(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157210
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】継目板締結ボルト抜け阻止具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/00 20060101AFI20241030BHJP
B25B 13/48 20060101ALI20241030BHJP
B25B 23/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B25B13/00 C
B25B13/48 Z
B25B23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071423
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】591159837
【氏名又は名称】東進産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】北野 生喜
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC01
3C038DA05
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】四角頭部付きボルトとナットの締付作業の際に、四角頭部側へボルトが不意に抜けてゆくのを防ぐための阻止具を提供する。
【解決手段】細長矩形状の頭部受け板片1と、その両端に配設したマグネット3,3を有し、全体が門型であって、継目板締結ボルトの四角頭部31を上記頭部受け板片1にて受ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1継目板(11)とレール(5)と第2継目板(12)を順次重ね合わせて各貫孔(11A)(5A)(12A)を挿通させた四角頭部(31)付きボルト(30)に対して、ナット締付用作業工具にてナット(35)を締付けるナット締付作業の際に、上記ボルト(30)が逆方向へ抜け出しつつ上記四角頭部(31)が突出移動(V30)することを、阻止する頭部受け板片(1)と、
該頭部受け板片(1)の左右端部(1L)(1R)の各々に付設されて、上記第1継目板(11)の腹部(11F)に吸着自在なマグネット(3)(3)とを、
具備していることを特徴とする継目板締結ボルト抜け阻止具。
【請求項2】
上記マグネット(3)は、弾性変形自在な弾性ブロック(13)を介して、上記頭部受け板片(1)の左右端部(1L)(1R)に、付設されている請求項1記載の継目板締結ボルト抜け阻止具。
【請求項3】
上記第1継目板(11)の腹部(11F)の被吸着面から、吸着状態の上記マグネット(3)を分離させるために、人の指(50)にて引き離しモーメント(M50)を付与自在な分離用レバー片(20)を付設した請求項2記載の継目板締結ボルト抜け阻止具。
【請求項4】
上記頭部受け板片(1)が上記ボルト(30)の四角頭部(31)に対向する裏面(1B)には、発泡ゴム又は発泡プラスチックから成る緩衝板片(6)が固着されている請求項1記載の継目板締結ボルト抜け阻止具。
【請求項5】
上記分離用レバー片(20)には、人の指(50)を掛けるための指掛け窓部(21)が貫設されている請求項3記載の継目板締結ボルト抜け阻止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目板締結ボルト抜け阻止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に於ては、
図11に示すように、鉄道用のレール32,32相互間を、一対の継目板33,34及び継目板締結ボルト30,30とナット35をもって、接続(連結)している。
上記ボルト30は、四角頭部31を有し、一方の継目板33の中央凹溝36の上方内面37・下方内面38に四角頭部31が当って、ボルト軸心L
30廻りの回転を阻止しつつ、ナット35が矢印M方向に、インパクトレンチ等の回転締付作業工具によって、回転させて、継目板33,34を相互に接近方向へ引き寄せて、レール32,32の端部を連結している。なお、39はバネ座金を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、
