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特開2024-157242ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157242
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241030BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H02G3/04
H01B7/00 301
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071490
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小池 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴健
【テーマコード(参考)】
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309AA09
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】原価の低減を図ること。
【解決手段】複数本の電線11を具備する電線群10と、前記電線群10の保護対象部位10aを挟み込んで内方に収容するシート状の絶縁性の一対の外装部材20と、を備えるハーネス部品30が設けられ、前記ハーネス部品30は、一対の前記外装部材20の間で相接する接合部31と、相接する前記接合部31の間で前記保護対象部位10aの軸方向に沿ってその接合部31同士が溶着された両端が自由端の溶着部32と、を有すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を具備する電線群と、前記電線群の保護対象部位を挟み込んで内方に収容するシート状の絶縁性の一対の外装部材と、を備えるハーネス部品が設けられ、
前記ハーネス部品は、一対の前記外装部材の間で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有することを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記ハーネス部品を複数備え、
複数の前記ハーネス部品は、それぞれの一対の前記外装部材の間で互いの前記接合部を溶着して一体化させることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
複数本の電線を具備する電線群と、折り返したその内方に前記電線群の保護対象部位を収容するシート状の絶縁性の外装部材と、を備えるハーネス部品が設けられ、
前記ハーネス部品は、前記外装部材における折り返した先で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有することを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項4】
前記ハーネス部品を複数備え、
複数の前記ハーネス部品は、それぞれの前記外装部材の間で互いの前記接合部を溶着して一体化させることを特徴とした請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
複数本の電線を具備する電線群と、前記電線群の保護対象部位を内方に収容するシート状の絶縁性の外装部材と、を備えるハーネス部品が複数設けられ、
前記電線群としての第1電線群を備えると共に、前記第1電線群の保護対象部位を挟み込んで内方に収容する前記外装部材としての第1外装部材を一対備える第1ハーネス部品と、前記電線群としての第2電線群を備えると共に、折り返したその内方に前記第2電線群の保護対象部位を収容する前記外装部材としての第2外装部材を備える第2ハーネス部品と、を前記ハーネス部品として少なくとも1つずつ設け、
前記第1ハーネス部品は、一対の前記第1外装部材の間で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記第1電線群の前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有し、
前記第2ハーネス部品は、前記第2外装部材における折り返した先で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記第2電線群の前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有し、
複数の前記ハーネス部品は、それぞれの前記外装部材の間で互いの前記接合部を溶着して一体化させることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項6】
前記電線群は、幹線と前記幹線の分岐部から分岐させた分岐電線とを有し、かつ、前記分岐部を含む前記幹線の一部と前記分岐電線とを前記保護対象部位とすることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記ハーネス部品には、相接する前記接合部の間で前記溶着部の一方の前記自由端から他方の前記自由端までの間のその接合部同士が溶着されて、その一方の前記自由端と他方の前記自由端とを繋ぐ補助溶着部を設けることを特徴とした請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記補助溶着部は、相接する前記接合部の外周縁同士を溶着して、前記溶着部の一方の前記自由端と他方の前記自由端とを繋ぐことを特徴とした請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記ハーネス部品では、一対の前記外装部材における前記保護対象部位を境に相接する一端部側と他端部側とをそれぞれに前記接合部とし、
一対の前記外装部材では、その内の一方の前記外装部材よりも硬質の材料で他方の前記外装部材が平板のシート状に成形されており、
その一方の前記外装部材は、前記一端部側と前記他端部側との間に、他方の前記外装部材との間で前記保護対象部位の収容空間を成す屈曲部を有することを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記電線群の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体と、前記クランプ本体から突出させた固定用突出部と、を有するクランプを備え、
前記外装部材は、一方の壁面側から他方の壁面側へと前記クランプ本体を挿通させる貫通孔を有し、一方の前記壁面と前記電線群とで前記固定用突出部を挟持することを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記電線群は、幹線と前記幹線の分岐部から分岐させた分岐電線とを有し、かつ、前記分岐部を含む前記幹線の一部と前記分岐電線とを前記保護対象部位とし、
前記外装部材は、前記分岐部の存在する場所に前記貫通孔を設けることを特徴とした請求項10に記載のワイヤハーネス。
【請求項12】
前記保護対象部位と前記外装部材との間に介在させるシート状のシールド部材を備え、
前記電線群を成す複数本の前記電線の内の1本は、被覆が一部除去されて芯線を露出させ、その露出させた前記芯線を前記シールド部材に接触させるドレイン線であることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載のワイヤハーネス。
【請求項13】
第1金型の設置面にシート状の絶縁性の一方の外装部材を載せ置く第1設置工程と、
一方の前記外装部材に複数本の電線を具備する電線群の保護対象部位を載せ置く第2設置工程と、
一方の前記外装部材及び前記保護対象部位にシート状の絶縁性の他方の外装部材を載せ置き、前記保護対象部位を一方の前記外装部材と他方の前記外装部材とで挟み込む第3設置工程と、
一方の前記外装部材と他方の前記外装部材における前記保護対象部位から見た一端部側と他端部側とを前記第1金型と第2金型とでそれぞれに挟み込む第4設置工程と、
一方の前記外装部材と他方の前記外装部材における前記一端部側と前記他端部側とを前記保護対象部位の軸方向に沿って溶着させる溶着工程と、
を有することを特徴としたワイヤハーネスの製造方法。
【請求項14】
前記第1設置工程では、前記設置面に溝部が設けられた前記第1金型に平らなシート状の一方の前記外装部材を載せ置き、
前記第1設置工程の後で一方の前記外装部材を前記第1金型と第3金型とで挟み込み、前記第3金型の突出部を前記第1金型の前記溝部に嵌め込んで前記溝部と前記突出部とに沿わせた屈曲部を一方の前記外装部材に形成する屈曲部形成工程を設け、
