(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157194
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】エレベータの脱レール検出システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B66B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071379
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA11
3F304EA02
3F304EA07
3F304EB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地震等によりエレベータの釣合おもりがレールから外れたことを検出するエレベータの脱レール検出システムに関するものである。昇降路内で保守点検作業をする際でも、導電線の電流遮断回路を遮断すること無しに、釣合おもりの脱レールの検出が可能なエレベータの脱レール検出システムを提供する。
【解決手段】エレベータの脱レール検出システムは、昇降路内を昇降する昇降体の移動空間と干渉しない空間に設置され、釣合おもり3の昇降を案内するガイドレール4,4aと平行に張架されるワイヤ12と、釣合おもり3に設置されワイヤ12が内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサ16と、釣合おもりに設置されワイヤに接触しているか否かを検出するワイヤ接触検出センサ17と、貫通検出センサ16とワイヤ接触検出センサ17とから出力された信号に基いて脱レール判定処理をおこなう脱レール判定処理手段とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する昇降体の移動空間と干渉しない空間に設置され、釣合おもりの昇降を案内するガイドレールと平行に張架されるワイヤと、
前記釣合おもりに設置され前記ワイヤが内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサと、
前記釣合おもりに設置され前記ワイヤに接触しているか否かを検出するワイヤ接触検出センサと、
前記貫通検出センサと前記ワイヤ接触検出センサとから出力された信号に基いて脱レール判定処理をおこなう脱レール判定処理手段と、
を備えるエレベータの脱レール検出システム。
【請求項2】
前記貫通検出センサは、
前記ワイヤの貫通を検出したときに、貫通検出信号の出力をONし、
前記ワイヤの貫通を検出していないときに、前記貫通検出信号の出力をOFFし、
前記ワイヤ接触検出センサは、
前記ワイヤの接触を検出したときに、ワイヤ接触検出信号の出力をOFFし、
前記ワイヤの接触を検出していないときに、前記ワイヤ接触検出信号の出力をONし、
前記脱レール判定処理手段は、
前記貫通検出信号の出力と前記ワイヤ接触検出信号の出力との少なくとも一方がOFFのときに脱レールと判定することを特徴とする請求項1に記載の脱レール検出システム。
【請求項3】
前記貫通検出センサと前記ワイヤ接触検出センサとは、
前記釣合おもりの上部及び下部に設置されること
を特徴とする請求項1または2に記載の脱レール検出システム。
【請求項4】
前記脱レール判定処理手段は、
脱レールと判定したときに、
前記昇降体の昇降を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の脱レール検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地震等によりエレベータの釣合おもりがレールから外れたことを検出するエレベータの脱レール検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの脱レール検出システムは釣合おもりの昇降方向と平行に昇降路内に設けられた導電線に電流を流し、導電線と接触子との接触を検出したり、導電線に流れる電流が発生させる磁界の磁界強度が許容範囲にあるか否かを判定したりしていた。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/183084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの脱レール検出システムは、昇降路内に設けられた導電線に電流が流れているために、安全性確保のために導電線の電流遮断回路を設け、昇降路内で保守点検作業をする際にはこの電流遮断回路を遮断するといった課題がある。
【0005】
本開示は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、昇降路内で保守点検作業をする際でも、導電線の電流遮断回路を遮断すること無しに、釣合おもりの脱レールの検出が可能なエレベータの脱レール検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータの脱レール検出システムは、昇降路内を昇降する昇降体の移動空間と干渉しない空間に設置され、釣合おもりの昇降を案内するガイドレールと平行に張架されるワイヤと、釣合おもりに設置されワイヤが内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサと、釣合おもりに設置されワイヤに接触しているか否かを検出するワイヤ接触検出センサと、貫通検出センサとワイヤ接触検出センサとから出力された信号に基いて脱レール判定処理をおこなう脱レール判定処理手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、昇降路内で保守点検作業をする際でも、安全性確保のための導電線の電流遮断回路を遮断すること無しに、釣合おもりの脱レールの検出が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるエレベータの全体構成図である。
