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特開2024-157215車両の走行制御装置および走行制御方法
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  • 特開-車両の走行制御装置および走行制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157215
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置および走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20241030BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20241030BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071440
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】大石 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘昌
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC18Z
3D241DC21Z
3D241DC25Z
3D241DC35Z
3D241DC46Z
(57)【要約】
【課題】路面上にオイル等の危険な液体が存在する場合の、車両の走行の安全性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】走行制御装置22は、車両10が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出する。走行制御装置22は、上記液体の存在が検出された場合、車両10を減速させる。走行制御装置22は、車両10の減速後、車両10の周囲の状況を確認する。車両10の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、走行制御装置22は、車両10を一時停止させ、対向車が通り過ぎた後に上記液体を回避するように車両10を走行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出する検出部と、
前記液体の存在が検出された場合、前記車両を減速させる走行制御部と、
前記車両の減速後、前記車両の周囲の状況を確認する周囲確認部と、
を備え、
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、前記走行制御部は、前記車両を一時停止させ、前記対向車が通り過ぎた後に前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在することが確認された場合、前記走行制御部は、前記液体が存在する領域を前記車両に走行させる、
請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記周囲確認部は、前記液体が存在する領域を前記車両が走行中も、前記車両の周囲の状況を確認し、
前記走行制御部は、前記液体が存在する領域を走行中の前記車両の周囲の状況に基づいて、前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出し、
前記液体の存在が検出された場合、前記車両を減速させ、
前記車両の減速後、前記車両の周囲の状況を確認し、
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、前記車両を一時停止させ、前記対向車が通り過ぎた後に前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
ことをコンピュータが実行する車両の走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はデータ処理技術に関し、特に車両の走行制御装置および走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面上の高輝度領域を検出することにより路面上の水溜まりを認識し、水溜まりを考慮した新たな目標走行経路を設定する走行制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-114191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の走行制御装置は、水溜まりの回避が困難な場合、水溜まりの上を走行する経路を設定する。そのため、路面上の液体がスリップしやすいオイル等の危険な液体であっても、その上を走行することになる。
【0005】
