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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157175
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】助手席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/205 20110101AFI20241030BHJP
   B60K 37/20 20240101ALI20241030BHJP
   B60K 37/00 20240101ALI20241030BHJP
【FI】
B60R21/205
B60K37/00 G
B60K37/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071351
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴史
【テーマコード(参考)】
3D054
3D344
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA14
3D054BB09
3D344AA07
3D344AA14
3D344AB01
3D344AC15
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】助手席用エアバッグの作動時にエアバッグによって押し開かれるインストルメントパネルのドア部の車両後方側あるいは車両前方側の少なくとも一方の側に設けられて物品を収容可能な凹状のトレーを、前記ドア部にて適切に覆うことができる、助手席用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】助手席用エアバッグ装置1Aであって、助手席に対して車両前方側に配置されたインストルメントパネル2における助手席に対向する位置の一部には、助手席用エアバッグ装置の作動時に膨張したエアバッグによって押し開かれる板状のドア部10が設けられている。またドア部に対して車両前方側または車両後方側の少なくとも一方の側のインストルメントパネルには、物品を収容可能な凹状のトレー3が設けられており、助手席用エアバッグ装置が作動した際にトレー3の側へ押し開かれたドア部10(10A)は、トレー3の全体を覆う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置であって、
前記助手席に対して車両前方側に配置されたインストルメントパネルにおける前記助手席に対向する位置の一部には、前記助手席用エアバッグ装置の作動時に膨張したエアバッグによって押し開かれる板状のドア部が設けられており、
前記ドア部に対して車両前方側または車両後方側の少なくとも一方の側の前記インストルメントパネルには、物品を収容可能な凹状のトレーが設けられており、
前記助手席用エアバッグ装置が作動した際に前記トレーの側へ押し開かれた前記ドア部は、前記トレーの全体を覆う、
助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置であって、
前記インストルメントパネルは、前記ドア部の周囲に位置する周囲部を有し、
前記インストルメントパネルの内面には、略U字状の湾曲部を有するリテーナが接続されており、
前記湾曲部の両端は、前記ドア部と前記周囲部にそれぞれ接続されており、
前記助手席用エアバッグ装置が作動した際に前記トレーの側へ押し開かれた前記ドア部は、前記インストルメントパネルから分離するとともに、前記リテーナによって前記周囲部に接続されており、
前記トレーの側へ押し開かれて前記インストルメントパネルから分離した前記ドア部は、前記湾曲部の変形を伴った移動の後に前記トレーの全体を覆う、
助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置であって、
前記ドア部は、前記トレーの側の縁部である接続部が前記インストルメントパネルから分離せず当該接続部を回動軸として回動するように構成されており、
前記ドア部には、肉薄化された脆弱部が設けられており、
前記助手席用エアバッグ装置が作動した際における前記脆弱部の変形により、前記ドア部は前記インストルメントパネルの表面に沿った形状へ変形する、
助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置であって、
前記トレーは、前記ドア部に対して車両後方側の前記インストルメントパネルに設けられている、
