(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157208
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ダイアフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20241030BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F16K51/00 D
F16K31/126 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071421
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H056
3H066
【Fターム(参考)】
3H056AA01
3H056BB45
3H056CA07
3H056CB03
3H056CD04
3H056DD04
3H056GG11
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】被制御流体が流れることによって発生するダイアフラムへの帯電を防止できるダイアフラムバルブを提供する。
【解決手段】本発明のダイアフラムバルブは、被制御流体が流入する流入流路11と、被制御流体が流出する流出流路12と、流入流路11と流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、流量制御流路13に配置される弁体21と、弁体21の変位とともに変形するダイアフラム22とを有し、ダイアフラム22が樹脂材で形成され、ダイアフラム22の一方には流入流路11が形成されるダイアフラムバルブであって、ダイアフラム22の他方には、ダイアフラム22に接して導電シート51を配置し、導電シート51をアース60接続した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御流体が流入する流入流路と、
前記被制御流体が流出する流出流路と、
前記流入流路と前記流出流路との間に位置する流量制御流路と、
前記流量制御流路に配置される弁体と、
前記弁体の変位とともに変形するダイアフラムと
を有し、
前記ダイアフラムが樹脂材で形成され、
前記ダイアフラムの一方には前記流入流路が形成されるダイアフラムバルブであって、
前記ダイアフラムの他方には、前記ダイアフラムに接して導電シートを配置し、
前記導電シートをアース接続した
ことを特徴とするダイアフラムバルブ。
【請求項2】
被制御流体が流入する流入流路と、
前記被制御流体が流出する流出流路と、
前記流入流路と前記流出流路との間に位置する流量制御流路と、
前記流量制御流路に配置される弁体と、
前記弁体を押圧する軸体と、
前記弁体又は前記軸体の変位とともに変形するダイアフラムと
を有し、
前記ダイアフラムとして、
前記弁体の変位とともに変形する弁体側ダイアフラムと、
前記軸体の変位とともに変形する軸体側ダイアフラムと
を有し、
前記弁体側ダイアフラムの一方には前記流入流路が形成され、前記弁体側ダイアフラムの他方には弁体側加圧室が形成され、
前記軸体側ダイアフラムの一方には前記流出流路が形成され、前記軸体側ダイアフラムの他方には軸体側加圧室が形成されるダイアフラムバルブであって、
前記弁体側ダイアフラムの前記他方、又は前記軸体側ダイアフラムの前記他方には、前記弁体側ダイアフラム又は前記軸体側ダイアフラムに接して導電シートを配置し、
前記導電シートをアース接続した
ことを特徴とするダイアフラムバルブ。
【請求項3】
前記弁体側ダイアフラムが、
前記弁体に繋がる薄肉部と、前記薄肉部の外周に形成される固定部とを有し、
前記導電シートを少なくとも前記薄肉部に配置した
ことを特徴とする請求項2に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項4】
前記軸体側ダイアフラムが、
前記軸体に繋がる肉厚部と、前記肉厚部の外周に形成される薄肉部と、前記薄肉部の更に外周に形成される固定部とを有し、
前記導電シートを少なくとも前記薄肉部に配置した
ことを特徴とする請求項2に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項5】
前記軸体側ダイアフラムが、
前記軸体に繋がる肉厚部と、前記肉厚部の外周に形成される薄肉部と、前記薄肉部の更に外周に形成される固定部とを有し、
前記導電シートを少なくとも前記薄肉部と前記固定部とに配置した
ことを特徴とする請求項2に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項6】
前記ダイアフラムと前記導電シートとが溶着されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項7】
前記ダイアフラムには小孔が形成され、
前記小孔によって前記被制御流体が前記導電シートに接触し、
前記導電シートによって前記小孔からの前記被制御流体の流出が阻止される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項8】
前記導電シートを、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材を配合した樹脂シートとした
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項9】
前記導電シートの漏洩抵抗を104Ω~1011Ωとした
