切削可能な切削工具であって、前記工作機械に回転軸Oを回転中心として回転可能に取り付けられた略円板状の本体部30と、前記回転軸Oが延びる回転軸方向Aと略垂直な径方向Rにおける前記本体部30の周縁に着脱可能に取り付けられた切削駒40と、を備え、前記切削駒40は、前記本体部30に着脱可能に取り付けられた着脱部と、前記回転軸方向Aにおける前記被加工部材側A1に突出して前記被加工部材を切削可能な切削チップを有するチップ保持部と、前記着脱部に設けられ、前記チップ保持部の前記回転軸方向Aにおける位置を変更可能に前記チップ保持部に接続された調整機構と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に取り付けられ、被加工部材を切削可能な切削工具であって、
前記工作機械に回転軸を回転中心として回転可能に取り付けられた略円板状の本体部と、
前記回転軸が延びる回転軸方向と略垂直な径方向における前記本体部の周縁に着脱可能に取り付けられた切削駒と、
を備え、
前記切削駒は、
前記本体部に着脱可能に取り付けられた着脱部と、
前記回転軸方向における前記被加工部材側に突出して前記被加工部材を切削可能な切削チップを有するチップ保持部と、
前記着脱部に設けられ、前記チップ保持部の前記回転軸方向における位置を変更可能に前記チップ保持部に接続された調整機構と、
を有する、
切削工具。
【請求項2】
前記着脱部は、
前記本体部に対する前記切削駒の前記回転軸方向における位置を規制する第一規制面と、
前記本体部に対する前記切削駒の前記径方向における位置を規制する第二規制面と、
を有する、
請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
複数の前記切削駒が、前記本体部が回転する周方向に配列されている、
請求項2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記切削チップは、前記チップ保持部に着脱可能に設けられている、
請求項3に記載の切削工具。
【請求項5】
前記調整機構は、マイクロメータを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械で使用され、被加工部材(ワーク)の加工面において、広い平面を削ることが可能な切削工具がある(例えば特許文献1)。このような切削工具は、フルバック、正面フライス、フェイスミル、フェイスカッターなどと呼ばれ、主に金属加工に用いられる。
【0003】
上述の切削工具は、略円筒形状又は略円柱形状をした本体部が工作機械の主軸(ヘッド)に取り付けられ、加工作業の際には、工作機械の主軸とともに回転する。また、切削工具の本体部において、被加工部材の加工面と対向した側には、本体部から加工面側へ突出するように複数の刃(チップ)が外縁の近傍に取り付けられている。
【0004】
テーブル等に固定した被加工部材の加工面に対して、高速回転させた切削工具を近づけ、切削工具の刃を加工面に押し当てることで被加工部材を切削して加工する。加工面に押し当てた切削工具を加工面に沿って移動させることで、被加工部材に対して平面加工、側面加工又は段差加工等の加工を施すことができる。
【0005】
被加工部材の加工面に押し当てて加工するため、切削工具の刃は、被加工部材との接触によって摩耗する。また、加工条件によって、刃の突出量の調整が必要となる場合がある。そのため、作業者は、刃の摩耗具合や加工条件等によって、刃の突出量(位置)の調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3246164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、フライス盤等の工作機械に用いられる切削工具における刃の突出量の調整は、工作機械に取り付けた状態で治工具を使用して行う必要があり、調整の際の作業姿勢や作業の複雑さが作業者の負担となる虞があった。また、切削工具を工作機械から取り外して調整する場合においても、切削工具の取り外しおよび取付けに時間がかかり、加工作業の効率が低下する虞があった。そのため、工作機械に取り付けた状態で容易に刃の位置の調整ができる切削工具が求められている。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、容易に刃の位置の調整ができる切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の切削工具は、工作機械に取り付けられ、被加工部材を切削可能な切削工具であって、前記工作機械に回転軸を回転中心として回転可能に取り付けられた略円板状の本体部と、前記回転軸が延びる回転軸方向と略垂直な径方向における前記本体部の周縁に着脱可能に取り付けられた切削駒と、を備え、前記切削駒は、前記本体部に着脱可能に取り付けられた着脱部と、前記回転軸方向における前記被加工部材側に突出して前記被加工部材を切削可能な切削チップを有するチップ保持部と、前記着脱部に設けられ、前記チップ保持部の前記回転軸方向における位置を変更可能に前記チップ保持部に接続された調整機構と、を有する。
