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特開2024-157173碾茶用乾燥装置および茶葉の乾燥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157173
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】碾茶用乾燥装置および茶葉の乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20241030BHJP
   F26B 15/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A23F3/06 J
F26B15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071347
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】中村 守伸
【テーマコード(参考)】
3L113
4B027
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AC36
3L113AC86
3L113BA20
3L113DA24
4B027FB06
4B027FC10
4B027FP59
(57)【要約】
【課題】碾茶の製造において、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、過乾燥による茶葉の色落ちを防ぎ、良質な碾茶を得ることができる碾茶用乾燥装置及び乾燥方法を提供すること。
【解決手段】碾茶の製造に用いられる碾茶用乾燥装置である。殺青処理された茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥する第1乾燥機と、第1乾燥機を通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別手段と、この分別手段によって分別された乾燥状態の茶葉を搬出する搬出手段と、を有する分別機と、分別機の分別手段によって分別された未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥する第2乾燥機と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
碾茶の製造に用いられる碾茶用乾燥装置であって、
殺青処理された茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥する第1乾燥機と、
前記第1乾燥機を通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別手段と、該分別手段によって分別された乾燥状態の茶葉を搬出する搬出手段と、を有する分別機と、
前記分別機の前記分別手段によって分別された未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥する第2乾燥機と、を有する碾茶用乾燥装置。
【請求項2】
前記分別機は、前記第1乾燥機を通過した茶葉を収容する胴部を有し、
前記分別手段は、前記胴部の内側に延設されて、前記胴部に対して回転可能な軸となるシャフト部と、前記シャフト部に取付けされて、該シャフト部と共に回転する羽根状部材と、前記胴部の周側面に穿設されて、乾燥状態の茶葉を前記胴部から外側に取り出す取出孔と、を有する請求項1に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項3】
前記取出孔の長径は、8mm~10mmである請求項2に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項4】
前記胴部は、前記分別手段の前記取出孔が配置される分別部と、茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する廃棄孔を有する予備処理部と、を有し、
前記予備処理部は、前記分別部よりも上流に配置されており、
前記廃棄孔は前記胴部の周側面に穿設され、該廃棄孔の長径は、前記取出孔の長径よりも短い請求項2または3に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項5】
前記廃棄孔の長径は、4mm~6mmである請求項4に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項6】
前記シャフト部は、前記予備処理部に収容された茶葉を前記分別部に移送するスクリュー状部材を有する請求項4に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項7】
前記搬出手段は、茶葉を風送する送風機である請求項1に記載の碾茶用乾燥装置。
【請求項8】
碾茶の製造における茶葉の乾燥方法であって、
殺青処理された茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥させる第1乾燥機で、茶葉を一次乾燥する第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程を経て乾燥状態となった茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別機で、茶葉を乾燥状態となった茶葉と未乾燥状態の茶葉とに分別する分別工程と、
前記分別工程を経て分別された未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥させる第2乾燥機で、未乾燥状態の茶葉を二次乾燥する第2乾燥工程と、を含む茶葉の乾燥方法。
【請求項9】
前記分別機は、茶葉を収容する胴部の内側に延設されて、前記胴部に対して回転可能な軸となるシャフト部と、前記シャフト部に取付けされて、該シャフト部と共に回転する羽根状部材と、前記胴部の周側面に穿設されてなる取出孔と、を有し、
前記分別工程では、前記第1乾燥機を通過した茶葉のうちから乾燥状態の茶葉を前記取出孔を通して前記胴部の外側へ取り出す請求項8に記載の茶葉の乾燥方法。
【請求項10】
前記取出孔の長径は、8mm~10mmであり、
前記分別工程では、乾燥状態の茶葉を前記取出孔を通して前記胴部の外側へ取り出す請求項9に記載の茶葉の乾燥方法。
【請求項11】
前記胴部の周側面には、前記取出孔の長径よりも短い長径の廃棄孔が、前記取出孔が設けられている領域よりも上流に形成されており、
前記分別工程の前に、前記廃棄孔を通して茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する予備処理工程を有する請求項9または10に記載の茶葉の乾燥方法。
【請求項12】
前記廃棄孔の長径は、4mm~6mmであり、
前記予備処理工程では、前記廃棄孔を通して茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する請求項11に記載の茶葉の乾燥方法。
【請求項13】
前記分別工程で取り出された乾燥状態の茶葉を仕上げの乾燥を行う仕上げ乾燥機へ搬出する請求項8に記載の茶葉の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碾茶を得るための茶葉の乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
碾茶は、茶葉を収穫前に被覆し所定期間遮光して、その茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させることにより得られる緑茶の一種である。碾茶の香気は独特の覆い香があり、適度に香ばしく、主に抹茶の原料として用いられている。
【0003】
碾茶の製造の際に用いられる乾燥装置としては、古来より煉瓦作りの乾燥装置(煉瓦碾茶炉)が用いられているが、大量生産には不向きであった。近年、連続的に加工して大量生産を可能にする乾燥装置(ネット型碾茶炉)として、たとえば特許文献1に開示されているものが提案されている。
【0004】