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブ。
【請求項10】
前記導電シートの漏洩抵抗を102Ω~109Ωとした
ことを特徴とする請求項7に記載のダイアフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムが樹脂材で形成されるダイアフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスは微細化を続けており、被制御流体の純度が上がっている。
被制御流体の純度が上がることに伴い、被制御流体と樹脂製バルブの流路部との間での摩擦で静電気が発生しやすくなっている。
静電気による帯電は、最終的にコロナ放電が発生し、樹脂製バルブが静電破壊される。
静電破壊が起きることで、樹脂製バルブから薬液が流出し、被制御流体が有機溶剤であれば、火花放電を起こして発火や火災などが生じるという問題も考慮しなければならない。
樹脂製バルブの中でも、ダイアフラムバルブは、薄いフッ素樹脂ダイアフラムを用いることが多いために静電破壊を起こしやすく、特に問題となる。ダイアフラムバルブ以外で帯電防止対策を行っても、ダイアフラムバルブ内部での静電破壊を防ぐことはできない。
なお、高純度薬液の分配システムに使用されるダイアフラムバルブは、発塵量低減と高清浄度化が求められているために、金属材を用いることができない。
例えば特許文献1は、配管材であるPFAチューブの非接液外周部に導電材料を一体で押出成形する方法が開示されている。
また、特許文献2は、バルブ弁箱(バルブボディ)に導電部材を挿入し、流体をアースすることで、意図的にコロナ放電を起こすものであり、静電破壊による外部リークを低減できる。
また、特許文献3は、バルブ弁箱(バルブボディ)の材料にカーボンナノチューブを添加した材料を用いることで、バルブでのコロナ放電による外部リークを防止することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-4176号公報
【特許文献2】特開2007-78019号公報
【特許文献3】特開2017-75696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、配管材の帯電を低減できるが、バルブ内部での帯電を防ぐことができず、コロナ臨界電圧を超えると、フッ素樹脂ダイアフラムは、静電気放電起因による破壊が発生する。このように、ダイアフラムバルブ以外で帯電防止対策を行ったとしても静電破壊を防ぐことはできない。
また、特許文献2では、導電部材付近の材料がコロナ放電によりダメージを受け、微少な塵(パーティクル)を発生させることがある。
また、特許文献3では、コロナ放電による外部リークを防止できるが、被制御流体中にカーボンナノチューブや分散剤が溶出することで被制御流体を汚染してしまう。
【0005】
そこで本発明は、被制御流体が流れることによって発生するダイアフラムへの帯電を防止できるダイアフラムバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のダイアフラムバルブは、被制御流体が流入する流入流路11と、前記被制御流体が流出する流出流路12と、前記流入流路11と前記流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、前記流量制御流路13に配置される弁体21と、前記弁体21の変位とともに変形するダイアフラム22とを有し、前記ダイアフラム22が樹脂材で形成され、前記ダイアフラム22の一方には前記流入流路11が形成されるダイアフラムバルブであって、前記ダイアフラム22の他方には、前記ダイアフラム22に接して導電シート51を配置し、前記導電シート51をアース60接続したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明のダイアフラムバルブは、被制御流体が流入する流入流路11と、前記被制御流体が流出する流出流路12と、前記流入流路11と前記流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、前記流量制御流路13に配置される弁体21と、前記弁体を押圧する軸体31と、前記弁体21又は前記軸体31の変位とともに変形するダイアフラム32とを有し、前記ダイアフラム32として、前記弁体21の変位とともに変形する弁体側ダイアフラム22と、前記軸体31の変位とともに変形する軸体側ダイアフラム32とを有し、前記弁体側ダイアフラム22の一方には前記流入流路11が形成され、前記弁体側ダイアフラム22の他方には弁体側加圧室14が形成され、前記軸体側ダイアフラム32の一方には前記流出流路12が形成され、前記軸体側ダイアフラム32の他方には軸体側加圧室15が形成されるダイアフラムバルブであって、前記弁体側ダイアフラム22の前記他方、又は前記軸体側ダイアフラム32の前記他方には、前記弁体側ダイアフラム22又は前記軸体側ダイアフラム32に接して導電シート52を配置し、前記導電シート52をアース60接続したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記弁体側ダイアフラム22が、前記弁体21に繋がる薄肉部22aと、前記薄肉部22aの外周に形成される固定部22bとを有し、前記導電シート51を少なくとも前記薄肉部22aに配置したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記軸体側ダイアフラム32が、前記軸体31に繋がる肉厚部32aと、前記肉厚部32aの外周に形成される薄肉部32aと、前記薄肉部32aの更に外周に形成される固定