(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157245
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電流開閉器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/42 20060101AFI20241030BHJP
H01H 33/666 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01H33/42 M
H01H33/666 M
H01H33/666 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071493
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 将人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
(72)【発明者】
【氏名】石崎 伸一
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA01
5G028AA06
5G028EB03
(57)【要約】
【課題】定常通電時の通電容量を増大させるとともに、開極する瞬時の電磁反発力の低下を防ぐことが可能な電流開閉器を提供する。
【解決手段】ワイプ機構5a,5b,5cは、電流開閉器100が投入状態にあるときの押し込み量であるワイプ長Wa,Wb,Wcに応じた接触力を固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとの間に発生させるワイプバネ7a,7b,7cを有し、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cのうちの1つの電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cのうちの他の全ての電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wcよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を通電遮断する電流開閉器において、
前記電流を分流させる複数の電流開閉ユニットと、
前記複数の電流開閉ユニットを開閉操作する操作機構とを備え、
前記複数の電流開閉ユニットは、それぞれ、
固定側接点を有する固定側導体と、
可動側接点を有する可動側導体と、
前記操作機構によって駆動され、前記電流開閉器の投入状態において、前記固定側接点と前記可動側接点との間に接触力を発生させるワイプ機構とを有し、
前記ワイプ機構は、
前記操作機構に連結された、前記可動側導体を把持する把持部と、
前記把持部と前記可動側導体との間に設けられ、前記電流開閉器が投入状態にあるときの押し込み量であるワイプ長に応じて前記接触力を発生させるワイプバネとを有し、
前記複数の電流開閉ユニットのうちの1つの電流開閉ユニットの前記ワイプ長が、前記複数の電流開閉ユニットのうちの他の全ての電流開閉ユニットの前記ワイプ長よりも大きい
ことを特徴とする電流開閉器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流開閉器において、
前記1つの電流開閉ユニットが有する前記ワイプバネのバネ定数は、前記他の全ての電流開閉ユニットが有する前記ワイプバネのバネ定数よりも小さい
ことを特徴とする電流開閉器。
【請求項3】
請求項2に記載の電流開閉器において、
前記複数の電流開閉ユニットが有する前記ワイプバネのバネ定数は、前記電流開閉器の投入状態における前記複数の電流開閉ユニットの前記固定側接点と前記可動側接点との間の接触力が均一となるように設定されている
ことを特徴とする電流開閉器。
【請求項4】
請求項1に記載の電流開閉器において、
前記複数の電流開閉ユニットは、3つの電流開閉ユニットである
ことを特徴とする電流開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を通電遮断する電流開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流を通電遮断する電流開閉器の通電容量を増大する方法としては、主回路導体の断面積を大きくする方法が一般的であった。これを改善するための電流開閉器として、例えば特許文献1に記載のものがある。その電流開閉器では、少なくとも二つの真空遮断器ユニットを並置して並列接続し、一つの共通操作器による電流遮断動作をすることで、大容量化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電流開閉器では、二つの真空遮断器ユニットを並置して並列接続し、一つの共通操作器によって電流遮断動作するため、電流が定常通電時と電流遮断時に二つの真空遮断器ユニットに分流するが、真空遮断器ユニットの接点が開極する瞬時にも電流が略均等に真空遮断器ユニットの各接点に分流する。一方で真空遮断器ユニットの接点のように突合せ構造の接点においては、各接点に流れる電流の二乗に電磁反発力が比例するため、各接点に流れる電流が分流により減少すると、各接点の電磁反発力が電流の二乗に比例して低下し、初期開極速度が低下することが課題であった。例えば3つの回路に電流を分流させると、各接点の電流は1/3になり、各回路の電磁反発力は(1/3)^2=1/9となる。