ネット型碾茶炉では、茶葉をネット状のベルトコンベア上に載せて連続的に搬送させると共に熱風を当てることにより茶葉を乾燥しているので、煉瓦碾茶炉で茶葉を乾燥するものに比べて、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-223441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、碾茶は、揉まずにその茶葉の形状を維持したまま乾燥されて製造されるものであるため、被乾燥物としての大きさが比較的大きく、流動性に乏しい。それゆえ、ネット型碾茶炉のベルトコンベア上に茶葉を供給した場合、茶葉の重なりが大きい部分と小さい部分とが生じてしまい、ベルトコンベア上での茶葉の厚み(茶葉層)が均等にならず、茶葉ごとに乾燥ムラが顕著に発生することがある。また、ベルトコンベアの下部から供給される熱風の量は、ベルトコンベアの両端側が大きくなる傾向にあり、ベルトコンベアの位置によって熱風の強弱ムラがあるため、茶葉の乾燥ムラが発生する原因となっている。そこで、生乾きの茶葉が生じないよう、茶葉を十分に乾燥させる設定で乾燥処理を行うと、特に、小さい茶葉や厚さの薄い茶葉は、ネット型碾茶炉での乾燥処理の途中で十分に乾燥するため、乾燥処理が終了する段階では過乾燥の状態となり、茶葉の色落ちが顕著となる。それゆえ、茶葉の色を重視する碾茶の品質を低下させてしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、碾茶の製造において、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、過乾燥による茶葉の色落ちを防ぎ、良質な碾茶を得ることができる乾燥装置及び乾燥方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥するネット型碾茶炉では、ベルトコンベア上で連続的に茶葉を熱風乾燥させることが可能であるが、茶葉の置かれるベルトコンベア上の位置や茶葉層の厚みによって、茶葉の乾燥状態にムラが生じる。本発明者らは、ベルトコンベア上に供給された茶葉を、ベルトコンベアの進行方向に回転して茶葉を撹拌する撹拌手を用いて撹拌することなどで茶葉層の厚みを均等にするように試みていたが、茶葉の配置のばらつき、特にベルトコンベアの左右方向でのばらつきを解消することには限界がある。そこで、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、茶葉を乾燥させる工程を複数に分け、前の乾燥工程で十分に乾燥している茶葉を取り除いて残りの未乾燥の茶葉を次の乾燥工程で乾燥させることで茶葉の過乾燥を防ぎ、均等に乾燥させる装置及び方法を見出した。
【0009】
すなわち、本発明に係る碾茶用乾燥装置は、
碾茶の製造に用いられる碾茶用乾燥装置であって、
殺青処理された茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥する第1乾燥機と、
第1乾燥機を通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別手段と、この分別手段によって分別された乾燥状態の茶葉を搬出する搬出手段と、を有する分別機と、
分別機の分別手段によって分別された未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥する第2乾燥機と、を有する。
【0010】
本発明の乾燥装置によれば、第1乾燥機で一次乾燥して十分な乾燥状態になった茶葉と二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉とを分別機の分別手段で分別し、十分な乾燥状態となった茶葉を搬出手段で搬出する。これにより、従来は困難であったネット型碾茶炉におけるベルトコンベアの左右方向での茶葉の乾燥状態のムラやばらつきを解消することが可能となる。そして、第2乾燥機では、未乾燥状態の茶葉のみを二次乾燥することができる。そのため、茶葉の過乾燥を防止することができ、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、良質な碾茶を得ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の碾茶用乾燥装置は、好ましくは、上述した分別機は、第1乾燥機を通過した茶葉を収容する胴部を有し、分別手段は、胴部の内側に延設されて、胴部に対して回転可能な軸となるシャフト部と、シャフト部に取付けされて、このシャフト部と共に回転する羽根状部材と、胴部の周側面に穿設されて、乾燥状態の茶葉を胴部から外側に取り出す取出孔と、を有する。
【0012】
第1乾燥機で一次乾燥された茶葉において、十分な乾燥状態の茶葉は、二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉よりも小さい茶葉や厚さの薄い茶葉である。そのため、胴部に投入された茶葉のうち、乾燥状態となった小さな茶葉は、シャフト部と共に回転する羽根状部材で撹拌された際に、胴部に設けられた取出孔を通じて胴部の外側に取り出されることになる。そのため、このような構成では、効率的に乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別することができる。
【0013】
また、本発明の碾茶用乾燥装置は、好ましくは、取出孔の長径は、8mm~10mmである。このように取出孔の大きさを設定することにより、取出孔を介して乾燥状態の小さな茶葉や厚さの薄い茶葉を胴部の外側に排出させることができると共に、未乾燥状態の大きな茶葉を排出させない。そのため、茶葉の過乾燥を防止しつつ、未乾燥状態の茶葉が仕上げ工程に移送されることを効果的に防止できる。なお、取出孔は、短径を有する形状ではない円形形状であってもよいが、短径を有することで、未乾燥状態の茶葉が取出孔から出てしまうことを効果的に防止できる。
【0014】
また、本発明の碾茶用乾燥装置では、好ましくは、胴部は、分別手段の取出孔が配置される分別部と、茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する廃棄孔を有する予備処理部と、を有する。予備処理部は、分別部よりも上流に配置されており、廃棄孔は胴部の周側面に穿設され、この廃棄孔の長径は、取出孔の長径よりも短い。
【0015】
炭疽病を発症した茶葉の一部(炭疽病葉部)は、茶色に変色しており、碾茶にこのような茶葉が含まれていると、碾茶の品質を低下させてしまう。炭疽病葉部は脆いため、羽根状部材で撹拌された際等に細かく粉砕され易く、胴部の内側で細かく粉砕されるため、小さな廃棄孔からでも除去することができる。そして、このような廃棄孔が形成される予備処理部が、取出孔が形成されている分別部よりも上流にあることで、炭疽病葉部が乾燥状態の茶葉に混入することを効果的に防止できる。
【0016】
また、本発明の碾茶用乾燥装置は、好ましくは、廃棄孔の長径は、4mm~6mmである。このように廃棄孔の大きさを設定することにより、炭疽病葉部を胴部の外側に排出させることができるが、その他の茶葉を排出させない。そのため、このような構成では、選択的に炭疽病葉部を排出できるため、碾茶の品質を低下させず、かつ、碾茶の歩留まりをよくすることができる。
【0017】
また、本発明の碾茶用乾燥装置では、好ましくは、シャフト部は、予備処理部に収容された茶葉を分別部に移送するスクリュー状部材を有する。スクリュー状部材によって、胴部の内側の茶葉は、撹拌されながら下流に移送される。スクリュー状部材で撹拌される際に、茶葉に炭疽病葉部がある場合には、炭疽病葉部がさらに細かく粉砕されて除去されやすくなる。そのため、炭疽病葉部が碾茶に混入することを効果的に防止できる。
【0018】
また、本発明の碾茶用乾燥装置では、好ましくは、搬出手段は、茶葉を風送する送風機である。このように構成することで、茶葉の搬出をより効率的に行うことができる。なお、搬出手段は、送風機の代わりに、ベルトコンベアなどを用いることで、大量の茶葉の搬送を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明に係る茶葉の乾燥方法は、碾茶の製造における茶葉の乾燥方法であって、
殺青処理された茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥させる第1乾燥機で、茶葉を一次乾燥する第1乾燥工程と、
第1乾燥工程を経て乾燥状態となった茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別機で、茶葉を乾燥状態となった茶葉と未乾燥状態の茶葉とに分別する分別工程と、