本開示はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、路面上にオイル等の危険な液体が存在する場合の、車両の走行の安全性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様は、車両の走行制御装置である。この装置は、車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出する検出部と、液体の存在が検出された場合、車両を減速させる走行制御部と、車両の減速後、車両の周囲の状況を確認する周囲確認部とを備える。車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、走行制御部は、車両を一時停止させ、対向車が通り過ぎた後に液体を回避するように車両を走行させる。
【0007】
本開示の別の態様は、車両の走行制御方法である。この方法は、車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出し、液体の存在が検出された場合、車両を減速させ、車両の減速後、車両の周囲の状況を確認し、車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、車両を一時停止させ、対向車が通り過ぎた後に液体を回避するように車両を走行させることをコンピュータが実行する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体、走行制御装置が搭載された車両などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、路面上にオイル等の危険な液体が存在する場合の、車両の走行の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の車両の主要な構成を示す図である。
図2図1の走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
図3図2のS36の処理の詳細を示すフローチャートである。
図4】オイル検知時の車両の動作を示す図である。
図5図2のS36の処理の詳細を示すフローチャートであり、図3に続く動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(Integrated Circuit)(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。ここではICあるいはLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)もしくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array)(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。また、プロセッサは、SoC(System on a Chip)、MPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)の内少なくとも1つを含んでもよい。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録されてもよいし、コンピュータが読み取り可能なRAM(Random Access Memory)などの一時的記憶媒体に記録されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体もしくは記憶媒体に供給されてもよい。
【0012】
実施形態の概要を説明する。上述の特許文献1に記載の走行制御装置は、水溜まりの回避が困難な場合、水溜まりの上を走行する経路を設定する。そのため、路面上の液体がスリップしやすいオイル等の危険な液体であっても、その上を走行することになる。実施形態の車両の走行制御装置は、路面上に存在する危険な液体を考慮して車両の走行を制御することにより、車両の安全な走行を効果的に支援する。実施形態における路面上の危険な液体は、水より潤滑性が高い液体であり、具体的にはオイルとする。
【0013】
実施形態の詳細を説明する。図1は、実施形態の車両10の主要な構成を示す。車両10は、カメラ12、センサ装置14、原動機ECU(Electronic Control Unit)16、ブレーキECU18、ステアリングECU20、走行制御装置22を備える。
【0014】
カメラ12は、車両10の周囲を撮影する撮影装置である。実施形態のカメラ12は、車両10の前方(言い換えれば進行方向)、側方および後方を撮影する。カメラ12は、撮影画像を走行制御装置22へ出力する。
【0015】
センサ装置14は、車両10の周囲の物理量を検出し、その物理量に基づいて、車両10の周囲の状況に関する情報(以下「周囲情報」とも呼ぶ。)を走行制御装置22へ出力する。センサ装置14は、複数種類のセンサを含んでもよい。例えば、センサ装置14は、ジャイロセンサ、加速度センサ、LIDAR装置、レーダー装置、GPS(Global Positioning System)センサ等を含んでもよい。例えば、センサ装置14としてのLIDAR装置は、周囲情報として、対向車の有無と対向車までの距離を示す情報、および、後続車の有無と後続車までの距離を示す情報を走行制御装置22へ出力してもよい。
【0016】
