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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157254
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241030BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20241030BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K47/02 F
F25B41/35
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071508
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3H062AA07
3H062AA15
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE07
3H062FF38
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
3H066AA04
3H066BA32
(57)【要約】
【課題】流体速度の減速手段を備えることにより、流体通過音を抑制し、静音性を向上させ得る電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【解決手段】電動弁100aであって、弁体20Aを有する回転子部と、流路室13及び径方向に延在する弁ポート11aを有する弁本体10Aと、弁ポート11aを通過する流体の速度を減速させる減速手段と、を備え、弁本体10Aは、弁体20Aを円周方向にガイドするガイド部11dと、流路室13と直接連通する第1ポート1aと、弁ポート11aと直接連通する第2ポート2aと、を有し、弁部20aは、弁ポート11aと連通可能である流路部15と、を有し、減速手段は、弁体20A又はガイド部11dが、第1ポート1aと直接対向する壁面部20gaを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に弁部が設けられる弁体、及び、前記弁体と一体的に回転するロータを有する回転子部と、
前記弁部を収容する流路室、前記弁部と径方向に対向する弁座、及び、前記流路室と連通可能に径方向に延在する弁ポートを有する弁本体と、
前記弁本体と接続し、前記回転子部の収容空間を画定するケースと、
前記弁ポートを通過する流体の速度を減速させる減速手段と、
を備え、
前記弁本体は、軸線に沿って設ける前記弁体を、軸線方向に支持し、円周方向にガイドするガイド部と、前記流路室と直接連通する第1ポートと、前記弁ポートと連通する第2ポートと、を有し、
前記弁部は、前記弁ポートを塞ぐシール部と、前記弁ポートと連通可能である流路部と、を有し、
前記ロータの回転により、前記弁ポートと前記流路部との連通状態を変化させ、前記弁ポートを流れる流体の流量を制御するものであり、
前記減速手段は、前記弁体又は前記ガイド部が、前記第1ポートと直接対向する壁面部を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ガイド部は、他端側に底部を有する、有底円筒形状に形成されたガイド部材からなり、
前記弁体、及び、前記ガイド部の外周面は、互いに摺動可能に係合される摺動部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁体、及び、前記ガイド部の内周面は、互いに摺動可能に係合される摺動部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、
前記整流手段は、前記弁ポートを、軸線方向から見て、軸線に対して、前記第1ポートの反対側に配置することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、
前記整流手段は、前記流路部が、軸線方向に沿って延在するとともに、前記弁ポートの流路面積と同程度の流路面積を有することを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、
前記整流手段は、前記ガイド部において、前記弁ポートを、軸線方向から見て、軸線に対して、前記壁面部の反対側に配置することを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項7】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体速度の減速手段を備える電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動弁が、冷凍サイクルシステムで用いられる場合には、空気調和機の室内機内等に配置されることもあり、静音性の向上が要望されている。
【0003】
一般的な電動弁は、回転運動を直線運動に変換するねじ送り部を有する駆動部と、この直線運動により、軸線方向に移動する弁体とガイド部との間に生じる摺動部と、を有している。これにより、ねじ送り部において、半径方向及び軸線方向に瞬間的な離接、つまり、衝突が生じ、これに起因した振動及び衝突等が作動音として外部へ伝搬していた(以下、「従来の問題点(電動弁からの騒音)」という)。
【0004】
これに対し、特許文献1には、図9(a)に示すように、電動弁(以下、「従来の電動弁」という)900であって、弁本体910と、弁体920と、ステッピングモータ930と、を備えるものが記載されている。この弁本体910は、一対の弁ポート911a、弁座911b、及び、円筒形状のガイド部911cを有するとともに、第1継手管901及び第2継手管902が接続される。また、弁体920は、弁部920a、ガイド部911cの外周側に摺動可能に係合される有底円筒部920b、及び、一対の円形開口920fを有する。さらに、ステッピングモータ930は、弁体920と一体的に回転するマグネットロータ932を有する。
【0005】
これにより、特許文献1では、有底円筒部920bを、ガイド部911cに対して、回転方向のみに移動可能とする構成を採用することにより、ねじ送り部を省略し、駆動部における作動音の発生を抑制するものが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、図9(a),(b)に示すように、弁開状態において、弁本体910の一対の弁ポート911aと、弁部920aの一対の円形開口920fとの中心位置を同一直線上に、完全に一致させるものである。よって、第1ポート901aから流入した高速の流体が、減速されずに直接、弁ポート911aを介して、第2ポート902aへと流れるため、弁ポート911aを通過時に、発生する乱流に起因して、周囲に圧力変動が音波として伝播することにより、流体通過音が発生するものであった。このため、特許文献1においても、依然として、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-4743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、流体速度の減速手段を備えることにより、流体通過音を抑制し、静音性を向上させ得る電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、一端側に弁部が設けられる弁体、及び、前記弁体と一体的に回転するロータを有する回転子部と、前記弁部を収容する流路室、前記弁部と径方向に対向する弁座、及び、前記流路室と連通可能に径方向に延在する弁ポートを有する弁本体と、前記弁本体と接続し、前記回転子部の収容空間を画定するケースと、前記弁ポートを通過する流体の速度を減速させる減速手段と、を備え、前記弁本体は、軸線に沿って設ける前記弁体を、軸線方向に支持し、円周方向にガイドするガイド部と、前記流路室と直接連通する第1ポートと、前記弁ポートと連通する第2ポートと、を有し、前記弁部は、前記弁ポートを塞ぐシール部と、前記弁ポートと連通可能である流路部と、を有し、前記ロータの回転により、前記弁ポートと前記流路部との連通状態を変化させ、前記弁ポートを流れる流体の流量を制御するものであり、前記減速手段は、前記弁体又は前記ガイド部が、前記第1ポートと直接対向する壁面部を有する電動弁である。
