(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157253
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20241030BHJP
【FI】
H04N25/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071507
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】大倉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮内 健
(72)【発明者】
【氏名】大和田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】韓 相萬
(72)【発明者】
【氏名】高柳 功
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024CX06
5C024CX43
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
5C024HX35
5C024HX51
(57)【要約】
【課題】入出力特性の線形性を改善でき、チップコストの低減を図ることが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供する。
【解決手段】画素信号処理部400は、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413を同相でオンオフさせ、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413がオン状態で第2の入力スイッチ421がオフ状態で、第1のオートゼロスイッチAZ411および第2のオートゼロスイッチAZ412をオン状態に保持させて第2ノードND412を基準電位VSS(GND)に接続させることにより、サンプリングキャパシタCS411、帰還キャパシタCF411、およびオートゼロキャパシタCAZ411をキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタCF411を入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、アンプ411の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、
前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、
第2ノードと、
前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、
前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、
前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、
前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される
固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素信号処理部は、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチをオン状態に保持させて前記第2ノードを前記バイアス電位に接続させることにより、前記サンプリングキャパシタ、前記帰還キャパシタ、および前記オートゼロキャパシタをキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタを入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、前記演算増幅器の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記画素信号処理部は、
前記入力ノードと前記第2ノードとの間に前記サンプリングキャパシタと直列に接続された第1の入力スイッチと、
前記第3のノードと前記接続ノードとの間に接続された出力スイッチと、を含み、
前記第1の入力スイッチおよび前記出力スイッチは同相でオンオフされ、
前記第1の入力スイッチおよび前記出力スイッチがオン状態で、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチをオン状態に保持させて前記第2ノードを前記バイアス電位に接続させることにより、前記サンプリングキャパシタ、前記帰還キャパシタ、および前記オートゼロキャパシタをキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタを入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、前記演算増幅器の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記オートゼロキャパシタの容量は、前記サンプリングキャパシタの容量より小さい
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記画素信号処理部は、
前記入力ノードと前記第2ノードとの間に前記サンプリングキャパシタと直列に接続可能な第1の入力スイッチが設けられておらず、
前記第3のノードと前記接続ノードとの間に接続可能で、前記第1の入力スイッチと同相でオンオフされる出力スイッチが設けられていない一方、
前記入力ノードと前記接続ノード間に接続され、前記第1の入力スイッチおよび前記出力スイッチとは逆相でオンオフされる第2の入力スイッチを含み、
前記第2の入力スイッチがオンの期間において前記演算増幅器はオフになり、
前記演算増幅器の寄生負荷容量は、容量の大きい前記サンプリングキャパシタおよび帰還キャパシタはシリアル化された容量の小さな前記オートゼロキャパシタ、前記演算増幅器の容量で小さく見えることから、小さい
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記バイアス電位は、接地電位または正バイアス電位である
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1のオートゼロスイッチは、複数のスイッチを直列に接続したシリーズスイッチにより形成されている
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第1のオートゼロスイッチと前記第1ノードとの接続ラインに、前記第1のオートゼロスイッチがオフになると当該接続ラインに電荷を注入する電荷注入用キャパシタが接続されている
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記演算増幅器は、カスコード型である
請求項8記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記出力スイッチの信号入力ラインに形成された第4ノードと、
前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された前記第1のオートゼロスイッチと、
前記演算増幅器の出力端子に接続された前記第3ノードと前記第4ノードとの間に接続された第1のリファレンススイッチと、
前記第4ノードと前記第2ノードとの間に接続された前記帰還キャパシタと、
前記帰還キャパシタと前記第4ノードとの接続ラインと基準電位との間に接続された第2のリファレンススイッチと、を含み、
前記第1のリファレンススイッチと前記第2のリファレンススイッチは逆相でオンオフされ、
前記第2のオートゼロスイッチがオンすると前記演算増幅器の出力レベルは基準電位にリセットされる
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記演算増幅器は、カスコード型である
請求項10記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記読み出し画素は、
光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能であり、
前記画素信号処理部は、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む
請求項1から11のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記第1の読み出し部は、
前記演算増幅器の非反転入力端子が前記バイアス電位に接続可能である
請求項12記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記第1の読み出し部は、
前記第2ノードと前記入力ノードとの間に前記サンプリングキャパシタに対して直列に接続された第1の入力スイッチを含み、
前記第1の入力スイッチは第1変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持され、
前記第2の読み出し部は、
前記入力ノードと前記接続ノード間に接続された第2の入力スイッチを含み、
前記第2の入力スイッチは第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される
請求項12記載の固体撮像装置。
【請求項15】
各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、
前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、
第2ノードと、
前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、
前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、
前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、
前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される
固体撮像装置の駆動方法であって、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチをオン状態に保持させて前記第2ノードを前記バイアス電位に接続させることにより、前記サンプリングキャパシタ、前記帰還キャパシタ、および前記オートゼロキャパシタをキャパシタの動作範囲で動作させ、
帰還キャパシタを入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、前記演算増幅器の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項16】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、
前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、