助手席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両の助手席や運転席のそれぞれには、車両が衝突等した際に乗員の上半身を保護するエアバッグ装置が搭載されている。そして助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置は、助手席の前方のインストルメントパネルに収容されている。当該助手席用エアバッグ装置が作動した際は、膨張したエアバッグによってインストルメントパネルの上面に設けられたドア部が押し開かれてインストルメントパネルの上面を覆いながら一瞬でエアバッグが展開される。
【0003】
車両の助手席の周囲には、種々の物品を収容可能な収容部が多数設けられている。例えば助手席の正面となるインストルメントパネルには、いわゆるグローブボックス等が設けられており、助手席の乗員の右手または左手が届くインストルメントパネルの位置には、いわゆるカップホルダ等が設けられている。更に、インストルメントパネルの前記ドア部の車両後方側あるいは車両前方側の少なくとも一方の側に、物品を収容可能な凹状のトレーが設けられる場合がある。当該凹状のトレーが設けられている場合、インストルメントパネルの上面を覆いながら展開する助手席用エアバッグの展開時にエアバッグが凹状のトレーに入り込んで引っ掛かり展開が遅れたり、トレー内の物品が飛散したりする可能性がある。これを回避するために、エアバッグの作動時にトレーを覆う構造が所望されている。
【0004】
例えば特許文献1には、インストルメントパネルにおける助手席に対向する側にはディスプレイユニットが配置され、エアバッグ装置の作動時にはインストルメントパネルから押し開かれたリッド(ドア部に相当)が、インストルメントパネルとディスプレイユニットとの間の溝部を覆う、車体前部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-050023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された車体前部構造のリッド(ドア部に相当)は、インストルメントパネルとディスプレイユニットとの間の溝部を覆うことを想定しているが、上記の凹状のトレーを覆うことを想定していない。前記溝部はリッドに比較的近く、更に前記溝部の溝幅(溝部における車両の前後方向の長さ)は比較的狭いので、膨張したエアバッグによって押し開かれたリッドが充分届いて覆うことができる。しかし、上記の凹状のトレーの場合、トレーがリッドから比較的遠い場合や、トレーの車両前後方向の長さが比較的長い場合が有るので、リッドがトレーに届かない可能性や、リッドでトレーを覆いきれない可能性がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、助手席用エアバッグの作動時にエアバッグによって押し開かれるインストルメントパネルのドア部の車両後方側あるいは車両前方側の少なくとも一方の側に設けられて物品を収容可能な凹状のトレーを、前記ドア部にて適切に覆うことができる、助手席用エアバッグ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明は、車両の助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置であって、前記助手席に対して車両前方側に配置されたインストルメントパネルにおける前記助手席に対向する位置の一部には、前記助手席用エアバッグ装置の作動時に膨張したエアバッグによって押し開かれる板状のドア部が設けられている。また前記ドア部に対して車両前方側または車両後方側の少なくとも一方の側の前記インストルメントパネルには、物品を収容可能な凹状のトレーが設けられており、前記助手席用エアバッグ装置が作動した際に前記トレーの側へ押し開かれた前記ドア部は、前記トレーの全体を覆う、助手席用エアバッグ装置である。
【0009】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る助手席用エアバッグ装置であって、前記インストルメントパネルは、前記ドア部の周囲に位置する周囲部を有し、前記インストルメントパネルの内面には、略U字状の湾曲部を有するリテーナが接続されており、前記湾曲部の両端は、前記ドア部と前記周囲部にそれぞれ接続されている。そして、前記助手席用エアバッグ装置が作動した際に前記トレーの側へ押し開かれた前記ドア部は、前記インストルメントパネルから分離するとともに、前記リテーナによって前記周囲部に接続されている。そして前記トレーの側へ押し開かれて前記インストルメントパネルから分離した前記ドア部は、前記湾曲部の変形を伴った移動の後に前記トレーの全体を覆う、助手席用エアバッグ装置である。
