(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157171
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】金工用定置式切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 47/04 20060101AFI20241030BHJP
B23D 45/04 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B23D47/04 Z
B23D47/04 F
B23D45/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071345
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是川 洋斗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】石川 彰一
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040BB13
3C040HH12
(57)【要約】
【課題】テーブル面の外方へ張り出した被切断材を安定した姿勢で支持できる定置式切断機が必要とされている。
【解決手段】切断機1は、
図1に示すようにテーブル面2aを備えたベース2を有する。切断機1は、ベース2に対して上下に揺動可能に設けられる切断機本体を有する。切断機1は、テーブル面2a上において水平方向に回転可能に設けられかつテーブル面2aに対して起立するフェンス5を有する。切断機1は、フェンス5の前面5aに向けて押し付けてフェンス5と協働して被切断材Wを挟むためにベース2に対して前後方向に移動可能に設けられるバイスプレート7cを有する。切断機1は、鉛直方向に延出する回転支軸31を中心に回転可能にベース2に直接的に連結される可動載置部30を有する。テーブル面2aに対して外方へ張り出す可動載置部30の上に被切断材が載置される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金工用定置式切断機であって、
テーブル面を備えたベースと、
前記ベースに対して上下に揺動可能に設けられる切断機本体と、
前記テーブル面上において水平方向に回転可能に設けられかつ前記テーブル面に対して起立するフェンスと、
前記フェンスの前面に向けて押し付けて前記フェンスと協働して被切断材を挟むために前記ベースに対して前後方向に移動可能に設けられるバイス部材と、
鉛直方向に延出する回転支軸を中心に回転可能に前記ベースに直接的または間接的に連結される可動載置部を有し、前記テーブル面に対して外方へ張り出す前記可動載置部の上に被切断材が載置される金工用定置式切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の金工用定置式切断機であって、
前記切断機本体に装着される円盤状の回転刃具に対して直交する0°位置に前記前面が位置するように前記フェンスを回転した際、前記フェンスの前記前面より前方に前記可動載置部の前記回転支軸が位置する金工用定置式切断機。
【請求項3】
請求項2に記載の金工用定置式切断機であって、
前記可動載置部は、前記回転支軸から前記テーブル面の側縁に沿って前記フェンスよりも後方へ延出する収納位置に回転可能である金工用定置式切断機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記回転支軸は、前記テーブル面の前側領域と同じ前後位置または前記前側領域よりも前方に配置され、
前記可動載置部は、前記テーブル面の側縁に沿って前記回転支軸から後方へ延出する収納位置へ回転可能である金工用定置式切断機。
【請求項5】
請求項2または3に記載の金工用定置式切断機であって、
前記前面が前記0°位置に対して45°に傾斜するように前記フェンスを45°位置へ回転した際、前記可動載置部の少なくとも一部が前記前面を含むフェンス仮想平面よりも前方に位置するように前記可動載置部が前方位置に回転可能である金工用定置式切断機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記フェンスの回転全領域において前記前面を含むフェンス仮想平面よりも前記可動載置部の少なくとも一部が前方に位置するように前記可動載置部が回転可能である金工用定置式切断機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記可動載置部は、長尺状であって、
前記可動載置部の第1端部に前記回転支軸が設けられ、
前記可動載置部の第2端部に設置面に当接する脚部が設けられる金工用定置式切断機。
【請求項8】
請求項7に記載の金工用定置式切断機であって、
前記脚部は、ねじの締め込み量によって前記可動載置部の高さを調整可能な高さ調整機構を有する金工用定置式切断機。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記ベースは、収納位置へ回転させた前記可動載置部と係合可能に上下方向に凸形状または凹形状の収納保持部を有する金工用定置式切断機。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記回転支軸は、前後方向に移動可能に前記ベースに連結される金工用定置式切断機。
【請求項11】
請求項10に記載の金工用定置式切断機であって、
前記テーブル面の側縁に沿って前後方向に延出しかつ前記回転支軸が挿通される長溝と、
前記回転支軸に設けられて前記回転支軸を下方に付勢する付勢部材を有する金工用定置式切断機。
【請求項12】
請求項11に記載の金工用定置式切断機であって、
前記回転支軸は、前記長溝の幅よりも大径の拡径部を有し、
前記長溝の上側でかつ前後方向に所定の間隔の位置に、前記回転支軸の前記拡径部が配置される複数の位置決め凹部が設けられる金工用定置式切断機。
【請求項13】
請求項11または12に記載の金工用定置式切断機であって、
前記可動載置部には、指を引掛け可能な把持部が前記回転支軸の近傍に設けられる金工用定置式切断機。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載の金工用定置式切断機であって、