【
図2】実施の形態1におけるエレベータの昇降路の釣合おもりを、それぞれ昇降路の上部から見た図と昇降路の側面から見た図とである。
【
図3】実施の形態1におけるエレベータの脱レール検出システムのブロック図である。
【
図4】実施の形態1におけるエレベータの脱レール検出システムのフローチャートである。
【
図5】実施の形態1におけるエレベータの脱レール検出システムの判定結果組み合わせの表である。
【
図6】実施の形態2におけるエレベータの昇降路の釣合おもりを、それぞれ昇降路の上部から見た図と昇降路の側面から見た図とである。
【
図7】実施の形態2におけるエレベータの脱レール検出システムのブロック図である。
【
図8】実施の形態2におけるエレベータの脱レール検出システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1を用いて実施の形態1におけるエレベータの全体構成図を説明する。
図1は、エレベータの全体構成図である。
【0010】
エレベータは、かご1、主ロープ2、釣合おもり3、ガイドレール4、4a、巻上機5、制御盤6、及び配線ケーブル7を備える。
かご1の上端には、主ロープ2の一端が接続され、主ロープ2の他端には、釣合おもり3が接続されている。巻上機5は、かご1と釣合おもり3とが互いに相反する方向に昇降するよう主ロープ2の中間部に設置されている。
釣合おもり3は、昇降路の昇降路壁(図示せず)に設置されたガイドレール4、4aに案内されて移動する。
【0011】
制御盤6は、巻上機5を駆動し、かご1の昇降制御を行う。
ここで、かご1と釣合おもり3とは、昇降路内を昇降する昇降体と定義する。
制御盤6は、配線ケーブル7により釣合おもり3に設置された機器からの信号を受信する。
【0012】
かご1と釣合おもり3とが昇降する昇降路には、機械室床11の床面の下側から昇降路の最下部のピットまでワイヤ12が取付けられている。
ワイヤ12は、釣合おもり3のガイドレール4、4aと平行に張架されている。
【0013】
図2を用いて実施の形態1に係る釣合おもりに設置された機器を説明する。
図2の“(1)昇降路の上部から見た図(正常状態)”と、“(1a)昇降路の上部から見た図(脱レール状態)”とは、実施の形態1に係るエレベータの昇降路の上部から釣合おもりを見た図である。
図2の“(2)昇降路の側面から釣合おもりを見た図(正常状態)”と“(2a)昇降路の側面から釣合おもりを見た図(脱レール状態)”とは、実施の形態1に係るエレベータの釣合おもりを昇降路の側面から見た図である。
【0014】
図2の“(1)昇降路の上部から見た図(正常状態)”において、釣合おもり3の近くには、ガイドレール4、4aと平行にワイヤ12が張架されている。ワイヤ12は、釣合おもり3に設置された機器の検出器が届く範囲で、昇降体と干渉しない位置であればどこに張架されていてもよい。
【0015】
図2の“(2)昇降路の側面から釣合おもりを見た図(正常状態)”において、釣合おもり3には、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とが備えられている。
上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とは、釣合おもり3の上部に設置され、配線ケーブル7と接続されている。
上部貫通検出センサ16は、上部ワイヤ接触検出センサ17の下側に設置されてもよい。
【0016】
上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12が内部を貫通する筒状の検出部を備えており、ワイヤ12が筒状の検出部の内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサである。貫通検出センサが検出した貫通検出信号は、配線ケーブル7を経由して制御盤6に送られる。
上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12が内部を貫通する筒状の検出部を備えており、ワイヤ12と筒状の検出部とが接触したか否かを検出するワイヤ接触検出センサである。ワイヤ接触検出センサが検出したワイヤ接触検出信号は、配線ケーブル7を経由して制御盤6に送られる。
【0017】
上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17との筒状の検出部は、一体で形成してもよい。
上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17との検出部の形状は、筒状以外にも多角形の形状であっても良い。
【0018】
図2の“(1a)昇降路の上部から見た図(脱レール状態)”と“(2a)昇降路の側面から釣合おもりを見た図(脱レール状態)”とにおいて、釣合おもり3は、ガイドレール4、4aから外れて脱レールとなった脱レール状態である。
ガイドレール4、4aからの釣合おもり3の脱レールにより、ワイヤ12は、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17との検出部に引っ張られ、接触している状態となる。
さらに、
図2の(1a)と(2a)とは、釣合おもり3がガイドレール4、4aに対して傾いた状態を示しているが、釣合おもり3がさらに傾いて、ワイヤ12を断線させて、上部貫通検出センサ16の検出部をワイヤ12が貫通しない状態となる。
【0019】
図3を用いて実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムのブロック図を説明する。
