(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157187
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】脱硫装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20241030BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241030BHJP
B01D 53/79 20060101ALI20241030BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241030BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/78 ZAB
B01D53/79
B01D53/14 200
B01D53/18 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071366
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】筑網 圭治
(72)【発明者】
【氏名】折本 敏和
(72)【発明者】
【氏名】中垣内 聡
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC01
4D002BA02
4D002BA05
4D002BA20
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA16
4D002DA70
4D002GA04
4D002GA05
4D002GB05
4D002GB20
4D020AA06
4D020BA02
4D020BA09
4D020BB03
4D020CB25
4D020CC05
4D020DA01
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】脱硫装置の省エネルギ化を図ることを目的とする。
【解決手段】脱硫装置10は、下部に吸収液が吸収液貯留槽11aを有し、内部を排ガスが流通する吸収塔と、吸収塔の内部に設けられ、吸収塔の内部を流通する排ガスに対して吸収液を噴出する吸収液噴出部と、吸収液貯留槽11aに貯留されている吸収液に対して、吸収液と酸化剤とを混合した混合流体を噴射する水流酸化ノズル14と、水流酸化ノズル14に吸収液を供給する分岐ライン16と、水流酸化ノズル14に酸化剤を供給する酸化剤供給系統20と、を備える。酸化剤供給系統20は、ブロワ24aで昇圧した酸化剤を水流酸化ノズル14へ供給する第1供給部21と、大気圧の酸化剤を水流酸化ノズル14へ供給する第2供給部22と、水流酸化ノズル14に対して第1供給部21で酸化剤を供給するか第2供給部22で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に吸収液が貯留する貯留部を有し、内部を排ガスが流通する吸収塔と、
前記吸収塔の内部に設けられ、前記吸収塔の内部を流通する排ガスに対して吸収液を噴出する吸収液噴出部と、
前記貯留部に貯留されている吸収液に対して、吸収液と酸化剤とを混合した混合流体を噴射する噴射部と、
前記噴射部に吸収液を供給する吸収液供給部と、
前記噴射部に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、を備え、
前記酸化剤供給部は、昇圧部で昇圧した酸化剤を前記噴射部へ供給する第1供給部と、大気圧の酸化剤を前記噴射部へ供給する第2供給部と、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給するか前記第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段と、を有する脱硫装置。
【請求項2】
前記噴射部から噴射する酸化剤の必要量に基づいて、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給するか前記第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替えるように前記切替手段を制御する制御部を備える請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項3】
