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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157223
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両のバッテリ保持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20241030BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241030BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
B60R16/04 E
B60R16/04 D
H01M50/249
H01M50/244 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071453
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大國 崇
(72)【発明者】
【氏名】永木 諒
(72)【発明者】
【氏名】五井 格
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 領馬
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT06
5H040CC59
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】車両ボディへのバッテリの取り付けを容易にして、バッテリの設置工数を低減する。
【解決手段】車両ボディ16,17,18上に固定されており、バッテリVを水平に支持するバッテリトレイ30と、バッテリトレイ30に支持されたバッテリVの上方移動を禁止する上方外れ防止ブラケット50とを備える車両のバッテリ保持構造であって、上方外れ防止ブラケット50は、車両ボディ18に固定される構成で、バッテリVの平面視における四つの角部のうちの一つである所定角部の上面Vuを覆う天板部516を備えており、天板部516は、バッテリVをバッテリトレイ30上にセットする過程で、バッテリVの所定角部の上面Vuがその天板部516の下側に入り込めるような位置に設けられている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディ上に固定されており、バッテリを水平に支持するバッテリトレイと、前記バッテリトレイに支持された前記バッテリの上方移動を禁止する上方外れ防止ブラケットとを備える車両のバッテリ保持構造であって、
前記上方外れ防止ブラケットは、前記車両ボディに固定される構成で、前記バッテリの平面視における四つの角部のうちの一つである所定角部の上面を覆う天板部を備えており、
前記天板部は、前記バッテリを前記バッテリトレイ上にセットする過程で、前記バッテリの所定角部の上面がその天板部の下側に入り込めるような位置に設けられている車両のバッテリ保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のバッテリ保持構造であって、
前記上方外れ防止ブラケットの天板部において前記バッテリの上面と対向する天井面は、前記天板部の先端側が高くなるように傾斜している車両のバッテリ保持構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のバッテリ保持構造であって、
前記バッテリの所定角部に対して対角位置にある対角角部の下部を前記バッテリトレイに固定する固定ブラケットを備えているバッテリ保持構造。
【請求項4】
請求項1に記載された車両のバッテリ保持構造であって、
前記上方外れ防止ブラケットは、前記バッテリの所定角部を構成する一方の側壁面を覆う第1の縦板部と、前記所定角部を構成する他方の側壁面を覆う第2の縦板部とを備えているバッテリ保持構造。
【請求項5】
請求項3に記載された車両のバッテリ保持構造であって、
前記固定ブラケットは、前記バッテリの対角角部を構成する一方の側壁面の下部に形成された突条と、前記対角角部を構成する他方の側壁面の下部に形成された突条とに係合して、前記バッテリの対角角部の下部を前記バッテリトレイに固定するバッテリ保持構造。
【請求項6】
請求項4に記載された車両のバッテリ保持構造であって、
前記上方外れ防止ブラケットは、第1のブラケット片と第2のブラケット片とを備えており、