【0010】
また、上記電動弁であって、前記ガイド部は、他端側に底部を有する、有底円筒形状に形成されたガイド部材からなり、前記弁体、及び、前記ガイド部の外周面は、互いに摺動可能に係合される摺動部を有するものとしてもよい。
【0011】
また、上記電動弁であって、前記弁体、及び、前記ガイド部の内周面は、互いに摺動可能に係合される摺動部を有するものとしてもよい。
【0012】
また、上記電動弁であって、前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、前記整流手段は、前記弁ポートを、軸線方向から見て、軸線に対して、前記第1ポートの反対側に配置するものとしてもよい。
【0013】
また、上記電動弁であって、前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、前記整流手段は、前記流路部が、軸線方向に沿って延在するとともに、前記弁ポートの流路面積と同程度の流路面積を有するものとしてもよい。
【0014】
また、上記電動弁であって、前記弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する整流手段をさらに備え、前記整流手段は、前記ガイド部において、前記弁ポートを、軸線方向から見て、軸線に対して、前記壁面部の反対側に配置するものとしてもよい。
【0015】
また、冷凍サイクルシステムであって、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含み、上記電動弁が、前記膨張弁として用いられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体速度の減速手段を備えることにより、流体通過音を抑制し、静音性を向上させ得る電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動弁を示す断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のIb-Ib断面拡大図、(c)は、(a)に示される破線Icで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図2図1に示される電動弁の弁開状態及び弁閉状態の説明図であり、(a)は、弁開状態における主要部拡大図、(b)は、(a)に示されるIIb-IIb線に沿った断面図、(c)は、弁閉状態における主要部拡大図、(d)は、(c)に示されるIId-IId線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図3】第1の実施形態のストッパ部変形例の説明図であり、(a)は、図2(a)に対応する断面図、(b)は、(a)に示されるIIIb-IIIb線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図4】本発明の第2の実施形態に係る電動弁の弁開状態における断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のIVb-IVb断面拡大図を、それぞれ表す。
図5図4に示される電動弁の弁閉状態における断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のVb-Vb断面拡大図を、それぞれ表す。
図6】第2の実施形態の第2継手管変形例の説明図(図4(a)に対応する断面図)である。
図7】第2の実施形態の第1継手管変形例の説明図(図4(a)に対応する断面図)である。
図8】本発明の冷凍サイクルシステム(冷房運転専用)を示す図である。
図9】従来技術に係る電動弁を示す断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のIXb-IXb断面拡大図を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図1から図8を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0019】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「左」、「右」、「上」、「下」とは、図1(a),(c)、図2(a),(c)、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6図7に示される方向を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端」及び「他端」とは、図面における「下端」及び「上端」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「減速手段」とは、「弁ポートを通過する流体の速度を減速させる手段」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「整流手段」とは、「弁ポートを通過する流体の流速分布を均一化する手段」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「流路部の流路面積が、弁ポートの流路面積と同程度」とは、「1<(流路部の流路面積/弁ポートの流路面積)≦2.5」の数値範囲を満たすものを示す。
【0020】
(第1の実施形態)
<電動弁の構成について>
図1を用いて、本発明の第1の実施形態に係る電動弁100aについて説明する。電動弁100aは、弁本体10A、弁体20A、ステッピングモータ30A、支持部材40Aから主に構成される。以下、電動弁100aのそれぞれの構成を順に説明する。
【0021】
ここで、詳細は後述するが、第1の実施形態における電動弁100aは、減速手段を採用することにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100aに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20aaや弁ポート11aなどの損傷の発生を抑制できる。加えて、第1の実施形態における電動弁100aは、整流手段をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0022】
弁本体10Aは、流路室13の一部を画定する椀状部材10と、軸線L上に沿って延在する略円筒形状を有し、椀状部材10の底面側に固定接続されるガイド部材11と、を備える。
【0023】
椀状部材10には、冷媒などの流体経路としての第1継手管1及び第2継手管2が、底面側に接続される。この第1継手管1は、第1ポート1aを介して、流路室13に直接連通される。また、第2継手管2は、ガイド部材11の一端部に当接され、第2ポート2a、ガイド部材11の内部流路14及び弁ポート11a(詳細は後述する)のそれぞれを介して、流路室13に連通される。第1継手管1及び第2継手管2は、例えば、銅やステンレスなどを材料として構成されており、椀状部材10に、ろう付け等により固着されている。また、図1(b)に示すように、椀状部材10には、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1継手管1の反対側に位置するとともに、流路室13内に向けて隆起する隆起部10aが形成される。
【0024】
ガイド部材11は、軸線L方向の略中央から一端側及び他端側で、構造が大きく異なる。まず、ガイド部材11における軸線L方向の略中央から一端側は、有底円筒形状を有しており、軸線L方向に延在する内部流路14と、図1(c)に示すように、内部流路14の他端側で、ガイド部材11を径方向に貫通する弁ポート11aと、弁ポート11aの周囲に形成される環状の弁座11bと、を有する。次に、ガイド部材11における軸線L方向の略中央から他端側は、中実形状を有しており、ガイド部材11の他端部には、平坦な形状を有する支持部11eが形成される。ここで、弁ポート11aは、図2(b),(d)に示すように、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1ポート1aの反対側に位置する。第1の実施形態において、軸線Lと直交する方向から見た、弁ポート11aの形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、矩形形状や、楕円形状や、任意の非対称形状など、様々な形状を採用することができる。