前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合に前記噴射部に供給される酸化剤の量を調整するとともに、前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合に前記噴射部に供給される酸化剤の量を調整する流量調節弁を備え、
前記流量調節弁は、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合と、前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合とでは、酸化剤の流通方向が異なっていて、
前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合又は前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合に、前記流量調節弁に通過させる酸化剤量の指令信号を送る際に、流通方向を整合させる制御部をさらに備える請求項1または請求項2に記載の脱硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱硫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等では、燃焼機器(例えば、ボイラ)で重油や石炭等を燃焼して発生する排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫設備が設けられている。脱硫設備として、吸収塔において排ガスと吸収液(石灰石などのカルシウム化合物を含有する液体)とを接触させて、排ガス中の硫黄酸化物を吸収液に吸収し、接触後の該吸収液を酸化して固液分離することにより石膏を副生する湿式排煙脱硫装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この湿式排煙脱硫装置では、導入される排ガス中の硫黄分(以下「S分」ともいう)である二酸化硫黄(SO2)を吸収液と接触させて、吸収液側にSO2を移行させて、排ガスを浄化している。この吸収液側に移行したSO2は、吸収液中で亜硫酸イオンとなる。
【0004】
湿式排煙脱硫装置は、吸収液中に空気を導入し、吸収液中の亜硫酸イオンを硫酸イオンに酸化させ、その後、吸収液中の硫酸イオンを処理し、例えば石膏として回収する。湿式排煙脱硫装置における酸化態様として、排ガス中の酸素が吸収液中に導入されることで起こる酸化(自然酸化)と、吸収液が貯留する吸収液貯留槽に酸化用空気を供給することで起こる酸化(強制酸化)とがある。
【0005】
湿式排煙脱硫装置は、吸収液中に空気を導入するために、吸収液が貯留する吸収液貯留槽に吸収液とともに酸化用空気を供給する水流酸化装置を備えている。水流酸化装置は、処理対象である排ガス中のS分の量に応じて、酸化用空気の供給量を調整可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、火力発電所等に設けられるボイラ等では、再生可能エネルギによる発電分の変動を吸収するために負荷を変動させる場合や、二酸化炭素を削減するためにバイオマス等を石炭と混焼させる場合がある。ボイラ等は、これらの場合に、従来(例えば、設計当初)に計画されているよりも低負荷での運転が求められることがある。ボイラ等が低負荷で運転される場合、ボイラ等から排出される排ガス中の酸素比率が高くなる。このため、湿式排煙脱硫装置において、自然酸化が多く行われることから、水流酸化装置からの酸化用空気の必要量(以下、「必要空気量」と称する。)が少量となったり、水流酸化装置からの酸化用空気が不要となったりすることが考えられる。
【0008】
特許文献1では、ブロワを使用し、昇圧した空気を水流酸化装置に多量に供給している。したがって、計画S分が高い場合(すなわち、脱硫率が高く、処理するS分の量が多く、必要空気量が多い場合)には、好適に脱硫を行うことができる。一方で、計画S分が低い場合(すなわち、脱硫率が低く、処理するS分の量が少なく、必要空気量が少ない場合)には、ブロワで昇圧した空気を廃棄することとなる。このため、ブロワの駆動力が無駄となることから、脱硫装置のエネルギ効率が低減する可能性があった。