分別工程を経て分別された未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥させる第2乾燥機で、未乾燥状態の茶葉を二次乾燥する第2乾燥工程と、を含む。
【0020】
このように茶葉の乾燥を行うことで、一次乾燥によって十分な乾燥状態になった茶葉と二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉とを分別し、乾燥状態の茶葉を二次乾燥せずに、未乾燥状態の茶葉のみを二次乾燥することができる。そのため、茶葉の過乾燥を防止することができ、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、良質な碾茶を得ることが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る茶葉の乾燥方法において、好ましくは、上述した分別機は、茶葉を収容する胴部の内側に延設されて、胴部に対して回転可能な軸となるシャフト部と、シャフト部に取付けされて、このシャフト部と共に回転する羽根状部材と、胴部の周側面に穿設されてなる取出孔と、を有し、上述した分別工程では、第1乾燥機を通過した茶葉のうちから乾燥状態の茶葉を取出孔を通して胴部の外側へ取り出す。
【0022】
一次乾燥され十分な乾燥状態となった茶葉は、二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉よりも小さい茶葉や厚さの薄い茶葉である。そのため、乾燥状態となった小さな茶葉は、シャフト部と共に回転する羽根状部材で撹拌された際に、胴部に形成された取出孔を通じて胴部の外側に取り出される。そのため、効率的に乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別することができる。
【0023】
また、本発明に係る茶葉の乾燥方法において、好ましくは、取出孔の長径は、8mm~10mmであり、分別工程では、乾燥状態の茶葉を取出孔を通して胴部の外側へ取り出す。このように、取出孔の大きさが設定されることにより、乾燥状態の小さな茶葉や厚さの薄い茶葉を選択的に胴部の外側に取り出すことができ、未乾燥状態の茶葉と乾燥状態の茶葉とを効果的に分別することができる。そのため、茶葉の過乾燥を防止しつつ、未乾燥状態の茶葉が仕上げ工程に移送されることを効果的に防止できる。
【0024】
また、本発明に係る茶葉の乾燥方法において、好ましくは、胴部の周側面には、取出孔の長径よりも短い長径の廃棄孔が、取出孔が設けられている領域よりも上流に形成されており、分別工程の前に、廃棄孔を通して茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する予備処理工程を有する。
【0025】
このように、取出孔よりも上流に形成された廃棄孔から、炭疽病葉部等の茶葉中の細かく粉砕された部位を除去することで、碾茶に炭疽病葉部が混入することを効果的に防止できる。
【0026】
また、本発明に係る茶葉の乾燥方法において、好ましくは、廃棄孔の長径は、4mm~6mmであり、予備処理工程では、廃棄孔を通して茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する。このように、廃棄孔の大きさが設定されることにより、茶葉中の細かく粉砕された炭疽病葉部などの部位を選択的に胴部の外側に除去することができ、碾茶の品質を低下させず、かつ、碾茶の歩留まりをよくすることができる。
【0027】
また、本発明に係る茶葉の乾燥方法において、好ましくは、分別工程で取り出された乾燥状態の茶葉を仕上げの乾燥を行う仕上げ乾燥機へ搬出する。分別工程において分別された乾燥状態の茶葉は仕上げ乾燥機に移送されて仕上げ工程のみ行われるため、碾茶の製造をより効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する碾茶用乾燥装置および碾茶の製造方法を提供することができる。
すなわち、茶葉をベルトコンベア上に載せて搬送しながら乾燥する第1乾燥機で一次乾燥が行われる。分別機で十分な乾燥状態になった茶葉と二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉とを分別され、十分な乾燥状態になった茶葉は搬出される。そのため、第2乾燥機では、十分な乾燥状態の茶葉は乾燥されずに、未乾燥状態の茶葉が二次乾燥される。このようにすることで、茶葉の過乾燥を防止することができ、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、良質な碾茶を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は本発明に係る碾茶用乾燥装置の乾燥機部分の構成を示す図である。
図2図2は本発明に係る碾茶用乾燥装置の分別機部分の構成を示す図である。
図3図3図2に示す分別機の内部構成を示す縦断面図である。
図4図4図2に示す分別機の予備処理部での駆動状態を示す模式図である。
図5図5図3に示すA-A線での分別機の分別部の構成を模式的に示す断面図である。
図6図6は本実施形態に係る碾茶用乾燥装置が適用される加工ラインの一例を示すブロック図である。
図7図7は本実施形態に係る茶葉の乾燥方法を用いた碾茶の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、以下、実施形態により具体的に説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
(碾茶の加工ラインの全体構成)
本実施形態の碾茶用乾燥装置は、収穫前に被覆し所定期間遮光した茶葉を蒸し、揉まずに乾燥して碾茶を得るためのものである。図6は、本実施形態の碾茶用乾燥装置400が適用される加工ラインの一例を示すブロック図である。図6に示すように、一例としての碾茶の加工ラインは、蒸機1と、冷却機2と、打圧機3と、乾燥装置400と、木茎分離機6と、選別機7と、小型茎部仕上げ乾燥機8と、葉部仕上げ乾燥機9と、を有して構成されている。
【0032】
蒸機1は、生の茶葉中に含まれる酸化酵素を失活させる殺青工程を行うためのものである。蒸機1は、公知の蒸機を用いることができる。蒸機1では、給葉機から投入された茶葉を、蒸胴内で蒸すことにより生の茶葉に含まれる酸化酵素を失活させている。なお、本実施形態においては、殺青処理を行う殺青機として蒸機1が示されているが、どのような殺青機を用いてもよく、例えば、釜炒り機、炒蒸機、高温熱風殺青機等のあらゆる殺青機を使用することが可能である。
【0033】
冷却機2は、蒸機1での蒸熱処理により加熱された茶葉を冷却する冷却工程を行うためのものである。冷却機2は、ネット型乾燥機などの公知の冷却機を用いることができる。冷却機2では、蒸機1で蒸した茶葉(蒸葉)を、ネットコンベア等で連続的に搬送する間に、冷風または温風等で冷却させている。なお、碾茶の加工ラインでは、蒸葉の冷却ができれば、独立した冷却機を用いなくてもよい。
【0034】
打圧機3は、冷却後の蒸葉を打圧する打圧工程を行うためのものである。打圧機3は、公知の打圧機を用いることができるが、たとえば、円管状の筒に入れられた蒸葉を筒の内壁に叩きつけて打圧するように構成してもよい。このように構成することで、打圧機3において茶葉を柔らかくし、蒸露を取り除くと共に蒸葉の芯水を浮き上がらせて乾燥効率を向上させることができる。なお、打圧機3は必須の構成ではなく、打圧工程を設けない構成とすることも可能である。
【0035】
乾燥装置400は、蒸熱処理等の殺青処理を経て水分が多く含まれる茶葉を乾燥させるものである。乾燥装置400は、第1乾燥工程(殺青処理された茶葉を乾燥する工程)を行うことができる第1乾燥機4aと、分別工程(第1乾燥機4aを通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する工程)を行うことができる分別機5と、第2乾燥工程(未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥する工程)を行うことができる第2乾燥機4bと、を有する。
【0036】
木茎分離機6は、乾燥装置400で乾燥された茶葉を茎部と葉部とに分ける木茎分離工程を行うためのものである。木茎分離機6は、公知のつる切り機を用いることができる。木茎分離機6は、たとえば、軸方向に延びる本体胴で回転するスクリュー翼を有する構成であってもよい。このように構成することで、本体胴内に供給された茶葉から木茎を分離することができる。また、葉部から分離した木茎のうち大型の茎部を、その他の部分と区別して廃棄することができる。
