(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157273
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】運転条件修正方法、運転条件修正装置、成形機及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071532
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】横田 工
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AM32
4F206JA07
4F206JL09
4F206JM13
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP17
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】学習器による逆提案を除外し、運転条件をより適切に修正することができる運転条件修正方法を提供する。
【解決手段】産業機械の運転条件を修正する運転条件修正方法であって、産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、測定データ及び検査結果データと、運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した測定データ及び検査結果データに基づいて運転条件の修正量を算出するステップと、複数の学習器を用いて算出された複数の修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、修正方向が適切と判定された一又は複数の修正量に基づいて運転条件を修正するステップとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の運転条件を修正する運転条件修正方法であって、
前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、
前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出するステップと、
前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、
前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正するステップと
を備える運転条件修正方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、
前記修正方向の多数決によって前記修正量の適否を判定する
請求項1に記載の運転条件修正方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、
前記検査結果データが示す不良の種類と、前記運転条件の適切な修正方向とを対応付けたテーブルを、取得した前記検査結果データをキーにして参照することにより、前記修正量の適否を判定する
請求項1に記載の運転条件修正方法。
【請求項4】
前記産業機械は射出成形機であり、
前記テーブルは、
樹脂粘度に起因するバリを示すデータと、保圧切替位置の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が負であることを示すデータとを対応付けて含む
請求項3に記載の運転条件修正方法。
【請求項5】
前記産業機械は射出成形機であり、
前記テーブルは、
樹脂粘度に起因するショートを示すデータと、保圧切替位置の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が正であることを示すデータとを対応付けて含む
請求項3に記載の運転条件修正方法。
【請求項6】
前記修正量が入力された場合、該修正量の適否を示した適否データを出力する適否判定モデルに、算出された前記修正量を入力することによって、前記修正量の適否を判定する
請求項1に記載の運転条件修正方法。
【請求項7】
前記複数の学習器の少なくとも一つは、Adam、モーメンタム、又はAdagradを用いて前記測定データ及び前記検査結果データと、前記修正量との関係を学習してある
請求項1に記載の運転条件修正方法。
【請求項8】
前記修正方向が適切と判定された複数の前記修正量の平均値を算出するステップを備え、
算出された前記平均値に基づいて前記運転条件を修正する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の運転条件修正方法。
【請求項9】
産業機械の運転条件を修正する運転条件修正装置であって、
前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得する取得部と、
前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習しており、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出する複数の学習器と、
前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定部と、
前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正する修正部と
を備える運転条件修正装置。
【請求項10】
請求項9に記載の運転条件修正装置を備える成形機。
【請求項11】