前記回転支軸を中心とする所定の回転角度毎に前記可動載置部を位置決めする回り止め機構を有する金工用定置式切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属材料等の被切断材の切断加工に用いられる金工用定置式切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように金属製のパイプ、H字鋼等の被切断材を切断する電動工具として、金工用定置式切断機が提供されている。金工用定置式切断機は、被切断材を載置するテーブル面を備えたベースを有する。金工用定置式切断機は、ベースの上方に設けられかつ被切断材を切断する回転刃具を回転可能に支持する切断機本体を有する。回転刃具は、例えば円盤状の切断砥石やチップソー(英語名:tipped saw blade)と称される略円盤形の丸鋸刃である。
【0003】
テーブル面上には、被切断材を当接可能に起立したフェンスと、被切断材をフェンスに向けて押し付けてフェンスと協働して被切断材を挟むバイス部材が設けられる。フェンスは、上下方向に延出する回転支軸回りに回転可能である。フェンスを回転刃具との直交面に対して傾斜させることで、回転刃具をフェンスに当接される被切断材に対して斜めに切り込ませることができる。この状態で被切断材を切断することを、斜め切り(英語名:miter cut)と呼んでいる。
【0004】
例えば長尺の被切断材を切断する場合がある。特許文献1に記載されるように従来の定置式切断機には、テーブル面の外方へ張り出した被切断材を支持する構造が設けられていなかった。そのためテーブル面の外方に張り出した被切断材の下に端材を敷く等の対応が必要だった。また、斜め切りを行う場合には被切断材がテーブル面の手前側へ張り出す。そのためテーブル面の外方、特にテーブル面の手前側へ張り出す被切断材を安定した姿勢で支持できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがってテーブル面の外方へ張り出した被切断材を安定した姿勢で支持できる定置式切断機が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると金工用定置式切断機は、テーブル面を備えたベースを有する。金工用定置式切断機は、ベースに対して上下に揺動可能に設けられる切断機本体を有する。金工用定置式切断機は、テーブル面上において水平方向に回転可能に設けられかつテーブル面に対して起立するフェンスを有する。金工用定置式切断機は、フェンスの前面に向けて押し付けてフェンスと協働して被切断材を挟むためにベースに対して前後方向に移動可能に設けられるバイス部材を有する。金工用定置式切断機は、鉛直方向に延出する回転支軸を中心に回転可能にベースに直接的または間接的に連結される可動載置部を有する。テーブル面に対して外方へ張り出す可動載置部の上に被切断材が載置される。
【0008】
したがって可動載置部は、テーブル面に対して外方へ張り出す姿勢に移動させることで、テーブル面の外方へ張り出した被切断材を支持できる。しかも、例えばフェンスを回転させて斜め切りをする場合でも、使用者の手前側へ張り出す被切断材を載置できる好適な位置に可動載置部を移動させることができる。かくして可動載置部は、テーブル面の外方へ張り出した被切断材を安定した姿勢で支持できる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施例に係る定置式切断機を前側から見た斜視図である。
【
図7】フェンスが0°位置の際のベースと可動載置部の上面図である。
【
図8】フェンスが45°位置の際のベースと可動載置部の上面図である。
【
図9】本開示の第2実施例に係る定置式切断機を前側から見た斜視図である。
【
図12】
図9中のXII-XII線断面矢視図である。
【
図13】フェンスが0°位置の際のベースと可動載置部の上面図である。
【
図14】フェンスが45°位置の際のベースと可動載置部の上面図である。
【
図15】フェンスが30°位置の際のベースと可動載置部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の他の特徴によると、切断機本体に装着される円盤状の回転刃具に対して直交する0°位置に前面が位置するようにフェンスを回転した際、フェンスの前面より前方に可動載置部の回転支軸が位置する。したがって可動載置部を、0°位置のフェンスよりも前方かつテーブル面の側方に延出する姿勢へと移動させることができる。そのためフェンスの前方に位置する被切断材を安定した姿勢で支持できる。
【0011】
本開示の他の特徴によると可動載置部は、回転支軸からテーブル面の側縁に沿ってフェンスよりも後方へ延出する収納位置に回転可能である。したがって可動載置部を収納する際にはコンパクトに収納できる。
【0012】
本開示の他の特徴によると回転支軸は、テーブル面の前側領域と同じ前後位置または前側領域よりも前方に配置される。可動載置部は、テーブル面の側縁に沿って回転支軸から後方へ延出する収納位置へ移動可能である。したがって可動載置部を収納する際にはコンパクトに収納できる。可動載置部を展開する際には、テーブル面の前側領域よりも前方かつテーブル面の側方に延出する姿勢へと移動させることができる。そのためテーブル面と可動載置部が協働して被切断材を安定した姿勢で支持できる。
【0013】
本開示の他の特徴によると前面が0°位置に対して45°に傾斜するようにフェンスを45°位置へ回転させる際、可動載置部の少なくとも一部が前面を含むフェンス仮想平面よりも前方に位置するように可動載置部が前方位置に回転可能である。したがってフェンスを45°位置まで回転させて斜め切りをする際でも、可動載置部を移動させてテーブル面の前方へ延出する被切断材を安定した姿勢で支持できる。
【0014】
本開示の他の特徴によるとフェンスの回転全領域において前面を含むフェンス仮想平面よりも可動載置部の少なくとも一部が前方に位置するように可動載置部が回転可能である。したがってフェンスをどのような姿勢に回転させた場合でも、可動載置部がフェンスの前方に位置する被切断材を安定した姿勢で支持できる。そのため被切断材を直角切りまたは斜め切りするいずれの場合であっても切断作業の作業性を向上させることができる。
【0015】
本開示の他の特徴によると可動載置部は、長尺状である。可動載置部の第1端部に回転支軸が設けられる。可動載置部の第2端部に設置面に当接する脚部が設けられる。したがって回転支軸から離れた位置に脚部を設けることで、可動載置部が被切断材を支持する安定性を高めることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると脚部は、ねじの締め込み量によって可動載置部の高さを調整可能な高さ調整機構を有する。したがって金工用定置式切断機の設置面に凹凸がある場合でも、ベースのテーブル面の高さと可動載置部の上端の高さを合わせることができる。これによりテーブル面と可動載置部が協働して被切断材を支持する安定性をより高めることができる。