前記第1のブラケット片は、前記バッテリトレイの底板部と共に車両ボディに固定される第1の底板部と、前記バッテリの一方の側壁面を覆う第1の縦板部と、前記バッテリの上面を覆う第1の天板部とから断面コ字形に形成されており、
前記第2のブラケット片は、前記第1のブラケット片の第1の底板部に重ねられた状態で、前記バッテリトレイの底板部と共に車両ボディに固定される第2の底板部と、前記バッテリの他方の側壁面を覆う第2の縦板部と、前記第1のブラケット片の第1の天板部に重ねられる第2の天板部とから断面コ字形に形成されている車両のバッテリ保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディ上に固定されており、バッテリを水平に支持するバッテリトレイと、前記バッテリトレイに支持された前記バッテリの上方移動を禁止する上方外れ防止ブラケットとを備える車両のバッテリ保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバッテリ保持構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のバッテリ保持構造100は、図14図15に示すように、エンジンルーム内のボディパネル101上にバッテリ110を保持する構造である。前記バッテリ保持構造100では、図14に示すように、バッテリ110を収納するバッテリケース104と、バッテリケース104に収納されたバッテリ110を上方から押さえるクランプ機構106とが使用されている。バッテリケース104は、上部開放形の箱状に形成されており、そのバッテリケース104の底板がボディパネル101上に固定されたバッテリ取付用ブラケット102(図15参照)にボルト止めされている。
【0003】
クランプ機構106は、図15に示すように、バッテリケース104の内側でバッテリ110の中央部を下方から囲う略U字形のU字金具106yと、バッテリ110の上面を押さえる上方外れ防止板部106pとを備えている。そして、クランプ機構106のU字金具106yがバッテリケース104の内側にセットされた状態で、そのU字金具106yの下端部がバッテリ取付用ブラケット102にボルト止めされる。また、バッテリ110がバッテリケース104内に収納された状態で、図14に示すように、バッテリ110の上面に被せられた上方外れ防止板部106pの左右の端縁がU字金具106yの左右の上端部にボルト止めされる。これにより、バッテリ110の上面がクランプ機構106の上方外れ防止板部106pに押さえられる。この結果、車両衝突時の衝突荷重がバッテリ110に加わって、バッテリケース104が破損し、あるいは傾斜した場合でも、バッテリ110が上方に外れるようなことがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-35215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したバッテリ保持構造100では、バッテリケース104の内側にU字金具106yをセットし、そのU字金具106yをバッテリ取付用ブラケット102にボルト止めした後、バッテリケース104内にバッテリ110を収納する。さらに、バッテリケース104内にバッテリ110を収納した後、上方外れ防止板部106pをバッテリ110の上面に被せ、その上方外れ防止板部106pの左右の端縁をU字金具106yの左右の上端部にボルト止めする。このように、バッテリ110の設置に手間が掛かるため、バッテリ110の設置工数が多くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両ボディへのバッテリの取付けを容易にして、バッテリの設置工数を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両ボディ上に固定されており、バッテリを水平に支持するバッテリトレイと、前記バッテリトレイに支持された前記バッテリの上方移動を禁止する上方外れ防止ブラケットとを備える車両のバッテリ保持構造であって、前記上方外れ防止ブラケットは、前記車両ボディに固定される構成で、前記バッテリの平面視における四つの角部のうちの一つである所定角部の上面を覆う天板部を備えており、前記天板部は、前記バッテリを前記バッテリトレイ上にセットする過程で、前記バッテリの所定角部の上面がその天板部の下側に入り込めるような位置に設けられている。
【0008】