産業機械の運転条件を修正する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、
前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出するステップと、
前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、
前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正するステップと
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転条件修正方法、運転条件修正装置、成形機及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習器を用いて、成形品が良品に近づくよう射出成形機の成形条件を修正する成形機システムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、学習器が提案する成形条件の修正精度は100%ではないため、学習器が逆提案を行う場合があり、成形条件が不適切に修正されることがあるという問題があった。逆提案とは、成形品の不良を悪化させる提案である。
この問題は射出成形機に限るものではなく、学習器を用いて運転条件を修正するその他の産業機械も同様の問題を有している。
【0005】
本開示の目的は、学習器による逆提案を除外し、運転条件をより適切に修正することができる運転条件修正方法、運転条件修正装置、成形機及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る運転条件修正方法は、産業機械の運転条件を修正する運転条件修正方法であって、前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出するステップと、前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正するステップとを備える。
【0007】
本開示の一側面に係る運転条件修正装置は、産業機械の運転条件を修正する運転条件修正装置であって、前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得する取得部と、前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習しており、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出する複数の学習器と、前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定部と、前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正する修正部とを備える。
【0008】
本開示の一側面に係る成形機は、上記運転条件修正装置を備える。
【0009】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラムは、産業機械の運転条件を修正する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出するステップと、前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、学習器による逆提案を除外し、運転条件をより適切に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態1に係る射出成形機の構成例を説明する模式図である。
【
図2】本実施形態1に係る射出成形機の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態1に係る運転条件修正処理方法を示す概念図である。
【
図4】本実施形態1に係る運転条件修正処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態2に係る射出成形機の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態2に係る方向定義テーブルを示す概念図である。
【
図7】本実施形態2に係る運転条件修正処理方法を示す概念図である。
【
図8】本実施形態2に係る運転条件修正処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態3に係る射出成形機の構成例を示すブロック図である。
【
図10】本実施形態3に係る適否判定モデルを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る運転条件修正方法、運転条件修正装置、成形機及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る射出成形機101の構成例を示す模式図である。本本実施形態に係る射出成形機101は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を可塑化して射出する射出装置3と、制御装置4と、検査装置5とを備える。型締装置2及び射出装置3は成形機本体1を構成している。制御装置4は、本実施形態に係る運転条件修正装置として機能する。
【0014】
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。
【0015】