【0010】
次に、第3の発明は、上記第1の発明に係る助手席用エアバッグ装置であって、前記ドア部は、前記トレーの側の縁部である接続部が前記インストルメントパネルから分離せず当該接続部を回動軸として回動するように構成されている。そして前記ドア部には、肉薄化された脆弱部が設けられており、前記助手席用エアバッグ装置が作動した際における前記脆弱部の変形により、前記ドア部は前記インストルメントパネルの表面に沿った形状へ変形する、助手席用エアバッグ装置である。
【0011】
次に、第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明のいずれか1つに係る助手席用エアバッグ装置であって、前記トレーは、前記ドア部に対して車両後方側の前記インストルメントパネルに設けられている、助手席用エアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、トレーの側に押し開かれたドア部は、ドア部に対して車両後方側または車両前方側の少なくとも一方の側のインストルメントパネルに設けられた凹状のトレーの全体を覆う。これにより、凹状のトレーを、前記ドア部にて適切に覆うことができる。
【0013】
第2の発明によれば、トレーの側に押し開かれるドア部が、インストルメントパネルに縁部が接続されて回動した場合ではトレーに届かない大きさであっても、インストルメントパネルから分離させることでトレーに届かせることができる。
【0014】
第3の発明によれば、トレーの側に押し開かれるドア部の接続部からトレーに至るインストルメントパネルの面が平面状でなく屈曲した面の場合、当該面に沿ってドア部が屈曲するので、トレーを適切に覆うことができる。
【0015】
第4の発明によれば、ドア部に対して車両後方側(助手席の乗員に近い側)のインストルメントパネルに設けられてより使い勝手のよいトレーを、ドア部にて適切に覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態における、インストルメントパネルに設けられたドア部(閉状態)とトレーの外観及び位置の例を説明する斜視図である。
図2図1に対して、膨張したエアバッグ(図示省略)によって押し開かれて回動したドア部がトレーを覆う状態を説明する斜視図である。
図3図1のIII-III断面図であり、助手席用エアバッグ装置が作動前の状態であってドア部が閉状態である例を説明する図である。
図4図3に対して、膨張したエアバッグがドア部を途中まで押し開いた状態の例を説明する図である。
図5図4に対して、エアバッグが更に膨張して押し開かれて回動したドア部がトレーを覆った状態の例を説明する図である。
図6】第2の実施の形態における、インストルメントパネルに設けられたドア部(閉状態)とトレーの外観及び位置の例を説明する斜視図である。
図7図6に対して、膨張したエアバッグ(図示省略)によって押し開かれてインストルメントパネルから分離したドア部がトレーを覆う状態を説明する斜視図である。
図8図6のVIII-VIII断面図であり、助手席用エアバッグ装置が作動前の状態であってドア部が閉状態である例を説明する図である。
図9図8に対して、膨張したエアバッグがドア部を途中まで押し開いた状態の例を説明する図である。
図10図9に対して、エアバッグが更に膨張して押し開かれてインストルメントパネルから分離したドア部がトレーを覆った状態の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、車両の助手席の乗員の上半身を保護する第1の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1A、第2の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Bについて、図面を用いて説明する。なお、図中に上下、前後、左右の軸が記載されている場合、各軸は互いに直交している。また上下方向は、助手席用エアバッグ装置1A、1Bを搭載している車両の上下方向を示し、前後方向は当該車両の前後方向を示し、左右方向は当該車両の左右方向を示している。本実施の形態にて説明する助手席用エアバッグ装置1A、1Bは、ドア部10に対して車両後方側または車両前方側の少なくとも一方の側のインストルメントパネル2に設けられて物品を収容可能な凹状のトレー3(図1図6参照)を、板状のドア部10で覆う(図2図7参照)。
【0018】