【0025】
第1の実施形態においては、椀状部材10とガイド部材11とを別体とするものであったが、これに限らず、例えば、図9(a)に示される従来の電動弁のように、椀状部材10とガイド部材11とを一体に形成するものであってもよい。
【0026】
弁体20Aは、軸線Lに沿って延在する部材である。この弁体20Aは、一端側に弁部20aが形成される。また、弁体20Aの内側には、軸線Lに沿って一端側へと延在する一端側有底円筒部20bと、軸線Lに沿って他端側へと延在する他端側有底円筒部20cと、を備える。一方、弁体20Aの外周側には、弁部20aの径方向外側から円盤状に突出するフランジ部20gと、このフランジ部20gから垂設されるとともに、弁部20aの径方向外側から突出し、弁体20Aが回転する際に、椀状部材10の隆起部10aと当接し得る突起部20eと、を備える。ここで、フランジ部20gは、図1(b)に示すように、軸線L方向からみて、第1ポート1aと重なる位置に配置されることから、詳細は後述するが、減速手段として機能する。また、弁体20Aの外周側には、詳細は後述するが、マグネットロータ32が嵌合及び当接される段部20dと、止め輪17を保持する環状溝20fと、を備える。
【0027】
一端側有底円筒部20bには、円周方向にガイドするガイド部材11が、径方向に僅かな隙間を有し、摺動可能な状態で挿入される。ここで、一端側有底円筒部20b、及び、ガイド部11dの外周面は、互いに摺動可能に係合される摺動部を有する。これにより、弁体20Aの回転状態の安定性を高めることができる。また、一端側有底円筒部20bにおいて、ガイド部材11の支持部11eと当接する他端部20baは、支持部11eと対応する平坦な形状を有する。この一端側有底円筒部20bには、詳細は後述するが、ガイド部材11の弁座11bと環状に摺接するシール部20aaと、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有し、軸線L方向の一端側に延在し開口する流路部15と、を有する。この流路部15は、図2(a)に示すように、一端部15aを、弁ポート11aに対して、軸線L方向の一端側に配置するとともに、流路部15の他端部15bを、弁ポート11aに対して、軸線L方向の他端側に配置する。なお、第1の実施形態において、ガイド部材11の支持部11eの形状を平坦としたが、これに限らず、例えば、半球面形状や凸形状としてもよい。これにより、ガイド部材11の支持部11eと、弁体20Aの他端部20baとの接触面積が極めて小さくなり、摺動抵抗が低減されることにより、弁体20Aが回転し易くなる。
【0028】
他端側有底円筒部20cには、弁体20Aを一端側に付勢する支持部材40Aが収容される。
【0029】
よって、弁部20aが、ガイド部材11に対して回転することにより、弁部20aの流路部15と、ガイド部材11の弁ポート11aとの連通状態を、弁開状態(図2(a),(b)参照)から弁閉状態(図2(c),(d)参照)(あるいは最小開度)の間で変化させ、流量の調節を行う。この際、図2(b),(d)に示すように、弁部20aの突起部20eが、ストッパ部として機能する隆起部10aに突き当たり、弁部20aの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32の回転も規制される。よって、弁部20aが弁開状態となる位置又は弁閉状態(あるいは最小開度)となる位置を超えて移動されることが規制されるため、再現性のある安定かつ確実な位置決めができる。
【0030】
ステッピングモータ30Aは、ケース31と、マグネットロータ32と、ステータコイル33と、を備える。
【0031】
ケース31は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、上方の端部が塞がれた略円筒形状に形成され、弁体20A及びマグネットロータ32を収容する収容空間16を画定する。ケース31の下方の開口側の端部は、椀状部材10の上端部に溶接等によって気密に固定される。
【0032】
マグネットロータ32は、外周部を多極に着磁された円筒状のマグネット部34と、マグネット部34の内周側にスポークを介して接続されるハブ35と、を一体に備える。マグネットロータ32は、ハブ35の一端部を、段部20dに当接させるとともに、ハブ35の他端部を、止め輪17により軸線L方向に付勢させるように挟持することにより、弁体20Aに固定される。これにより、回転子部は、マグネットロータ32及び弁体20Aを一体的に有し、ケース31内に軸線Lを中心に回転可能に設けられる。
【0033】
ステータコイル33は、ケース31の外周面に配設されており、ステータコイル33にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ32が回転される。
【0034】
このように、マグネットロータ32が回転されると、このマグネットロータ32とともに弁部20aが弁ポート11aに対して回転し、流路部15と弁ポート11aとの開度を変化させ、詳細は後述するが、第1継手管1から第2継手管2へ流れる流体の流量が制御される。
【0035】
支持部材40Aは、ケース31に対して、当接した状態で、回転可能に配置されるばね受け部41と、ばね受け部41と弁体20Aとの間に挟持され、弁体20Aを一端側に付勢する付勢ばね42と、を備える。
【0036】
<電動弁の動作について>
図2を用いて、電動弁100aの動作を説明する。ここでは、電動弁100aが用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。また、電動弁100aにおいて、第1継手管1は、高圧(一次側圧力)側に接続され、第2継手管2は、低圧(二次側圧力)側に接続される。
【0037】
まず、図2(b)に示すように、弁部20aが、マグネットロータ32により、反時計回り(矢印方向)に回転されることにより、弁部20aの突起部20eが、椀状部材10の隆起部10aに突き当たり、弁部20aの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32の回転も規制される。この際、流路部15が、弁ポート11aと対向する位置となるため、弁開状態となる。よって、流体は、図2(a)における実線矢印で示すように、高圧側の第1ポート1aから低圧側の第2ポート2aへと流れる。なお、流体経路において、圧力損失を生じさせないために、弁ポート11a前後に位置する、流路部15及び内部流路14におけるそれぞれの流路面積は、弁ポート11aの流路面積より大きくなるように設定される。また、流路部15の流路面積は、弁ポート11aの流路面積と同程度であり、1<(流路部15の流路面積/弁ポート11aの流路面積)≦2.5の数値範囲を満たすものである。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、弁部20aが、マグネットロータ32により、時計回り(矢印方向)に回転されることにより、弁部20aの突起部20eが、椀状部材10の隆起部10aに突き当たり、弁部20aの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32の回転も規制される。この際、流路部15が、弁座11bと対向するとともに、弁ポート11aがシール部20aaと対向する位置となるため、弁閉状態となる。よって、高圧側の第1ポート1aから低圧側の第2ポート2aへの流路が閉じられる。
【0039】
第1の実施形態における流路部15は、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有する。よって、第1の実施形態では、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態(図2(b)参照)及び弁閉状態(図2(d)参照)の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少し、その後、流路面積が漸減的に変化する、又は、流路面積が漸増的に変化し、その後、流路面積が急激に増加する。このように、第1の実施形態における電動弁100aでは、流路面積の急激な変化及び漸次的な変化の組み合わせによる流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁の機能を付加した開閉弁として用いることができる。