型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構26は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型21aと、可動金型21bが設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
【0016】
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。スクリュ32は駆動機構33によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構33は、スクリュ32を回転方向に駆動する回転モータと、スクリュ32を軸方向に駆動するモータなどから構成されている。なお、
図1に示す駆動機構33は、カバーにより覆われているため内部構成が図示されていない。
【0017】
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ34が設けられている。また、射出成形機101は、射出装置3を前後方向(
図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置35を備える。ノズルタッチ装置35を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが固定盤22の密着部にタッチするように構成されている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る射出成形機101の構成例を示すブロック図である。制御装置4は、型締装置2及び射出装置3の動作を制御するコンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ41、記憶部42、制御信号出力部43、第1取得部44と、第2取得部45、操作パネル46を備える。プロセッサ41は、機能部として複数の学習器40を有する。なお、複数の学習器40の一部をハードウェア的に実現しても良い。
【0019】
制御装置4は、射出成形機101(
図1参照)の成形条件(運転条件)を修正する装置である。なお、制御装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0020】
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)などの演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの内部記憶装置、I/O端子、計時部などを有する。プロセッサ41は、後述の記憶部42が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)42aを実行することにより、本実施形態に係る成形条件修正方法を実施する。なお、制御装置4の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0021】
記憶部42は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。記憶部42は、射出成形機101及び成形品の状態に応じた成形条件の修正方法を機械学習し、運転条件修正処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム42aを記憶している。記憶部42は、複数の学習器40それぞれを特徴付ける各種係数を記憶する。
【0022】
本実施形態に係るコンピュータプログラム42aは、記録媒体49にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部42は、読出装置によって記録媒体49から読み出されたコンピュータプログラム42aを記憶する。記録媒体49はフラッシュメモリなどの半導体メモリである。また、記録媒体49はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)などの光ディスクでも良い。更に、記録媒体49は、フレキシブルディスク、ハードディスクなどの磁気ディスク、磁気光ディスクなどであっても良い。
【0023】
更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態に係るコンピュータプログラム42aをダウンロードし、記憶部42に記憶させても良い。
【0024】
複数の学習器40は、射出成形機101に設定される成形条件の修正量を、異なるアルゴリズムを用いて学習した複数のモデルである。複数の学習器40は、いずれも測定データ及び検査結果データが入力された場合に、成形条件の修正量を出力するモデルである。
【0025】
例えば、複数の学習器40には、強化学習モデル、教師あり学習した学習モデル、勾配法により学習した回帰モデルなどが含まれる。複数の学習器40には、同じアルゴリズムを用いて異なる学習データを学習させた複数のモデルを、異なる複数の学習器40として用いてもよい。なお、学習器40の種類は上記のものに限定されるものではない。例えば、複数の学習器40は、任意のニューラルネットワークモデル、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)などのアルゴリズムを用いて構成してもよい。
【0026】
学習器40が出力する修正量は、一般的に複数の設定パラメータの変更値からなるベクトル量である。成形品のバリ、ショートなどの成形不良に関連する成形条件を修正するための修正量は、例えば(保圧圧力の変更値,保圧切替位置の変更値,射出速度の変更値)のように表される。以下、修正量のベクトルの方向を修正方向と呼ぶ。
【0027】