<第1の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Aの周囲の外観(図1図2)>
図1及び図2に示すように、車両の助手席に対して車両前方側に配置されたインストルメントパネル2における助手席に対向する位置の一部には、助手席用エアバッグ装置1Aが設けられている。助手席用エアバッグ装置1Aは、エアバッグを収容したエアバッグユニット20、インストルメントパネル2に設けられた板状のドア部10等を有している。エアバッグユニット20は、インストルメントパネル2の板状のドア部10の下方、かつ、グローブボックス4の奥に配置されている。
【0019】
なお図1はエアバッグが展開する前であってドア部10が閉状態の場合を示しており、図2はエアバッグが展開されてドア部10が押し開かれた開状態(エアバッグの図示は省略)の場合を示している。インストルメントパネル2に設けられたドア部10の下方には、エアバッグが収容されたエアバッグユニット20が配置されている。助手席用エアバッグ装置1Aが作動した場合、エアバッグユニット20内のエアバッグが膨張してドア部10を押し開き、押し開かれたドア部10による開口部10Z(図2参照)からエアバッグが展開される。また図1において、インストルメントパネル2の内面(裏面)におけるドア部10の周囲に位置する個所である周囲部2F、2B、2L、2Rは、後述するようにリテーナ13Aにて各ドア部に接続されている。周囲部2Bはリテーナ13Aにて後方回動ドア部10Aに接続され、周囲部2Lはリテーナ13Aにて左回動ドア部10Lに接続され、周囲部2Rはリテーナ13Aにて右回動ドア部10Rに接続されている。
【0020】
図1図5に示す第1の実施の形態では、ドア部10の車両後方側となるインストルメントパネル2に、物品を収容可能な凹状のトレー3が設けられている。そして、トレー3の側に押し開かれてトレー3を覆うドア部10(10A)が、インストルメントパネル2から分離することなく回動する後方回動ドア部10Aである助手席用エアバッグ装置1Aの例を説明する。
【0021】
第1の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Aのドア部10は、図1及び図2に示すように、後方回動ドア部10Aと、左回動ドア部10Lと、右回動ドア部10Rとを有している。図1に示すドア部10において、点線で示した位置はエアバッグ作動時に破断してインストルメントパネル2から切り離されて分離される位置である破断部10AB、10LB、10RBを示している。また一点鎖線で示した位置はエアバッグ作動時に破断することなく接続が維持されて折り曲げられる位置である接続部10AA、10LA、10RAを示している。後述するように、破断部10AB、10LB、10RBにおけるインストルメントパネル2の裏面には比較的深い溝等である深脆弱部が設けられており、接続部10AA、10LA、10RAにおけるインストルメントパネル2の裏面には比較的浅い溝等である浅脆弱部が設けられている。
【0022】
後方回動ドア部10Aは、助手席用エアバッグ装置1Aが作動時に、トレー3の側に押し開かれるドア部である。後方回動ドア部10Aの車両前後方向の長さ及び車両左右方向の長さは、トレー3の車両前後方向の長さ及び車両左右方向の長さよりも長く設定されており、後方回動ドア部10Aの大きさは、トレー3の全体を覆うことが可能な大きさに設定されている。図1に示すように、後方回動ドア部10Aにおいて、トレー3に近い側の縁部は接続部10AA、トレー3から遠い側の縁部は破断部10AB、車両左側の縁部は破断部10LB、車両右側の縁部は破断部10RB、とされている。図2に示すように、押し開かれた後方回動ドア部10Aは、インストルメントパネル2から分離されずに接続が維持され、接続部10AAを回動軸として車両後方側へ回動してトレー3の全体を覆う。
【0023】
左回動ドア部10Lは、助手席用エアバッグ装置1Aが作動時に、車両左側に押し開かれるドア部である、図1に示すように、左回動ドア部10Lにおいて、車両左側の縁部は接続部10LA、トレー3から遠い側の縁部は破断部10AB、車両右側の縁部は破断部10LB、とされている。図2に示すように、押し開かれた左回動ドア部10Lは、インストルメントパネル2から分離されずに接続が維持され、接続部10LA(図1参照)を回動軸として車両左側へ回動する。
【0024】
