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特開2024-157241端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157241
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/28 20060101AFI20241030BHJP
   H01R 4/00 20060101ALI20241030BHJP
   H01R 43/02 20060101ALN20241030BHJP
   H01R 43/048 20060101ALN20241030BHJP
   H01R 4/18 20060101ALN20241030BHJP
   H01R 4/02 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
H01R43/28
H01R4/00 Z
H01R43/02 B
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071489
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悠人
【テーマコード(参考)】
5E051
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB03
5E063CC04
5E063XA01
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD04
5E085DD13
5E085JJ01
(57)【要約】
【課題】電線の接合部位において適正な導通性能を確保することができる端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】端子付き電線製造方法は、導電性を有する複数の素線を束ねた電線の導体部を切断刃によって切断し、当該切断刃による切断時に熱によって複数の素線の切断端を軟化させて相互に凝着させる切断工程(ステップS1)と、切断工程(ステップS1)の後に、導体部と端子とを接合する接合工程(ステップS3)とを含む。この端子付き電線製造方法によって製造された端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆部によって導電性を有する導体部を被覆した電線と、絶縁被覆部の端末から露出する導体部に対して接合される端子とを備え、電線は、導体部を構成する複数の素線の切断端を相互に凝着させた切断端凝着部を含んで構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する複数の素線を束ねた電線の導体部を切断刃によって切断し、当該切断刃による切断時に熱によって前記複数の素線の切断端を軟化させて相互に凝着させる切断工程と、
前記切断工程の後に、前記導体部と端子とを接合する接合工程とを含む、
端子付き電線製造方法。
【請求項2】
前記切断工程の後で、かつ、前記接合工程の前に、前記複数の素線を固めて単線化した単線化部を形成する単線化工程を含み、
前記接合工程では、前記単線化部が形成された前記導体部と前記端子とを接合する、
請求項1に記載の端子付き電線製造方法。
【請求項3】
絶縁性を有する絶縁被覆部によって導電性を有する導体部を被覆した電線と、
前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して接合される端子とを備え、
前記電線は、前記導体部を構成する複数の素線の切断端を相互に凝着させた切断端凝着部を含んで構成される、
端子付き電線。
【請求項4】
導電性を有する複数の素線を束ねた電線の導体部を切断刃によって切断し、当該切断刃による切断時に熱によって前記複数の素線の切断端を軟化させて相互に凝着させる切断工程を含む、
電線端末処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の端子付き電線製造方法として、例えば、特許文献1には、複数のアルミニウム素線が集合された芯線と芯線の外周を覆う絶縁被覆とを有する電線と、電線の端部の露出芯線に圧着された端子とを備えた端子付電線の製造方法が開示されている。この端子付電線の製造方法は、露出芯線に圧力を加えてアルミニウム素線同士を接合する工程と、アルミニウム素線同士が接合された露出芯線の端部を切揃える工程と、端部が切揃えられた露出芯線に端子を圧着する工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-192465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の端子付電線の製造方法は、例えば、露出芯線に端子を圧着する工程の前に露出芯線の端部を切揃える工程を行うことで、かえってアルミニウム素線同士の接合部位にほつれが生じ素線にずれが発生してしまうことがあり、これに起因して導通性能に関して更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電線の接合部位において適正な導通性能を確保することができる端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線製造方法は、導電性を有する複数の素線を束ねた電線の導体部を切断刃によって切断し、当該切断刃による切断時に熱によって前記複数の素線の切断端を軟化させて相互に凝着させる切断工程と、前記切断工程の後に、前記導体部と端子とを接合する接合工程とを含む。