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特開2024-15719金属板用表面保護シート、および表面保護シート付き金属板
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  • 特開-金属板用表面保護シート、および表面保護シート付き金属板 図1
  • 特開-金属板用表面保護シート、および表面保護シート付き金属板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015719
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】金属板用表面保護シート、および表面保護シート付き金属板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240130BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240130BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B15/08 E
C09J7/38
C09J7/21
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117976
(22)【出願日】2022-07-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年1月26日~28日 東京ビックサイトにおいて開催されたコンバーティングテクノロジー総合展2022で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年1月19日 ウェブサイトで公開(https://www.ipros.jp/,https://premium.ipros.jp/)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年2月4日 株式会社フェニックスエンジニアリングに対して公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月2日 日亜化学工業株式会社に対して公開
(71)【出願人】
【識別番号】516084088
【氏名又は名称】株式会社城山
(71)【出願人】
【識別番号】393021875
【氏名又は名称】リンレイテープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 良一
(72)【発明者】
【氏名】太田 篤
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AB00A
4F100AB10A
4F100AB31A
4F100AK25C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05C
4F100DG10B
4F100EJ91B
4F100JK08
4F100JK17
4F100JL09
4F100YY00B
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB02
4J004CC05
4J004FA04
(57)【要約】
【課題】基材シートとして紙を積極的に適用したうえで実用可能な金属板用表面保護シート、および、この表面保護シートを用いた表面保護シート付き金属板を提供する。
【解決手段】金属板12の少なくとも一方の面に貼付される金属板用表面保護シート10であって、クレープ紙からなる基材シート13と、前記基材シート13の一方の面に形成された粘着性を有する粘着層14と、を備え、JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、前記基材シート13に含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が10%以上である、金属板用表面保護シート10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも一方の面に貼付される表面保護シートであって、
クレープ紙からなる基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成された粘着性を有する粘着層と、を備え、
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、前記基材シートに含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が10%以上である、金属板用表面保護シート。
【請求項2】
前記金属板に貼付した状態で、温度40℃、相対湿度50%の雰囲気中、出力が75Wのキセノンランプを照射する耐候性試験において、前記基材シートが破断するまでの時間が200時間以上である、請求項1に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項3】
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された粘着力が2.10N/cm以下である、請求項2に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項4】
厚さが0.095~0.140mmである、請求項3に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項5】
前記粘着層は、アクリル系粘着剤からなる請求項4に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属板用表面保護シートと、
前記表面保護シートが少なくとも一方の面に貼付された金属板と、
を備えた、表面保護シート付き金属板。
【請求項7】
前記金属板の一方の面に前記表面保護シートが貼着された状態でコイル巻きされている、請求項6に記載の表面保護シート付き金属板。
【請求項8】