第2ノードと、
前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、
前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、
前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、
前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、
前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
ところで、固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の画素の構成としては、たとえば一つのフォトダイオード(光電変換素子)に対して、転送素子としての転送トランジスタ、リセット素子としてのリセットトランジスタ、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタ、および選択素子としての選択トランジスタをそれぞれ一つずつ有する4トランジスタ(4Tr)構成の基本的な画素を例示することができる。
【0005】
転送トランジスタは、所定の転送期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFDに転送する。
リセットトランジスタは、所定のリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFDを電源線の電位にリセットする。
選択トランジスタは、読み出しスキャン時に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタはフローティングディフュージョンFDで電圧信号に変換した列出力の読み出し信号を垂直信号線に出力する。
【0006】
たとえば、読み出しスキャン期間において、リセット期間にフローティングディフュージョンFDがたとえば電源線の電位(基準電位)にリセットされた後、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、基準レベルの読み出しリセット信号(基準レベルの信号)Vrstとして垂直信号線に出力される。
続いて、所定の転送期間に、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)がフローティングディフュージョンFDに転送される。そして、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、信号レベルの読み出し信号(信号レベルの信号)Vsigとして垂直信号線に出力される。
画素の出力信号は、カラム読み出し回路において差分信号(Vsig-Vrst)としてCDS(相関二重サンプリング)処理される。
【0007】
このように、通常の画素読み出し信号(以下、画素信号という場合もある)PSは、1つの基準レベルの読み出しリセット信号Vrstと1つの信号レベルの読み出し信号Vsigにより形成される。
【0008】
ところで、特性向上のため、高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)を持つ高画質の固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)を実現する方法が種々提案されている。
【0009】
高ダイナミックレンジ化のアプローチの一つとして、横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC: Lateral Overflow Integration Capacitor)の構成を挙げることができる(たとえば特許文献1参照)。
LOFIC構成の画素は、上述した基本的構成に、蓄積キャパシタおよび蓄積トランジスタが追加されており、同一露光時間にフォトダイオードから溢れた過飽和電荷を捨てずに蓄積キャパシタに蓄積する。
【0010】
このLOFIC画素は、フローティングディフュージョンの容量Cfd1による変換利得(高利得側:1/Cfd1に比例)と、フローティングディフュージョンの容量Cfd1+蓄積キャパシタC2のLOFIC容量Cloficによる変換利得(低利得側:1/(Cfd1+Clofic)に比例)の2種類を持つことができる。
すなわち、LOFIC画素では、低変換利得(LCG)信号と高変換利得(HCG)信号をそれぞれ使用して、大きな飽和と小さなダークノイズを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-328493号公報
【特許文献2】特開2020-115603号
【特許文献3】特開2023-001516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、LOFICには、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合(接合)点におけるSNRの低下という重要な問題がある。
すなわち、LOFIC構成のみでは、LCG信号のkTCノイズを取り除くことができないため、HCG信号とLCG信号の結合点におけるSNRが低下する。
【0013】
たとえば特許文献2には、LOFIC対象ではないが、低変換利得データと高変換利得データの接続点におけるノイズギャップを除去でき、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現できる固体撮像装置の読み出し回路における画素信号処理部の具体的な回路構成が提案されている。
【0014】
ところで、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサでは、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の信号方向、すなわち、互いにレベル遷移方向が反対であることから、二重読み出し回路が必要となる。
ところが、上記特許文献2に記載の読み出し回路における画素信号処理部は信号方向が互いに同じである単一露光HDR(SEHDR)画素から発生のHCG信号およびLCG信号の両方を読み取ることが可能であることから、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサにはそのまま適用することは困難である。
【0015】
また、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサに適用可能な二重読み出し回路を実現しようとする場合、チップコストを削減するためには、LCG信号とHCG信号の両方を最小限の回路オーバーヘッドで処理でき、また、低消費電力化を実現することが可能な読み出し回路が必要である。
【0016】
このような事情に鑑み、たとえば特許文献3には、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現でき、ひいては高画質化を実現することを目的とするCMOSイメージセンサ(固体撮像装置)が提案されている。
【0017】
CMOSイメージセンサでは、前述したように列並列回路がよく利用される。この列並列回路では、小さな面積で多くのカラム回路を実装するために、単位容量が大きいMOSキャパシタが推奨される。
ただし、MOSキャパシタの容量は電圧に依存し、通常のCMOSプロセスでは、列アンプ(列増幅器)の非線形性が生じる。
たとえば、上述したLOFIC読み出し回路は、増幅器は非線形の入出力特性を示す。
したがって、回路に線形の入出力特性を持たせるためには、コストがかかる追加プロセスによる線形キャパシタを用いる必要がある。
【0018】
上記した特許文献3に記載の回路は、LOFIC画素から生成されたHCG信号とLCG信号の両信号を読み取ることが可能である。
しかしながら、この回路は、コスト低減のために、追加プロセス無しのMOSキャパシタを用いることから依然として非線形の入出力特性を示す。
そのため、上記した特許文献3に記載の回路では、消費電力の増大、回路面積の増大の抑止、チップコストの低減、高ダイナミックレンジ化、高画質化を十分に実現することが困難である。
【0019】
本発明は、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもとより、入出力特性の線形性を改善でき、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、チップコストの低減を図れ、しかも高ダイナミックレンジ化、ひいては高画質化を十分に実現することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、第2ノードと、前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される。
【0021】
本発明の第2の観点は、各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、第2ノードと、前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される固体撮像装置の駆動方法であって、前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチをオン状態に保持させて前記第2ノードを前記バイアス電位に接続させることにより、前記サンプリングキャパシタ、前記帰還キャパシタ、および前記オートゼロキャパシタをキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタを入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、前記演算増幅器の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる。
【0022】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、各々が基準レベルの信号と信号レベルの信号により形成される複数の読み出し信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、反転入力端子および非反転入力端子を含む演算増幅器と、前記演算増幅器の前記反転入力端子に接続された第1ノードと、第2ノードと、前記演算増幅器の出力端子および前記接続ノードに接続された第3ノードと、前記第3ノードと前記第1ノードとの間に接続された第1のオートゼロスイッチと、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されたオートゼロキャパシタと、前記第2ノードと所定のバイアス電位との間に接続され、前記第1のオートゼロスイッチと同相でオンオフされる第2のオートゼロスイッチと、前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された帰還キャパシタと、前記第2ノードと前記入力ノードとの間に接続されたサンプリングキャパシタと、を含み、前記第1のオートゼロスイッチおよび前記第2のオートゼロスイッチは、リセット機能を含むオートゼロ期間にオン状態に保持される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、入出力特性の線形性を改善でき、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、チップコストの低減を図れ、しかも高ダイナミックレンジ化、ひいては高画質化を十分に実現することが可能な変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る第1の読み出し部におけるリセット信号読み出し時、並びに、輝度信号読み出し時であってネガティブフィードバック動作時の等価回路を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るアンプの入出力特性の線形性について説明するための図である。