図11に於て、前記インパクトレンチ等の作業工具(図示省略)によって、ナット35をボルト30のネジ部先端30Tへ螺合開始せんとした際に、以下のような問題が発生する。
即ち、(
図11(A)に於て、)作業工具によってナット35をネジ部先端30Tへ押込もうとした瞬間に、大きな軸心方向の力F
30が発生し、ボルト30は、
図11(A)の右方向へ僅かに逃げる。つまり、
図11(A)に示すように、四角頭部31の基端面と、継目板33の中央凹溝36の溝底面との間に小間隙(ΔG)が発生する。
【0005】
これによって、四角頭部31が、中央凹溝36の上方内面37・下方内面38と大きく離れて、四角頭部31(ボルト30)が軸心L
30廻りに回転を始めて、ボルト30のネジ部先端30Tへの螺進が不可能となる。
つまり、
図11の矢印M方向のナット35の回転と一緒に、ボルト30も軸心L
30廻りに回転して、螺進作業が困難(不可能)となる。
【0006】
そこで、従来から作業者は、予め自分の手の指H10を、ボルト30の四角頭部31に押し当てて、作業工具によるナット35の螺進を行う必要があった。
しかし、このような作業者の手をもって、ボルト30が(矢印F30方向への)逃げることを阻止する作業は、危険が伴い、作業者が指H10を怪我(負傷)する事故が(従来から)発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点を解決して、継目板締結ボルトが矢印F30方向へ小寸法抜け出る(逃げる)ことを、防止できる簡易な構造の抜け阻止具を、提供することを、目的とする。
特に、インパクトレンチ等の作業工具によって、継目板締結ボルトの螺着作業を、安全かつ能率良く行うことを実現することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、第1継目板とレールと第2継目板を順次重ね合わせて各貫孔を挿通させた四角頭部付きボルトに対して、ナット締付用作業工具にてナットを締付けるナット締付作業の際に、上記ボルトが逆方向へ抜け出しつつ上記四角頭部が突出移動することを、阻止する頭部受け板片と;該頭部受け板片の左右端部の各々に付設されて、上記第1継目板の腹部に吸着自在なマグネットとを;具備している。
【0009】
また、上記マグネットは、弾性変形自在な弾性ブロックを介して、上記頭部受け板片の左右端部に、付設されている。
また、上記第1継目板の腹部の被吸着面から、吸着状態の上記マグネットを分離させるために、人の指にて引き離しモーメントを付与自在な分離用レバー片を付設した。
また、上記頭部受け板片が上記ボルトの四角頭部に対向する裏面には、発泡ゴム又は発泡プラスチックから成る緩衝板片が固着されている。
また、上記分離用レバー片には、人の指を掛けるための指掛け窓部が貫設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、左右一対のマグネットを、レール腹部に、磁力で吸着させるだけで、確実かつ容易に、継目板締結ボルトが、軸心方向に逃げることを、防止できる。従来の指の怪我等の人身事故を防止できて、レール敷設工事の安全性が著しく改善できる。しかも、レール敷設工事の能率改善にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施の一例を示し、(A)は平面図、(B)は主要構成部品の縦断面図である。
【
図5】分離用レバー片の一方を、人の指にて、引き離しモーメントを付与している状態の平面図である。
【
図6】両方のマグネットが引き離される状態を示す平面図である。
【
図7】ボルトの一例を示し、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【
図8】ナット締付作業状態を説明するための一部断面側面図である。
【
図9】ナット締付作業状態を説明するための一部断面平面図である。
【
図10】ナット締付作業状態を説明するための正面図である。
【
図11】従来の問題点を説明するために示した図であって、(A)は一部断面側面図、(B)は四角頭部付きボルトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1~
図3に於て、本発明に係る継目板締結ボルト抜け阻止具10の一例を示し、
図8~
図10に於てはその使用状態を示している。さらに、
図7では、四角頭部31付きのボルト30を示すが、このボルト30は、従来例を示した
