(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157218
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】計測システム、制御装置、及び計測装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/56 20060101AFI20241030BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241030BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20241030BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20241030BHJP
G01S 13/536 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G01S13/56
A61B5/11 110
A61B5/16 110
A61B5/0245 Z
G01S13/536
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071445
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】山口 優哉
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 知昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 若菜
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C038PP03
4C038VA04
4C038VA16
4C038VB31
4C038VC20
5J070AB24
5J070AC02
5J070AE09
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】消費電力の抑制が可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供する。また、自律神経分析の精度向上が可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供する。
【解決手段】一態様に係る計測システムは、少なくとも1台の計測装置と制御装置とを有する計測システムである。前記計測装置は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能である。前記制御装置は、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に計測を行わせるように計測装置を制御し、人物が安静状態であることを検出すると連続的に計測を行わせるように計測装置を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の計測装置と、
制御装置と、を有し、
前記計測装置は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能であり、
前記制御装置は、前記人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御する
計測システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記人物が安静状態であることを検出するまで前記計測を前記人物が安静状態であるか否かの検出に利用し、前記人物が安静状態であることを検出した後は前記計測を前記自律神経情報の取得に利用する
請求項1記載の計測システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記人物の心拍数が閾値以下であり、かつ、前記心拍数の時間的な変化が心拍数閾値以下の場合、前記人物が安静状態であることを検出する
請求項1記載の計測システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記計測装置による計測結果に基づいて、前記人物が一人であり、かつ、前記安静状態を検出するまで、前記間欠的な計測を継続させるように前記計測装置を制御する
請求項1記載の計測システム。
【請求項5】
前記計測装置は、第1計測装置及び第2計測装置を含み、
前記制御装置は、間欠的に前記計測を行わせるように前記第1計測装置を制御するとともに前記第2計測装置の前記計測を停止させ、前記安静状態を検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記第1及び第2計測装置を制御し、前記第1計測装置及び前記第2計測装置の計測結果のうち精度の良い計測結果を採用し、他方の計測結果を取得した前記第1計測装置及び前記第2計測装置のいずれかの前記計測を停止させる
請求項1記載の計測システム。
【請求項6】
前記計測装置は、第1計測装置乃至第3計測装置を含み、
前記制御装置は、間欠的に前記計測を行わせるように前記第1計測装置を制御するとともに前記第2計測装置及び前記第3計測装置の前記計測を停止させ、前記第1計測装置が前記安静状態を検出すると、前記反射波に基づいて前記人物の位置を計測し、前記人物の位置までの距離が最も近い前記第2計測装置及び前記人物の位置までの距離がその次に近い前記第3計測装置に対して連続的に前記計測を行わせるように制御し、前記第2計測装置及び前記第3計測装置の計測結果のうち精度の良い計測結果を採用し、他方の計測結果を取得した前記第2計測装置及び前記第3計測装置のいずれかの前記計測を停止させる
請求項1記載の計測システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記計測装置に対して連続的に前記計測を行わせた場合であっても、前記人物が安静状態ではない場合の計測結果を削除する
請求項1記載の計測システム。
【請求項8】
人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能な計測装置を制御する制御装置であって、
前記人物が安静状態であることを検出するまで、間欠的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると、連続的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御する制御部、を有する
制御装置。
【請求項9】
少なくとも1台のセンサ部と、
解析部と、を有し、
前記センサ部は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能であり、