複数の学習器40から出力される修正量には、一般的に逆提案に係る修正量が含まれる。逆提案に係る修正量には、正しい修正量の変更値と正負が逆の変更値が含まれる。後述するように、本実施形態に係るプロセッサ41は、逆提案に係る修正量を除外し、適正な修正方向の修正量を選択し、成形条件を修正する処理を実行することにより、運転条件を適切に修正することができる。
【0028】
制御信号出力部43は、成形条件に基づくプロセッサ41の制御に従って射出成形機101の動作を制御するための制御信号を成形機本体1へ出力する。
【0029】
操作パネル46は、射出成形機101の成形条件などを設定し、射出成形機101の動作を操作するためのインタフェースである。操作パネル46は、表示パネル及び操作装置を備える。表示パネルは、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの表示装置であり、プロセッサ41の制御に従って、射出成形機101の成形条件の設定を受け付けるための受付画面を表示したり、射出成形機101の状態、本実施形態に係る成形条件修正方法の実施状況を表示したりする。操作装置は、射出成形機101の成形条件を入力及び修正するための入力装置であり、操作ボタン、タッチパネルなどを有する。操作装置は受け付けた成形条件を示すデータをプロセッサ41に与える。
【0030】
射出成形機101には、各種の成形条件に係る設定パラメータが設定される。成形条件には、射出開始位置、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度(ヒータ温度)、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力(射出圧力)、射出ストロークが含まれる。また成形条件には、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルクが含まれる。更に成形条件には、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間が含まれる。更に成形条件には、冷却時間,スクリュ回転数,金型開閉速度,突き出し速度,突き出し回数が含まれる。
【0031】
これらの設定パラメータが設定された射出成形機101は、当該設定パラメータに従って動作する。上記した成形条件の内、特に保圧圧力、保圧切替位置、射出速度などの設定パラメータは、成形品のバリ、ショートなどの成形不良に関連するものである。本実施形態では、学習器40を用いて、保圧圧力[Mpa]、保圧切替位置[mm]、射出速度[mm/秒]を修正する例を説明する。
【0032】
第1取得部44は、射出成形機101の状態を測定して得られる測定データを取得する入力回路である。
【0033】
型締装置2及び射出装置3(
図1参照)には、射出成形機101の状態を示す情報であって、成形機本体1の動作を制御するために必要な物理量を検出する一又は複数のセンサ1aが設けられている。センサ1aは第1取得部44に接続されている。物理量には、例えば電圧、電流、温度、湿度、トルク、圧力などの力、可動部の速度、加速度、回転角、位置、流体の流量、速度などが含まれる。センサ1aは、例えば、電流センサ、電圧センサ、温度センサ、湿度センサ、トルクセンサ、圧力センサ、速度センサ、加速度センサ、回転角度センサ、測位センサ、流量センサ、流速計などである。センサ1aは物理量を示す測定信号を制御装置4へ出力する。センサ1aから出力された測定信号は第1取得部44に入力し、第1取得部44は測定信号を測定データとして取得する。
【0034】
測定データは、射出成形機101の運転状況を示すデータであり、例えば、サイクル時間[秒]、射出時間[秒]、保圧時間[秒]、保圧切替位置[mm]、保圧切替速度[mm/秒]、保圧切替圧力[MPa]、クッション位置[mm]、保圧完了位置[mm]、計量時間[秒]、背圧[MPa]、計量完了位置[mm]などが含まれる。なお、各位置は、スクリュ32の後退方向(
図1中右方向)を正とする。
【0035】
第2取得部45は、射出成形機101にて成形された成形品の状態を検査して得られる検査結果データを取得する入力回路である。第2取得部45には検査装置5が接続されている。検査装置5は、成形品の状態を検出するカメラ、測距センサ、重量計などであり、成形品の状態に係る物理量を測定し、測定して得た物理量データに基づいて、成形品の状態を示す検査結果データを得る。検査結果データは、例えば、成形品のバリ面積、ショート面積を示すデータである。また、検査結果データは、樹脂粘度に起因するバリ、樹脂粘度に起因するショートを示すデータである。
【0036】
図3は、本実施形態1に係る運転条件修正処理方法を示す概念図である。
図3に示すようにプロセッサ41は、複数種類の学習器40に加え、機能部としての逆提案判定処理部41aと、成形条件設定処理部41bとを備える。
【0037】
複数の学習器40には、それぞれ、第1取得部44が取得した測定データと、第2取得部45が取得した検査結果データとが入力される。複数の学習器40は、異なるアルゴリズム1,2,…Nによって動作するモデルを示している。複数の学習器40は、入力された測定データ及び検査結果データに基づいて、成形条件の修正量を算出する。
【0038】
逆提案判定処理部41aは、複数の学習器40からそれぞれ出力された修正量が逆提案に係る修正量であるか否かを判定する機能部である。例えば、逆提案判定処理部41aは、多数決で、各学習器40から出力された修正量が逆提案に係る修正量であるか否かを判定する。逆提案判定処理部41aは、逆提案と判定された修正量を除外し、正しい修正方向を有する修正量を選択する。
