(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015718
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】既設構造物の点群取得シミュレーション方法、既設構造物の点群取得シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240130BHJP
G06T 15/06 20110101ALI20240130BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240130BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240130BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G06F30/13
G06T15/06
G06F30/20
G01C15/00 104Z
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117975
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】515028827
【氏名又は名称】オフィスケイワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】保田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 透匡
【テーマコード(参考)】
2D059
5B080
5B146
【Fターム(参考)】
2D059GG39
5B080AA14
5B080AA17
5B080AA20
5B080BA00
5B080CA00
5B080FA08
5B080GA00
5B146AA04
5B146DJ11
5B146EA02
5B146EA15
(57)【要約】
【課題】現地での計測機器の設置位置やスキャン回数の最適化が可能な点群取得シミュレーション方法及びシステムを提供する。
【解決手段】既設構造物の疑似的な3Dモデルを用いた、既設構造物の点群取得シミュレーション方法であって、仮想レーザー発射点から直線状に延びる仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定工程(ST3,4)と、仮想レーザーと3Dモデル上の既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出工程(ST7)と、交点座標算出工程(ST7)で算出された複数の交点座標のうち、仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録工程(ST8~10)と、仮想レーザーの照射角度を所定角度変化させて照射角度が2π以上になるまで交点座標算出工程(ST7)及び交点座標記録工程(ST8~10)を実行させる仮想レーザー回転工程(ST12,13)を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから作成された疑似的な3Dモデルを用いた、既設構造物の点群取得シミュレーション方法であって、
前記3Dモデル上の既設構造物から離れた箇所を仮想レーザー発射点として指示されると、前記仮想レーザー発射点から直線状に延びる仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定工程と、
前記仮想レーザー設定工程で設定された照射角度、又はその角度から所定角度変化させた照射角度での仮想レーザーと前記3Dモデル上の既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出工程と、
前記交点座標算出工程で算出された複数の交点座標のうち、前記仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録工程と、
前記仮想レーザーの照射角度を所定角度変化させて照射角度が2π以上になるまで前記交点座標算出工程及び前記交点座標記録工程を実行させる仮想レーザー回転工程と、を備える既設構造物の点群取得シミュレーション方法。
【請求項2】
前記3Dモデル上の既設構造物は、ソリッドモデルを複数の多角形メッシュへと分割され、
前記交点座標算出工程では、前記3Dモデル上の既設構造物の個々のメッシュに対し、前記仮想レーザーとの交点座標を算出することを特徴とする請求項1に記載の既設構造物の点群取得シミュレーション方法。
【請求項3】