【
図7】比較例の第1の読み出し部の等価回路を示す図である。
【
図8】本第1の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図10】本第2の実施形態に係る画素信号処理部の第2の読み出し部の制御信号Φ2がアクティブ状態時における第1の読み出し部および第2の読み出し部の等価回路を示す図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の信号処理特性を説明するための図である。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図15】本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の信号処理特性を説明するための図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図17】本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図18】カスコード型反転増幅器の回路構成を比較例とともに示す図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の構成例を示す回路図である。
図3(A)~(E)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【0027】
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえばCMOSイメージセンサにより構成される。
【0028】
この固体撮像装置10は、
図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、画素信号処理部400を含む読み出し回路(カラム読み出し回路)40、水平走査回路(列走査回路)50、およびタイミング制御回路60を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50、およびタイミング制御回路60により画素信号の読み出し部70が構成される。
【0029】
本第1の実施形態において、画素部20に行列状に配列される読み出し画素200は、基本的に、
図2に示すような、構成を有している。
すなわち、読み出し画素200は、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持するフローティングディフュージョンFD(Floating Diffusion;浮遊拡散層)11と、露光期間PEXP中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子としてのフォトダイオードPD11と、露光期間PEXP中は非導通状態に保持され、転送期間に導通状態に保持されて光電変換素子としてのフォトダイオードPD11に蓄積された電荷をフローティングディフュージョンFD11に転送する転送素子としての転送トランジスタTG11-Trと、フローティングディフュージョンFD11の蓄積電荷を排出するリセット処理が可能なリセット素子としてのリセットトランジスタRST11-Trと、を含んで構成されている。
【0030】
さらに、読み出し画素200は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ出るオーバーフロー電荷を蓄積可能な蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11と、フローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11とを選択的に接続する蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trと、を含んで構成されている。
【0031】
さらに、読み出し画素200は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ、転送トランジスタTG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11に溢れ出る電荷を蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11の形成領域方向にオーバーフローさせることが可能なオーバーフローパスOVFPが形成されている。
オーバーフローパスOVFPの所定領域に形成された蓄積ノードNDS11と基準電位VSSとの間に蓄積キャパシタCS11が接続され、蓄積トランジスタSG11-Trが蓄積ノードNDS11とフローティングディフュージョンFD11との間に接続され、リセットトランジスタRST11-Trが電源電位VAAPIXと蓄積ノードNDS11との間に接続されている。
さらに、読み出し画素200は、フローティングディフュージョンFD11で変換した電圧信号を出力するソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF11-Trと、選択素子としての選択トランジスタSEL11-Trを含んで構成されている。
【0032】
本実施形態に係る読み出し画素200は、読み出し部70の制御の下、蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11を選択的に接続することにより、フローティングディフュージョンFD11の容量を第1容量または第2容量に変更して変換利得を第1容量で決まる第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG:High Conversion Gain)または第2容量で決まる第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG:Low Conversion Gain)に切り換え可能である。
【0033】
このように、固体撮像装置10は、読み出し部70の制御の下、
図3に示すように、指定されるデュアル変換利得読み出しモード期間に、第1容量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得モード読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得モード読み出しと、を行うことが可能に構成されている。
【0034】
読み出し画素200は、たとえば横型オーバ一フロー蓄積容量(以下、「L0FIC (Lateral Overflow Integration Capacitor) 」という構造が設けられており、読み出し部70の制御の下、高照度条件下では光電変換素子であるフォトダイオードPD11の蓄積電荷およびオーバーフロー電荷に関連する第2変換利得を用いた2重サンプリング読み出しモード(LOFICモード)動作を行う。
【0035】
本第1の実施形態において、読み出し画素200は、第1容量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得信号読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得信号読み出しを行うデュアル変換利得信号読み出しが行われる。
本第1の実施形態において、読み出し画素200に対する読み出し処理としては、
図3に示すように、まず第1変換利得信号読み出しモード時に、第1の読み出しリセット信号HCGRSTが読み出され、次いで、第1の読み出し輝度信号HCGSIGが読み出される。
続いて、第2変換利得信号読み出しモード時に、第2の読み出し輝度信号LCGSIGが読み出され、次いで、第2の読み出しリセット信号LCGRSTが読み出される。
【0036】
このように、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)は、信号方向(レベル遷移方向)が逆方向の信号として形成される。
【0037】
(画素200の具体的な回路構成)
ここで、
図2の読み出し画素200の具体的な回路構成について説明する。
ここでは、LOFIC構造を持つ読み出し画素200の構成例について説明する。
【0038】
画素部20は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含む読み出し画素200がN行×M列の2次元の行列状(マトリクス状)に配列されている。
【0039】
この読み出し画素200は、たとえば
図2に示すように、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11、転送素子としての転送トランジスタTG11-Tr、リセット素子としてのリセットトランジスタRST11-Tr、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF11-Tr、選択素子としての選択トランジスタSEL11-Tr、蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Tr、蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11、フローティングディフュージョンFD11、および蓄積キャパシタCS11に接続された蓄積ノードNDS11を含んで構成されている。
【0040】
また、読み出し画素200において、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDは、低ノイズ用に非常に小さい容量に形成されている。
蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、高FWC(Full Well Capacity)用に非常に大きい容量(静電容量)に設定されている。蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDより大きい。
そして、高変換利得にはフローティングディフュージョンFD11の容量CFDが主として用いられ、低変換利得には蓄積キャパシタCS11の容量CS1も用いられる。
【0041】