前記金属板がアルミニウム、またはアルミニウム合金である、請求項6に記載の表面保護シート付き金属板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板用表面保護シート、および表面保護シート付き金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス板、アルミニウム板等の金属板を加工、運搬等する際には、金属板の表面に傷等がつかないように、表面保護シートを仮貼付して金属板の表面の保護を図っている。このような金属板用表面保護シートとしては、基材シートの片面に粘着層を設けた表面保護シートが用いられている。このような表面保護シートの基材シートとしては、従来、合成樹脂が主に用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-193106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境保護の観点から、基材シートの原料として、石油を原料とした合成樹脂から天然由来の素材への転換が望まれている。天然由来の素材の一例として紙が考えられる。
【0005】
しかしながら、基材シートの原料として紙を用いた場合に、従来の合成樹脂製の基材シートを用いた場合に比べて、表面保護シートとして要求される特性が維持できるか否か不明である。むしろ、合成樹脂フィルムと紙とを比較すると、一般的には伸び率等の伸縮性については紙の方が劣ると考えられ、単純に合成樹脂から紙への変換は困難であると考えられる。そのため、金属板用表面保護シートとして、基材シートとして合成樹脂から紙に変更する場合に必要な要件等を明確にすることが求められていた。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、基材シートとして紙を積極的に適用したうえで実用可能な金属板用表面保護シート、および、この表面保護シートを用いた表面保護シート付き金属板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
金属板の少なくとも一方の面に貼付される表面保護シートであって、
クレープ紙からなる基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成された粘着性を有する粘着層と、を備え、
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、前記基材シートに含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が10%以上である、金属板用表面保護シート。
【0008】
また、本発明の他の態様は、上記の金属板用表面保護シートと、
前記表面保護シートが少なくとも一方の面に貼付された金属板と、
を備えた表面保護シート付き金属板にある。
【発明の効果】
【0009】
上記表面保護シートは、基材シートとして、紙の一種であるクレープ紙を積極的に採用している。そして、クレープ紙の選択により、表面保護シートの上記特定の測定方法による引張伸び率が10%以上となるよう調整してある。これにより、上記表面保護シートを貼着した金属板をコイル巻きする場合、曲げ加工する場合等においても、基材シートが金属板に追従して伸びるので、表面保護シートが破れることを抑制することできる。それゆえ、上記表面保護シートは、従来の合成樹脂製の基材シートからなる表面保護シートに代えて、実使用することが可能となる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、基材シートとして紙を積極的に適用したうえで実用可能な金属板用表面保護シート、および、この表面保護シートを用いた表面保護シート付き金属板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る金属板用表面保護シートを示す断面図である。
図2】実施形態1に係る表面保護シート付き金属板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態1に係る金属板用表面保護シート10、および表面保護シート付き金属板11について図1図2を参照して説明する。本形態に係る表面保護シート付き金属板11は、金属板12と、金属板用表面保護シート10と、を備える。本形態に係る金属板用表面保護シート10は、基材シート13と、粘着層14と、を備える。
【0013】
1.金属板用表面保護シート10
図1に示すように、金属板用表面保護シート10は、クレープ紙からなる基材シート13と、基材シート13の一方の面に形成された粘着性を有する粘着層14と、を有する。
【0014】
本形態の基材シート13を構成するクレープ紙は、主として木材パルプを原料とした天然繊維が使用される。基材シート13の表面には、複数の皺が形成されている。基材シート13には、木材パルプにマニラ麻等の天然パルプ短繊維、レーヨン短繊維、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフイン、ポリエステル、アクリル等の合成短繊維が混抄されてもよい。
【0015】
本形態の基材シート13の坪量は、乾燥質量で40~90g/mが好ましく、60~80g/mがより好ましい。また、本形態の基材シート13の厚みは、0.060~0.300mmが好ましく、0.080~0.140mmがより好ましい。
【0016】
本形態の基材シート13に対しては、含浸加工を行ってもよい。基材シート13に含浸剤を浸透させることにより、基材シート13の物性を向上させることができる。
【0017】
基材シート13にゴムを含浸させることにより、基材シート13の強度を向上させることができる。含浸剤は、溶剤(水を含む)に溶解、または分散させて用いられ、好ましくはエマルジョンの形態で用いられる。含浸剤の成分としては、例えば、天然ゴム、スチレンーブタジエン共重合ゴム等、任意のゴムを適宜に選択できる。
【0018】