前記交点座標算出工程では、前記既設構造物の個々のメッシュに対し前記仮想レーザーとの交点座標が算出され、
前記交点座標記録工程では、算出された複数の交点座標のうち、前記仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録することを特徴とする請求項2に記載の既設構造物の点群取得シミュレーション方法。
【請求項4】
前記メッシュモデルは、3角形メッシュモデルであり、前記仮想レーザー設定工程で個々の3角形メッシュに対し前記仮想レーザーが当たるか否かを判定し、当たらないと判定されると、その仮想レーザーが当たらない3角形メッシュについての前記交点座標算出工程での算出は行わないことを特徴とする請求項2に記載の既設構造物の点群取得シミュレーション方法。
【請求項5】
既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから作成された疑似的な3Dモデルを用いた、コンピュータ上で実行される、既設構造物の点群取得シミュレーションシステムであって、
前記3Dモデル上の既設構造物から離れた箇所を仮想レーザー発射点として指示されると、前記仮想レーザー発射点から直線状に延びる仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定部と、
前記仮想レーザー設定部で設定された照射角度、又はその角度から所定角度変化させた照射角度での仮想レーザーと前記3Dモデル上の既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出部と、
前記交点座標算出部で算出された複数の交点座標のうち、前記仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録部と、
前記レーザーの照射角度が2π以上になるまで、照射角度を所定角度変化させて前記交点座標算出、及び交点座標記録を実行させる仮想レーザー回転部と、を備える既設構造物の点群取得シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁など既設構造物の補修・取替工事を行うときに用いられるシミュレーション方法、シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、数十年前に建設された橋梁等の既設構造物には経年変化による劣化が見られることから、車両の荷重が直接載荷するRC床版の取替工事が進められている。その際に、既設構造物がどのような形状で存在しているかを工事着手前に把握することは、設計・施工の品質確保において重要となる。従って、
図16に示すように、既設橋梁の状態を把握するため、計測機器を用いて既設橋梁の点群データを取得し、その群データから専用の3DCADで既設橋梁を3次元モデルに変換することで、既設構造物の設計図を高精度に作成する事例が増えている。
【0003】
点群データを取得する計測機器として、3Dレーザースキャナが使用されるが、この3Dレーザースキャナは、レーザーを照射するミラーを鉛直方向に回転する機構と、そのミラーを水平方向に回転させる機構とから構成されており、機器から直接見える範囲を360度計測することが可能なものである。一方でこの3Dレーザースキャナでは、死角となる範囲は点群が取得できないため、3Dレーザースキャナを移動させながら複数箇所で点群データを取得し統合することで、必要範囲の点群データを取得することとなる。
【0004】
3Dレーザースキャナを用いて橋梁のように数百メートルにもおよぶ土木構造物に対して計測を行う場合、設計図面から3Dレーザースキャナをどこに設置すれば必要な点群データを取得できるかを事前に検討する必要がある。そして検討後、決定された複数の位置でスキャンを実施して、得られた点群を統合し、全体の点群データを作成して補修・取替工事の設計に利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この3Dレーザースキャナでは、鋼橋のように多くの薄肉部材から成る構造物は計測機器の位置をどこに設置すれば必要な点群データを取得できるかを事前に検討するには設計図面だけでは困難である。これは、
図9に示すように、鋼橋の場合、主桁下フランジや横構ブレースなどが3Dレーザースキャナの死角となるからである。
【0006】