フォトダイオードPD11は、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷がホールであったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
【0042】
各読み出し画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による界面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまうおそれがある。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0043】
転送トランジスタTG11-Trは、フォトダイオードPD11とフローティングディフュージョンFD11の間に接続され、制御信号TGを通じて制御される。
転送トランジスタTG11-Trは、制御信号TGがハイレベル(H)の期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD11で光電変換され蓄積ノードに蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFD11に転送する。
【0044】
リセットトランジスタRST11-Trは、
図2の例では、電源電位VAAPIXと蓄積ノードNDS11との間に接続され、制御信号RSTを通じて制御される。
リセットトランジスタRST11-Trは、制御信号RSTがHレベルの期間に選択されて導通状態となり、蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されているときに、フローティングディフュージョンFD11(および蓄積キャパシタCS11)を電源電位VAAPIXにリセットする。
【0045】
また、本第1の実施形態では、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11およびフォトダイオードPD11がリセットされる。
また、本第1の実施形態では、リセットトランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0046】
蓄積トランジスタSG11-Trは、蓄積ノードNDS11を介してフローティングディフュージョンFD11(およびリセットトランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11との間に接続されている。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御線を通じてゲートに印加される制御信号SGにより制御される。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御信号SGがHレベルの期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD11(およびリセットトランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11とを接続する。
本第1の実施形態では、上述したように、リセットトランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0047】
なお、本第1の実施形態において、オーバーフローパスOVFPは、
図2に示すように、フォトダイオードPD11のオーバーフロー電荷をフローティングディフュージョンFD11、蓄積トランジスタSG11-Tr、蓄積ノードNDS11を介し蓄積キャパシタCS11に転送可能な経路として形成され(実線の矢印)、かつ、蓄積キャパシタCS11のオーバーフロー電荷を蓄積ノードNDS11、リセットトランジスタRST11-Trを介して電源電位VAAPIXに転送可能な経路として形成されている(破線の矢印)。
【0048】
ソースフォロワトランジスタSF11-Trと選択トランジスタSEL11-Trは、電源電位VAAPIXと垂直信号線LSGN11の間に直列に接続されている。
ソースフォロワトランジスタSF11-TrのゲートにはフローティングディフュージョンFD11が接続され、選択トランジスタSEL11-Trは制御線を通じてゲートに印加される制御信号SELにより制御される。
選択トランジスタSEL11-Trは、制御信号SELがHレベルの選択期間に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタSF11-TrはフローティングディフュージョンFD11で電圧信号に変換した列出力の読み出し電圧信号(VRST1,VSIG1)を垂直信号線LSGN11に出力する。
【0049】
画素部20には、読み出し画素200がN行×M列配置されているので、各制御線はそれぞれN本、垂直信号線はM本ある。
図1においては、各制御線を1本の行走査制御線として表している。
【0050】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路60の制御に応じてシャッター行および読み出し行において行走査制御線を通して画素の駆動を行う。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPD11に蓄積された電荷をリセットするシャッター行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0051】
読み出し回路40は、画素部20の各列出力に対応して配置された複数の列信号処理回路(図示せず)としての画素信号処理部400を含み、複数の列信号処理回路で列並列処理が可能に構成されてもよい。
読み出し回路40において、画素信号処理部400は、信号方向、換言するとレベル遷移方向が逆方向の信号として形成され、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)のいずれか一方の変換利得信号、具体的には第1変換利得信号を反転させる機能を有する。
さらに、画素信号処理部400は、信号方向(レベル遷移方向)をそろえた後、第1変換利得信号と第2変換利得信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル(AD)変換機能を有する。
なお、画素信号処理部の具体的な回路構成例については後で詳述する。
【0052】
水平走査回路50は、読み出し回路40の複数の画素信号処理部400で処理された信号を走査して水平方向に転送し、図示しない信号処理回路に出力する。
【0053】
タイミング制御回路60は、画素部20、垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0054】
読み出し部70は、デュアル変換利得読み出しモードMDCGが指定されると、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行う、
【0055】
本第1の実施形態において、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始後、読み出しモード処理として、デュアル変換利得読み出しモードMDCGの読み出し処理を行う。
【0056】
たとえば、読み出し部70は、
図3に示すように、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trを所定期間導通状態に保持してフォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、蓄積キャパシタCS11をリセットしてシャッター処理を行い、転送トランジスタTG11-Trを非導通状態にして露光期間PEXPを開始する。
そして、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始した後、デュアル変換利得読み出しモードDMCGの処理として、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを順次行う。
【0057】
以上、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る読み出し部70のカラム処理系である画素信号処理部400における構成、それに関連した読み出し処理等について詳述する。
【0058】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【0059】
読み出し画素200から読み出される複数の画素信号を増幅、AD変換等可能な画素信号処理部400は、
図4に示すように、入力ノードND401、接続ノードND402、第1の読み出し部410、第2の読み出し部420、およびAD変換部430を含んで構成されている。
【0060】
入力ノードND401は、読み出し画素200から垂直信号線LSGN11に画素信号PIXOUT(VPIX)として読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)が入力され、入力信号を第1の読み出し部410および第2の読み出し部420に供給する。
【0061】
接続ノードND402は、第1の読み出し部410の出力端子および第2の読み出し部320の出力端子が接続され、かつ、次段のAD変換部430の入力端子に接続されている。
接続ノードND402は、第1の読み出し部410により反転処理された第1変換利得信号および第2の読み出し部420により処理された第2変換利得信号をAD変換部430に供給する。
【0062】
第1の読み出し部410は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUT(VPIX)のうち第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)の信号方向(レベル遷移方向)を反転させ、反転第1変換利得信号を接続ノードND402に出力する。
【0063】
第2の読み出し部420は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUT(VPIX)のうち第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)の信号方向(レベル遷移方向)を保持して、非反転第2変換利得信号を接続ノードND402に出力する。
【0064】
ここで、本第1の実施形態に係る第1の読み出し部410および第2の読み出し部420の具体的な構成例について
図4に関連付けて説明する。
【0065】
(第1の読み出し部410の構成例)
第1の読み出し部410は、反転入力端子(-)が入力ノードND401からの信号供給ラインに接続される第1の演算増幅器(アンプ)411を含む。
第1の読み出し部410は、入力ノードND401からの信号供給ラインLS411に第1ノードND411,第2ノードND412が形成され、出力側信号供給ラインSL412に第3ノードND413が形成されている。
アンプ411は、入力ノードND401からの信号供給ラインLS411に接続される反転入力端子(-)が第1ノードND411に接続され、出力端子が第3ノードND413に接続されている。