前記解析部は、前記人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に前記計測を行わせるように前記センサ部を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記センサ部を制御する
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システム、制御装置、及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人物に接触することなく、心拍数及び呼吸数など、人物のバイタルデータを計測する方法又は装置が提案されている。息を吸ったり吐いたりする動作、及び心臓が脈動する動作により、人体の表面(皮膚)は微小ながら変位する。例えば、人体に電波を照射させ、その反射波を利用することで、このような微小な変位を検出することができる。そして、当該変位を検出することで、非接触で、人物のバイタルデータを取得することができる。
【0003】
非接触でバイタルデータを取得する技術として、例えば、以下がある。すなわち、ミリ波センサの計測結果に基づき各個体を識別する識別部を備え、識別部により個体の規則的に振動する部位の振幅に基づいて各個体を識別するようにした監視装置がある(例えば、以下の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記監視装置において、個体が存在しないにも関わらず監視装置を動作させることは省電力化の観点から必ずしも好ましいこととは言えない。特に、特許文献1に示すように、複数の監視装置の全てを動作させておくことは、消費電力が一定以上に大きくなる。
【0006】
また、上記監視装置において、個体の体動が激しい場合の計測結果は、安静状態と比較して変動が大きく、各個体を正確に識別することができない場合もある。
【0007】
そこで、本開示は、消費電力を抑制することが可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供することを目的とする。また、本開示は、自律神経分析の精度向上が可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る計測システムは、少なくとも1台の計測装置と制御装置とを有する計測システムである。前記計測装置は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能である。前記制御装置は、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に計測を行わせるように計測装置を制御し、人物が安静状態であることを検出すると連続的に計測を行わせるように計測装置を制御する。
【0009】
第2の態様に係る制御装置は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能な計測装置を制御する制御装置である。前記制御装置は、人物が安静状態であることを検出するまで、間欠的に計測を行わせるように計測装置を制御し、人物が安静状態であることを検出すると、連続的に計測を行わせるように計測装置を制御する制御部を有する。
【0010】
第3の態様に係る計測装置は、少なくとも1台のセンサ部と解析部とを有する計測装置である。前記センサ部は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能である。また、前記解析部は、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に前記計測を行わせるようにセンサ部を制御し、人物が安静状態であることを検出すると連続的に計測を行わせるようにセンサ部を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、消費電力を抑制することが可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供できる。また、本開示によれば、自律神経分析の精度向上が可能な計測システム、制御装置、及び計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る計測システムの構成例を表す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る計測装置の構成例を表す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る制御装置の構成例を表す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は、第1実施形態に係る心拍データの例を表す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る計測装置の構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0014】
(計測システム10の構成例)
最初に、計測システム10の構成例について説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る計測システム10の構成例を表す図である。
図1に示すように、計測システム10は、4台の計測装置100A,100B,100C,及び100Dと制御装置200とを有する。
【0016】
計測装置100A,100B,100C,及び100Dの設置位置は特に限定するものではないが、
図1では、計測装置100A,100B,100C,及び100Dが介護施設の各部屋に設置されている例を示している。計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、病院の各部屋に設置されてもよい。
【0017】
図1に示す例では、各計測装置100A,100B,100C,及び100Dは壁の内部に設置され、計測装置100Aは扉付近、計測装置100Bは椅子付近、計測装置100Cは机とヘッドとの間、計測装置100Dはベッド付近に夫々設置されている。各計測装置100A,100B,100C,及び100Dは壁の表面(部屋内の壁の表面)に設置されてもよい。
【0018】