図3は、実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムのブロック図である。
【0020】
エレベータの脱レール検出システムの制御盤6は、I/F手段21、CPU22、記憶手段23、及び昇降制御手段24を備える。
制御盤6のI/F手段21は、釣合おもり3に設置された上部貫通検出センサ16、及び上部ワイヤ接触検出センサ17から送信される上部貫通検出信号、及び上部ワイヤ接触検出信号を受信して、その受信したそれぞれの検出信号をCPU22に送信する。
【0021】
CPU22は、I/F手段21を経由して取得した、上部貫通検出信号と上部ワイヤ接触検出信号とに基いて、脱レール判定結果を出力する。
ここで、CPU22は、脱レール判定処理手段と定義する。
昇降制御手段24は、CPU22から取得した脱レール判定結果に基いて、かご1の昇降の運転継続、または運転停止のいずれかを行う。
【0022】
記憶手段23は、CPU22の制御プログラムの格納、制御演算のデータの保存を行う。
記憶手段23は、SRAM(Static Random access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memorey)などを使用し、データを記憶し、その記憶したデータを読み出せる手段であれば何でもよい。
【0023】
図4と
図5とを用いて実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムのフローチャートと判定結果の組み合わせとを説明する。
図4は、実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムのフローチャートである。
図5は、エレベータの脱レール検出システムの判定結果組み合わせ表である
【0024】
ステップS1において、エレベータの脱レール検出システムの制御盤6のCPU22は、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とから、それぞれ上部貫通検出信号と上部ワイヤ接触検出信号とを取得する。
【0025】
ここで、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とからは、ワイヤ12の検出結果によって次のような信号が出力される。
上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12が貫通しているときにON信号を出力し、ワイヤ12が貫通していないときにOFF信号を出力する。また、上部貫通検出センサ16に電源が給電されない時には、OFF信号となる。
【0026】
上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12が接触検出部に接触しているときにOFF信号を出力し、ワイヤ12が接触検出部に接触していないときにON信号を出力する。また、上部ワイヤ接触検出センサ17に電源が給電されない時には、OFF信号となる。
【0027】
ステップS2において、CPU22は、上部貫通検出センサ16がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、上部貫通検出センサ16からON信号を取得した場合は、ステップS3に移行する(ステップS2のYES)。
一方、上部貫通検出センサ16からOFF信号を取得した合は、ステップS6に移行する。
【0028】
ステップS3において、CPU22は、上部ワイヤ接触検出センサ17がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、上部ワイヤ接触検出センサ17からON信号を取得した場合は、ステップS4に移行する(ステップS3のYES)。
一方、上部ワイヤ接触検出センサ17がOFF信号を取得した場合は、ステップS6に移行する。
【0029】
ステップS4において、CPU22は、上部貫通検出信号と上部ワイヤ接触検出信号とに基いて、ON信号を昇降制御手段24に出力し、ステップS5に移行する。
ステップS5において、昇降制御手段24は、CPU22から取得したON信号により、かご1の昇降の運転継続を行う。
【0030】
ステップS6において、CPU22は、上部貫通検出信号と上部ワイヤ接触検出信号とに基いて、OFF信号を昇降制御手段24に出力し、ステップS7に移行する。
ステップS7において、昇降制御手段24は、CPU22から取得したOFF信号により、かご1の昇降の運転停止を行う。
【0031】
ここで、
図5のエレベータの脱レール検出システムの判定結果組み合わせ表を説明する。
図5のNo.1の「正常動作状態」において、上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12に接触していない状態(非接触)により、ON信号を出力する。
また、上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12が貫通している状態(貫通)により、ON信号を出力する。
図5のNo.1の「正常動作状態」において、脱レール判定結果はON信号となり、釣合おもり3が脱レールしていない非脱レールの状態として、かご1の運転が継続する。
【0032】
図5のNo.2の「ワイヤと接触を検出」において、上部ワイヤ接触検出センサ17はワイヤ12に接触した状態(接触)により、OFF信号を出力する。
【0033】
また、上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12が貫通している状態(貫通)により、ON信号を出力する。