アンプ411は、非反転入力端子(+)が基準バイアス電位VBに接続されている。
【0066】
入力ノードND401と第2ノードND412との間に、第1の入力スイッチ412およびサンプリングキャパシタCS411が直列に接続されている。
第3ノードND413と第2ノードND411との間に、帰還キャパシタCF411が接続されている。
第1ノードND411と第2ノードND412との間に、オートゼロキャパシタCAZ411が接続されている。
第3ノードND413と第1ノードND411との間に、帰還キャパシタCF411と並列に第1のオートゼロスイッチAZ411が接続されている。
第2ノードND412と基準電位GNDとの間に、第2のオートゼロスイッチAZ412が接続されている。
【0067】
第1の入力スイッチ412は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号Φ1により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第1の入力スイッチ412は、第1変換利得信号読み出しモード時に制御信号Φ1がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、入力ノードND401に入力される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を第1のサンプリングキャパシタCS411を通してアンプ411の反転入力端子(-)に入力させる。
【0068】
出力スイッチ413は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号Φ1により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
出力スイッチ413は、第1変換利得信号読み出しモード時に制御信号Φ1がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ411により反転増幅処理を受けた反転第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
【0069】
第1のオートゼロスイッチ(リセットスイッチ)AZ411は、制御信号ΦAZにより導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第1のオートゼロスイッチAZ411は、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号ΦAZがたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ411を初期化させる。
第1のオートゼロスイッチAZ411は、アンプ411のオフセット電圧をセーブする。
【0070】
第2のオートゼロスイッチ(リセットスイッチ)AZ412は、制御信号ΦAZにより導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第2のオートゼロスイッチAZ412は、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号ΦAZがたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、バイアス電圧VSSをサンプリングする。サンプリング電位としては、たとえば接地電位GNDと正バイアス電位(画素リセット電位)PIX-RSTを例示できる。
【0071】
本第1の実施形態において、画素信号処理部400は、上述したように、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413を同相でオンオフさせ、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413がオン状態で、第1のオートゼロスイッチAZ411および第2のオートゼロスイッチAZ412をオン状態に保持させて第2ノードND412をバイアス電位VSSに接続させることにより、サンプリングキャパシタCS411、帰還キャパシタCF411、およびオートゼロキャパシタCAZ411をキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタCF411を入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、アンプ411の出力を入力信号に対して線形応答に保持させる。
【0072】
また、本実施形態において、オートゼロキャパシタCAZ411の容量CAZはサンプリングキャパシタCS411の容量CSより小さい。
また、本実施形態において、バイアス電位VSSは、接地電位GNDまたは正バイアス電位(GNDよりわずかに高い電位)である。
【0073】
次に、アンプ411を備えた第1の読み出し部410のリセット信号RST読み出し時、並びに、輝度信号読み出し時であってネガティブフィードバック時の動作について説明する。
図5(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係る第1の読み出し部410におけるリセット信号RST読み出し時、並びに、輝度信号読み出し時であってネガティブフィードバック動作時の等価回路を示す図である。
【0074】
リセット信号読み出し時には、
図5(A)に示すように、第2のオートゼロスイッチAZ412がオン状態に保持され、第2ノードND412(Vx)は、基準(バイアス)電位、たとえばGND(0V)に接続される。
オートゼロキャパシタCAZ411はMOSキャパシタにより形成され、ゲート部が第1ノードND411と第2ノードND412に接続されている。
【0075】
輝度信号読み出し時には、
図5(B)に示すように、第2のオートゼロスイッチAZ412がオフに保持され、第2ノードND412(Vx)は、基準電位、たとえばGND(0V)から切り離されている。
アンプ411の遅延がある場合、第2ノードND412(Vx)は短時間マイナスになる。このため、GND接続だけでなく、小さな正バイアス接続も有効である。
【0076】
次に、アンプ411の入出力特性の線形性について、比較例(前述の特許文献3参照)と比較しつつ考察する。
図6(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンプの入出力特性の線形性について説明するための図である。
図6(A)はキャパシタの動作範囲例を示し、
図6(B)はアンプの入出力特性の線形性について説明するための図である。
図7は比較例の第1の読み出し部の等価回路を示す図である。
【0077】
図4の本第1の実施形態に係る第1の読み出し部と
図7の比較例の第1の読み出し部が異なる点は、第2ノードND412に接続されるオートゼロキャパシタCAZ411および第2のオートゼロスイッチAZ411を配置してあるか否かにある。
すなわち、本第1の実施形態に係る第1の読み出し部は、比較例の回路構成に、第2ノードND412に接続されるオートゼロキャパシタCAZ411および第2のオートゼロスイッチAZ411を追加した構成を有する。
【0078】
(比較例の入出力特性)
図7の比較例の回路は、以下の理由により非線形の入出力特性を示す。
回路が線形キャパシタなしでCISプロセスにより実装される場合、制御信号Φ1がハイレベルで第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413がオンの状態で制御信号ΦAZがハイレベルでオートゼロスイッチAZSがオンになると、ノードVXは仮想的にバイアス電位VBに短絡される(~1V)。
帰還キャパシタCFの両端の電圧差は0であるため、帰還キャパシタCFはキャパシタの可変領域で動作する。
オートゼロスイッチAZS がオフになった後、入力信号VPIX はVSHに低下し、アンプ411の出力VAMPは、参照バイアス電位V
Bを基準に、第1の読み出しリセッaト信号HCGRST(電位V
RH)と低電位の読み出し輝度信号HCGSIG(V
SH)の差分に容量比倍G(C
S/C
F)を掛け合わせたレベル増幅された信号(V
B+G*(V
RH-V
SH))で与えられように上昇する。
帰還キャパシタCFは(VRH-VSH)に従って変化するため、アンプ出力VAMPは入力信号(VRH-VSH)に対して非線形性を示す。
【0079】
(本第1の実施形態の第1の読み出し部(本回路)の入出力特性)
図4の本回路は、以下の理由により線形の入出力特性を示す。
本回路では、
図4に示すように、追加のキャパシタCAZ411とスイッチAZ412が、反転増幅器からなるアンプ411の第2ノードND412(VX)に追加されている。
制御信号Φ1がハイレベルで第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413がオンの状態で制御信号ΦAZがハイレベルでオートゼロスイッチAZ411がオンになると、第2ノードND412(VX)は、スイッチAZ412を介して接地電位(基準電位)GND(0V)に短絡される。
バイアス電位VBと入力信号VPIX は接地電位GNDよりも高いため、サンプリングキャパシタCS411、帰還キャパシタCF411、およびオートゼロキャパシタCAZ411はキャパシタCの動作範囲で動作する。
帰還キャパシタCF411は入力信号(VRH-VSH) に従って一定であるため、レベル増幅された信号(V
B+G*(V
RH-V
SH))で与えられるアンプ出力VAMPは、入力信号(VRH-VSH) に対して線形応答を示す。
【0080】
なお、オートゼロキャパシタCAZ411は1pF 程度のサンプリングキャパシタCS411よりも10~100fF 程度小さいため、追加のキャパシタCAZ411とスイッチAZ412による面積の増加は総面積の10%未満である。
【0081】
(第2の読み出し部420の構成例)
第2の読み出し部420は、入力ノードND401と接続ノードND402間の信号転送ラインLS421に接続された第2の入力スイッチ421を含む。
【0082】
第2の入力スイッチ421は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号Φ21により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第2の入力スイッチ421は、第2変換利得信号読み出しモード時に制御信号Φ2がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、入力ノードND401に入力される第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
【0083】
(AD変換部430の構成例)
AD変換部430は、反転入力端子(-)が接続ノードND402からの信号供給ラインに接続される第2の演算増幅器(アンプ)431を含む。
アンプ431は、接続ノードND402からの信号供給ラインに接続される反転入力端子(-)が入力ノードND431に接続され、出力ノードND432に接続され、非反転入力端子(+)が参照電位制御回路432の出力側に接続されている。
