(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157244
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20241030BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241030BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20241030BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04
F16B5/08 B
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071492
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 貴司
【テーマコード(参考)】
3J001
5G309
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001JD11
3J001KA19
3J001KB02
5G309AA01
5G309AA09
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】優れた組付け作業性を得ること。
【解決手段】複数本の電線11を具備する電線群10と、前記電線群10に取り付け、前記電線群10の保護対象部位を覆い隠して保護するシート状の絶縁性の外装部材20と、電線群10の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体31及び前記クランプ本体31から突出させた固定用突出部32を有するクランプ30と、前記固定用突出部32を前記外装部材20との間で挟み込んで覆う被覆部41及び前記被覆部41から突出させて前記外装部材20に溶着させる溶着部42を有するシート状の絶縁性の固定部材40と、を備えること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を具備する電線群と、
前記電線群に取り付け、前記電線群の保護対象部位を覆い隠して保護するシート状の絶縁性の外装部材と、
前記電線群の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体及び前記クランプ本体から突出させた固定用突出部を有するクランプと、
前記固定用突出部を前記外装部材との間で挟み込んで覆う被覆部及び前記被覆部から突出させて前記外装部材に溶着させる溶着部を有するシート状の絶縁性の固定部材と、
を備えることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記固定用突出部は、前記クランプ本体から前記電線群の軸方向に突出させ、
前記溶着部は、前記軸方向に交差する方向で前記被覆部から一方と他方に各々突出させることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記クランプは、前記クランプ本体から前記電線群の軸方向で一方と他方に各々突出させた前記固定用突出部を有し、
前記固定部材は、前記固定用突出部毎に設けることを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記外装部材と前記固定部材は、同種の材料で成形されることを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスは、その電線群の所定箇所に取り付けたクランプを車体等の構造物に差し込むことによって車両に組み付けられる。このワイヤハーネスにおいては、電線群に巻き付ける粘着テープ又は電線群を収容するコルゲートチューブが外装部材として用いられ、この外装部材に対してクランプが固定されている。従来、このようなワイヤハーネスにおいては、構造物に差し込むクランプ本体の他に、このクランプ本体から突出させた固定用突出部を有するクランプが用いられる。そして、このワイヤハーネスにおいては、その固定用突出部に対して外装部材と一緒に固定用の粘着テープを巻き付けることによって、電線群の所定箇所で外装部材にクランプを固定している。この種のワイヤハーネスは、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスは、外装部材とクランプの他に固定用の粘着テープも構成部品として必要になり、かつ、その固定用の粘着テープを巻き付ける作業工程も必要になる。このため、このワイヤハーネスは、その固定用の粘着テープが原価高騰の一因となっている。一方、従来のワイヤハーネスにおいては、クランプ本体から突出させたC環状の固定用突出部を有するクランプが用いられることもあり、その固定用突出部を外装部材に嵌め込むことによって、固定用の粘着テープを用いることなく、電線群の所定箇所で外装部材にクランプを固定することができる。しかしながら、このワイヤハーネスは、固定用突出部が固定用の粘着テープを必要とするものであろうがC環状のものであろうが、電線群に外装部材を組み付けた後でしかクランプの取付作業が行えない。よって、このワイヤハーネスは、電線群に対して外装部材を組み付ける際にその外装部材の位置決め作業を行うだけでなく、外装部材に対してクランプを取り付ける際にもそのクランプの位置決め作業を行う必要がある。従って、従来のワイヤハーネスは、組付け作業性に関して改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、組付け作業性に優れたワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数本の電線を具備する電線群と、前記電線群に取り付け、前記電線群の保護対象部位を覆い隠して保護するシート状の絶縁性の外装部材と、前記電線群の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体及び前記クランプ本体から突出させた固定用突出部を有するクランプと、前記固定用突出部を前記外装部材との間で挟み込んで覆う被覆部及び前記被覆部から突出させて前記外装部材に溶着させる溶着部を有するシート状の絶縁性の固定部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスは、予め外装部材にクランプを固定しておき、このクランプ付きの外装部材を電線群に対して組み付けることができる。