前記第2設置工程では、前記屈曲部形成工程で形成された前記屈曲部の中に前記保護対象部位を設置し、
前記第3設置工程では、一方の前記外装部材に当該一方の前記外装部材よりも硬質の材料で平板のシート状に成形された他方の前記外装部材を載せ置き、前記屈曲部の中の前記保護対象部位を一方の前記外装部材と他方の前記外装部材とで挟み込み、
前記第4設置工程では、一方の前記外装部材と他方の前記外装部材における前記保護対象部位を境に相接する前記一端部側と前記他端部側とを前記第1金型と前記第2金型とでそれぞれに挟み込むことを特徴とした請求項13に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項15】
治具が有するV字状又はU字状の溝部の中に前記溝部の形状に沿わせた形でシート状の絶縁性の外装部材をV字又はU字の屈曲形状に折り曲げて載せ置く第1設置工程と、
前記屈曲形状の前記外装部材の中に複数本の電線を具備する電線群の保護対象部位を設置する第2設置工程と、
前記外装部材における前記保護対象部位を軸に折り返した先の端部同士を第1金型と第2金型とで挟み込む第3設置工程と、
前記外装部材の前記端部同士を前記保護対象部位の軸方向に沿って溶着させる溶着工程と、
を有することを特徴としたワイヤハーネスの製造方法。
【請求項16】
前記第1設置工程の後で前記屈曲形状の前記外装部材の内壁面に沿わせてシート状のシールド部材をV字又はU字の屈曲形状に折り曲げて載せ置くシールド設置工程を設け、
前記第2設置工程では、前記屈曲形状の前記シールド部材の中にドレイン線から先に前記保護対象部位を設置し、前記シールド部材の内壁面に前記ドレイン線の剥き出しの芯線を接触させることを特徴とした請求項15に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスにおいては、その電線群が外装部材で保護される。その外装部材としては、例えば、電線群に巻き付けるシート又は電線群を収容するコルゲートチューブ等の筒状部材が用いられる。シートについては、その巻き付けの内側に設けた両面テープ等の粘着部材を利用して電線群に固定する(例えば、下記の特許文献1)。また、筒状部材については、その両端と電線群に粘着テープを巻き付けて固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-105756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスは、外装部材の他に固定用の粘着部材や粘着テープも構成部品として必要になる。また、従来のワイヤハーネスは、外装部材に筒状部材を用いる場合、その固定用の粘着テープを巻き付ける作業工程も必要になる。このため、従来のワイヤハーネスにおいては、その固定用の粘着部材や粘着テープが原価高騰の一因となっている。
【0005】
そこで、本発明は、原価の低減が可能なワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワイヤハーネスは、複数本の電線を具備する電線群と、前記電線群の保護対象部位を挟み込んで内方に収容するシート状の絶縁性の一対の外装部材と、を備えるハーネス部品が設けられ、前記ハーネス部品は、一対の前記外装部材の間で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有することを特徴する。
【0007】
また、本発明に係るワイヤハーネスは、複数本の電線を具備する電線群と、折り返したその内方に前記電線群の保護対象部位を収容するシート状の絶縁性の外装部材と、を備えるハーネス部品が設けられ、前記ハーネス部品は、前記外装部材における折り返した先で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有することを特徴する。
【0008】
また、本発明に係るワイヤハーネスは、複数本の電線を具備する電線群と、前記電線群の保護対象部位を内方に収容するシート状の絶縁性の外装部材と、を備えるハーネス部品が複数設けられ、前記電線群としての第1電線群を備えると共に、前記第1電線群の保護対象部位を挟み込んで内方に収容する前記外装部材としての第1外装部材を一対備える第1ハーネス部品と、前記電線群としての第2電線群を備えると共に、折り返したその内方に前記第2電線群の保護対象部位を収容する前記外装部材としての第2外装部材を備える第2ハーネス部品と、を前記ハーネス部品として少なくとも1つずつ設け、前記第1ハーネス部品は、一対の前記第1外装部材の間で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記第1電線群の前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有し、前記第2ハーネス部品は、前記第2外装部材における折り返した先で相接する接合部と、相接する前記接合部の間で前記第2電線群の前記保護対象部位の軸方向に沿ってその接合部同士が溶着された両端が自由端の溶着部と、を有し、複数の前記ハーネス部品は、それぞれの前記外装部材の間で互いの前記接合部を溶着して一体化させることを特徴する。
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、第1金型の設置面にシート状の絶縁性の一方の外装部材を載せ置く第1設置工程と、一方の前記外装部材に複数本の電線を具備する電線群の保護対象部位を載せ置く第2設置工程と、一方の前記外装部材及び前記保護対象部位にシート状の絶縁性の他方の外装部材を載せ置き、前記保護対象部位を一方の前記外装部材と他方の前記外装部材とで挟み込む第3設置工程と、一方の前記外装部材と他方の前記外装部材における前記保護対象部位から見た一端部側と他端部側とを前記第1金型と第2金型とでそれぞれに挟み込む第4設置工程と、一方の前記外装部材と他方の前記外装部材における前記一端部側と前記他端部側とを前記保護対象部位の軸方向に沿って溶着させる溶着工程と、を有することを特徴する。
【0010】
また、本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、治具が有するV字状又はU字状の溝部の中に前記溝部の形状に沿わせた形でシート状の絶縁性の外装部材をV字又はU字の屈曲形状に折り曲げて載せ置く第1設置工程と、前記屈曲形状の前記外装部材の中に複数本の電線を具備する電線群の保護対象部位を設置する第2設置工程と、前記外装部材における前記保護対象部位を軸に折り返した先の端部同士を第1金型と第2金型とで挟み込む第3設置工程と、前記外装部材の前記端部同士を前記保護対象部位の軸方向に沿って溶着させる溶着工程と、を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るワイヤハーネス及び本発明に係る製造方法で作り出されたワイヤハーネスは、従来のワイヤハーネスのような外装部材を固定するための粘着部材や粘着テープを必要としないので、原価の低減を図ることができる。また、このワイヤハーネスは、その粘着テープを巻き付ける作業工程が必要無くなるので、原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す平面図である。
図2図2は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図3図3は、実施形態のワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
図4図4は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す分解斜視図である。
図5図5は、実施形態のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図6図6は、実施形態のワイヤハーネスの余剰部分の取り扱いについて説明する平面図である。
図7図7は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態の余剰部分の取り扱いについて説明する平面図である。
図8図8は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態の補助溶着部について説明する平面図である。
図9図9は、クランプを設けた実施形態のワイヤハーネスを示す平面図である。
図10図10は、クランプを設けた実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図11図11は、クランプについて説明する斜視図である。