本発明によると、上方外れ防止ブラケットの天板部は、バッテリをバッテリトレイ上にセットする過程で、前記バッテリの所定角部の上面がその天板部の下側に入り込めるような位置に設けられている。このため、バッテリをバッテリトレイにセットすることにより、バッテリの所定角部の上面を上方外れ防止ブラケットの天板部で覆うことができる。このため、従来のように、バッテリトレイの内側に上方外れ防止ブラケットの保持金具を取り付け、バッテリをバッテリトレイに収納した後、上方外れ防止ブラケットを保持金具に連結する構成と比較して、バッテリの取り付けが容易になる。
【0009】
第2の発明によると、上方外れ防止ブラケットの天板部においてバッテリの上面と対向する天井面は、前記天板部の先端側が高くなるように傾斜している。このため、例えば、一端側が低くなるようにバッテリを若干傾斜させた状態でバッテリトレイにセットする場合でも、バッテリの所定角部の上面を上方外れ防止ブラケットの天板部の下側に挿入し易くなる。
【0010】
第3の発明によると、バッテリの所定角部に対して対角位置にある対角角部の下部を前記バッテリトレイに固定する固定ブラケットを備えている。このように、バッテリの対角位置にある二つの角部を固定ブラケットと上方外れ防止ブラケットとにより押さえる構成のため、衝突荷重が加わった際にバッテリを効率的にバッテリトレイ上に保持できる。
【0011】
第4の発明によると、上方外れ防止ブラケットは、バッテリの所定角部を構成する一方の側壁面を覆う第1の縦板部と、前記所定角部を構成する他方の側壁面を覆う第2の縦板部とを備えている。このため、上方外れ防止ブラケットの第1の縦板部と第2の縦板部との働きにより、バッテリが衝突荷重を受けてもバッテリの所定角部が水平方向に移動し難くなる。
【0012】
第5の発明によると、固定ブラケットは、バッテリの対角角部を構成する一方の側壁面の下部に形成された突条と、前記対角角部を構成する他方の側壁面の下部に形成された突条とに係合して、前記バッテリの対角角部の下部を前記バッテリトレイに固定する。このため、固定ブラケットとバッテリの突条との働きにより、バッテリの対角角部が衝突荷重により上方向、及び水平方向に移動し難くなる。
【0013】
第6の発明によると、上方外れ防止ブラケットは、第1のブラケット片と第2のブラケット片とを備えており、前記第1のブラケット片は、バッテリトレイの底板部と共に車両ボディに固定される第1の底板部と、バッテリの一方の側壁面を覆う第1の縦板部と、前記バッテリの上面を覆う第1の天板部とから断面コ字形に形成されており、前記第2のブラケット片は、前記第1のブラケット片の第1の底板部に重ねられた状態で、前記バッテリトレイの底板部と共に車両ボディに固定される第2の底板部と、前記バッテリの他方の側壁面を覆う第2の縦板部と、前記第1のブラケット片の第1の天板部に重ねられる第2の天板部とから断面コ字形に形成されている。このように、上方外れ防止ブラケットは、断面コ字形に形成された第1のブラケット片と第2のブラケット片とを組み合わせる構成のため、上方外れ防止ブラケットを一体的に成形する場合と比較して製作が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、車両ボディへのバッテリの取付けが容易になり、バッテリの設置工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係るバッテリ保持構造を備える車両を左前上方から見た斜視図である。
図2】前記バッテリ保持構造を左前上方から見た斜視図である。
図3】前記バッテリ保持構造を右後上方から見た斜視図である。
図4】前記バッテリ保持構造を表す全体側面図である。
図5】前記バッテリ保持構造を表す平面図である。
図6】前記バッテリ保持構造で使用されるバッテリトレイの平面図である。
図7】前記バッテリ保持構造を表す車両前後方向における縦断面図である。
図8】前記バッテリ保持構造を表す車幅方向における縦断面図(図6のVIII-VIII矢視断面図)である。
図9】前記バッテリ保持構造で使用される固定ブラケットを前右上方から見た斜視図である。
図10】前記バッテリ保持構造で使用される上方外れ防止ブラケット等を左前下方から見た斜視図である。
図11】前記上方外れ防止ブラケット等を左後上方から見た斜視図である。
図12】バッテリをバッテリトレイにセットする様子を表す車両前後方向における縦断面図である。
図13図12のXIII矢視拡大図である。
図14】従来のバッテリ保持構造を表す斜視図である。
図15】従来のバッテリ保持構造におけるクランプ機構を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、図1から図13に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両のバッテリ保持構造の説明を行う。本実施形態に係る車両のバッテリ保持構造は、車両10のエンジンルームER内でバッテリVを支持する構造である。ここで、図中における前後左右及び上下は、本実施形態に係るバッテリ保持構造20を備える車両10の前後左右、及び上下に対応している。