図5のNo.2の「ワイヤと接触を検出」において、脱レール判定結果はOFF信号となり、釣合おもり3が脱レールの状態として、かご1の運転が停止する。
【0034】
図5のNo.3の「ワイヤが断線し、非貫通状態を検出」において、上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12に接触していない状態(非接触)により、ON信号を出力する。
【0035】
また、上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12の貫通していない状態(非貫通)により、OFF信号を出力する。
図5のNo.3の「ワイヤが断線し、非貫通状態を検出」において、脱レール判定結果はOFF信号となり、釣合おもり3が脱レールの状態として、かご1の運転が停止する。
【0036】
図5のNo.4の「ワイヤ接触検出センサがOFF出力継続」において、上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12に接触していない状態(非接触)であっても、上部ワイヤ接触検出センサ17の信号出力回路が故障し、OFF信号を継続して出力する
図5のNo.4の「ワイヤ接触検出センサがOFF出力継続」において、脱レール判定結果はOFF信号となり、釣合おもり3が脱レールの状態として、かご1の運転が停止する。
【0037】
図5のNo.5の「貫通検出センサがOFF出力継続」において、上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12の貫通している状態(貫通)であっても、上部貫通検出センサ16の信号出力回路が故障し、OFF信号を継続して出力する。
図5のNo.5の「貫通検出センサがOFF出力継続」において、脱レール判定結果はOFF信号となり、釣合おもり3が脱レールの状態として、かご1の運転が停止する。
【0038】
図5のNo.6の「ワイヤ接触検出信号がON出力継続」において、上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12に接触した状態(接触)であっても、上部ワイヤ接触検出センサ17の信号出力回路が故障して、ON信号を継続して出力する。
つまり、ワイヤ12が上部ワイヤ接触検出センサ17に接触しても、信号出力回路が故障しているために、上部ワイヤ接触検出センサ17は、ON信号を継続して出力する。
【0039】
上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12の貫通している状態(貫通)の時にON信号を出力し、ワイヤ12の貫通していない状態(非貫通)の時にOFF信号を出力する。
図5のNo.6の「ワイヤ接触検出信号がON出力継続」において、上部貫通検出センサ16の貫通検出信号に基いて、脱レール判定結果がON信号、またはOFF信号のいずれかの状態となり、釣合おもり3のレール設置の状態に基いて、かご1の運転が継続、または停止のいずれかとなる。
【0040】
図5のNo.6の「ワイヤ接触検出信号がON出力継続」において、一方の上部ワイヤ接触検出センサ17の信号出力回路が故障しても、他方の上部貫通検出センサ16の貫通検出信号により、CPU22は釣合おもり3の脱レールを検出することができる。
【0041】
図5のNo.7の「貫通検出信号がON出力継続」において、上部貫通検出センサ16は、ワイヤ12の貫通していない状態であっても、上部貫通検出センサ16の信号出力回路が故障して、ON信号を継続して出力する。
つまり、ワイヤ12が上部貫通検出センサ16を貫通していなくても、信号出力回路が故障しているために、上部貫通検出センサ16は、ON信号を継続して出力する。
【0042】
上部ワイヤ接触検出センサ17は、ワイヤ12が接触していない状態(非接触)の時にON信号を出力し、ワイヤ12が接触している状態(接触)の時にOFF信号を出力する。
図5のNo.7の「貫通検出信号がON出力継続」において、上部ワイヤ接触検出センサ17のワイヤ接触検出信号に基いて、脱レール判定結果がON信号、またはOFF信号のいずれかの状態となり、釣合おもり3のレール設置の状態に基いて、かご1の運転が継続、または停止のいずれかとなる。
【0043】
図5のNo.7の「貫通検出信号がON出力継続」において、一方の上部貫通検出センサ16の信号出力回路が故障しても、他方の上部ワイヤ接触検出センサ17のワイヤ接触検出信号により、CPU22は釣合おもり3の脱レールを検出することができる。
【0044】
図5のNo.8の「ワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとが電源遮断状態」において、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とは、電源遮断により、それぞれOFF信号となり、脱レール判定結果がOFF信号として、かご1の運転が停止する。
なお、電源遮断は、上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とへの電源給電用配線の断線も含まれる。
【0045】
以上のように、本実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムは、昇降路内で保守点検作業をする際でも、安全性確保のための導電線の電流遮断回路を遮断すること無しに、釣合おもりの脱レールの検出が可能になるという効果を奏する。
さらに、脱レール検出システムには、ワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとの複数のセンサを使用することにより、一方の検出センサが故障しても、他方の検出センサにより脱レール判定が実施できるという効果を奏する。
【0046】
実施の形態2.