図12図12は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図13図13は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図14図14は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図15図15は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態の製造工程で用いる貫通孔について説明する平面図である。
図16図16は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態の製造工程で用いる貫通孔について説明する平面図である。
図17図17は、外装部材の別の使用形態について説明する平面図である。
図18図18は、変形例1のワイヤハーネスを示す斜視図である。
図19図19は、変形例1のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図20図20は、変形例1のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図21図21は、変形例2のワイヤハーネスを示す平面図である。
図22図22は、変形例2のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図23図23は、変形例2のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図24図24は、変形例2のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図25図25は、変形例2のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図26図26は、変形例2のワイヤハーネスの変形形態の補助溶着部について説明する平面図である。
図27図27は、クランプを設けた変形例2のワイヤハーネスを示す平面図である。
図28図28は、クランプを設けた変形例2のワイヤハーネスの変形形態を示す平面図である。
図29図29は、変形例3のワイヤハーネスを示す平面図である。
図30図30は、変形例3のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図31図31は、変形例3のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図32図32は、変形例3のワイヤハーネスの製造工程について説明する説明図である。
図33図33は、変形例4のワイヤハーネスをハーネス部品毎に分けて示す平面図である。
図34図34は、変形例4のワイヤハーネスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の1つを図1から図16に基づいて説明する。
【0015】
図1から図4の符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。
【0016】
このワイヤハーネス1には、複数本の電線11を具備する電線群10と、この電線群10の保護対象部位10aを挟み込んで内方に収容するシート状の絶縁性の一対の外装部材20と、を備えるハーネス部品30が設けられている(図1から図4)。このハーネス部品30は、一対の外装部材20の間で相接する接合部31と、この相接する接合部31の間で保護対象部位10aの軸方向に沿ってその接合部31同士が溶着された両端が自由端の溶着部32と、を有している(図1から図4)。このハーネス部品30においては、外装部材20同士を溶着させるために、その溶着を可能にする絶縁性の原材料で外装部材20が成形される。ここで例示する外装部材20は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等を原材料にして成形されており、高周波溶着や超音波溶着等の周知の溶着技術を用いて溶着される。一対の外装部材20は、それぞれに異なる部材であってもよく、互いに同じ部材であってもよい。
【0017】
電線群10においては、その複数本の電線11が一纏めに束ねられている(図1から図4)。この電線群10は、幹線12と、この幹線12の分岐部12aから分岐させた分岐電線13と、を有する(図2及び図4)。
【0018】
ここで示すハーネス部品30においては、幹線12の一部を保護対象部位10aとし、この幹線12の一部を一対の外装部材20で挟み込むと共に(図1及び図3)、この保護対象部位10aとは別の場所で、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13とを保護対象部位10aとし、この分岐部12aを含む電線群10の周辺を一対の外装部材20で挟み込む(図2及び図4)。このハーネス部品30では、一対の外装部材20における前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)を境に相接する一端部側21aと他端部側21bとをそれぞれに接合部31とし、この接合部31としての一端部側21aの間と他端部側21bの間に溶着部32を設ける(図1)。また、このハーネス部品30では、後者の保護対象部位10aにて、一対の外装部材20における幹線12を境に相接する一端部側21aと、この一対の外装部材20における幹線12を境に相接する他端部側21bにおける幹線12と分岐電線13との間に位置する中間部22a,22bと、をそれぞれに接合部31とし、この接合部31としての中間部22aの間と中間部22bの間に溶着部32を設ける(図2)。この後者の保護対象部位10aでは、幹線12の分岐部12aから1本の分岐電線13を分岐させており、一対の外装部材20に2箇所の相接する中間部22a,22bが形成される。
【0019】
外装部材20については、保護対象部位10aの形状に合わせて形状を決める。ここでは、矩形のシート状の外装部材20を用いている(図1から図4)。このため、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)では、その軸線を一対の外装部材20の一方の対辺に沿わせることによって、接合部31としての一端部側21aと他端部側21bとがそれぞれに矩形になっている(図1)。この前者の保護対象部位10aにおいては、接合部31としての一端部側21aの間と接合部31としての他端部側21bの間でそれぞれに保護対象部位10aの軸方向に延在させた直線形状の溶着部32を形成している。それぞれの溶着部32は、その保護対象部位10a(幹線12の一部)に寄せて配置される。また、後者の保護対象部位10a(分岐部12aを含む電線群10の周辺)では、幹線12と分岐電線13を直交させているので、幹線12の軸線を一対の外装部材20の一方の対辺に沿わせることによって、接合部31としての一端部側21aと、他端部側21bにおける接合部31としての2箇所の中間部22a,22bと、がそれぞれに矩形になっている(図2)。この後者の保護対象部位10aにおいては、その一端部側21aの間で幹線12の軸方向に延在させた直線形状の溶着部32を形成し、その中間部22aの間と中間部22bの間で分岐部12aから幹線12の軸方向と分岐電線13の軸方向とに各々延在させたL字形状の溶着部32を形成している。そのそれぞれの溶着部32は、その幹線12と分岐電線13に寄せて配置される。
【0020】
このワイヤハーネス1は、例えば、下記の製造方法で組み立てる。ここでは、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)に関して例示する。
【0021】
この製造方法は、第1金型Maの設置面Ma1に一対の外装部材20の内の一方(以下、「一方の外装部材20A」という。)を載せ置く第1設置工程を有する(図5)。例えば、その第1金型Maは、ワイヤハーネス1を組み立てるための所謂治具板等に設置される。
【0022】
この製造方法は、その第1金型Ma上の一方の外装部材20Aに電線群10の保護対象部位10aを載せ置く第2設置工程を有する(図5)。この第2設置工程では、電線群10における保護対象部位10aの両端側を治具板上のそれぞれの支持部材Sに支持させる。その支持部材Sには、内方の空間で電線群10を支えながら、この内方の空間に電線群10を通す支持部Saが設けられている。その支持部Saは、互いに間隔を空けて対向配置された2本の支持ピンと、この2本の支持ピンの一方の端部同士を繋ぐ底部と、を有している。この支持部Saにおいては、その2本の支持ピンと底部とによって形成された内方の空間に、2本の支持ピンの他方の端部の間から電線群10を差し入れる。そして、この支持部Saにおいては、その内方の空間で、底部に電線群10を載せ置くなどして支持すると共に、2本の支持ピンによって電線群10を両側から支持する。例えば、この支持部Saは、その2本の支持ピンと底部とを有するU字状又はV字状等の支持形状に形成されている。支持部材Sにおいては、この支持部Saが少なくとも1箇所に設けられている。この例示の支持部材Sには、U字状に形成された支持部Saが2箇所に設けられている。