計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、人物のバイタルデータを取得することができる。すなわち、計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、電磁波を送信する。送信された電磁波は、人物の人体表面において反射する。計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、その反射波を取得する。各人体では、呼吸によって皮膚が振動し、心臓の脈動によっても皮膚が振動する。呼吸及び脈をバイタルサインと呼ぶ。バイタルサインによる皮膚の振動により、各人体と各計測装置100A,100B,100C,及び100Dとの間の距離が時間の経過とともに微小に変化する。各計測装置100A,100B,100C,及び100Dでは、反射波を解析することで、このような微小な変位を検出することができる。各計測装置100A,100B,100C,及び100Dでは、このような微小な変位を検出することで、呼吸データ及び心拍データなどのバイタルデータを取得することができる。
【0019】
第1実施形態では、バイタルデータのうち、特に、心拍データに着目する。心拍データは、人物の自律神経の状態を表す自律神経情報の一例である。心拍データを用いて人物の自律神経の分析が行われる。
【0020】
このように、各計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した人物のバイタルデータに基づいて、計測結果として、自律神経情報を取得することが可能となる。各計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、取得した自律神経情報を制御装置200に送信する。
【0021】
なお、各計測装置100A,100B,100C,及び100Dが送信する電磁波は、特に限定するものではないが、第1実施形態では、ミリ波(例えば、30GHz~300GHzの電磁波)を例にして説明する。各計測装置100A,100B,100C,及び100Dが送信する電磁波は、マイクロ波(例えば、0.3GHz~30GHzの電磁波)、又は電波(例えば、30Hz~3THzの電磁波)など、ミリ波以外の電磁波でもよい。
【0022】
制御装置200は、計測装置100A,100B,100C,及び100Dを制御する。例えば、制御装置200は、計測装置100Aから取得した心拍データに基づいて、各計測装置100A,100B,100C,及び100Dの動作を制御することができる。
【0023】
具体的には、制御装置200は、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に計測を行わせるように計測装置100Aを制御し、人物が安静状態であることを検出すると連続的に計測を行わせるように計測装置100B及び100Cを制御する。
【0024】
すなわち、制御装置200では、人物が安静状態であることを検出するまで計測装置100Aによる計測を人物が安静状態であるか否かの検出に利用する。そして、制御装置200では、人物が安静状態であることを検出した後は、計測装置100B及び100Cによる計測を自律神経情報の取得に利用する。制御装置200では、人物が安静状態であるか否かについては、人物の心拍データが閾値以下であるか否かにより判定してもよく、また、人物の心拍データ(心拍数)の時間的な変化が閾値以下であるか否かにより判定してもよい。
【0025】
このように、第1実施形態では、制御装置200が、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に計測を行わせるように計測装置100Aを制御している。そのため、第1実施形態では、常に計測装置100Aを動作させる場合と比較して、消費電力を抑制させることが可能となる。この場合、制御装置200では、他の計測装置100B,100C,及び100Dの動作を停止させておく。これにより、全ての計測装置100A,100B,100C,及び100Dを動作させる場合と比較しても、消費電力を抑制させることが可能となる。
【0026】
また、第1実施形態では、制御装置200が、人物が安静状態であることを検出した後に、連続的に計測を行わせるように計測装置100B及び100Cを制御する。そのため、第1実施形態では、安静状態ではない場合に計測が行われた場合と比較して、計測結果の精度を向上させることができる。よって、第1実施形態では、自律神経分析の精度向上を図ることが可能となる。
【0027】
なお、以下では、特に断らない限り、計測装置100A,100B,100C,及び100Dを、計測装置100と称する場合がある。
【0028】
(FMCW方式)
ここで、FMCW方式について説明する。
【0029】
第1実施形態において、計測装置100では、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)方式を利用して、バイタルデータを取得する。FMCW方式とは、送信波(電磁波)と受信波との周波数差(ビート周波数)に基づいて、距離、速度、及び角度を算出する方式である。送信波は、周波数変調された送信波が用いられる。
【0030】
FMCW方式では、送信波と受信波とをミキシングして、周波数が変化しない中間周波数信号(又はIF(Intermediate Frequency)信号)が生成される。上述したようにバイタルサインによって人体の表面(皮膚)は振動するため、計測装置100と人体の表面との距離は時間の経過とともに微小に変化する。従って、人体に向けて照射された電磁波が人体の表面上を反射して計測装置100へと至るまでに通過する距離はタイミングによって異なる。計測装置100では、この距離の相違によって、異なる周波数を有する中間周波数信号を得る。FMCW方式では、このようにして得られた中間周波数信号に対してフーリエ変換(FFT)を施すことで、周波数が異なる周波数スペクトルを得ることができる。そして、FMCW方式では、周波数スペクトルから得られた各周波数fから、以下の式を用いて、計測装置100から人物までの距離Rを算出できる。
【0031】
【数1】
数1において、cは、光の速度を表す。なお、中間周波数信号から周波数スペクトルを得るためのフーリエ変換を、距離FFTと呼ぶ。
【0032】
距離FFT後の周波数スペクトルにおいては、同じ距離に位置する複数の物体については、同一の位置にピークが発生する。一方、距離FFT後の周波数スペクトルにおいては、位相情報がベクトルとして含まれる。例えば、計測装置100は、周期的に複数回、電磁波(送信波)を送信する。複数回電磁波を送信している間に移動した物体から得られた中間周波数信号は、位相変化が複数回繰り返されている。計測装置100では、この位相変化を累積し、距離FFT後の中間周波数信号に対して、更に、フーリエ変換することで、位相差に相当する速度Vを算出することができる。このフーリエ変換を、ドップラーFFTと呼ぶ。具体的には、計測装置100は、以下の式を用いて、速度Vを得る。
【0033】
【数2】
数2において、Tcは電磁波の送信間隔、λは中間周波数信号の波長、ωは中間周波数信号間の位相差(ドップラーFFTにより得られた角速度のピーク)を夫々表す。