右回動ドア部10Rは、助手席用エアバッグ装置1Aが作動時に、車両右側に押し開かれるドア部である、図1に示すように、右回動ドア部10Rにおいて、車両右側の縁部は接続部10RA、トレー3から遠い側の縁部は破断部10AB、車両左側の縁部は破断部10RB、とされている。図2に示すように、押し開かれた右回動ドア部10Rは、インストルメントパネル2から分離されずに接続が維持され、接続部10RA(図1参照)を回動軸として車両右側へ回動する。
【0025】
なお、図6図10に示す第2の実施の形態では、車両前後方向に開くドア部として後方分離ドア部10Bと前方回動ドア部10Cの2つのドア部を有しているが、図1図5に示す第1の実施の形態では、車両前後方向に開くドア部は後方回動ドア部10Aの1つである。このため、後方回動ドア部10Aは、車両前後方向の長さがより長く設定されており、押し開かれた際にインストルメントパネル2から分離しなくても、トレー3の全体を覆うことが可能な充分な大きさを有している。
【0026】
<第1の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Aがドア部を押し開く様子(図3図5)>
図3は、図1のIII-III断面を示しており、図3図5は、助手席用エアバッグ装置1Aが動作した際、膨張したエアバッグ20Aがドア部10を押し開き、押し開かれたドア部10がトレー3を覆う様子を示している。図3は、助手席用エアバッグ装置1Aが作動する前の状態を示しており、ドア部10が閉状態の場合を示している。図4は、図3の状態から助手席用エアバッグ装置1Aが作動して膨張したエアバッグ20Aがドア部10の破断部10ABを破断して開口部10Zからエアバッグ20Aが飛び出し、接続部10AAを回動軸としてドア部10が途中まで押し開かれた状態を示している。図5は、図4の状態から、更にエアバッグ20Aが膨張し、接続部10AAを回動軸として押し開かれたドア部10が、インストルメントパネル2の表面に接するまで回動してトレー3を覆った状態を示している。なお図3図5における符号5はフロントウィンドシールドである。
【0027】
図3に示すように、インストルメントパネル2は、表皮部材が被せられた発泡樹脂等の比較的柔らかい層であるクッション層11Aと、比較的硬い樹脂の層であるベース層12Aの2層が接合されて形成されている。ドア部10の裏面と、ドア部10に隣接するインストルメントパネル2の裏面(周囲部2B、2F)には、リテーナ13Aが接合されている。リテーナ13Aは比較的柔らかく容易に変形する、しなやか、かつ、丈夫な樹脂であり、図4及び図5に示すように、押し開かれたドア部10が回動した際のヒンジとして機能するとともに、ドア部10の接続部10AA(ドア部10の回動軸となる縁部)がインストルメントパネル2から分離することを防止している。
【0028】
図3図5に示すように、リテーナ13Aは、ドア部10の裏面との対向面、及びドア部10に隣接するインストルメントパネル2の裏面との対向面(周囲部2B、2Fとの対向面)に複数の凸状の接合部13Bを有している。リテーナ13Aは、当該接合部13Bにて、ドア部10の裏面、及びドア部10の周囲におけるインストルメントパネル2の裏面の一部である周囲部2B、2Fに接合されて、ドア部10とインストルメントパネル2とを連結している。またリテーナ13Aは、下方に向かって立設されてエアバッグユニット20の周囲を囲う側壁13Dを有している。エアバッグユニット20は、側壁13Dに囲まれた空間に収容されている。
【0029】
ドア部10は、エアバッグユニット20の上方のインストルメントパネル2に設定されている。図3図5に示すドア部10は、図1に示す後方回動ドア部10Aであり、トレー3に近い側の縁部は図1に示す接続部10AAであり、トレー3から遠い側の縁部は図1に示す破断部10ABである。
【0030】
接続部10AAにおけるインストルメントパネル2の裏面には、例えばベース層12Aの深さとされた比較的浅い溝または切込みの浅脆弱部MSが設けられている。また破断部10ABにおけるインストルメントパネル2の裏面には、例えばクッション層11Aの途中までの深さとされた比較的深い溝または切込みの深脆弱部MLが設けられている。また図5に示すように、押し開かれたドア部10が、インストルメントパネル2の表面の屈曲部(図5の例では、トレー3におけるドア部10に近い側の縁部3B)に当たるドア部10の屈曲対向位置10ACには、浅脆弱部MS(脆弱部に相当)が設けられている。
【0031】