本発明によれば、切削チップ(刃)の位置の調整を行う際、工作機械に取り付けられた切削工具の本体部から切削駒を取り外し、取り外した切削駒において、調整機構によってチップ保持部の位置を調整することで容易に切削チップの位置を変更できる。
【0010】
また、前記着脱部は、前記本体部に対する前記切削駒の前記回転軸方向における位置を規制する第一規制面と、前記本体部に対する前記切削駒の前記径方向における位置を規制する第二規制面と、を有するのが好ましい。
第一規制面および第二規制面によって本体部に対する切削駒の位置を規制することで、切削工具において、切削チップの位置の精度を向上できる。
【0011】
また、複数の前記切削駒が、前記本体部が回転する周方向に配列されていることが好ましい。
複数の切削駒を有することで、切削工具は、被加工部材を効率的に加工できる。
【0012】
また、前記切削チップは、前記チップ保持部に着脱可能に設けられているのが好ましい。
切削チップがチップ保持部に着脱可能に設けられていることで、切削チップの摩耗等が生じた場合、切削チップを新しいもの又は摩耗が少ないものと交換することで切削効率の低下を抑制できる。
【0013】
また、前記調整機構は、マイクロメータを含むのが好ましい。
調整機構にマイクロメータを使用することで、ユーザは容易にチップ保持部の位置を変更できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の切削工具によれば、容易に刃の位置の調整ができる切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る工作機械の一例を模式的に示す斜視図である。
図2】同工作機械における切削工具の近傍を示す斜視図である。
図3】同切削工具を示す斜視図である。
図4】同切削工具における切削駒を示す斜視図である。
図5】同切削工具における切削駒の近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る工作機械の一例を模式的に示す斜視図である。
工作機械1は、切削工具100と、テーブル200とを備える。工作機械1は、フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械であり、切削工具100を用いて、テーブル200に固定された被加工部材(不図示)を加工可能である。
【0018】
図2は、工作機械1における切削工具100の近傍を示す斜視図である。図3は、切削工具100を示す斜視図である。
切削工具100は、例えば、工作機械1の主軸に取り付けられ、工作機械1の主軸とともに回転軸Oを回転中心として周方向Cに回転し、被加工部材側に突出した刃によって被加工部材を切削して加工する。
【0019】
以降の説明において、図2および図3に示すように、切削工具100において、回転軸Oが延びる方向を「回転軸方向A」、切削工具100における被加工部材側を回転軸方向Aにおける「被加工部材側(先端側)A1」、被加工部材側A1と反対側を回転軸方向Aにおける「工作機械側(基端側)A2」と称する。また、回転軸方向Aと垂直な方向を「径方向R」、回転軸Oから離れる側を径方向Rにおける「外側R1」、外側R1と反対側を径方向Rにおける「内側R2」と称する。
【0020】
本実施形態において、回転軸方向Aは鉛直方向であり、被加工部材側A1は鉛直下側であり、工作機械側A2は鉛直上側である。回転軸方向Aは水平方向であってもよく、その場合、被加工部材側A1は水平方向における一方側(例えば、ユーザから見て左側)でもよく、工作機械側A2は水平方向における他方側(例えば、ユーザから見て右側)でもよい。
【0021】
切削工具100は、図3に示すように、軸部10と、接続部20と、本体部30と、切削駒40と、を備える。
軸部10は、回転軸Oを中心軸とする略円柱状であり、工作機械側A2の端部が工作機械1の主軸と接続されている。軸部10は、公知の金属等で形成されており、例えば、一般的な正面フライスや正面フライスと工作機械の主軸とを連結する正面フライスアーバ等と同様の材料で形成されている。軸部10の形状は略円柱状に限られず、四角柱等の多角柱形状でもよい。