【0040】
第1の実施形態における流路部15は、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状であったが、これに限らない。例えば、第1の実施形態における流路部15が、軸線L方向から見て、略扇形形状を有する場合には、電動弁100aでは、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少又は増加するため、例えば、開閉弁として用いることができる。また、第1の実施形態における流路部15が、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有する場合には、電動弁100aでは、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、流路面積が漸減的又は漸増的に変化し、細かな流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁として用いることができる。
【0041】
<減速手段について>
第1の実施形態の電動弁100aにおいて、弁開状態では、従来の電動弁と同様に、第1ポート1aから高速の流体が流入するため、これに対して何ら対策を講じない場合には、高速の流体がそのまま、弁ポート11aへと流れ込むため、流体通過音が発生し、従来の問題点(電動弁からの騒音)が生じるおそれがあった。そこで、第1の実施形態では、この流体通過音を抑制するために、第1ポート1aから流入した高速の流体に対して、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものである。以下に、第1の実施形態における減速手段(壁面部に衝突)について、図2(a),(b)を用いて説明する。なお、図2(a)における流体経路(実線)及び図2(a),(b)における衝突部Ipは、説明の理解を助けるために誇張して示すものである。
【0042】
<減速手段(壁面部に衝突)について>
図2(a),(b)を用いて、第1の実施形態における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。弁開状態における流体は、図2(a)の実線矢印に示すように、第1ポート1aから、流路室13、流路部15、弁ポート11a、及び、内部流路14を順に介して、第2ポート2aへと流れる。ここで、減速手段(壁面部に衝突)は、第1ポート1aから流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1aと直接対向するフランジ部一端面20ga(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させる。これにより、弁ポート11aを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。
【0043】
<整流手段について>
ここで、流体の衝突が生じる衝突部Ipでは、高速の流体は強制的に減速される一方、衝突部Ipの周囲には、複数の3次元渦が生成される。仮に、この3次元渦が、局所的に大きな流速を有するとともに、減衰されずに、そのまま弁ポート11aに流れ込んでしまう場合には、不均一な流速分布により、流体通過音が発生するおそれがあった(以下、「懸念事項(不均一な流速分布)」という)。このため、第1の実施形態では、第1の整流手段(長い流体経路)及び第2の整流手段(狭い流路部)をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0044】
<第1の整流手段(長い流体経路)について>
第1の整流手段(長い流体経路)は、図2(a)に示すように、衝突部Ipから弁ポート11aまでの流体経路を長くすることであり、この長い流体経路における流体の粘性抵抗により、発生した3次元渦を減衰させ、流速分布を均一化することができる。具体的には、弁ポート11aが、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1ポート1aの反対側に配置されているため、衝突部Ipから、弁部外周壁20abの外周に沿って流れ、突起部20eにより、一端側方向に流れた後、流路室13の底面により、弁ポート11aに向けて流れる。なお、流路部15の一端部15aにおける流速は、減速されているため、仮に、摩耗粉や異物等(以下、「摩耗粉等」という)が流路室13の底面に堆積していたとしても、この摩耗粉等が巻き上げにより、流体経路に混入されることはない。
【0045】
<第2の整流手段(狭い流路部)について>
第2の整流手段(狭い流路部)は、図2(a)に示すように、流路室13より極めて小さく、かつ、弁ポート11aと同程度の流路面積を有する流路部15に、減衰させた3次元渦を通過させることであり、この狭い流路部15が整流格子の1つのように、減衰させた3次元渦を強制的に分断することにより、3次元渦を消滅させる。また、第2の整流手段(狭い流路部)は、流路部15の壁面近傍において、速度変化が急激な乱流境界層を有し、速度分布が台形形状となるため、速度分布が放物形状となる層流のハーゲン・ポアズイユ流れと比べ、流速分布を均一化することができる。
【0046】
以上より、第1の実施形態における電動弁100aは、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものであり、第1ポート1aから流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1aと直接対向するフランジ部一端面20ga(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させることにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100aに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20aaや弁ポート11aなどの損傷の発生を抑制できる。
【0047】
加えて、第1の実施形態における電動弁100aは、第1,2の整流手段(長い流体経路及び狭い流路部)を採用するものである。これにより、第1の実施形態では、衝突部Ipから弁ポート11aまでの流体経路を長くすることにより、衝突部Ipの周囲に発生する複数の3次元渦を、流体の粘性抵抗により減衰させる。さらに、減衰させた3次元渦が、比較的小さい流路面積を有する流路部15を通過することにより、強制的に3次元渦を消滅させ、流速分布を均一化することができる。この結果、第1の実施形態における電動弁100aは、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11aにおける流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0048】
(第1の実施形態のストッパ部変形例)
図3を用いて、第1の実施形態のストッパ部変形例について説明する。第1の実施形態のストッパ部変形例における第1継手管1’の接続様態は、第1継手管1’が、弁部20aのストッパ部として機能する位置に、軸線Lと直交する方向に延在する第1継手管1’を配置し、隆起部10aを省略する点で、第1の実施形態と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
具体的には、椀状部材10’には、第1継手管1’が、図3(a)に示すように、軸線Lと直交する方向から見て、突起部20eと重なる位置に配置されるとともに、図3(b)に示すように、軸線L方向から見て、回転する突起部20eと干渉する位置に配置される。この第1継手管1’が、回転する突起部20eと当接することにより、所望の回転角度に規制されるため、再現性のある安定かつ確実な位置決めができる。このように、第1継手管1’が、弁部20aのストッパ部として機能するため、隆起部10aを省略することができ、低コスト化を図ることができる。
【0050】
<減速手段について>