そのため、3回路構成の電流開閉器の電磁反発力(=3つの回路の電磁反発力の合計)は1/9×3=1/3となり、1回路構成の電流開閉器の1/3に低下する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定常通電時の通電容量を増大させるとともに、開極する瞬時の電磁反発力の低下を防ぐことが可能な電流開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、電流を通電遮断する電流開閉器において、前記電流を分流させる複数の電流開閉ユニットと、前記複数の電流開閉ユニットを開閉操作する操作機構とを備え、前記複数の電流開閉ユニットは、それぞれ、固定側接点を有する固定側導体と、可動側接点を有する可動側導体と、前記操作機構によって駆動され、前記電流開閉器の投入状態において、前記固定側接点と前記可動側接点との間に接触力を発生させるワイプ機構とを有し、前記ワイプ機構は、前記操作機構に連結された、前記可動側導体を把持する把持部と、前記把持部と前記可動側導体との間に設けられ、前記電流開閉器が投入状態にあるときの押し込み量であるワイプ長に応じて前記接触力を発生させるワイプバネとを有し、前記複数の電流開閉ユニットのうちの1つの電流開閉ユニットの前記ワイプ長が、前記複数の電流開閉ユニットのうちの他の全ての電流開閉ユニットの前記ワイプ長よりも大きいものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、定常通電時の通電容量が増大するとともに、遮断時の初期開極速度を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施例における電流開閉器の投入状態を示す図
【
図2】本発明の第1の実施例における電流開閉器が開極する瞬時の状態を示す図
【
図3】本発明の第1の実施例における電流開閉器の開放状態を示す図
【
図4】本発明の第2の実施例における電流開閉器の投入状態を示す図
【
図5】本発明の第3の実施例における電流開閉器の投入状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0010】
図1は、第1の実施例における電流開閉器100の投入状態を示す図である。本実施例における電流開閉器100は、電流101を分流させる3つの電流開閉ユニット10a,10b,10cと、3つの電流開閉ユニット10a,10b,10cを開閉操作する操作機構8とを備えている。電流101は直流でも交流でも良い。本実施例における電流開閉器100は、電流101を3つの電流開閉ユニット10a,10b,10c(回路)に分流させる3回路構成であるが、4回路以上に分流させる構成であっても良い。本実施例における電流開閉器100は、投入状態において電流101を3つの回路に略均等に分流させるが、3つの回路に分流させる電流の割合は均等でなくても良い。操作機構8の駆動手段としては、バネ、モータ、電磁石などが挙げられる。
【0011】
電流開閉ユニット10aは、固定側接点2aを有する固定側導体1aと、可動側接点3aを有する可動側導体4aと、ワイプ機構5aとを備えている。ワイプ機構5aは、操作機構8に連結された、可動側導体4aを把持する把持部6aと、把持部6aと可動側導体4aとの間に設けられたワイプバネ7aとを有する。電流開閉ユニット10b,10cの構成は、電流開閉ユニット10aと同様であるため、説明は省略する。ワイプ機構5a,5b,5cが操作機構8によって紙面上方向に駆動されると、固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとが接触し、電流開閉器100は投入状態となる。ワイプ機構5a,5b,5cが操作機構8によって紙面下方向に駆動されると、固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとが開離し、電流開閉器100は開放状態(
図3に示す)となる。
【0012】
ワイプ機構5a,5b,5cは、電流開閉器100の開放状態(
図3に示す)から、把持部6a,6b,6cが操作機構8によって可動側導体4a,4b,4cが紙面上方向に駆動されていく過程で、固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとが接触してから、さらにワイプバネ7a,7b,7cが把持部6a,6b,6cに対して押し込まれることで固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとの間に接触力を発生させる。電流開閉器10が投入状態にあるときのワイプバネ7a,7b,7cの押し込み量をワイプ長Wa,Wb,Wcと称する。本実施例では、左右中央の電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが他の電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wcよりも大きい。
【0013】
図2は、第1の実施例における電流開閉器100が開極する瞬時の状態を示す図である。本実施例では、左右中央の電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが他の電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wcよりも大きいため、左右中央の電流開閉ユニット10bの固定側接点2bと可動側接点3bとは接触しているが、他の電流開閉ユニット10a,10cの固定側接点2a,2cと可動側接点3a,3cとはそれぞれ開離している。従って、
図1に示す電流開閉器100の投入状態では電流101が3つの電流開閉ユニット10a,10b,10cに略均等に分流するのに対し、
図2に示す状態では左右中央の電流開閉ユニット10bに集中して流れる。これにより、電流開閉器100が開極する瞬時に、1回路構成の電流開閉器と同等の電磁反発力を発生させることが可能となる。