【0022】
接続部20は、回転軸Oを中心軸とする略円柱状であり、軸部10の被加工部材側A1の端部に接続され、軸部10と本体部30とを連結する部分である。接続部20の径(径方向Rの寸法)は軸部10よりも大きい。そのため、軸部10と本体部30との連結部分の剛性を向上でき、切削工具100の破損を抑制できる。接続部20には、軸部10と同様に公知の金属等を採用できる。接続部20の形状は略円柱状に限られず、四角柱等の多角柱形状でもよい。
【0023】
本体部30は、回転軸Oを中心軸とする略円板状であり、接続部20の被加工部材側A1の端部に接続されている。本体部30には、軸部10および接続部20と同様に公知の金属等を採用できる。
【0024】
本体部30の形状は、略円板状に限られず、工作機械側A2から見た平面視において、六角形や八角形等の多角形状でもよい。回転軸Oを回転中心として回転することを考慮すると、本体部30は、略円板状又は略円柱状など、工作機械側A2から見た平面視において略円状の形状であるのが好ましい。
【0025】
軸部10の工作機械側A2の端部は、回転軸Oを回転中心として回転可能な工作機械1の主軸に接続されているため、工作機械1を作動させて主軸が回転すると、切削工具100は主軸とともに回転軸Oを回転中心として周方向Cに回転する。
【0026】
一般的に、フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械で用いられる切削工具(正面フライスやエンドミル等)は、工作機械の主軸に着脱可能に取り付けられる。切削工具100も同様に、工作機械1の主軸に着脱可能に取り付けられている。
【0027】
切削駒40は、径方向Rにおける本体部30の周縁に着脱可能に取り付けられている。図3に示すように、本体部30の外縁には、内側R2に凹になった切り欠き形状が設けられており、切削駒40は、この切り欠き形状に設けられている。そのため、切削駒40の最も外側R1の端部と、本体部30の最も外側R1の端部とは、径方向Rにおいて同程度の位置であり、切削駒40は、本体部30よりも外側R1へ突出していない。
【0028】
切削工具100は、複数の切削駒40を備える。図3に示すように、本体部30の周縁には、本体部30の周縁に沿って10個の切削駒401~410が設けられている。複数の切削駒40は、本体部30の周縁に沿って、等間隔に周方向Cに配列されているのが好ましい。
【0029】
図4は、切削駒40を示す斜視図である。図5は、本体部30に取り付けられた切削駒40の近傍を示す断面図である。
切削駒40は、着脱部41と、調整機構42と、チップ保持部43と、を備える。
【0030】
着脱部41は、切削駒40の基部であり、本体部30に着脱可能に取り付けられている。図5に示すように、着脱部41には、径方向Rに延びる平面である第一規制面412sと、回転軸方向Aに延びる平面である第二規制面413sとが設けられている。上述の本体部30の外縁の切り欠き形状において、第一規制面412sは、本体部30の工作機械側A2の面と対向して接触している。また、第二規制面413sは、本体部30の外側R1の面と対向して接触している。
着脱部41は、例えば、回転軸方向Aに第一規制面412sを貫通するボルト等(不図示)によって本体部30に着脱可能に取り付けられている。
【0031】
着脱部41における第一規制面412sおよび第二規制面413sは、本体部30における工作機械側A2の面および外側R1の面と接触しているため、回転軸方向Aおよび径方向Rにおいて、本体部30に対する切削駒40の位置が規制されている。
【0032】
また、着脱部41は、図4および図5に示すように、第一規制面412sよりも被加工部材側A1に位置し、本体部30の工作機械側A2の面と対向していない被加工部材側A1の面411sを有する。着脱部41の被加工部材側A1の面411sは、本体部30の被加工部材側A1の面と同一平面をなしているのが好ましい。
【0033】
図4に示すように、着脱部41には、内側R2に凹になった方形の領域である第一凹部G1および第二凹部G2が形成されている。着脱部41の外側R1の面において、第一凹部G1は、工作機械側A2に形成され、着脱部41の工作機械側A2の面も凹になった領域である。
【0034】
また、第二凹部G2は、被加工部材側A1に形成され、着脱部41の被加工部材側A1の面411sも凹になった領域である。被加工部材側A1から見た平面視において、着脱部41の被加工部材側A1の面411sは略U字形状をしている。