また図3に示すように、ドア部10における接続部10AAの位置のリテーナ13Aには、浅脆弱部MSを跨ぐように略U字状の湾曲部13Cが設けられている。図3図5に示すように、略U状の湾曲部13Cの一方端の側はドア部10に接続され、他方端の側はインストルメントパネル2(ドア部10の接続部10AAに隣接している周囲部2B)に接続されている。つまり、湾曲部13Cの両端は、ドア部10(後方回動ドア部10A)と周囲部2Bにそれぞれ接続されている。湾曲部13Cの長さは、図5に示すように、ドア部10が押し開かれてインストルメントパネル2の表面に接した際に、ちょうど延びきって開口部10Zにおけるインストルメントパネル2の縁部とドア部10の接続部10AAの縁部にほぼ接する長さに設定されている。
【0032】
助手席用エアバッグ装置1Aが作動前の図3に示す状態から、助手席用エアバッグ装置1Aが作動すると、図4に示すように、エアバッグユニット20からエアバッグ20Aが飛び出して膨張していき、ドア部10(後方回動ドア部10A)を押し開く。ドア部10(後方回動ドア部10A)における接続部10AAは、浅脆弱部MSによってインストルメントパネル2から分離することなく接続が維持され、押し開かれるドア部10(後方回動ドア部10A)の回動軸となる。ドア部10(後方回動ドア部10A)における破断部10ABは、膨張したエアバッグ20Aの押圧力によって深脆弱部MLが破断されてインストルメントパネル2から分離される。
【0033】
図4に示す状態から、エアバッグ20Aが更に膨張すると、図5に示すように、ドア部10(後方回動ドア部10A)は、図3に示す状態から車両後方側へほぼ180[°]開いてインストルメントパネル2の表面に接触するとともにトレー3を覆う。ドア部10(後方回動ドア部10A)の接続部10AAは、リテーナ13A(リテーナ13Aの湾曲部13C)によってインストルメントパネル2からの分離が防止され、インストルメントパネル2との接続状態が維持されている。
【0034】
また図5に示すように、押し開かれたドア部10(後方回動ドア部10A)におけるインストルメントパネル2の表面の屈曲部2K(図1図2参照)に対向する位置となる屈曲対向位置10ACには、浅脆弱部MSが設けられている。このため、図5に示すように、押し開かれてインストルメントパネル2に接したドア部10(後方回動ドア部10A)は、屈曲部2Kの位置(屈曲対向位置10AC)にて屈曲する。図5に示すように、接続部10AAから屈曲部2Kまでの面を覆うドア部10(後方回動ドア部10A)の面と、屈曲部2Kから、トレー3におけるドア部10から遠い側の縁部3Aまでを覆う(つまりトレー3の全体を覆う)ドア部10の面は、同一平面ではなくインストルメントパネル2の表面の屈曲に沿うように屈曲している。つまり、押し開かれた後方回動ドア部10Aは、接続部10AAから、トレー3における後方回動ドア部10Aから遠い側の縁部(縁部3A)に至る、インストルメントパネル2の表面に沿って、屈曲対向位置10ACの浅脆弱部MS(脆弱部に相当)にて屈曲する(接続部10AAを始点、縁部3Aを終点とするインストルメントパネル2の表面に沿って屈曲する)。このように、ドア部10(後方回動ドア部10A)には、肉薄化された脆弱部(屈曲対向位置10ACに設けられた浅脆弱部MS)が設けられている。そしてドア部10(後方回動ドア部10A)は、助手席用エアバッグ装置1Aが作動した際における脆弱部(屈曲対向位置10ACに設けられた浅脆弱部MS)の変形により、インストルメントパネル2の表面に沿った形状へ変形する。
【0035】
図5に示すように、押し開かれたドア部10(後方回動ドア部10A)がトレー3の全体を覆うとともに屈曲するのでトレー3とドア部10との隙間が小さくなり、エアバッグ20Aがトレー3に入り込むことを、より適切に防止することができる。また、助手席用エアバッグの作動が開始されてからエアバッグ20Aの展開が完了するまでの時間は約数10[ms]程度の一瞬であり、この一瞬でトレー3の全体を覆うことができるので、トレー3内の物品が飛散することを防止できる。
【0036】
なお、図5において、接続部10AAから屈曲部2Kまでの面と、屈曲部2Kから、トレー3におけるドア部10から遠い側の縁部3Aまでの面とによる角度(図3中の角度θ1)が所定角度よりも小さい場合は、ドア部10を屈曲させなくてもよい(屈曲対向位置10ACへの浅脆弱部MSを省略してもよい)。
【0037】
<第2の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Bの周囲の外観(図6図7)>
図1図5に示す第1の実施の形態では、車両前後方向に押し開かれるドア部10が、後方回動ドア部10Aの1つのみである。このため、トレー3の側に押し開かれるドア部10(後方回動ドア部10A)における車両前後方向の長さが比較的長く、当該ドア部10(後方回動ドア部10A)をインストルメントパネル2に接続させたまま回動させることでトレー3の全体を覆うことができる。