【0023】
この製造方法は、その一方の外装部材20A及び保護対象部位10aに一対の外装部材20の内の他方(以下、「他方の外装部材20B」という。)を載せ置き、その保護対象部位10aを一方の外装部材20Aと他方の外装部材20Bとで挟み込む第3設置工程を有する(図5)。
【0024】
この製造方法は、その一方の外装部材20Aと他方の外装部材20Bにおける保護対象部位10aから見た一端部側21aと他端部側21bとを第1金型Maと第2金型Mbとでそれぞれに挟み込む第4設置工程を有する(図5)。
【0025】
この製造方法は、その一方の外装部材20Aと他方の外装部材20Bにおける一端部側21aと他端部側21bとを保護対象部位10aの軸方向に沿って溶着させる溶着工程を有する。ここでは、第1金型Maと第2金型Mbが電極を兼ねており、その一端部側21aと他端部側21bの所定箇所を発熱させて溶着する。これにより、その一端部側21aと他端部側21bには、それぞれに前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)に沿う直線形状の溶着部32が形成される。
【0026】
この製造方法に依れば、治具板上の必要最小限の作業スペースで電線群10の保護対象部位10aに一対の外装部材20を取り付けることができる。
【0027】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1は、一対の外装部材20で電線群10の保護対象部位10aを挟み込み、この一対の外装部材20の相接する接合部31を溶着させることによって、この一対の外装部材20で保護対象部位10aを絶縁処理して保護することができる。このため、このワイヤハーネス1は、従来のワイヤハーネスのような外装部材を固定するための粘着部材や粘着テープを必要としないので、原価の低減を図ることができる。また、このワイヤハーネス1は、その粘着テープを巻き付ける作業工程が必要無くなるので、原価の低減を図ることができる。例えば、従来のワイヤハーネスでは、その固定用の粘着テープを作業者が手作業で巻き付けている。よって、本実施形態のワイヤハーネス1は、従来のワイヤハーネスと比較した原価の低減効果が高いものとなっており、更に、保護対象部位10aに取り付けられた外装部材20の品質バラツキを従来のワイヤハーネスよりも抑えることができる。
【0028】
また、本実施形態のワイヤハーネス1は、一対の外装部材20で電線群10の保護対象部位10aを挟み込むものであるので、外装部材20の大きさを変えるだけで電線群10の様々な長さや様々な太さに対応することができる。
【0029】
ところで、本実施形態のワイヤハーネス1は、一対の外装部材20におけるそれぞれの接合部31の間で幹線12や分岐電線13に寄せて溶着部32を形成しているので、その接合部31の間で溶着されていない余剰部分31aが存在する(図6及び図7)。このため、ハーネス部品30においては、溶着後にその余剰部分31aを切除してもよい。また、本実施形態のワイヤハーネス1においては、最初からその余剰部分が無い形で成形された外装部材20を用いてもよい。
【0030】
更に、本実施形態のワイヤハーネス1は、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13を保護対象部位10aとするときに、先に示したように、一対の外装部材20のそれぞれの中間部22a,22bで分岐部12aから幹線12の軸方向と分岐電線13の軸方向とに各々延在させたL字形状の溶着部32を形成している(図2)。そして、その溶着部32は、幹線12や分岐電線13に寄せられている(図2)。例えば、ハーネス部品30においては、一対の外装部材20がシート状に成形されており、これが柔軟性を持っている場合、接合部31の撓みに伴い分岐電線13が幹線12に近づくなどして、幹線12と分岐電線13の間でその形状が一定に保たれない可能性がある。特に、このハーネス部品30においては、一対の外装部材20のそれぞれの中間部22a,22bに余剰部分(一対の外装部材20の間で溶着されていない部分)31aが残らないように切除などすると(図7)、分岐電線13が幹線12に近づき易くなる。
【0031】
そこで、ハーネス部品30には、一対の外装部材20の相接する接合部31の間で溶着部32の一方の自由端から他方の自由端までの間のその接合部31同士が溶着されて、その一方の自由端と他方の自由端とを繋ぐ補助溶着部33を設けることが望ましい(図8)。例えば、この補助溶着部33は、一対の外装部材20の相接する接合部31(中間部22a,22b)の外周縁同士を溶着して、溶着部32の一方の自由端と他方の自由端とを繋ぐものとする。これにより、本実施形態のワイヤハーネス1は、一対の外装部材20の一端部側21aと他端部側21bとで接合部31(中間部22a,22b)の剛性を高め、その撓みを抑えることができるので、幹線12と分岐電線13の間でその形状を一定に保つことができる。
【0032】
ここでは、一対の外装部材20のそれぞれの中間部22a,22bにて、溶着部32の一方の自由端と他方の自由端とを線状の補助溶着部33で繋ぐ。また、この補助溶着部33は、その線状の溶着部32との間で余剰部分の全体を溶着したものであってもよい。
【0033】
ここで、本実施形態のワイヤハーネス1は、車両における車体等の構造物に沿わせて配策され、この構造物に対して組み付けて固定する。このワイヤハーネス1は、その構造物が組付け対象物になっており、この組付け対象物に電線群10の所定箇所を組み付けて固定するためのクランプ40を備えている(図9及び図10)。このワイヤハーネス1においては、そのクランプ40を電線群10の所定箇所に外装部材23で固定する。電線群10の所定箇所とは、例えば、電線群10の保護対象部位10aであったり、電線群10の配索経路上で所定間隔毎に設けられた場所であったり、電線群10の折曲げ点等のような配索経路の変更箇所であったりする。また、外装部材23は、外装部材20と同様の溶着可能なシート状のものである。
【0034】
例えば、クランプ40は、電線群10の保護対象部位10aに外装部材23で固定する(図9及び図10)。図9のハーネス部品30では、幹線12の一部を保護対象部位10aとし、この保護対象部位10aにクランプ40を外装部材23で固定している。また、図10のハーネス部品30では、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13を保護対象部位10aとし、この保護対象部位10aにクランプ40を外装部材23で固定している。
【0035】
クランプ40は、電線群10の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体41と、このクランプ本体41から突出させた固定用突出部42と、を有する(図11)。
【0036】
クランプ本体41は、組付け対象物に係止させる係止部41aを有している(図9から図11)。この係止部41aは、例えば、組付け対象物の平板部における貫通孔に一方の平面側から差し込み、その平板部の他方の平面に引っ掛けて係止させることが可能な錨型形状等に形成される。固定用突出部42は、クランプ40を外装部材23に取り付けるために用いられる部位である。ここでは、固定用突出部42を2箇所に設けている。
【0037】
このワイヤハーネス1においては、これまでの例示と同じように保護対象部位10aに対して一対の外装部材を取り付ける。ここでは、その一対の外装部材の内の一方に先の外装部材20を用い、この一対の外装部材の内の他方に外装部材23を用いる(図9及び図10)。外装部材23とは、クランプ本体41の挿通用の貫通孔を外装部材20に設けたものに相当する。よって、この外装部材23は、一方の壁面23a側から他方の壁面23b側へとクランプ本体41を挿通させる貫通孔23cを有している(図11)。この外装部材23は、その貫通孔23cにクランプ本体41を挿通させた状態で、一方の壁面23aと電線群10とで固定用突出部42を挟持する。従って、このワイヤハーネス1においては、他方の外装部材23の貫通孔23cからクランプ本体41を挿通させた状態で一方の外装部材20と他方の外装部材23におけるそれぞれの接合部31が溶着され、これにより、他方の外装部材23と電線群10の保護対象部位10aとによってクランプ40が固定される。
【0038】