【0039】
<判定方法の例1>
例1に係る逆提案判定処理部41aは、複数の設定パラメータ毎に、複数の学習器40から出力された正の変更値の数と、負の変更値の数とを特定し、個数が多い方の変更値を選択し、少数の変更値を除外する。
例えば、5個の学習器40から修正量が出力される場合、第1の設定パラメータを修正するための正の変更値が3つ、負の変更値が2つの場合、逆提案判定処理部41aは、正の変更値を選択する。第2の設定パラメータを修正するための正の変更値が1つ、負の変更値が4つの場合、逆提案判定処理部41aは、負の変更値を選択する。
<判定方法の例2>
例2では、逆提案の修正量を構成する複数の変更値の正負と、正しい修正量を構成する複数の変更値の正負とが全て逆である場合を想定する。つまり、複数の学習器40から出力される複数の修正量が、正しい修正量と、その修正量と正負が真逆の修正量とを含む場合を考える。この場合、修正量を構成する変更値の正負の組み合わせは2通りである。例えば、変更値の第1の組み合わせは(正、負、正)、変更値の第2の組み合わせは(負、正、負)である。
【0040】
例2に係る逆提案判定処理部41aは、第1の組み合わせの修正量の個数と、第2の組み合わせの修正量の個数とを求め、修正量の個数が多い組み合わせを、正しい修正量の変更値の正負を示しているものと判定する。逆提案判定処理部41aは、多数の組み合わせの修正量を選択し、少数の組み合わせの修正量を除外する。
【0041】
<判定方法の例3>
例3に係る逆提案判定処理部41aは、複数の学習器40から出力される複数の修正量それぞれの単位ベクトルを求める。この単位ベクトルは、修正方向を示している。逆提案判定処理部41aは、各修正量の単位ベクトルをクラスタリングし、多数の単位ベクトルが属するクラスを正しい修正方向のクラスとして判定する。逆提案判定処理部41aは、正しい修正方向のクラスに属する修正量を選択し、その他のクラスに属する修正量を除外する。
【0042】
<判定方法の例4>
例4に係る逆提案判定処理部41aは、正しい修正量と、逆提案の修正量とを判別するための基準単位ベクトルを作成し、逆提案の修正量を除外する。基準単位ベクトルは、例えば、全ての修正量と基準単位ベクトルとの内積の絶対値の和が最大になるように選択すればよい。逆提案判定処理部41aは、基準単位ベクトルと複数の修正量それぞれとの内積を算出し、内積が正の修正量と、内積が負の修正量とに分類する。そして、逆提案判定処理部41aは、内積が正の修正量の個数と、内積が負の修正量の個数とを比較し、個数が多い方向を正しい修正量の方向であると判定し、当該方向の修正量を正しい修正量として選択する。例えば、内積が正(多数の修正量が正)の修正量を正しい修正量として選択し、内積が負(少数の修正量が負)の修正量を逆提案の修正量として除外する。内積が0の修正量については、逆提案の修正量として除外してもよいし、正しい修正量として選択してもよい。
【0043】
上記した選択方法は一例であり、複数の学習器40から出力される修正量の修正方向を判別し、概ね同じ修正方向を向く多数の修正量を選択できる方法であれば、任意の方法を用いることができる。
なお、逆提案が発生しない又は発生しにくい最適化アルゴリズムとして、勾配法を用いた学習器40を備えると、上記した多数決アルゴリズムによって、より高い確率で正しい修正量を選択することが可能になる。また、逆提案が発生しない又は発生しにくい最適化アルゴリズムとして、Adam、モーメンタム、Adagradなどを用いて学習した学習器40を備えることにより、同様にしてより高い確率で正しい修正量を選択することが可能になる。
【0044】
成形条件設定処理部41bは、正しい修正方向を有する修正量を用いて成形条件を修正し、修正された成形条件を設定する機能部である。例えば、成形条件設定処理部41bは、正しい修正方向を有する修正量の平均を求め、成形条件を平均修正量によって修正する。
【0045】
<「判定方法の例1」の平均修正の具体例>
例えば、設定パラメータx、設定パラメータy、設定パラメータzを修正する場合、3つの学習器40から出力された修正量を構成する変更量の組合せ(Cx、Cy、Cz)が
第1の修正量=(-6,-3,2)
第2の修正量=(3,1,4)
第3の修正量=(5,-1,-2)
となった場合に、
Cxについては第1の修正量の-6だけ捨てて平均を(3+5)/2=4とし、
Cyについては第2の修正量の1だけ捨てて平均を(-3-1)/2=-2とし、
Czについては第3の修正量の-2だけ捨てて平均を(2+4)/2=3とする。成形条件の設定パラメータ(x,y,z)は、この平均修正量を用いて修正され、設定される。
【0046】
<「判定方法の例2」の平均修正の具体例> 例えば、設定パラメータx、設定パラメータy、設定パラメータzを修正する場合、3つの学習器40から出力された修正量を構成する変更量の組合せ(Cx、Cy、Cz)が
第1の修正量=(6,-3,1)
第2の修正量=(-3,1,-4)
第3の修正量=(5,-1,2)
となった場合に、第1の修正量と、第3の修正量が多数決により、正しい修正量として選択され、
Cxについては第2の修正量の-3を捨てて平均を(6+5)/2=5.5とし、
Cyについては第2の修正量の1を捨てて平均を(-3-1)/2=-2とし、
Czについては第2の修正量の-4だけ捨てて平均を(1+2)/2=1.5とする。成形条件の設定パラメータ(x,y,z)は、この平均修正量を用いて修正され、設定される。
【0047】
成形条件が修正された射出成形機101が製造する成形品は検査装置5によって検査され、成形品の不良が解消されるまで、成形条件の修正が繰り返し行われる。