【0034】
FMCW方式では、複数の受信アンテナ(又は複数の受信アンテナ素子)が用意される。複数の受信アンテナから得られた受信信号の位相差から人物の計測装置100に対する角度を算出することが可能である。具体的には、計測装置100では、ドップラーFFT後の中間周波数信号に対して、更に、フーリエ変換を施し、角速度のピークωを検出する。このフーリエ変換を、角度FFTと呼ぶ。そして、計測装置100では、当該ピークωを利用して、以下の式から、計測装置100の人物に対する角度θを得る。
【0035】
【数3】
数3において、dは受信アンテナの間隔を表す。
【0036】
このように、FMCW方式では、反射波を利用して、物体までの距離、物体の速度、及び物体に対する角度を算出できる。計測装置100では、FMCW方式を利用して、人物までの距離、人物の速度、及び人物に対する角度を算出する。ただし、計測装置100は、人物までの距離、人物の速度、及び人物に対する角度を算出することができれば、FMCW方式以外の方式を利用してもよい。例えば、計測装置100は、パルス方式を用いて人物までの距離を算出してもよいし、ドップラー方式を用いて人物の速度を算出してもよいし、MIMO(Multi Input Multi Output)を利用して受信アンテナ間で受信した受信信号の位相差から人物に対する角度を算出してもよい。
【0037】
(計測装置の構成例)
次に、第1実施形態に係る計測装置100の構成例について説明する。
図2は、計測装置100の構成例を表す図である。計測装置100A,100B,100C,及び100Dは、全て、
図2に示す構成例で表されてもよい。
【0038】
図2に示すように、計測装置100は、センサ部110と、解析部120と、通信モジュール140とを有する。センサ部110は、シンセサイザ111と、送信アンテナ112と、受信アンテナ113と、ミキサ114とを有する。また、解析部120は、ADC(Analogue to Digital Converter)121と、DSP(Digital Signal Processor)122と、CPU(Central Processing Unit)123と、メモリ130とを有する。
【0039】
シンセサイザ111は、周波数変調された送信信号を出力する。送信信号は、例えば、時間の経過とともに周期的に周波数が増加及び/又は減少する信号である。送信信号は、例えば、チャープ信号又は周波数掃引信号などと称される場合がある。送信信号の周波数は、上述したように、例えば、ミリ波として用いられる周波数であってもよい。シンセサイザ111は、複数の送信信号を周期的に出力してもよい。シンセサイザ111は、送信信号を送信アンテナ112とミキサ114へ出力する。
【0040】
送信アンテナ112は、送信信号を送信する。送信アンテナ112から送信された送信信号は電磁波として、計測装置100の計測空間内に存在する人物へ送信される。各人物へ送信された電磁波は、各人物の表面で反射して、反射波として計測装置100へ向かう。なお、送信アンテナ112内に、複数の送信アンテナ素子が含まれてもよい。
【0041】
受信アンテナ113は、所定の間隔dで配置された複数の受信アンテナを有する。受信アンテナ113は、反射波を受信し、受信した反射波を、受信信号としてミキサ114へ出力する。なお、受信アンテナ113内に、所定の間隔dで配置された複数の受信アンテナ素子が含まれてもよい。
【0042】
ミキサ114は、シンセサイザ111からの送信信号と、受信アンテナ113からの受信信号とを混合し、中間周波数帯の中間周波数信号(又はIF信号)を生成する。すなわち、ミキサ114では、送信波と受信波とを混合して、中間周波数信号を生成している。ミキサ114は、中間周波数信号を解析部120のADC121へ出力する。
【0043】
ADC121は、アナログ信号である中間周波数信号をデジタル信号の中間周波数信号へ変換する。ADC121は、デジタル信号へ変換した中間周波数信号をDSP122へ出力する。
【0044】
DSP122は、例えば、FMCW方式を利用して、反射波からバイタルデータ(第1実施形態では、心拍データ)を取得する。
【0045】
第1に、DSP122は、中間周波数信号に対して、FMCW方式における距離FFTを施し、計測装置100から人物への距離を算出する。距離FFT後の中間周波数信号を距離情報と称する場合がある。
【0046】
第2に、DSP122は、距離FFT後の中間周波数信号に対して、FMCW方式によるドップラーFFTを施し、人物の速度(人物のバイタルサインによる表面の速度)を算出する。ドップラーFFT後の中間周波数信号を速度情報と称する場合がある。DSP122は、速度情報に対し、心音に該当する所定の周波数でフィルタリングすることで、人物の心拍データを取得できる。例えば、
図5(A)及び
図5(B)は、このようにして取得した心拍データの例を示している。なお、DSP122は、速度情報に対し、呼吸に該当する所定の周波数でフィルタリングすることで人物の呼吸データ(又は呼吸数)を取得できる。
【0047】
第3に、DSP122は、ドップラーFFT後の中間周波数信号に対して、FMCW方式による角度FFTを施し、人物の計測装置100に対する角度を算出する。角度FFT後の中間周波数信号を角度情報と称する場合がある。
【0048】
DSP122は、心拍データと呼吸データとをCPU123へ出力する。以下では、心拍データと呼吸データとを含むデータをバイタルデータと称する場合がある。また、DSP122は、距離情報と角度情報とを、CPU123へ出力する。距離と角度とにより、物体の位置が特定される。そのため、DSP122では、距離情報と角度情報とを位置情報としてCPU123へ出力してもよい。
【0049】
CPU123は、計測装置100を制御する。CPU123は、DSP122から取得したバイタルデータと位置情報とを、通信モジュール140を介して、制御装置200へ送信する。
【0050】
メモリ130は、各種データを記憶する。メモリ130は、CPU123が処理を行う際のワーキングメモリとして機能してもよい。メモリ130は、プログラムを記憶してもよい。CPU123は、当該プログラムをメモリ130から読み出して実行することで、統計データを算出する処理を実行してもよい。
【0051】
通信モジュール140は、制御装置200と通信を行う。通信モジュール140は、バイタルデータと位置情報とを制御装置200へ送信する。
【0052】
(制御装置の構成例)
次に、制御装置200の構成例を説明する。
【0053】
図3は、第1実施形態に係る制御装置200の構成例を示す図である。
図3に示すように、制御装置200は、通信モジュール210と、制御部220とを有する。制御部220は、CPU221とメモリ222とを含む。
【0054】