図11に於て使用されていたものと、同一のものである。
【0013】
本発明の締結ボルト抜け阻止具10は、長方形状の頭部受け板片1と、一対のマグネット3,3を、備えている。
図8~
図10に示したように、第1継目板11とレール5と第2継目板12を順次重ね合わせて、各貫孔11A,5A,12Aに、上記ボルト30を挿通させ、その次に、
図8と
図9のように、インパクトレンチ等のナット締付用作業工具(図示省略)によって、ナット35を締付けるナット締付作業の際に、上記ナット締付用作業工具からの(押圧方向の)力F
30を受けて(
図8,
図9の矢印参照)、ボルト30が逆方向へ抜け出しつつボルト30の四角頭部31が突出方向への移動―――これを突出移動V
30と呼ぶ―――することを、本発明に係る締結ボルト抜け阻止具10の前記頭部受け板片1が、阻止する。
【0014】
言い換えれば、締結ボルト抜け阻止具10の頭部受け板片1が、
図9に示す突出移動V
30を阻止している。突出移動V
30を起こさんとしているベクトル(力)F
30に対し、頭部受け板片1が逆方向のベクトル(力)Gをもって、阻止している。このように、向きは 180°反対であるが、ベクトル(力)F
30とベクトル(力)Gの絶対値は相等しい。
但し、バネ座金39が付設されている場合には、ベクトルGはベクトルF
30よりも僅かに小さくなる。
【0015】
ところで、
図1,
図2、及び、
図4~
図6と
図9に示すように、頭部受け板片1がボルト30の四角頭部31に対向する裏面1Bには、発泡ゴム又は発泡プラスチックから成る緩衝板片6が(接着剤又はビス等の小固着具にて)固着されている。
図9に示した四角頭部31の突出移動V
30を、緩衝板片6をもって受止めて、衝撃音の発生を低減できると共に、締結ボルト抜け阻止具10の構成部材等の損傷を防いで、使用耐久寿命が延びる。
【0016】
また、
図1~
図6等に示したように、前記マグネット3は横断面四角の棒状体が好ましい。しかも横断面コの字の鋼板型材4にて包囲(カバー)されている。要するに、頭部受け板片1の左右端部1L,1Rの各々に、マグネット3が付設され、このマグネット3,3は、鋼板型材4を介して、第1継目板11の腹部11Fに吸着自在である。
【0017】
次に、
図1~
図6に示したように、マグネット3(及び、鋼板型材4)は、弾性変形自在な弾性ブロック13,13を介して、頭部受け板片1の左右端部1L,1Rに付設されている。
弾性ブロック13は、具体的には短円柱形状が望ましい。かつ、材質は弾性変形自在なゴムや軟質プラスチックとする。さらに、
図1~
図3のように、左右に各2個ずつ配設するのが望ましい。
【0018】
特に、
図4→
図5→
図6と順次図示したように、(後述する)分離用レバー片20によって、マグネット3を、第1継目板11の腹部11Fから、人の指の力にて、分離させる際に、短円柱形状の弾性ブロック13が、自在に弯曲弾性変形し、容易かつ迅速に、マグネット3を分離できる利点がある。
つまり、弾性ブロック13の自在な弯曲弾性変形によって、マグネット3(鋼板型材4)の下端が傾動しつつ、第1継目板11から軽く(迅速に)分離できる。
【0019】
ここで分離用レバー片20について説明すると、人の指50を掛けるための指掛け窓部21が貫設されている。例えば、楕円形に窓部21が形成される。
また、レバー片20は、第1継目板11の腹部11Fの被吸着面から、吸着状態のマグネット3(及び鋼板型材4)を、
図4から
図5、さらに、
図6のように、分離させるために、人の指50にて、引き離しモーメントM
50を付与自在である。
しかも、
図4,
図5,
図6からも明らかとなるように、マグネット3(鋼板型材4)と、レバー片20とは、小ネジ22にて連結され、
図5及び
図6のように、一体構造の梃子のように作動する。この際に、弾性ブロック13が弾性弯曲(圧縮)変形することによって、スムーズに梃子の如く傾動する。
【0020】
図5及び
図6に於ける点Pが梃子の揺動中心(支点)となって、人の指50による引き離しモーメントM
50が作用する。即ち、支点Pから大きな反力を受け、
図6に示したように、迅速かつ容易に、締結ボルト抜け阻止具10を、第1継目板11の腹部11Fから、分離できる。
【0021】
また、
図2(A)(B)と、
図1,