【0017】
本開示の他の特徴によるとベースは、収納位置へ回転させた可動載置部と係合可能に上下方向に凸形状または凹形状の収納保持部を有する。したがって収納位置へ移動させた可動載置部を不用意に移動しないように保持できる。
【0018】
本開示の他の特徴によると回転支軸は、前後方向に移動可能にベースに連結される。したがってフェンスの角度に応じて回転支軸を前後方向に移動させることができる。しかも移動させた回転支軸を中心にして可動載置部を回転させることができる。そのため可動載置部の移動の自由度が高められる。これにより被切断材を安定した姿勢で支持可能な好適な位置へ可動載置部を移動させることができる。
【0019】
本開示の他の特徴によると金工用定置式切断機は、テーブル面の側縁に沿って前後方向に延出しかつ回転支軸が挿通される長溝を有する。金工用定置式切断機は、回転支軸に設けられて回転支軸を下方に付勢する付勢部材を有する。したがって回転支軸を長溝に沿って前後方向にスムーズに移動させることができる。しかも付勢部材が回転支軸を下方に付勢することで、回転支軸が前後方向に不用意に移動することを抑制できる。これにより可動載置部が被切断材を支持する安定性を高めることができる。
【0020】
本開示の他の特徴によると回転支軸は、長溝の幅よりも大径の拡径部を有する。長溝の上側でかつ前後方向に所定の間隔の位置に、回転支軸の拡径部が配置される複数の位置決め凹部が設けられる。したがって回転支軸を持ち上げながら長溝に沿って移動させ、拡径部を位置決め凹部のいずれか1つに進入させる。これにより回転支軸が進入させた位置決め凹部から前後方向に移動することを抑制できる。これにより被切断材を支持する可動載置部が不用意に移動することを抑制できる。
【0021】
本開示の他の特徴によると可動載置部には、指を引掛け可能な把持部が回転支軸の近傍に設けられる。したがって把持部に指を引き掛けることで、可動載置部と回転支軸を一体で容易に持ち上げることができる。可動載置部と共に持ち上げられた回転支軸は、長溝に沿って前後方向に移動できる。そのため可動載置部を移動させる操作性を向上させることができる。
【0022】
本開示の他の特徴によると回転支軸を中心とする所定の回転角度毎に可動載置部を位置決めする回り止め機構を有する。したがって載置された被切断材の重量等によって可動載置部が不用意に回転することを抑制できる。これにより可動載置部が被切断材を支持する安定性を高めることができる。
【0023】
本開示の第1実施例を
図1~8に基づいて説明する。本実施例では金工用定置式切断機としてチップソー切断機と称される切断機1を例示する。なお、この業界では金工用定置式切断機のうち切断砥石を刃具として使用するものを「高速切断機」または「切断機」といい、チップソーを刃具として使用するものを「チップソー切断機」という。
図1に示すように切断機1は、金属製のパイプや溝形鋼等の被切断材を載置可能なベース2と、ベース2の上方で上下に揺動可能に支持される切断機本体10を有する。切断機本体10には、回転刃具として円盤状のチップソー11が回転可能に支持される。チップソー11は、電動モータ21の駆動によって回転する。使用者は、切断機1の手前に位置して切断作業を行う。以下の説明において前後方向は使用者から見て手前側を前側、奥側を後側とする。上下左右方向については使用者を基準にして規定する。
【0024】
図1,3に示すようにベース2は、水平方向に延出するテーブル面2aに被切断材を載置可能な矩形状に形成される。ベース2は床面等の設置面Fに載置される。テーブル面2aの右部には、チップソー11が進退可能なスリット2bが前後方向に直線状に延出して設けられる。テーブル面2a上には、上方に向けて起立したフェンス5が設けられる。フェンス5は、被切断材に当接可能に前方を向いた平面状の前面5aを有する。フェンス5は、前面5aの下端から後方へ水平方向に延出する水平面部5bを有する。水平面部5bの右部には、上下方向に延出する回転支軸5cが設けられる。回転支軸5cは、ベース2のテーブル面2aにおいてスリット2bの左方に設けられたねじ孔2c(
図4参照)に締結される。水平面部5bは、回転支軸5cを中心にして水平方向に回転し、ベース2のテーブル面2aに対して摺動する。
【0025】
図1に示すように水平面部5bには、回転支軸5cを中心に円弧状に延出する円弧状孔5dが設けられる。円弧状孔5dには、レバー6の回転支軸6aが挿通される。回転支軸6aは、ベース2のテーブル面2aに取付けられる。回転支軸6aを中心にレバー6を締め方向へ回転させると、水平面部5bがベース2のテーブル面2aに向けて押圧される。これによりフェンス5は、ベース2のテーブル面2aに固定される。回転支軸6aを中心にレバー6を緩み方向へ回転させると、水平面部5bをベース2のテーブル面2aに向けて押す押圧力が解除される。レバー6の回転支軸6aは、円弧状孔5dに沿って水平面部5bに対して相対移動可能である。そのため回転支軸5cを中心にフェンス5を回転可能である。
【0026】
図1,7,8に示すように水平面部5bは、円弧状孔5dの径方向外方にインジケータ5eを有する。ベース2のテーブル面2aには角度目盛2eが設けられる。インジケータ5eが角度目盛2eの任意の角度を指し示すようにフェンス5を回転させる。これにより、チップソー11の延出方向と直交する左右方向に対する前面5aの角度を、インジケータ5eが指し示す角度に変更可能である。例えば前面5aがチップソー11の延出方向に対して直交する時の角度は0°である。この時のフェンス5の位置を0°位置とする。フェンス5が0°位置の時、チップソー11は前面5aに当接される被切断材Wを直角切りする。例えばチップソー11の延出方向に対して前面5aが前方左側に向けて45°で傾斜する時の角度は45°である。この時のフェンス5の位置を45°位置とする。フェンス5が45°位置の時、チップソー11は前面5aに当接される被切断材Wを45°で斜め切りする。フェンス5は、前方に向けて左方へ傾斜する角度を正、前方に向けて右方へ傾斜する角度を負として、例えば-5°~+60°、より好ましくは0°~45°まで回転する。
【0027】