接続ノードND402と入力ノードND431との間に、入力キャパシタとしてのサンプリングキャパシタCC431が接続されている。
出力ノードND432と入力ノードND431との間に、リセットスイッチRST431が接続されている。
そして、アンプ431の反転入力端子(-)に接続された入力ノードND431と基準電位VSSと間に第3のスイッチ433およびサンプリングキャパシタCS431が直列に接続されている。
【0084】
第3の入力スイッチ433は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号φ2により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第3の入力スイッチ433は、第2変換利得信号読み出しモード時に、サンプリングキャパシタCC431に入力ノードND431を介してサンプリングキャパシタCS431に接続させる。
サンプリングキャパシタCS431を設けることにより、画素信号の振幅を調整し、特に高振幅の画素信号の振幅をAD変換可能なレベルに減少(調整)させることで、ダイナミックレンジを拡張することが可能となる。
【0085】
第3のリセットスイッチRST431は、制御信号ΦCL(RST_LCG)により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第3のリセットスイッチRST431は、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号ΦCL(RST_LCG)がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ431を初期化させる。
【0086】
(固体撮像装置10の読み出し動作)
以上、固体撮像装置10の各部の特徴的な構成および機能について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素信号の読み出し動作について詳述する。
【0087】
図8(A)~(D)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0088】
図8(A)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413の制御信号433の制御信号Φ2を示している。
図8(B)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1のオートゼロスイッチAZ411、第2のオートゼロスイッチAZ412の制御信号ΦAZ(RST_HCG)、並びに、AD変換部430の第2のリセットスイッチRST431の制御信号φCL(RST_LCG)を示している。
図8(C)は読み出し画素200から読み出される画素信号VPIX(PIXOUT)を、
図8(D)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410および第2の読み出し部420の増幅出力信号AMPOUT(VADC)を示している。
【0089】
デュアル変換利得読み出しモードMDCGの処理が開始される前に、制御信号RST、SG、TGが所定期間ハイレベルに設定されて、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、転送トランジスタTG11-Trが所定期間導通状態に保持される。
これにより、フォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、および蓄積キャパシタCS11が固定電位VAAPIXでリセットされる。すなわち、シャッター動作が行われる。
【0090】
(第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
そして、転送トランジスタTG11-Trが導通状態から非導通状態に切り換えられたタイミングで露光時間PEXPが開始され、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理が行われる。
露光期間PEXPを開始してから一定期間後、制御信号SGが所定期間だけハイレベルに切り換えられた後、第1の読み出しリセット信号(HCGRST)の読み出し期間となる。
このとき、制御信号SGはローレベルのままに保持され、蓄積トランジスタSG11-Trは非導通状態にあることから、フローティングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が分離されており、フローティングディフュージョンFD11の利得がフローティングディフュージョンFD11の容量CFDを含む第1容量で決まる第1変換利得HCGに保持されている。
【0091】
そして、リセット処理後の第1のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得HCGで変換した第1の読み出しリセット信号HCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出しリセット信号HCGRSTに対する所定の処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが行われる。
【0092】
次いで、第1のリセット信号読み出し期間後の第1の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第1の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
【0093】
次いで、第1の転送期間に続く第1の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得で変換した第1の読み出し信号HCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出し信号HCGSIGに対する所定の処理を行う第1変換利得読み出し処理HCGSRD行われる。
【0094】
そして、リセットレベル(VHCGRST,VRH)と信号レベル(VHCGSIG、VSH)を保持するか、あるいは、リセットレベルと信号レベルとの差分によりデジタルCDS演算が行われる。
【0095】
第1変換利得信号読み出しモードにおいて、読み出し回路40では以下の処理が行われる。
第1変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第1の読み出し部410における第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413に制御信号Φ1がアクティブのハイレベルで供給される。
一方、第1変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第2の読み出し部420における第2の入力スイッチ421に制御信号Φ2が非アクティブのローレベルに保持される。
したがって、第1変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410がアクティブ状態となり、第2の読み出し部420は非アクティブ状態となる。
【0096】
また、第1の読み出し部410においては、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号RST_HCGがたとえばハイレベルで供給されて第1のオートゼロスイッチAZ411が導通状態に切り換えられ、アンプ411が初期化される。
そして、第1変換利得信号読み出しモードにおいては、第1変換利得信号である第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTはアンプ411で反転される。
【0097】
また、第1変換利得信号読み出しモード時において、AD変換部430は、第3の入力スイッチ433および第2のリセットスイッチRST431には非アクティブの制御信号φ2,RST_LCGが供給されていることから、アンプ431の反転入力端子(-)に供給される第1の読み出し部410の出力信号AMPOUTと非反転入力端子(+)に供給される所定電位とを比較処理することで、AD変換を行う。
【0098】
第1変換利得信号読み出しモード時においては、増幅部として機能する第1の読み出し部410には、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTより低電位の第1の読み出し輝度信号HCGSIG(電位VSH)が供給される。
そして、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTはアンプ411において反転増幅作用を受けて、次段のAD変換部430に出力される。
第1の読み出し部410のアンプ411の出力信号AMPOUTは、参照電位VBを基準に、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)と低電位の読み出し輝度信号HCGSIG(VSH)の差分に容量比倍G(CS/CF)を掛け合わせたレベル増幅された信号(VB+G*(VRH-VSH))となる。
【0099】
(第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
次いで、第1変換利得読み出し処理HCGSRD後に、制御信号SGがローレベルからハイレベルに切り換えられて、蓄積トランジスタSG11-Trを導通状態に切り換えられて蓄積キャパシタCS11がフローティングディフュージョンFD11と接続される。
これにより、フローディングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が共有されてフローティングディフュージョンFD11の利得が第2容量で決まる第2変換利得LCGに切り換えられる。
これにより、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理から第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理に切り換わる。
【0100】
次いで、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第2の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
そして、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に続く第2の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出し信号LCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出し信号LCGSIGに対する所定の処理を行う第2変換利得読み出し処理LCGSRDが行われる。
【0101】
次いで、第2の信号読み出し期間経過後に、制御信号RSTがハイレベルに切り換えられ、リセットトランジスタRST11-Trが導通状態に切り換えられ、第2のリセット信号読み出し期間となる。