原動機ECU16は、車両10の原動機(エンジンやモータ等)の動作を電子制御する装置である。ブレーキECU18は、車両10のブレーキの動作を電子制御する装置である。ステアリングECU20は、車両10のステアリングの動作を電子制御する装置である。
【0017】
走行制御装置22は、カメラ12から出力された撮像画像と、センサ装置14から出力された周囲情報とに基づいて、車両10の走行および挙動を制御する情報処理装置である。走行制御装置22は、ECUとして実装されてもよい。
【0018】
図1は、走行制御装置22の機能ブロックを示すブロック図を含む。本開示のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU・メモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
走行制御装置22は、液体検出部30、周囲確認部32、経路設定部34、走行制御部36を備える。これら複数の機能ブロックは、コンピュータプログラム(ここでは「走行制御プログラム」とも呼ぶ。)に実装されてもよい。走行制御プログラムは、記録媒体に格納され、その記録媒体を介して走行制御装置22のストレージにインストールされてもよい。または、走行制御プログラムは、通信網を介してダウンロードされ、走行制御装置22のストレージにインストールされてもよい。走行制御装置22のプロセッサ(CPU等)は、走行制御プログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0020】
液体検出部30は、車両10の進行方向の路面上に水溜まり等の液体が存在することを検出する。具体的には、液体検出部30は、上記の特許文献1と同様に、カメラ12による撮影画像に写る路面の輝度値に基づいて、車両10の進行方向の路面上に存在する液体の位置を検出する。
【0021】
また、液体検出部30は、水溜まり等の液体が存在することを検出した場合、その液体がオイルか否かをさらに推定する。液体検出部30は、撮影画像に写る液体がオイルか否かを検出するための、予め定められた基準データを保持する。実施形態の基準データは、オイルの画像に写るオイルの色彩に関するデータである。液体検出部30は、撮影画像において液体が写る領域の色彩が基準データに整合する場合であり、例えば、液体領域の色彩に関する値と基準データが定める値との差が所定の閾値内である場合、撮影画像に写る液体をオイルと判定する。一方、撮影画像において液体が写る領域の色彩が基準データに不整合の場合、液体検出部30は、撮影画像に写る液体をオイルではないと判定する。
【0022】
周囲確認部32は、カメラ12から出力された撮像画像と、センサ装置14から出力された周囲情報とに基づいて、車両10の周囲の状況を確認する。実施形態の周囲確認部32は、車両10が走行中の車線(以下「自車線」とも呼ぶ。)を検出し、自車線における車両10の後続車を検出する。また、周囲確認部32は、自車線と同一方向に走行する他車線(以下「並走隣接車線」とも呼ぶ。)を検出し、並走隣接車線を走行する並走車と後続車を検出する。周囲確認部32は、並走隣接車線を走行する他車両と車両10との位置関係を検出する。また、周囲確認部32は、自車線と反対方向に走行する他車線(以下「対向車線」とも呼ぶ。)を検出し、対向車線を走行する対向車を検出する。周囲確認部32は、対向車線を走行する他車両と車両10との位置関係を検出する。
【0023】
また、周囲確認部32は、カメラ12から出力された撮像画像と、センサ装置14から出力された周囲情報とに基づいて、車両10の走行位置における標識や路面標示を検出する。なお、センサ装置14から周囲確認部32へ出力される周囲情報は、車両10の現在位置を示す情報を含む。周囲確認部32は、車両10の現在位置と、予め記憶された地図情報とに基づいて、車両10の走行位置における標識や路面標示を特定してもよい。
【0024】
経路設定部34は、車両10の乗員により設定された目的地と、カメラ12から出力された撮像画像と、センサ装置14から出力された周囲情報とに基づいて、車両10の走行経路を設定する。
【0025】
走行制御部36は、(1)カメラ12から出力された撮像画像とセンサ装置14から出力された周囲情報、(2)液体検出部30による路面上の液体とオイルの検出状況、(3)周囲確認部32により確認された車両10の周囲の状況、(4)経路設定部34により設定された走行経路に基づいて、車両10の走行を制御する。例えば、走行制御部36は、原動機ECU16とブレーキECU18に対して制御信号を送信することにより、車両10の加速と減速を制御する。また、走行制御部36は、ステアリングECU20に対して制御信号を送信することにより車両10の進行方向を制御する。
【0026】
実施形態では、液体検出部30は、車両10が走行する路面上にオイルが存在することを検出する。走行制御部36は、オイルの存在が検出された場合、車両10を減速させる。周囲確認部32は、車両10の減速後、車両10の周囲の状況を確認する。車両10の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、走行制御部36は、車両10を一時停止させ、対向車が通り過ぎた後にオイルを回避するように車両10を走行させる。
【0027】
