(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157274
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】アンテナ駆動機構およびマイクロ波加熱装置
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20241030BHJP
H05B 6/78 20060101ALI20241030BHJP
H05B 6/74 20060101ALI20241030BHJP
H05B 6/72 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F24C7/02 511G
H05B6/78 D
H05B6/74 F
H05B6/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071536
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌之
(72)【発明者】
【氏名】大森 義治
【テーマコード(参考)】
3K090
3L086
【Fターム(参考)】
3K090AA04
3K090AB01
3K090BA01
3K090CA01
3K090DA08
3L086AA01
3L086BB04
3L086BB07
3L086DA19
3L086DA22
(57)【要約】
【課題】高機能化と小型化を両立したアンテナ駆動機構およびマイクロ波加熱装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ駆動機構は、回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、アンテナシャフトと一体的に回転可能であり、第1回転方向又は第2回転方向に回転駆動されるモータ軸と、第1回転規制部および第2回転規制部と、を備え、アンテナシャフトは、第1回転規制部の回転規制を受けた状態で、モータ軸が第1回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける第1の位置から、当該回転規制が解除される第2の位置へ、軸方向に沿って相対的に移動し、アンテナシャフトは、第2回転規制部の回転規制を受けた状態で、モータ軸が第2回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける第2の位置から、当該回転規制が解除される第1の位置へ、軸方向に沿って相対的に移動する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、
前記アンテナシャフトに螺合して、前記アンテナシャフトと一体的に回転可能であり、第1回転方向又は第2回転方向に回転駆動されるモータ軸と、
前記アンテナシャフトの前記第1回転方向の回転を選択的に規制する第1回転規制部、および前記第2回転方向の回転を選択的に規制する第2回転規制部と、を備え、
前記アンテナシャフトは、前記第1回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第1回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける第1の位置から、当該回転規制が解除される第2の位置へ、軸方向に沿って相対的に移動し、
前記アンテナシャフトは、前記第2回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第2回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける前記第2の位置から、当該回転規制が解除される前記第1の位置へ、前記軸方向に沿って相対的に移動する、アンテナ駆動機構。
【請求項2】
前記アンテナシャフトの外周部に対向するように設けられたカバー部材をさらに備え、
前記第1回転規制部および前記第2回転規制部は、前記カバー部材の内周部に設けられる、請求項1に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項3】
前記回転アンテナに向けてマイクロ波を伝送する導波管構造をさらに備え、
前記カバー部材は、前記導波管構造に取り付けられる、請求項2に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記第1回転規制部および前記第2回転規制部を有して前記内周部を構成する第1部材と、前記第1部材を内側に取り付けて前記導波管構造に取り付けられる第2部材と、を備える、請求項3に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項5】
前記アンテナシャフトは、前記軸方向に交差する横方向に突出する突出部を有し、
前記第1回転規制部は、前記突出部を前記第1回転方向に受ける第1規制壁を有し、前記第2回転規制部は、前記突出部を前記第2回転方向に受ける第2規制壁を有し、
前記第1規制壁および前記第2規制壁は、前記軸方向の位置が互いに異なる、請求項2に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項6】
前記第1回転規制部は、前記第1規制壁に隣接して設けられ、前記第2回転方向に沿って高さが漸増する第1スロープを有し、
前記第2回転規制部は、前記第2規制壁に隣接して設けられ、前記第1回転方向に沿って高さが漸増する第2スロープを有する、請求項5に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項7】
前記アンテナシャフトは、前記突出部を突出方向に付勢する第1付勢部材をさらに有する、請求項5に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項8】
前記突出部は、前記横方向の一方側に突出する第1突出部と、前記横方向の他方側に突出する第2突出部とを有し、
前記第1付勢部材は、前記第1突出部と前記第2突出部をそれぞれの突出方向に付勢する、請求項7に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項9】
前記アンテナシャフトは、前記モータ軸に螺合する第1シャフトと、前記第1シャフトの外側に配置され、前記第1シャフトと一体的に移動可能な第2シャフトとを備え、
前記回転アンテナは、前記第2シャフトに取り付けられる、請求項1に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項10】
前記第1シャフトと前記第2シャフトの間で前記軸方向に付勢力を発生させる第2付勢部材をさらに備える、請求項9に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項11】
前記第1シャフトは樹脂製であり、前記第2シャフトは金属製である、請求項9に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項12】
前記第1シャフトは、前記軸方向に交差する横方向に突出する突出部を有し、前記第2シャフトは、前記突出部を前記横方向に通過させる貫通孔を有する、請求項9に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項13】