基材シート13に紫外線反射材、または紫外線吸収剤を含浸させることにより、基材シート13が紫外線により劣化することを抑制できる。紫外線反射材としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等、任意の紫外線反射材を適宜に選択できる。紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸フェニル等のサリチル酸誘導体、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系のもの等、任意の紫外線吸収剤を適宜に選択できる。
【0019】
基材シート13のうち、粘着層14と反対側の面に剥離剤層を設けてもよい。剥離剤層を設けることにより、ロール状に巻回した金属板用表面保護シート10の剥離または展開をスムーズにするのに有効である。
【0020】
本形態の粘着層14は、上記粘着層14は、アクリル系粘着剤からなることが好ましい。この場合には、耐候性、耐熱性、及び耐溶剤性に優れた粘着層14を形成することができる。本形態の粘着層14の厚みは、0.005mm~0.050mmが好ましく、0.010mm~0.030mmがより好ましい。
【0021】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、及びそれらと共重合可能なビニルモノマーを重合して得ることができる。重合方法としては、ラジカル開始剤を用いた溶液重合又はエマルション重合が好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等から選ばれる1種以上を採用することができ、側鎖のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、ヒドロキシルプロピルアクリレート、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノアルキルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレート等がある。これらのビニルモノマーは、その(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとの共重合体が、常温で粘着剤として機能するように、適宜選択することができる。通常、そのガラス転移点は-60~0℃である。
【0024】
粘着層14は、上記の粘着剤をそのまま用いて形成してもよいし、上記の粘着剤に、公知の各種架橋剤、粘着付与剤を上記アクリル系粘着剤に配合して上記粘着層14を形成してもよい。また、必要に応じて、増粘剤、造膜助剤、消泡剤を配合することもできる。
【0025】
粘着層14は、基材シート13の一方の面に、粘着剤を塗工することにより形成することができる。塗工は、周知の塗工方法を採用することができる。例えば、リバースロールコーター、バーコーター、ナイフコーター等により、基材シート13の一方の面に粘着剤を塗布し、乾燥することにより粘着層14を形成することができる。
【0026】
本形態の金属板用表面保護シート10は、JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、基材シート13に含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が、10%以上である。引張伸び率が10%より大きいことにより、金属板用表面保護シート10が貼付された金属板12がコイル巻きされた場合や、プレス加工された場合でも、基材シート13が金属板12に追従して伸びるので、金属板用表面保護シート10が破れることが抑制される。
【0027】
本形態の表面シートは、金属板12に貼付した状態で、温度40℃、相対湿度50%の雰囲気中、出力が75Wのキセノンランプを照射する耐候性試験において、基材シート13が破断するまでの時間が200時間以上である。基材シート13が破断するまでの時間が200時間以上であることから、金属板用表面保護シート10は優れた耐候性を有する。
【0028】
本形態の金属板用表面保護シート10は、JIS Z0237(2000)に基づいて測定された粘着力が2.10N/cm以下である。粘着力が2.10N/cm以下であることにより、金属板用表面保護シート10を金属板12から剥がす際に、大きな力を必要としない。これにより、金属板12から金属板用表面保護シート10を剥がす作業の効率が向上する。
【0029】
本形態の金属板用表面保護シート10の厚さは、0.095~0.140mmである。このように金属板用表面保護シート10は比較的に薄いので、製造コストを低減させることができる。
【0030】
本形態の金属板用表面保護シート10は、基材シート13がロール状または円筒状に巻回された巻回物を巻き戻しながら基材シート13を供給し、基材シート13の一方の面に粘着剤を公知の手法で塗布して金属板用表面保護シート10を形成し、粘着層14を内側に巻き込むように適当な芯材を中にして金属板用表面保護シート10を巻回することによって得られる巻回物の形状で提供されてもよい。
【0031】
2.表面保護シート付き金属板11
図2に示すように、本形態の表面保護シート付き金属板11は、上記した金属板用表面保護シート10と、金属板用表面保護シート10が少なくとも一方の面に貼付された金属板12と、を備える。本形態の金属板12としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、銅、銅合金等、任意の金属を適宜に選択できる。アルミニウムまたはアルミニウム合金は、その表面に陽極酸化などの特殊な表面処理をしない無垢の状態では、その軟らかさと自然酸化皮膜の薄さのために、取り扱い時に傷が付き易い。このため、アルミニウムまたはアルミニウム合金に本形態の金属板用表面保護シート10を適用することは特に有効である。