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、省エネルギ化を図ることができる脱硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の脱硫装置は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る脱硫装置は、下部に吸収液が貯留する貯留部を有し、内部を排ガスが流通する吸収塔と、前記吸収塔の内部に設けられ、前記吸収塔の内部を流通する排ガスに対して吸収液を噴出する吸収液噴出部と、前記貯留部に貯留されている吸収液に対して、吸収液と酸化剤とを混合した混合流体を噴射する噴射部と、前記噴射部に吸収液を供給する吸収液供給部と、前記噴射部に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、を備え、前記酸化剤供給部は、昇圧部で昇圧した酸化剤を前記噴射部へ供給する第1供給部と、大気圧の酸化剤を前記噴射部へ供給する第2供給部と、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給するか前記第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、脱硫装置の省エネルギ化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る湿式排煙脱硫装置を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る湿式排煙脱硫装置に設けられる空気供給部を示す概略図であって、昇圧空気供給モードで運転した状態を示している。
【
図3】本開示の実施形態に係る湿式排煙脱硫装置に設けられる空気供給部を示す概略図であって、大気圧空気供給モードで運転した状態を示している。
【
図4】本開示の実施形態に係る脱硫装置における脱硫量と必要空気量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る脱硫装置の一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る湿式排煙脱硫装置を示す概略図である。
図1に示すように、湿式排煙脱硫装置(以下「脱硫装置」という)は、ボイラ等の燃焼機器(図示省略)で燃料を燃焼して生成される排ガスが供給され、供給された排ガスから硫黄酸化物を低減、除去する。
なお、湿式排煙脱硫装置における酸化態様として、排ガス中の酸素が吸収液中に導入されることで起こる酸化(自然酸化)と、吸収液が貯留する吸収液貯留槽11aに酸化用空気を供給することで起こる酸化(強制酸化)とがある。本実施形態の脱硫装置10でも、自然酸化と強制酸化とが行われる。自然酸化は、
図1の破線で示す領域Aで行われる。
【0015】
脱硫装置10は、吸収塔11と、排ガス導入部12と、吸収液噴出部13と、複数の水流酸化ノズル(噴射部)14と、吸収液循環ライン(吸収液供給部)15と、分岐ライン(吸収液供給部)16と、空気供給系統(酸化剤供給系統)20と、を備えている。本実施形態に係る脱硫装置10は、石灰石膏法の脱硫装置であり、吸収液として例えば石灰石スラリー(水に石灰石粉末を溶解させた水溶液)が用いられている。
【0016】
吸収塔11は、排ガス中の硫黄酸化物を吸収液で除去する。吸収塔11は、筒状の部材であって、内部に空間が形成されている。吸収塔11は、下部に設けられる吸収液貯留槽11aと吸収液貯留槽11aの上方に設けられる排ガス通路11bと、を有する。
吸収液貯留槽11aは、吸収液噴出部13から噴出され落下した吸収液を貯留する。
排ガス通路11bは、吸収液貯留槽11aの鉛直方向上方に設けられている。排ガス通路11bは、排ガスが下方から上方へ向かって通過する。このとき、吸収液噴出部13から噴出された吸収液が排ガス中の硫黄酸化物を吸収する。硫黄酸化物を吸収した吸収液は、落下して吸収液貯留槽11aに貯留される。
【0017】
排ガス導入部12は、吸収塔11のうち吸収液貯留槽11aよりも上方に接続されている。すなわち、排ガス導入部12は、吸収塔11の一側の排ガス通路11bの側壁に接続されている。排ガス導入部12は、内部を燃焼機器で生成された排ガスが流通する。排ガス導入部12は、排ガスを吸収塔11の内部へ導入する。
【0018】
吸収液噴出部13は、排ガス通路11bの内部に配置されている。吸収液循環ライン15から吸収液が供給される母管13aと、母管13aの上面に設けられ吸収液を上方へ噴出する複数の噴霧部13bと、を有する。母管13aは、水平方向に延在している。複数の噴霧部13bは、母管13aの延在方向に沿って、所定の間隔で並んで配置されている。