図1,7,8に示すようにベース2のテーブル面2aには、バイス装置(横バイス)7が設けられる。バイス装置7は、フェンス5の前方にバイスプレート(バイス部材)7cを有する。ベース2のテーブル面2aにおいてスリット2bの左方には、前後方向に直線状に延出するスライド孔2dが設けられる。バイスプレート7cは、スライド孔2dに沿って前後方向にスライド可能である。バイスプレート7cは、前方に延出する送りねじ7bと回転可能に連結される。バイスプレート7cは、上下方向に延出する回転支軸7dを中心に回転可能である。そのためバイスプレート7cは、後面をフェンス5の前面5aと対向する姿勢へと回転可能である。送りねじ7bは、ベース2の前端に設けられたバイスベース7eとねじ係合する。送りねじ7bは、前方から見て右方向に回転することで後方へ進行する。送りねじ7bの前端には、送りハンドル7aが一体に設けられる。送りハンドル7aを回転させることで、バイスプレート7cを前後方向に移動させることができる。バイスプレーと7cをフェンス5の前面5aに向けて押し付け、フェンス5の前面5aとバイスプレート7cとの間に被切断材Wを挟み込むことで、テーブル面2aに載せた被切断材Wを保持できる。
【0028】
図1,2に示すようにベース2のテーブル面2aの後部には、切断機本体10を支持する支持連結部4が設けられる。支持連結部4は、上下揺動支軸4aを介して本体支持部23を支持する。切断機本体10は、支持連結部4の上下揺動支軸4aを中心にして上死点と下死点の間で上下方向に揺動可能である。下死点は、本体支持部23に設けられたボス16の下面がベース2のテーブル面2a上に設けられたストッパボルト17の頭部の上面に当接する位置である。支持連結部4には、切断機本体10を上死点側へ付勢するコンプレッションスプリング18が設けられる。これにより、常態において切断機本体10を上死点に保持できる。ベース2の後部には、ダストボックス15が着脱可能に設けられる。チップソー11が被切断材を切断する時、切屑が火花になって生じる。ダストボックス15には、火花が冷却した切屑が集められる。
【0029】
図1に示すように切断機本体10は、電動モータ21を収容するモータハウジング20と、モータハウジング20の右側に連結されるギヤハウジング22を有する。ギヤハウジング22には、電動モータ21の回転駆動をチップソー11へと減速して伝達する減速ギヤ列が収容される。切断機本体10は、モータハウジング20とギヤハウジング22の上側と前側とを跨ぐように本体支持部23に連結されたハンドルハウジング24を有する。ギヤハウジング22と本体支持部23は、一体として成形された完全同一部品である。
【0030】
図1,2に示すようにギヤハウジング22の右側には、チップソー11の上部を覆う固定カバー12が連結される。固定カバー12には、チップソー11の回転方向に回転可能な可動カバー13が組み付けられる。可動カバー13は、常態の最閉じ位置でチップソー11の下側領域を覆うように閉じ方向に付勢されている。
【0031】
図2に示すように切断機本体10には、切断機本体10の下動に連動して可動カバー13を開き方向に回転させるカバー開きリンク14が設けられる。カバー開きリンク14の回転軸14aは、ベース2に連結される。カバー開きリンク14は、回転軸14aの上方に円弧状孔14bを有する。固定カバー12には、円弧状孔14bに挿通されたボルト14cが連結される。カバー開きリンク14は、回転軸14aと反対側端部に位置しかつ可動カバー13に当接する当接部14dを有する。切断機本体10を下方へ揺動させると、ボルト14cが回転軸14aに接近する。ボルト14cは、円弧状孔14bに案内されてカバー開きリンク14に対して相対移動する。これによりカバー開きリンク14が回転軸14aを中心に回転する。当接部14dは、前方へ移動して可動カバー13を開き方向に押す。かくして可動カバー13は、切断機本体10が上死点から下方へ揺動するのに従って、最閉じ位置から徐々に開いてチップソー11の下側領域を露出する。
【0032】
図1,2に示すようにハンドルハウジング24は、前方の第1把持部25と、後方の第2把持部26を有する。第1把持部25と第2把持部26は、いずれも前後方向に延出するループ形状である。使用者は、第1把持部25を把持して切断機本体10を上下方向に揺動できる。ループ形状の第1把持部25の内周側には。使用者が第1把持部25を握りながら指で引き操作可能なトリガ27が設けられる。トリガ27が引き操作されると電動モータ21が起動してチップソー11が回転する。第2把持部26は、使用者が切断機1を持ち運ぶ際に把持可能に設けられる。使用者が切断機1を持ち運ぶ際には、バイスベース7eに設けられたチェーン8をハンドルハウジング24の前部に設けられたフック19に引掛ける。これにより切断機本体10を下死点で固定できる。本体支持部23の後方には、例えば100VのAC電源に接続可能な電源コード28が設けられる。電源コード28を電源に接続することで、電動モータ21に電力を供給できる。
【0033】
図1,3,4に示すようにベース2の左端には、テーブル面2aよりも低い位置で水平方向に延出する平面状の段差部3が設けられる。段差部3は、ベース2の左端面に沿って前後方向に延出する。段差部3の上方には、可動載置部30を収納可能である。可動載置部30は、ベース2のテーブル面2aと協働して被切断材を下方から支持する。段差部3の後端は、ベース2の後端よりも前方に位置する。段差部3の後部には、略三角柱状の収納保持部3aが設けられる。収納保持部3aは、略三角形の1つの頂点を上端として上方へ突出する凸形状である。収納保持部3aの上端は前後方向に延出する。段差部3の前部には、上下方向に延出する円形の軸挿通孔3bが設けられる。軸挿通孔3bには、後述する回転支軸31が挿通される。可動載置部30は、回転支軸31を中心に水平方向に回転可能である。段差部3は、軸挿通孔3bの前方において上下方向に起立する傾斜面3cを有する。傾斜面3cは、前方に向けて左方へ傾斜する方向に延出する。傾斜面3cを設けることで、可動載置部30を前方に向けて回転させる際に、可動載置部30の側面とベース2が干渉することを抑制できる。
【0034】
図1,3,5に示すように可動載置部30は、水平方向に長尺の略矩形の板状または棒状に形成される。可動載置部30の上面30aは、水平方向に平面状に延出する。可動載置部30は、上面30aがベース2のテーブル面2aと略同じ高さになるように段差部3に連結される。可動載置部30は、収納位置Pへ回転した時に段差部3に載置されて収納される。収納位置Pの可動載置部30は、チップソー11の延出方向と略平行に前後方向に延出する。収納位置Pにおける可動載置部30の前端部を第1端部30bとする。収納位置Pにおける可動載置部30の後端部を第2端部30cとする。第1端部30bと第2端部30cは、上面視で円弧状に設けられる。そのため、回転支軸31を中心に可動載置部30を回転させる際、第1端部30bと第2端部30cがベース2と干渉することを抑制できる。
【0035】
図1,5,6に示すように可動載置部30の第1端部30bには、可動載置部30の下方に向けて延出する回転支軸31が設けられる。回転支軸31には、2つのOリング31aが装着される。回転支軸31は、段差部3の軸挿通孔3bに挿通される。回転支軸31は、可動載置部30と一体で軸回りに回転可能である。これにより可動載置部30は、回転支軸31を中心として後方へ延出する収納位置Pの姿勢、後方左側へ傾斜した方向に延出する姿勢、左方へ延出する姿勢、前方左側へ傾斜した方向に延出する姿勢等、任意の姿勢へと回転可能である。