ここで、電線群は、その形状が成形品等と比べて定まり難い。このため、クランプは、電線群に組み付けられた外装部材に対して取り付ける場合、その電線群の形状のバラツキを考慮した上で位置決めしなければならない。しかしながら、このワイヤハーネスは、予め外装部材にクランプを取り付けておくことができるので、電線群に組み付けられた外装部材に対してクランプを取り付ける場合よりも、その外装部材に対するクランプの位置決め作業が容易になる。従って、本発明に係るワイヤハーネスは、クランプの組付け作業性を向上させることができる。
【0008】
更に、本発明に係るワイヤハーネスは、固定部材を外装部材に溶着させることによって、その固定部材と外装部材でクランプを挟み込んで当該外装部材に固定する。このため、このワイヤハーネスは、クランプを外装部材に固定するために、従来のワイヤハーネスのような外装部材とクランプの上から巻き付ける固定用の粘着テープを必要としない。従って、本発明に係るワイヤハーネスは、従来のワイヤハーネスと比較して、固定用の粘着テープを巻き付ける作業工程が必要無くなるので、クランプの組付け作業性を向上させることができる。
【0009】
このように、本発明に係るワイヤハーネスは、組付け作業性に優れたものとなっており、原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のワイヤハーネスを別角度から見た平面図である。
【
図3】
図3は、外装部材とクランプと固定部材を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、外装部材にクランプと固定部材を載せ置いた状態について示す斜視図である。
【
図5】
図5は、外装部材に対するクランプの取付完了後を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、外装部材に対する別形態のクランプの取付完了後を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、別形態のクランプを適用した実施形態のワイヤハーネスについて示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の1つを
図1から
図7に基づいて説明する。
【0013】
図1及び
図2の符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。
【0014】
このワイヤハーネス1は、複数本の電線11を具備する電線群10を備える(
図1及び
図2)。この電線群10においては、その複数本の電線11が一纏めに束ねられている。そして、ワイヤハーネス1は、この電線群10に取り付け、この電線群10の保護対象部位を覆い隠して保護するシート状の絶縁性の外装部材20を備える(
図1から
図5)。
【0015】
このワイヤハーネス1においては、1枚の矩形のシート状の外装部材20の内方に電線群10の保護対象部位を収容する(
図1から
図5)。
【0016】
その外装部材20は、例えば、電線群10に1周以上巻き付ける。この場合には、外装部材20の巻き付け状態を維持するべく、例えば、この技術分野で周知の技術を利用して外装部材20を巻き付け状態のまま電線群10に固定する。また、この場合の外装部材20は、巻き付け状態の外側の一端における一方の壁面21をこれとは逆側の他方の壁面22に接着してもよい。
【0017】
更に、このワイヤハーネス1においては、1枚の矩形のシート状の外装部材20を折返し、折り返した外装部材20の内方に電線群10の保護対象部位を収容してもよい。その外装部材20は、例えば、折り返した先の端部同士のそれぞれの一方の壁面(内壁面)21を接触面とし、この接触面同士を溶着して接合させる。このため、この外装部材20には、その溶着を可能にする絶縁性の原材料で成形されたものを用いる。ここで例示する外装部材20は、塩化ビニルを原材料にして成形されている。尚、この1枚の外装部材20は、電線群10に対して当該電線群10の軸方向に位置ずれさせぬように、この技術分野で周知の技術を利用して電線群10に固定することが望ましい。
【0018】
このワイヤハーネス1は、車両における車体等の構造物に沿わせて配策され、この構造物に対して組み付けて固定する。このワイヤハーネス1は、その構造物が組付け対象物になっており、この組付け対象物に電線群10の所定箇所を組み付けて固定するためのクランプ30を備えている(
図1から
図5)。ワイヤハーネス1においては、このクランプ30が電線群10の所定箇所で外装部材20に取り付けられる。尚、電線群10の所定箇所とは、例えば、電線群10の配索経路上で所定間隔毎に設けられた場所であったり、電線群10の折曲げ点等のような配索経路の変更箇所であったりする。
【0019】
クランプ30は、電線群10の所定箇所を組付け対象物に組み付けるためのクランプ本体31と、このクランプ本体31から突出させた固定用突出部32と、を有する(
図1から
図5)。
【0020】
クランプ本体31は、組付け対象物に係止させる係止部31aを有している(
図1から
図5)。この係止部31aは、例えば、組付け対象物の平板部における貫通孔に一方の平面側から差し込み、その平板部の他方の平面に引っ掛けて係止させることが可能な錨型形状等に形成される。
【0021】
固定用突出部32は、クランプ30を外装部材20に取り付けるために用いられる部位である。ここで、クランプ30は、例えば、ポリプロピレンを原材料にして成形される。よって、このクランプ30は、異種材料で成形された外装部材20への溶着が難しい。そこで、ワイヤハーネス1は、このクランプ30の固定用突出部32を外装部材20との間で挟み込み、この固定用突出部32から食み出させた場所を外装部材20に溶着させることで、この固定用突出部32を外装部材20に固定するシート状の絶縁性の固定部材40を備えている(