図6を用いて実施の形態2に係る釣合おもりに設置された機器を説明する。
図6の“(1)昇降路の上部から見た図”は、実施の形態2に係るエレベータの昇降路の上部から釣合おもりを見た図である。また、
図6の“(2)昇降路の側面から釣合おもりを見た図”は、実施の形態2に係るエレベータの釣合おもりを昇降路の側面から見た図である。
なお、
図6の説明において、実施の形態1に係る釣合おもりに設置された機器に相当する部分には、
図2と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図6の“(2)昇降路の側面から釣合おもりを見た図”において、釣合おもり3には、上部貫通検出センサ16、上部ワイヤ接触検出センサ17、下部貫通検出センサ18、及び下部ワイヤ接触検出センサ19を備えられている。
下部貫通検出センサ18と下部ワイヤ接触検出センサ19とは、釣合おもり3の下部に設置され、配線ケーブル7と接続されている。
下部貫通検出センサ18は、下部ワイヤ接触検出センサ19の下側に設置されてもよい。
【0048】
下部貫通検出センサ18は、ワイヤ12が内部を貫通する筒状の検出部を備えており、ワイヤ12が筒状の検出部の内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサである。それぞれの貫通検出センサか検出した貫通検出信号は、配線ケーブル7を経由して制御盤6に送られる。
下部ワイヤ接触検出センサ19は、ワイヤ12が内部を貫通する筒状の検出部を備えており、ワイヤ12と筒状の検出部とが接触したか否かを検出するワイヤ接触検出センサである。それぞれのワイヤ接触検出センサか検出したワイヤ接触検出信号は、配線ケーブル7を経由して制御盤6に送られる。
【0049】
下部貫通検出センサ18と下部ワイヤ接触検出センサ19との筒状の検出部は、一体で形成してもよい。
下部貫通検出センサ18と下部ワイヤ接触検出センサ19との検出部の形状は、筒状以外にも多角形の形状であっても良い。
【0050】
図6において、釣合おもり3の上部には上部貫通検出センサ16と上部ワイヤ接触検出センサ17とを設置し、釣合おもり3の下部には下部貫通検出センサ18と下部ワイヤ接触検出センサ19とを設置して説明した。しかし、貫通検出センとワイヤ接触検出センサとは、ワイヤ12との貫通や接触が検出できる位置であれば、釣合おもり3のどの位置に設置されてもよい。
【0051】
図7を用いて実施の形態2に係るエレベータの脱レール検出システムのブロック図を説明する。
図7は、実施の形態2に係るエレベータの脱レール検出システムのブロック図である。
なお、
図7の説明において、実施の形態1に係るエレベータの脱レール検出システムのブロック図に相当する部分には、
図3と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
制御盤6のI/F手段21は、釣合おもり3に設置された上部貫通検出センサ16、上部ワイヤ接触検出センサ17、下部貫通検出センサ18、及び下部ワイヤ接触検出センサ19とから送信される上部貫通検出信号、上部ワイヤ接触検出信号、下部貫通検出信号、及び下部ワイヤ接触検出信号とをそれぞれ受信して、その受信したそれぞれの検出信号をCPU22に送信する。
【0053】
CPU22は、I/F手段21を経由して取得した、上部貫通検出信号、上部ワイヤ接触検出信号、下部貫通検出信号、及び下部ワイヤ接触検出信号に基いて、脱レール判定結果を出力する。
【0054】
図8を用いて実施の形態2に係るエレベータの脱レール検出システムのフローチャートと判定結果の組み合わせとを説明する。
図8は、実施の形態2に係るエレベータの脱レール検出システムのフローチャートである。
【0055】
ステップS11において、エレベータの脱レール検出システムの制御盤6のCPU22は、上部貫通検出センサ16、上部ワイヤ接触検出センサ17、下部貫通検出センサ18、及び下部ワイヤ接触検出センサ19から、それぞれ上部貫通検出信号、上部ワイヤ接触検出信号、下部貫通検出信号、及び下部ワイヤ接触検出信号を取得する。
【0056】
ここで、下部貫通検出センサ18と下部ワイヤ接触検出センサ19とからは、ワイヤ12の検出結果によって次のような信号が出力される。