そして、点群データ取得後の3Dモデリング作業時に必要な点群がない場合は、現地で再計測を行う必要があるため、必要以上に多くの箇所をスキャンすることもあり、作業時間とコスト増の要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、現地での計測機器の設置位置やスキャン回数の最適化が可能であり、点群データ取得漏れによる再取得作業を無くすことが可能な既設構造物の点群取得シミュレーション方法、既設構造物の点群取得シミュレーションシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから作成された疑似的な3Dモデルを用いた、既設構造物の点群取得シミュレーション方法であって、前記3Dモデル上の既設構造物から離れた箇所を仮想レ
ーザー発射点として指示されると、前記仮想レーザー発射点から直線状に延びる仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定工程と、前記仮想レーザー設定工程で設定された照射角度、又はその角度から所定角度変化させた照射角度での仮想レーザーと前記3Dモデル上の既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出工程と、前記交点座標算出工程で算出された複数の交点座標のうち、前記仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録工程と、前記仮想レーザーの照射角度を所定角度変化させて照射角度が2π以上になるまで前記交点座標算出工程及び前記交点座標記録工程を実行させる仮想レーザー回転工程と、を備えている。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから作成された疑似的な3Dモデルを用いた、コンピュータ上で実行される、既設構造物の点群取得シミュレーションシステムであって、前記3Dモデル上の既設構造物から離れた箇所を仮想レーザー発射点として指示されると、前記仮想レーザー発射点から直線状に延びる仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定部と、前記仮想レーザー設定部で設定された照射角度、又はその角度から所定角度変化させた照射角度での仮想レーザーと前記3Dモデル上の既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出部と、前記交点座標算出部で算出された複数の交点座標のうち、前記仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録部と、前記レーザーの照射角度が2π以上になるまで、照射角度を所定角度変化させて前記交点座標算出、及び交点座標記録を実行させる仮想レーザー回転部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の既設構造物の点群取得シミュレーション方法、既設構造物の点群取得シミュレーションシステムでは、既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから作成された疑似的な3Dモデルでシミュレーションを行うので、点群データの取得範囲の確認を事前にパソコンで検証でき、現地での計測機器の設置位置やスキャン回数の最適化、取得モレによる再取得作業をなくすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】既設構造物の補修・取替工事の設計手順を示す図である。
【
図3】
図1の設計手順のうち、本発明の実施形態に係る点群取得シミュレーションのフローを示す図である。
【
図4】同上点群取得シミュレーショにおける3Dモデル上の既設構造物図のソリッドモデルを3角形メッシュに分割する様子を示す斜視図である。
【
図5】同上点群取得シミュレーショにおける仮想レーザーの照射角度変化を示す図である。
【
図6】同上点群取得シミュレーショにおける仮想レーザーと既設構造物の交差座標を説明する斜視図である。
【
図7】同上点群取得シミュレーショにおける仮想レーザーで記録可能な交点の範囲を示す断面図である。
【
図8】同上点群取得シミュレーショにおいて取得した点群を統合したイメージ図である。
【
図9】
図8の統合された点群を3Dモデルに重畳した状態を示すイメージ図である。
【
図10】同上点群取得シミュレーショにおける交差座標の算出の事前処理を示す図である。
【
図11】同上点群取得シミュレーショにおける交差座標の算出方法を示す図である。
【
図12】同上点群取得シミュレーショにおける交差座標の算出方法を示す図である。
【
図13】同上点群取得シミュレーショにおける交差座標の算出高速化を示す図である。
【
図14】同上点群取得シミュレーショにおける交差座標の算出高速化を示す図である。
【
図15】