そして、第2のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出しリセット信号LCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出しリセット信号LCGRSTに対する所定の処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが行われる。
【0102】
そして、リセットレベル(LCGRST、VRL)と信号レベル(LCGSIG,VSL)を保持するか、あるいは、リセットレベルLCGRST(VRL)と信号レベルLCGSIG(VSL)の差分によりオフセットノイズキャンセル演算が行われる。
【0103】
第2変換利得信号読み出しモードにおいて、読み出し回路40では以下の処理が行われる。
第2変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第1の読み出し部410における第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413に制御信号Φ1が非アクティブのローレベルで供給される。
一方、第2変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第2の読み出し部420における第2の入力スイッチ421に制御信号Φ2がアクティブのハイレベルに保持される。
したがって、第2変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410が非アクティブ状態となり、第2の読み出し部420はアクティブ状態となる。
これに伴い、第2変換利得信号読み出しモード中には、第1の読み出し部410のアンプ411の電源をオフにすることができることから、消費電力の削減を図ることが可能である。
【0104】
また、第2変換利得信号読み出しモード時において、AD変換部430は、第3の入力スイッチ433および第2のリセットスイッチRST431にはアクティブの制御信号Φ2,RST_LCGが供給されることから、アンプ431の反転入力端子(-)に供給される第2の読み出し部420の出力信号AMPOUTは、以下のような処理を受ける。
【0105】
第2変換利得信号読み出しモード時においては、減衰器として機能する第2の読み出し部420、AD変換部430のアンプ431には、反転作用を受けていない、第2の読み出し輝度信号LCGSIG(電位VSL)が入力され、続いて第2の読み出しリセット信号LCGRST(電位VRL)が供給される。
そして、AD変換部430のアンプ431の出力信号AMPOUTは、参照電位VBを基準に、第2の読み出し輝度信号LCGSIG(電位VSL)が入力され、続いて第2の読み出しリセット信号LCGRST(電位VRL)の差分に容量比倍G(CC/(CC+CSH))を掛け合わせたレベル減衰された信号(VB+G*(VRL-VSL))となる。
【0106】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、AD変換処理等が可能な画素信号処理部400は、
図4に示すように、入力ノードND401、接続ノードND402、第1の読み出し部410、第2の読み出し部420,およびAD変換部430を含んで構成されている。
第1の読み出し部410は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)の信号方向(レベル遷移方向)を反転させ、反転増幅処理を受けた反転第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
【0107】
第1の読み出し部410において、アンプ411は、入力ノードND401からの信号供給ラインLS411に接続される反転入力端子(-)が第1ノードND411に接続され、出力端子が第3ノードND413に接続され、非反転入力端子(+)が基準バイアス電位VBに接続されている。入力ノードND401と第2ノードND412との間に、第1の入力スイッチ412およびサンプリングキャパシタCS411が直列に接続され、第3ノードND413と第2ノードND411との間に、帰還キャパシタCF411が接続され、さらに、第1ノードND411と第2ノードND412との間に、オートゼロキャパシタCAZ411が接続されて、第3ノードND413と第1ノードND411との間に、帰還キャパシタCF411と並列に第1のオートゼロスイッチAZ411が接続され、第2ノードND412と基準電位GNDとの間に、第2のオートゼロスイッチAZ412が接続され、アンプ411の非反転入力端子(+)がバイアス電位VBに接続されている。
【0108】
本第1の実施形態において、画素信号処理部400は、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413を同相でオンオフさせ、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413がオン状態で、第2の入力スイッチ421がオフ状態で、第1のオートゼロスイッチAZ411および第2のオートゼロスイッチAZ412をオン状態に保持させて第2ノードND412を基準電位VSS(GND)に接続させることにより、サンプリングキャパシタCS411、帰還キャパシタCF411、およびオートゼロキャパシタCAZ411をキャパシタの動作範囲で動作させ、帰還キャパシタCF411を入力画素信号の差分に従って一定に保持させて、アンプ411の出力を入力信号に対して線形応答に保持させることが可能となる。
【0109】
第2の読み出し部420は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)の信号方向(レベル遷移方向)を保持して、非反転第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
また、AD変換部430は、サンプリングキャパシタCS431を設けることにより、画素信号の振幅を調整、特に高振幅の画素信号の振幅をAD変換可能なレベルに減少(調整)させることで、ダイナミックレンジを拡張することが可能となる。
【0110】
したがって、本第1の実施形態によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、入出力特性の線形性を改善でき、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、チップコストの低減を図れ、しかも高ダイナミックレンジ化、ひいては高画質化を十分に実現することが可能となる。
また、第2変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410が非アクティブ状態となり、第2の読み出し部420はアクティブ状態となる。
これに伴い、第2変換利得信号読み出しモード中には、第1の読み出し部410のアンプ411の電源をオフにすることができることから、消費電力の削減を図ることが可能である。
また、AD変換部430には、同じ方向の反転第1変換利得信号と非反転第2変換利得信号を入力させることができることから、既存のADCにより、オーバーヘッドなしで入力される反転第1変換利得信号と非反転第2変換利得信号を変換することが可能となり、ひいては適用されるカメラシステムのコスト低減を図ることが可能となる。
【0111】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
図10は、本第2の実施形態に係る画素信号処理部の第2の読み出し部の制御信号Φ2がアクティブ状態時における第1の読み出し部および第2の読み出し部の等価回路を示す図である。
【0112】
本第2の実施形態の画素信号処理部400Aが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
【0113】
第1の実施形態の画素信号処理部400においては、第1の読み出し部410はアンプ411を有し、制御信号Φ1によりオンオフが制御される第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413が設けられている。
【0114】
これに対して、本第2の実施形態の画素信号処理部400Aにおいては、第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413が設けられていない。
すばわち、第1の読み出し部410Aにおいて、入力ノードND401がサンプリングキャパシタCS411と直接的に接続され、アンプ411の出力端子に接続された第3のノードND413が接続ノードND402に直接的に接続されている。
【0115】
本第2の実施形態の画素信号処理部400Aにおいては、制御信号Φ1によって制御される入出力スイッチが削除されている。
そして、制御信号Φ2がアクティブの期間は、アンプ411はオフになる。
図10の等価回路に示されるように、制御信号Φ2がアクティブのたとえばハイレベルのとき、アンプ411による寄生負荷容量は、CSとCFの大きなキャパシタは、シリアル化された小さなキャパシタCAZ411とCp で小さく見えることから、小さい。
このように、スイッチを削除することで、回路面積をさらに削減することができる。
【0116】
本第2の実施形態によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、入出力特性の線形性を改善でき、消費電力の増大、回路面積の増大をさらに抑止可能で、チップコストの低減を図れ、しかも高ダイナミックレンジ化、ひいては高画質化を十分に実現することが可能となる。
【0117】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【0118】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
【0119】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bにおいては、第1のオートゼロスイッチAZ411が、MOSトランジスタからなるスイッチ1個で形成されるのではなく、低リーク化を図るため、複数、本例では2個のMOSトランジスタからなるスイッチSAZ1、SAZ2を直列に接続したシリーズスイッチSAZ411により形成されている。
【0120】
(シリーズスイッチ(直列スイッチ)による低リーク化)
画素信号処理部400において、オートゼロキャパシタCAZが10fF程度と小さい場合、第1ノードND411(VY)とアンプ出力VAMP間のリーク電流により、アンプ出力VAMPが時間とともに変化することがある。
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bにおいては、シリーズスイッチSAZ411により電圧変動を抑えることができるように構成されている。
シリーズスイッチSAZ411は、単一スイッチでCAZを増やす場合に比べて面積効率が高くなるという利点がある。
【0121】