【0035】
第一凹部G1および第二凹部G2を有するため、着脱部41の外側R1の面は、図4に示すように、略H字形状をしている。第一凹部G1および第二凹部G2は、調整機構42の一部とチップ保持部43とが設けられている領域である。
着脱部41には、本体部30と同様に、公知の金属等を採用できる。
【0036】
調整機構42は、調整部421と、調整軸部422と、固定ナット423と、固定部424と、を備える。
調整部421の大部分は、着脱部41における第一凹部G1に設けられている。また、調整軸部422は、調整部421の被加工部材側A1に接続され、第二凹部G2に設けられている。
【0037】
図4に示すように、調整部421の被加工部材側A1の一部は、着脱部41における第一凹部G1と第二凹部G2との間の部分(非凹部)を回転軸方向Aに貫通している。また、調整部421における第二凹部G2に位置する部分には固定ナット423が設けられている。調整部421の第一凹部G1に設けられた部分と、固定ナット423とによって上述の非凹部を回転軸方向Aに挟み込むことで、調整部421および固定ナット423は着脱部41に取り付けられている。
【0038】
調整軸部422は、回転軸方向Aに伸縮可能な略円柱形状であり、ユーザ(作業者)が調整部421を操作することで回転軸方向Aに伸縮する。例えば、調整部421および調整軸部422は、マイクロメータである。調整部421がマイクロメータの本体部分(マイクロメータヘッド)であり、調整軸部422がマイクロメータのスピンドルである。
【0039】
調整部421および調整軸部422がマイクロメータである場合、例えば、ユーザは、調整部421のシンブルを回転軸方向Aに延びる回転軸を回転中心として回転させることで、調整軸部422を回転軸方向Aに伸縮させることができる。
【0040】
調整軸部422の被加工部材側A1の端部には、チップ保持部43が接続されている。そのため、ユーザが調整軸部422を回転軸方向Aに伸縮させることで、チップ保持部43の回転軸方向Aにおける位置が変更される。チップ保持部43の詳細については後述する。
【0041】
固定部424は、チップ保持部43を着脱部41に固定する部材である。固定部424は、図4に示すように、締結部材S2(例えば、ねじ)によって着脱部41の外側R1の面に取り付けられている。本実施形態においては、調整機構42は2つの固定部424を備えるが、調整機構42が備える固定部424の個数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0042】
固定部424の内側R2の面は、着脱部41の外側R1の面およびチップ保持部43の外側R1の面にまたがって接触している。そのため、例えば締結部材S2がねじの場合、締結部材S2を締め、固定部424の内側R2の面を着脱部41およびチップ保持部43の外側R1の面に押し当てることで、チップ保持部43が着脱部41に固定される。
【0043】
また、締結部材S2を緩め、固定部424の内側R2の面と、着脱部41およびチップ保持部43の外側R1との押し当てを解除することで、チップ保持部43は着脱部41への固定状態が解除され、可動状態となる。チップ保持部43が可動状態のとき、ユーザは、調整部421を操作して調整軸部422を回転軸方向Aに伸縮させることで、着脱部41に対するチップ保持部43の回転軸方向Aにおける位置を変更できる。
【0044】
固定部424によってチップ保持部43を着脱部41に固定した状態(固定状態)とすることで、チップ保持部43における回転軸方向Aの移動は規制され、チップ保持部43は着脱部41に対して動かない。
【0045】
このように、ユーザは、調整機構42を操作することで、可動状態のチップ保持部43において、着脱部41に対するチップ保持部43の回転軸方向Aにおける位置を変更できる。また、チップ保持部43の位置を変更しない場合は、チップ保持部43を固定状態にし、チップ保持部43を着脱部41に固定できる。
【0046】
チップ保持部43は、第一保持部431と、第二保持部432と、切削チップ433と、を備える。
第一保持部431は、チップ保持部43の基部であり、調整軸部422の被加工部材側A1の端部に接続されている。また、前述の固定部424は、チップ保持部43において、第一保持部431の外側R1の面と接触可能である。
【0047】
第一保持部431は、略直方体であり、内側R2および工作機械側A2に凹になった領域である第三凹部が形成されている。第二保持部432および切削チップ433は、この第三凹部に設けられている。