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆部によって導電性を有する導体部を被覆した電線と、前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して接合される端子とを備え、前記電線は、前記導体部を構成する複数の素線の切断端を相互に凝着させた切断端凝着部を含んで構成される。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電線端末処理方法は、導電性を有する複数の素線を束ねた電線の導体部を切断刃によって切断し、当該切断刃による切断時に熱によって前記複数の素線の切断端を軟化させて相互に凝着させる切断工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法は、電線の接合部位において適正な導通性能を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る端子付き電線製造方法を表すフローチャートである。
図2図2は、実施形態に係る端子付き電線製造方法の切断工程を表す模式的な側面図である。
図3図3は、実施形態に係る端子付き電線製造方法によって製造される端子付き電線の一例を表す模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態に係る端子付き電線製造方法によって製造される端子付き電線の他の一例を表す模式的な断面図である。
図5図5は、比較例に係る端子付き電線製造方法によって製造される端子付き電線の一例を表す模式的な断面図である。
図6図6は、比較例に係る端子付き電線製造方法によって製造される端子付き電線の他の一例を表す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図1図2に示す本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、図3図4に示す端子付き電線1、1A等を製造するものである。端子付き電線1、1Aは、例えば、車両等に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態の端子付き電線1、1Aは、電線Wと、当該電線Wの端末に接合された端子T、TAとを備える。
【0013】
電線Wは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Wは、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2によって導体部W1を被覆した絶縁電線である。
【0014】
導体部W1は、導電性を有する金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる複数の素線W1aを束ねた芯線である。導体部W1は、当該複数の素線W1aを撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0015】
電線Wは、導体部W1の断面形状(延在方向と交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、導体部W1が絶縁被覆部W2から露出している。電線Wは、絶縁被覆部W2から露出している当該導体部W1の端末に端子T、TAが設けられる。
【0016】
端子T、TAは、電線Wにおいて、絶縁被覆部W2の端末から露出する導体部W1に対して接合されることで、当該電線Wと電気的に接続され、導通される部材である。端子T、TAは、導電性を有する相手端子やアース部材等の接続対象物と電線Wとの間に介在し、これらを相互に電気的に接続する。端子T、TAは、導電性を有する金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる一枚の板金を、各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。端子T、TAは、例えば、圧着、溶着、溶接、超音波接合等、様々な接合形式によって導体部W1が接合される。
【0017】
例えば、図3に例示する端子付き電線1は、端子Tにおいて複数のバレル片Tbを含んで構成される電線圧着部Taに対して、絶縁被覆部W2の端末、及び、当該絶縁被覆部W2の端末から露出する導体部W1が圧着されることで電線Wと端子Tとが接合される形態を例示している。
【0018】
一方、図4に例示する端子付き電線1Aは、端子TAにおいて平板状に形成された接合部TAaに対して、上記電線圧着部Taを介さずに、溶着、溶接、超音波接合等によって、絶縁被覆部W2の端末から露出する導体部W1が直接接合されることで電線Wと端子Tとが接合される形態を例示している。
【0019】
なお、上記の端子付き電線1、1Aにおいては、電線Wと端子T、TAとの接合前に、電線Wの導体部W1に対して単線化加工を施すことで単線化部W1bを形成した後に電線Wと端子T、TAとが接合されてもよい。この単線化部W1bは、例えば、アンビルやホーンを用いた超音波接合等の単線化加工により導体部W1を機械的に変形させた部分であり、より詳しくは、複数の素線W1aを固めて単線化した部分である。端子付き電線1、1Aは、電線Wと端子T、TAとの接合前に、導体部W1にこの単線化部W1bを形成しておくことで、電線Wと端子T、TAとの接合部位において導通性能を向上することができる場合がある。
【0020】