【0036】
図5に示すように可動載置部30の下側には、可動載置部30の長手方向または長手方向と直交する方向に延出する複数のリブ30dが設けられる。リブ30dの下端は、可動載置部30の下端よりもわずかに上方に位置する。第2端部30cの近傍には、1つのリブ30dから下方へ突出する凸形状の係合部30eを有する。係合部30eの下端は、可動載置部30の下端と略同じ高さに位置する。可動載置部30を収納位置Pへ回転させる際、係合部30eは収納保持部3aに乗り上げ、さらに収納保持部3aの右方へ移動する(
図6参照)。これにより係合部30eは、収納保持部3aの左方への移動が抑制される。そのため可動載置部30を収納位置Pから左方へ回転しないように保持できる。
【0037】
図3,5,6に示すように可動載置部30の第2端部30cには、可動載置部30の下方に向けて延出する脚部32が設けられる。脚部32は、可動載置部30と一体に設けられた略円柱状の下方延出部32aと、下方延出部32aに取付けられる軸部32cと、軸部32cの下端に設けられかつ設置面Fに当接する当接部32dを有する。
【0038】
図3,5,6に示すように脚部32には、可動載置部30の上面30aの高さを調整可能な高さ調整機構33が設けられる。軸部32cには雄ねじが形成される。下方延出部32aの内側には、軸部32cの雄ねじと螺合するねじ孔32bが設けられる。当接部32dを下方延出部32aに対して軸部32cの軸回りに回転させることで、軸部32cのねじ孔32bへのねじ締め込み量が変更される。これにより脚部32の長さを変更できる。そのため、例えば設置面Fの凹凸に合わせて可動載置部30の上面30aの高さを調整できる。下方延出部32aと当接部32dの間には、圧縮ばね32eが介装される。圧縮ばね32eの付勢力によって当接部32dの緩み止めがなされる。脚部32は、可動載置部30が収納位置Pに位置する時、前後方向においてテーブル面2aの後端と段差部3の後端の間に収納される。
【0039】
図7に示すようにフェンス5が0°位置の場合、フェンス5の前面5aを延長したフェンス仮想平面S1は、チップソー11の延出方向と直交する左右方向に延出する。前面5aに当接される被切断材Wも、フェンス仮想平面S1に沿って左右方向に延出する。被切断材Wの一部は、ベース2のテーブル面2aの外側左方へ張り出す。可動載置部30は、回転支軸31を中心に回転させることで、テーブル面2aの外方へ張り出した被切断材Wの下側へ移動させることができる。回転支軸31は、フェンス仮想平面S1よりも前方に位置する。回転支軸31は、ベース2の前半分領域と前後方向にオーバーラップする位置に設けられる。可動載置部30を、第2端部30cが被切断材Wの後方に位置しかつ第1端部30bが被切断材Wの前方に位置するように回転させる。この時の可動載置部30は、回転支軸31から見て後方左側へ傾斜する方向に延出する。これにより可動載置部30は、被切断材Wを前後の幅方向に広い面積で下方から支持できる。
【0040】
図8に示すようにフェンス5が45°位置の場合、フェンス5の前面5aを延長したフェンス仮想平面S2は、チップソー11の延出方向に対して45°傾斜する。前面5aに当接される被切断材Wも、フェンス仮想平面S2に沿って左方に向けて前方へ傾斜する方向に延出する。被切断材Wの一部は、ベース2のテーブル面2aの外側左方へ張り出す。回転支軸31は、フェンス仮想平面S2よりも後方に位置する。可動載置部30を、第2端部30cが被切断材Wの前方に位置しかつ第1端部30bが被切断材Wの後方に位置するように回転させる。この時の可動載置部30は、回転支軸31から見て前方左側へ傾斜する方向に延出する。可動載置部30の半分以上の領域は、フェンス仮想平面S2よりも前方に位置する。これにより可動載置部30は、45°で斜め切りする場合も被切断材Wを前後の幅方向に広い面積で下方から支持できる。
【0041】
上述するように切断機1は、
図1,7,8に示すようにテーブル面2aを備えたベース2を有する。切断機1は、ベース2に対して上下に揺動可能に設けられる切断機本体10を有する。切断機1は、テーブル面2a上において水平方向に回転可能に設けられかつテーブル面2aに対して起立するフェンス5を有する。切断機1は、フェンス5の前面5aに向けて押し付けてフェンス5と協働して被切断材Wを挟むためにベース2に対して前後方向に移動可能に設けられるバイスプレート7cを有する。切断機1は、鉛直方向に延出する回転支軸31を中心に回転可能にベース2に直接的に連結される可動載置部30を有する。テーブル面2aに対して外方へ張り出す可動載置部30の上に被切断材Wが載置される。
【0042】
したがって可動載置部30は、テーブル面2aに対して外方へ張り出す姿勢に移動させることで、テーブル面2aの外方へ張り出した被切断材Wを支持できる。しかも、例えばフェンス5を回転させて斜め切りをする場合でも、使用者の手前側(前側)へ張り出す被切断材Wを載置できる好適な位置に可動載置部30を移動させることができる。かくして可動載置部30は、テーブル面2aの外方へ張り出した被切断材Wを安定した姿勢で支持できる
【0043】
図7に示すように、切断機本体10(
図1参照)に装着される円盤状のチップソー11に対して直交する0°位置に前面5aが位置するようにフェンス5を回転した際、フェンス5の前面5aより前方に可動載置部30の回転支軸31が位置する。したがって可動載置部30を、0°位置のフェンス5よりも前方かつテーブル面2aの側方に延出する姿勢へと移動させることができる。そのためフェンス5の前方に位置する被切断材Wを安定した姿勢で支持できる。
【0044】
図7に示すように可動載置部30は、回転支軸31からテーブル面2aの側縁に沿ってフェンス5よりも後方へ延出する収納位置Pに回転可能である。したがって可動載置部30を収納する際にはコンパクトに収納できる。
【0045】
図7に示すように回転支軸31は、テーブル面2aの前側領域と同じ前後位置または前側領域よりも前方に配置される。可動載置部30は、テーブル面2aの側縁に沿って回転支軸31から後方へ延出する収納位置Pへ移動可能である。したがって可動載置部30を収納する際にはコンパクトに収納できる。可動載置部30を展開する際には、テーブル面2aの前側領域よりも前方かつテーブル面2aの側方に延出する姿勢へと移動させることができる。そのためテーブル面2aと可動載置部30が協働して被切断材Wを安定した姿勢で支持できる。
【0046】