【0014】
図3は、第1の実施例における電流開閉器100の開放状態を示す図である。本実施例では、左右中央の電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが他の電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wbよりも大きい。そのため、電流開閉器100の開放状態において、左右中央の電流開閉ユニット10bにおける固定側接点2bと可動側接点3bとの距離Dbは、他の電流開閉ユニット10a,10bにおける固定側接点2a,2cと可動側接点3a,3cとの距離Da,Dcよりも小さくなる。従って、電流開閉器100の耐電圧性能を確保するためには、距離Dbを必要な間隙長以上に設定する必要がある。
【0015】
(まとめ)
第1の実施例では、電流101を通電遮断する電流開閉器100において、電流101を分流させる複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cと、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cを開閉操作する操作機構8とを備え、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cは、固定側接点2a,2b,2cを有する固定側導体1a,1b,1cと、可動側接点3a,3b,3cを有する可動側導体4a,4b,4cと、操作機構8によって駆動され、電流開閉器100の投入状態において、固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとの間に接触力を発生させるワイプ機構5a,5b,5cとを有し、ワイプ機構5a,5b,5cは、操作機構8に連結された、可動側導体4a,4b,4cを把持する把持部6a,6b,6cと、把持部6a,6b,6cと可動側導体4a,4b,4cとの間に設けられ、電流開閉器100が投入状態にあるときの押し込み量であるワイプ長Wa,Wb,Wcに応じて前記接触力を発生させるワイプバネ7a,7b,7cとを有し、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cのうちの1つの電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cのうちの他の全ての電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wcよりも大きい。
【0016】
以上のように構成した第1の実施例によれば、電流開閉器100の投入状態において、電流101を複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cに分流させることにより、電流開閉器100の定常通電時の通電容量を増大させることが可能となる。また、1つの電流開閉ユニット10bのワイプ長Wbが他の全ての電流開閉ユニット10a,10cのワイプ長Wa,Wcよりも大きいため、電流開閉器100が開極する瞬時に、電流101を1つの電流開閉ユニット10bに集中して流すことができる。これにより、電流開閉器100が開極する瞬時の電磁反発力の低下を防ぐことが可能となる。
【0017】
また、第1の実施例における複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cは、3つの電流開閉ユニット10a,10b,10cである。これにより、三相交流用の電流開閉器を流用して電流開閉器100を作成することが可能となる。
また、本実施例では、ワイプバネ7dのバネ係数をワイプバネ7a,7cのバネ定数よりも単に小さくするだけでなく、電流開閉器100の投入状態における固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとの接触力が均一となるようにワイプバネ7dのバネ定数が設定されている。例えば、ワイプ長Wbがワイプ長Wa,Wcの3倍に設定されている場合は、ワイプバネ7bのバネ定数をワイプバネ7a,7cのバネ定数の1/3に設定される。これにより、電流開閉器100の投入状態における固定側接点2a,2b,2cと可動側接点3a,3b,3cとの接触力のばらつきを最小化できるため、電流開閉ユニット10a,10b,10cに分流する電流のばらつきを最小化することが可能となる。
以上のように構成した第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、電流開閉器100の定常通電時の通電容量を増大させるとともに、電流開閉器100が開極する瞬時の電磁反発力の低下を防ぐことが可能となる。さらに、ワイプ長が最も大きい1つの電流開閉ユニット10bが有するワイプバネ7bのバネ定数が、他の全ての電流開閉ユニット10a,10cが有するワイプバネ7a,7cのバネ定数よりも小さいため、電流開閉器100の投入状態において、複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cに分流する電流のばらつきを小さくすることが可能となる。
また、第2の実施例における複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cが有するワイプバネ7a,7b,7cのバネ定数は、電流開閉器100の投入状態における複数の電流開閉ユニット10a,10b,10cの固定側導体1a,1b,1cと可動側導体4a,4b,4cとの間の接触力が均一となるように設定されている。これにより、電流開閉器100の投入状態において、電流開閉ユニット10a,10b,10cに分流する電流のばらつきを最小化することが可能となる。