下部貫通検出センサ18は、ワイヤ12が貫通しているときに貫通検出信号としてON信号を出力し、ワイヤ12が貫通していないときに非貫通信号としてOFF信号を出力する。また、下部貫通検出センサ18に電源が給電されない時には、OFF信号となる。
【0057】
下部ワイヤ接触検出センサ19は、ワイヤ12が接触検出部に接触しているときに接触信号としてOFF信号を出力し、ワイヤ12が接触検出部に接触していないときに非接触信号としてON信号を出力する。また、下部ワイヤ接触検出センサ19に電源が給電されない時には、OFF信号となる。
【0058】
ステップS12において、CPU22は、上部貫通検出センサ16がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、上部貫通検出センサ16からON信号を取得した場合は、ステップS13に移行する(ステップS12のYES)。
一方、上部貫通検出センサ16からON信号が取得できなかつた場合は、ステップS18に移行する。
【0059】
ステップS13において、CPU22は、下部貫通検出センサ18がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、下部貫通検出センサ18からON信号を取得した場合は、ステップS14に移行する(ステップS13のYES)。
一方、下部貫通検出センサ18からON信号が取得できなかつた場合は、ステップS18に移行する。
【0060】
ステップS14において、CPU22は、上部ワイヤ接触検出センサ17がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、上部ワイヤ接触検出センサ17からON信号を取得した場合は、ステップS15に移行する(ステップS14のYES)。
一方、上部ワイヤ接触検出センサ17からON信号が取得できなかつた場合は、ステップS18に移行する。
【0061】
ステップS15において、CPU22は、下部ワイヤ接触検出センサ19がON信号を出力しているか否かを判定する。
CPU22は、下部ワイヤ接触検出センサ19からON信号を取得した場合は、ステップS16に移行する(ステップS15のYES)。
一方、下部ワイヤ接触検出センサ19からON信号が取得できなかつた場合は、ステップS18に移行する。
【0062】
ステップS16において、CPU22は、上部貫通検出信号、上部ワイヤ接触検出信号、下部貫通検出信号、及び下部ワイヤ接触検出信号に基いて、ON信号を昇降制御手段24に出力し、ステップS17に移行する。
ステップS17において、昇降制御手段24は、CPU22から取得したON信号により、かご1の昇降の運転継続を行う。
【0063】
ステップS18において、CPU22は、上部貫通検出信号、上部ワイヤ接触検出信号、下部貫通検出信号、及び下部ワイヤ接触検出信号に基いて、OFF信号を昇降制御手段24に出力し、ステップS19に移行する。
ステップS19において、昇降制御手段24は、CPU22から取得したOFF信号により、かご1の昇降の運転停止を行う。
【0064】
以上のように、本実施の形態2に係るエレベータの脱レール検出システムは、釣合おもりの複数の場所にワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとを設置して、脱レールの判定を確実に実施できるといった効果を奏する。
【0065】
以上のように構成された本開示のエレベータの脱レール検出システムは、昇降路内を昇降する昇降体の移動空間と干渉しない空間に設置され、釣合おもり3の昇降を案内するガイドレール4、4aと平行に張架されるワイヤ12と、釣合おもり3に設置されワイヤ12が内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサと、釣合おもり3に設置されワイヤ12に接触しているか否かを検出するワイヤ接触検出センサと、貫通検出センサとワイヤ接触検出センサとから出力された信号に基いて脱レール判定処理をおこなう脱レール判定処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0066】