図1の設計手順のうち、本発明の実施形態に係る点群取得シミュレーションシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(既設構造物の補修・取替工事の設計手順)
図1は、既設構造物の補修・取替工事の設計手順を示す。この手順に示すように、まず、補修・取替工事を行う既設構造物の過去の設計図面又はBIM/CIMモデルから疑似的な3Dモデル2を作成し、コンピュータ上で実行されるシミュレーションソフトウェアに読み込ませる(SS1)。この3Dモデル2は、
図2に示すように、ソリッドモデルで作成されている。
【0013】
次に、本発明に係る点群取得シミュレーション1が実行され(SS2)、点群取得シミュレーション1を基に、どのくらいの回数で計測機器をスキャンするか、及び計測機器の配置箇所が決定される(SS3)。そしてステップSS3で決定された複数の3Dレーザースキャナ配置箇所に合わせて現地測量が繰り返され(SS4)、この現地測量で得られた点群を統合し全体の点群データを作成する(SS5)。最後に全体の点群データをもとに3DCADで3Dモデリングが行われ、既設構造物の補修・取替工事の設計図が作成されることとなる(SS6)。
【0014】
(点群取得シミュレーション)
続いて、ステップSS2の本発明に係る点群取得シミュレーション1を
図3~
図14を用いて説明する。
図3は、点群取得シミュレーション1のフローを示す。まず、
図1のステップSS1で作成されたソリッドモデルの3Dモデル2を、
図4に示すように複数の3角形メッシュへと分割する(ST1)。本実施形態では、3角形メッシュへと分割しているが、3角形メッシュに限らず、多角形メッシュであればよい。
【0015】
次に、ステップST2で、事前に計画された箇所であって、3Dモデル2上の既設構造物7から離れた箇所を仮想レーザー発射点として指示されると、仮想レーザーの照射角度に初期値(平面方向θ1=0,縦断方向θ2=0)が代入される。仮想レーザーは、3Dレーザースキャナ8のレーザーを模したものであり、仮想レーザー発射点は、3Dレーザースキャナ8のレーザー発射点を模している。
【0016】
図5に示すように、3Dレーザースキャナ8は、ミラーが鉛直方向に360度かつ水平方向にも360度回転しながらレーザーを照射するものである。具体的には、
図5(a)に示すように、仮想レーザー9は、仮想レーザー発射点10の鉛直方向をZ軸とすると、Z軸周りにΔθ刻みで1周する(平面回転)ことで、仮想レーザー9の方向をΔθ刻みで変化させている。また、
図5(b)に示すように、仮想レーザー9の平面方向をU軸、その法線方向をV軸とし、V軸周りにΔθ刻みで1周する(縦断回転)ことで、仮想レーザー9の方向をΔθ刻みで変化させている。Δθは、平面回転、縦断回転同じ角度でも良く、異なる角度でも良い。本実施形態では、平面回転、縦断回転ともΔθは、0.001ラジア
ンに設定されている。
【0017】
次に、
図3のステップST5で、座標を初期化する。これは、仮想レーザー発射点の座標を原点(x=0,y=0,z=0)とし、全ての3角形メッシュの座標も仮想レーザー
発射点に対応して座標変換を行い、既設構造物の座標系から仮想レーザー発射点の座標系にする。そして、ステップST6で、ステップST1で分割された複数の3角形メッシュのうち、一番最初の3角形メッシュの番号にメッシュ変数iを設定する(i=0)。
【0018】
続いて、メッシュ変数iの番号に合う3角形メッシュと、原点から所定方向に延びる仮想レーザーとの交点座標を算出する(ST7)。そして、算出した結果、交点が有るか否かが判定され(ST8)、交点が無い場合はステップST11へと移行し、交点がある場合は、その交点の座標が、仮想レーザー発射点(原点)から最短距離にあるか判定される(ST9)。
図6に示すように、仮想レーザー9は、複数の3角形メッシュ(j,k)と交差するので、例えば、最短距離でない3角形メッシュ(j)との交点(j)の場合はステップST11へと移行し、最短距離の3角形メッシュ(k)との交点(k)の場合は、その交点座標が記録され(ST10)、ステップST11へと移行する。
【0019】
ステップST11では、メッシュ変数iの値が3角形メッシュの最後の番号であるか判定され、最後の3角形メッシュの番号でない場合は、全ての3角形メッシュで交点座標の算出を行うため、メッシュ変数iを一つインクリメントし、ステップST7へと戻る。メッシュ変数iの値が最後の3角形メッシュの番号である場合は、ステップST10で記録された座標値のアドレスをインクリメントするとともに、メッシュ変数iを一番最初の3角形メッシュの番号に設定して、ステップST12へと移行する。
【0020】