【0048】
第二保持部432は、略直方体であり、図4に示すように、上述の第三凹部において、締結部材S1(例えば、ねじ)によって第一保持部431に取り付けられている。また、第二保持部432の内側R2の面には、外側R1に凹になった領域である第四凹部が形成されている。この第四凹部は、第二保持部432の被加工部材側A1の面まで延びており、被加工部材側A1から見た平面視において、第二保持部432は略U字形状をしている。
【0049】
切削チップ433は、上述の第四凹部に設けられている。
図4に示すように、第一保持部431に形成された第三凹部に第二保持部432および切削チップ433が設けられ、第二保持部432に形成された第四凹部に切削チップ433が設けられている。
【0050】
切削チップ433は、径方向Rにおいて、第一保持部431と第二保持部432とに挟み込まれている。例えば、締結部材S1がねじの場合、締結部材S1を締めることで第一保持部431と第二保持部432とが径方向Rに接近し、第一保持部431と第二保持部432とに挟み込まれた切削チップ433は、第一保持部431に固定される。
【0051】
また、締結部材S1を緩めることで、第一保持部431と第二保持部432とが径方向Rに離間し、切削チップ433における第一保持部431への固定が解除され、切削チップ433は、第一保持部431に対して移動可能な状態になる。また、切削チップ433を第一保持部431および第二保持部432から取り外すことができる。
【0052】
切削チップ433は、被加工部材を切削可能な刃(チップ)である。切削チップ433は、例えば、超硬合金で形成され、耐摩耗性を向上させるコーティング等が施されており、工作機械1において、被加工部材(例えば、金属)を切削可能である。切削チップ433には、被加工部材の材質等によって任意の材質を採用できる。
【0053】
切削チップ433は、図4および図5に示すように、切削駒40において、被加工部材側A1に突出して設けられている。また、切削チップ433は、本体部30の被加工部材側A1の面よりも被加工部材側A1に突出している。
【0054】
例えば、回転軸Oを回転中心として高速回転する切削工具100において、切削工具100と被加工部材とを径方向Rに接触させて、切削チップ433によって被加工部材を切削する。
【0055】
切削駒40は、本体部30の周縁に取り付けられているため、切削工具100が回転軸Oを回転中心として回転したとき、回転軸Oを中心とする円に沿って回転する。そのため、切削工具100は、被加工部材に対して広い面積を効率よく切削加工することができる。
【0056】
次に、切削工具100において、切削チップ433の位置を変更する調整作業について説明する。ここで説明する調整作業は、切削作業等によって摩耗し、切削チップ433の被加工部材側A1の端部(先端)が所望の位置よりも工作機械側A2に位置するとき、切削チップ433の先端を被加工部材側A1に移動させて所望の位置に変更する調整作業である。
【0057】
まず、ユーザは、着脱部41を本体部30に固定しているボルト等を取り外し、切削駒40を本体部30から取り外す。このとき、本体部30は、軸部10および接続部20を介して工作機械1の主軸に接続されている。また、切削駒40におけるチップ保持部43は、固定部424によって着脱部41に固定された状態(固定状態)である。
【0058】
ユーザは、以降の調整作業において、本体部30から取り外した切削駒40を工作機械1から離れた位置にある作業台等に移動して行ってもよいし、工作機械1の近傍で行ってもよい。
【0059】
次に、本体部30から取り外した切削駒40において、ユーザは、例えば、締結部材S2がねじである場合、締結部材S2を緩めて固定部424によるチップ保持部43の固定を解除し、チップ保持部43を可動状態にする。
【0060】
次に、ユーザは、調整部421を操作し、調整軸部422を図4における被加工部材側A1に伸ばし、チップ保持部43を被加工部材側A1に移動させる。例えば、調整部421および調整軸部422がマイクロメータである場合、ユーザは、調整部421のシンブルを操作し、スピンドルである調整軸部422を被加工部材側A1に伸ばす。
【0061】
ユーザは、調整部421を操作することで、チップ保持部43の回転軸方向Aにおける位置を所望の位置に変更する。調整部421は、調整部421に対するチップ保持部43の位置を示す目盛等を有してもよい。調整部421が目盛を有することで、ユーザは、チップ保持部43の位置を容易に調整できる。
【0062】