前記回転アンテナは、前記アンテナシャフトが前記第1の位置にあるときに、前記加熱室を構成する壁部から離れた位置にあり、前記アンテナシャフトが前記第2の位置にあるときに、前記壁部に接触する、請求項1に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項14】
前記壁部は、前記加熱室の底壁部である、請求項13に記載のアンテナ駆動機構。
【請求項15】
加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、
前記アンテナシャフトに第1回転方向又は第2回転方向の回転駆動力を与えるモータと、
前記アンテナシャフトが前記第1回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を第1の位置に配置し、前記アンテナシャフトが前記第2回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置するように、前記アンテナシャフトの回転動作を選択的に規制する回転規制部と、
前記モータによる回転駆動力の回転方向を制御する制御部と、を備える、アンテナ駆動機構。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の前記アンテナ駆動機構と、前記アンテナ駆動機構が駆動する前記回転アンテナと、前記回転アンテナがマイクロ波を供給する前記加熱室と、を備える、マイクロ波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転アンテナを駆動するアンテナ駆動機構およびそれを備えるマイクロ波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の被加熱物を加熱室に収容し、加熱室内にマイクロ波を給電して被加熱物を加熱調理するマイクロ波加熱装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のマイクロ波加熱装置は、加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナと、回転アンテナを回転させるアンテナ回転モータと、回転アンテナを上下動させるアンテナ上下駆動モータとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のマイクロ波加熱装置では、回転アンテナの回転機能と上下動機能のそれぞれのためにモータが必要となり、装置が大型化しやすい。マイクロ波加熱装置の高機能化と小型化を両立させることに関して改善の余地があるといえる。
【0006】
従って、本開示の目的は、前記問題を解決することにあって、高機能化と小型化を両立することができるアンテナ駆動機構およびそれを備えるマイクロ波加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示のアンテナ駆動機構は、加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、前記アンテナシャフトに螺合して、前記アンテナシャフトと一体的に回転可能であり、第1回転方向又は第2回転方向に回転駆動されるモータ軸と、前記アンテナシャフトの前記第1回転方向の回転を選択的に規制する第1回転規制部、および前記第2回転方向の回転を選択的に規制する第2回転規制部と、を備え、前記アンテナシャフトは、前記第1回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第1回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける第1の位置から、当該回転規制が解除される第2の位置へ、軸方向に沿って相対的に移動し、前記アンテナシャフトは、前記第2回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第2回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける前記第2の位置から、当該回転規制が解除される前記第1の位置へ、前記軸方向に沿って相対的に移動する。
【0008】
また、本開示のアンテナ駆動機構は、加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、前記アンテナシャフトに第1回転方向又は第2回転方向の回転駆動力を与えるモータと、前記アンテナシャフトが前記第1回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を第1の位置に配置し、前記アンテナシャフトが前記第2回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置するように、前記アンテナシャフトの回転動作を選択的に規制する回転規制部と、前記モータによる回転駆動力の回転方向を制御する制御部と、を備える。
【0009】
また、本開示のマイクロ波加熱装置は、前記アンテナ駆動機構と、前記アンテナ駆動機構が駆動する前記回転アンテナと、前記回転アンテナがマイクロ波を供給する前記加熱室と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高機能化と小型化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施形態のマイクロ波加熱装置の概略側面図
【
図1B】実施形態のマイクロ波加熱装置の概略側面図
【
図6】実施形態のアンテナシャフトおよびモータねじを示す斜視図
【
図9】実施形態のアンテナシャフトの横断面を概略的に示す断面図
【
図10A】実施形態のアンテナシャフトの周辺構成の縦断面を概略的に示す断面図(上昇位置)
【
図10B】実施形態のアンテナシャフトの周辺構成の縦断面を概略的に示す断面図(下降位置)
【
図13】実施形態の可動ピンが下段に位置するときに第1回転方向に回転する場合の動作を説明するための斜視図
【
図14】実施形態の可動ピンが上段に位置するときに第1回転方向に回転する場合の動作を説明するための斜視図
【
図15】実施形態の可動ピンが上段に位置するときに第2回転方向に回転する場合の動作を説明するための斜視図
【
図16】実施形態の可動ピンが下段に位置するときに第2回転方向に回転する場合の動作を説明するための斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1態様によれば、加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、前記アンテナシャフトに螺合して、前記アンテナシャフトと一体的に回転可能であり、第1回転方向又は第2回転方向に回転駆動されるモータ軸と、前記アンテナシャフトの前記第1回転方向の回転を選択的に規制する第1回転規制部、および前記第2回転方向の回転を選択的に規制する第2回転規制部と、を備え、前記アンテナシャフトは、前記第1回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第1回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける第1の位置から、当該回転規制が解除される第2の位置へ、軸方向に沿って相対的に移動し、前記アンテナシャフトは、前記第2回転規制部の回転規制を受けた状態で、前記モータ軸が前記第2回転方向に回転することに応じて、当該回転規制を受ける前記第2の位置から、当該回転規制が解除される前記第1の位置へ、前記軸方向に沿って相対的に移動する、アンテナ駆動機構を提供する。