図3に示したように、弾性ブロック13は、左右に2個ずつ配設されていると共に、その構造は、ネジ孔14A付きの円板14と、この円板14に固着された短円柱型の弾性体15と、この弾性体15の他の面に固着の円板16と、この円板16から(一体物として)軸心方向に突設されたボルト杆17とから成っている場合を、例示している。
弾性ブロック13のネジ孔14Aには小ネジ22が螺着される。また、ボルト杆17は、頭部受け板片1の貫孔と、当て板18の貫孔に挿通して、先端にダブルナット19が螺着される。
【0022】
図2(A)から判るように、締結ボルト抜け阻止具10は、いわば「門型」に構成されると共にその左右外方向へ一対の分離用レバー片20,20が(斜め方向に)突設した形状である。
このような、「門型」に構成された締結ボルト抜け阻止具10は、レバー片20,20に人の指50を掛けて、引き離しモーメントM
50,M
50を付与すれば、
図5及び
図6に示すように、弾性ブロック13,13が柔軟に弾性変形しつつ、マグネット3と鋼板型材4を一体に傾動させ、第1継目板11の腹部11Fから、容易かつ迅速に分離させることができる。即ち、締結ボルト抜け阻止具10を取去ることができる。
【0023】
本発明は、以上詳述したように、第1継目板11とレール5と第2継目板12を順次重ね合わせて各貫孔11A,5A,12Aを挿通させた四角頭部31付きボルト30に対して、ナット締付用作業工具にてナット35を締付けるナット締付作業の際に、上記ボルト30が逆方向へ抜け出しつつ上記四角頭部31が突出移動V
30することを、阻止する頭部受け板片1と;該頭部受け板片1の左右端部1L,1Rの各々に付設されて、上記第1継目板11の腹部11Fに吸着自在なマグネット3,3とを;具備しているので、マグネット3,3を第1継目板11の腹部11Fへ簡単に吸着できて、
図11に示したように、従来の作業者が手の指H
10をもって四角頭部31を押え込んでおく必要が全くなくなり、手の指H
10を怪我するという事故を、簡易な構成の本発明によって、防止できる。
【0024】
また、本発明では、上記マグネット3は、弾性変形自在な弾性ブロック13を介して、上記頭部受け板片1の左右端部1L,1Rに、付設されているので、ボルト30の四角頭部31が受け板片1に衝突した瞬間に、弾性ブロック13によって、衝撃を吸収できる。この衝撃力吸収によって、マグネット3が、第1継目板11の腹部11Fから不意に離脱することを防止できる。さらに、作業中の衝撃音の発生を防止できる。また、弾性ブロック13は、本物品(抜け阻止具)を第1継目板11から取外す作業の際、
図5及び
図6に示した如く、傾倒・弯曲状に弾性変形を起こして、マグネット3を、第1継目板11から離脱させる作業を容易かつ迅速に行うことを可能としている。
【0025】
また、上記第1継目板11の腹部11Fの被吸着面から、吸着状態の上記マグネット3を分離させるために、人の指50にて引き離しモーメントM
50を付与自在な分離用レバー片20を付設した構成であるので、本物品の(作業後の)取外しが簡単かつ迅速に行い得る。さらに、
図5と
図6に示したように、レバー片20に引き離しモーメントM
50が付与されると、マグネット3の近傍の点Pを支点として、梃子の原理によって、マグネット3(鋼板型材4)は、第1継目板11から一層、簡単かつ迅速に、取外しを行い得る。
【0026】
また、上記頭部受け板片1が上記ボルト30の四角頭部31に対向する裏面1Bには、発泡ゴム又は発泡プラスチックから成る緩衝板片6が固着されているので、ナット締付作業中に四角頭部31が突出移動V30しつつ頭部受け板片1に激しく衝突する際の騒音を、低減乃至防止できる。また、突出移動V30しつつ四角頭部31が板片1に衝突しても、緩衝板片6にて緩衝エネルギーが吸収されて、第1継目板11の腹部11Fから、マグネット3が分離する不具合を、予防できる。
【0027】
また、上記分離用レバー片20には、人の指50を掛けるための指掛け窓部21が貫設されているので、
図5,
図6に示したように、人の指50を窓部21に引掛けて、大きなマグネット引き離しモーメントM
50を、与えることが容易である。
【符号の説明】
【0028】
1 頭部受け板片
1B 裏面
1L 左端部
1R 右端部
3 マグネット
5 レール
5A 貫孔
6 緩衝板片
11 第1継目板
11A 貫孔
11F 腹部
12 第2継目板
12A 貫孔
13 弾性ブロック
20 分離用レバー片
21 指掛け窓部
30 ボルト
31 四角頭部
35 ナット
50 人の指
M50 引き離しモーメント
V30 突出移動