通信モジュール210は、計測装置100と通信を行う。通信モジュール210は、計測装置100から送信されたバイタルデータと位置情報とを受信する。通信モジュール210は、バイタルデータと位置情報とを制御部220へ出力する。
【0055】
CPU221は、メモリ222に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、制御部220としての機能を実現する。
【0056】
制御部220は、制御装置200を制御する。制御部220は、制御装置200としての動作を行ってもよい。すなわち、制御部220は、人物が安静状態であることを検出するまで、間欠的に計測を行わせるように計測装置100を制御し、人物が安静状態であることを検出すると、連続的に計測を行わせるように計測装置100を制御してもよい。制御部220における動作の詳細は動作例で説明する。
【0057】
(第1実施形態の動作例)
次に、第1実施形態に係る動作例について説明する。
【0058】
図4は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
図4に示す動作例は、主に、制御装置200の制御部220において行われる。
【0059】
図4に示すように、ステップS10において、制御装置200の制御部220は処理を開始する。
【0060】
ステップS11において、制御部220は、計測装置100A(例えば第1計測装置)に対して間欠制御を行う。すなわち、制御部220は、計測装置100Aに対して計測を間欠的に行わせるように制御する。
図1に示すように、計測装置100Aは、扉のある入り口付近に設置されている。計測装置100Aは、入り口より部屋に入ってきた人物から心拍データを得る可能性が、他の計測装置100B,100C,及び100Dよりも高いために、制御部220は、計測装置100Aを間欠的に動作させている。ただし、制御部220は、間欠的な計測でも心拍データを得ることができれば、他の計測装置100B,100C,及び100Dのいずれかに対して間欠制御を行わせるようにしてもよい。
【0061】
なお、制御部220は、計測装置100Aに対して間欠的に計測を行わせる場合、他の計測装置100B(例えば第2計測装置),100C(例えば第3計測装置),及び100Dに対して計測を停止するように制御する。制御部220は、通信モジュール210を介して、間欠制御を指示する制御信号を計測装置100Aへ送信してもよいし、計測を停止することを指示する制御信号を計測装置100B,100C,及び100Dへ送信してもよい。
【0062】
ステップS12において、制御部220は、人物を検知したか否かを判定する。ここでは、制御部220は、部屋に人物が入ってきたか否かを判定している。人物の検出は、計測装置100Aから取得したデータに心拍データが含まれているか否かにより判定してもよいし、当該心拍データにおいて振動が含まれているか否かにより判定してもよい。或いは、人物の検出は、計測装置100Aではなく、部屋に設けられた人物センサからの検出結果に基づいて制御部220が判定してもよいし、扉の開閉を検知する扉センサからの検出結果に基づいて制御部220が判定してもよい。ステップS12において、制御部220は、人物を検出した場合(ステップS12でYes)、処理はステップS13へ移行する。一方、制御部220は、人物を検出しない場合(ステップS12でNo)、ステップS11へ移行する。
【0063】
ステップS13において、制御部220は、ステップS12で検出した人物が一人か否かを判定する。ここでは、制御部220は、計測対象人物とともに、当該人物の同行者が部屋に入ってきたか否かを判定している。例えば、計測システム10が介護施設に設けられている場合、計測対象人物である要介護者とともに、要介護者を介護する介護者が付き添って、部屋に入る場合がある。このような場合、介護者が一緒にいると、要介護者の心拍データを正確に計測することができなくなる。そのため、本ステップにおいて、制御部220は、人物が一人か否かを検出するようにしている。制御部220は、計測装置100Aからの心拍データに基づいて、振動物が複数存在するか否かにより人物が一人か否かを検出してもよい。一般的に、心臓の動作は、第1音と第2音とが交互にかつ周期的にピークとなっている(
図5(A))。そのため、制御部220は、心拍データに基づいて、このような第1音及び第2音の組み合わせが異なる周期で複数存在する場合は、複数人物が存在し、第1音及び第2音の組み合わせが同一周期で複数存在する場合は、人物が一人であることを検出することができる。或いは、カメラが部屋内に設けられ、制御部220は、カメラにより撮像した撮像データに基づいて、映像解析を行い、人物が一人か否かを検出してもよい。制御部220は、人物が一人ではないことを検出すると(ステップS13でNo)、処理はステップS14へ移行する。一方、制御部220は、人物が一人であることを検出すると(ステップS13でYes)、処理はステップS15へ移行する。
【0064】
ステップS14において、制御部220は、入室者の記録を行い、複数人物の関連付けを行う。例えば、制御部220は、カメラで撮像した撮像データに基づいて入室者を特定し、特定した入室者を心拍データに紐づけて、メモリ222に記憶してもよい。この場合、制御部220は、例えば、要介護者の画像データと介護者の画像データとを、予めメモリ222に記憶しておき、撮像データに基づいて、画像解析などにより、要介護者と介護者とを入室者として特定してもよい。このような紐づけにより、例えば、自律神経分析において、後段において取得した要介護者の心拍データを、介護者と紐づけることで、要介護者と介護者との相性を見ることが可能となる。要介護者の心拍データが、どの介護者であれば最も安定するか、などを自律神経分析において分析することが可能となる。
【0065】
なお、ステップS14が終了すると、処理はステップS13へ移行する。ここでは、例えば、入室者が一人になるまで(ステップS13でYes)、処理が繰り返される(ステップS13でNoのループ)。
【0066】
ステップS15において、制御部220は、人物の体動が収まるまで、計測装置100Aに対する制御を継続する。すなわち、制御部220は、人物が一人であり(ステップS13でYes)、かつ、人物が安静状態になることを検出するまで、間欠的な計測を継続させるように計測装置100Aを制御する。安静状態か否かは、例えば、以下のようにして検出されてもよい。
【0067】
第1に、制御部220は、心拍データに基づいて、人物の心拍数が閾値以下であり、かつ、人物の心拍数の時間的な変化が心拍数閾値以下の場合、当該人物が安静状態であることを検出してもよい。安静状態ではなく、体動がある場合、心拍数の時間的な変化は心拍数閾値よりも大きく変動することが想定されるからである。
【0068】