ステップST12では、仮想レーザーの縦断方向の照射角度θ2がθ2>=2πとなっているか判定され、2π以上だとステップST13へと移行する。2π未満であると、仮想レーザーの縦断回転が行われ、
図5(b)に示すように、仮想レーザーの縦断方向の照射角度θ2にΔθ分インクリメントされる(θ2=θ2+Δθ)。そしてステップST5へと戻る。
【0021】
ステップST13では、仮想レーザーの平面方向の照射角度θ1がθ1>=2πとなっているか判定され、2π以上だとステップST14へと移行する。2π未満であると、仮想レーザーの平面回転が行われ、
図5(a)に示すように、仮想レーザーの平面方向の照射角度θ1にΔθ分インクリメントされる(θ1=θ1+Δθ)。そしてステップST4へと戻る。
【0022】
最後にステップST14では、ステップST10で記録された複数の座標値を、ステップST5で仮想レーザー発射点の座標系に変換されているので、既設構造物の座標系の座標値に戻るよう、座標変換を行って終了する。
【0023】
以上のように点群取得シミュレーションで複数の座標値が記録されるが、
図7に示すように、3Dモデル上の既設構造物の仮想レーザーが届かない範囲は、座標値が記録されない。そこで、仮想レーザーが届かない範囲が、既設構造物の補修・取替工事の設計図作成に必要か検討を行い、必要である場合は、仮想レーザー発射点の場所を追加して再度点群取得シミュレーション(ST1~14)を行い、設計図作成に必要な箇所の点群データを取得することとなる。
【0024】
図8は複数回点群取得シミュレーションを行って、取得した点群を統合したイメージ図であり、
図9は、
図8の統合した点群を3Dモデル2に重畳したイメージ図でる。
図9に示すように、複数回点群取得シミュレーションを行っても、下フランジや横構に遮られて点群が取得できない箇所が存在することとなる。この場合、点群が取得できない箇所がなくなるよう、仮想レーザー発射点の位置を検討し、再度点群取得シミュレーションを行うこととなる。
【0025】
点群取得シミュレーション(ST1~14)を繰り返し行い、設計図作成に必要な箇所の点群データ取得が完了すると、
図1のステップSS3での、3Dレーザースキャナの計測数、配置箇所が、点群取得シミュレーションより求まるので、この点群取得シミュレーションの3Dレーザースキャナの計測数、配置箇所に従って、ステップSS4の現地測量を行うこととなる。
【0026】
本発明の実施形態に係る点群取得シミュレーションにより、現況の既設構造物の3次元モデリングに必要な計測箇所を、既設構造物のある現地行って計測せずに知ることができる。従って、従来のように、設計図からスキャン箇所を決定して、現況の既設構造物をスキャンして、点群データの取得漏れが起こり、再計測が必要となることはない。
【0027】
また、点群取得シミュレーション上で、仮想レーザー発射点を様々な場所に配置することにより、どの箇所に配置すると、仮想レーザー発射点の数が最小となるか判別することができ、現地での計測機器の設置位置やスキャン回数の最適化することができる。
【0028】
(仮想レーザーとの交差座標算出)
次に、
図3のステップST7の仮想レーザーとの交差座標算出について、
図10~
図14を用いて詳細に説明する。
【0029】
まず、ステップST2で仮想レーザー発射点が指示されると、
図10に示すような事前準備が点群取得シミュレーション上で行われる。この事前準備では、個々の3角形メッシュに対する小座標変換マトリックス、大座標変換マトリックスが作成される。そして、小座標変換マトリックスで、仮想レーザー発射点を始点、3角形メッシュの一つの頂点を終点とするベクトルを変換して、個々の3角形メッシュそれぞれに対し仮想レーザーと交差するか判定する。仮想レーザーと交差しないと判定された3角形メッシュは、ステップST7の仮想レーザーとの交差座標算出から排除されることとなる。
【0030】
本発明の実施形態に係る点群取得シミュレーションでは、全ての3角形メッシュに対し
、仮想レーザーとの交差座標を算出しても良いし、交差しないと判定された3角形メッシュを削除し、残った3角形メッシュの番号を振り直し、交差する3角形メッシュ全てに対し、仮想レーザーとの交差座標を算出しても良い。
【0031】
次に、
図11及び
図12で示すように、ステップST7の仮想レーザーとの交差座標算出では、仮想レーザーの照射角度θ1,θ2で決定される仮想レーザーの方向点S2を用い、3角形メッシュの一つの頂点を始点、仮想レーザーの方向点S2を終点とするベクトルを小座標変換マトリックスで変換する。そして、事前準備で変換された仮想レーザー発射点を始点、3角形メッシュの一つの頂点を終点とするベクトルR1のZ成分と3角形メッシュの一つの頂点を始点、仮想レーザーの方向点S2を終点とするベクトルR2のZ成分を比較し、同じであれば3角形メッシュと仮想レーザーは平行となるので、交点無しとする。