【0017】
<車両10のエンジンルームER内の概要について>
車両10のエンジンルームERは、図1に示すように、車室Rの前側に設けられており、車幅方向(左右方向)に延びる縦壁状のダッシュパネル(図示省略)によって車室Rと仕切られている。エンジンルームER内の下部には、図2図4等に示すように、車両前後方向に延びるフレームである左右一対のフロントサイドメンバ12が設けられている(図では左側のみ表示)。そして、左右のフロントサイドメンバ12によって、図3に示すように、エンジンEがエンジンマウントMを介して支持されている。また、エンジンルームERの後部には、左右のフロントサイドメンバ12の上側に左右のサスタワー14がそれぞれ設けられている。そして、左側のサスタワー14の前側で、フロントサイドメンバ12の上方にバッテリVを水平に支持するバッテリトレイ30が設置されている。また、バッテリトレイ30の前側には、図2に示すように、エアクリーナ11が設けられている。なお、図2以外では、エアクリーナ11は省略されている。
【0018】
フロントサイドメンバ12には、図3に示すように、サスタワー14の前側にエンジンマウントMを支持するマウントブラケット15が固定されている。そして、マウントブラケット15には、エンジンマウントMを前後から挟む位置にバッテリトレイ30の前部と中央部とを下方から支持する第1支持ブラケット16と第2支持ブラケット17とが立設されている。また、マウントブラケット15の後側には、バッテリトレイ30の後部を下方から支持する第3支持ブラケット18がフロントサイドメンバ12の側面に固定された状態で立設されている。第3支持ブラケット18の上面には、図4等に示すように、水平に後方に延びる平坦部18xが設けられており、その平坦部18xの後端に形成された縦フランジ部(図番省略)がサスタワー14の側面に固定されている(図5等参照)。
【0019】
<バッテリ保持構造20の概要について>
バッテリ保持構造20は、図2図5等に示すように、略直方体形のバッテリVを水平に支持するバッテリトレイ30と、バッテリVの前右角部の下部をバッテリトレイ30に固定する固定ブラケット40(図2等参照)とを備えている。また、バッテリ保持構造20は、バッテリVの後左角部における上面Vuと左側面と後側面とをバッテリトレイ30の外側から覆う上方外れ防止ブラケット50を備えている。ここで、バッテリVの前右角部、及び後左角部とは、バッテリVの平面視における四つの角部のうちの前右角部と後左角部とを意味しており、バッテリVの上下の角部は一体で考えている。バッテリVのの前側面、後側面、左側面、及び右側面の下部には、図7図8等に示すように、バッテリVの下辺に沿って周方向に延びる下端リブVrが形成されている。下端リブVrの上面は、リブの突出端側が低くなるような傾斜面となっている。
【0020】
<バッテリトレイ30について>
バッテリトレイ30は、樹脂の射出成形品であり、図5に示すように、バッテリVの長辺が車両前後方向と一致するように、そのバッテリVを水平に支持する角形皿状に形成されている。バッテリトレイ30は、図6図8に示すように、角形底板状のトレイ本体部32を備えている。トレイ本体部32の右辺と後辺と左辺とには、そのトレイ本体部32の縁部に沿って低い塀状の縦壁部34が形成されている。即ち、トレイ本体部32の周囲には、右辺の縦壁部34と後辺の縦壁部34と左辺の縦壁部34とが平面略コ字形に形成されている。ここで、トレイ本体部32の右辺の縦壁部34と左辺の縦壁部34との間隔寸法は、バッテリVの幅寸法とほぼ等しく、さらに右辺、左辺の縦壁部34の長さ寸法は、バッテリVの長さ寸法とほぼ等しい値に設定されている。
【0021】
バッテリトレイ30のトレイ本体部32の後辺と左辺との縦壁部34の上部には、図6図8に示すように、バッテリVの下端リブVrの上面に面接触することで、その下端リブVrを上方から押さえるリブ押え突条36が形成されている。したがって、バッテリVをバッテリトレイ30にセットした状態では、バッテリVは平面略コ字形に形成された縦壁部34の内側に収められ、さらにバッテリVの左側面と後側面との下端リブVrが左辺、及び後辺の縦壁部34のリブ押え突条36に対して篏合するようになる。この状態で、バッテリVはバッテリトレイ30によって左右方向と後方の三方向、及び上下方向から拘束される。
【0022】