以上の構成による車両10の動作を詳細に説明する。図2は、図1の走行制御装置22の動作を示すフローチャートである。走行制御装置22は、図2に示す処理を繰り返し実行する。図2に示す処理には、上記特許文献1に記載の技術を適宜適用可能である。
【0028】
図2には不図示だが、カメラ12は、車両10の周囲が写る撮影画像を所定の周期で走行制御装置22へ出力する。センサ装置14は、車両10の周囲の状況を示す周囲情報を所定の周期で走行制御装置22へ出力する。経路設定部34は、予め定められた目的地までの走行経路であって、車線内での走行位置を含む走行経路を設定する。走行制御部36は、車両10の自動運転を制御する。具体的には、走行制御部36は、原動機ECU16、ブレーキECU18、ステアリングECU20に対して制御信号を送信し、経路設定部34により設定された走行経路に沿って車両10を走行させる。
【0029】
走行制御装置22の液体検出部30は、撮影画像に写る路面領域の輝度に基づいて、路面上に水溜まり等が存在すること、および、水溜まり等の位置を検出する(S10)。水溜まり等が検出された場合(S12のY)、走行制御装置22の周囲確認部32は、水溜まり等を避けて走行できる余地が自車線内にあるか否かを判定する。水溜まり等を避けて走行できる余地が自車線内になければ(S14のN)、周囲確認部32は、並走隣接車線が存在するか否かを判定する。なお、路面上に水溜まり等の存在を未検出であれば(S12のN)、S14以降の処理をスキップする。
【0030】
周囲確認部32は、並走隣接車線が存在せず(S16のN)、自車線において対向車線へのはみ出し走行が禁止されていなければ(S18のN)、対向車線に対向車両が存在するか否かを判定する。そして対向車がないことが確認されれば(S20のN)、走行制御装置22の経路設定部34は、車両10の新たな走行経路として、対向車線にはみ出して水溜まり等を回避する経路を設定する(S22)。走行制御装置22の走行制御部36は、経路設定部34により設定された走行経路にしたがって、対向車線にはみ出して水溜まり等を回避するよう車両10の走行を制御する。
【0031】
周囲確認部32は、カメラ12による撮影画像に写る水溜まり等の位置の推移に基づいて、車両10が水溜まり等の横位置を通過したか否かを繰り返し判定する(S24のN)。車両10が水溜まり等の横位置を通過した場合(S24のY)、経路設定部34は、車両10の走行経路を、水溜まり等検出前の元の走行経路に戻す(S26)。
【0032】
水溜まり等を避けて走行できる余地が自車線内にある場合(S14のY)、経路設定部34は、車両10の新たな走行経路として、他車線に移動せずに自車線内で水溜まり等を回避する経路を設定する(S28)。以降、S24の処理に進む。
【0033】
水溜まり等を避けて走行できる余地が自車線内にないが、並走隣接車線が存在する場合(S16のY)、周囲確認部32は、並走隣接車線への車線変更が規制(禁止)されているか否かを判定する。車線変更の規制がなければ(S30のN)、並走隣接車線に並走車または後続車が存在するか否かを判定する。並走隣接車線に並走車も後続車も存在しなければ(S32のN)、経路設定部34は、並走隣接車線へ車線変更する走行経路を設定する。走行制御部36は、並走隣接車線へ車線変更するよう車両10の走行を制御する(S34)。以降、S14の処理に戻る。
【0034】
並走隣接車線または対向車線への車線変更により水溜まり等を回避することが困難である場合、走行制御装置22は、水溜まり等回避困難時処理を実行する(S36)。並走隣接車線または対向車線への車線変更により水溜まり等を回避することが困難である場合は、(1)並走隣接車線がなく、自車線において対向車線へのはみ出し走行が禁止されている場合(S18のY)、(2)自車線において対向車線へのはみ出し走行が禁止されていないが、対向車が存在する場合(S20のY)、(3)並走隣接車線があるが、並走輪生車線への車線変更が規制されている場合(S30のY)、(4)並走隣接車線に並走車または後続車が存在する場合(S32のY)を含む。
【0035】
図3は、図2のS36の処理(水溜まり等回避困難時処理)の詳細を示すフローチャートである。走行制御装置22の経路設定部34は、車両10の新たな走行経路として、水溜まり等の領域上を通過する経路を設定する(S40)。走行制御装置22の液体検出部30は、図2のS10で検出した水溜まり等の色彩に基づいて、水溜まり等がオイルであるか否かを判定する(S41)。水溜まり等がオイルではないと判定された場合(S42のN)、図2のS24に進む。
【0036】
水溜まり等がオイルであると判定された場合(S42のY)、走行制御装置22の走行制御部36は、車両10の走行速度を所定の第1速度以下に減速させる(S44)。減速の目標となる第1速度は、オイルの手前で車両10を停止させる事ができる速度閾値である。第1速度は、開発者の知見や車両10を用いた実験により決定されてよい。
【0037】
対向車線に回避領域があって(S46のY)、かつ、並走隣接車線が存在しない場合(S48のN)、周囲確認部32は、対向車線へのはみ出しが禁止されているか否かを判定する。対向車線へのはみ出しが禁止されていなければ(S50のN)、周囲確認部32は、第1速度に減速後の状況で、対向車線に対向車が存在するか否かと、自車線に後続車が存在するか否かを判定する。