【0037】
選別機7は、上述した木茎分離機6で分離された茎部と葉部とを選別する選別工程を行うためのものである。選別機7は、公知の打圧機を用いることができるが、たとえば、葉部および茎部に送風するファンを有する風力選別機であってもよい。このように構成することで、選別機7は、木茎分離機を通過した葉部と小型の茎部とを選別することができる。
【0038】
小型茎部仕上げ乾燥機8および葉部仕上げ乾燥機9は、茎部及び葉部各々の仕上げ乾燥工程を行うためのものである。小型茎部仕上げ乾燥機8は、選別機7で選別された小型の茎部の仕上げ乾燥を行い、葉部仕上げ乾燥機9は葉部の仕上げ乾燥を行う。小型茎部仕上げ乾燥機8および葉部仕上げ乾燥機9は、公知の乾燥機を用いることができる。たとえば、小型茎部仕上げ乾燥機8および葉部仕上げ乾燥機9は、ベルトコンベアと、熱風発生手段とを備え、ベルトコンベア上に載せた茶葉を移動させながら熱風で仕上げ乾燥させるような乾燥機が用いられ得る。
【0039】
(乾燥装置の全体構成)
以下、本発明に係る一実施形態の乾燥装置400の全体構成について説明する。図6に示す乾燥装置400は、蒸熱等の殺青工程を経た後の水分を多く含む茶葉を乾燥させるものである。乾燥装置400は、殺青処理された茶葉を乾燥する第1乾燥機4aと、第1乾燥機4aを通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別し、乾燥状態の茶葉を搬出する分別機5と、未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥する第2乾燥機4bと、を有する。
【0040】
(第1乾燥機)
図1に示すように、第1乾燥機4aは、ネット型碾茶炉であるが、その構成は特に限定されない。たとえば第1乾燥機4aは、殺青処理後の茶葉が供給される供給部41と、茶葉をベルトコンベア44上で搬送しながら熱風により乾燥させる乾燥部42と、所定の含水率となるまで乾燥された茶葉を搬出する搬出部43と、で概略構成することができる。第1乾燥機4aでは、蒸葉を一次乾燥する第1乾燥工程を行うことができる。また、図1に示すように、本実施形態では、乾燥部42には、内部に加熱手段を有して熱風を発生し得る熱風発生手段48が備えられており、ダクトを介して給気ダクト49に接続されている。
【0041】
ベルトコンベア44は、上述した供給部41、乾燥部42および搬出部43をめぐるように配置されており、駆動部45を駆動させることによりベルトコンベア44が回動するように構成されている。ベルトコンベア44は、供給部41から搬出部43へ向けて茶葉を搬送することができる。なお、本実施形態に係るベルトコンベア44は無端状に形成されており、それゆえ、供給部41、乾燥部42及び搬出部43を回動した後、復路を回動し、供給部41に至って循環する。
【0042】
供給部41でベルトコンベア44上に供給された蒸葉は、乾燥部42でベルトコンベア44上を搬送されながら乾燥される。乾燥部42において、熱風が供給される給気ダクト49は、往路方向のベルトコンベア44の下方に配置されており、それゆえ、この給気ダクト49からの熱風をベルトコンベア44上に通過させることができるように、ベルトコンベア44は網状に形成されている。ベルトコンベア44を形成する材料としては、たとえば耐熱性の合成樹脂やステンレス等の金属などが挙げられる。また、乾燥部42において、ベルトコンベア44の外周は箱状部材で覆われており、両側方には側壁が形成されるとともに上方にはパンチングメタルが取り付けられ、下方から噴出された熱風がパンチングメタルの網目を通過して上方に放出されるようになっている。
【0043】
図1に示すように、本実施形態では、乾燥部42の往路方向のベルトコンベア44には、ベルトコンベア44上で搬送されている茶葉をかき上げて天地返し(積層された茶葉の表裏を反転)するための天地返し手段46が等間隔に複数設けられている。たとえば、天地返し手段46は、モータの駆動により回転可能な回転軸と、その外周に放射状に円周等配に固定されたブレードとから構成されている。回転軸がベルトコンベア44を跨ぐように、ベルトコンベア44の上方に配置することで、ブレードによって茶葉をかき上げて天地返しすることができる。
【0044】
上述した天地返し手段46により、ベルトコンベア44により茶葉の搬送が行われた状態において、ブレードによってベルトコンベア44上の茶葉を掻き上げて天地返しすることができ、ベルトコンベア44上の茶葉の表裏を反転させることができる。具体的には、ベルトコンベア44上に積層された茶葉の表裏が反転され、ベルトコンベア44の表面全体にすきまなく積層された状態で再び載置される。茶葉はこれらの天地返し手段46を順次通過することにより、天地返しされながら乾燥処理され、搬出部43側に搬送される。
【0045】
また、供給部41は、殺青処理を経た後の茶葉が供給されるところである。供給部41には、ベルトコンベア44が所定角度傾斜して配設されるとともに、乾燥部42への手前にベルトコンベア44に供給された茶葉を一定の厚さに揃えるための均し手段47が設けられている。なお、供給部41の前には、蒸熱処理後の蒸葉の蒸露を除去するための散茶機を備えることも可能である。
【0046】
たとえば、均し手段47は、モータの駆動により回転可能な回転軸と、その外周に放射状に円周等配に固定されたブレードとから構成されている。回転軸がベルトコンベア44を跨ぐように、ベルトコンベア44の上方に配置することで、ブレードによって茶葉を掻き均すことができる。
【0047】
上述した均し手段47により、ベルトコンベア44上に供給された茶葉がブレード471によってかき均されるため、ベルトコンベア44上に広がって積層した状態で乾燥部42へ搬送することができる。それゆえ、乾燥部42において、ベルトコンベア44の下方から吹き込まれる熱風によって茶葉間のすきまから熱風が逃げることがなくなり、茶葉を効率良く、かつ安定的に乾燥させることができる。また、茶葉間のすきまから熱風が逃げ、乾燥効率が低下するのを抑制して茶葉の処理量を増大させることができ、生産コストを低減させることができる。
【0048】
茶葉をベルトコンベア44上で天地返しする手段としては、本実施形態に係る天地返し手段46のほか、ベルトコンベア44上で搬送されていく茶葉の一表面のみを乾燥し続けることを回避可能な手段であれば、上述した天地返し手段46に限らず、どのような構成の手段をも採用することが可能である。また、均し手段47についても同様である。
【0049】
(分別機)
図2は、分別機5の構成を概略的に示している。分別機5では、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別工程を行うことができる。分別機5は、図1に示す第1乾燥機4aで一次乾燥して十分な乾燥状態になった茶葉と二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉とを分別するための機械である。また、分別機5は、後述する乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別手段と、分別手段によって分別された乾燥状態の茶葉を搬出する搬出手段と、を有する。本実施形態では、分別機5は、第1乾燥機4aを通過した茶葉を受け入れる受入部58と、第1乾燥機4aを通過した茶葉を収容する胴部51と、未乾燥状態の茶葉を排出する排出部53と、を有する。
【0050】
受入部58は、第1乾燥機4aの搬出部43から排出された茶葉を胴部51に移送する。受入部58は、正逆コンベア58aを有する。正逆コンベア58aを正転駆動させると、受け入れた茶葉を第1端部59aに向かって搬送することができる。
【0051】
また、第1端部59aは、胴部51内への茶葉の投入口512の上方に位置している。受入部58では、正逆コンベア58aの正転駆動により第1端部59aまで搬送された茶葉を、投入口512から胴部51内に投入可能となっている。なお、第2端部59bは、排出部60につながっており、正逆コンベア58aを逆転駆動させることにより、茶葉を第2端部59bに向かって搬送し、受入部58に受け入れた茶葉を胴部51に投入しないことも可能である。
【0052】