バッテリトレイ30のトレイ本体部32の前端の幅方向中央左寄り位置には、図6に示すように、バッテリトレイ30を第1支持ブラケット16の上面にボルト止めする際に使用される第1ボルト孔32fが形成されている。また、トレイ本体部32の中央部の幅方向右寄り位置には、バッテリトレイ30を第2支持ブラケット17の上面にボルト止めする際に使用される第2ボルト孔32mが形成されている。さらに、トレイ本体部32の後部の幅方向左寄り位置には、バッテリトレイ30を第3支持ブラケット18の上面にボルト止めする際に使用される第3ボルト孔32bが形成されている。また、トレイ本体部32の前端左右には、バッテリトレイ30をエアクリーナ11にボルト止めするための連結ボルト孔32cが形成されている。さらに、トレイ本体部32の前部には、第1ボルト孔32fの右側に、固定ブラケット40を位置決めするための長孔状の位置決め穴32yと、固定ブラケット40をトレイ本体部32に固定するための固定用ボルト孔32zが形成されている。
【0023】
<固定ブラケット40について>
固定ブラケット40は、鋼板のプレス成形品であり、図9に示すように、バッテリVの前右角部に形成された下端リブVrを上から押さえてバッテリトレイ30に固定できるように構成されている。即ち、固定ブラケット40は、図5、及び図9に示すように、バッテリVの右側面の下端リブVrを上から押さえる右側拘束部41と、バッテリVの前側面の下端リブVrを上から押さえる前側拘束部43とから略逆L字形に形成されている。さらに、固定ブラケット40は、前側拘束部43から前方に突出するように略台形状に形成された位置決め固定部45を備えている。
【0024】
固定ブラケット40の位置決め固定部45には、前端位置にバッテリトレイ30(トレイ本体部32)の位置決め穴32yに対して上方から掛けられる係合爪(図示省略)が形成されている。そして、固定ブラケット40の位置決め固定部45の係合爪がバッテリトレイ30の位置決め穴32yに掛けられた状態で、位置決め固定部45はバッテリトレイ30に対して固定用ボルト孔32zを利用してボルト46止めされる。これにより、バッテリVの前右角部の下端リブVrが固定ブラケット40の右側拘束部41と前側拘束部43とにより上から押さえられた状態でバッテリトレイ30に固定される。
【0025】
固定ブラケット40は、バッテリVがバッテリトレイ30にセットされた状態で、バッテリVの前右角部の下端リブVrを上から押さえてバッテリトレイ30に固定する。これにより、バッテリVは、前後左右、及び上下から拘束された状態でバッテリトレイ30に固定されるようになる。
【0026】
<上方外れ防止ブラケット50について>
上方外れ防止ブラケット50は、車両衝突時の衝突荷重がバッテリVに加わり、バッテリトレイ30のリブ押え突条36等が破断したときに、バッテリVがバッテリトレイ30から上方に外れるのを防止するブラケットである。上方外れ防止ブラケット50は、図10図11に示すように、第3支持ブラケット18の上面に固定されており、バッテリトレイ30の外側でバッテリVの後左角部における左側面と後側面とを覆い、さらにバッテリVの後左角部の上面Vuを覆う構成である。上方外れ防止ブラケット50は、鋼板のプレス成形品である第1のブラケット片510と第2のブラケット片520とから構成されている。
【0027】
第1のブラケット片510は、図11図12に示すように、第1の底板部512と第1の縦板部514と第1の天板部516とを備えており、帯板状の鋼板を断面コ字形に曲げ加工することにより形成されている。第1のブラケット片510の第1の底板部512と第1の縦板部514と第1の天板部516とには、長手方向に延びるビード(図番省略)が形成されている。
【0028】
第1のブラケット片510の第1の底板部512は、図12に示すように、バッテリトレイ30(トレイ本体部32)の後左角部に対して下方から重ねられる構成であり、トレイ本体部32の第3ボルト孔32bに対応する位置にボルト孔Hが形成されている。そして、第1の底板部512がトレイ本体部32と共に第3ボルト孔32b、ボルト孔Hを利用して第3支持ブラケット18の上面にボルト止めされる。第1のブラケット片510の第1の縦板部514は、バッテリトレイ30の縦壁部34の外側からバッテリVの後側面を覆えるように構成されている。また、第1のブラケット片510の第1の天板部516は、バッテリVの後左角部の上面Vuを覆えるように構成されている。
【0029】
第1のブラケット片510の第1の天板部516は、図11に示すように、略正方形に形成されており、その第1の天板部516の下面が、図12に示すように、バッテリVの後左角部の上面Vuと対向する天井面516tとなっている。第1の天板部516の先端側では、図13に示すように、天井面516tは先端部が高くなるように傾斜している。