【0013】
本開示の第2態様によれば、前記アンテナシャフトの外周部に対向するように設けられたカバー部材をさらに備え、前記第1回転規制部および前記第2回転規制部は、前記カバー部材の内周部に設けられる、第1態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0014】
本開示の第3態様によれば、前記回転アンテナに向けてマイクロ波を伝送する導波管構造をさらに備え、前記カバー部材は、前記導波管構造に取り付けられる、第2態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0015】
本開示の第4態様によれば、前記カバー部材は、前記第1回転規制部および前記第2回転規制部を有して前記内周部を構成する第1部材と、前記第1部材を内側に取り付けて前記導波管構造に取り付けられる第2部材と、を備える、第3態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0016】
本開示の第5態様によれば、前記アンテナシャフトは、前記軸方向に交差する横方向に突出する突出部を有し、前記第1回転規制部は、前記突出部を前記第1回転方向に受ける第1規制壁を有し、前記第2回転規制部は、前記突出部を前記第2回転方向に受ける第2規制壁を有し、前記第1規制壁および前記第2規制壁は、前記軸方向の位置が互いに異なる、第2態様から第4態様のいずれか1つに記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0017】
本開示の第6態様によれば、前記第1回転規制部は、前記第1規制壁に隣接して設けられ、前記第2回転方向に沿って高さが漸増する第1スロープを有し、前記第2回転規制部は、前記第2規制壁に隣接して設けられ、前記第1回転方向に沿って高さが漸増する第2スロープを有する、第5態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0018】
本開示の第7態様によれば、前記アンテナシャフトは、前記突出部を突出方向に付勢する第1付勢部材をさらに有する、第5態様又は第6態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0019】
本開示の第8態様によれば、前記突出部は、前記横方向の一方側に突出する第1突出部と、前記横方向の他方側に突出する第2突出部とを有し、前記第1付勢部材は、前記第1突出部と前記第2突出部をそれぞれの突出方向に付勢する、第7態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0020】
本開示の第9態様によれば、前記アンテナシャフトは、前記モータ軸に螺合する第1シャフトと、前記第1シャフトの外側に配置され、前記第1シャフトと一体的に移動可能な第2シャフトとを備え、前記回転アンテナは、前記第2シャフトに取り付けられる、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0021】
本開示の第10態様によれば、前記第1シャフトと前記第2シャフトの間で前記軸方向に付勢力を発生させる第2付勢部材をさらに備える、第9態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0022】
本開示の第11態様によれば、前記第1シャフトは樹脂製であり、前記第2シャフトは金属製である、第9態様又は第10態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0023】
本開示の第12態様によれば、前記第1シャフトは、前記軸方向に交差する横方向に突出する突出部を有し、前記第2シャフトは、前記突出部を前記横方向に通過させる貫通孔を有する、第9態様から第11態様のいずれか1つに記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0024】
本開示の第13態様によれば、前記回転アンテナは、前記アンテナシャフトが前記第1の位置にあるときに、前記加熱室を構成する壁部から離れた位置にあり、前記アンテナシャフトが前記第2の位置にあるときに、前記壁部に接触する、第1態様から第12態様のいずれか1つに記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0025】
本開示の第14態様によれば、前記壁部は、前記加熱室の底壁部である、第13態様に記載のアンテナ駆動機構を提供する。
【0026】
本開示の第15態様によれば、加熱室にマイクロ波を供給するための回転アンテナを支持するアンテナシャフトと、前記アンテナシャフトに第1回転方向又は第2回転方向の回転駆動力を与えるモータと、前記アンテナシャフトが前記第1回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を第1の位置に配置し、前記アンテナシャフトが前記第2回転方向の回転駆動力を受けるときは、前記アンテナシャフトの軸方向の位置を前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置するように、前記アンテナシャフトの回転動作を選択的に規制する回転規制部と、前記モータによる回転駆動力の回転方向を制御する制御部と、を備える、アンテナ駆動機構を提供する。
【0027】
本開示の第16態様によれば、前記アンテナ駆動機構と、前記アンテナ駆動機構が駆動する前記回転アンテナと、前記回転アンテナがマイクロ波を供給する前記加熱室と、を備える、マイクロ波加熱装置を提供する。
【0028】
(実施形態)
以下、本開示に係るアンテナ駆動機構およびマイクロ波加熱装置の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0029】
まず、
図1A、
図1Bを参照して、本開示の一実施形態に係るアンテナ駆動機構およびマイクロ波加熱装置について説明する。
【0030】
図1A、
図1Bはそれぞれ、実施形態に係るマイクロ波加熱装置2の概略側面図である。
【0031】
図1A、
図1Bに示すマイクロ波加熱装置2は、被加熱物Pをマイクロ波で加熱調理するための調理器具(いわゆる「電子レンジ」)である。被加熱物Pは、任意の種類の食材であってもよい。
【0032】
図1A、
図1Bに示すように、マイクロ波加熱装置2は、加熱室4を有する筐体6と、扉8と、マイクロ波発生装置10と、導波管構造12と、アンテナ駆動機構14と、回転アンテナ16と、制御部17とを備える。
【0033】
筐体6は、マイクロ波加熱装置2の外枠を構成する部材である。
図1A、
図1Bに示すように、筐体6は加熱室4を内側に有し、扉8によって開閉される。加熱室4は、被加熱物Pを加熱するための空間であり、被加熱物Pが載置可能な底壁部18を有する。
【0034】
加熱室4の外側には、マイクロ波発生装置10、導波管構造12、アンテナ駆動機構14、回転アンテナ16および制御部17が、筐体6に内蔵される。
【0035】
マイクロ波発生装置10は、マイクロ波を発生させる装置であり、例えば、周波数が300MHz~300GHzのマイクロ波を発生させる。マイクロ波発生装置10としては例えばマグネトロンが用いられる。
【0036】