【0048】
図4は、本実施形態1に係る運転条件修正処理手順を示すフローチャートである。制御装置4のプロセッサ41は成形機本体1の動作制御し、成形機本体1は成形品を射出成形する(ステップS111)。次いで、プロセッサ41は、第1取得部44及び第2取得部45にて測定データ及び検査結果データを取得する(ステップS112)。
【0049】
次いで、プロセッサ41は、複数の学習器40それぞれに、ステップS112で取得した測定データ及び検査結果データを入力し、複数の修正量を算出する(ステップS113)。複数の修正量は、複数の学習器40それぞれを用いて算出される。
【0050】
次いで、プロセッサ41は、検査結果データに基づいて、検査結果が良好であるか否か、つまり成形品が良品であるか否かを判定する(ステップS114)。例えば、プロセッサ41は、成形品のバリ面積及びショート面積が所定の閾値未満であるか否かを判定することによって、成形品の良否を判定する。
【0051】
検査結果が良好であると判定した場合(ステップS114:YES)、プロセッサ41は、処理をステップS111へ戻す。検査結果が良好でないと判定した場合(ステップS114:NO)、修正方向の多数決により、各学習器40から出力された修正量が逆提案に係る修正量であるか否かを判定し、逆提案の修正量を除外する(ステップS115)。
【0052】
次いで、プロセッサ41は、逆提案の修正量が除外された正しい修正量を用いて、平均修正量を算出し(ステップS116)、平均修正量を用いて修正した成形条件を設定し(ステップS117)、処理をステップS111へ戻す。
ステップS111~ステップS117を繰り返すことによって、成形条件は、成形品の不良が解消される方向に修正されていく。
【0053】
上記のように構成された本実施形態1に係る射出成形機101、制御装置4(運転条件修正装置)によれば、学習器40による逆提案を除外し、成形条件をより適切に修正することができる。
具体的には、複数の学習器40、すなわち複数のアルゴリズムを用いて成形条件の修正量を複数算出し、逆提案に係る修正量を除外することによって、正しい修正量を用いた運転条件の修正が可能になる。
【0054】
また、制御装置4は、複数の学習器40から出力される複数の修正量のうち、正しい修正方向の修正量を、簡易な多数決により選択することができる。実施形態1では、修正量を構成する各変更値の正負が未知であっても、正しい修正量を選択し、逆提案を除外することができる。
【0055】
更に、制御装置4は、逆提案に係る修正量が除外された、正しい複数の修正量を用いて平均修正量を算出し、成形条件を修正する構成であるため、偏りのない修正量を用いて成形条件を修正することができ、成形条件を適正化することができる。
【0056】
なお、本実施形態では射出成形機101の成形条件を修正する例を説明したが、押出機、その他の成形機の成形条件を修正する制御装置に本技術を適用してもよい。また、製品を製造する任意の産業機械の運転条件を修正する制御装置に本技術を適用してもよい。
【0057】
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機201は、逆提案の修正量の除外方法が実施形態1と異なる。射出成形機201のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機101と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0058】
図5は、本実施形態2に係る射出成形機201の構成例を示すブロック図である。実施形態2に係る制御装置4の記憶部42は、修正量が逆提案であるか否かを判別するための方向定義テーブル242bを記憶している。
【0059】
図6は、本実施形態2に係る方向定義テーブル242bを示す概念図である。方向定義テーブル242bは、成形品の不良の種類と、正しい修正量を構成する複数の変更値それぞれの正負の組み合わせとを対応付けて記憶している。
【0060】
例えば、成形品の不良であるバリに対して、正しい修正方向として、保圧圧力の変更値が正、保圧切替位置の変更値が負、射出速度の変更値が正であることを示す情報が対応付けられている。同様に、成形品の不良であるショートに対して、正しい修正方向として、保圧圧力の変更値が負、保圧切替位置の変更値が正、射出速度の変更値が負であることを示す情報が対応付けられている。
【0061】
特に、樹脂粘度に起因するバリの場合、正しい修正方向として、保圧切替位置の変更値が正、保圧切替速度の変更値が負、保圧切替圧力の変更値が負であることを示す情報を対応付けるようにしてもよい。つまり、方向定義テーブル242bは、樹脂粘度に起因するバリを示すデータと、保圧切替位置の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が負であることを示すデータとを対応付けて格納している。
同様に、樹脂粘度に起因するショートの場合、正しい修正方向として、保圧切替位置の変更値が負、保圧切替速度の変更値が正、保圧切替圧力の変更値が正であることを示す情報を対応付けるようにしてもよい。つまり、方向定義テーブル242bは、樹脂粘度に起因するショートを示す前記検査結果データと、保圧切替位置の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が正であることを示すデータとを対応付けて格納している。
【0062】