【0030】
第2のブラケット片520は、第1のブラケット片510と基本構成は同じであり、図10に示すように、第2の底板部522と第2の縦板部524と第2の天板部526とを備えており、帯板状の鋼板を断面コ字形に曲げ加工することにより形成されている。第2のブラケット片520の第2の底板部522は、第1のブラケット片510の第1の底板部512に重ねられる構成であり、第1の底板部512のボルト孔Hに対応する位置にボルト孔Hが形成されている。そして、第2のブラケット片520の第2の底板部522は、第1のブラケット片510の第1の底板部512に重ねられた状態でバッテリトレイ30(トレイ本体部32)と共に第3支持ブラケット18の上面にボルト止めされる。
【0031】
第2のブラケット片520の第2の縦板部524は、図10図11に示すように、バッテリトレイ30の縦壁部34の外側からバッテリVの左側面を覆えるように構成されている。また、第2のブラケット片520の第2の天板部526は、第1のブラケット片510の天板部516に対して上方から重ねられるように構成されている。このように、上方外れ防止ブラケット50を第1のブラケット片510と第2のブラケット片520とから構成することで、上方外れ防止ブラケット50を一体で成形する場合と比較して成形が容易になる。
【0032】
<バッテリトレイ30と上方外れ防止ブラケット50との固定方法について>
先ず、起立状態の上方外れ防止ブラケット50の第1の底板部512と第2の底板部522とが、図7等に示すように、第3支持ブラケット18の平坦部18x上に仮置きされる。次に、バッテリトレイ30が第1支持ブラケット16上、第2支持ブラケット17上、及び上方外れ防止ブラケット50の第1の底板部512上に位置合わせされた状態で仮置きされる。
【0033】
この状態で、バッテリトレイ30のトレイ本体部32の前部と中央部とが、図7等に示すように、第1ボルト孔32f、第2ボルト孔32mを利用して、第1支持ブラケット16と第2支持ブラケット17との上面にボルト止めされる。また、トレイ本体部32の後左角部が上方外れ防止ブラケット50の第1の底板部512と第2の底板部522とに重ねられた状態で、第3ボルト孔32b、ボルト孔Hを利用して第3支持ブラケットの上面にボルト止めされる。この状態で、バッテリトレイ30と上方外れ防止ブラケット50との固定が完了する。
【0034】
<バッテリ保持構造20によるバッテリVの取付け方法について>
バッテリVをバッテリトレイ30に取付ける場合、図6の白矢印に示すように、右斜め前方からバッテリVをバッテリトレイ30(トレイ本体部32)にセットする。このとき、バッテリVがバッテリトレイ30の右辺の縦壁部34を跨ぐため、バッテリVは、図12の二点鎖線に示すように、後端側が低くなるように若干傾けた状態でバッテリトレイ30(トレイ本体部32)上に導かれる。そして、バッテリVの後側面と左側面との下端リブVrが、図7図8に示すように、バッテリトレイ30の後辺、左辺の縦壁部34のリブ押え突条36に篏合して状態で、バッテリVはバッテリトレイ30の平面略コ字形に形成された縦壁部34の内側に収められる。この状態で、バッテリVはバッテリトレイ30上に水平に載置されて、左右方向と後方からの三方向、及び上下方向から拘束される。
【0035】
バッテリVがバッテリトレイ30にセットされる過程では、図11図12に示すように、バッテリVの後端が低くなるように若干傾けられる。この状態で、バッテリVの後左角部の上面Vuは、上方外れ防止ブラケット50の天板部516の下側に挿入されるようになる。ここで、上方外れ防止ブラケット50の天板部516の天井面516tは先端側が高くなるように傾斜しているため、バッテリVが上記したように若干傾けられた状態でも、バッテリVの後左角部の上面Vuが天板部516の下側に入り込み易くなる。そして、バッテリVがバッテリトレイ30にセットされた状態で、図12図13に示すように、バッテリVの後左角部の上面Vuは上方外れ防止ブラケット50の第1の天板部516に覆われるようになる。また、図11に示すように、バッテリVの後左角部の後側面が第1の縦板部514に覆われ、左側面が第2の縦板部524に覆われるようになる。
【0036】