導波管構造12は、マイクロ波発生装置10が発生させたマイクロ波を加熱室4に供給するための構造物であり、マイクロ波を所定方向(矢印A1参照)に伝送可能な導波管を有する。導波管構造12には、アンテナ駆動機構14および回転アンテナ16が接続されている。
【0037】
アンテナ駆動機構14は、回転アンテナ16を駆動するための機構である。本実施形態のアンテナ駆動機構14は、回転アンテナ16を回転させる機能と、回転アンテナ16を上下動させる機能を有する。
【0038】
アンテナ駆動機構14は、回転アンテナ16に接続されるアンテナシャフト20と、アンテナシャフト20に対して回転駆動力を伝達するためのモータ軸21を有するモータ24とを備える。
【0039】
アンテナシャフト20は、回転アンテナ16を回転可能に支持するシャフトであり、回転軸Ax1を中心として回転アンテナ16と一体的に回転する。回転軸Ax1は、マイクロ波加熱装置2の高さ方向(すなわち上下方向)に延びる。アンテナシャフト20は、導波管構造12の上面に設けられた貫通孔28に挿通されており、導波管構造12とともに同軸構造を構成する。アンテナシャフト20の周囲には、カバー部材26が配置される。
【0040】
カバー部材26は、アンテナシャフト20を移動可能な状態で外側から覆う部材である。カバー部材26は、モータ24とともに導波管構造12に取り付けて固定される。本実施形態のカバー部材26は、アンテナシャフト20の回転動作を選択的に規制する「回転規制部」として機能する。アンテナシャフト20の回転動作を規制することで、アンテナシャフト20を上下動させることができる。
【0041】
回転アンテナ16は、導波管構造12から伝送されるマイクロ波を加熱室4に向けて供給するための部材である。回転アンテナ16は、前述したアンテナシャフト20とともに回転軸Ax1を中心に回転可能である。
【0042】
制御部17は、マイクロ波発生装置10やモータ24等のマイクロ波加熱装置2の構成要素を制御する部材であり、例えばマイクロコンピュータを有して構成される。
【0043】
アンテナシャフト20およびカバー部材26を有するアンテナ駆動機構14は、
図1Aに示すように、アンテナシャフト20を第1回転方向R1に回転させるときは、回転アンテナ16を上昇させて(矢印H1)、
図1Bに示すように、アンテナシャフト20を第2回転方向R2に回転させるときは、回転アンテナ16を下降させる(矢印H2)。
【0044】
このような動作によれば、制御部17がアンテナシャフト20に対する回転駆動力の方向を制御することで、回転アンテナ16を所望の高さ位置に向けて上下動させることができる。
【0045】
本実施形態では、
図1Aに示すように回転アンテナ16が上昇位置にあるときは、後述するスペーサを介して回転アンテナ16を加熱室4の底壁部18に部分的に接触させる。
図1Bに示すように回転アンテナ16が下降位置にあるときは、回転アンテナ16を加熱室4の底壁部18に接触させずに、底壁部18に対して下方に間隔を空けて配置する。
【0046】
回転アンテナ16が上昇位置にあるときにスペーサを介して加熱室4の底壁部18に接触させることで、被加熱物Pに対する回転アンテナ16の距離を一定に保ちやすくなり、マイクロ波による被加熱物Pの加熱態様を安定化させることができる。
【0047】
【0048】
図2に示す回転アンテナ16は、加熱室4に向けてマイクロ波を供給可能であれば任意の構成を採用してもよく、放射波や表面波等、マイクロ波を任意の形態で供給してもよい。
図2では、回転アンテナ16を概略的に図示している。
【0049】
図2に示すように、回転アンテナ16は、上面29を有し、上面29に複数のスペーサ30、32を有する。
【0050】
複数のスペーサ30、32は、回転アンテナ16の上面29から加熱室4に向かって上方に突出する突出部である。スペーサ30、32は、加熱室4の底壁部18に接触して底壁部18と上面29の間隔を確保するスペーサとして機能する。回転アンテナ16は、スペーサ30、32を介して底壁部18に接触する。スペーサ30、32を設けることで、
図1Aに示す上昇位置における回転アンテナ16が回転する際の摩擦抵抗を低減できる。
【0051】
スペーサ30は、回転アンテナ16の上面29の中心位置に配置される。本実施形態のスペーサ30は回転アンテナ16の回転軸Ax1に重なる。一対のスペーサ32は、回転アンテナ16の上面29の両端部にそれぞれ配置される。スペーサ30、32の配置、形状、数については、
図2に示す例に限らない。
【0052】
以下、回転アンテナ16を駆動するアンテナ駆動機構14について、
図3A以降の図面を用いて説明する。
【0053】
図3A、
図3Bはそれぞれ、アンテナ駆動機構14の斜視図である。
図3Aは、アンテナシャフト20が上昇位置にある状態(矢印H1)を示し、
図3Bは、アンテナシャフト20が下降位置にある状態(矢印H2)を示す。
【0054】
図3A、
図3Bに示すように、アンテナシャフト20の上端部には、回転アンテナ16を取り付けるための取付部42が設けられる。
図3A、
図3Bに示す例では、取付部42は複数の取付孔である。
【0055】
図3A、
図3Bに示すように、アンテナシャフト20の外周部23を囲むように設けられるカバー部材26は、上カバー36と、下カバー38とを有する。
【0056】
上カバー36と下カバー38はそれぞれ、アンテナシャフト20を挿通するための貫通孔を有して、互いに上下方向に接続される。上カバー36は、
図1A、
図1Bに示した導波管構造12に取り付けるための取付部40を有し、取付部40およびネジ等の固定手段(図示せず)を介して導波管構造12に取り付けて固定される。下カバー38は、上カバー36に取り付けられた状態で、アンテナシャフト20の脱落を防止する。
【0057】
図4、
図5はそれぞれ、アンテナ駆動機構14の分解斜視図である。
【0058】
図4、
図5に示すように、上カバー36は、アンテナシャフト20を上下動可能に収容する貫通孔46と、下カバー38を取り付けるための取付爪48とを有する。下カバー38は、アンテナシャフト20を上下動可能に収容する貫通孔50と、上カバー36の取付爪48を挿入して係合させる挿入部52とを有する。挿入部52は、取付爪48を挿入するための挿入孔を有する。
【0059】
カバー部材26は、上カバー36と下カバー38に加えて、リング部材44をさらに備える。
【0060】
リング部材44は、アンテナシャフト20の回転動作を選択的に規制するための回転規制部54を有する環状の部材である。リング部材44は、貫通孔53を有し、上カバー36の貫通孔46に収容された状態で、上カバー36と下カバー38によって上下に挟み込まれて固定される。
【0061】
本実施形態のリング部材44は、内周部に回転規制部54を有し、外周部に位置決め部56を有する。位置決め部56は、上下方向に延びる突起であり、
図5に示す上カバー36の内周部に設けられた凹部60に配置されることで、リング部材44の回転位置を位置決めする。
【0062】
回転規制部54は、アンテナシャフト20の外周部23に設けられた可動ピン58に選択的に係合して、アンテナシャフト20の回転方向に応じてアンテナシャフト20の回転動作を選択的に規制する。本実施形態の回転規制部54は、リング部材44の内周部に設けられた凹凸形状で構成される。回転規制部54の詳細については後述する。
【0063】
図6は、アンテナシャフト20およびモータねじ22を示す斜視図である。
図7、
図8はそれぞれ、アンテナシャフト20の分解斜視図であり、
図9は、アンテナシャフト20の横断面を概略的に示す断面図である。
【0064】
図6~