【0038】
図6図10に示す第2の実施の形態では、車両前後方向に押し開かれるドア部10が、後方分離ドア部10Bと前方回動ドア部10Cの2つである点が第1の実施の形態とは異なる。このため、トレー3の側に押し開かれるドア部10(後方分離ドア部10B)における車両前後方向の長さが比較的短く、当該ドア部10(後方分離ドア部10B)をインストルメントパネル2に接続させたまま回動させた場合、トレー3を覆いきれない。そこで、押し開かれたドア部10(後方分離ドア部10B)をインストルメントパネル2から分離して、トレー3へ届くようにリテーナ14Aを用いて延ばす点も第1の実施の形態とは異なる。以下、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0039】
図6はエアバッグが展開する前であってドア部10が閉状態の場合を示しており、図7はエアバッグが展開されてドア部10が押し開かれた開状態(エアバッグの図示は省略)の場合を示している。図6に示すように、後方分離ドア部10Bにおいて、トレー3に近い側の縁部は破断部10BB、トレー3から遠い側の縁部は破断部10BC、車両左側の縁部は破断部10LB、車両右側の縁部は破断部10RB、とされている。図7に示すように、押し開かれた後方分離ドア部10Bは、インストルメントパネル2から分離されてリテーナ14Aによってトレー3を覆う車両後方側の位置まで延ばされる。
【0040】
また図6に示すように、前方回動ドア部10Cにおいて、トレー3に近い側の縁部は破断部10BC、トレー3から遠い側の縁部は接続部10CA、車両左側の縁部は破断部10LB、車両右側の縁部は破断部10RB、とされている。図7に示すように、押し開かれた前方回動ドア部10Cは、インストルメントパネル2から分離されずに接続状態が維持されて接続部10CA(図6参照)を回動軸として車両前方側へ回動する。
【0041】
<第2の実施の形態の助手席用エアバッグ装置1Bがドア部を押し開く様子(図8図10)>
図8は、図6のVIII-VIII断面を示しており、図8図10は、助手席用エアバッグ装置1Bが動作した際、膨張したエアバッグ20Aがドア部10を押し開き、押し開かれたドア部10がトレー3を覆う様子を示している。図8は、助手席用エアバッグ装置1Bが作動する前の状態を示しており、ドア部10が閉状態の場合を示している。図9は、図8の状態から助手席用エアバッグ装置1Bが作動して膨張したエアバッグ20Aがドア部10の破断部10BB、10BC(及び破断部10LB、10RB(図6参照))を破断して開口部10Zからエアバッグ20Aが飛び出し、インストルメントパネル2から分離されたドア部10(後方分離ドア部10B)が途中まで押し開かれた状態を示している。図10は、図9の状態から、更にエアバッグ20Aが膨張し、押し開かれてインストルメントパネル2から分離したドア部10(後方分離ドア部10B)が、リテーナ14Aによってトレー3を覆う位置まで延ばされてトレー3を覆った状態を示している。
【0042】
図8に示すように、後方分離ドア部10Bの裏面と、後方分離ドア部10Bに隣接するインストルメントパネル2の裏面は、リテーナ14Aに設けられた複数の凸状の接合部14Bにてリテーナ14Aに接続されている。リテーナ14Aは、後方分離ドア部10Bとインストルメントパネル2とを連結している(リテーナ14Aは、後方分離ドア部10Bと周囲部2Bとを連結(接続)している)。同様に、図8に示すように、前方回動ドア部10Cの裏面と、前方回動ドア部10Cに隣接するインストルメントパネル2の裏面は、リテーナ15Aに設けられた複数の凸状の接合部15Bにてリテーナ15Aに接続されている。リテーナ15Aは、前方回動ドア部10Cとインストルメントパネル2とを連結している(リテーナ15Aは、前方回動ドア部10Cと周囲部2Fとを連結(接続)している)。
【0043】
図8に示すように、破断部10BBにおけるインストルメントパネル2の裏面には、例えばクッション層11Aの途中までの深さとされた比較的深い溝または切込みの深脆弱部MLが設けられている。また破断部10BCにおけるインストルメントパネル2の裏面には、同様に、深脆弱部MLが設けられている。また接続部10CAにおけるインストルメントパネル2の裏面には、例えばベース層12Aの深さとされた比較的浅い溝または切込みの浅脆弱部MSが設けられている。
【0044】