また、図3に例示する端子付き電線1は、図示を省略しているが、例えば、雌型の端子形状部又は雄型の端子形状部を介して接続対象物と接続されるものである。また、図4に例示する端子付き電線1Aは、丸形端子(LA端子)形状部を介して接続対象物に接続されるものとして図示している。ただし、端子T、TAにおける接続対象物との接続形式はこれに限られない。
【0021】
図1図2に示す本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、上記のように構成される端子付き電線1、1Aの製造に際し、電線Wを切断する工程において、切断時に熱によって導体部W1の切断端W1cを凝着させることで、電線Wの接合部位において良好な導通性能の確保を図ったものである。
【0022】
以下、上記のように構成される端子付き電線1、1Aの製造方法(端子付き電線製造方法)について説明する。以下の説明では、図1のフローチャートを基に説明しつつ、適宜他図を参照する。以下で説明する端子付き電線1、1Aの製造方法は、作業員が種々の装置、機器、治具等を用いて手作業で行ってもよいし、種々の製造装置によって自動で行われるものであってもよい。
【0023】
本実施形態の端子付き電線1、1Aの製造方法は、切断・皮むき工程(ステップS1)と、単線化工程(ステップS2)と、接合工程(ステップS3)とを含む。
【0024】
具体的には、まず、作業員は、切断・皮むき工程として、図2等に示すように、導電性を有する複数の素線W1aを束ねた電線Wの導体部W1を切断刃Cによって切断し切断端W1cを切り揃えると共に、当該切断刃Cによる切断時に熱によって複数の素線W1aの当該切断端W1cを軟化させて相互に凝着させる(ステップS1)。ここでは、作業員は、導体部W1の切断と共に、当該切断端W1c側の端末において絶縁被覆部W2の一部を剥ぎ取り、導体部W1の切断端W1c側の端末を絶縁被覆部W2から露出させる皮むきも並行して行う。この切断・皮むき工程(ステップS1)は、例えば、切断刃Cを備えた切断・皮剥き機等によって実行されてもよい。
【0025】
本実施形態の切断・皮むき工程(ステップS1)では、例えば、切断刃Cの表面の摩擦係数や切断する際の切断刃Cの剪断力、切断速度等を調節することで、切断時に切断刃Cと切断端W1cとの間に発生する摩擦熱を相対的に高め、これにより、当該摩擦熱によって少なくとも素線W1aの切断端W1cが軟化・溶融する温度まで到達させるようにしてもよい。例えば、切断・皮むき工程(ステップS1)では、切断刃Cと素線W1aとの間の摩擦係数が相対的に高くなるように表面が粗い切断刃Cを使用することで、切断時に切断刃Cと切断端W1cとの間に発生する摩擦熱を相対的に高め、素線W1aの切断端W1cが軟化・溶融する温度まで到達させるようにしてもよい。また、この切断・皮むき工程(ステップS1)では、例えば、当該切断・皮むき工程(ステップS1)を行う際の切断部位近傍の雰囲気温度を相対的に高温にしたり、事前に電線Wの温度を予熱し相対的に高温にしておいたりすることで、切断時に熱によって素線W1aの切断端W1cが軟化・溶融する温度まで到達させるようにしてもよい。そして、切断時の熱によって切断端W1cが軟化・溶融した電線Wは、その後、軟化・溶融した当該素線W1aの切断端W1cの熱が冷めて固化する際に、当該複数の素線W1aの切断端W1c同士が相互に凝着し、切断端凝着部W1dを形成する。
【0026】
次に、作業員は、切断・皮むき工程(ステップS1)の後で、かつ、次の接合工程(ステップS2)の前に、単線化工程として、切断端W1cに切断端凝着部W1dが形成され当該切断端凝着部W1dにおいて相互に凝着されている複数の素線W1aを固めて機械的に変形させ単線化し単線化部W1bを形成する(ステップS2)。この単線化工程(ステップS2)は、例えば、アンビルやホーンを備えた超音波接合機等によって実行されてもよい。
【0027】
その後、作業員は、切断・皮むき工程(ステップS1)、単線化工程(ステップS2)の後に、接合工程として、導体部W1と端子T、TAとを接合し(ステップS3)、この端子付き電線1、1Aの製造方法を終了する。本実施形態の接合工程(ステップS3)では、上述したように、切断・皮むき工程(ステップS1)にて切断端凝着部W1dが形成され、単線化工程(ステップS2)にて単線化部W1bが形成された状態の導体部W1と端子T、TAとを接合する。つまり、上記のように製造された端子付き電線1、1Aにおいては、電線Wは、導体部W1を構成する複数の素線W1aを固めて単線化した単線化部W1b、及び、当該複数の素線W1aの切断端W1cを相互に凝着させた切断端凝着部W1dを含んで構成される。この接合工程(ステップS3)は、例えば、図3に例示する端子付き電線1においては、クリンパやアンビルを備えた圧着機等によって実行されてもよく、例えば、図4に例示する端子付き電線1Aにおいては、アンビルやホーンを備えた超音波接合機等によって実行されてもよい。
【0028】
以上で説明した端子付き電線製造方法、及び、端子付き電線1、1Aは、切断・皮むき工程(ステップS1)にて、切断端W1cにおいて複数の素線W1aが軟化温度に到達し、複数の素線W1a間が凝着し切断端凝着部W1dを形成することで、導体部W1において複数の素線W1aのずれが発生することを抑制することができる。この結果、端子付き電線1、1Aは、導体部W1において複数の素線W1aの形状崩れを抑制することができ、その状態で接合工程(ステップS3)を行うことで、導体部W1と端子T、TAとの導通領域T1(図3図4参照)を相対的に広く確保することができる。
【0029】