次に、図9に示すように、バッテリVの後左角部に対して対角位置にある前右角部の下端リブVrが固定ブラケット40に押さえられた状態でバッテリトレイ30の前右角部に固定される。即ち、固定ブラケット40の右側拘束部41と前側拘束部43とがバッテリVの右側面と前側面との下端リブVrを上方から押さえた状態で、その固定ブラケット40の位置決め固定部45がバッテリトレイ30にボルト46により固定される。これにより、バッテリVの取付けが完了する。このように、バッテリVの後左角部が上方外れ防止ブラケット50に覆われるため、車両衝突時の衝突荷重がバッテリVに加わって、バッテリトレイ30のリブ押え突条36等が破断した場合でも、バッテリVがバッテリトレイ30から上方に外れることがなくなる。
【0037】
<本実施形態で使用した用語と本発明に係る用語との対応について>
本実施形態におけるエンジンルームER内の第1支持ブラケット16と第2支持ブラケット17と第3支持ブラケット18とが本発明における車両ボディに相当する。また、バッテリVの後左角部が本発明におけるバッテリの所定角部に相当し、バッテリVの前右角部が本発明の対角位置にあるバッテリの対角角部に相当する。また、バッテリVの後側面が本発明のバッテリの所定角部を構成する一方の側壁面に相当し、バッテリVの左側面が本発明のバッテリの所定角部を構成する他方の側壁面に相当する。さらに、バッテリVの下端リブVrが本発明のバッテリの側壁面に下部に形成された突条に相当する。また、バッテリトレイ30のトレイ本体部32が本発明のバッテリトレイの底板部に相当する。
【0038】
<本実施形態に係るバッテリ保持構造20の長所について>
本実施形態に係るバッテリ保持構造20によると、上方外れ防止ブラケット50の天板部516は、バッテリVをバッテリトレイ30上にセットする過程で、バッテリVの後左角部(所定角部)の上面Vuがその天板部516の下側に入り込めるような位置に設けられている。このため、バッテリVをバッテリトレイ30にセットすることにより、バッテリVの後左角部の上面Vuを上方外れ防止ブラケット50の天板部516で覆うことができる。このため、従来のように、バッテリトレイの内側に上方外れ防止ブラケットの保持金具を取り付け、バッテリをバッテリトレイに収納した後、上方外れ防止ブラケットを保持金具に連結する構成と比較して、バッテリの取り付けが容易になる。
【0039】
また、上方外れ防止ブラケット50の第1の天板部516においてバッテリVの上面Vuと対向する天井面516tは、第1の天板部516の先端側が高くなるように傾斜している。このため、バッテリVの下部をバッテリトレイ30にセットする過程で、バッテリVの後左角部の上面Vuを上方外れ防止ブラケット50の第1の天板部516の下側に挿入し易くなる。また、バッテリVの対角位置にある二つの角部を固定ブラケット40と上方外れ防止ブラケット50とにより支持する構成のため、衝突荷重が加わった際にバッテリVを効率的にバッテリトレイ30上に保持できる。さらに、上方外れ防止ブラケット50は、バッテリVの後側面を覆う第1の縦板部514と、左側面を覆う第2の縦板部524とを備えていため、上方外れ防止ブラケット50の第1の縦板部514と第2の縦板部524との働きにより、バッテリVの後左角部が衝突荷重により水平方向に移動し難くなる。
【0040】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、バッテリトレイ30の後左角部に上方外れ防止ブラケット50を設置し、バッテリVの前右角部の下部を固定ブラケット40によってバッテリトレイ30に固定する例を示した。しかし、例えば、バッテリトレイ30の前左角部に上方外れ防止ブラケット50を設置し、バッテリVの後右角部の下部を固定ブラケット40によってバッテリトレイ30に固定する構成でも可能である。また、本実施形態では、上方外れ防止ブラケット50を第1のブラケット片510と第2のブラケット片520とから構成する例を示したが、第1のブラケット片510と第2のブラケット片520とを一体で成形することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
16・・・・第1支持ブラケット(車両ボディ)
17・・・・第2支持ブラケット(車両ボディ)
18・・・・第3支持ブラケット(車両ボディ)
30・・・・バッテリトレイ
32・・・・トレイ本体部(底板部)
40・・・・固定ブラケット
50・・・・上方外れ防止ブラケット
510・・・第1のブラケット片
512・・・第1の底板部
514・・・第1の縦板部
516・・・第1の天板部
520・・・第2のブラケット片
522・・・第2の底板部
524・・・第2の縦板部
526・・・第2の天板部
V・・・・・バッテリ
Vr・・・・下端リブ(突条)
Vu・・・・上面
図1
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