第1の実施形態のストッパ部変形例における電動弁100bは、弁ポート11aにおける流体通過音を抑制するために、第1の実施形態と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものである。これにより、弁ポート11aを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。以下に、第1の実施形態のストッパ部変形例における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。なお、図3(a)における流体経路(実線)及び図3(a),(b)における衝突部Ipは、説明の理解を助けるために誇張して示すものである。
【0051】
<減速手段(壁面部に衝突)について>
図3(a),(b)を用いて、第1の実施形態のストッパ部変形例における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。弁開状態における流体は、図3(a)の実線矢印に示すように、第1ポート1a’から、流路室13、流路部15、弁ポート11a、及び、内部流路14を順に介して、第2ポート2aへと流れる。ここで、減速手段(壁面部に衝突)は、第1ポート1a’から流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1a’と直接対向する弁部外周壁20ab及び突起部20e(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させる。これにより、弁ポート11aを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。
【0052】
<整流手段について>
ここで、流体の衝突が生じる衝突部Ipでは、高速の流体は強制的に減速される一方、特に、突起部20eの周囲には、複数の3次元渦が生成される。仮に、この3次元渦が、局所的に大きな流速を有するとともに、減衰されずに、そのまま弁ポート11aに流れ込んでしまう場合には、懸念事項(不均一な流速分布)が生じるおそれがあった。このため、第1の実施形態のストッパ部変形例では、第1の実施形態と同様に、第2の整流手段(狭い流路部)をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11aを通過する流体の流速分布を均一化し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0053】
<第2の整流手段(狭い流路部)について>
第2の整流手段(狭い流路部)は、図3(a)に示すように、流路室13より極めて小さく、かつ、弁ポート11aと同程度の流路面積を有する流路部15に、発生した3次元渦を通過させることであり、この狭い流路部15が整流格子の1つのように、減衰させた3次元渦を強制的に分断することにより、3次元渦を消滅させる。また、第2の整流手段(狭い流路部)は、流路部15の壁面近傍において、速度変化が急激な乱流境界層を有し、速度分布が台形形状となるため、速度分布が放物形状となる層流のハーゲン・ポアズイユ流れと比べ、流速分布を均一化することができる。
【0054】
以上より、第1の実施形態のストッパ部変形例における電動弁100bは、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものであり、第1の実施形態と同様に、第1ポート1aから流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1aと直接対向する弁部外周壁20ab(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させることにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100bに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20aaや弁ポート11aなどの損傷の発生を抑制できる。
【0055】
加えて、第1の実施形態のストッパ部変形例における電動弁100bは、第2の整流手段(狭い流路部)を採用するものであり、第1の実施形態と同様に、比較的小さい流路面積を有する流路部15を通過させることにより、強制的に3次元渦を消滅させ、流速分布を均一化することができる。この結果、第1の実施形態における電動弁100aは、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11aにおける流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
図4を用いて、第2の実施形態に係る電動弁100cについて説明する。第2の実施形態に係る電動弁100cは、主に、弁体20B及びガイド部11Bca,11Bcbの径方向の配置や、第1継手管1B及び第2継手管2Bの接続様態について、第1の実施形態の電動弁100aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と略同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
<電動弁の構成について>
図4に示すように、電動弁100cは、弁本体10B、弁体20B、ステッピングモータ30B、支持部材40Bから主に構成される。以下、電動弁100cのそれぞれの構成を順に説明する。
【0058】
ここで、詳細は後述するが、第2の実施形態における電動弁100cは、第1の実施形態と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用することにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100cに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20Baa(図5(b)参照)や弁ポート11Baなどの損傷の発生を抑制できる。加えて、第2の実施形態における電動弁100cは、第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0059】
弁本体10Bは、流路室13の一部を画定する椀状部材10Baと、軸線L上に沿って延在する概略円管形状を有し、椀状部材10Baの底面側に固定接続されるガイド部材11Bと、ガイド部材11Bに一体成形された円環形状からなる下蓋12と、を備える。
【0060】
椀状部材10Baには、冷媒などの流体経路としての第1継手管1Bが側面側に、第2継手管2Bが底面側に、それぞれ接続される。この第1継手管1Bは、第1ポート1Baを介して、流路室13に直接連通される。また、第2継手管2Bは、第2ポート2Ba、ガイド部材11Bの内部流路14及び弁ポート11Ba(詳細は後述する)のそれぞれを介して、流路室13に連通される。第1継手管1B及び第2継手管2Bは、例えば、銅やステンレスなどを材料として構成されており、椀状部材10に、ろう付け等により固着されている。
【0061】
ガイド部材11Bには、軸線Lに沿って、一端側から他端側まで開口する挿通孔が形成される。この挿通孔には、他端側から一端側に向かって、大径ガイド部11Bcb、小径ガイド部11Bcaがそれぞれ設けられる。この小径ガイド部11Bcaは、大径ガイド部11Bcbより内径が小さく設定され、一端側の内側領域には、軸線L方向に延在する内部流路14が画定される。また、大径ガイド部11Bcbと小径ガイド部11Bcaとの境界には、平坦な形状を有する環状の支持部11Beが形成される。さらに、ガイド部材11Bには、図4(a)に示すように、第1ポート1Baの同心上、かつ、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1継手管1Bの反対側に位置するとともに、内部流路14と流路室13との間を径方向に貫通する弁ポート11Baと、弁ポート11Baの周囲に形成される環状の弁座11Bb(図4(b)参照)と、が形成される。加えて、ガイド部材11Bの他端側外周面の一部には、径方向外側に延在する引出し部11Bgが形成される。
【0062】
下蓋12は、ガイド部材11Bに接合される内周部と、椀状部材10Baの他端部及びケース31Bの一端部にそれぞれ接合される外周部と、を有する。
【0063】
第2の実施形態において、軸線Lと直交する方向から見た、弁ポート11Baの形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、矩形形状や、楕円形状や、任意の非対称形状など、様々な形状を採用することができる。また、第2の実施形態においては、椀状部材10Baとガイド部材11Bとを別体とするものであったが、これに限らず、例えば、図9(a)に示される従来の電動弁のように、椀状部材10Baとガイド部材11Bとを一体に形成するものであってもよい。