第2に、制御部220は、当該人物が一定時間同じ位置に留まっていることを検知することで、当該人物が安静状態であることを検出してもよい。例えば、制御部220は、人物が一人であることを検出(ステップS13でYes)した後、当該人物の位置情報を計測装置100Aから取得し、一定時間として、数分間経過した後、当該人物の位置情報を再度計測装置100Aから取得してもよい。この時、当該人物の入室時の位置情報と、数分間経過した後の位置情報とを比較し、差分が閾値以内であれば、当該人物が安静状態であることを検出してもよい。この後、ステップS16へ移行せずにステップS17に移行してもよい。
【0069】
制御部220は、当該人物の安静状態を検出すると、ステップS16以降を実行する。
【0070】
ステップS16において、制御部220は、当該人物の位置を計測する。例えば、制御部220は、当該人物が安静状態であることを検出した後、計測装置100Aが計測した位置情報を、計測装置100Aから取得することで、当該人物の位置を計測してもよい。
【0071】
ステップS17において、制御部220は、人物の位置までの距離が近い上位2つの計測装置100(ここでは、計測装置100B及び100C)を選択し、当該計測装置100B及び100Cに対して連続的な計測を開始させるように制御する。すなわち、制御部220は、人物が安静状態であることを検出すると、連続的に計測をおこなわせるように計測装置100B及び100Cを制御する。
【0072】
このように、制御部220では、対象人物が安静状態になると(ステップS15)、計測装置100B及び100Cの計測を開始させるようにしている。体動時(すなわち安静状態ではない時)における計測装置100Aからの心拍データは、自律神経分析には不向きなデータである。このような場合は、計測装置100に対して間欠制御を行わせることで、計測装置100Aを常に動作させている場合と比較して、省電力化を図ることができる。また、体動時には、制御部220は、計測装置100Aからの心拍データを自律神経分析には利用しない(破棄してもよい)。これにより、体動時の心拍データを利用する場合と比較して、自律神経分析の精度を高めることが可能となる。
【0073】
ここでは、制御部220は、2つの計測装置100B及び100Cを選択しているが、人物の位置情報(ステップS16)に基づいて、当該人物の位置までの距離の最も近い計測装置100Bと、その次に当該人物の位置までの距離が近い計測装置100Cの2つを選択している。心拍データの計測精度を一定以上とするためには、人物の正面で計測装置100が当該人物の心拍データを計測することが最も好ましい。人物との距離が最も近いのは、
図1の例では、計測装置100Bであるが、計測装置100Bは人物の側面から心拍データを取得することになり、必ずしも、心拍データの計測精度が一定以上になるとは限らない。そこで、制御部220は、人物の位置までの距離が最も近い計測装置100(例えば計測装置100B)と、人物の位置までの距離がその次に近い計測装置100(例えば計測装置100C)の2つの計測装置100B及び100Cを選択して、2つの計測装置100B及び100Cから心拍データを取得する。これにより、例えば、1つの計測装置100(例えば計測装置100B)から心拍データを取得する場合よりも、心拍データの計測精度が一定以上となる確率を高めることが可能となる。
【0074】
なお、制御部220は、通信モジュール210を介して、通常の計測(又は連続的な計測)を指示する制御信号を、計測装置100B及び100Cへ送信してもよい。
【0075】
ステップS18において、制御部220は、精度の良い方の計測結果を採用し、他方の計測結果を取得した計測装置100(計測装置100B及び100Cのいずれか)の計測を停止させるよう制御する。精度の判定は、計測装置100B及び100Cからの心拍データをリファレンスデータ(参照データ)との比較により行われてもよい。
【0076】
図5(A)及び
図5(B)は第1実施形態に係る心拍データの例を表す図である。このうち、
図5(A)はノイズが一定以下の心拍データの例、
図5(B)はノイズが一定よりも大きい心拍データの例を夫々表している。例えば、
図5(A)がリファレンスデータの例を表す。リファレンスデータは、心電計を利用して当該人物の心拍データを取得することで、取得されてもよい。或いは、ウェアラブル機器を当該人物が装着して、当該機器からの心拍データを取得することで、リファレンスデータが取得されてもよい。或いは、計測装置100を利用して当該人物の心拍データをリファレンスデータとして取得されてもよい。このように取得されたリファレンスデータが、メモリ222に予め記憶されてもよい。
【0077】
制御部220は、例えば、以下のようにして、リファレンスデータと、2つの計測装置100B及び100Cから取得した心拍データとに基づいて精度を比較してもよい。
【0078】
第1に、制御部220は、リファレンスデータと、ステップS17で取得した計測装置100Bからの心拍データとに基づいて、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較し、その差分を取得して、これを所定回数繰り返し、差分の累積値(第1累積値)を取得する。制御部220は、リファレンスデータと、ステップS17で取得した計測装置100Cからの心拍データとに基づいて、同様に、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較して、その差分を取得して、これを所定回数繰り返し、差分の累積値(第2累積値)を取得する。制御部220は、第1累積値と第2累積値とを比較して、少ない方を精度が高い計測結果としてもよい。
【0079】
第2に、制御部220は、リファレンスデータと、ステップS17で取得した計測装置100Bからの心拍データとに基づいて、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較し、その差分の最大値(第1最大値)を取得する。制御部220は、リファレンスデータと、ステップS17で取得した計測装置100Cからの心拍データとに基づいて、同様に、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較して、その差分の最大値(第2最大値)を取得する。制御部220は、第1最大値と第2最大値とを比較して、小さい方を精度が高い計測結果としてもよい。最大値に代えて、最小値としてもよく、その場合、制御部220は、最小値が小さい方を精度が高い計測結果としてもよい。
【0080】