【0019】
水流酸化ノズル14は、複数設けられている。水流酸化ノズル14は、空気供給系統20から空気が供給される。水流酸化ノズル14は、吸収液循環ライン15を流通する吸収液の一部が分岐ライン16を介して供給される。水流酸化ノズル14は、空気と吸収液とを混合した流体を吸収液貯留槽11a内に噴射する。
【0020】
水流酸化ノズル14は、内部に吸収液が流通する第1流通部14aと、第1流通部14aの内部に設けられるオリフィス14bと、第1流通部14aのオリフィス14bよりも下流側に接続され内部に空気が流通する第2流通部14cと、を有する。第1流通部14aの内部には吸収液が流通する液体供給通路が形成されている。液体供給通路に、オリフィス14bが設けられている。このため、液体供給通路内に流入した吸収液の流れは、オリフィス14bの下流域に負圧領域を発生し、縮流効果(エジェクタ効果)によって第1流通部14aから供給される空気を吸引しつつ、その先端側からジェット噴流として吸収液と空気との混合流体Mを噴射する。これにより水流酸化ノズル14は、空気の気泡を含む混合流体Mを吸収液貯留槽11a内に供給する。
【0021】
吸収液循環ライン15は、上流端が吸収塔11の側壁部に接続されている。吸収液循環ライン15は、吸収液貯留槽11aと吸収液噴出部13の母管13aとを接続している。吸収液循環ライン15には、循環ポンプPが設けられている。
図1では、循環ポンプPを1つのみ示しているが、循環ポンプPは複数配置されていてもよい。吸収液循環ライン15には、循環ポンプPよりも下流側に固液分離部(図示省略)が設けられている。固液分離部は、吸収液と石膏とを分離する。固液分離部は、分離した石膏を系外に排出する。固液分離部で分離された吸収液は、吸収液循環ライン15を介して吸収液噴出部13へ導かれる。
吸収液循環ライン15は、吸収液貯留槽11aに貯留されている吸収液を吸収液噴出部13へ導く。
【0022】
分岐ライン16は、吸収液循環ライン15の固液分離部よりも下流側から分岐している。分岐ライン16は、吸収液循環ライン15の途中位置と、水流酸化ノズル14とを接続している。分岐ライン16は、吸収液循環ライン15内を流通する吸収液の一部を水流酸化ノズル14へ導いている。
【0023】
次に、空気供給系統20について、
図2及び
図3を用いて詳細に説明する。
空気供給系統20は、
図2に示すように、水流酸化ノズル14に空気を供給する空気供給ライン23と、空気供給ライン23から分岐して各水流酸化ノズル14へ空気を供給する複数の分岐供給ライン23aと、を有する。空気供給ライン23には、内部を流通する空気の量を計測する流量計23bが設けられている。
【0024】
また、空気供給系統20は、空気供給ライン23に昇圧した空気を供給する第1空気ライン24を複数有する。2つの第1空気ライン24は下流部で合流している。第1空気ライン24の下流端は、空気供給ライン23の上流端に接続されている。複数の第1空気ライン24は、同様の構成をしているので、以下では第行として1つの第1空気ライン24について説明する。
【0025】
第1空気ライン24は、空気供給装置26から供給された空気が流通する。第1空気ライン24は、上流側から順番に、ブロワ(昇圧部)24a,圧力計24b,逆止弁24c及び第1自動弁24dが設けられている。
【0026】
ブロワ24aは、空気を昇圧し、下流側へ向かって空気を流通させる。圧力計24bは、第1空気ライン24内を流通する空気の圧力を計測する。逆止弁24cは、第1空気ライン24内を流通する空気の逆流を防止する。第1自動弁24dは、後述する制御装置30によって制御される。制御装置30は、第1自動弁24dの全閉状態と全開状態とを切り替えることで、第1空気ライン24内を空気が流通する状態と流通しない状態とを切り替える。
【0027】
また、空気供給系統20は、第1空気ライン24から供給された空気の一部を排ガス導入部12内に導く第2空気ライン25を有する。第2空気ライン25の一端は、第1空気ライン24と空気供給ライン23との接続部分に接続されている。第2空気ライン25の他端は、排ガス導入部12に接続されている。
【0028】
第2空気ライン25は、一端側から順番に、流量調節弁25a及び第2自動弁25bが設けられている。流量調節弁25aは、制御装置30によって開度を制御される。制御装置30は、流量調節弁25aの開度を調節することで、第2空気ライン25内を流通する空気の量を調節する。第2自動弁25bは、後述する制御装置30によって制御される。制御装置30は、第2自動弁25bの全閉状態と全開状態とを切り替えることで、第2空気ライン25内を空気が流通する状態と流通しない状態とを切り替える。