図8に示すように、アンテナシャフト20は、内側の第1シャフト64と、外側の第2シャフト66とを有する。第1シャフト64と第2シャフト66は、回転軸Ax1を中心として一体的に回転するように互いに取り付けられる。第1シャフト64には、モータ軸21を構成するモータねじ22が接続される。
【0065】
図6に示すように、第1シャフト64は、内周部にネジ部68を有する。第1シャフト64に接続されるモータねじ22は、外周部にネジ部70を有する。ネジ部68にネジ部70が接続されることで、アンテナシャフト20とモータ軸21が互いに螺合して一体的に回転可能となり、モータ24による回転駆動力がアンテナシャフト20に伝達可能となる。
【0066】
モータねじ22の下面には、接続孔72が設けられている。接続孔72には、モータ24から延びる棒状の結合軸73(
図10A、
図10B)が挿入される。結合軸73は、円形とは異なる断面形状を有し、モータねじ22と一体的に回転する。モータねじ22と結合軸73を含めてモータ軸21が構成される。
【0067】
図4、
図5に示した回転規制部54がアンテナシャフト20の回転を規制しない状態では、アンテナシャフト20とモータ軸21が一体的に回転するのに対して、回転規制部54がアンテナシャフト20の回転を規制すると、モータ軸21のみが回転する。モータ軸21の上下位置は固定されているため、モータ軸21に螺合したアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って相対的に上下動する。モータ軸21の回転方向に応じてアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って移動する方向が変わることで、アンテナシャフト20の上下動を制御することができる。
【0068】
図7、
図8に示すように、アンテナシャフト20は、第1シャフト64と第2シャフト66を接続するための部材として、一対の可動ピン58A、58B(可動ピン58)と、一対の位置決めピン62A、62B(位置決めピン62)と、付勢部材74と、付勢部材76とを有する。
【0069】
可動ピン58A、58Bは、カバー部材26の回転規制部54に係合する部材であり、アンテナシャフト20とともに一体的に回転する。可動ピン58A、58Bを総称して、「可動ピン58」と称する場合がある。位置決めピン62や他の部材についても同様の方法で総称する場合がある。
【0070】
可動ピン58A、58Bは、アンテナシャフト20の径方向外側(横方向)に向かって突出する突出部であり、可動ピン58Aは一方側に突出し、可動ピン58Bは他方側に突出する。
【0071】
可動ピン58A、58Bはそれぞれ、係合部88A、88Bを有する。係合部88A、88Bはそれぞれ、回転規制部54に係合して接触するための先端部分である。本実施形態の係合部88A、88Bは、回転規制部54の規制壁に接触する側面が直線的な形状を有する。
【0072】
可動ピン58A、58Bはそれぞれ、第1シャフト64に設けられた貫通孔80と、第2シャフト66に設けられた貫通孔82に挿通される。
【0073】
付勢部材74は、可動ピン58A、58Bをそれぞれの突出方向に付勢する部材である(矢印F1、F2)。本実施形態の付勢部材74は、一端が可動ピン58Aに接続され、他端が可動ピン58Bに接続された圧縮ばねである。1つの付勢部材74で2つの可動ピン58A、58Bを共通して付勢することで、部品点数を減らすことができる。
【0074】
位置決めピン62A、62Bは、第1シャフト64と第2シャフト66の相対的な回転位置を定めるための部材である。位置決めピン62A、62Bはそれぞれ、第1シャフト64に設けられた貫通孔84と、第2シャフト66に設けられた貫通孔86に挿通される。貫通孔84、86のそれぞれが、回転軸Ax1を中心とする周方向Rに所定の長さ分だけ延びることで、位置決めピン62A、62Bが貫通孔84、86を構成する側辺に当接して、第1シャフト64と第2シャフト66が周方向Rに互いに位置決めされる。
【0075】
図9に示すように、可動ピン58A、58Bは第2シャフト66の貫通孔82に挿通されており、付勢部材74による付勢方向(矢印F1、F2)に沿って移動できるように、貫通孔82の側辺との間にはわずかな隙間が設けられる。可動ピン58A、58Bとは別に位置決めピン62A、62Bを設けることで、周方向Rの位置決めをより精度良く行っている。
【0076】
図9に示すように、可動ピン58A、58Bが付勢部材74を介して互いに接続されるのに対して、位置決めピン62A、62Bは互いに接続されておらず、独立して設けられる。これにより、可動ピン58A、58Bと位置決めピン62A、62Bを、アンテナシャフト20の軸方向Lにおける同じ高さ位置(同じ横断面)に設けることができる。
【0077】
図7、
図8に示す付勢部材76は、内側の第1シャフト64と外側の第2シャフト66を軸方向Lに沿って互いに付勢する。付勢部材76は、
図8に示す第1シャフト64の上面に設けた凹部78に配置され、第2シャフト66の上面部と第1シャフト64の上面部を互いに離れる方向に付勢する(矢印F3)。付勢部材76を設けることで、アンテナシャフト20が上昇して回転アンテナ16が底壁部18に接触したときに緩衝作用を生じさせることができる。付勢部材76は例えば、圧縮ばねである。
【0078】
上記構成を有するアンテナシャフト20において、各部材の材質を異ならせている。具体的には、第1シャフト64、可動ピン58A、58B、位置決めピン62A、62Bは樹脂製であり、第2シャフト66および付勢部材74、76は金属製である。
【0079】
外側の第2シャフト66を金属製とすることで、
図1A、
図1Bに示した導波管構造12とともに同軸構造を構成することができる。本実施形態では、金属製の第2シャフト66の内径をマイクロ波発生装置10が発生させるマイクロ波の波長の4分の1以下とすることで、第2シャフト66の内部空間へのマイクロ波の入射を抑制している。このため、第2シャフト66の内部空間は外側のマイクロ波の供給形態に影響を与えることが少なくなり、金属製の部材を内蔵することが可能となる。例えば、付勢部材74、76を金属製とすることで耐久性を向上させることができる。第1シャフト64、可動ピン58A、58B、位置決めピン62A、62Bは樹脂製とすることで、コストを低減することができる。
【0080】
上記構成では、金属製の第2シャフト66の内側に各部材を収めてアンテナシャフト20をコンパクト化することができ、アンテナ駆動機構14を小型化することができる。
【0081】
図10A、
図10Bは、アンテナシャフト20の周辺構成の縦断面を概略的に示す断面図である。
図10Aは、アンテナシャフト20が上昇位置にある状態(矢印H1)を示し、
図10Bは、アンテナシャフト20が下降位置にある状態(矢印H2)を示す。
【0082】
図10A、
図10Bに示すように、モータねじ22は、下カバー38の内部に回転可能な状態で収容されるとともに、下カバー38の貫通孔50を通じて、モータ24の結合軸73が挿入して接続されている。モータねじ22の外周部に設けたネジ部70と第1シャフト64の内周部に設けたネジ部68が螺合して、モータ軸21とアンテナシャフト20が回転軸Ax1を中心として一体的に回転可能となる。
【0083】
回転規制部54を有するリング部材44は、上カバー36と下カバー38によって上下方向に挟まれるとともに、周方向Rに位置決めされている。回転規制部54は、アンテナシャフト20の可動ピン58に係合するように、アンテナシャフト20の外周部23に向けられている。