図10のハーネス部品30においては、中間部22aの溶着部32と中間部22bの溶着部32とを分岐電線13に寄せて、その2箇所の溶着部32で分岐電線13を挟み込んでおり、この2箇所の溶着部32が幹線12の軸方向に対する一対の外装部材(一方の外装部材20、他方の外装部材23)の相対的な位置ずれを抑えている。このため、このハーネス部品30においては、その2箇所の溶着部32で幹線12の軸方向に対するクランプ40の相対的な位置ずれを抑えることができる。例えば、この図10に示す外装部材23は、分岐部12aの存在する場所に貫通孔23cを設けることで、この分岐部12aにクランプ40を取り付けている。
【0039】
更に、本実施形態のワイヤハーネス1においては、直線形状の幹線12の一部を保護対象部位10aにしたり、直線形状の幹線12の一部と直線形状の1本の分岐電線13から成る分岐部12aの周辺のT字形状部分を保護対象部位10aにしたりしているので、矩形のシート状に成形された外装部材20や外装部材23を用いている。但し、ワイヤハーネス1は、保護対象部位10aの形状に合わせて、矩形以外の形状のシート状の外装部材を用いてもよい。例えば、このワイヤハーネス1は、幹線12の分岐部12aから複数本(ここでは2本)の分岐電線13を分岐させ、その分岐部12aを中心に幹線12と複数本の分岐電線13とが十字等の如く放射状を成していれば、例えば、その場所には分岐部12aを中心とする円形のシート状の外装部材25を一対用いてもよい(図12)。この場合のハーネス部品30では、一対の外装部材25における幹線12を境に相接する一端部側26aで幹線12と一方の分岐電線13との間に位置する中間部27a,27bと、この一対の外装部材25における幹線12を境に相接する他端部側26bで幹線12と他方の分岐電線13との間に位置する中間部27c,27dと、をそれぞれに接合部31とし、このそれぞれの接合部31に両端が自由端のL字形状の溶着部32を設ける。
【0040】
そのそれぞれの中間部27a,27b,27c,27dにおいては、先に示した補助溶着部33を外周縁に設けてもよい(図13)。
【0041】
尚、ハーネス部品30においては、これよりもそれぞれの中間部27a,27b,27c,27dの外形を小さくしてもよい。例えば、この場合には、その小径の中間部27a,27b,27c,27dを成す円形部分と、幹線12と2本の分岐電線13とに対応させた十字形状部分と、が1つに合わさったが如き外装部材28を適用する(図14)。そして、この場合には、その小径の中間部27a,27b,27c,27dの外周縁に補助溶着部33を設ける。この場合の補助溶着部33は、幹線12に沿う溶着部32と分岐電線13に沿う溶着部32の端部同士を繋ぐものとなる。
【0042】
また、このワイヤハーネス1においては、一対の外装部材25の内の何れか一方に先の外装部材23の貫通孔23cと同様の貫通孔を設け、この貫通孔付きの外装部材25と電線群10の保護対象部位10aとによってクランプ40を固定してもよい(図示略)。
【0043】
ここで、本実施形態のワイヤハーネス1においては、その製造工程にて、分岐部12aについても例えば先の支持部材Sで支持される。このワイヤハーネス1においては、その分岐部12aを外装部材20,23,25で覆うので、その外装部材20,23,25の接合部31における分岐部12aの近傍に貫通孔29を形成しておき(図15及び図16)、この外装部材20,23,25を保護対象部位10aに組み付ける際に、その貫通孔28に支持部材Sの支持ピンを差し込めるようにしている。ここでは、その各図の形態を代表して例示している。
【0044】
尚、このワイヤハーネス1においては、例えば、幹線12の分岐部12aの前後に一対の外装部材20を各々設け、その分岐部12aから所望の複数本の電線11を引き出して、この複数本の電線11にも一対の外装部材20を設けることによって、幹線12から分岐させた分岐電線13を作り出してもよい(図17)。
【0045】
[変形例1]
本変形例のワイヤハーネス2は、前述した実施形態のワイヤハーネス1において、保護対象部位10a(幹線12の一部)に設ける一対の外装部材20を下記の一対の外装部材120に置き換えたものに相当する(図18)。本変形例のワイヤハーネス2には、電線群10(説明の便宜上、実施形態と同様の電線群10を用いる)と、その一対の外装部材120と、を備えるハーネス部品130が設けられている。
【0046】
その一対の外装部材120は、実施形態の外装部材20と同じように、外装部材120同士の溶着を可能にする絶縁性の原材料で成形される。ここでは、この一対の外装部材120が矩形のシート状に成形される。
【0047】
この一対の外装部材120では、その内の一方の外装部材120(以下、「一方の外装部材120A」という。)よりも硬質の材料で他方の外装部材120(以下、「他方の外装部材120B」という。)が平板のシート状に成形されている(図18)。つまり、一方の外装部材120Aは、他方の外装部材120Bよりも軟質の材料で成形される。この一方の外装部材120Aは、そのような軟質の材料で平らなシート状に成形され、これに圧力を加えたり熱を加えたりするなどして変形させる。この一方の外装部材120Aは、その平らなシート状のものを変形させることによって、一対の外装部材120における保護対象部位10aを境に相接する一端部側121aと他端部側121bとの間に、平板のシート状の他方の外装部材120Bとの間で保護対象部位10aの収容空間を成す屈曲部122を有している(図18)。ハーネス部品130においては、その一端部側121aと他端部側121bとがそれぞれに一対の外装部材120の間で相接する接合部131となる。
【0048】
本変形例のワイヤハーネス2の製造方法は、基本的に前述した実施形態のワイヤハーネス1の製造方法と同じであるが、以下の点が実施形態のワイヤハーネス1の製造方法とは異なる。
【0049】
先ず、本変形例の第1設置工程では、平らな設置面Ma1に溝部Ma2が設けられた第1金型Maに平らなシート状の一方の外装部材120Aを載せ置く(図19)。そして、本変形例の製造方法は、この第1設置工程の後で一方の外装部材120Aを第1金型Maと第3金型Mcとで挟み込み、その第3金型Mcの突出部Mc2を第1金型Maの溝部Ma2に嵌め込んで溝部Ma2と突出部Mc2とに沿わせた屈曲部122を一方の外装部材120Aに形成する屈曲部形成工程を設けている(図19)。ここでは、溝部Ma2と突出部Mc2がそれぞれ直線形状に形成されている。
【0050】
次に、本変形例の第2設置工程では、その屈曲部形成工程で形成された屈曲部122の中に保護対象部位10aを設置する(図20)。そして、本変形例の第3設置工程では、一方の外装部材120Aに他方の外装部材120Bを載せ置き、屈曲部122の中の保護対象部位10aを一方の外装部材120Aと他方の外装部材120Bとで挟み込む(図20)。本変形例の第4設置工程では、一方の外装部材120Aと他方の外装部材120Bにおける保護対象部位10aを境に相接する一端部側121aと他端部側121bとを第1金型Maと第2金型Mbとでそれぞれに挟み込む(図20)。
【0051】
本変形例の製造方法は、しかる後、実施形態の製造方法と同じように溶着工程へと移り、その一端部側121aと他端部側121bに保護対象部位10a(幹線12の一部)に沿う直線形状の溶着部132(図18)を形成する。
【0052】
以上示した本変形例のワイヤハーネス2は、実施形態のワイヤハーネス1と同様の効果を得るものとなっている。そして、本変形例のワイヤハーネス2は、例えば、先の第1設置工程から溶着工程までを1つの治具板上で行うことによって、その作業場所まで平らなシート状の一対の外装部材120(一方の外装部材120A、他方の外装部材120B)を搬送すればよい。このため、本変形例のワイヤハーネス2は、コルゲートチューブ等の筒状部材を外装部材に用いるものと比較して、その一対の外装部材120を隙間無く搬送容器等に収めることができるので、この一対の外装部材120に掛かる搬送費用を抑え、原価を低減させることができる。
【0053】
また、本変形例のワイヤハーネス2は、例えば車両にて近接部品等の他部品の周りに配策する場合、その他部品側に硬質の他方の外装部材120Bを配置することによって、自身の品質の低下を抑えることができる。
【0054】
ところで、本変形例では、幹線12の一部を保護対象部位10aにしているので、第1金型Maと第3金型Mcに直線形状の溝部Ma2と突出部Mc2を設けている。しかしながら、本変形例のワイヤハーネス2は、例えば、保護対象部位10aが電線群10における分岐部12aの周辺であっても適用可能であり、この場合、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13の形状に合わせた溝部Ma2と突出部Mc2を第1金型Maと第3金型Mcに形成したり、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13を複数のエリアに分け、そのエリア毎の形状に合わせた溝部Ma2と突出部Mc2を有する第1金型Maと第3金型Mcをエリア毎に設けたりすればよい。