図8に示すように前面5aが0°位置に対して45°に傾斜するようにフェンス5を45°位置へ回転させる際、可動載置部30の少なくとも一部が前面5aを含むフェンス仮想平面S2よりも前方に位置するように可動載置部30が前方位置に回転可能である。したがってフェンス5を45°位置まで回転させて斜め切りをする際でも、可動載置部30を移動させてテーブル面2aの前方へ延出する被切断材Wを安定した姿勢で支持できる。
【0047】
図7,8に示すようにフェンス5の回転全領域において前面5aを含むフェンス仮想平面S1,S2よりも可動載置部30の少なくとも一部が前方に位置するように可動載置部30が回転可能である。したがってフェンス5をどのような姿勢に回転させた場合でも、可動載置部30がフェンス5の前方に位置する被切断材Wを安定した姿勢で支持できる。そのため被切断材Wを直角切りまたは斜め切りするいずれの場合であっても切断作業の作業性を向上させることができる。
【0048】
図1,3に示すように可動載置部30は、長尺状である。可動載置部30の第1端部30bに回転支軸31が設けられる。可動載置部30の第2端部30cに設置面Fに当接する脚部32が設けられる。したがって回転支軸31から離れた位置に脚部32を設けることで、可動載置部30が被切断材Wを支持する安定性を高めることができる。
【0049】
図5,6に示すように脚部32は、ねじの締め込み量によって可動載置部30の高さを調整可能な高さ調整機構33を有する。したがって切断機1の設置面Fに凹凸がある場合でも、ベース2のテーブル面2aの高さと可動載置部30の上面30aの高さを合わせることができる。これによりテーブル面2aと可動載置部30が協働して被切断材Wを支持する安定性をより高めることができる。
【0050】
図6,7に示すようにベース2は、収納位置Pへ回転させた可動載置部30と係合可能に上下方向に凸形状の収納保持部3aを有する。したがって収納位置Pへ移動させた可動載置部30を不用意に移動しないように保持できる。
【0051】
次に本開示の第2実施例を
図9~15に基づいて説明する。第2実施例の金工用定置式切断機(切断機)40は、
図1に示す切断機1のベース2と可動載置部30に代えて、ベース41と可動載置部46を有する。以下の説明においては、第1実施例と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0052】
図9,12に示すようにベース41は、水平方向に延出するテーブル面41aに被切断材を載置可能な矩形状に形成される。ベース41は床面等の設置面Fに載置される。テーブル面41aの右部には、チップソー11が進退可能なスリット41bが前後方向に直線状に延出して設けられる。ベース41のテーブル面41aにおいてスリット41bの左方には、フェンス5の回転支軸5cを締結可能なねじ孔41c(
図10参照)が設けられる。ベース41のテーブル面41aには、フェンス5のインジケータ5eに指し示される角度目盛41eが設けられる。フェンス5は、ベース41に対して例えば-5°~+60°、より好ましくは0°~45°まで回転する。ベース41のテーブル面41aにおいてスリット41bの左方には、前後方向に直線状に延出するスライド孔41dが設けられる。バイスプレート7cは、スライド孔41dに沿って前後方向にスライド可能である。
【0053】
図9,10に示すようにベース41の左端には、テーブル面41aよりも低い位置で水平方向に延出する平面状の段差部42が設けられる。段差部42は、ベース41の左端面に沿って前後方向に延出する。段差部42の上方には、可動載置部46を収納可能である。可動載置部46は、ベース41のテーブル面41aと協働して被切断材を下方から支持する。段差部42の後端は、ベース41の後端よりも前方に位置する。段差部42の後部には、略三角柱状の収納保持部42aが設けられる。収納保持部42aは、略三角形の1つの頂点を上端として上方へ突出する凸形状である。収納保持部42aの上端は前後方向に延出する。
【0054】
図9,10に示すように段差部42の前部には、段差部42を上下方向に貫通しかつ前後方向に直線状に延出する長溝43と、長溝43に連通される複数の位置決め凹部44が設けられる。長溝43と位置決め凹部44には、後述する回転支軸47が挿通される。可動載置部46は、回転支軸47を中心に水平方向に回転可能である。段差部42の前端には、上下方向に起立する傾斜面42bを有する。傾斜面42bは、前方に向けて左方へ傾斜する方向に延出する。傾斜面42bを設けることで、可動載置部46を前方に向けて回転させる際に、可動載置部46の側面とベース41が干渉することを抑制できる。
【0055】
図9,11,12に示すように可動載置部46は、水平方向に長尺の略矩形の板状または棒状に形成される。可動載置部46の上面46aは、水平方向に平面状に延出する。可動載置部46は、上面46aがベース41のテーブル面41aと略同じ高さになるように段差部42に連結される。可動載置部46は、収納位置Pへ回転した時に段差部42に載置されて収納される。収納位置Pの可動載置部46は、チップソー11の延出方向と略平行に前後方向に延出する。収納位置Pにおける可動載置部46の前端部を第1端部46bとする。収納位置Pにおける可動載置部46の後端部を第2端部46cとする。第1端部46bと第2端部46cは、上面視で円弧状に設けられる。そのため、回転支軸47を中心に可動載置部46を回転させる際、第1端部46bと第2端部46cがベース41と干渉することを抑制できる。
【0056】
図9,11,12に示すように可動載置部46の第1端部46bには、可動載置部46の下方に向けて延出する回転支軸47が設けられる。回転支軸47の上部には、径方向外方へ張り出した拡径部47aが設けられる。拡径部47aは、回転支軸47と同軸で回転支軸47よりも大径の六角ナット形状に形成される。回転支軸47は、段差部42の長溝43に挿通される。長溝43は、前端から後端まで略一定の幅で設けられる。長溝43は、回転支軸47を挿通可能かつ拡径部47aが進入できない幅で設けられる。回転支軸47の下部は、長溝43の下方へ貫通する。回転支軸47の下部には、圧縮ばね(付勢部材)47bと2つのワッシャ47c,47dが取付けられる。上側のワッシャ47cは、段差部42の内側下面に対して摺動する。下側のワッシャ47dは、ワッシャ保持部材47eによって回転支軸47の所定の位置に固定される。圧縮ばね47bは、2つのワッシャ47c,47dの間に介装される。圧縮ばね47bは、回転支軸47を下方に向けて付勢する。
【0057】