【0084】
回転規制部54は、軸方向Lの異なる位置に2段に分けて設けられている。下段の回転規制部54は、アンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を規制する一方で、第2回転方向R2の回転を許容する。上段の回転規制部54は、アンテナシャフト20の第2回転方向R2の回転を規制する一方で、第1回転方向R1の回転を許容する。
【0085】
図10Aに示すように、モータ軸21とアンテナシャフト20が第1回転方向R1に回転する場合、可動ピン58が下段に位置するときは、下段の回転規制部54に係合して第1回転方向R1の回転が規制される。この状態でモータ軸21が第1回転方向R1に回転することで、モータ軸21に螺合したアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って相対的に上昇する(矢印H1)。上段の回転規制部54はアンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を規制しないため、アンテナシャフト20は、可動ピン58が上段に位置する状態で、第1回転方向R1に継続的に回転できる。
【0086】
図10Bに示すように、モータ軸21とアンテナシャフト20が第2回転方向R2に回転する場合、可動ピン58が上段に位置するときは、上段の回転規制部54に係合して第2回転方向R2の回転が規制される。この状態でモータ軸21が第2回転方向R2に回転することで、モータ軸21に螺合したアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って相対的に下降する(矢印H2)。下段の回転規制部54はアンテナシャフト20の第2回転方向R2の回転を規制しないため、アンテナシャフト20は、可動ピン58が下段に位置する状態で、第2回転方向R2に継続的に回転できる。
【0087】
制御部17がモータ軸21およびアンテナシャフト20の回転方向を切り替えることで、回転アンテナ16の回転動作と上下動作を実行することができる。回転アンテナ16の回転動作と上下動作を1つのモータ24で実現することができるため、回転動作用のモータと上下動作用のモータを別々に設ける場合と比較して、アンテナ駆動機構14の高機能化と小型化を両立させやすくなる。
【0088】
次に、回転規制部54およびそれを有するリング部材44の構成および機能について、
図11以降の図面を用いて説明する。
【0089】
図11、
図12は、リング部材44を異なる角度から見た斜視図である。
図11は、リング部材44が有する一対の位置決め部56A、56Bのうち、一方の位置決め部56Aが奥側に位置する角度から見た斜視図であり、
図12は、もう一方の位置決め部56Bが奥側に位置する角度から見た斜視図である。
【0090】
図11、
図12に示すように、略円筒状のリング部材44は、内周部89に回転規制部54を有する。回転規制部54は、軸方向Lの下段に位置する第1回転規制部90と、軸方向Lの上段に位置する第2回転規制部91と、を備える。
【0091】
図11に示すように、第1回転規制部90は、規制壁92Aとスロープ94Aとを有する。
図12に示すように、第1回転規制部90は、規制壁92Bとスロープ94Bとを有する。
図11、
図12に示す第1回転規制部90は、一対の規制壁92A、92Bと、一対のスロープ94A、94Bとを有する。
【0092】
規制壁92A、92Bは、アンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を規制するように、内周部89から径方向内側に突出する壁部である。規制壁92A、92Bはともに、第2回転方向R2に向けて面している。一対の規制壁92A、92Bは、互いに対向する位置に設けられ、一対の可動ピン58A、58Bに対して略同じタイミングで接触する。規制壁92A、92Bに隣接する位置にそれぞれ、スロープ94A、94Bが設けられる。
【0093】
スロープ94A、94Bはそれぞれ、アンテナシャフト20が第2回転方向R2に回転するときに、可動ピン58A、58Bが規制壁92A、92Bを乗り越えることを補助するための傾斜壁である。スロープ94A、94Bはそれぞれ、規制壁92A、92Bに近付く方向の第2回転方向R2に沿って高さが漸増するように滑らかに傾斜する。規制壁92A、92Bとスロープ94A、94Bを設けることで、アンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を規制しながら、第2回転方向R2の回転を許容することができる。
【0094】
上段の第2回転規制部91は、
図11、
図12に示すように、一対の規制壁96A、96Bと、一対のスロープ98A、98Bとを有する。
【0095】
規制壁96A、96Bは、アンテナシャフト20の第2回転方向R2の回転を規制するように、内周部89から径方向内側に突出する壁部である。規制壁96A、96Bはともに、第1回転方向R1に向けて面している。一対の規制壁96A、96Bは、互いに対向する位置に設けられ、一対の可動ピン58A、58Bに対して略同じタイミングでそれぞれ接触する。規制壁96A、96Bに隣接する位置にそれぞれ、スロープ98A、98Bが設けられる。
【0096】
スロープ98A、98Bはそれぞれ、アンテナシャフト20が第1回転方向R1に回転するときに、可動ピン58A、58Bが規制壁96A、96Bを乗り越えることを補助するための傾斜壁である。スロープ98A、98Bはそれぞれ、規制壁96A、96Bに近付く方向の第1回転方向R1に沿って高さが漸増するように滑らかに傾斜する。規制壁96A、96Bとスロープ98A、98Bを設けることで、アンテナシャフト20の第2回転方向R2の回転を規制しながら、第1回転方向R1の回転を許容することができる。
【0097】
内周部89における下段と上段の間の中段には、隔壁部100が設けられる。隔壁部100は、下段と上段を隔離するように内周部89から内側に突出する壁部であり、周方向Rに沿って延びる。隔壁部100によって、下段に溝102が形成され、上段に溝104が形成される。
【0098】
隔壁部100は、周方向Rの一部が途切れており、隙間106を形成する。隙間106は、軸方向Lに沿って延びる隙間であり、第1回転規制部90と第2回転規制部91の間に設けられる。第1回転規制部90と第2回転規制部91は、隙間106によって周方向Rに隔てられる。隙間106を設けることで、可動ピン58A、58Bが規制壁92A、92Bあるいは規制壁96A、96Bによって回転規制されたときに、モータ軸21の回転に伴って可動ピン58A、58Bおよびアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って上下動するスペースを確保できる。
【0099】
上記構成を有する回転規制部54の機能・動作について、
図13~
図16を用いて説明する。
【0100】
図13は、可動ピン58A、58Bが下段に位置するときに可動ピン58A、58Bおよびアンテナシャフト20が第1回転方向R1に回転する場合の動作を説明するための斜視図である。
図13および
図14~
図16では、可動ピン58A、58Bの係合部88A、88Bを点線で概略的に図示する。
【0101】