【0055】
[変形例2]
本変形例のワイヤハーネス3には、電線群10(説明の便宜上、実施形態と同様の電線群10を用いる)と、折り返したその内方に電線群10の保護対象部位10aを収容するシート状の絶縁性の外装部材220と、を備えるハーネス部品230が設けられている(図21及び図22)。このハーネス部品230は、外装部材220における折り返した先で相接する接合部231と、この相接する接合部231の間で保護対象部位10aの軸方向に沿ってその接合部231同士が溶着された両端が自由端の溶着部232と、を有している(図21及び図22)。
【0056】
ここで示すハーネス部品230においては、実施形態のハーネス部品30と同じように、幹線12の一部を保護対象部位10aとし、この幹線12の一部に1枚の外装部材220を取り付けると共に(図21)、この保護対象部位10aとは別の場所で、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13とを保護対象部位10aとし、この分岐部12aを含む電線群10の周辺に1枚の外装部材220を取り付ける(図22)。このハーネス部品230では、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)を軸に外装部材220を折り返し、その折り返した先で相接する端部221a,221bを接合部231とし、この接合部231としての端部221a,221bの間に溶着部232を設ける(図21)。また、このハーネス部品230では、後者の保護対象部位10aにて、幹線12を軸に外装部材220を折り返し、その折り返した先で相接する端部221a,221bにおける幹線12と分岐電線13との間に位置する中間部222a,222bを接合部231とし、この接合部231としての中間部222aの間と中間部222bの間にそれぞれ溶着部232を設ける(図22)。この後者の保護対象部位10aでは、幹線12の分岐部12aから1本の分岐電線13を分岐させており、外装部材220に2箇所の相接する中間部222a,222bが形成される。
【0057】
外装部材220は、実施形態の外装部材20と同様の溶着可能な絶縁性の原材料で成形されている。ここでは、矩形のシート状の外装部材220を用いている。このため、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)では、接合部231としての端部221a,221bが矩形になっている(図21)。この前者の保護対象部位10aにおいては、その接合部231としての端部221a,221bの間で保護対象部位10aの軸方向に延在させた直線形状の溶着部232を形成している。この溶着部232は、その保護対象部位10a(幹線12の一部)に寄せて配置される。また、後者の保護対象部位10a(分岐部12aを含む電線群10の周辺)では、幹線12と分岐電線13を直交させているので、端部221a,221bにおける接合部231としての2箇所の中間部222a,222bがそれぞれに矩形になっている(図22)。この後者の保護対象部位10aにおいては、その中間部222aの間と中間部222bの間で分岐部12aから幹線12の軸方向と分岐電線13の軸方向とに各々延在させたL字形状の溶着部232を形成している。そのそれぞれの溶着部232は、その幹線12と分岐電線13に寄せて配置される。
【0058】
このワイヤハーネス3は、例えば、下記の製造方法で組み立てる。ここでは、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)に関して例示する。
【0059】
この製造方法は、治具Tが有するV字状又はU字状の溝部T1の中に外装部材220を載せ置く第1設置工程を有する(図23)。この第1設置工程では、溝部T1の中にその溝部T1の形状に沿わせた形で外装部材220をV字又はU字の屈曲形状に折り曲げて載せ置く。例えば、その治具Tは、ワイヤハーネス3を組み立てるための所謂治具板等に設置される。
【0060】
この製造方法は、その屈曲形状の外装部材220の中に電線群10の保護対象部位10aを設置する第2設置工程を有する(図24)。
【0061】
この製造方法は、外装部材220における保護対象部位10a(幹線12の一部)を軸に折り返した先の端部221a,221b同士を第1金型Mdと第2金型Meとで挟み込む第3設置工程を有する(図25)。そして、この製造方法は、その外装部材220の端部221a,221b同士を保護対象部位10aの軸方向に沿って溶着させる溶着工程を有する(図25)。ここでは、第1金型Mdと第2金型Meが電極になっており、その端部221a,221b同士の所定箇所を発熱させて溶着する。これにより、その端部221a,221bには、前者の保護対象部位10a(幹線12の一部)に沿う直線形状の溶着部232が形成される。
【0062】
以上示したように、本変形例のワイヤハーネス3は、折り返した1枚の外装部材220の中に電線群10の保護対象部位10aを収め、その折り返した先で相接する接合部231を溶着させることによって、この1枚の外装部材220で保護対象部位10aを絶縁処理して保護することができる。このため、このワイヤハーネス3は、従来のワイヤハーネスのような外装部材を固定するための粘着部材や粘着テープを必要としないので、そして、外装部材220が1枚で済むので、原価の低減を図ることができる。また、このワイヤハーネス3は、その粘着テープを巻き付ける作業工程が必要無くなるので、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、原価の低減を図ることができ、かつ、保護対象部位10aに取り付けられた外装部材220の品質バラツキを従来のワイヤハーネスよりも抑えることができる。
【0063】
また、本変形例のワイヤハーネス3は、1枚の外装部材220を折り返して電線群10の保護対象部位10aを包み込むものであるので、外装部材220の大きさを変えるだけで電線群10の様々な長さや様々な太さに対応することができる。
【0064】
ところで、本変形例のワイヤハーネス3は、1枚の外装部材220における接合部231の間で幹線12や分岐電線13に寄せて溶着部232を形成しているので、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、その接合部231の間で溶着されていない余剰部分が存在する。このため、本変形例のハーネス部品230においては、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、溶着後にその余剰部分を切除してもよい。また、本変形例のワイヤハーネス3においては、最初からその余剰部分が無い形で成形された外装部材220を用いてもよい。
【0065】
更に、本変形例のワイヤハーネス3は、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13を保護対象部位10aとするときに、中間部222a,222bに余剰部分(外装部材220の端部221a,221bの間で溶着されていない部分)が残らないように切除などすると、分岐電線13が幹線12に近づくなどして、幹線12と分岐電線13の間でその形状が一定に保たれない可能性がある。そこで、ハーネス部品230には、外装部材220の相接する接合部231の間で溶着部232の一方の自由端から他方の自由端までの間のその接合部231同士が溶着されて、その一方の自由端と他方の自由端とを繋ぐ補助溶着部233を設けることが望ましい(図26)。例えば、この補助溶着部233は、外装部材220の相接する接合部231の外周縁同士を溶着して、溶着部232の一方の自由端と他方の自由端とを繋ぐものとする。これにより、本変形例のワイヤハーネス3は、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、接合部231(中間部222a,222b)の剛性を高め、その撓みを抑えることができるので、幹線12と分岐電線13の間でその形状を一定に保つことができる。
【0066】
ここでは、外装部材220のそれぞれの中間部222a,222bにて、溶着部232の一方の自由端と他方の自由端とを線状の補助溶着部233で繋ぐ。また、この補助溶着部233は、その線状の溶着部232との間で余剰部分の全体を溶着したものであってもよい。
【0067】