【0064】
弁体20Bは、軸線Lに沿って延在する部材である。この弁体20Bの一端側は、ガイド部材11Bの挿通孔に挿入されており、一端側から他端側に向かって順に、弁部20Ba、小径ガイド軸部20Bg、大径ガイド軸部20Bhが、階段状に順次拡径して形成され、小径ガイド軸部20Bgと大径ガイド軸部20Bhとの境界には、平坦な形状を有する環状の一端側段部20Biが形成される。この弁部20Baには、図4(b)に示すように、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有し、軸線L方向の一端側に延在し開口する流路部15Bを有する。また、小径ガイド軸部20Bg、一端側段部20Bi及び大径ガイド軸部20Bhは、それぞれ、ガイド部材11Bの小径ガイド部11Bca、支持部11Be及び大径ガイド部11Bcbに、それぞれ摺接可能に係合される摺動部を有する。これにより、第2の実施形態の弁体20Bは、第1の実施形態の弁体20Aと比べ、径方向の大きさを比較的小さくし、軽量化を図ることができるため、ステッピングモータ30Bにおける省エネ化を向上させることができる。さらに、弁体20Bの他端側には、マグネットロータ32Bのハブ35Bに固定される他端側段部20Bka、軸線Lに沿って他端側へと延在し開口する他端側有底円筒部20Bcと、を備える。この他端側有底円筒部20Bcには、弁体20Bを一端側に付勢する支持部材40Bが収容される。
【0065】
よって、弁部20Baが、小径ガイド部11Bcaに対して回転することにより、弁部20Baの流路部15Bと、小径ガイド部11Bcaの弁ポート11Baとの連通状態を、弁開状態(図4(a),(b)参照)から弁閉状態(図5(a),(b)参照)(あるいは最小開度)の間で変化させ、流量の調節を行う。この際、詳細は後述するが、図5(a)に示すように、弁体20Bの円板部20Bkから垂設された突起部20Bkbが、ストッパ部として機能するガイド部材11Bの引出し部11Bgに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。よって、弁部20Baが弁開状態となる位置又は弁閉状態(あるいは最小開度)となる位置を超えて移動されることが規制されるため、再現性のある安定かつ確実な位置決めができる。
【0066】
ステッピングモータ30Bは、ケース31Bと、マグネットロータ32Bと、ステータコイル33Bと、を備える。なお、ステータコイル33Bは、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0067】
ケース31Bは、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、上方の端部が塞がれた略円筒形状に形成され、弁体20B及びマグネットロータ32Bを収容する収容空間16を画定する。ケース31Bの下方の開口側の端部は、下蓋12の外周部に溶接等によって気密に固定される。
【0068】
マグネットロータ32Bは、円筒状のマグネット部34Bと、マグネット部34Bの内周側に接続される円筒形状のハブ35Bと、を一体に備える。マグネットロータ32Bのハブ35Bの内側には、弁体20Bが軸線L方向の他端側に向けて嵌挿され、弁体20Bの他端側段部20Bkaを、ハブ35Bの一端部に当接させ、後述の支持部材40Bのブッシュ43を他端側有底円筒部20Bcに組み込み、ハブ35Bの他端部に当接させた後、ハブ35Bとの溶着等により、回転子部であるマグネットロータ32B及び弁体20Bは一体的に固定される。これにより、回転子部は、ケース31B内に軸線Lを中心に回転可能に設けられる。
【0069】
このように、マグネットロータ32Bが回転されると、このマグネットロータ32Bとともに弁部20Baが弁ポート11Baに対して回転し、流路部15Bと弁ポート11Baとの開度を変化させ、詳細は後述するが、第1継手管1Bから第2継手管2Bへ流れる流体の流量が制御される。
【0070】
支持部材40Bは、ケース31Bに対して、当接した状態で、回転可能に配置されるばね受け部41と、他端側有底円筒部20Bc及びハブ35Bに固定されるブッシュ43と、ばね受け部41とブッシュ43との間に挟持され、弁体20Bを一端側に付勢する付勢ばね42と、を備える。
【0071】
<電動弁の動作について>
図4及び図5を用いて、電動弁100cの動作を説明する。ここでは、電動弁100cが用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。また、電動弁100cにおいて、第1継手管1Bは、高圧(一次側圧力)側に接続され、第2継手管2Bは、低圧(二次側圧力)側に接続される。
【0072】
まず、図4(b)に示すように、弁部20Baが、マグネットロータ32Bにより、反時計回りに回転されることにより、不図示であるが、弁体20Bの突起部20Bkbが、ガイド部材11Bの引出し部11Bgに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。この際、流路部15Bが、弁ポート11Baと対向する位置となるため、弁開状態となる。よって、流体は、図4(a),(b)における実線矢印で示すように、高圧側の第1ポート1Baから低圧側の第2ポート2Baへと流れる。なお、流体経路において、圧力損失を生じさせないために、弁ポート11Ba前後に位置する、流路室13及び流路部15Bにおけるそれぞれの流路面積は、弁ポート11Baの流路面積より大きくなるように設定される。
【0073】
次に、図5(b)に示すように、弁部20Baが、マグネットロータ32Bにより、時計回りに回転されることにより、図5(a)に示すように、弁体20Bの突起部20Bkbが、ガイド部材11Bの引出し部11Bgに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。この際、流路部15Bが、弁座11Bbと対向するとともに、弁ポート11Baがシール部20Baaと対向する位置となるため、弁閉状態となる。よって、高圧側の第1ポート1Baから低圧側の第2ポート2Baへの流路が閉じられる。
【0074】
第2の実施形態における流路部15Bは、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有する。よって、第2の実施形態における電動弁100cでは、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、流路面積が漸減的又は漸増的に変化し、細かな流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁として用いることができる。
【0075】
第2の実施形態における流路部15Bは、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状であったが、これに限らない。例えば、第2の実施形態における流路部15Bが、軸線L方向から見て、略扇形形状を有する場合には、電動弁100cでは、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少又は増加するため、例えば、開閉弁として用いることができる。また、第2の実施形態における流路部15Bが、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有する場合には、電動弁100cでは、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少し、その後、流路面積が漸減的に変化する、又は、流路面積が漸増的に変化し、その後、流路面積が急激に増加するため、例えば、流量調整弁の機能を付加した開閉弁として用いることができる。
【0076】
<減速手段について>
第2の実施形態における電動弁100cは、弁ポート11Baにおける流体通過音を抑制するために、第1の実施形態と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものである。これにより、弁ポート11Baを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。以下に、第2の実施形態における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。なお、図4(a),(b)における流体経路(実線)及び衝突部Ipは、説明の理解を助けるために誇張して示すものである。