図1から
図5)。この固定部材40は、固定用突出部32を外装部材20との間で挟み込んで覆う被覆部41と、この被覆部41から突出させて外装部材20に溶着させる溶着部42と、を有する(
図1から
図5)。
【0022】
この固定部材40には、外装部材20との溶着を可能にする絶縁性の原材料で成形されたものを用いる。ここで例示する固定部材40は、外装部材20と同種の材料(つまり、塩化ビニル)で成形されている。例えば、外装部材20と固定部材40は、1枚のシート状の部材からそれぞれに切り抜かれたものであってもよい。
【0023】
例えば、固定用突出部32は、クランプ30を外装部材20に取り付けた状態で、クランプ本体31から電線群10の軸方向に突出させる。この固定用突出部32は、矩形の片体状に形成されている。
【0024】
固定部材40は、矩形のシート状に成形されている。この固定部材40は、被覆部41で固定用突出部32を覆い、この固定用突出部32から両端を食み出させる。この固定部材40においては、その固定用突出部32から食み出た部分が溶着部42になる。その溶着部42は、電線群10の軸方向に交差する方向で被覆部41から一方と他方に各々突出させる。ここでは、電線群10の軸方向に直交する方向で被覆部41から一方と他方にそれぞれの溶着部42を突出させている。
【0025】
このワイヤハーネス1においては、先ず外装部材20にクランプ30を取り付ける(
図3から
図5)。ここでは、外装部材20における他方の壁面22にクランプ30を載せ置き、このクランプ30の固定用突出部32に固定部材40を載せ置く(
図3及び
図4)。そして、このワイヤハーネス1においては、その固定部材40の一端の溶着部42と外装部材20とを溶着させると共に、この固定部材40の他端の溶着部42と外装部材20とを溶着させる(
図5)。これにより、このワイヤハーネス1においては、クランプ30が外装部材20に固定される。
【0026】
次に、このワイヤハーネス1においては、そのクランプ30付きの外装部材20を電線群10の保護対象部位に巻き付けたり、電線群10の保護対象部位を内側に置いてそのクランプ30付きの外装部材20を折り返したりして、その外装部材20の内方に電線群10の保護対象部位を収容する(
図1及び
図2)。
【0027】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1は、予め外装部材20にクランプ30を固定しておき、このクランプ30付きの外装部材20を電線群10に対して組み付けることができる。ここで、電線群10は、その形状が成形品等と比べて定まり難い。このため、クランプ30は、電線群10に組み付けられた外装部材20に対して取り付ける場合、その電線群10の形状のバラツキを考慮した上で位置決めしなければならない。しかしながら、本実施形態のワイヤハーネス1は、予め外装部材20にクランプ30を取り付けておくことができるので、電線群10に組み付けられた外装部材20に対してクランプ30を取り付ける場合よりも、その外装部材20に対するクランプ30の位置決め作業が容易になる。従って、本実施形態のワイヤハーネス1は、クランプ30の組付け作業性を向上させることができる。
【0028】
更に、本実施形態のワイヤハーネス1は、固定部材40を外装部材20に溶着させることによって、その固定部材40と外装部材20でクランプ30を挟み込んで当該外装部材20に固定する。このため、このワイヤハーネス1は、クランプ30を外装部材20に固定するために、従来のワイヤハーネスのような外装部材20とクランプ30の上から巻き付ける固定用の粘着テープを必要としない。従って、本実施形態のワイヤハーネス1は、従来のワイヤハーネスと比較して、固定用の粘着テープを巻き付ける作業工程が必要無くなるので、クランプ30の組付け作業性を向上させることができる。
【0029】
このように、本実施形態のワイヤハーネス1は、組付け作業性に優れたものとなっており、原価の低減を図ることができる。
【0030】
ところで、ここでまで例示してきたクランプ30は、固定用突出部32が1つ設けられたものである。本実施形態のワイヤハーネス1は、このクランプ30に替えて次のクランプ130を用いることで、クランプ30を用いた場合よりも、外装部材20に対する固定状態の安定化を図ることができる(
図6及び
図7)。
【0031】
そのクランプ130は、先のクランプ30において固定用突出部32を2箇所に増やしたものである(
図6及び
図7)。このクランプ130は、外装部材20に取り付けた状態で、クランプ本体31から電線群10の軸方向で一方と他方に各々突出させた固定用突出部32を有している。このクランプ130においては、その2つの矩形の片体状の固定用突出部32が同一の平面上に配置されている。
【0032】
固定部材40は、その固定用突出部32毎に設ける(
図6及び
図7)。ここでは、矩形のシート状に成形された同形状の固定部材40をそれぞれの固定用突出部32に適用する。
【0033】
このワイヤハーネス1においては、先の例示と同様に、外装部材20における他方の壁面22にクランプ130を載せ置く。そして、このワイヤハーネス1においては、このクランプ130のそれぞれの固定用突出部32に固定部材40を載せ置き、それぞれの固定部材40の一端の溶着部42と外装部材20とを溶着させると共に、それぞれの固定部材40の他端の溶着部42と外装部材20とを溶着させる。以降、このワイヤハーネス1においては、先の例示と同様に、そのクランプ130付きの外装部材20の内方に電線群10の保護対象部位を収容する。これにより、このワイヤハーネス1においては、クランプ130が2箇所の固定用突出部32で外装部材20に固定されるので、外装部材20に対するクランプ130の固定状態の安定化を図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ワイヤハーネス
10 電線群
11 電線
20 外装部材
30,130 クランプ
31 クランプ本体
32 固定用突出部
40 固定部材
41 被覆部
42 溶着部