ここで、本変形例のワイヤハーネス3は、実施形態のワイヤハーネス1と同じようにクランプ40を設けてもよい(図27及び図28)。例えば、クランプ40は、電線群10の保護対象部位10aに外装部材223で固定する(図27及び図28)。この外装部材223は、実施形態の外装部材23と同様のものであり、一方の壁面側から他方の壁面側へとクランプ本体41を挿通させる貫通孔(図示略)を有している。本変形例のワイヤハーネス3においては、1枚の外装部材223の貫通孔からクランプ本体41を挿通させた状態で外装部材223の相接する接合部31同士が溶着され、これにより、その外装部材223と電線群10の保護対象部位10aとによってクランプ40が固定される。
【0068】
図27のハーネス部品230では、幹線12の一部を保護対象部位10aとし、この保護対象部位10aにクランプ40を外装部材223で固定している。
【0069】
また、図28のハーネス部品230では、分岐部12aを含む幹線12の一部と分岐電線13を保護対象部位10aとし、この保護対象部位10aにクランプ40を外装部材223で固定している。このハーネス部品230においては、中間部222aの溶着部232と中間部222bの溶着部232とを分岐電線13に寄せて、その2箇所の溶着部232で分岐電線13を挟み込んでおり、この2箇所の溶着部232が幹線12の軸方向に対する外装部材223の相対的な位置ずれを抑えている。このため、このハーネス部品230においては、その2箇所の溶着部232で幹線12の軸方向に対するクランプ40の相対的な位置ずれを抑えることができる。例えば、この図28に示す外装部材223は、分岐部12aの存在する場所に貫通孔を設けることで、この分岐部12aにクランプ40を取り付けている。
【0070】
更に、本変形例のワイヤハーネス3は、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、保護対象部位10aの形状に合わせて、矩形以外の形状のシート状の外装部材を用いてもよい。
【0071】
また更に、本変形例のワイヤハーネス3は、実施形態のワイヤハーネス1と同じように、外装部材220,223の接合部231における分岐部12aの近傍に貫通孔を形成しておき、この外装部材220,223を保護対象部位10aに組み付ける際に、その貫通孔に支持部材Sの支持ピンを差し込めるようにしている。
【0072】
[変形例3]
本変形例のワイヤハーネス4は、前述した変形例2のワイヤハーネス3において、ノイズからの保護機能を得るべく、電線群10の保護対象部位10aと外装部材220との間にシールド部材51を介在させたものに相当する(図29)。よって、本変形例のハーネス部品330は、変形例2のハーネス部品230にシールド部材51を追加したものとなる。尚、本図は、図示の便宜上、変形例2の説明図に対して簡略化を図っている。
【0073】
このワイヤハーネス4で用いるシールド部材51は、シート状に成形されたものである。例えば、ここでは、素線をシート状に編み込んだ編組、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔がシールド部材51に用いられる。このシールド部材51には、折り返された外装部材220の内方で電線群10の保護対象部位10aを1周に亘って覆わせる。また、このシールド部材51は、接合部331としての外装部材220の端部221a,221b同士の溶着を邪魔しないように、その端部221a,221bの間で溶着部332が形成される場所に入り込むことのない形状とする(図29)。
【0074】
ここで、このワイヤハーネス4において、電線群10を成す複数本の電線11の内の1本は、被覆11aが一部除去されて芯線11bを露出させ、その露出させた芯線11bをシールド部材51に接触させるドレイン線11Aである(図29)。
【0075】
このワイヤハーネス4は、例えば、下記の製造方法で組み立てる。本変形例のワイヤハーネス4の製造方法は、基本的に前述した変形例2のワイヤハーネス3の製造方法と同じであるが、以下の点が変形例2のワイヤハーネス3の製造方法とは異なる。この例示では、幹線12の一部を保護対象部位10aにしている。
【0076】
本変形例の製造方法には、第1設置工程(図23)の後で屈曲形状の外装部材220の内壁面に沿わせてシート状のシールド部材51をV字又はU字の屈曲形状に折り曲げて載せ置くシールド設置工程を設けている(図30)。そして、本変形例において、このシールド設置工程の後工程たる第2設置工程では、その屈曲形状のシールド部材51の中にドレイン線11Aから先に保護対象部位10aを設置し、シールド部材51の内壁面にドレイン線11Aの剥き出しの芯線を接触させる(図31)。例えば、この第2設置工程では、最初にドレイン線11Aの保護対象部位10aに相当する部分を屈曲形状のシールド部材51の中に挿入し、その後、残りの電線11の保護対象部位10aに相当する部分を1本ずつ又は複数本ずつ又は一纏めにして屈曲形状のシールド部材51の中に挿入する。本変形例の製造方法では、しかる後、先の第3設置工程と溶着工程を実施する(図32)。
【0077】
以上示した本変形例のワイヤハーネス4は、変形例2のワイヤハーネス3と同様の効果を得るものとなっている。そして、従来のワイヤハーネスは、複数の電線束毎に1本のドレイン線を備えることがある。しかしながら、本変形例のワイヤハーネス4は、従来のワイヤハーネスの複数の電線束の電線11からドレイン線11Aを1本だけ残して1つの電線群10に纏めることができるので、この点でも原価を低減させることができる。
【0078】
ここで、本変形例のワイヤハーネス4は、回路毎にドレイン線11Aを必要とする場合、その回路毎に纏めた1本のドレイン線11Aと残りの電線11の束毎に外装部材220とシールド部材51を設けてもよい。
【0079】
また、本変形例のワイヤハーネス4は、電線群10における保護対象部位10aとして定められた場所以外に外装部材220とシールド部材51を設けることもできる。つまり、このワイヤハーネス4においては、外装部材220を電線群10に対するシールド部材51の固定部材として利用することもできる。このため、本変形例のワイヤハーネス4は、組み立てを終えた後でシールド機能が必要になった場所に、後付けでシールド部材51を追加することもできる。尚、この場合、外装部材220は、その主たる機能がシールド部材51の電線群10への固定機能になるが、そのシールド部材51を設けた電線群10の場所を副次的に保護することにもなる。よって、電線群10のその場所は、結果的に保護対象部位10aになっている。
【0080】
[変形例4]
本変形例のワイヤハーネス5は、複数本の電線を具備する電線群と、この電線群の保護対象部位を内方に収容するシート状の絶縁性の外装部材と、を備えるハーネス部品が複数設けられたものである。このワイヤハーネス5においては、その複数のハーネス部品の外装部材同士を溶着させることによって、この複数のハーネス部品を1つの部品として一体化させる。換言するならば、このワイヤハーネス5は、電線群を複数の回路毎に分割して回路毎のハーネス部品を製造し、この回路毎のハーネス部品を外装部材の位置する場所で1つの部品として一体化させたものである。例えば、本変形例のワイヤハーネス5は、前述した実施形態のハーネス部品30と変形例1のハーネス部品130と変形例2のハーネス部品230と変形例3のハーネス部品330の中から少なくとも2つ以上選んだ複数のハーネス部品を備える。
【0081】
以下に例示する本変形例のワイヤハーネス5は、実施形態のハーネス部品30を複数備え、この複数のハーネス部品30を一体化させる(図33及び図34)。このワイヤハーネス5においては、その複数のハーネス部品30のそれぞれの接合部31同士を溶着させることによって、この複数のハーネス部品30を1つの部品として一体化させる。このため、このワイヤハーネス5は、それぞれのハーネス部品30において、その接合部31に先に示した余剰部分31aを残しておき、この余剰部分31a同士を溶着させる。尚、図中では、変形例の外装部材220も混在しているが、便宜上、実施形態のハーネス部品30と称する。
【0082】
このワイヤハーネス5において、その複数のハーネス部品30は、その全てが一対の外装部材20を備えるものである場合、そのそれぞれの一対の外装部材20の間で互いの接合部31同士を溶着して一体化させる。また、複数のハーネス部品30は、その全てが一対の外装部材25を備えるものである場合、そのそれぞれの一対の外装部材25の間で互いの接合部31同士を溶着して一体化させる。また、複数のハーネス部品30は、その内の1つが外装部材20と外装部材23を対にして備えるクランプ40付きのものである場合、この一対の外装部材(外装部材20、外装部材23)と他のハーネス部品30の一対の外装部材20や一対の外装部材25との間で互いの接合部31同士を溶着して一体化させる。
【0083】