【0038】
第1速度に減速後の状況において、対向車線に対向車が存在し(S52のY)、かつ、自車線に後続車が存在しなければ(S54のN)、走行制御部36は、車両10を一時停止させる(S56)。そしてS52の判定に戻る。第1速度に減速後の状況において、対向車線に対向車が存在しなければ(S52のN)、図2のS22の処理を実行する。すなわち、経路設定部34は、対向車線にはみ出してオイルを回避する新たな走行経路を設定し、走行制御部36は、対向車線にはみ出してオイルを回避するよう車両10の走行を制御する。
【0039】
図4は、オイル検知時の車両10の動作を示すものであり、主に図3に関連する車両10の動作を模式的に示している。
(1)車両10は、進行方向の自車線内にオイル52が存在することを検知した場合であって、対向車線への回避が困難である場合には、即座に減速する。
(2)減速すると周囲の状況が変化するため、車両10は、減速後に周囲の状況を再度確認する。
(3)対向車線に対向車50が存在し、自車線に後続車がなければ、車両10は一時停止する。
【0040】
(4)車両10が一時停止している間に、対向車50が通り過ぎる。
(5)車両10は、対向車50の通過後に、対向車線にはみ出してオイル52を回避する。
このように、対向車が存在しても後続車が存在しない場合には、車両10を一時停止させることにより、自車線上のオイルを回避する可能性を高め、車両10の走行の安全性を向上させることができる。
【0041】
図3に戻り、対向車線に対向車が存在し、かつ、自車線に後続車が存在すれば(S54のY)、一時停止はかえって危険であるため、後述の図5の処理に移行する。車線のはみ出しが規制されており(S50のY)、または、対向車線に回避領域がない場合も(S46のN)、後述の図5の処理に移行する。
【0042】
自車線に対する並走隣接車線が存在する(すなわち片側二車線以上の道路である)場合であって(S48のY)、かつ、並走隣接車線への車線変更の規制がなければ(S58のN)、周囲確認部32は、並走隣接車線に並走車または後続車が存在するか否か、および、自車線に後続車が存在するかを判定する。並走隣接車線に並走車または後続車が存在し(S60のY)、かつ、自車線に後続車がなければ(S62のN)、走行制御部36は、車両10を一時停止させる(S64)。そしてS60に戻る。並走隣接車線に並走車と後続車のいずれも存在しなければ(S60のN)、走行制御部36は、並走隣接車線へ車線変更するように車両10の走行を制御する(S66)。そして図2のS14に戻る。
【0043】
S58~S66の処理は、図4に示した処理と類似する。すなわち、自車線上にオイルが存在し、並走隣接車線が存在する場合も、図4の(1)(2)と同じ動作を実行する。並走隣接車線に並走車または後続車が存在し、自車線に後続車がなければ、車両10は一時停止することにより、並走隣接車線の並走車または後続車を先に行かせる。そして車両10は、並走隣接車線に車線変更してオイルを回避する。
【0044】
自車線に後続車両が存在すれば(S62のY)、一時停止はかえって危険であるため、後述の図5の処理に移行する。車線変更が規制されている場合も(S58のY)、後述の図5の処理に移行する。
【0045】
図5も、図2のS36の処理(水溜まり等回避困難時処理)の詳細を示すフローチャートであり、図3に続く動作を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、主に、路面に存在するオイル領域を回避することが困難で、オイル領域の上を車両10が走行する場合の動作を示している。
【0046】
走行制御装置22の周囲確認部32は、車両10の速度が所定の第2速度まで減速したか否かを確認する。第2速度は、車両10がオイル領域の上を安全に直進できる速度閾値であり、例えば時速20KMであってもよい。第2速度は、開発者の知見や車両10を用いた実験により決定されてよい。車両10の速度が第2速度以下の場合(S70のY)、図2のS24に移行する。すなわち、オイル領域の上をそのまま通過する。このように、対向車が存在し、かつ、後続車が存在することが確認された場合、他車線への回避が困難であるため、走行制御部36は、自車線内のオイルが存在する領域を安全な速度で車両10に走行させる。
【0047】
車両10の速度が第2速度より速ければ(S70のN)、周囲確認部32は、車両10がオイル領域上を走行中であるか否かを判定する。車両10がオイル領域上を走行中と判定されると(S72のY)、走行制御部36は、予め定められたスリップしにくいブレーキ制御を実行して車両10をさらに減速させる。スリップしにくいブレーキ制御は、車両10のタイヤがロックしにくいブレーキ制御であってもよく、小刻みに複数回に分けてブレーキを作動させることでもよい。
【0048】
周囲確認部32は、車両10がオイル領域上を走行中に、車両10の進行方向へのオイル領域の長さが所定の閾値以上であるか否かを判定し、さらに、車両10が安全に回避行動可能な第3速度まで減速したか否かを確認する。オイル領域の長さの閾値は、開発者の知見や車両10を用いた実験により決定されてよい。第3速度は、オイル領域の上で安全に進路変更(言い換えればステアリング操作)ができる速度閾値であり、例えば時速10KMであってもよい。第3速度も、開発者の知見や車両10を用いた実験により決定されてよい。