胴部51は、略円筒形状であり、主として炭疽病を発症した茶葉の一部(炭疽病葉部)を除去する予備処理部511と、主として乾燥状態の茶葉を胴部から外側に取り出す分別部521とを有する。茶葉が投入される上流側に予備処理部511が配置され、下流側に分別部521が配置される。予備処理部511は、フレームFに固着している。分別部521の上流側の一端が、予備処理部511に対して回転可能に予備処理部511に連結されている。予備処理部511および分別部521は、これらの内部で連通している。
【0053】
なお、本明細書において、上流とは、碾茶の加工ラインでの茶葉が運ばれる順番が先にあるところを意味し、下流とは後にあるところを意味する。特に、分別機5の胴部51では、投入口512に近い方が上流であり、投入口512から離れる方が下流となる。
【0054】
図3に示すように、予備処理部511は、茶葉を投入可能な投入口512と、投入口512に投入された茶葉を収容する収容空間S1と、を有する。本実施形態においては、投入口512が上方に向かって開口したホッパ状に形成されており、受入部58からの茶葉の投入が容易に行われるようになっている。
【0055】
分別部521は、茶葉を受け入れ可能な内部空間S2を有する。分別部521の下流側の他端は、図2に示す排出部53に対して回転可能に排出部53に連結されている。分別部521の内部空間S2は、排出部53と繋がっている。
【0056】
図3に示すように、胴部51の内部には、分別手段として、胴部51に対して回転可能なシャフト部55が配置されている。シャフト部55は、予備処理部511および分別部521の内部で連通している。シャフト部55は、シャフト部55と共に回転するようにスクリュー状部材551および羽根状部材552a,552bを有する。スクリュー状部材551は、羽根状部材552a,552bよりも上流側に配置されている。
【0057】
予備処理部511の内部(収容空間S1)に、シャフト部55に形成されたスクリュー状部材551が配置されており、シャフト部55に形成されたスクリュー状部材551が回転することで収容空間S1に収容された茶葉を、分別部521の内部(内部空間S2)に移送することができる。
【0058】
なお、図2に示すフレームFには、図3に示す分別部521を有する胴部51の周側面521aとシャフト部55とをそれぞれ別々に回転駆動させる図示しない駆動手段が搭載されている。この駆動手段は、特に限定されず、茶葉を収容する円筒状の収容部内の茶葉を撹拌しながら移送する撹拌機で使用される公知の手段を用いることができる。たとえば、駆動手段は、分別部521に形成された胴ギヤGaを回転駆動させるための分別部用モータと、シャフト部55を回転駆動させるシャフト部用モータと、で構成することができる。
【0059】
図2に示すように、分別機5は、角度調整機構Rを具備しており、かかる角度調整機構Rを操作することにより、胴部51の軸方向の角度を任意に調整し得るようになっている。このように、角度調整機構Rによって胴部51を下流側に向かって下方に傾斜させることができるので、分別部521内の茶葉の滞留量(滞留時間)を調整することができる。また、本実施形態では、スクリュー状部材551がシャフト部55の外周に螺旋状に組み付けられている。そのため、予備処理部511に投入された茶葉は、予備処理部511の内部空間S2の上流側(図2の左端側)から下流側(図2の右端側)に向かって円滑に流され、排出部53の排出口531から排出されることとなる。
【0060】
図3に示すように、予備処理部511は、収容空間S1に収容された茶葉中の細かく粉砕された部位を除去する廃棄孔513を有する。廃棄孔513は、予備処理部511を有する胴部51の周側面511aに穿設され、胴部51内の収容空間S1から外側に通じており、茶葉のうち粉砕された炭疽病葉部を予備処理部511内の収容空間S1から胴部51の外側に通過させて除去する。廃棄孔513は、予備処理部511の上部における分別部521との連結部近傍に複数で形成されている。たとえば、胴部51における予備処理部511をパンチングメタルで形成すれば、そのパンチング孔を廃棄孔513とすることができる。
【0061】
廃棄孔513の長径は、後述する分別部521における取出孔523の長径よりも短く構成してある。炭疽病葉部は、茶色に変色しており、碾茶の品質を低下させてしまう。炭疽病葉部は、脆いため細かく粉砕され易く、胴部51の内側で細かく粉砕されるため、小さな廃棄孔513から除去することができる。そして、このような廃棄孔513が形成される予備処理部511が、取出孔523が形成されている分別部521よりも上流側にあることで、炭疽病葉部が乾燥状態の茶葉に混入することを効果的に防止できる。
【0062】
本実施形態では、廃棄孔513の開口の形状は、略円形の形状であるが、これに限定されず、楕円形、正方形、長方形、不定形などの形状であってもよい。また、廃棄孔513の大きさは、炭疽病葉部を通過させ、その他の部分を通過させず、碾茶の歩留まりを良くする観点から、粉砕されて除去される炭疽病葉部よりも大きく、その他の茶葉よりも小さいことが好ましい。具体的には、廃棄孔513の長径は、2mm~6mmであることが好ましく、4mm~6mmであることがより好ましく、4.5mm~5.5mmであることがさらに好ましい。
【0063】
なお、本明細書では、長径とは、孔の開口を横切る直線のうち最長の長さと定義される。したがって、本明細書では、長径は、楕円形状の長軸の長さに限定される意味ではなく、たとえば、開口の形状が円形であれば直径、正方形および長方形であれば対角線の長さを意味する。
【0064】
図3に示す予備処理部511に投入される茶葉は、炭疽病を発病して茶色に変色した部位と健常な部位とが混在した状態となっている場合がある。炭疽病を発病した部位は、脆く、細かく粉砕され易い性質を有している。予備処理部511では、シャフト部55のスクリュー状部材551が回転することで、茶葉を下流に移送すると共に、茶葉中の炭疽病葉部が廃棄孔513を通過できる程度に細かく粉砕される。そのため、炭疽病葉部が細かく粉砕されて除去されやすくなり、炭疽病葉部が碾茶に混入することを効果的に防止できる。
【0065】
また、図3に示すように、複数の羽根状部材のうち一部(シャフト部55の基端側(図中左側)に位置する特定の羽根状部材552a)は、予備処理部511の収容空間S1に配置されている。羽根状部材552aの一部は、予備処理部511の廃棄孔513が設けられている部分に対応する位置に配置されることが好ましい。本実施形態では、羽根状部材552aは、シャフト部55を中心に、それぞれ90度ずつ傾いた方向に配置されている。それぞれの羽根状部材552aは、シャフト部55の延設方向に対して垂直な平面を有する。
【0066】
このような配置でシャフト部55に取付けされた羽根状部材552aはシャフト部55と共に回転することで、予備処理部511内の茶葉を掻き上げるように撹拌できる。図4に示すように、茶葉Tが羽根状部材552aにより上方に掻き上げられつつ叩かれることで、茶葉の炭疽病を発症して茶色に変色した部位が粉砕され、細かく粉砕された部位tが、廃棄孔513を通して予備処理部511の周側面511aの外側へ排出されることとなる。ただし、羽根状部材552aは、茶葉(特に細かく粉砕された炭疽病葉部)を掻き上げて廃棄孔513から排出するために適した構造であることが好ましいが、それぞれの羽根状部材552aの角度や数、その他の構成は特に限定されない。また、上述した羽根状部材552aについては、予備処理部511内の茶葉を掻き上げるように撹拌できる構成であれば、羽根状部材552a以外の構成としてもよい。具体的には、例えば、予備処理部511では、軸方向に延びるシャフト部55にスクリュー状部材551やこのスクリュー部材とは異なる形状のスクリュー翼を有する構成としてもよい。
【0067】
なお、図2に示すように、本実施形態では、予備処理部511を有する胴部51の周側面511aの外周には、図3に示す廃棄孔513を覆う位置に第1カバー541が配置されている。図4に示すように、第1カバー541は、扉部Ca(廃棄孔513に対峙する部位に形成された開閉可能な扉)および扉部Cb(下方に位置して開閉可能な扉)を有する。扉部Ca,Cbを、それぞれ開状態とすることにより、廃棄孔513を通過した茶葉中の細かく粉砕された部位を、その胴部51の周側面511aの外側に排出し得るようになっている。
【0068】
図2に示すように、予備処理部511の下方には、廃棄孔513を通じて予備処理部511から排出された細かく粉砕された茶葉を収容する炭疽病葉部収容器F1が配置されている。図4に示すように、炭疽病葉部収容器F1は、炭疽病葉部tを一時的に溜めておくことができる。炭疽病葉部収容器F1は、炭疽病葉部tを後で取り出して廃棄し易い構成であることが好ましい。
【0069】