ここで例示するワイヤハーネス5は、一対の外装部材25で電線群10の保護対象部位10aが覆われた2つのハーネス部品30(一方のハーネス部品30A、他方のハーネス部品30B)を備える(図33及び図34)。
【0084】
一方のハーネス部品30Aは、電線群10が幹線12の分岐部12aから分岐させた2本の分岐電線13を有しており、その分岐部12aが含まれた幹線12の一部と分岐電線13を一対の外装部材25によって覆われる保護対象部位10aとしている(図33)。よって、この一方のハーネス部品30Aには、その一対の外装部材25に、接合部31としての4箇所の中間部27a,27b,27c,27dが設けられている。
【0085】
また、他方のハーネス部品30Bは、幹線12の一部を一対の外装部材25によって覆われる保護対象部位10aとしている(図33)。よって、この他方のハーネス部品30Bには、その一対の外装部材25に、保護対象部位10a(幹線12の一部)を境に相接する一端部側26aと他端部側26bがそれぞれに接合部31として設けられている。
【0086】
この例示のワイヤハーネス5においては、一方のハーネス部品30Aの一対の外装部材25における中間部27a,27cと他方のハーネス部品30Bの一対の外装部材25における一端部側26aとを溶着させ、かつ、一方のハーネス部品30Aの一対の外装部材25における中間部27b,27dと他方のハーネス部品30Bの一対の外装部材25における他端部側26bとを溶着させる。よって、このワイヤハーネス5においては、そのそれぞれの中間部27a,27b,27c,27dに対応する4箇所の溶着部34が形成される(図34)。
【0087】
ここで、この例示のワイヤハーネス5においては、一方のハーネス部品30Aにおける一方の分岐電線13と他方のハーネス部品30Bの幹線12とを共通の相手方コネクタにコネクタ接続させる。このため、このワイヤハーネス5においては、一方のハーネス部品30Aにおける一方の分岐電線13と他方のハーネス部品30Bの幹線12の内の何れか一方の端末にコネクタ61を取り付けておき、例えば、双方のハーネス部品30Aの接合部31同士を溶着した後で、そのコネクタ61に他方の端末を繋いでもよい(図33及び図34)。ここでは、他方のハーネス部品30Bの幹線12の端末にコネクタ61を予め取り付けておき、双方のハーネス部品30Aの接合部31同士を溶着した後で、そのコネクタ61に一方のハーネス部品30Aにおける一方の分岐電線13の端末を接続している。
【0088】
本変形例のワイヤハーネス5は、変形例1のハーネス部品130を複数備える場合においても、実施形態のハーネス部品30を複数備える場合と同じように、それぞれのハーネス部品130の接合部131の余剰部分同士を溶着させる(図示略)。尚、変形例1のハーネス部品130は、実施形態のハーネス部品30における一対の外装部材20のそれぞれの硬度を変えたものに分類できる。このため、以下においては、変形例1のハーネス部品130を実施形態のハーネス部品30と同類のものとして扱うことにする。
【0089】
また、本変形例のワイヤハーネス5は、変形例2のハーネス部品230を複数備える場合においても、実施形態のハーネス部品30を複数備える場合と同じようにして、それぞれのハーネス部品230の接合部231の余剰部分同士を溶着させる(図示略)。このワイヤハーネス5において、その複数のハーネス部品230は、その全てが外装部材220を備えるものである場合、そのそれぞれの外装部材220の間で互いの接合部231を溶着して一体化させる。また、複数のハーネス部品230は、その内の1つが外装部材223を備えるクランプ40付きのものである場合、このクランプ40付きの外装部材223と他のハーネス部品30の外装部材220との間で互いの接合部31を溶着して一体化させる。
【0090】
本変形例のワイヤハーネス5は、回路毎にドレイン線11Aを必要とする場合等のように、変形例3のハーネス部品330を複数備える場合においても、変形例2のハーネス部品230を複数備える場合を複数備える場合と同じように、それぞれのハーネス部品330の接合部331の余剰部分同士を溶着させる(図示略)。尚、変形例3のハーネス部品330は、変形例2のハーネス部品230にシールド部材51を加えたものに分類できる。このため、以下においては、変形例3のハーネス部品330を変形例2のハーネス部品230と同類のものとして扱うことにする。
【0091】
また、本変形例のワイヤハーネス5は、そのハーネス部品として実施形態のハーネス部品30(変形例1のハーネス部品130)と変形例2のハーネス部品230(変形例3のハーネス部品330)とを少なくとも1つずつ備え、この複数のハーネス部品をそれぞれの外装部材の間で互いの接合部を溶着して一体化させたものとして構成することができる(図示略)。以下においては、説明の便宜上、実施形態のハーネス部品30を「第1ハーネス部品30」と称し、変形例2のハーネス部品230を「第2ハーネス部品230」と称する。そして、その第1ハーネス部品30においては、電線群10を「第1電線群10」と称し、この第1電線群10を内包させる外装部材20,23,25を「第1外装部材」と総称する。また、第2ハーネス部品230においては、電線群10を「第2電線群10」と称し、この第2電線群10を内包させる外装部材220,223を「第2外装部材」と総称する。例えば、このワイヤハーネス5においては、第1ハーネス部品30と第2ハーネス部品230を1つずつ備える場合、第1ハーネス部品30の第1外装部材と第2ハーネス部品230の第2外装部材の間で互いの接合部31の余剰部分同士を溶着して一体化させる。
【0092】
以上示した本変形例のワイヤハーネス5は、その組み合わせの対象となるハーネス部品が奏する効果を同様に得るものである。そして、本変形例のワイヤハーネス5は、回路毎のハーネス部品を製造し、この回路毎のハーネス部品を外装部材の位置する場所で1つの部品として一体化させるので、組み立ての作業性に優れており、この点でも原価を低減させることができる。また、本変形例のワイヤハーネス5は、回路毎のハーネス部品を複数用意し、この複数のハーネス部品の中から適宜選択して組み合わせることもできるので、歩留まりがよく、この点でも原価を低減させることができる。また、本変形例のワイヤハーネス5は、その複数のハーネス部品の中から適宜選択して組み合わせることもでき、その組み合わせの異なる仕様違いに容易に対応できるので、この点でも原価を低減させることができる。また、本変形例のワイヤハーネス5は、その回路毎のハーネス部品を規格品として予め設定しておき、この複数のハーネス部品の中から適宜選択して組み合わせることもできるので、新規に起こす部品点数の削減が可能であり、この点でも原価を低減させることができる。また、本変形例のワイヤハーネス5は、ハーネス部品毎に保護対象部位10aに対する外装部材の位置精度を高めておくことで、これらを一体化させた際の各部品の位置精度を容易に上げることができるので、この点でも原価を低減させることができる。
【0093】
ここで、本変形例のワイヤハーネス5は、各ハーネス部品同士を固定するための固定用の専用部品を必要としないので、この点でも原価を低減させることができる。また、本変形例のワイヤハーネス5は、組み立て後に回路の追加が必要になり、元々存在している電線群10に後付け回路用のハーネス部品を組み付けるための外装部材が無い場合でも、その元々存在している電線群1の所望の場所に外装部材を設けるだけで、この外装部材に対して後付け回路用のハーネス部品の外装部材を溶着することができる。このため、本変形例のワイヤハーネス5は、固定用の専用部品を用いずとも回路の後付けが容易であり、この点でも原価を低減させることができる。
【符号の説明】
【0094】
1,2,3,4,5 ワイヤハーネス
10 電線群
10a 保護対象部位
11 電線
11A ドレイン線
11a 被覆
11b 芯線
12 幹線
12a 分岐部
13 分岐電線
20,23,25,120,220,223 外装部材
20A,120A 一方の外装部材
20B,120B 他方の外装部材
21a,26a,121a 一端部側
21b,26b,121b 他端部側
23a 一方の壁面
23b 他方の壁面
23c 貫通孔
30,130,230,330 ハーネス部品
31,131,231,331 接合部
32,132,232,332 溶着部
33,233 補助溶着部
40 クランプ
41 クランプ本体
42 固定用突出部
51 シールド部材
122 屈曲部
221a,221b 端部
Ma 第1金型
Ma1 設置面
Ma2 溝部
Mb 第2金型
Mc 第3金型
Mc2 突出部
T 治具
T1 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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