部32cとを有し、前記導電シート52を少なくとも前記薄肉部32aに配置したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記軸体側ダイアフラム32が、前記軸体31に繋がる肉厚部32aと、前記肉厚部32aの外周に形成される薄肉部32aと、前記薄肉部32aの更に外周に形成される固定部32cとを有し、前記導電シート52を少なくとも前記薄肉部32aと前記固定部32cとに配置したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記ダイアフラム22、32と前記導電シート51、52とが溶着されていることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記ダイアフラム22、32には小孔23が形成され、前記小孔23によって前記被制御流体が前記導電シート51、52に接触し、前記導電シート51、52によって前記小孔23からの前記被制御流体の流出が阻止されることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記導電シート51、52を、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材を配合した樹脂シートとしたことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記導電シート51の漏洩抵抗を104Ω~1011Ωとしたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項7に記載のダイアフラムバルブにおいて、前記導電シート52の漏洩抵抗を102Ω~109Ωとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダイアフラムバルブによれば、被制御流体が流れることによって発生するダイアフラムへの帯電を導電シートによって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例によるダイアフラムバルブを示す図
【
図2】本発明の他の実施例によるダイアフラムバルブを示す図
【
図3】本発明の更に他の実施例によるダイアフラムバルブを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態によるダイアフラムバルブは、ダイアフラムの他方には、ダイアフラムに接して導電シートを配置し、導電シートをアース接続したものである。本実施の形態によれば、被制御流体が流れることによって発生するダイアフラムへの帯電を導電シートによって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態によるダイアフラムバルブは、弁体側ダイアフラムの他方、又は軸体側ダイアフラムの他方には、弁体側ダイアフラム又は軸体側ダイアフラムに接して導電シートを配置し、導電シートをアース接続したものである。本実施の形態によれば、被制御流体が流れることによって発生する弁体側ダイアフラム及び軸体側ダイアフラムへの帯電を導電シートによって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、弁体側ダイアフラムが、弁体に繋がる薄肉部と、薄肉部の外周に形成される固定部とを有し、導電シートを少なくとも薄肉部に配置したものである。本実施の形態によれば、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部での破壊を防止することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第2の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、軸体側ダイアフラムが、軸体に繋がる肉厚部と、肉厚部の外周に形成される薄肉部と、薄肉部の更に外周に形成される固定部とを有し、導電シートを少なくとも薄肉部に配置したものである。本実施の形態によれば、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部での破壊を防止することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第2の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、軸体側ダイアフラムが、軸体に繋がる肉厚部と、肉厚部の外周に形成される薄肉部と、薄肉部の更に外周に形成される固定部とを有し、導電シートを少なくとも薄肉部と固定部とに配置したものである。本実施の形態によれば、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部での破壊を防止することができるとともにアース接続を固定部で行うことができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、ダイアフラムと導電シートとが溶着されているものである。本実施の形態によれば、溶着によって帯電を確実に防止できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第5の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、ダイアフラムには小孔が形成され、小孔によって被制御流体が導電シートに接触し、導電シートによって小孔からの被制御流体の流出が阻止されるものである。