これにより、昇降路内で保守点検作業をする際には、安全性確保のための導電線の電流遮断回路を遮断すること無しに、脱レールの検出が可能になるという効果を奏する。
さらに、エレベータの脱レール検出システムは、ワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとの複数のセンサを使用することにより、一方の検出センサが故障しても、他方の検出センサにより脱レールの判定が実施できるという効果を奏する。
【0067】
また、エレベータの脱レール検出システムは、貫通検出センサは、ワイヤ12の貫通を検出したときに、貫通検出信号の出力をONし、ワイヤ12の貫通を検出していないときに、貫通検出信号の出力をOFFし、ワイヤ接触検出センサは、ワイヤ12の接触を検出したときに、接触検出信号の出力をOFFし、ワイヤ12の接触を検出していないときに、接触検出信号の出力をONし、脱レール判定処理手段は、貫通検出信号の出力がOFFと接触検出信号の出力がOFFとの少なくとも一方のときに脱レールと判定することを特徴とする。
【0068】
これにより、エレベータの脱レール検出システムは、釣合おもりの複数の場所にワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとを設置して、脱レールの判定を確実に実施できるといった効果を奏する。
【0069】
また、エレベータの脱レール検出システムは、貫通検出センサとワイヤ接触検出センサとが
釣合おもり3の上部及び下部に設置されることを特徴とする。
【0070】
これにより、エレベータの脱レール検出システムは、釣合おもり3の複数の場所にワイヤ接触検出センサと貫通検出センサとを設置して、脱レールの判定をより確実に実施できるといった効果を奏する。
【0071】
また、エレベータの脱レール検出システムは、脱レール判定処理手段は、脱レールと判定したときに、昇降体の昇降を停止させることを特徴とする。
【0072】
これにより、エレベータの脱レール検出システムは、釣合おもり3が脱レールしたときに、昇降体の昇降を停止させることにより、昇降路の機器を破損させることを避ける効果を奏する。
【0073】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
昇降路内を昇降する昇降体の移動空間と干渉しない空間に設置され、釣合おもりの昇降を案内するガイドレールと平行に張架されるワイヤと、
前記釣合おもりに設置され前記ワイヤが内部を貫通しているか否かを検出する貫通検出センサと、
前記釣合おもりに設置され前記ワイヤに接触しているか否かを検出するワイヤ接触検出センサと、
前記貫通検出センサと前記ワイヤ接触検出センサとから出力された信号に基いて脱レール判定処理をおこなう脱レール判定処理手段と、
を備えるエレベータの脱レール検出システム。
(付記2)
前記貫通検出センサは、
前記ワイヤの貫通を検出したときに、貫通検出信号の出力をONし、
前記ワイヤの貫通を検出していないときに、前記貫通検出信号の出力をOFFし、
前記ワイヤ接触検出センサは、
前記ワイヤの接触を検出したときに、ワイヤ接触検出信号の出力をOFFし、
前記ワイヤの接触を検出していないときに、前記ワイヤ接触検出信号の出力をONし、
前記脱レール判定処理手段は、
前記貫通検出信号の出力と前記ワイヤ接触検出信号の出力との少なくとも一方がOFFのときに脱レールと判定することを特徴とする付記1に記載の脱レール検出システム。
(付記3)
前記貫通検出センサと前記ワイヤ接触検出センサとが
前記釣合おもりの上部及び下部に設置されることを特徴とする付記1または付記2に記載の脱レール検出システム。
(付記4)
前記脱レール判定処理手段は、
脱レールと判定したときに、
前記昇降体の昇降を停止させることを特徴とする付記1から3のいずれかの付記に記載の脱レール検出システム。
【符号の説明】
【0074】
1 かご、 2 主ロープ、 3 釣合おもり、 4、4a ガイドレール、 5 巻上機、 6 制御盤、 7 配線ケーブル、 11 機械室床、 12 ワイヤ、 16 上部貫通検出センサ、 17 上部ワイヤ接触検出センサ、 18 下部貫通検出センサ、 19 下部ワイヤ接触検出センサ、 21 I/F手段、 22 CPU、 23 記憶手段、 24 昇降制御手段