【0077】
<減速手段(壁面部に衝突)について>
図4(a),(b)を用いて、第2の実施形態における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。弁開状態における流体は、図4(a)の実線矢印に示すように、第1ポート1Baから、流路室13、弁ポート11Ba、流路部15、及び、内部流路14を順に介して、第2ポート2Baへと流れる。ここで、減速手段(壁面部に衝突)は、第1ポート1Baから流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1Baと直接対向するガイド部材外周壁11Bf(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させる。これにより、弁ポート11Baを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。
【0078】
<整流手段について>
ここで、流体の衝突が生じる衝突部Ip(いわゆる、上流側よどみ点)では、高速の流体は強制的に減速される一方、後流側では、カルマン渦からなる2次元縦渦が交互に生成される。この2次元縦渦は、局所的に大きな流速を有するとともに、減衰されずに、そのまま弁ポート11Baに流れ込んでしまう場合には、懸念事項(不均一な流速分布)が生じるおそれがあった。このため、第2の実施形態では、第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0079】
<第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)について>
第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)は、図4(b)に示すように、ガイド部材11Bにおいて、弁ポート11Baを、下流側よどみ点に配置することであり、この弁ポート11Baの配置により、弁ポート11Baへの流れは、2次元縦渦の影響を受けずに、また、流速分布を均一化するものである。具体的には、第1ポート1Baから高速の流体が、ガイド部材外周壁11Bf(壁面部)に衝突することにより、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、ガイド部材外周壁11Bfにおける衝突部Ip(上流側よどみ点)とは反対側に、下流側よどみ点が形成される。ここで、ガイド部材外周壁11Bfから脱落する2次元縦渦は、弁ポート11Baより、衝突部Ip側にある剥離位置から脱落する。よって、弁ポート11Baを下流側よどみ点に設けることにより、弁ポート11Baへの流れは、2次元縦渦の影響を受けず、また、下流側よどみ点における滞留により、流速分布を均一化することができる。
【0080】
以上より、第2の実施形態における電動弁100cは、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものであり、第1の実施形態と同様に、第1ポート1Baから流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1Baと直接対向するガイド部材外周壁11Bf(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させることにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100cに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20Baaや弁ポート11Baなどの損傷の発生を抑制できる。
【0081】
加えて、第2の実施形態における電動弁100cは、第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)を採用するものであり、弁ポート11Baは、下流側よどみ点に位置するため、2次元縦渦の影響を受けず、また、流速分布を均一化することができる。この結果、第2の実施形態における電動弁100cは、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11Baにおける流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0082】
(第2の実施形態の第2継手管変形例)
図6を用いて、第2の実施形態の第2継手管変形例について説明する。第2の実施形態の第2継手管変形例における第2継手管2B’の接続様態は、弁本体10B’に対して、軸線Lと直交する方向に延在するように第2継手管2B’を配置する点で、第2の実施形態と相違するが、その他の構成は、第2の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
具体的には、椀状部材10Ba’の底面側には、ガイド部材11Bが嵌合固定される接続室18が形成される。この接続室18から径方向に第2継手管2B’が接続される。このように、電動弁100dにおいて、第2継手管2B’を軸線Lと直交する方向に延在するように配置することにより、軸線L方向の低背化を図ることができる。
【0084】
<減速手段及び整流手段について>
第2の実施形態の第2継手管変形例における電動弁100dは、弁ポート11Baにおける流体通過音を抑制するために、第2の実施形態と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものである。これにより、弁ポート11Baを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、第2の実施形態の第2継手管変形例における電動弁100dは、第2の実施形態と同様に、第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)をさらに採用することにより、弁ポート11Baを通過する流体の流速分布を均一化し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。なお、図6における流体経路(実線)及び衝突部Ipは、説明の理解を助けるために誇張して示すものである。ここで、減速手段(壁面部に衝突)及び第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)についての説明は、重複するため省略する。
【0085】
以上より、第2の実施形態の第2継手管変形例における電動弁100dは、第2の実施形態と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用することにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100dに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部20Baaや弁ポート11Baなどの損傷の発生を抑制できる。
【0086】
加えて、第2の実施形態の第2継手管変形例における電動弁100dは、第2の実施形態と同様に、第3の整流手段(弁ポートを下流側よどみ点に配置)を採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11Baにおける流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0087】
(第2の実施形態の第1継手管変形例)
図7を用いて、第2の実施形態の第1継手管変形例について説明する。第2の実施形態の第1継手管変形例における第1継手管1B’の接続様態は、弁本体10B’’に対して、軸線L方向に延在する第1継手管1B’を配置し、ガイド部材11B’に第1ポート1Ba’と直接対向する鍔部一端面11Bh(壁面部)を有する点で、第2の実施形態と相違するが、その他の構成は、第2の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