図7は、本実施形態2に係る運転条件修正処理方法を示す概念図である。実施形態2に係る逆提案判定処理部241aは、複数の学習器40からそれぞれ出力された修正量が逆提案に係る修正量であるか否かを、方向定義テーブル242bの情報を参照して判定する機能部である。
【0063】
具体的には、プロセッサ41は、検査結果データに基づいて、成形品の不良の種類を判定する。不良の種類には、例えば、バリ、ショートが含まれる。不良の種類は、不良の原因に基づいて細分化されたものであってもよい。例えば、不良の種類は、樹脂粘度に起因するバリ、樹脂粘度に起因するショートなどを含んでもよい。逆提案判定処理部241aは、成形品の不良の種類をキーにして方向定義テーブル242bを参照し、正しい修正方向を示す情報を読み出す。そして、逆提案判定処理部241aは、修正方向の変更値の正負が、方向定義テーブル242bから読み出された情報が示す各変更値の正負と一致するか否かを判定することによって、判定対象の修正量が逆提案のものであるか否かを判別する。例えば、逆提案判定処理部241aは、全ての正負が全て一致する修正量を正しい修正量として選択し、その他の修正量を逆提案の修正量として除外する。
【0064】
図8は、本実施形態2に係る運転条件修正処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、実施形態1のステップS111~ステップS113と同様、射出成形を実行し、測定データ及び検査結果データを取得し、複数の学習器40を用いて複数の修正量を算出する(ステップS211、ステップS212、ステップS213)。次いで、プロセッサ41は、検査結果データに基づいて、検査結果が良好であるか否か、つまり成形品が良品であるか否かを判定する(ステップS214)。
【0065】
検査結果が良好であると判定した場合(ステップS214:YES)、プロセッサ41は、処理をステップS211へ戻す。検査結果が良好でないと判定した場合(ステップS214:NO)、プロセッサ41は、複数の学習器40から出力された全ての修正量の適否を確認したか否かを判定する(ステップS215)。適否を確認していない修正量があると判定した場合(ステップS215:NO)、逆提案判定処理部41aとしてのプロセッサ41は、成形品の不良の種類を特定し、不良の種類をキーにして方向定義テーブル242bを参照し、第nの修正量が逆提案であるか否かを判定する(ステップS216)。ここで「n」は整数であり、n=1から始まり、ステップS215~ステップS217の処理を実行する都度、1インクリメントされる。
【0066】
プロセッサ41は、第nの修正量が逆提案である判定した場合(ステップS216:YES)、当該修正量を除外し(ステップS217)、処理をステップS215に戻す。第nの修正量が正しい修正方向であると判定した場合(ステップS216:NO)、当該修正量を除外することなく、処理をステップS215へ戻す。
【0067】
ステップS215において、全ての修正量の適否を判定したと判定した場合(ステップS215:YES)、プロセッサ41は、逆提案の修正量が除外された正しい修正量を用いて、平均修正量を算出し(ステップS218)、平均修正量を用いて修正した成形条件を設定し(ステップS219)、処理をステップS211へ戻す。
【0068】
上記のように構成された本実施形態2に係る射出成形機101、制御装置4(運転条件修正装置)によれば、方向定義テーブル242bを適切に設定することができれば、確実に正しい修正方向の修正量を選択し、成形条件を適切に修正することができる。
【0069】
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機301は、逆提案の修正量を除外した後の修正処理が実施形態1と異なる。射出成形機301のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機101と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0070】
図9は、本実施形態3に係る射出成形機301の構成例を示すブロック図である。実施形態3に係るプロセッサ41は、機能部として適否判定モデル340を有する。記憶部42は、適否判定モデル340を特徴付ける各種係数を記憶する。
【0071】
図10は、本実施形態3に係る適否判定モデル340を示す概念図である。適否判定モデル340は、検査結果データ、測定データ及び修正量が入力される入力層340aと、修正量などの特徴量を抽出する中間層340bと、抽出された特徴量に基づいて算出される修正量の適否を示す適否データを出力する出力層340cとを有するニューラルネットワークである。適否データは、修正量が適当か否かを示す情報である。適否データは、例えば値が大きい程、修正量が適当であることを示すものとする。
【0072】
ニューラルネットワークの入力層340aは、検査結果データ、測定データ及び修正量が入力される複数のニューロンを有し、入力された各データを中間層340bに受け渡す。
【0073】
中間層340bは、複数のニューロンからなる層を複数有する。各層は入力されたデータから、修正量の適否に関連する特徴量を抽出しながら前段から後段の層へ順々に受け渡し、最後段の層は出力層340cに受け渡す。
【0074】
出力層340cは、演算結果を出力するニューロンを備え、当該ニューロンは、修正量の適否を出力する。
【0075】
なお本実施形態1においては、適否判定モデル340が一般的なニューラルネットワークである例を説明したが、トランスフォーマなどのその他のニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、回帰木などの構成のモデルであってもよい。また、適否判定モデル340を強化学習モデルで構成してもよい。