本実施の形態によれば、小孔によって被制御流体が導電シートに接触することで除電を行うことができ、小孔から被制御流体が流出することも導電シートによって阻止することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第5の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、導電シートを、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材を配合した樹脂シートとしたものである。本実施の形態によれば、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材の配合比によって、導電シートの漏洩抵抗値を調整することができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第1から第5の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、導電シートの漏洩抵抗を104Ω~1011Ωとしたものである。本実施の形態によれば、帯電を防止できる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第7の実施の形態によるダイアフラムバルブにおいて、導電シートの漏洩抵抗を102Ω~109Ωとしたものである。本実施の形態によれば、除電を行いやすい。
【実施例0019】
以下本発明の一実施例によるダイアフラムバルブについて説明する。
図1は本実施例によるダイアフラムバルブを示し、
図1(a)はダイアフラムバルブ全体の側面断面図、
図1(b)は弁体及び弁体側ダイアフラムの側面断面図、
図1(c)は導電シートの平面図を示している。
【0020】
本実施例によるダイアフラムバルブは、被制御流体が流入する流入流路11と、被制御流体が流出する流出流路12と、流入流路11と流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、流量制御流路13に配置される弁体21と、弁体21を押圧する軸体31と、弁体21の変位とともに変形する弁体側ダイアフラム22と、軸体31の変位とともに変形する軸体側ダイアフラム32とを有している。
弁体21と弁体側ダイアフラム22とは、弁体側部材20として樹脂で一体に成型されている。軸体31と軸体側ダイアフラム32とは、軸体側部材30として樹脂で一体に成型されている。
弁体側部材20や軸体側部材30は、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)や架橋PTFE、変性PTFE、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)によって形成することができる。
架橋PTFEは、独立していた分子同士を橋架けする反応で出来ているPTFEであり、例えば化学架橋や放射線架橋などの架橋方法によって製作される。架橋PTFEは、摺動特性において、PTFEに対して1,000倍以上の耐摩耗性があり、摺動相手の材料が損傷しにくい。また、架橋PTFEは、耐変性が高く荷重に対して変形しにくく、室温及び高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付けなどの加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性はPTFEと同等である。
変性PTFEは、PTFEの主鎖を部分的変性させたもので、微量のパーフルオロアルキルビニルエーテルなどをコモノマーさせている。変性PTFEは、PTFEと比較して、屈曲特性やクリープ特性が改善され、ダイアフラムに使用する場合には屈曲寿命が数倍になる。
【0021】
本実施例によるダイアフラムバルブは、弁体側ダイアフラム22の一方には流入流路11が形成され、弁体側ダイアフラム22の他方には弁体側加圧室14が形成され、軸体側ダイアフラム32の一方には流出流路12が形成され、軸体側ダイアフラム32の他方には軸体側加圧室15が形成される。
弁体側加圧室14には、弁体側ダイアフラム22を押圧する押圧部材14aが配置される。押圧部材14aは、弾性部材14bによって弁体側ダイアフラム22の方向に付勢される。弾性部材14bの端部には座金14cを配置している。
軸体側加圧室15には、加圧気体が導入され、導入される加圧気体によって軸体側ダイアフラム32が押圧される。
なお、本実施例では、弁体側加圧室14には弾性部材14bを設けているが、弾性部材14bとともに、又は弾性部材14bに代えて流体により付勢してもよい。
また、本実施例では、軸体側加圧室15には加圧気体を導入するが、加圧気体とともに又は加圧気体に代えてバネ材を設けてもよい。
【0022】
ボディ40は、流路形成用ボディ41と、弁体側ボディ42と、軸体側ボディ43とを有している。
流路形成用ボディ41は、流入流路11と、流出流路12と、流量制御流路13とを形成する。
弁体側ボディ42は、弁体側加圧室14を形成する。弁体側加圧室14には呼吸孔を形成してもよい。
弁体側部材20は、弁体側ボディ42によって流路形成用ボディ41に固定される。
軸体側ボディ43は、軸体側加圧室15と、軸体側加圧室15に連通する設定エアポート15aとを形成する。
軸体側部材30は、軸体側ボディ43によって流路形成用ボディ41に固定される。
流路形成用ボディ41は、PTFE、架橋PTFE、変性PTFE、又はPFAなどのフッ素樹脂によって形成する。弁体側ボディ42及び軸体側ボディ43は、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のようなエンプラ、 PTFE、変性PTFE、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFEなどフッ素樹脂によって形成する。