具体的には、椀状部材10Ba’’の底面側には、軸線L方向に延在する第1継手管1B’が接続される。このように、電動弁100eにおいて、第1継手管1B’を軸線L方向に延在するように配置することにより、軸線L方向から見た、電動弁100eの設置面積の省スペース化を図ることができる。
【0089】
<減速手段について>
第2の実施形態の第1継手管変形例における電動弁100eは、弁ポート11Baにおける流体通過音を抑制するために、第1の実施形態(図2(a)参照)と同様に、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものである。これにより、弁ポート11Baを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。以下に、第2の実施形態の第1継手管変形例における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。なお、図7における流体経路(実線)及び衝突部Ipは、説明の理解を助けるために誇張して示すものである。
【0090】
<減速手段(壁面部に衝突)について>
第2の実施形態の第1継手管変形例における減速手段(壁面部に衝突)を説明する。弁開状態における流体は、実線矢印に示すように、第1ポート1Ba’から、流路室13、弁ポート11Ba、流路部15B、及び、内部流路14を順に介して、第2ポート2Baへと流れる。ここで、減速手段(壁面部に衝突)は、第1ポート1Ba’から流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1Ba’と直接対向する鍔部一端面11Bh(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させる。これにより、弁ポート11Baを通過する流体が、減速された流れ状態となるため、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。
【0091】
<整流手段について>
ここで、流体の衝突が生じる衝突部Ipでは、高速の流体は強制的に減速される一方、衝突部Ipの周囲には、複数の3次元渦が生成される。仮に、この3次元渦が、局所的に大きな流速を有するとともに、減衰されずに、そのまま弁ポート11Baに流れ込んでしまう場合には、懸念事項(不均一な流速分布)が生じるおそれがあった。このため、第2の実施形態の第1継手管変形例では、第1の実施形態(図2(a)参照)と同様に、第1の整流手段(長い流体経路)をさらに採用することにより、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0092】
<第1の整流手段(長い流体経路)について>
第1の整流手段(長い流体経路)は、図7に示すように、衝突部Ipから弁ポート11Baまでの流体経路を長くすることであり、この長い流体経路における流体の粘性抵抗により、発生した3次元渦を減衰させ、流速分布を均一化することができる。具体的には、弁ポート11aは、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1ポート1Ba’の反対側に位置する。よって、衝突部Ipから、ガイド部材外周壁11Bfに沿って、少なくとも半周流れた後、弁ポート11Baへと流れる。
【0093】
以上より、第2実施形態の第1継手管変形例における電動弁100eは、減速手段(壁面部に衝突)を採用するものであり、第1の実施形態と同様に、第1ポート1Ba’から流路室13に流入する高速の流体を、第1ポート1Ba’と直接対向する鍔部一端面11Bh(壁面部)に衝突させ、強制的に減速させることにより、従来の問題点(電動弁からの騒音)を解消、つまり、流体通過音を抑制し、静音性を向上させることができる。また、仮に、流体接続される他の機器から、電動弁100eに高速の異物が流入したとしても、異物自体の速度を強制的に減速できるため、シール部(不図示)や弁ポート11Baなどの損傷の発生を抑制できる。
【0094】
加えて、第2実施形態の第1継手管変形例における電動弁100eは、第1の整流手段(長い流体経路)を採用するものである。これにより、第2実施形態の第1継手管変形例では、第1の実施形態と同様に、衝突部Ipから弁ポート11Baまでの流体経路を長くすることにより、衝突部Ipの周囲に発生する複数の3次元渦を、流体の粘性抵抗により減衰させることにより、流速分布を均一化することができる。この結果、第2実施形態の第1継手管変形例における電動弁100eは、懸念事項(不均一な流速分布)を解消し、弁ポート11Baにおける流体通過音をさらに抑制し、静音性を一層向上させることができる。
【0095】
<冷凍サイクルシステムについて>
図8を用いて、本発明の冷凍サイクルシステム(冷房運転専用)を説明する。冷凍サイクルシステムは、第1から2の実施形態の電動弁100a~100eを用いた膨張弁100と、室外ユニットに搭載された室外熱交換器200と、室内ユニットに搭載された室内熱交換器300と、圧縮機500と、を備える。ここで、膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、及び、圧縮機500は、それぞれ導管によって接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略している。
【0096】
冷房運転時(図中の実線矢印参照)において、圧縮機500で圧縮された冷媒は、室外熱交換器200、膨張弁100、室内熱交換器300、そして、圧縮機500の順に循環され、室外熱交換器200が凝縮器として機能し、室内熱交換器300は蒸発器として機能する。よって、膨張弁100は、室外熱交換器200から流入する液冷媒を、減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御することができる。
【0097】
なお、本発明は、第1から2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、第1から2の実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100a~100eを例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0098】
<その他>
本実施形態の電動弁100a~100eは、例示する冷凍サイクルだけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0099】
100a,100b,100c,100d,100e 電動弁
1,1’,1B,1B’ 第1継手管
1a,1a’,1Ba,1Ba’ 第1ポート
2,2B,2B’ 第2継手管
2a,2Ba,2Ba’ 第2ポート
10A,10B,10B’,10B’’ 弁本体
10,10’,10Ba,10Ba’,10Ba’’ 椀状部材
10a 隆起部
11,11B,11B’ ガイド部材
11a,11Ba 弁ポート
11b,11Bb 弁座
11d ガイド部
11e,11Be 支持部
11Bca 小径ガイド部(ガイド部)
11Bcb 大径ガイド部(ガイド部)
11Bf ガイド部材外周壁(壁面部)
11Bg 引出し部
11Bh 鍔部一端面(壁面部)
12 下蓋
13 流路室
14 内部流路
15,15B 流路部
15a 一端部
15b 他端部
16 収容空間
17 止め輪
18 接続室
20A,20B 弁体
20a,20Ba 弁部
20aa,20Baa シール部
20ab 弁部外周壁(壁面部)
20b 一端側有底円筒部
20ba 他端部
20c,20Bc 他端側有底円筒部
20d 段部
20e 突起部
20f 環状溝
20g フランジ部
20ga フランジ部一端面(壁面部)
20Bg 小径ガイド軸部
20Bh 大径ガイド軸部
20Bi 一端側段部
20Bk 円板部
20Bka 他端側段部
20Bkb 突起部
30A,30B ステッピングモータ
31,31B ケース
32,32B マグネットロータ
33,33B ステータコイル
34,34B マグネット部
35,35B ハブ
40A,40B 支持部材
41 ばね受け部
42 付勢ばね
43 ブッシュ
100 膨張弁
200 室外熱交換器
300 室内熱交換器
400 流路切換弁
500 圧縮機

Ip 衝突部
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9