図9,11,12に示すように複数の位置決め凹部44は、長溝43が延出する前後方向に所定の間隔で設けられる。本開示の第2実施例においては、第1位置決め凹部44aと第2位置決め凹部44bと第3位置決め凹部44cの3つの位置決め凹部44が設けられる。第1位置決め凹部44aは、長溝43の前端に設けられる。第3位置決め凹部44cは、長溝43の後端に設けられる。第2位置決め凹部44bは、第1位置決め凹部44aと第3位置決め凹部44cの中間であって第3位置決め凹部44cに近い位置に設けられる。各位置決め凹部44は、長溝43の上部に連結して設けられる。各位置決め凹部44の上端は、長溝43の上端と同じ高さである。各位置決め凹部44は、長溝43の幅よりも大きくかつ拡径部47aよりもわずかに大きい径で設けられる。
【0058】
図9,11,12に示すように各位置決め凹部44には、可動載置部46を所定の水平方向の角度で延出するように回り止めする回り止め機構45が設けられる。各位置決め凹部44は、1つの六角孔形状と、30°軸回りに回転させた六角孔形状を連結させた星形形状に形成される。拡径部47aは、30°毎の所定の回転角度で位置決め凹部44に進入する。可動載置部46は、回転支軸47と一体で回転支軸47を中心に回転する。そのため拡径部47aが位置決め凹部44に進入した時、可動載置部46は、例えばチップソー11の延出方向との直交方向を0°として、-90°(後方を向いた姿勢),-60°,―30°,0°,+30°,+60の各方向へ延出する姿勢で回り止めされる。また、拡径部47aは、長溝43内に進入できない。そのため拡径部47aが位置決め凹部44のいずれか1つに進入した時、回転支軸47は前後方向に移動しないように位置決めされる。
【0059】
図9,11に示すように可動載置部46の側面には、使用者の指を引き掛け可能に凹設された把持部46fが設けられる。把持部46fは、第1端部46bよりも中央側において回転支軸47の近傍に設けられる。使用者が把持部46fに指を引き掛けることで、可動載置部46と回転支軸47を一体で持ち上げることができる。回転支軸47は、ワッシャ47d(
図12参照)によって長溝43に対して抜け止めされている。そのため回転支軸47を長溝43から離脱することなく、長溝43に沿って前後方向にスライドできる。回転支軸47を位置決め凹部44のいずれか1つに進入する位置へ移動させて可動載置部46と回転支軸47を降ろす。拡径部47aが位置決め凹部44に進入可能な姿勢にすることで、圧縮ばね47bによって回転支軸47および可動載置部46へ付勢される。可動載置部46は、位置決め凹部44に対応する所定の位置で位置決めされかつ所定の角度で回り止めされる。
【0060】
図11に示すように可動載置部46の下側には、可動載置部46の長手方向または長手方向と直交する方向に延出する複数のリブ46dが設けられる。リブ46dの下端は、可動載置部46の下端よりもわずかに上方に位置する。第2端部46cの近傍には、1つのリブ46dから下方へ突出する凸形状の係合部46eを有する。係合部46eの下端は、可動載置部46の下端と略同じ高さに位置する。可動載置部46を収納位置Pへ回転させる際、係合部46eは収納保持部42aに乗り上げ、さらに収納保持部42aの右方へ移動する(
図12参照)。これにより係合部46eは、収納保持部42aの左方への移動が抑制される。そのため可動載置部46を収納位置Pから左方へ回転しないように保持できる。可動載置部46の第2端部46cには、可動載置部46の下方に向けて延出する脚部32が設けられる。脚部32には、可動載置部46の上面46aの高さを調整可能な高さ調整機構33が設けられる。
【0061】
図13に示すようにフェンス5が0°位置の場合、フェンス5の前面5aを延長したフェンス仮想平面S1は、チップソー11の延出方向と直交する左右方向に延出する。前面5aに当接される被切断材Wも、フェンス仮想平面S1に沿って左右方向に延出する。被切断材Wの一部は、ベース41のテーブル面41aの外側左方へ張り出す。例えば回転支軸47を第2位置決め凹部44bに移動させて位置決めする。回転支軸47を中心に可動載置部46を所定の角度へ回転させて回り止めする。これにより可動載置部46をテーブル面41aの外方へ張り出した被切断材Wの下側へ移動させることができる。この時、回転支軸47は、フェンス仮想平面S1よりも前方に位置する。回転支軸47は、テーブル面41aの前半分領域と前後方向にオーバーラップするように位置する。可動載置部46は、第2端部46cが被切断材Wの後方に位置しかつ第1端部46bが被切断材Wの前方に位置する姿勢である。可動載置部46は、回転支軸47から見て後方左側へ傾斜する方向に延出する。可動載置部46は、被切断材Wを前後の幅方向に広い面積で下方から支持できる。
【0062】
図14に示すようにフェンス5が45°位置の場合、フェンス5の前面5aを延長したフェンス仮想平面S2は、チップソー11の延出方向に対して45°傾斜する。前面5aに当接される被切断材Wも、フェンス仮想平面S2に沿って左方に向けて前方へ傾斜する方向に延出する。被切断材Wの一部は、ベース41のテーブル面41aの外側左方へ張り出す。回転支軸47を、例えばフェンス仮想平面S2よりも後方の第1位置決め凹部44aに移動させて位置決めする。可動載置部46を、第2端部46cが被切断材Wの前方に位置しかつ第1端部46bが被切断材Wの後方に位置する角度で回り止めさせる。この時の可動載置部46は、回転支軸47から見て前方左側へ傾斜する方向に延出する。可動載置部46の半分以上の領域は、フェンス仮想平面S2よりも前方に位置する。これにより可動載置部46は、45°で斜め切りする場合も被切断材Wを前後の幅方向に広い面積で下方から支持できる。
【0063】
図15に示すようにフェンス5がチップソー11の延出方向に対して30°で傾斜する30°位置の場合、フェンス5の前面5aを延長したフェンス仮想平面S2は、チップソー11の延出方向に対して60°傾斜する。前面5aに当接される被切断材Wも、フェンス仮想平面S2に沿って左方に向けて前方へ傾斜する方向に延出する。被切断材Wの一部は、ベース41のテーブル面41aの外側左方へ張り出す。回転支軸47を、例えばフェンス仮想平面S2よりも後方の第2位置決め凹部44bに移動させて位置決めする。可動載置部46を、第2端部46cが被切断材Wの前方に位置しかつ第1端部46bが被切断材Wの後方に位置する角度で回り止めさせる。この時の可動載置部46は、回転支軸47から見て前方左側へ傾斜する方向に延出する。可動載置部46の半分以上の領域は、フェンス仮想平面S2よりも前方に位置する。これにより可動載置部46は、30°で斜め切りする場合も被切断材Wを前後の幅方向に広い面積で下方から支持できる。
【0064】
上述するように回転支軸47は、