【0023】
弁体21は、弁体側ダイアフラム22に繋がる接続部21aと、軸体31によって押圧されるとともに弁座40aに当接する当接部21bとを有する。
接続部21aは、円柱形状をしており、一方が弁体側ダイアフラム22に繋がり、他方が当接部21bに繋がる。当接部21bは、円錐台形状をしている。
【0024】
弁体側ダイアフラム22は、弁体21に繋がる薄肉部22aと、薄肉部22aの外周に形成される固定部22bとを有する。弁体側ダイアフラム22は、薄肉部22aの中央部で接続部21aと繋がる。
【0025】
流入流路11から流入する被制御流体は、流量制御流路13を通り、流出流路12から流出する。
軸体側ダイアフラム32は、軸体側加圧室15の気体圧力によって軸体31が弁体21を押圧する方向に変形する。設定エアポート15aから加圧気体を導入し又は加圧気体を排出することで、軸体側加圧室15の設定圧力を調整する。
弁体側ダイアフラム22は、弁体側加圧室14の押圧力によって弁体21が軸体31を押圧する方向に変形する。弁体側加圧室14の押圧力は、弾性部材14bによって設定される。
流量制御流路13に被制御流体が流れている状態では、軸体31は軸体側ダイアフラム32によって弁体21を押圧し、弁体21は弁体側ダイアフラム22によって軸体31を押圧するので、弁体21と軸体31は当接した状態である。
【0026】
流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が上昇し、設定圧力に対して高くなると、軸体側ダイアフラム32は、流入側圧力によって軸体31が弁体21から離間する方向に変形する。
軸体31が弁体21から離間する方向に変位することで弁体21は軸体31とともに変位する。すなわち、弁体21は、弁座40aに近接する方向に変位するため、流量制御流路13が絞られる。
流量制御流路13が絞られることで、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力が上昇することを防ぐことができる。
一方、流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が低下し、設定圧力に対して低くなると、軸体側ダイアフラム32は、軸体31が弁体21を押圧する方向に変形する。
軸体31が弁体21を押圧する方向に変位することで弁体21は変位する。すなわち、弁体21は、弁座40aから離間する方向に変位するため、流量制御流路13が拡大する。
流量制御流路13が拡大することで、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力が低下することを防ぐことができる。
このように本実施例によるダイアフラムバルブは、流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が変動しても、軸体側ダイアフラム32が変形することによって、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力を一定に維持することができる。なお、弁体21を軸体31とともに変位させるために、弁体側ダイアフラム22も、流入側圧力の変動とともに変形する。
【0027】
流出側圧力が高くなると、軸体側ダイアフラム32は、流出側圧力によって軸体31が弁体21から離間する方向に変形する。
軸体31が弁体21から離間する方向に変位することで、弁体21は軸体31とともに変位し、弁体21は弁座40aに当接する。
弁体21が弁座40aに当接した状態でも、流出側圧力が設定圧力よりも高い場合には、軸体31は弁体21から離間する。
従って、流出側圧力が高くなり、弁体21が弁座40aに当接しても、弁体21には、弾性部材14bによる押圧力だけで、流出側圧力による負荷が加わることがない。
【0028】
弁体側ダイアフラム22の他方には、弁体側ダイアフラム22に接して導電シート51を配置している。
また、導電シート51は、金属材料からなる弾性部材14bや座金14cを介してアース60に接続されている。
本実施例では、導電シート51を薄肉部22aに配置している。このように、導電シート51を少なくとも薄肉部22aに配置することで、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部22aでの破壊を防止することができる。
本実施例によれば、弁体側ダイアフラム22に接して導電シート51を配置することで、被制御流体が流れることによって発生する弁体側ダイアフラム22及び軸体側ダイアフラム32への帯電を導電シート51によって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
また、図示のように、弁体側ダイアフラム22に小孔23を形成し、小孔23によって被制御流体が導電シート51に接触するようにしてもよい。なお、導電シート51によって小孔23からの被制御流体の流出を阻止している。
このように、小孔23によって被制御流体が導電シート51に接触することで除電を行うことができ、小孔23から被制御流体が流出することも導電シート51によって阻止することができる。
【0029】
図2は本発明の他の実施例によるダイアフラムバルブを示し、
図2(a)はダイアフラムバルブ全体の側面断面図、
図2(b)は軸体側部材及び導電シートの側面断面図、
図2(c)は軸体側部材の底面図、
図2(d)は導電シートの平面図を示している。なお、