図13に示すように、下段に位置する可動ピン58A、58Bが第1回転方向R1に回転すると、第2回転方向R2に面するように突出した規制壁92A、92Bに当接して、回転が規制される。アンテナシャフト20の回転が規制された状態でモータ軸21が第1回転方向R1に回転することに応じて、モータ軸21に螺合したアンテナシャフト20が軸方向Lに沿って相対的に上昇する(矢印H1)。可動ピン58A、58Bは、下段から中段を経て上段に移動する。
【0102】
上段に移動した可動ピン58A、58Bは、上段の溝104において第1回転方向R1に回転する。
【0103】
図14は、可動ピン58A、58Bが上段に位置するときに可動ピン58A、58Bおよびアンテナシャフト20が第1回転方向R1に回転する場合の動作を説明するための斜視図である。
【0104】
図14に示すように、上段に位置する可動ピン58A、58Bが第1回転方向R1に回転すると、第1回転方向R1に沿って高さが漸増するスロープ98A、98Bに沿って摺動し、規制壁96A、96Bを乗り越える。可動ピン58A、58Bがスロープ98A、98Bに沿って摺動する際は、付勢部材74が縮みながら摺動する。これにより、第1回転方向R1に継続的に回転できる。
【0105】
図15は、可動ピン58A、58Bが上段に位置するときに可動ピン58A、58Bおよびアンテナシャフト20が第2回転方向R2に回転する場合の動作を説明するための斜視図である。
【0106】
図15に示すように、上段に位置する可動ピン58A、58Bが第2回転方向R2に回転すると、第1回転方向R1に面するように突出した規制壁96A、96Bに当接して、回転が規制される。アンテナシャフト20の回転が規制された状態でモータ軸21が第2回転方向R2に回転することに応じて、モータ軸21に螺合したアンテナシャフト20は、軸方向Lに沿って相対的に下降する(矢印H2)。可動ピン58A、58Bは、上段から中段を経て下段に移動する。
【0107】
下段に移動した可動ピン58A、58Bは、下段の溝102において第2回転方向R2に回転する。
【0108】
図16は、可動ピン58A、58Bが下段に位置するときに可動ピン58A、58Bおよびアンテナシャフト20が第2回転方向R2に回転する場合の動作を説明するための斜視図である。
【0109】
図16に示すように、下段に位置する可動ピン58A、58Bが第2回転方向R2に回転すると、第2回転方向R2に沿って高さが漸増するスロープ94A、94Bに沿って摺動し、規制壁92A、92Bを乗り越える。可動ピン58A、58Bがスロープ94A、94Bに沿って摺動する際は、付勢部材74が縮みながら摺動する。これにより、第2回転方向R2に継続的に回転できる。
【0110】
上記構成によれば、アンテナシャフト20の可動ピン58A、58Bとリング部材44の回転規制部54を用いて、回転アンテナ16の回転機能と上下動機能を実現することができる。
図3A、
図3Bに示すように、リング部材44を内蔵したカバー部材26と、カバー部材26の内側に設けたアンテナシャフト20でこれらの動作を実現することができ、アンテナ駆動機構14の小型化につながる。
【0111】
アンテナシャフト20については、
図7、
図8に示すように、第2シャフト66の内側に、可動ピン58、位置決めピン62、付勢部材74を配置することで、小型化することができる。第2シャフト66を金属製とすることで、第2シャフト66の内部空間に金属製の部材を配置することができ、付勢部材74、76を金属製として耐久性を高めることができる。
【0112】
(作用・効果)
上述したように、本実施形態のアンテナ駆動機構14は、加熱室4にマイクロ波を供給するための回転アンテナ16を支持するアンテナシャフト20と、アンテナシャフト20に螺合して、アンテナシャフト20と一体的に回転可能であり、第1回転方向R1又は第2回転方向R2に回転駆動されるモータ軸21と、アンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を選択的に規制する第1回転規制部90、および第2回転方向R2の回転を選択的に規制する第2回転規制部91と、を備え、アンテナシャフト20は、第1回転規制部90の回転規制を受けた状態で、モータ軸21が第1回転方向R1に回転することに応じて、当該回転規制を受ける下降位置(第1の位置)から、当該回転規制が解除される上昇位置(第2の位置)へ、軸方向Lに沿って相対的に移動し、アンテナシャフト20は、第2回転規制部91の回転規制を受けた状態で、モータ軸21が第2回転方向R2に回転することに応じて、当該回転規制を受ける上昇位置から、当該回転規制が解除される下降位置へ、軸方向Lに沿って相対的に移動する。
【0113】
このような構成によれば、モータ軸21の回転方向を切り替えることで、アンテナシャフト20の軸方向Lの位置を変化させて、回転アンテナ16を軸移動させることができる。これにより、簡単な構成で回転アンテナ16の回転移動と軸移動を実現することができ、アンテナ駆動機構14の高機能化と小型化を両立させることができる。
【0114】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、アンテナシャフト20の外周部23に対向するように設けられたカバー部材26をさらに備え、第1回転規制部90および第2回転規制部91は、カバー部材26の内周部89に設けられる。このような構成によれば、カバー部材26の内周部89を用いて回転規制部90、91を構成することができる。
【0115】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、回転アンテナ16に向けてマイクロ波を伝送する導波管構造12をさらに備え、カバー部材26は、導波管構造12に取り付けられる。このような構成によれば、カバー部材26を簡単に設けることができる。
【0116】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、カバー部材26は、第1回転規制部90および第2回転規制部91を有して内周部89を構成するリング部材44(第1部材)と、リング部材44を内側に取り付けて導波管構造12に取り付けられる上カバー36(第2部材)と、を備える。このような構成によれば、上カバー36を導波管構造12に取り付けながら、リング部材44に設ける回転規制部90、91の形状をアレンジしやすくなる。
【0117】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、アンテナシャフト20は、軸方向Lに交差する横方向に突出する可動ピン58A、58B(突出部)を有し、第1回転規制部90は、可動ピン58A、58Bを第1回転方向R1に受ける規制壁92A、92B(第1規制壁)を有し、第2回転規制部91は、可動ピン58A、58Bを第2回転方向R2に受ける規制壁96A、96B(第2規制壁)を有し、規制壁92A、92Bおよび規制壁96A、96Bは、軸方向Lの位置が互いに異なる。このような構成によれば、回転規制部90、91を簡単な構造で実現することができる。
【0118】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、第1回転規制部90は、規制壁92A、92B(第1規制壁)に隣接して設けられ、第2回転方向R2に沿って高さが漸増するスロープ94A、94B(第1スロープ)を有し、第2回転規制部91は、規制壁96A、96B(第2規制壁)に隣接して設けられ、第1回転方向R1に沿って高さが漸増するスロープ98A、98B(第2スロープ)を有する。このような構成によれば、規制壁92A、92Bは、アンテナシャフト20の第1回転方向R1の回転を規制する一方で、第2回転方向R2の回転は許容し、規制壁96A、96Bは、アンテナシャフト20の第2回転方向R2の回転を規制する一方で、第1回転方向R1の回転は許容するように構成することができる。