【0032】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム材としては、JISH4000に規定の1000系合金、3000系合金、あるいは5000系合金のいずれかであることが好ましい。1000系合金としては、JISA1050、JISA1100、JISA1200が好ましい。また、3000系合金としては。JISA3003、JISA3004、JISA3104が好ましい。5000系合金としては、JISA5005、JISA5052,JISA5N01が好ましい。これらのアルミニウム材を用いることにより、アルミニウム材料の面からも保護シート付き金属板12のプレス加工を行い易くさせ、プレス加工性を向上させることができる。アルミニウム材の質別は、JISH0001に規定のH材からO材まで幅広く採用できる。
【0033】
アルミニウム材は、プレス加工の容易性という観点から、板厚0.1~20mmの板材であることが好ましい。上記アルミニウム材の板厚は、2~10mmがさらに好ましい。
【0034】
本形態の保護シート付き金属板12は、金属板12の一方の面に金属板用表面保護シート10が貼着された状態でコイル巻きされている構成としてもよい。
【0035】
アルミニウム材は、コイル巻きの容易性という観点から、板厚0.1~3mmの板材であることが好ましい。上記アルミニウム材の板厚は、0.5~2mmがさらに好ましい。
【0036】
本形態の表面保護シート付き金属板11は、金属板12の一方の面に金属板用表面保護シート10が貼付された状態でコイル巻きされたコイル材として供給されてもよいし、また、長方形状に切断された金属板12の一方の面に金属板用表面保護シート10が貼付された板材として供給されてもよい。
【0037】
表面保護シート付き金属板11は、例えばIT機器等の電気・電子機器用筐体、モール等の自動車部品等、任意の金属板材に適用することができる。
【0038】
3.実施例および比較例
続いて、本形態の実施例および比較例について以下に説明する。本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
木材パルプを原料として抄紙し、クレープ加工を施すことにより、乾燥質量65g/m(厚み0.125mm)の基材シート13を得た。この基材の一方の面にアクリル系粘着剤(ブチルアクリレート)を塗布することにより金属板用表面保護シート10を得た。金属板用表面保護シート10の厚みは0.135mmであった。
【0040】
(実施例2)
木材パルプを原料として抄紙し、クレープ加工を施すことにより、乾燥質量65g/m(厚み0.125mm)の基材シート13を得た。この基材の一方の面にアクリル系粘着剤(ブチルアクリレート)を塗布することにより金属板用表面保護シート10を得た。金属板用表面保護シート10の厚みは0.130mmであった。
【0041】
(実施例3)
木材パルプを原料として抄紙し、クレープ加工を施すことにより、乾燥質量65g/m(厚み0.125mm)の基材シート13を得た。この基材の一方の面にアクリル系粘着剤(ブチルアクリレート)を塗布することにより金属板用表面保護シート10を得た。金属板用表面保護シート10の厚みは0.130mmであった。
【0042】
(実施例4)
木材パルプを原料として抄紙し、クレープ加工を施すことにより、乾燥質量80g/m(厚み0.275mm)の基材シート13を得た。この基材の一方の面にアクリル系粘着剤(ブチルアクリレート)を塗布することにより金属板用表面保護シート10を得た。金属板用表面保護シート10の厚みは0.280mmであった。
【0043】
(比較例1)
比較例1として、和紙タイプのアプリケーションテープ(リンレイテープ製)を使用した。比較例1の基材シートの厚みは0.060mmであり、乾燥質量は80g/mであった。比較例1の厚みは0.090mmであった。
【0044】
(比較例2)
比較例2として、ポリエチレンフィルムの一方の面に粘着層が形成された表面保護シート(Nitto製、SPV M-6030)を使用した。比較例2の厚みは0.060mmであった。
【0045】
(引張試験)
JIS Z0237(2000)に準拠して、実施例1~4および比較例1~2について引張試験を行った。引張試験に供した試料については、温度が23℃、相対湿度が50%の標準状態の雰囲気中に24時間以上放置してエージングを行った。
【0046】
試験片は、幅25mm、長さ約150mmのものを3枚採取した。このとき、実施例1~4については、基材シート13を構成する繊維の流れ方向が、試験片の長手方向に沿うようにして試験片を採取した。
【0047】
引張試験機のつかみ間隔または試験片の標線間隔を100mmとし、300mm/minの速さで引張り、試験片が切断するまでの荷重および伸びを測定した。伸び率の結果を表1にまとめた。
【0048】
(耐候性試験)
表面にアルマイト処理が施されたアルミニウム材に、実施例1~4および比較例1~2に係る金属板用表面保護シート10を貼付することにより試験片を作成した。アルミニウム材の板厚は1.5mm、幅は100mm、長さは100mmであった。アルミニウム材は、JIS A1100、質別F材であった。
【0049】
温度40℃、相対湿度50%の雰囲気中、試験片に、75Wのキセノンライトを照射した。72時間ごとに、金属板用表面保護シート10と、アルミニウム材とが剥離していないかを確認した。評価結果を表1にまとめた。
【0050】
(90°曲げ試験)
JIS A1100、質別F材、板厚は1.5mm、幅は100mm、長さは200mmであるアルミニウム材に、実施例1~4および比較例1~2に係る金属板用表面保護シート10を貼付することにより試験片を作成した。試験片は、各例ごとに2つ作製した。
【0051】
試験片を、金属板用表面保護シート10が外側にして、アルミニウム材の板面の角度が90°になるように曲げた。試験片の一方は、基材シート13を構成する繊維の流れ方向と直角に曲げ、試験片の他方は、基材シート13を構成する繊維の流れ方向に沿う方向に曲げた。試験片に貼付された金属板用表面保護シート10が破断するか否かを目視により判定した。試験結果を表1にまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
引張試験における伸び率については、実施例1は12%、実施例2は13%、実施例3は12%、実施例4は32%であった。また、比較例1は9%であり、比較例2は249%以上であった。
【0054】