【0029】
また、空気供給系統20は、第2空気ライン25の流量調節弁25aと第2自動弁25bとの間に接続する第3空気ライン27を有する。第3空気ライン27は、内部に大気から導入された空気が流通する。第3空気ライン27には、ブロワ等の空気を昇圧する装置は設けられていない。このため、第3空気ライン27は、内部に大気圧の空気が流通する。
【0030】
第3空気ライン27には、第3自動弁27aが設けられている。第3自動弁27aは、後述する制御装置30によって制御される。制御装置30は、第3自動弁27aの全閉状態と全開状態とを切り替えることで、第3空気ライン27内を空気が流通する状態と流通しない状態とを切り替える。
【0031】
本実施形態では、第1空気ライン24と、空気供給ライン23と、がブロワ24aで昇圧した空気を水流酸化ノズル14へ供給する第1供給部21に含まれる。
また、第3空気ライン27と、第2空気ライン25と、空気供給ライン23と、が大気圧の空気を水流酸化ノズル14へ供給する第2供給部22に含まれる。
また、第1自動弁24dと、第2自動弁25bと、第3自動弁27aとが、水流酸化ノズル14に対して第1供給部21で空気を供給するか第2供給部22で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段に含まれる。
【0032】
また、脱硫装置10は、制御装置(制御部)30を備えている。
【0033】
制御装置30(Controller)は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御装置30は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0034】
制御装置30は、流量計23b及び圧力計24bが計測した情報を取得する。また、制御装置30は、第1自動弁24d,第2自動弁25b,第3自動弁27a及び流量調節弁25aを制御する。
【0035】
制御装置30は、脱硫装置10の運転モードとして、昇圧した空気を水流酸化ノズル14へ供給する昇圧空気供給モードと、大気圧の空気を水流酸化ノズル14へ供給する大気圧空気供給モードと、を有する。
【0036】
制御装置30は、水流酸化ノズル14から噴霧する空気(酸化用空気)として必要な量の空気量(必要空気量)を中央制御部(図示省略)から受信し、当該必要空気量に基づいて、昇圧空気供給モードと大気圧空気供給モードとを選択する。具体的には、例えば、必要空気量が所定の閾値以上の場合に昇圧空気供給モードを選択し、必要空気量が所定の閾値よりも少ない場合に大気圧空気供給モードを選択してもよい。
【0037】
必要空気量は、排ガス中の硫黄分(以下「S分」ともいう)の量に基づいて決定する。換言すれば、脱硫装置10で処理するS分の量に基づいて決定する。
なお、必要空気量は、FF(フィードフォワード)で算出してもよい。具体的には、例えば、脱硫装置10の入口の排ガス量と、脱硫入口の二酸化硫黄(SO2)濃度とに基づいて算出してもよい。また、ボイラ等の燃焼機器の負荷や燃焼機器における空気の流量と、脱硫入口の二酸化硫黄(SO2)濃度とに基づいて算出してもよい。
また、必要空気量は、FB(フィードバック)で決定してもよい。具体的には、吸収塔11内の酸化還元電位(Oxidation Redaction Potential(ORP))を監視し、所定の酸化還元電位域になる様に必要空気量を決定してもよい。
【0038】
次に、昇圧空気供給モード及び大気圧空気供給モードについて、
図2及び
図3を用いて詳細に説明する。
昇圧空気供給モードでは、第1供給部21で水流酸化ノズル14へ空気を供給する。具体的には、昇圧空気供給モードでは、
図2に示すように、制御装置30は、第1自動弁24d及び第2自動弁25bを全開状態とする。また、第3自動弁27aを全閉状態とする。また、制御装置30は、ブロワ24aを駆動状態とする。ブロワ24aは一定の回転数で駆動する。ブロワ24aの駆動により、ブロワ24aで昇圧された空気が第1空気ライン24及び空気供給ライン23を介して水流酸化ノズル14へ供給され、吸収液貯留槽11aに噴霧される。
【0039】