図9,13~15に示すように前後方向に移動可能にベース41に連結される。したがってフェンス5の角度に応じて回転支軸47を前後方向に移動させることができる。しかも移動させた回転支軸47を中心にして可動載置部46を回転させることができる。そのため可動載置部46の移動の自由度が高められる。これにより被切断材Wを安定した姿勢で支持可能な好適な位置へ可動載置部46を移動させることができる。
【0065】
図12~15に示すように切断機1は、テーブル面41aの側縁に沿って前後方向に延出しかつ回転支軸47が挿通される長溝43を有する。切断機1は、回転支軸47に設けられて回転支軸47を下方に付勢する圧縮ばね47bを有する。したがって回転支軸47を長溝43に沿って前後方向にスムーズに移動させることができる。しかも圧縮ばね47bが回転支軸47を下方に付勢することで、回転支軸47が前後方向に不用意に移動することを抑制できる。これにより可動載置部46が被切断材Wを支持する安定性を高めることができる。
【0066】
図13~15に示すように回転支軸47は、長溝43の幅よりも大径の拡径部47aを有する。長溝43の上側でかつ前後方向に所定の間隔の位置に、回転支軸47の拡径部47aが配置される複数の位置決め凹部44が設けられる。したがって回転支軸47を持ち上げながら長溝43に沿って移動させ、拡径部47aを位置決め凹部44のいずれか1つに進入させる。これにより回転支軸47が進入させた位置決め凹部44から前後方向に移動することを抑制できる。これにより被切断材Wを支持する可動載置部46が不用意に移動することを抑制できる。
【0067】
図9,11に示すように可動載置部46には、指を引掛け可能な把持部46fが回転支軸47の近傍に設けられる。したがって把持部46fに指を引き掛けることで、可動載置部46と回転支軸47を一体で容易に持ち上げることができる。可動載置部46と共に持ち上げられた回転支軸47は、長溝43に沿って前後方向に移動できる。そのため可動載置部46を移動させる操作性を向上させることができる。
【0068】
図12~15に示すように回転支軸47を中心とする所定の回転角度毎に可動載置部46を位置決めする回り止め機構45を有する。したがって載置された被切断材Wの重量等によって可動載置部46が不用意に回転することを抑制できる。これにより可動載置部46が被切断材Wを支持する安定性を高めることができる。
【0069】
以上説明した各実施例の切断機1,40には様々な変更を加えることができる。被切断材を切断する回転刃具としてチップソー11を例示した。これに代えて回転刃具は、例えば円盤状の切断砥石等であっても良い。電源コード28をAC電源に接続する切断機1,40を例示した。これに代えて、電源としての充電式バッテリを装着可能なDC切断機に本開示を適用しても良い。例えば矩形のパイプ、円筒形のパイプ、H字鋼、中実の角柱、中実の丸棒等、様々な形状の被切断材を切断する際に本開示の可動載置部30,46を利用することができる。
【0070】
段差部3,42に連結することで、ベース2,41に直接連結される可動載置部30,46を例示した。これに代えて、例えば段差部3,42をベース2,41と分離可能な構成とし、段差部3,42を介してベース2,41に間接的に連結される可動載置部30,46としても良い。テーブル面2a,41aの左方に展開される可動載置部30,46を例示した。これに代えて、テーブル面2a,41aの右方、または左右両方に展開される可動載置部30,46を設けても良い。上面30a,46aが平面状の可動載置部30,46を例示した。これに代えて上面30a,46aを、例えば凹凸が繰り返される波状、例えば曲面状等に設けても良い。
【0071】
回転支軸31,47をベース2,41よりも前方に配置またはベース2,41よりも前方へ移動可能に設けても良い。回転支軸31と軸挿通孔3bに所定の回転角度で回り止めする回り止め機構を設けても良い。30°毎に回り止めする回り止め機構45を例示したが。角度の間隔は適宜変更しても良く、例えば15°毎、20°毎に角度が切り替わる構成としても良い。
【0072】
長溝43に3つの位置決め凹部44が連結される構成を例示した。これに代えて。位置決め凹部44を2つ、または4つ以上としても良い。全ての位置決め凹部44に回り止め機構45を設けたが、一部または全ての位置決め凹部44に回り止め機構45を設けない構成としても良い。
【0073】
相互に凸形状で係合する収納保持部3a,42aと係合部30e,46eを例示した。これに代えて、例えば段差部3,42側の収納保持部3a,42aを凹形状にして凹凸係合する構成としても良い。あるいは可動載置部30,46側の係合部30e,46eを凹形状に代えて凹凸係合する構成としても良い。
【符号の説明】
【0074】
1…切断機(金工用定置式切断機)
2…ベース、2a…テーブル面、2b…スリット、2c…ねじ孔、2d…スライド孔
2e…角度目盛
3…段差部、3a…収納保持部、3b…軸挿通孔、3c…傾斜面
4…支持連結部、4a…上下揺動支軸
5…フェンス、5a…前面、5b…水平面部、5c…回転支軸、5d…円弧状孔
5e…インジケータ
6…レバー、6a…回転支軸
7…バイス装置、7a…送りハンドル、7b…送りねじ
7c…バイスプレート(バイス部材)、7d…回転支軸、7e…バイスベース
8…チェーン
10…切断機本体
11…チップソー(回転刃具)
12…固定カバー
13…可動カバー
14…カバー開きリンク、14a…回転軸、14b…円弧状孔、14c…ボルト
14d…当接部
15…ダストボックス
16…ボス
17…ストッパボルト
18…コンプレッションスプリング
19…フック
20…モータハウジング
21…電動モータ
22…ギヤハウジング
23…本体支持部
24…ハンドルハウジング
25…第1把持部
26…第2把持部
27…トリガ
28…電源コード
30…可動載置部、30a…上面、30b…第1端部、30c…第2端部
30d…リブ、30e…係合部
31…回転支軸、31a…Oリング
32…脚部、32a…下方延出部、32b…ねじ孔、32c…軸部、32d…当接部
32e…圧縮ばね
33…高さ調整機構
40…切断機(金工用定置式切断機)
41…ベース、41a…テーブル面、41b…スリット、41c…ねじ孔
41d…スライド孔、41e…角度目盛
42…段差部、42a…収納保持部、42b…傾斜面
43…長溝
44…位置決め凹部、44a…第1位置決め凹部、44b…第2位置決め凹部
44c…第3位置決め凹部
45…回り止め機構
46…可動載置部、46a…上面、46b…第1端部、46c…第2端部
46d…リブ、46e…係合部、46f…把持部
47…回転支軸、47a…拡径部、47b…圧縮ばね(付勢部材)
47c,47d…ワッシャ、47e…ワッシャ保持部材
S1…(0°位置の)フェンス仮想平面、S2…(45°位置の)フェンス仮想平面
S3…(30°位置の)フェンス仮想平面
W…被切断材
F…設置面
P…収納位置