周側面511aの外側へ排出された部位tは、第1カバー541の扉部Caを閉じた状態では、扉部Caに衝突して下方に落下し、扉部Cbから排出される。また、扉部Caが開かれた状態では、周側面511aの外側へ排出された部位tは、さらに外側へ排出される。本実施形態では、予備処理部511の下方には炭疽病葉部収容器F1が配置されており、部位tが、いずれの扉部から排出されたとしても、炭疽病葉部収容器F1に収容されるようになっている。
【0070】
図3に示すように、分別部521を有する胴部51の周側面521aには、予備処理部511との連結部分に、周方向に亘って胴ギヤGaが形成してある。分別部521に形成された胴ギヤGaを回転駆動させることで、分別部521の周側面521aが胴ギヤGaと共に回転し、分別部521側の胴部51の周側面521aを予備処理部511に対して回転駆動させることができる。
【0071】
本実施形態では、分別部521が設けられた側の胴部51の周側面521aは、シャフト部55および予備処理部511に対して回転可能である。図示しない分別部用モータとシャフト部用モータを異なる回転方向や回転速度に設定することで、分別部521の周側面521aとシャフト部55とをそれぞれ異なる方向や速度で回転させることができる。分別部用モータおよびシャフト部用モータを個別に回転方法および回転速度に設定することで、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別するために最適な条件での分別を行い得る。
【0072】
胴ギヤGaには、その所定部位において胴部51内の空間(収容空間S1および内部空間S2)から胴部51の外側へと連通した溝加工部gが形成されている。溝加工部gは、胴部51内の空間における茶葉中の細かく粉砕された部位tを、予備処理部511と分別部521との連結部分から胴部51の外側に排出することができる。
【0073】
図3に示すように、分別部521は、分別手段として、乾燥状態の茶葉を胴部51から外側に取り出す取出孔523を有する。取出孔523は、分別部521を有する胴部51の周側面521aに穿設され、内部空間S2から胴部51の外側に通じており、乾燥状態の茶葉を内部空間S2から胴部51の外側に取り出す。取出孔523は、胴ギヤが形成されている部分よりも下流において、分別部521を有する胴部51の周側面521に沿って複数で形成されている。たとえば、胴部51における分別部521をパンチングメタルで形成すれば、そのパンチング孔を取出孔523とすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、分別部521の周側面521aは、取出孔523が所定の間隔で複数並設されている部分と、取出孔523が設けられていない部分とを有しているが、取出孔523は周側面521aの全面に設けられていてもよい。さらに、分別部521を所定大きさの目開きの金網(メッシュ)で形成し、その網目を取出孔523とすることも可能である。
【0075】
本実施形態では、取出孔523の開口の形状は、略楕円の形状であるが、これに限定されず、円形、正方形、長方形、不定形などの形状であってもよい。取出孔523の開口の形状が、略楕円の形状であると、未乾燥状態の茶葉が誤って取出孔523を通過することを効果的に防止できる。また、取出孔523の大きさは、特に限定されないが、乾燥状態の茶葉、すなわち、小さい茶葉や厚さの薄い茶葉を通過させ、これらよりも大きな未乾燥状態の茶葉を通過させないという観点から、乾燥状態の茶葉よりも大きく、未乾燥状態の茶葉よりも小さいことが好ましい。具体的には、取出孔523の長径は、6mm超~12mmであることが好ましく、8mm~10mmであることがより好ましく、8.5mm~9.5mmがさらに好ましい。
【0076】
さらに、取出孔523の大きさは、同じ大きさとしても、個々に異なる大きさで形成されていてもよく、例えば、分別部521を有する胴部51の上流側から下流側に向けて徐々に大きく又は徐々に小さくなるように形成され、配置されていてもよい。このような取出孔523は、乾燥状態の茶葉を胴部の外側に排出することができると共に、未乾燥状態の茶葉を排出しない。そのため、茶葉の過乾燥を防止しつつ、未乾燥状態の茶葉を出荷することを効果的に防止できる。特に、取出孔523が、長径と短径とを有する楕円形のような細長くつぶれた形状であることで、未乾燥状態の茶葉が取出孔523から排出されることを効果的に防止できる。
【0077】
図3に示すように、分別部521の内部空間S2には、分別手段として、複数の羽根状部材552bが配置されている。羽根状部材552bの一部は、分別部521の取出孔523が設けられている部分に対応する位置に配置されることが好ましい。本実施形態では、羽根状部材552bは、シャフト部55を中心に、それぞれ90度ずつ傾いた方向に配置されている。それぞれの羽根状部材552bは、シャフト部55の延設方向に対して垂直な平面を有する。
【0078】
このような配置でシャフト部55に取付けされた羽根状部材552bはシャフト部55と共に回転することで、分別部521内の茶葉を掻き上げるように撹拌できる。ただし、羽根状部材552bは、茶葉を掻き上げて取出孔523から取り出すために適した構造であることが好ましいが、それぞれの羽根状部材552bの角度や数、その他の構成は特に限定されない。このように、本実施形態では、羽根状部材552bは、予備処理部511に配置されている羽根状部材552aと同様の構成を有するが、異なっていてもよい。また、上述した羽根状部材552bについては、分別部521内の茶葉を掻き上げるように撹拌できる構成であれば、羽根状部材552b以外の構成としてもよい。具体的には、例えば、分別部521では、軸方向に延びるシャフト部55にスクリュー状部材551やこのスクリュー部材とは異なる形状のスクリュー翼を有する構成としてもよい。
【0079】
図2に示すように、本実施形態では、分別部521が設けられた部分の胴部51の外周には、第2カバー542が配置されている。分別部521の下方には、分別部521の取出孔523を通過した茶葉を受け止める受け部56が配置されている。受け部56は、支持部56aで分別部521に固定されている。第2カバー542が配置されることで、取出孔523を通過した乾燥状態の茶葉を確実に受け部56で受け止めることができる。
【0080】
図5に示すように、受け部56には、搬出手段として、茶葉を風送する送風機57が配置されている。送風機57を用いることで、受け部56が受け止めた乾燥状態の茶葉を、傷つけずに効率的に、例えば、図6に示す葉部仕上げ乾燥機9に向けて搬出することができる。なお、搬出手段は、これに限定されず、たとえば、送風機57の代わりに、ベルトコンベアなどを用いることで、大量の茶葉の搬送を行うことも可能である。
【0081】
図2に示すように、未乾燥状態の茶葉が排出される排出部53は、分別部521と回転可能に連結されている。分別部521において、未乾燥状態の茶葉は、図5に示す分別部521における取出孔523を通過しないような大きさであり、内部空間S2から排出部53へ移送される。排出部53の内部は、下方に延在するダクト状になっており、排出部53に移送された茶葉は、排出口531を通じて排出される。排出口531から排出された未乾燥状態の茶葉は、図1に示す第2乾燥機4bの供給部41に投入される。
【0082】
上述の通り、図2および図3に示す分別機5は、第1乾燥機4aを通過した茶葉を収容する胴部51を有する。胴部51の内側には、胴部51に対して回転可能な軸となるシャフト部55が延設されている。シャフト部55は、シャフト部55と共に回転するスクリュー状部材551および羽根状部材552a,552bと、を有する。このような構成では、分別機5の胴部51に投入された茶葉を、十分に撹拌することができる。
【0083】
また、図5に示すように、本実施形態では、分別機5の分別部521では、分別手段として、シャフト部55と、シャフト部55と共に回転する羽根状部材552bと、乾燥状態の茶葉を胴部51から外側に取り出す取出孔523と、を有する。第1乾燥機で一次乾燥された茶葉において、小さい茶葉や厚さの薄い茶葉は十分な乾燥状態となっており、二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉は茶葉の大きさが大きい。そのため、胴部51の内部空間S2で撹拌されながら排出部53に向けて移送途中の茶葉Tのうち、乾燥状態の小さな茶葉T1は、取出孔523を通過することができ、胴部51の周側面521aの外側に取り出しされる。一方、未乾燥状態の大きな茶葉は、取出孔523を通過することができないため、そのまま排出部53に移送される。このようにして、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを効率的に分別することができる。