また、昇圧空気供給モードでは、制御装置30は、必要空気量に基づいて、流量調節弁25aの開度を調節する。すなわち、必要空気量が水流酸化ノズル14へ供給されるように流量調節弁25aの開度を調整する。必要空気量を超えた空気は、第2空気ライン25を介して排ガス導入部12に排出される。
昇圧空気供給モードでは、空気を昇圧している分、大気圧空気供給モードよりも多くの空気を水流酸化ノズル14へ供給することができる。
【0040】
大気圧空気供給モードでは、第2供給部22で水流酸化ノズル14へ空気を供給する。具体的には、大気圧空気供給モードでは、
図3に示すように、制御装置30は、第1自動弁24d及び第2自動弁25bを全閉状態とする。また、第3自動弁27aを全開状態とする。また、制御装置30は、ブロワ24aを停止状態とする。これにより、水流酸化ノズル14のエジェクタ効果で、第3空気ライン27に大気が流入する。第3空気ライン27に流入した大気(空気)は、引き続き水流酸化ノズル14のエジェクタ効果で水流酸化ノズル14に向かって引っ張られる。これにより、第3空気ライン27,第2空気ライン25及び空気供給ライン23を介して、大気圧の空気が水流酸化ノズル14へ供給され、吸収液貯留槽11aに噴霧される。
【0041】
また、大気圧空気供給モードでは、制御装置30は、必要空気量に基づいて、流量調節弁25aの開度を調節する。すなわち、必要空気量が水流酸化ノズル14へ供給されるように流量調節弁25aの開度を調整する。
【0042】
次に、本実施形態に係る脱硫装置10における吸収S分量(脱硫量)と必要空気量とブロワ24aの運転台数との関係について
図4を用いて説明する。
図4に示すように、脱硫量が多くなるにしたがって、必要空気量も増大する。また、本実施形態に係る脱硫装置10は、脱硫量がゼロからS1よりも低い値の場合には、稼働するブロワ24aは0台とされる。すなわち、脱硫装置10は、大気圧空気供給モードで運転する。また、脱硫装置10は、脱硫量がS1以上であって、S2よりも低い値の場合には、ブロワ24aを1台稼働する。すなわち、脱硫装置10は、昇圧空気供給モードで運転する。また、脱硫装置10は、脱硫量がS2以上の場合には、ブロワ24aを2台稼働する。すなわち、脱硫装置10は、昇圧空気供給モードで運転する。
【0043】
なお、本実施形態では、昇圧空気供給モードと、大気圧空気供給モードとでは、空気の供給源が変わる。このため、流量調節弁25aにおける空気の流れが逆となる。具体的には、昇圧空気供給モードでは、排ガス導入部12へ向かう方向に流れる(
図2及び
図3の紙面右側に向かうように流れる)。一方で、大気圧空気供給モードでは、排ガス導入部12から離れる方向に流れる(
図2及び
図3の紙面左側に向かうように流れる)。すなわち、流通方向が異なっている。
【0044】
したがって、水流酸化ノズル14への空気量を増やすには、大気圧空気供給モードでは流量調節弁25aの開度を大きくし、昇圧空気供給モードでは流量調節弁25aの開度を小さくするという逆の動きが必要となる。このため、大気圧空気供給モード又は昇圧空気供給モードでは、流量調節弁25aに信号(通過させる空気量の指令信号)を送る際に、制御装置は流通方向を整合させる。具体的には、例えば、流量調節弁25aへの信号(通過させる空気量の指令信号)のプラスとマイナスと逆転させる。詳細には、例えば、昇圧空気供給モードで流れる空気の方向をプラスとした場合には、通常であれば大気圧空気供給モードで流れる空気の方向はマイナスの空気量と判断する可能性があるが、本実施形態では、大気圧空気供給モードにおいて流量調節弁25aへの信号(通過させる空気量の指令信号)のプラスとマイナスと逆転させる。すなわち、大気圧空気供給モードにおいても空気の流通量をプラスとする。これにより、1台の流量調節弁25aで、大気圧空気供給モードと昇圧空気供給モードの両方において、空気流量の調節を行うことができる。したがって、脱硫装置10の部品点数を低減することができる。
【0045】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、空気供給系統20は、ブロワ24aで昇圧した空気を水流酸化ノズル14へ供給する第1供給部21と、大気圧の空気を水流酸化ノズル14へ供給する第2供給部22と、水流酸化ノズル14に対して第1供給部21で空気を供給するか第2供給部22で空気を供給するかを切り替える切替手段と、を有する。第1供給部21で空気を供給する場合には、ブロワ24aで昇圧している分、第2供給部22で供給する場合と比較して、多くの空気を水流酸化ノズル14へ供給することができる。これにより、排ガス中の硫黄分(S分)に応じて(換言すれば、水流酸化ノズル14の必要空気量に応じて)、第1供給部21で空気を供給するか、第2供給部22で空気を供給するかを切替手段で切り替えることができる。したがって、排ガス中の硫黄分に応じた適切な空気量を水流酸化ノズル14に供給することができるので、吸収塔11において適切に排ガスを脱硫することができる。