90°曲げ試験の結果、実施例1~4の金属板用表面保護シート10には、破断が認められなかった。繊維の流れ方向と直角に曲げた試験片についても、繊維の流れ方向に沿って曲げた試験片についても、破断は認められなかった。
【0055】
また、比較例2の表面保護シートについても、破断は認められなかった。しかし、比較例1の表面保護シートについては、破断が認められた。
【0056】
比較例2については、伸び率が249%ということから、アルミニウム材の変形に追従して変形できたためと考えられる。
【0057】
また、比較例1については、伸び率が9%ということから、アルミニウム材の変形に追従できなかったため、破断したと考えられる。
【0058】
これに対し、実施例1~4については、伸び率が12~32%と、比較例1よりも伸び率が大きいことから、アルミニウム材の変形に追従して変形できたため、破断しなかったと考えられる。
【0059】
耐候性試験については、実施例1が360時間で破断し、実施例2が288時間で破断した。実施例3および4については、360時間が経過しても破断が認められなかったため、試験を中止した。
【0060】
比較例1は72時間で破断した。比較例2は336時間が経過した時点で破断が認められなかったので試験を中止した。
【0061】
実施例1~4は、比較例1に比べて優れた耐候性を有することが分かった。また、実施例1、3および4については、比較例2と同等以上の耐候性を示した。なお、実施例2の結果である288時間は、気温および湿度が高い夏場を想定した加速実験であって、約4か月の期間に相当するものであり、耐候性としては十分高い。
【0062】
実施例3の粘着力は2.10N/cmである。このように実施例3の金属板用表面保護シート10はアルミニウム材との粘着力が大きいので、上記した耐候性試験において360時間以上という優れた耐候性を示したと考えられる。
【0063】
実施例2の粘着力は0.90N/cmなので、実施例2の金属板用表面保護シート10は、アルミニウム材から金属板用表面保護シート10を剥離する際に必要とされる力が小さくて済む。これにより、実施例2の金属板用表面保護シート10によれば、アルミニウム材から金属板用表面保護シート10を剥がす際の作業効率を向上させることができる。
【0064】
実施例1の粘着力は1.30N/cmであり、実施例2と実施例3の中間なので、耐候性と、アルミニウム材からの剥離力とのバランスに優れる。
【0065】
実施例4の粘着力は1.19N/cmであるが、厚みが0.280mmであるので、アルミニウム材からの剥離力が小さい割に、耐候性については360時間以上と優れた値となっている。
【0066】
実施例1、2および3の厚みは0.130~0.135mmであるので、軽量化、低コスト化に優れる。
【0067】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0068】
基材シート13のうち、粘着層14が形成された側と反対側の面に、インクジェット方式等の公知の手法により印刷される構成としてもよい。基材シート13への印刷は、金属板12に貼付する以前の段階で実施されてもよいし、金属板12に貼付された以後の段階で実施されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…金属板用表面保護シート、11…表面保護シート付き金属板、12…金属板、13…基材シート、14…粘着層
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも一方の面に貼付される表面保護シートであって、
クレープ紙からなる基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成された粘着性を有する粘着層と、を備え、
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、前記基材シートに含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が10%以上であり、
前記金属板に貼付した状態で、温度40℃、相対湿度50%の雰囲気中、出力が75Wのキセノンランプを照射する耐候性試験において、前記基材シートが破断するまでの時間が200時間以上である、金属板用表面保護シート。
【請求項2】
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された粘着力が2.10N/cm以下である、請求項に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項3】
厚さが0.095~0.140mmである、請求項に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項4】
前記粘着層は、アクリル系粘着剤からなる請求項に記載の金属板用表面保護シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属板用表面保護シートと、
前記表面保護シートが少なくとも一方の面に貼付された金属板と、
を備えた、表面保護シート付き金属板。
【請求項6】
前記金属板の一方の面に前記表面保護シートが貼着された状態でコイル巻きされている、請求項に記載の表面保護シート付き金属板。
【請求項7】
前記金属板がアルミニウム、またはアルミニウム合金である、請求項に記載の表面保護シート付き金属板。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様は、
金属板の少なくとも一方の面に貼付される表面保護シートであって、
クレープ紙からなる基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成された粘着性を有する粘着層と、を備え、
JIS Z0237(2000)に基づいて測定された、前記基材シートに含まれる繊維の流れ方向と平行な引張伸び率が10%以上であり、
前記金属板に貼付した状態で、温度40℃、相対湿度50%の雰囲気中、出力が75Wのキセノンランプを照射する耐候性試験において、前記基材シートが破断するまでの時間が200時間以上である、金属板用表面保護シート。