【0084】
このように、分別機521では、茶葉を十分に撹拌すると共に、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別することができる。そのため、十分な乾燥状態の茶葉は二次乾燥されず、分別機521を通過した未乾燥の茶葉が、図1に示す第2乾燥機4bで二次乾燥される。
【0085】
(第2乾燥機)
図1に示すように、第2乾燥機4bでは、未乾燥状態の茶葉をさらに乾燥させる第2乾燥工程を行うことができる。第2乾燥機4bは、上述の第1乾燥機4aと同様の構成を有している。第2乾燥機4bに関して、個別に断りがない限り、第1乾燥機4aに関する説明が第2乾燥機4bにも当てはまる。
【0086】
なお、第2乾燥機4bは、第1乾燥機4aとは異なる構成を有していてもよい。たとえば、第2乾燥機4bは、第1乾燥機4aよりもダクトから供給される熱風の温度を低くしたり、ベルトコンベアの長さを長くしたりするなど、適宜設計を変更してもよい。また、第2乾燥機4bは、碾茶の大量生産の観点からは、第1乾燥機4aと同様にネット型碾茶炉であることが好ましいが、第2乾燥機4bは、必ずしもネット型碾茶炉でなくてもよく、煉瓦碾茶炉であってもよい。
【0087】
(乾燥装置の作用効果)
上述の通り、図6に示す本実施形態の乾燥装置400は、殺青処理された茶葉を乾燥させる碾茶用乾燥装置であって、図1に示すように、蒸熱された茶葉をベルトコンベア44上に載せて搬送しながら乾燥する第1乾燥機4aと、第2乾燥機4bと、を有する。この第1乾燥機4aおよび第2乾燥機4bは、個々に連続して茶葉の乾燥を行うことが可能であり、碾茶炉の大量生産に適している。
【0088】
また、上述の通り、図6に示すように、乾燥装置400は、第1乾燥機4aと第2乾燥機4bとの間に、第1乾燥機4aを通過した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別手段と、乾燥状態の茶葉を搬出する搬出手段と、を有する分別機5を有する。そのため、第2乾燥機4bでは、乾燥状態の茶葉を乾燥せずに、未乾燥状態の茶葉を二次乾燥することができる。それゆえ、第2乾燥機4bにおいて、茶葉の過乾燥を防止することができ、茶葉の品質、特に外観色が良好に維持できる。そのため、乾燥装置400では、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、良質な碾茶を得ることが可能となる。
【0089】
(碾茶の製造方法)
本実施形態の碾茶の製造方法は、収穫前に被覆して所定期間遮光した茶葉を蒸し、揉まずに乾燥して碾茶を得る碾茶の製造方法に適用され得る。図7は、本実施形態の茶葉の乾燥方法が適用される碾茶の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0090】
図7に示すように、本実施形態の一例としての碾茶の製造方法では、蒸機1に給葉された生の茶葉中の酸化酵素を失活させるために、殺青する蒸熱工程S1を有する。蒸熱工程S1は、公知の方法で行い得る。なお、本実施形態においては、蒸熱工程S1が挙げられているが、茶葉中の酸化酵素を失活させられればよいため、蒸機1で茶葉を蒸熱する以外にも、釜炒り機、炒蒸機、高温熱風殺青機等のあらゆる殺青機などを使用して殺青工程を行うことが可能である。また、本実施形態の碾茶の製造方法は、蒸熱工程S1を経た茶葉を所定の温度まで冷却する冷却工程S2を有する。冷却工程S2は、冷却機2などを用いた公知の方法で行い得る。さらに本実施形態の碾茶の製造方法は、冷却工程S2で冷却された茶葉を打圧して茶葉を柔らかくし、蒸露を取り除く打圧工程S3を有する。打圧工程S3は、打圧機3などを用いた公知の方法で行い得る。なお、打圧工程S3は必須の構成ではなく、打圧工程S3を設けない構成とすることも可能である。
【0091】
本実施形態の碾茶の製造方法では、打圧工程S3を経た茶葉は、所定の含水率になるまで乾燥される。本実施形態では、概略的に、茶葉を一次乾燥する第1乾燥工程S4と、第1乾燥工程S4を経た茶葉から、炭疽病葉部を除去する予備処理工程S5と、第1乾燥工程S4を経て乾燥状態となった茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別工程S6と、分別工程S6で分別された未乾燥状態の茶葉を二次乾燥する第2乾燥工程S7と、を有する。
【0092】
第1乾燥工程S4は、公知のネット型碾茶炉での乾燥方法で行い得る。本実施形態では、第1乾燥工程S4は、上述した乾燥装置400の第1乾燥機4aで行うことができる。第1乾燥工程S4において、打圧工程S3を経た茶葉は、図1に示す第1乾燥機4aの供給部41に供給される。供給部41に供給された茶葉は、ベルトコンベア44に載せられる。駆動部45を駆動して、ベルトコンベア44に載せられた茶葉は、供給部41、乾燥部42および搬出部43の順に往路を回動される。
【0093】
なお、本実施形態では、供給部41においてベルトコンベア44に載せられた茶葉は、均し手段47によって掻き均される。乾燥部42において、網状のベルトコンベア44の下方から、給気ダクト49を介して熱風を供給し、ベルトコンベア44に載せられた茶葉を乾燥させる。本実施形態では、茶葉を乾燥部42で乾燥させている間に、天地返し手段46で茶葉を掻き上げて茶葉の表裏を反転させている。搬出部43まで運ばれた茶葉は、図2に示す分別機5の受入部58に投入される。
【0094】
次に、予備処理工程S5と、分別工程S6について説明する。本実施形態における予備処理工程S5及び分別工程S6は、上述した乾燥装置400の分別機5で行うことができる。分別機5の受入部58に投入された茶葉は、正逆コンベア58aを正転駆動させることで投入口512から胴部51の予備処理部511に投入される。シャフト部用モータでシャフト部55を回転駆動させることで、胴部51内でスクリュー状部材551および羽根状部材552aが回転する。これらの回転によって、分別機5の胴部51内に投入された茶葉は、下流側に移送される。また、この時、スクリュー状部材551の回転と共に角度調整機構Rを操作して胴部51を下流側に向かって下方に傾斜させることで、予備処理部511に投入された茶葉を分別部521、排出部53へと移送させることができる。
【0095】
まず、予備処理工程S5では、分別機5の予備処理部511に投入された茶葉のうち、炭疽病葉部を除去する予備処理を行う。予備処理工程S5では、シャフト部55と共にスクリュー状部材551および羽根状部材552aが回転駆動することで、胴部51内の茶葉が撹拌され、茶葉中の炭疽病葉部が細かく粉砕される。羽根状部材552aが回転駆動することで、茶葉中の細かく粉砕された部位tが掻き上げられ、予備処理部511に設けられている廃棄孔513を通して粉砕された部位tが胴部51の外側へ排出される。この時、第1カバー541の扉部541a,542bを開くことで、茶葉中の細かく粉砕された部位tは、炭疽病葉部収容器F1に収容し廃棄される。
【0096】
次に、分別工程S6では、分別機5の分別部521に移送された茶葉を、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とに分別する。分別工程S6では、分別部521に移送された茶葉のうち、乾燥状態の茶葉が分別部521の取出孔523を通して胴部51の外側に取り出しされる。分別部用モータを駆動し、分別部521の周側面521aおよび羽根状部材552bを回転させることで、分別部521内で、茶葉が撹拌される。茶葉のうち十分な乾燥状態の茶葉、すなわち、小さい茶葉や厚さの薄い茶葉が取出孔523から通過し、受け部56に一時的に収容される。分別工程S6を経て受け部56に収容された乾燥状態の茶葉は、搬送手段57で葉部仕上げ乾燥機9に搬送される。また、未乾燥状態の茶葉は、取出孔523を通過せず、排出部53に移送され、排出口531から排出され、第2乾燥機4bに搬送される。
【0097】