このとき、第一保持部431および第二保持部432に対する切削チップ433の位置を変更してもよい。
【0063】
例えば、ユーザは、締結部材S1がねじである場合、締結部材S1を緩め、第二保持部432および切削チップ433における第一保持部431への固定を解除する。切削チップ433の突出量が少ない場合、ユーザは、第一保持部431に対して切削チップ433を図4における被加工部材側A1に移動させ、締結部材S1を締めて第二保持部432および切削チップ433を第一保持部431に固定する。
このようにして、ユーザは、切削チップ433における第一保持部431に対する被加工部材側A1の突出量を増やす(又は減らす)ことができる。
【0064】
以上の操作によって切削チップ433の先端の位置を所望の位置に移動させた後、ユーザは、締結部材S2を締め、固定部424によってチップ保持部43を着脱部41に固定し、チップ保持部43を固定状態にする。
【0065】
次に、ユーザは、切削駒40を本体部30に取り付ける。このとき、ユーザは、図5に示すように、着脱部41の第一規制面412sおよび第二規制面413sを本体部30の工作機械側A2の面および外側R1の面に接触させることで、本体部30に対する切削駒40の位置を容易に決定できる。切削駒40の位置を決定した後、ユーザは、ボルト等によって着脱部41を本体部30に固定し、切削駒40を本体部30に取り付ける。
【0066】
切削駒40は、第一規制面412sおよび第二規制面413sによって本体部30に対して所望の位置に配置されている。また、切削チップ433の先端は、調整機構42によって着脱部41に対して所望の位置に配置されている。
そのため、回転軸方向Aにおいて、切削チップ433の先端は、本体部30に対してユーザの所望の位置に配置されている。
【0067】
以上の調整作業を行うことで、ユーザは、切削工具100において、切削チップ433の位置を容易に変更することができる。
【0068】
ユーザは、切削工具100に取り付けられた複数の切削駒40(401~410)に対して上述の調整作業を行い、切削チップ433の位置を調整した切削工具100が取り付けられた工作機械1を用いて、被加工部材を切削加工できる。
【0069】
ユーザは、複数の切削駒40において、切削チップ433における被加工部材側A1の突出量が互いに異なるように調整してもよい。切削チップ433の突出量(位置)は、加工条件等によって任意の突出量を選択できる。
【0070】
本実施形態の切削工具100によれば、工作機械1に回転可能に取り付けられた本体部30と、本体部30に着脱可能に取り付けられた切削駒40とを備える。また、切削駒40は、本体部30に着脱可能に取り付けられた着脱部41と、被加工部材を切削可能な切削チップ433を有するチップ保持部43と、着脱部41に対するチップ保持部43の回転軸方向Aにおける位置を変更可能な調整機構42とを備える。
【0071】
その結果、ユーザは、切削工具100において、容易に刃(切削チップ433)の位置の調整ができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0073】
(変形例1)
上記実施形態において、切削工具100は、軸部10および接続部20を備えるが、切削工具100の態様はこれに限定されない。切削工具100は、軸部10又は接続部20を備えなくてもよい。例えば、切削工具において、工作機械1の主軸に本体部30が直接取り付けられてもよい。
【0074】
例えば、本体部30の中心部分(回転軸Oの近傍)を工作機械1の主軸に取り付けることで、本体部30および切削駒40は、工作機械1の主軸とともに回転軸Oを回転中心として回転可能である。工作機械1と切削工具100との接続は、切削工具100における本体部30および切削駒40が回転軸Oを回転中心として回転可能であればよく、任意の取付け構造を採用できる。
【0075】
(変形例2)
上記実施形態において、切削工具100は、10個の切削駒40を備えるが、切削工具100の態様はこれに限定されない。切削工具100が備える切削駒40の個数は、10個未満でもよいし、10個より多くてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 工作機械
100 切削工具
10 軸部
20 接続部
30 本体部
40 切削駒
41 着脱部
42 調整機構
43 チップ保持部
433 切削チップ
412s 第一規制面
413s 第二規制面
O 回転軸
A 回転軸方向
A1 被加工部材側
A2 工作機械側
R 径方向
R1 外側
R2 内側
C 周方向
図1
図2
図3
図4
図5