例えば、図5図6に示す比較例に係る端子付き電線1001、1001Aは、上述した切断端凝着部W1dを備えていないものである。この場合、端子付き電線1001、1001Aは、複数の素線W1aの切り揃え、導体部W1の単線化、端子T、TAとの接合等の際に導体部W1において複数の素線W1aのずれが発生し易く、当該複数の素線W1aの形状崩れが発生する場合がある。この場合、端子付き電線1001、1001Aは、例えば、複数の素線W1aの形状崩れが発生した部位において導体部W1と端子T、TAとが導通されていない、あるいは、導通されていてもすべての素線W1a同士が十分に導通、接合されていない非導通領域T1002が形成され、その分、導通領域T1001が相対的に狭くなる場合がある。
【0030】
これに対して、本実施形態の端子付き電線製造方法によって製造された端子付き電線1、1Aは、図3図4等に示したように、切断・皮むき工程(ステップS1)にて切断端凝着部W1dが形成されることで、導体部W1において複数の素線W1aの形状崩れを抑制することができ、導通領域T1を相対的に広く確保することができる。例えば、端子付き電線1、1Aは、複数の素線W1aの数が相対的に多く当該素線W1aのずれが発生し易い傾向にある太物電線において、この効果を顕著に発揮することができきる。この結果、本実施形態の端子付き電線製造方法によって製造された端子付き電線1、1Aは、例えば、接合部位における抵抗が増加することを抑制することができ、例えば、接続信頼性を向上することができる。またこの場合、端子付き電線1、1Aは、複数の素線W1aのずれや形状崩れを抑制することができるので、構造の複雑化を抑制しつつ体格の小型化にも寄与することができる場合がある。
【0031】
また、本実施形態の端子付き電線製造方法は、導体部W1を構成する複数の素線W1aを切り揃える工程を兼用して切断時に熱を利用して切断端凝着部W1dを形成することができるので、追加の工程を加える必要がなく、1個製造あたりのサイクルタイムを抑制することができ、例えば、製造コストの増加を抑制することもできる。
【0032】
以上のように、本実施形態の端子付き電線製造方法、及び、端子付き電線1、1Aは、電線Wの端子T、TAとの接合部位において適正な導通性能を確保することができる。
【0033】
ここでは、以上で説明した端子付き電線製造方法、及び、端子付き電線1、1Aは、切断・皮むき工程(ステップS1)の後で、かつ、接合工程(ステップS3)の前に、単線化工程(ステップS2)を含み、接合工程(ステップS3)では、単線化部W1bが形成された導体部W1と端子T、TAとを接合する。この場合、端子付き電線製造方法は、複数の素線W1aの切断端W1cに切断端凝着部W1dを形成した後に、複数の素線W1aを固めて単線化部W1bを形成することができるので、例えば、単線化後に複数の素線W1aを切り揃えるような場合と比較して一旦、単線化部W1bとされた複数の素線W1aが再度ほつれてしまうようなことを抑制することができる。この結果、本実施形態の端子付き電線製造方法、及び、端子付き電線1、1Aは、接合部位の接続信頼性をさらに向上することができ、接合部位においてより適正な導通性能を確保することができる。
【0034】
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線製造方法、及び、端子付き電線は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
以上の説明では、作業員は、切断・皮むき工程(ステップS1)において、導体部W1の切断と共に皮むきも並行して行うものとして説明したがこれに限らず、切断工程と皮むき工程とを個別に行うようにしてもよい。
【0036】
また、以上の説明では、端子付き電線製造方法は、単線化工程(ステップS2)を含むものとして説明したが、当該単線化工程(ステップS2)を備えなくてもよい。
【0037】
また、以上で説明した電線Wは、複数の素線W1aが束ねられて構成されたものであればよく、例えば、編組線等でもあってもよい。
【0038】
また、以上の説明では、上記切断工程は、電線Wと端子T、TAとの接合部位に適用するものとして説明したが、これに限らず、電線端末処理方法として他の部位に適用することもできる。例えば、上記切断工程は、複数の電線W同士の接合部位に適用されてもよく、すなわちこの場合、電線端末処理方法は、相互に接合する電線Wの各端末を上記切断・皮むき工程(ステップS1)によって処理する方法として適用される。つまりこの場合、電線端末処理方法は、上記切断・皮むき工程(ステップS1)を含み、複数の電線Wの各端末に対してそれぞれ当該切断・皮むき工程(ステップS1)が行われることとなる。そして、当該電線端末処理方法が適用された複数の電線Wは、それぞれ切断端凝着部W1dを含んで構成され、当該切断端凝着部W1dを含んで構成された導体部W1同士が超音波接合等によって接合される。この場合も、当該電線端末処理方法は、上記と同様に、電線Wの接合部位において適正な導通性能を確保することができる。
【0039】
本実施形態に係る端子付き電線製造方法、端子付き電線、及び、電線端末処理方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、1A 端子付き電線
C 切断刃
S1 切断・皮むき工程(切断工程)
S2 単線化工程
S3 接合工程
T、TA 端子
T1 導通領域
Ta 電線圧着部
TAa 接合部
Tb バレル片
W 電線
W1 導体部
W1a 素線
W1b 単線化部
W1c 切断端
W1d 切断端凝着部
W2 絶縁被覆部

図1
図2
図3
図4
図5
図6