なお、予備処理工程S5及び分別工程S6において、分別機5のシャフト部55の回転速度および胴部51の地面に対する角度を、適宜設定してよい。たとえば、シャフト部55の回転速度を、300rpm~700rpmに設定し、地面に対する胴部51の角度を、2度~5度に設定することで、胴部51内における茶葉の移送速度を調整することができる。これにより、胴部51内における茶葉の滞留時間を好適な時間とすることができるため、炭疽病葉の胴部51外への排出及び乾燥状態の茶葉の分別を好適に行うことができる。また、分別工程S6において、分別機5の分別部521を有する胴部51の回転方向・回転速度は、シャフト部55の回転方向・回転速度と同じであってもよいが異なっていてもよい。たとえば、本実施形態の分別工程S6において、分別機5の分別部521側の胴部51は、シャフト部55の回転方向と同じ回転方向に設定し、300rpm~700rpmの回転速度に設定することで、好適に乾燥状態の茶葉を周側面521aに設けた取出孔523を介して胴部51外へ取り出すことができる。
【0098】
次に、第2乾燥工程S7では、分別工程S6に分別された未乾燥状態の茶葉が、第2乾燥機4bで乾燥される。第2乾燥工程S7は、第2乾燥機4bを用いて第1乾燥工程S4と同様の方法で行われ得る。第2乾燥工程S7に関して、個別に断りがない限り、第1乾燥工程S4に関する説明が第2乾燥工程S7にも当てはまる。第2乾燥工程S7で乾燥された茶葉は、第2乾燥機4bの搬送部43から木茎分離機6に投入される。
【0099】
なお、第2乾燥工程S7は、第1乾燥工程S4とは異なる構成を有していてもよい。たとえば、第2乾燥工程S7では、第1乾燥工程S4よりもダクトから供給する熱風の温度を低めに調整したり、ベルトコンベア上で茶葉を搬送しながら乾燥させる時間を長くしたりするなど、適宜設定を変更してもよい。
【0100】
本実施形態の碾茶の製造方法によれば、第1乾燥工程S4を経て十分な乾燥状態になった茶葉と二次乾燥が必要な未乾燥状態の茶葉とを分別する分別工程S6を有する。そして、第2乾燥工程S7では、乾燥状態の茶葉を二次乾燥せずに、未乾燥状態の茶葉を二次乾燥することができる。そのため、茶葉の過乾燥を防止することができ、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ、過乾燥による色落ちが低減された、良質な碾茶を得ることが可能となる。
【0101】
ここで、第1乾燥工程S4および第2乾燥工程S7では、最終製品となる碾茶に求められる品質に応じて、茶葉の乾燥の程度を変更しても良い。たとえば、第1乾燥機4aおよび第2乾燥機4bの乾燥部42に供給される風の温度や乾燥時間(または風量)を適宜設定して、茶葉における含水率をそれぞれ調整できる。
【0102】
たとえば、碾茶の焙り香を高めるには、茶葉の水分量が多い時(乾量基準(D.B.)含水率50%以上)に、一例として120℃~150℃の高い温度の熱風で乾燥を行うのがよい。また、碾茶の色落ちを低減するには、茶葉の水分量が少ない時(乾量基準含水率50%未満)に、一例として80℃~100℃の低い温度の熱風で、必要に応じて風量を調整しながら乾燥を行うのがよい。このような観点から、第1乾燥工程S4では、熱風の温度が第2乾燥工程S7よりも高くなるように設定して茶葉の含水率が40~50%D.B.(好ましくは50%D.B.)となるまで乾燥を行い、第2乾燥工程S7では、熱風の温度を低く設定し、第1乾燥工程S4よりも風量を大きく設定して乾燥を行うことで、焙り香を高めつつ色落ちも少ない碾茶を製造することが可能になる。
【0103】
また、茶葉を乾燥させる工程では、茶葉の乾量基準含水率が50%未満(特に40%未満)の時に色落ちが激しくなる。そのため、本実施形態では、たとえば、第1乾燥工程S4において茶葉の乾量基準含水率が40%未満(好ましくは50%未満)とならないように熱風の温度・風量、乾燥時間などを設定することで、色落ちの少ない碾茶を製造することができる。
【0104】
次に、本実施形態の碾茶の製造方法における木茎分離工程S8では、第2乾燥工程S7を経た茶葉について、葉部と茎部とを分離する木茎分離処理が行われる。木茎分離工程S8は、木茎分離機6などを用いた公知の方法で行われ得る。木茎分離工程S8では、茶葉から分離した木茎のうち大型の茎部は、その他の部分と区別して廃棄される。木茎分離工程S8を経た葉部および小型の茎部は、引き続いて選別工程S9を行う選別機7に投入される。
【0105】
次に、本実施形態の碾茶の製造方法における選別工程S9では、木茎分離工程S8を経た葉部および小型の茎部について、選別処理が行われる。選別工程S9は、選別機7などを用いた公知の方法で行われ得る。選別工程S9では、たとえば、風力選別機のファンで葉部および茎部を風送することで、葉部と茎部との大きさおよび重さの違いを利用して、葉部と茎部とが選別される。選別工程S9を経た茎部及び葉部はそれぞれ仕上げ乾燥工程S10が行われる。茎部は小型茎部仕上げ乾燥機8に投入され、葉部は、葉部仕上げ乾燥機9に投入される。
【0106】
そして、本実施形態の碾茶の製造方法における仕上げ乾燥工程S10では、仕上げの乾燥が行われる。仕上げ乾燥工程S10では、選別工程S9を経た茎部、葉部および分別工程S6を経て取出孔523を通過し受け部56から搬送された乾燥状態の茶葉が仕上げ乾燥される。仕上げ乾燥工程S10は、茎部仕上げ乾燥機8および葉部仕上げ乾燥機9などを用いた公知の方法で行われ得る。たとえば、仕上げ乾燥工程S10は、ベルトコンベア上に載せた茶葉を移動させながら時間をかけて熱風で仕上げ乾燥するような方法が用いられ得る。仕上げ乾燥工程S10では、茶葉は製品として出荷可能なレベルの乾量基準含水率(約5%)となるまで乾燥される。仕上げ乾燥工程S10を経ることで、本実施形態の碾茶の製造方法によって高品質な碾茶が得られる。
【0107】
なお、本実施形態の仕上げ乾燥工程S10は、茎部と葉部との乾燥のし易さの違いを考慮して、茎部仕上げ乾燥機8および葉部仕上げ乾燥機9を用いて、それぞれ別々に仕上げ乾燥が行われているが、茶葉の含水率などに応じて一つの仕上げ乾燥機を用いて行われても良い。
【0108】
上述した本発明に係る碾茶用乾燥装置および碾茶の製造における茶葉の乾燥方法によれば、殺青処理された茶葉を乾燥する工程が、第1乾燥機での第1乾燥工程と、第2乾燥機での第2乾燥工程とに分割される。そして、第2乾燥工程の前に、分別機において一次乾燥した茶葉から乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別する分別工程があり、乾燥状態の茶葉を第2乾燥工程から除外することが可能になる。この碾茶用乾燥装置および茶葉の乾燥方法を用いて碾茶を製造することで、効率的に良質な碾茶を得ることができる。
【0109】
また、上述した本発明に係る乾燥装置を構成する分別機は、碾茶の加工ラインに使用される乾燥装置において、乾燥状態の茶葉と未乾燥状態の茶葉とを分別するため使用されているが、煎茶用乾燥装置にも利用することができる。また、この分別機は、従来の煉瓦碾茶炉を用いる加工ラインにおいて、木茎分離機(つる切り機)の代替としても用いることができるほか、殺青工程や煉瓦碾茶炉で発生した焦げを除去するための焦げ除去装置として利用することも可能である。
【0110】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、抹茶などの原料として用いられる碾茶の品質の向上を図ることのできる新たな碾茶用乾燥装置および茶葉の乾燥方法を提供するものであり、製茶分野の産業において幅広く役立つものである。
【符号の説明】
【0112】
1 蒸機
2 冷却機
3 打圧機
400 乾燥装置
4a 第1乾燥機
4b 第2乾燥機
41 供給部
42 乾燥部
43 搬送部
44 ベルトコンベア
45 駆動部
46 天地返し手段
47 均し部
48 熱風発生手段
49 給気ダクト
5 分別機
51 胴部
511 予備処理部
511a 周側面
S1 収容空間
512 投入口
513 廃棄孔
521 分別部
521a 周側面
S2 内部空間
523 取出孔 (分別手段)
53 排出部
531 排出口
541 第1カバー
541a 扉部
542 第2カバー
55 シャフト部 (分別手段)
551 スクリュー状部材
552a,552b 羽根状部材 (分別手段)
56 受け部
56a 支持部
57 送風機 (搬出手段)
58 受入部
58a 正逆コンベア
59a 第1端部
59b 第2端部
60 排出部
F フレーム部
F1 炭疽病葉部収容器
Ga 胴ギヤ
Gb 駆動ギヤ
g 溝加工部
R 角度調整機構
6 木茎分離機
7 選別機
8 小型茎部仕上げ乾燥機
9 葉部仕上げ乾燥機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7