図1の例では、制御部220は、計測装置100Bから取得した心拍データが計測装置100Cから取得した心拍データよりも精度が高いと判定するものとして以下説明する。この場合、制御部220は、計測装置100Cから取得した心拍データを採用する。一方、制御部220は、計測装置100Bの計測を停止させるように計測装置100Bを制御する。制御部220は、通信モジュール210を介して、計測の停止を指示する制御信号を計測装置100Bへ送信してもよい。
【0081】
ステップS19において、制御部220は、計測対象の人物が安静状態であるか否かを検出する。当該人物が安静状態か否かは、ステップS15と同様に、当該人物の心拍数が閾値以下であり、かつ、心拍数の時間的な変化が心拍数閾値以下であるか否かにより検出してもよい。ここでは、制御部220は、計測装置100Bに対して連続的に計測を行わせた場合であっても、当該人物が安静状態ではない場合の計測結果を削除できるようにするために、安静状態を検出している。そのため、制御部220は、安静状態ではない場合の心拍データを削除する。この場合、制御部220は、安静状態の場合の心拍データをつなぎ合わせるようにしてもよい。制御部220は、心拍データが解析に必要な有効データとなるまで、安静状態の場合の心拍データを所定時間分取得する。制御部220は、当該人物が安静状態のまま所定時間分の心拍データを取得すると(ステップS19でYes)、処理はステップS20へ移行する。一方、制御部220は当該人物が安静状態ではないことを検出すると、処理は、ステップS15へ移行して、所定時間分の安静状態の心拍データを取得するようにする。
【0082】
ステップS20において、制御部220は、計測装置100Bの計測を停止させるように計測装置100Bを制御してもよい。この場合、制御装置200では、有効データを取得したため、制御部220は、計測装置100Bに対して、計測停止を指示する制御信号を送信してもよい。或いは、制御部220は、計測装置100Bの計測を停止させるとともに、計測装置100Aの計測を間欠的に行わせるようにしてもよい。制御部220は、間欠制御を指示する制御信号を計測装置100Aへ送信してもよい。
【0083】
ステップS21において、制御部220は、復帰条件に合致すると、ステップS12へ移行して、上述した処理を繰り返す。復帰条件は、ステップS20を実行した後、一定時間経過したことであってもよい。或いは、復帰条件は、計測装置100Aの間欠制御により、計測装置100Aが当該人物の心拍データを計測しなくなってから(当該人物が部屋から出て行ってから)、再び、当該人物の心拍データを計測した場合(当該人物が再び部屋に戻ってきた場合)であってもよい。この場合、制御部220は、計測装置100Aから取得した心拍データと、メモリ222に予め記憶された当該人物のリファレンスデータとを比較して、その差分が差分閾値以下の場合に、当該人物の心拍データを計測したと判定してもよい。或いは、復帰条件は、当該人物の起床時であってもよい。この場合、例えば、当該人物に装着されたウェアラブル機器内のセンサ(加速度センサなと)により一定の動作が検出されると起床時が検出されてもよい。
【0084】
(第1実施形態に係る他の例1)
第1実施形態では、計測装置100の台数は4台を例にして説明したが、計測装置100の台数はこれに限定されない。例えば、計測装置100は、1台でもよい。
【0085】
この場合、例えば、制御部220は、第1実施形態と同様に対象人物の安静状態を検出するまで(
図4のステップS15)、間欠的に計測をおこなわせるように計測装置100Aを制御する。そして、安静状態を検出すると、制御部220は、連続的に計測を行わせるように計測装置100Aを制御する(ステップS17)。制御部220は、計測装置100Aからの心拍データを取得し、当該心拍データとリファレンスデータとに基づいて精度を取得するようにしてもよい。この場合、第1実施形態と同様に、制御部220は、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較し、その差分を取得して、これを所定回数繰り返し、差分の累積値を取得し、当該累積値が累積閾値以下の場合に「精度が良い」として、当該心拍データを採用し、そうでない場合に当該心拍データを破棄し、計測装置100Aの計測を停止させてもよい(ステップS18)。或いは、第1実施形態と同様に、制御部220は、2つのデータにおける第1音部分と第2音部分とを比較し、その差分の最大値を取得し、当該最大値が精度閾値以下の場合に「精度が良い」として、当該心拍データを採用し、そうでない場合に当該心拍データを破棄し、計測装置100Aの計測を停止させてもよい(ステップS18)。以降は、第1実施形態と同様に実施可能である。
【0086】
(第1実施形態に係る他の例2)
計測装置100の台数は2台(例えば、計測装置100A及び100C)でもよい。
【0087】
この場合、第1実施形態と同様に、制御部220は、対象人物の安静状態を検出するまで計測装置100Aに対して間欠制御を行わせ(ステップS15)、当該人物の安静状態を検出すると、2つの計測装置100A及び100Cに対して、連続的な計測を行わせるように制御する。以降は、第1実施形態と同様に、制御部220は、2つの計測装置100A及び100Cからの心拍データのうち精度の良い心拍データを採用し、他方の心拍データを取得した計測装置100A及び100Cのいずれかの計測を停止させる(ステップS18)。以降は、第1実施形態と同様に実施可能である。
【0088】
(第1実施形態に係る他の例3)
計測装置100の台数は3台(例えば計測装置100A,100B,及び100C)でもよい。この場合も、制御部220は、対象人物の安静状態を検出するまで計測装置100Aに対して間欠制御を行わせる(ステップS15)。制御部220は、計測装置100Aからの位置情報に基づいて、当該人物の位置情報を取得し、当該人物の位置までの距離が最も近い計測装置100(例えば計測装置100B)と次に当該位置までの距離が近いに計測装置100(例えば計測装置100C)を選択して、2つの計測装置100B及び100Cに対して連続的な計測を行わせるように制御する(ステップS17)。以降は、第1実施形態と同様に実施可能である。
【0089】
或いは、計測装置100の台数は5台以上でもよい。制御部220は、対象人物の安静状態を検出するまで計測装置100Aに対して間欠制御を行わせ(ステップS15)、計測装置100Aからの位置情報に基づいて、当該人物の位置情報を取得し(ステップS16)、当該人物の位置までの距離が近い上位2つの計測装置100を選択して、当該2つの計測装置100に対して連続的な計測を行わせるように制御すればよい(ステップS17)。以降は、第1実施形態と同様に実施可能である。
【0090】
(第1実施形態に係る他の例4)
第1実施形態では、計測装置100と制御装置200とを含む計測システム10により、心拍データの計測が行われる例について説明したが、当該計測は計測装置100により行われてもよい。