図1と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
軸体31は、円柱形状をしており、弁体21を押圧する当接部31aを有する。
軸体側ダイアフラム32は、軸体31に繋がる肉厚部32aと、肉厚部32aの外周に形成される薄肉部32bと、薄肉部32bの更に外周に形成される固定部32cとを有する。軸体側ダイアフラム32は、肉厚部32aの中央部で軸体31と繋がる。
【0031】
軸体側ダイアフラム32の他方には、軸体側ダイアフラム32に接して導電シート52を配置している。
また、導電シート52はアース60に接続されている。
本実施例では、導電シート52を肉厚部32aと、薄肉部32bと、固定部32cとに配置している。
このように、導電シート52を少なくとも薄肉部32bに配置することで、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部32bでの破壊を防止することができる。
また、導電シート52を少なくとも薄肉部32bと固定部32cとに配置することで、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部32bでの破壊を防止することができるとともにアース60への接続を固定部32cを利用して行うことができる。
本実施例によれば、軸体側ダイアフラム32に接して導電シート52を配置することで、被制御流体が流れることによって発生する弁体側ダイアフラム22及び軸体側ダイアフラム32への帯電を導電シート52によって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
なお、弁体側ダイアフラム22と同様に、軸体側ダイアフラム32に小孔23を形成し、小孔23によって被制御流体が導電シート52に接触するようにしてもよい。なお、導電シート52によって小孔23からの被制御流体の流出を阻止している。
このように、小孔23によって被制御流体が導電シート52に接触することで除電を行うことができ、小孔23から被制御流体が流出することも導電シート52によって阻止することができる。
また、本実施例では、弁体側ダイアフラム22に接して導電シート51を配置し、軸体側ダイアフラム32に接して導電シート52を配置したものを示しているが、弁体側ダイアフラム22に接する導電シート51は設けず、軸体側ダイアフラム32に接する導電シート52だけでもよい。
【0032】
図3は本発明の更に他の実施例によるダイアフラムバルブを示している。
図3はダイアフラムバルブの断面図であり、本実施例によるダイアフラムバルブ1は、流路側ボディ44と駆動側ボディ45とでボディ40を形成している。
流路側ボディ44は、被制御流体が流入する流入流路11と、被制御流体が流出する流出流路12と、流入流路11と流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、流量制御流路13に配置される弁体21と、弁体21の変位とともに変形するダイアフラム22とを有している。
【0033】
弁体21と弁体側ダイアフラム22とは、弁体側部材20として樹脂で一体に成型されている。
弁体側部材20は、例えば、PTFEや架橋PTFE、変性PTFE、PFA、ETFEによって形成することができる。
架橋PTFEは、独立していた分子同士を橋架けする反応で出来ているPTFEであり、例えば化学架橋や放射線架橋などの架橋方法によって製作される。架橋PTFEは、摺動特性において、PTFEに対して1,000倍以上の耐摩耗性があり、摺動相手の材料が損傷しにくい。また、架橋PTFEは、耐変性が高く荷重に対して変形しにくく、室温及び高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付けなどの加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性はPTFEと同等である。
変性PTFEは、PTFEの主鎖を部分的変性させたもので、微量のパーフルオロアルキルビニルエーテルなどをコモノマーさせている。変性PTFEは、PTFEと比較して、屈曲特性やクリープ特性が改善され、ダイアフラムに使用する場合には屈曲寿命が数倍になる。
【0034】
駆動側ボディ45は、ピストン70を配置するピストン用筒状空間46を内部に形成する。ピストン70の一端には弁体21が配置される。
ピストン用筒状空間46には、ピストン70を付勢するピストン付勢手段71を有している。ピストン付勢手段71は、弁体21が弁座40aに当接する方向にピストン70を付勢する。
ピストン70には、ピストン拡大部72を形成している。ピストン付勢手段71は、ピストン拡大部72を押圧することで、ピストン70を付勢する。ピストン付勢手段71には例えばコイルばねを用いることができる。
ダイアフラム22は、流路側ボディ44とダイアフラム押え73とによって保持されている。ピストン70は、ダイアフラム押え73の中心部で変位する。
駆動側ボディ45には、エアー流通路47a、47bを形成している。
エアー流通路47aは、ダイアフラム押え73とピストン拡大部72との間のピストン用筒状空間46aに連通し、エアー流通路47bは、ピストン付勢手段71が配置されるピストン用筒状空間46bに連通している。
ダイアフラム押え73とダイアフラム22との間にはピストン用筒状空間46cを形成している。ピストン用筒状空間46cは、連通路46dによってダイアフラムバルブの外部に連通している。
ダイアフラム22は、流量制御流路13とピストン用筒状空間46とを仕切っている。従って、ダイアフラム22の一方には流入流路11が形成されている。