【0046】
また、排ガス中のS分が少ない場合(換言すれば、水流酸化ノズル14の必要空気量が少ない場合)には、第2供給部22によって、大気圧の空気を水流酸化ノズル14へ供給することができる。これにより、常にブロワ24aで昇圧した空気を供給する場合と比較して、ブロワ24aの動力を低減することができる。したがって、脱硫装置10の省エネルギ化を図ることができる。
【0047】
本実施形態では、制御装置30が、水流酸化ノズル14から噴射する空気の必要量に基づいて、水流酸化ノズル14に対して第1供給部21で空気を供給するか第2供給部22で空気を供給するかを切り替えるように切替手段を制御する。これにより、水流酸化ノズル14の必要酸化剤量に応じた量の空気を水流酸化ノズル14に供給することができる。
【0048】
本実施形態では、制御装置は、水流酸化ノズル14に対して第1供給部21で空気を供給する場合又は水流酸化ノズル14に対して第2供給部22で空気を供給する場合に、流量調節弁25aに通過させる空気量の指令信号を送る際に、流通方向を整合させる。これにより、1台の流量調節弁25aで、第1供給部21で空気を供給する場合と第2供給部22で空気を供給する場合の両方において、空気流量の調節を行うことができる。したがって、脱硫装置10の部品点数を低減することができる。
【0049】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0050】
[変形例]
例えば、第3空気ライン27に設けられる第3自動弁27aの代わりに流量調節弁を設けるとともに、第2空気ライン25に設けられる第2自動弁25bの代わりに流量調節弁を設けるとともに、流量調節弁25aを省いてもよい。
この場合には、昇圧空気供給モードにおいては、第2自動弁25bの代わりに設けた流量調節弁で、昇圧された空気の水流酸化ノズル14へ供給される空気量と排ガス導入部12へ排出される空気量とを調整する。
また、大気圧空気供給モードにおいては、第3自動弁27aの代わりに設けた流量調節弁で、水流酸化ノズル14へ供給される空気量を調整する。
このように、流量調節弁25aがなくとも、昇圧空気供給モード及び大気圧空気供給モードの両方において、水流酸化ノズル14へ供給される空気量を調整することができる。
したがって、本変形によれば、流量調節弁25aを省くことができるので、部品点数を低減することができる。
本変形例は、特に、脱硫装置10を新設する場合に有効である。
【0051】
以上説明した実施形態に記載の脱硫装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る脱硫装置は、下部に吸収液が貯留する貯留部(11a)を有し、内部を排ガスが流通する吸収塔(11)と、前記吸収塔の内部に設けられ、前記吸収塔の内部を流通する排ガスに対して吸収液を噴出する吸収液噴出部(13)と、前記貯留部に貯留されている吸収液に対して、吸収液と酸化剤とを混合した混合流体(M)を噴射する噴射部(14)と、前記噴射部に吸収液を供給する吸収液供給部(15,16)と、前記噴射部に酸化剤を供給する酸化剤供給部(20)と、を備え、前記酸化剤供給部は、昇圧部(24a)で昇圧した酸化剤を前記噴射部へ供給する第1供給部(21)と、大気圧の酸化剤を前記噴射部へ供給する第2供給部(22)と、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給するか前記第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段(24d,25b,27a)と、を有する。
【0052】