【0032】
仮想レーザー発射点を始点、3角形メッシュの一つの頂点を終点とするベクトルR1のZ成分と3角形メッシュの一つの頂点を始点、仮想レーザーの方向点S2を終点とするベクトルR2のZ成分が異なる場合は、3角形メッシュと仮想レーザーの交差座標を算出する。そして、交差座標が3角形メッシュ内にあるか判定を行い、3角形メッシュ内にある場合は、その交差座標は、小座標変換マトリックスで変換されているので、交差座標を大座標変換マトリックスで変換することにより、元の座標系に交差座標を戻すこととなる。
【0033】
(交差座標算出の高速化)
ステップST7の仮想レーザーとの交差座標算出では、上述のように行うこととなるが
、交差座標算出を高速化することもできる。
図13~
図14を用いて交差座標の算出高速化を以下説明する。
【0034】
まず、
図13に示すように、事前準備として、
図3のステップST5の座標初期化時で、レーザー発射点の座標系に変換後、3Dモデル上の既設構造物の全オブジェクトに対し、中心の座標値と外接円を作成する。また、3Dモデル上の既設構造物の全3角形メッシュに対し、中心の座標値と外接円を作成する。
【0035】
このような事前準備が完了すると、まず、仮想レーザーと交差する可能性のないオブジェクトについて、交差座標算出をスキップする処理が行われる。具体的には、仮想レーザーの平面ベクトルとオブジェクトの中心までの距離と、外接円の半径の長さが比較され、仮想レーザーの平面ベクトルとオブジェクトの中心までの距離が長い場合は、交差する可能性がないので、そのオブジェクトについて、交差座標算出をスキップする。次に、仮想レーザーと逆方向のモデルについて判定が行われ、仮想レーザーの法線ベクトルとオブジェクトの中心までの距離が、外接円の半径の長さより短い場合は、交差する可能性がないので、そのオブジェクトについても、交差座標算出をスキップすることとなる。
【0036】
オブジェクトについて、交差座標算出をスキップする処理が完了すると、スキップせず残ったオブジェクトについて、
図14に示すように、個々の3角形メッシュ単位で、仮想レーザーと交差する可能性のない3角形メッシュについて、交差座標算出をスキップする処理が行われる。この処理は、オブジェクトの場合と同様に、仮想レーザーの平面ベクトルと3角形メッシュの中心までの距離による判定と、仮想レーザーと逆方向のモデルについての判定が行われる。続いて、仮想レーザーの平面ベクトルと3角形メッシュの法面との判定と、縦断回転時の仮想レーザーのz成分と3角形メッシュの法面との判定が行われ、それぞれ交差なしと判定された3角形メッシュについては、差座標算出をスキップすることとなる。
【0037】
本発明の仮想レーザー設定工程は
図3のステップST3,ST4の処理に相当し、交点座標算出工程は
図3のステップST7に、交点座標記録工程5は
図3のステップST8~ST10に、仮想レーザー回転工程6は
図3のステップST12,ST13の処理に相当することとなる。
【0038】
図15は点群取得シミュレーション1のシステムを示すブロック図である。この点群取得シミュレーションシステム11は、コンピュータで実現されるものであり、演算を行うCPU12と、点群取得シミュレーションプログラム131が格納されるHDD13と、点群取得シミュレーションの実行時に点群取得シミュレーションプログラム131が展開されるRAM14と、入力装置15とで、構成されている。点群取得シミュレーションプログラム131は、入力装置15で仮想レーザーの照射角度に初期値を代入する仮想レーザー設定部3と、仮想レーザーと既設構造物の表面の交点座標を算出する交点座標算出部4と、仮想レーザー発射点から最短距離の交点座標を記録する交点座標記録部5と、照射角度を所定角度変化させる仮想レーザー回転部6と、を備えている。
【0039】
仮想レーザー設定部3は
図3のステップST3,ST4の処理に相当し、交点座標算出部4は
図3のステップST7に、交点座標記録部5は
図3のステップST8~ST10に、仮想レーザー回転部6は
図3のステップST12,ST13の処理に相当することとなる。
【符号の説明】
【0040】
1 点群取得シミュレーション
2 3Dモデル
3 仮想レーザー設定部
4 交点座標算出部
5 交点座標記録部
6 仮想レーザー回転部
7 既設構造物
8 3Dレーザースキャナ
9 仮想レーザー
10 仮想レーザー発射点
11 点群取得シミュレーションシステム
12 CPU
13 HDD
131 点群取得シミュレーションプログラム
14 RAM
15 入力装置
i メッシュ変数