第3の実施形態によれば、上記面積効率が高くなるという利点に加えて、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0122】
(第4の実施形態)
図12は、本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
図13(A)および(B)は、本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の信号処理特性を説明するための図である。
図13(A)はアンプの入出力特性を示し、
図13(B)は入力信号の電圧レベルの経時的変化を示している。
【0123】
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
【0124】
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cにおいては、第1のオートゼロスイッチAZ411と第1ノードND411との接続ラインに、第1のオートゼロスイッチAZ411がオフになるとその接続ラインに電荷を注入する電荷注入用キャパシタCRが追加のキャパシタとして接続されている。
【0125】
(キャパシタによる出力範囲の拡大)
上記したように、本第4の実施形態の画素信号処理部400Cにおいては、
図4の回路構成に、キャパシタCRが追加される。
制御信号ΦAZがローレベルに切り換えられて第1のオートゼロスイッチAZ411がオフになると追加のキャパシタCRから第1ノードND411(VY)に電荷が注入され、アンプ出力VAMPはVRによって減少する。
これにより、アンプ出力VAMPの最小電圧が下がるため、反転増幅器からなるアンプ411の出力範囲を広げることができる。
【0126】
第4の実施形態によれば、上記アンプ411の出力範囲を広げることができるという利点に加えて、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0127】
(第5の実施形態)
図14は、本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
図15(A)および(B)は、本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の信号処理特性を説明するための図である。
図15(A)はアンプの入出力特性を示し、
図15(B)は入力信号の電圧レベルの経時的変化を示している。
図16(A)~(F)は、本第5の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0128】
図16(A)は画素信号処理部400Dの第1の読み出し部410Dの第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413の制御信号Φ1、第2の読み出し部420の第2の入力スイッチ421、並びに、AD変換部430の第3の入力スイッチ433の制御信号Φ2を示している。
図16(B)は画素信号処理部400Dの第1の読み出し部410Dの第1のオートゼロスイッチAZ411、第2のオートゼロスイッチAZ412の制御信号ΦAZ(RST_HCG)、並びに、AD変換部430の第2のリセットスイッチRST431の制御信号ΦCL(RST_LCG)を示している。
図16(C)は参照信号ΦREFを、
図16(D)は読み出し画素200から読み出される画素信号VPIX(PIXOUT)を、
図16(E)および
図16(F)は画素信号処理部400Dの第1の読み出し部410Dおよび第2の読み出し部420の増幅出力信号VAMP(AMPOUT)、VADCを示している。
【0129】
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
【0130】
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dにおいては、
図4の回路構成に以下の構成が付加されている。以下では付加部分、変更部分を中心に説明する。
【0131】
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dにおいては、出力スイッチ413の信号入力ラインに形成された第4ノードND414と、第3ノードND413と第1ノードND411との間に接続された記第1のオートゼロスイッチAZ411と、アンプ411の出力端子に接続された第3ノードND413と第4ノードND414との間に接続された第1のリファレンススイッチRF411と、第4ノードND414と第2ノードND412との間に接続された帰還キャパシタCF411と、帰還キャパシタCF411と第4ノードND414との接続ラインと基準電位Vrefとの間に接続された第2のリファレンススイッチREF412と、を含んで構成されている。
そして、第1のリファレンススイッチREF411と第2のリファレンススイッチREF412は逆相でオンオフされ、第2のオートゼロスイッチAZ412がオンするとアンプ413の出力レベルは基準電位にリセットされる。
【0132】
(バイアス付きのより広い出力範囲)
本第5の実施形態においては、アンプ出力VAMPと基準電位VREFとの間のスイッチREF411が接続されている。制御信号ΦAZにより第1のオートゼロスイッチAZ411がオンになると、アンプ出力VAMPは基準電位VREF (<VB) にリセットされる。
このように、アンプ出力VAMPの最小電圧が下がるため、反転増幅器からなるアンプ411の出力範囲を広げることができる。
【0133】
第5の実施形態によれば、上記アンプ411の出力範囲を広げることができるという利点に加えて、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0134】
(第6の実施形態)
図17は、本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【0135】
本第6の実施形態の画素信号処理部400Eが第5の実施形態の画素信号処理部400Dが異なる点は、次の通りである。
【0136】
第5の実施形態の画素信号処理部400Dにおいては、反転増幅器からなるアンプ411の構成を特定してはいない。
これに対して、本第6の実施形態の画素信号処理部400Eにおいては、反転増幅器からなるアンプ411Eの構成をカスコード型に特定している。
【0137】
(カラムFPNの削減)
この反転増幅器からなるアンプ411Eをカスコード型に特定する構成は、前述した第4の実施形態および第5の実施形態に適用可能である。
反転増幅器はカスコード構造を採用することにより、出力範囲は減少するが、開ループDCゲインは増加し、下記の数1に示すゲインエラーは減少する。ゲインエラーが小さいと、明るい信号の列固定パターンノイズ (FPN) を減らすことができる。
【0138】
【0139】
なお、
図18にカスコード型反転増幅器の回路構成例が例示されている。
図18(A)は比較例として基本的な反転増幅器の回路構成例を示し、
図18(B)にカスコード型反転増幅器の回路構成例を示している。
【0140】
図18(B)のカスコード型反転増幅器AMPは、PMOSトランジスタPT1~PT4、およびNMOSトランジスタNT1~NT5を含んで構成されている。
アンプAMPにおいては、PMOSトランジスタPT1のドレインと第1ドレインノードNDDR1との間にPMOSトランジスタPT3が接続され、PMOSトランジスタPT2のドレインと第2ドレインノードNDDR2との間にPMOSトランジスタPT4が接続されている。
そして、PMOSトランジスタPT3のゲートとPMOSトランジスタPT4のゲートがバイアス電位bias2に接続されている。
また、第1ドレインノードNDDR1と非反転入力端子411Pの低インピーダンス側ノードとの間にNMOSトランジスタNT4が接続され、第2ドレインノードNDDR2と反転入力端子411Nの低インピーダンス側ノードとの間にNMOSトランジスタNT5が接続されている。
そして、NMOSトランジスタNT4およびNMOSトランジスタNT5のゲートがバイアス電位bias1に接続されている。
【0141】
第6の実施形態によれば、明るい信号の列固定パターンノイズ (FPN) を減らすことができるという利点に加えて、上述した第1の実施形態や第5の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0142】
以上説明した固体撮像装置10,10A~10Eは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0143】
図19は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載した電子機器の構成の一例を示す図である。
【0144】
本電子機器300は、
図19に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10,10A,10B,10C,10D,10Eが適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)320を有する。
電子機器300は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0145】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0146】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A,10B,10C,10D,10Eを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0147】
10,10A~10E・・・固体撮像装置、20・・・画素部、200,200F・・・読み出し画素、PD11・・・フォトダイオード、FD11・・・フローティングディフュージョン、TG11-Tr・・・転送トランジスタ、RST11-Tr・・・リセットトランジスタ、SF11-Tr・・・ソースフォロワトランジスタ、SG11-Tr・・・蓄積トランジスタ、CS11・・・蓄積キャパシタ、30・・・垂直走査回路、40・・・読み出し回路、400,400A~400E・・・画素信号処理部、410,410A~410E・・・第1の読み出し部、411,411A~411E・・・アンプ(第1の演算増幅器)、ND401・・・入力ノード、ND402・・・接続ノード、ND411・・・第1ノード、ND412・・第2ノード、ND413・・・第3ノード、ND414・・・第4ノード、CS411・・・サンプリングキャパシタ、CF411・・・帰還キャパシタ、CAZ411・・・オートゼロキャパシタ、AZ411・・・第1のオートゼロスイッチ、AZ412・・・第2のオートゼロスイッチ、420,420A~420E・・・第2の読み出し部、421・・・第2の入力ノード、430・・・AD変換部、431・・・アンプ(第2の演算増幅器)、50・・・水平走査回路、60・・・タイミング制御回路、70・・・読み出し部、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】