上記構成では、酸化剤供給部は、昇圧部で昇圧した酸化剤を噴射部へ供給する第1供給部と、大気圧の酸化剤を噴射部へ供給する第2供給部と、噴射部に対して第1供給部で酸化剤を供給するか第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替える切替手段と、を有する。第1供給部で酸化剤を供給する場合には、昇圧部で昇圧している分、第2供給部で供給する場合と比較して、多くの酸化剤を噴射部へ供給することができる。これにより、排ガス中の硫黄分(S分)に応じて(換言すれば、噴射部の必要酸化剤量に応じて)、第1供給部で酸化剤を供給するか、第2供給部で酸化剤を供給するかを切替手段で切り替えることができる。したがって、排ガス中の硫黄分に応じた適切な酸化剤量を噴射部に供給することができるので、吸収塔において適切に排ガスを脱硫することができる。
また、排ガス中のS分が少ない場合(換言すれば、噴射部の必要酸化剤量が少ない場合)には、第2供給部によって、大気圧の酸化剤を噴射部へ供給することができる。これにより、常に昇圧部で昇圧した酸化剤を供給する場合と比較して、昇圧部の動力を低減することができる。したがって、脱硫装置の省エネルギ化を図ることができる。
【0053】
また、本開示の第2態様に係る脱硫装置は、上記第1態様において、前記噴射部から噴射する酸化剤の必要量に基づいて、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給するか前記第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替えるように前記切替手段を制御する制御部(30)を備える。
【0054】
上記構成では、制御部が、噴射部から噴射する酸化剤の必要量に基づいて、噴射部に対して第1供給部で酸化剤を供給するか第2供給部で酸化剤を供給するかを切り替えるように切替手段を制御する。これにより、噴射部の必要酸化剤量に応じた量の酸化剤を噴射部に供給することができる。
なお、制御部は、例えば、酸化剤の必要量が所定の閾値以上の場合に噴射部に対して第1供給部で酸化剤を供給し、酸化剤の必要量が所定の閾値よりも少ない場合に噴射部に対して第2供給部で酸化剤を供給するように切替手段を制御してもよい。
【0055】
また、本開示の第3態様に係る脱硫装置は、上記第1態様または第2態様において、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合に前記噴射部に供給される酸化剤の量を調整するとともに、前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合に前記噴射部に供給される酸化剤の量を調整する流量調節弁(25a)を備え、前記流量調節弁は、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合と、前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合とでは、酸化剤の流通方向が異なっていて、前記噴射部に対して前記第1供給部で酸化剤を供給する場合又は前記噴射部に対して前記第2供給部で酸化剤を供給する場合に、前記流量調節弁に通過させる酸化剤量の指令信号を送る際に、流通方向を整合させる制御部(30)をさらに備える。
【0056】
上記構成では、制御装置は、噴射部に対して第1供給部で酸化剤を供給する場合又は噴射部に対して第2供給部で酸化剤を供給する場合に、流量調節弁に通過させる酸化剤量の指令信号を送る際に、流通方向を整合させる。これにより、1台の流量調節弁で、第1供給部で酸化剤を供給する場合と第2供給部で酸化剤を供給する場合の両方において、空気流量の調節を行うことができる。したがって、脱硫装置の部品点数を低減することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 :脱硫装置
11 :吸収塔
11a :吸収液貯留槽(貯留部)
11b :排ガス通路
12 :排ガス導入部
13 :吸収液噴出部
13a :母管
13b :噴霧部
14 :水流酸化ノズル(噴射部)
14a :第1流通部
14b :オリフィス
14c :第2流通部
15 :吸収液循環ライン(吸収液供給部)
16 :分岐ライン(吸収液供給部)
20 :空気供給系統(酸化剤供給系統)
21 :第1供給部
22 :第2供給部
23 :空気供給ライン
23a :分岐供給ライン
23b :流量計
24 :第1空気ライン
24a :ブロワ(昇圧部)
24b :圧力計
24c :逆止弁
24d :第1自動弁
25 :第2空気ライン
25a :流量調節弁
25b :第2自動弁
26 :空気供給装置
27 :第3空気ライン
27a :第3自動弁
30 :制御装置(制御部)
A :領域
M :混合流体
P :循環ポンプ