【0091】
図6は第1実施形態に係る計測装置100の構成例を表す図である。計測装置100のセンサ部110が複数存在し、各センサ部110A,110B,110C,及び110Dが
図1に示す各計測装置100A,100B,100C,及び100Dの設置位置に夫々設置される。そして、計測装置100の解析部120が、制御装置200の制御部220の機能を有する。すなわち、解析部120は、人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に計測を行わせるようセンサ部110(例えばセンサ部110A)を制御し、人物が安静状態であることを検出すると連続的に計測を行わせるようにセンサ部110(例えばセンサ部110B及び110C)を制御する。センサ部110の個数は、1台でもよいし、複数台でもよい。
【0092】
[その他の実施形態]
上述した実施形態に係る各処理又は各機能をコンピュータに実行させるプログラム(例えば、計測プログラム)が提供されてもよい。又は、上述した実施形態に係る各処理又は各機能を計測システム10(又は制御装置200)に実行させるプログラム(例えば、計測プログラム)が提供されてもよい。当該プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータに当該プログラムをインストールすることが可能である。ここで、当該プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。このような記録媒体は、計測装置100に含まれるメモリ130、及び制御装置200に含まれるメモリ222であってもよい。
【0093】
また、第1実施形態で説明したCPU221に代えて、MPU(Micro Processor Unit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ又はコントローラが用いられてもよい。
【0094】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。また、矛盾しない範囲で、各実施形態、各動作例、又は各処理を組み合わせることも可能である。
【0095】
(付記)
(付記1)
少なくとも1台の計測装置(例えば計測装置100A,100B,100C,及び100D)と、
制御装置(例えば制御装置200)と、を有し、
前記計測装置は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能であり、
前記制御装置は、前記人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御する
計測システム。
【0096】
(付記2)
前記制御装置は、前記人物が安静状態であることを検出するまで前記計測を前記人物が安静状態であるか否かの検出に利用し、前記人物が安静状態であることを検出した後は前記計測を前記自律神経情報の取得に利用する
付記1記載の計測システム。
【0097】
(付記3)
前記制御装置は、前記人物の心拍数が閾値以下であり、かつ、前記心拍数の時間的な変化が心拍数閾値以下の場合、前記人物が安静状態であることを検出する
付記1又は付記2に記載の計測システム。
【0098】
(付記4)
前記制御装置は、前記計測装置による計測結果に基づいて、前記人物が一人であり、かつ、前記安静状態を検出するまで、前記間欠的な計測を継続させるように前記計測装置を制御する
付記1乃至付記3のいずれかに記載の計測システム。
【0099】
(付記5)
前記計測装置は、第1計測装置(例えば計測装置100A)及び第2計測装置(例えば計測装置100C)を含み、
前記制御装置は、間欠的に前記計測を行わせるように前記第1計測装置を制御するとともに前記第2計測装置の前記計測を停止させ、前記安静状態を検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記第1及び第2計測装置を制御し、前記第1計測装置及び前記第2計測装置の計測結果のうち精度の良い計測結果を採用し、他方の計測結果を取得した前記第1計測装置及び前記第2計測装置のいずれかの前記計測を停止させる
付記1乃至付記4のいずれかに記載の計測システム。
【0100】
(付記6)
前記計測装置は、第1計測装置乃至第3計測装置を含み、
前記制御装置は、間欠的に前記計測を行わせるように前記第1計測装置(例えば計測装置100A)を制御するとともに前記第2計測装置(例えば計測装置100B)及び前記第3計測装置(例えば計測装置100C)の前記計測を停止させ、前記第1計測装置が前記安静状態を検出すると、前記反射波に基づいて前記人物の位置を計測し、前記人物の位置までの距離が最も近い前記第2計測装置及び前記人物の位置までの距離がその次に近い前記第3計測装置に対して連続的に前記計測を行わせるように制御し、前記第2計測装置及び前記第3計測装置の計測結果のうち精度の良い計測結果を採用し、他方の計測結果を取得した前記第2計測装置及び前記第3計測装置のいずれかの前記計測を停止させる
付記1乃至付記5のいずれかに記載の計測システム。
【0101】
(付記7)
前記制御装置は、前記計測装置に対して連続的に前記計測を行わせた場合であっても、前記人物が安静状態ではない場合の計測結果を削除する
付記1乃至付記6のいずれかに記載の計測システム。
【0102】
(付記8)
人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能な計測装置(例えば計測装置100A,100B,100C,及び100D)を制御する制御装置(例えば制御装置200)であって、
前記人物が安静状態であることを検出するまで、間欠的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると、連続的に前記計測を行わせるように前記計測装置を制御する制御部(例えば制御部220)、を有する
制御装置。
【0103】
(付記9)
少なくとも1台のセンサ部(例えばセンサ部110A,110B,110C,及び110D)と、
解析部(例えば解析部120)と、を有し、
前記センサ部は、人物に向けて送信された電磁波に対する反射波を計測することで取得した前記人物のバイタルデータに基づいて、前記人物の自律神経の状態を表す自律神経情報を取得することが可能であり、
前記解析部は、前記人物が安静状態であることを検出するまで間欠的に前記計測を行わせるように前記センサ部を制御し、前記人物が安静状態であることを検出すると連続的に前記計測を行わせるように前記センサ部を制御する
計測装置。
【符号の説明】
【0104】
10 :計測システム 100 :計測装置
110 :センサ部 120 :解析部
140 :通信モジュール 200 :制御装置
210 :通信モジュール 220 :制御部