なお、ダイアフラム22は、ダイアフラム押え73を設けることなく、流路側ボディ44と駆動側ボディ45とによって保持されてもよい。また、本実施例では、ダイアフラム押え73がピストン70を支持する機能を備えているが、ダイアフラム押え73はピストン70を支持する機能を備えていなくてもよい。
【0035】
弁体21はピストン30の移動に伴って変位し、ダイアフラム22は、弁体21の変位とともに変形する。
ダイアフラム22は、弁体21に繋がる薄肉部22aと、薄肉部22aの外周に形成される固定部22bとを有する。
ダイアフラム22の他方には、ダイアフラム22に接して導電シート53を配置している。
また、導電シート53はアース60に接続されている。
本実施例では、導電シート53を、薄肉部22aと固定部22bとに配置している。
このように、導電シート53を少なくとも薄肉部22aに配置することで、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部22aでの破壊を防止することができる。
また、導電シート53を少なくとも薄肉部22aと固定部22bとに配置することで、静電気放電起因によるダメージを受けやすい薄肉部22aでの破壊を防止することができるとともにアース60への接続を、固定部22bを利用して行うことができる。
本実施例によれば、ダイアフラム22に接して導電シート53を配置することで、被制御流体が流れることによって発生するダイアフラム22への帯電を導電シート53によって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
なお、
図1に示す弁体側ダイアフラム22と同様に、ダイアフラム22に小孔23を形成し、小孔23によって被制御流体が導電シート53に接触するようにしてもよい。なお、小孔23からの被制御流体の流出は、導電シート53によって阻止する。
このように、小孔23によって被制御流体が導電シート53に接触することで除電を行うことができ、小孔23から被制御流体が流出することも導電シート53によって阻止することができる。
【0036】
流路側ボディ44は、PTFE、架橋PTFE、変性PTFE、又はPFAなどのフッ素樹脂によって形成する。駆動側ボディ45は、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のようなエンプラ、 PTFE、変性PTFE、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFEなどフッ素樹脂によって形成する。
【0037】
図3は、弁体21が全閉状態を示している。
エアー流通路47aからガスをピストン用筒状空間46aに供給することで、ピストン付勢手段71の付勢に対向する方向に圧力をピストン70に加える。従って、ピストン70は、弁体21を弁座40aから離間させる方向に移動する。
弁体21が弁座40aから離間することで、被制御流体が流入流路11から流入し、ダイアフラム22には被制御流体の圧力が加わる。ピストン用筒状空間46bのガスは、エアー流通路47bから排出される。
また、弁体21を全開状態から閉状態とするには、ピストン用筒状空間46aにあるガスを、エアー流通路47aから排出する。ガスをピストン用筒状空間46aから排出することで、ピストン用筒状空間46aの圧力は低下し、ピストン70はピストン付勢手段71の付勢によって弁座40aに近接する方向に移動する。ピストン用筒状空間46bには、エアー流通路47aからガスが吸入される。
弁体21が閉状態では、ピストン付勢手段71の付勢によって弁体21が弁座40aに当接する。
【0038】
弁体側ダイアフラム22と導電シート51とは、少なくとも一部が溶着されていることが好ましく、全面で溶着されていることが更に好ましい。
また、軸体側ダイアフラム32と導電シート52についても、少なくとも一部が溶着されていることが好ましく、全面で溶着されていることが更に好ましい。
また、ダイアフラム22と導電シート53についても、少なくとも一部が溶着されていることが好ましく、全面で溶着されていることが更に好ましい。
ダイアフラム22、32と導電シート51、52、53とを溶着することで帯電を確実に防止できる。
導電シート51、52、53は、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材を配合した樹脂シートとすることで、カーボンナノ粒子、カーボンマイクロコイル、又は導電材の配合比によって、導電シート51、52、53の漏洩抵抗値を調整することができる。なお、導電シート51、52、53には、フッ素樹脂(PTFE、変性PTFE、PFA、ETFE、フッ素ゴム等)が適している。
【0039】
ダイアフラム22、32に小孔23を設けない場合には、導電シート51、52、53の漏洩抵抗を104Ω~1011Ωとすることで、帯電を防止できる。
また、ダイアフラム22、32に小孔23を設ける場合には、導電シート51、52、53の漏洩抵抗を102Ω~109Ωとすることで、除電を行いやすい。
【0040】
以上のように、ダイアフラム22、32の他方には、ダイアフラム22、32に接して導電シート51、52、53を配置し、導電シート51、52、53をアース60に接続することで、被制御流体が流れることによって発生するダイアフラム22、32への帯電を導電シート51、52、53によって防止でき、帯電によるコロナ放電をなくすことができる。
なお、アース60は、接地に限られるものではなく、金属筐体、導電性の排水管、又は導電性部材など、導電シート51、52、53より静電容量が大きい部材に導電シート51、52、53が接続されていればよい。