【0119】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、アンテナシャフト20は、可動ピン58A、58B(突出部)を突出方向に付勢する付勢部材74(第1付勢部材)をさらに有する。このような構成によれば、可動ピン58A、58Bを突出方向に付勢することで、可動ピン58A、58Bを規制壁92A、92B、96A、96Bに対してより確実に接触させやすくなる。
【0120】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、可動ピン58A、58B(突出部)は、横方向の一方側に突出する可動ピン58A(第1可動ピン)と、横方向の他方側に突出する可動ピン58B(第2可動ピン)とを有し、付勢部材74(第1付勢部材)は、可動ピン58A、58Bをそれぞれの突出方向に付勢する。このような構成によれば、共通の付勢部材74を用いることでコストを低減できる。
【0121】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、アンテナシャフト20は、モータ軸21に螺合する第1シャフト64と、第1シャフト64の外側に配置され、第1シャフト64と一体的に移動可能な第2シャフト66とを備え、回転アンテナ16は、第2シャフト66に取り付けられる。このような構成によれば、第1シャフト64と第2シャフト66の形状や材質を異ならせることができる。
【0122】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、第1シャフト64と第2シャフト66の間で軸方向Lに付勢力を発生させる付勢部材76(第2付勢部材)をさらに備える。このような構成によれば、回転アンテナ16が他の物体(例えば加熱室4の底壁部18)に接触したときに緩衝作用を生じさせることができる。
【0123】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、第1シャフト64は樹脂製であり、第2シャフト66は金属製である。このような構成によれば、第2シャフト66を金属製にすることで、マイクロ波を給電するための同軸構造を作ることができるとともに、第1シャフト64を樹脂製にすることで、軽量化・低コスト化を実現することができる。
【0124】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、第1シャフト64は、軸方向Lに交差する横方向(アンテナシャフト20の径方向)に突出する可動ピン58A、58B(突出部)を有し、第2シャフト66は、可動ピン58A、58Bを横方向に通過させる貫通孔82を有する。このような構成によれば、アンテナシャフト20を2つのシャフト64、6に分割しながら、回転規制部90、91に係合させるための可動ピン58A、58Bを外側に突出させることができる。
【0125】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、回転アンテナ16は、アンテナシャフト20が下降位置(第1の位置)にあるときに、加熱室4を構成する底壁部18(壁部)から離れた位置にあり、アンテナシャフト20が上昇位置(第2の位置)にあるときに、底壁部18に接触する。このような構成によれば、アンテナシャフト20が加熱室4に近付いたときに回転アンテナ16を底壁部18に接触させることで、マイクロ波の放射態様を安定化させることができ、調理出来栄えの均一化につながる。
【0126】
また、本実施形態のアンテナ駆動機構14では、回転アンテナ16は、加熱室4の底壁部18に接触する。このような構成によれば、加熱室4の下方からマイクロ波を給電することができる。
【0127】
上述したように、本実施形態のアンテナ駆動機構14は、加熱室4にマイクロ波を供給するための回転アンテナ16を支持するアンテナシャフト20と、アンテナシャフト20に第1回転方向R1又は第2回転方向R2の回転駆動力を与えるモータ24と、アンテナシャフト20が第1回転方向R1の回転駆動力を受けるときは、アンテナシャフト20の軸方向Lの位置を下降位置(第1の位置)に配置し、アンテナシャフト20が第2回転方向R2の回転駆動力を受けるときは、アンテナシャフト20の軸方向Lの位置を下降位置とは異なる上昇位置(第2の位置)に配置するように、アンテナシャフト20の回転動作を選択的に規制する回転規制部54と、モータ24による回転駆動力の回転方向を制御する制御部17と、を備える。
【0128】
このような構成によれば、モータ24による回転駆動力の回転方向を切り替えることで、アンテナシャフト20の軸方向Lの位置を変化させて、回転アンテナ16を軸移動させることができる。これにより、簡単な構成で回転アンテナ16の回転移動と軸移動を実現することができ、アンテナ駆動機構14の高機能化と小型化を両立させることができる。
【0129】
上述したように、本実施形態のマイクロ波加熱装置2は、アンテナ駆動機構14と、アンテナ駆動機構14が駆動する回転アンテナ16と、回転アンテナ16がマイクロ波を供給する加熱室4と、を備える。このような構成によれば、アンテナ駆動機構14と同様の効果を奏することができる。
【0130】
以上、上述の実施形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、可動ピン58A、58Bが可動式で、規制壁92A、92B、96A、96Bが固定式である場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、可動ピンを固定式とし、規制壁を可動式としてもよい。この場合、可動ピンを外側に付勢する付勢部材74を省略して、規制壁を内側に付勢する付勢部材を設ければよい。一方で、実施形態のように可動ピン58A、58Bを可動式として付勢部材74で付勢する構成では、金属製の第2シャフト66の内側に金属製の付勢部材74を収めることができ、マイクロ波の供給形態に影響を与えないようにしながら、耐久性の高い付勢部材74を用いることができ、アンテナシャフト20の小型化にもつながる。
【0131】
また上記実施形態では、可動ピン58A、58B、位置決めピン62A、62B、規制壁92A、92B、スロープ94A、94B、規制壁96A、96B、スロープ98A、98Bをそれぞれ一対ずつ設ける場合について説明したが、このような場合に限らず、少なくとも1つずつ設ければよい。
【0132】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0133】
前記実施形態の様々な変形例のうち、任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本開示は、回転アンテナを駆動するアンテナ駆動機構およびそれを備えるマイクロ波加熱装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0135】
2 マイクロ波加熱装置
4 加熱室
14 アンテナ駆動機構
16 回転アンテナ
17 制御部
20 アンテナシャフト
21 モータ軸
24 モータ
54 回転規制部
90 第1回転規制部
91 第2回転規制部
L 軸方向
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向