【0076】
適否判定モデル340の学習方法について説明する。まず、検査結果データと、測定データと、修正量と、当該修正量の適否を示す適否データとを対応付けた学習用データを収集する。学習用に用いる修正量は、全て修正方向が適切な修正量である。適否データは、当該修正量で成形条件を修正した場合に、成形品がどの程度改善したのかを示す情報に基づいて作成する。例えば、バリ面積の減少量又は減少率、ショート面積の減少量又は減少率などを適否データとすればよい。
【0077】
モデル学習用のコンピュータは、生成した学習用データを用いて、学習前のニューラルネットワークモデルを機械学習又は深層学習させることによって、適否判定モデル340を生成する。
【0078】
具体的には、コンピュータは、学習用データに含まれる検査結果データ、測定データ及び修正量を学習前のニューラルネットワークモデルに入力し、中間層340bでの演算処理を経て、出力層340cから出力される適否データを取得する。そして、コンピュータは、出力層340cから出力された適否データと、教師データが示す適否データと比較し、出力層340cから出力される適否データが正解値に近づくように、中間層340bでの演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えばコンピュータは最急降下法などを用いて各種パラメータの最適化を行う。コンピュータは、上記の処理を繰り返し行うことによって、学習済の適否判定モデル340を得る。
【0079】
実施形態3に係るプロセッサ41は、逆提案が除外された複数の修正量それぞれを適否判定モデル340に入力することによって、適否データを得ることができる。そして、プロセッサ41は、適否データに基づいて、逆提案が除外された複数の修正量のうち最も適当な修正量を選択し、成形条件を修正する。
【0080】
上記のように構成された本実施形態3に係る射出成形機301によれば、適否判定モデル340を用いることにより、正しい修正方向を有する修正量の中から、最も適切な修正量を選択し、成形条件を修正することができる。
【0081】
なお、実施形態1の変形例として実施形態3を説明したが、実施形態2に本実施形態3の技術を組み合わせることもできる。
【0082】
本開示の課題を解決するための手段を付記する。
(付記1)
産業機械の運転条件を修正する運転条件修正方法であって、
前記産業機械の状態を測定して得られる測定データ、及び前記産業機械にて製造された製品の状態を検査して得られる検査結果データを取得するステップと、
前記測定データ及び前記検査結果データと、前記運転条件の修正量との関係を学習した複数の学習器を用いて、取得した前記測定データ及び前記検査結果データに基づいて前記運転条件の修正量を算出するステップと、
前記複数の学習器を用いて算出された複数の前記修正量それぞれの修正方向の適否を判定する判定ステップと、
前記修正方向が適切と判定された一又は複数の前記修正量に基づいて前記運転条件を修正するステップと
を備える運転条件修正方法。
(付記2)
前記判定ステップは、
前記修正方向の多数決によって前記修正量の適否を判定する
付記1に記載の運転条件修正方法。
(付記3)
前記判定ステップは、
前記検査結果データが示す不良の種類と、前記運転条件の適切な修正方向とを対応付けたテーブルを、取得した前記検査結果データをキーにして参照することにより、前記修正量の適否を判定する
付記1又は付記2に記載の運転条件修正方法。
(付記4)
前記産業機械は射出成形機であり、
前記テーブルは、
樹脂粘度に起因するバリを示すデータと、保圧切替位置の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が負であることを示すデータとを対応付けて含む
付記3に記載の運転条件修正方法。
(付記5)
前記産業機械は射出成形機であり、
前記テーブルは、
樹脂粘度に起因するショートを示すデータと、保圧切替位置の適切な変更値が負であることを示すデータと、保圧切替速度の適切な変更値が正であることを示すデータと、保圧切替圧力の適切な変更値が正であることを示すデータとを対応付けて含む
付記3又は付記4に記載の運転条件修正方法。
(付記6)
前記修正量が入力された場合、該修正量の適否を示した適否データを出力する適否判定モデルに、算出された前記修正量を入力することによって、前記修正量の適否を判定する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の運転条件修正方法。
(付記7)
前記複数の学習器の少なくとも一つは、Adam、モーメンタム、又はAdagradを用いて前記測定データ及び前記検査結果データと、前記修正量との関係を学習してある
付記1から付記6のいずれか1つに記載の運転条件修正方法。
(付記8)
前記修正方向が適切と判定された複数の前記修正量の平均値を算出するステップを備え、
算出された前記平均値に基づいて前記運転条件を修正する付記1から付記7のいずれか1つに記載の運転条件修正方法。
【符号の説明】
【0083】
1 :成形機本体
1a :センサ
2 :型締装置
3 :射出装置
4 :制御装置
5 :検査装置
40 :学習器
41 :プロセッサ
41a :逆提案判定処理部
41b :成形条件設定処理部
42 :記憶部
42a :コンピュータプログラム
43 :制御信号出力部
44 :第1取得部
45 :第2取得部
46 :操作パネル
49 :記録媒体
101 :射出成形機
241a :逆提案判定処理部
242b :方向定義テーブル
340 :適否判定モデル