【0049】
車両10の進行方向へのオイル領域の長さが上記閾値未満であり(S76のN)、または、車両10の速度が第3速度より速ければ(S78のN)、S72に戻る。車両10の進行方向へのオイル領域の長さが上記閾値であり(S76のY)、かつ、車両10の速度が第3速度以下であれば(S78のY)、図3のS46に戻る。以降、既述したように、並走隣接車線または対向車線への退避を再度試みる。このように、走行制御装置22は、車両10がオイル領域を走行中も車両10の周囲の状況を確認し、車両10の周囲の状況が許せば、オイル領域を回避するように車両10を走行させる。これにより、オイル上を車両10が長時間走行することを抑制できる。
【0050】
車両10がオイル領域上を走行中でなく(S72のN)、オイル領域上を通過した場合(S80のY)、図2のS26に移行し、経路設定部34は、車両10の走行経路を、水溜まり等検出前の元の走行経路に戻す。オイル領域上を通過していなければ、すなわち、車両10がまだオイル領域に達していなければ(S80のN)、図3のS44に移行する。
【0051】
実施形態の走行制御装置22によると、路面上にオイルが存在する場合の、車両の走行の安全性を向上させることができる。例えば、走行制御装置22は、対向車が存在しても後続車が存在しない場合には、車両10を一時停止させることにより、滑りやすいオイルの上を走行することを回避する可能性を高めることができる。なお、実施形態に記載の車両の走行制御技術は、オイル以外の、路面上に存在する水より潤滑性が高い様々な液体の回避に適用可能である。
【0052】
以上、本開示を実施形態をもとに説明した。実施形態は例示であり、実施形態の各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0053】
上記実施形態の車両10および走行制御装置22は完全自動運転の構成としたが、実施形態に記載の車両の走行制御技術は、準完全自動運転の車両にも適用可能である。準完全自動運転は、例えば、車両の加減速やステアリング操作等、車両の運転の一部に乗員が関わる運転形態である。
【0054】
上述した実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【0055】
<付記>
以上の実施形態および変形例の記載により、下記の技術が開示される。
[技術1]
車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出する検出部と、
前記液体の存在が検出された場合、前記車両を減速させる走行制御部と、
前記車両の減速の開始後に、前記車両の周囲の状況を確認する周囲確認部と、
を備え、
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、前記走行制御部は、前記車両を一時停止させ、前記対向車が通り過ぎた後に前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
車両の走行制御装置。
この走行制御装置によると、対向車が存在しても後続車が存在しない場合には、車両を一時停止させることにより、滑りやすい危険な液体を回避する可能性を高めることができる。
[技術2]
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在することが確認された場合、前記走行制御部は、前記液体が存在する領域を前記車両に走行させる、
技術1に記載の車両の走行制御装置。
この走行制御装置によると、後続車から追突される危険度を低減できる。
[技術3]
前記周囲確認部は、前記液体が存在する領域を前記車両が走行中も、前記車両の周囲の状況を確認し、
前記走行制御部は、前記液体が存在する領域を走行中の前記車両の周囲の状況に基づいて、前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
技術2に記載の車両の走行制御装置
この走行制御装置によると、滑りやすい危険な液体上の走行を抑制しやすくなる。
[技術4]
車両が走行する路面上に水より潤滑性が高い液体が存在することを検出し、
前記液体の存在が検出された場合、前記車両を減速させ、
前記車両の減速の開始後に、前記車両の周囲の状況を確認し、
前記車両の周囲の状況として、対向車が存在し、かつ、後続車が存在しないことが確認された場合、前記車両を一時停止させ、前記対向車が通り過ぎた後に前記液体を回避するように前記車両を走行させる、
ことをコンピュータが実行する車両の走行制御方法。
この走行制御方法によると、対向車が存在しても後続車が存在しない場合には、車両を一時停止させることにより、滑りやすい危険な液体を回避する可能性を高めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 車両、 12 カメラ、 14 センサ装置、 22 走行制御装置、 30 液体検出部、 32 周囲確認部、 34 経路設定部、 36 走行制御部。
図1
図2
図3
図4
図5