また図8に示すように、後方分離ドア部10Bにおける破断部10BBの位置のリテーナ14Aには、深脆弱部MLを跨ぐように略U字状の湾曲部14Cが設けられている。図8図10に示すように、略U状の湾曲部14Cの一方端の側は後方分離ドア部10Bに接続され、他方端の側はインストルメントパネル2(後方分離ドア部10Bの破断部10BBに隣接している周囲部2B)に接続されている。つまり、湾曲部14Cの両端は、後方分離ドア部10Bと周囲部2Bにそれぞれ接続されている。また湾曲部15Cの両端は、前方回動ドア部10Cと周囲部2Fにそれぞれ接続されている。湾曲部14Cの長さは、図10に示すように、後方分離ドア部10Bが押し開かれて車両後方側へ分離した後、インストルメントパネル2の表面に接した際に、分離した後方分離ドア部10Bがトレー3の全体を覆うことが可能となる長さに設定されている。
【0045】
助手席用エアバッグ装置1Bが作動前の図8に示す状態から、助手席用エアバッグ装置1Bが作動すると、図9に示すように、エアバッグユニット20からエアバッグ20Aが飛び出して膨張していき、ドア部10(後方分離ドア部10Bと前方回動ドア部10C)を押し開く。後方分離ドア部10Bにおける破断部10BB、10BCは、膨張したエアバッグ20Aの押圧力によって深脆弱部MLが破断されてインストルメントパネル2から分離される。また前方回動ドア部10Cにおける破断部10BCは、上記のとおり膨張したエアバッグ20Aの押圧力によって深脆弱部MLが破断されてインストルメントパネル2から分離される。また前方回動ドア部10Cにおける接続部10CAは、浅脆弱部MSによってインストルメントパネル2から分離することなく接続が維持され、押し開かれる前方回動ドア部10Cの回動軸となる。
【0046】
図9に示す状態から、エアバッグ20Aが更に膨張すると、図10に示すように、後方分離ドア部10Bは、図8に示す状態から車両後方側へほぼ180[°]開いてインストルメントパネル2の表面に接触するとともにトレー3の全体を覆う。リテーナ14Aは、変形した湾曲部14Cによって、車両後方側へ向けて分離された後方分離ドア部10Bを、トレー3の全体を覆うことが可能な位置へと届かせる。このように、トレー3の側へ押し開かれてインストルメントパネル2から分離した後方分離ドア部10Bは、湾曲部14Cの変形を伴った移動の後にトレー3の全体を覆う。また図10に示すように、前方回動ドア部10Cは、図8に示す状態から車両前方側へほぼ180[°]開いてインストルメントパネル2の表面に接する。
【0047】
本発明の、助手席用エアバッグ装置1A、1Bは、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0048】
本実施の形態の説明では、ドア部10は、左回動ドア部10L、右回動ドア部10Rを有する例を説明したが、左回動ドア部10L、右回動ドア部10Rが省略されていてもよい。
【0049】
本実施の形態の説明では、トレー3が、ドア部10の車両後方側に設けられている例を説明したが、トレー3は、ドア部10に対して車両後方側または車両前方側の少なくとも一方の側に設けられていてもよい。そして、トレー3の位置に応じてトレー3の側に押し開かれるドア部を、第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態にて説明したトレーを覆うドア部の構造とすればよい。
【0050】
膨張したエアバッグ20Aによってドア部10が押し開かれた際に破断してインストルメントパネル2から分離される破断部の構造(深脆弱部ML)、押し開かれた際に破断することなくインストルメントパネル2との接続が維持されて折り曲げられる接続部の構造(浅脆弱部MS)は、本実施の形態にて説明した構造に限定されず、種々の構造にて各脆弱部を構成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1A、1B 助手席用エアバッグ装置
2 インストルメントパネル
2B、2F、2L、2R 周囲部
2K 屈曲部
3 トレー
3A、3B 縁部
4 グローブボックス
5 フロントウィンドシールド
10 ドア部
10A 後方回動ドア部
10AA、10LA、10RA 接続部
10AB、10LB、10RB 破断部
10AC 屈曲対向位置
10B 後方分離ドア部
10BB、10BC、10LB、10RB 破断部
10C 前方回動ドア部
10CA 接続部
10L 左回動ドア部
10R 右回動ドア部
10Z 開口部
11A クッション層
12A ベース層
13A、14A、15A リテーナ
13B、14B、15B 接合部
13C、14C、15C 湾曲部
13D、14D、15D 側壁
20 エアバッグユニット
20A エアバッグ
ML 深脆弱部
MS 浅脆弱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10