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特開2024-157279物資調達調整支援システム及び物資調達調整支援方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157279
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】物資調達調整支援システム及び物資調達調整支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241030BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071549
(22)【出願日】2023-04-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人防災科学技術研究所、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化/避難・緊急活動支援統合システムの研究開発/道路・海上交通解析技術と連携した物資供給支援技術の研究開発(物資供給支援技術)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 延之
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】異常時に、特定の供給元への物資の発注が集中して発注過多が起き、物資供給が困難になり、特定地域での物資不足が起きる。
【解決手段】平時の第1の状態時の取引実績に基づいて、物資事業者が受けた発注量と、その内の外部調達される量とを推定し、第2の状態時において、過去の第2の状態時と同一又は類似する調達実績に基づいて、外部調達される量を推定し、第1の状態と第2の状態における推定に基づいて物資事業者への発注量を推定し、発注者の発注を調整するための情報を出力するシステムとする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物資の調達の調整を支援する物資調達調整支援システムであって、
演算処理を実行する制御部と、前記制御部がアクセス可能な記憶部と、入出力部とを備え、
前記物資の発注者が物資事業者に物資を発注し、前記物資事業者が前記発注に対応して前記物資を供給する際の支援をするものであり、
前記制御部が、
平時である第1の状態における前記物資事業者の取引実績に基づいて、第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、
前記第1の状態と異なる第2の状態における過去の調達実績に基づいて、前記第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち前記第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、
前記第1の状態における外部調達される量と前記第2の状態における外部調達される量とに基づいて前記第1の物資事業者への発注量を推定し、
当該推定された前記第1の物資事業者への発注量を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、
前記第1の物資事業者から取得した前記第2の状態における前記第1の物資事業者の供給可能量と、前記第2の状態における前記物資の供給の低下を示す情報とに基づいて、前記第2の状態における前記第1の物資事業者の前記物資の供給が制約された実質の供給可能量を推定し、
前記推定された実質の供給可能量を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記推定された実質の供給可能量と前記推定された前記第1の物資事業者への発注量との差を計算し、前記計算された差を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記推定された実質の供給可能量より前記推定された発注量が多い場合、当該物資事業者への発注の中止を推奨する情報を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記物資事業者への発注の中止時に、代替となる前記物資事業者へ発注する推奨案を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記第2の状態における前記第1の物資事業者の供給可能量を前記第1の物資事業者から取得し、
前記第1の状態における外部調達される量及び前記第2の状態における外部調達される量に基づいて、前記発注者が前記物資事業者に発注した場合の前記物資の発注量を推定し、
当該推定された前記物資の発注量と前記取得した前記物資事業者の供給可能量とを出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記取得した前記物資事業者の供給可能量と前記推定された物資の発注量との差を計算し、前記計算された差を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項8】
請求項6に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記取得した前記物資事業者の供給可能量より前記推定した物資の発注量が多い場合、当該物資事業者への発注の中止を推奨する情報を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記制御部が、前記物資事業者への発注の中止時に、代替となる前記物資事業者へ発注する推奨案を出力することを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項10】
請求項1に記載の物資調達調整支援システムであって、
前記発注者は、国の機関及び地方自治体を含むことを特徴とする物資調達調整支援システム。
【請求項11】
物資調達調整支援システムが物資の調達の調整を支援する物資調達調整支援方法であって、
前記物資調達調整支援システムは、
演算処理を実行する制御部と、前記制御部がアクセス可能な記憶部と、入出力部とを有し、
前記物資の発注者が物資事業者に物資を発注し、前記物資事業者が前記発注に対応して前記物資を供給する際の支援をするものであり、
前記物資調達調整支援方法は、
前記制御部が、平時である第1の状態における前記物資事業者の取引実績に基づいて、第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、
前記制御部が、前記第1の状態と異なる第2の状態における過去の同一又は類似する調達実績に基づいて、前記第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち前記第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、
前記制御部が、前記第1の状態における外部調達される量と前記第2の状態における外部調達される量とに基づいて前記第1の物資事業者への発注量を推定し、
前記制御部が、当該推定された前記第1の物資事業者への発注量を出力することを特徴とする物資調達調整支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常時の物資調達調整支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震を初めとする自然災害が発生した際には、災害地を支援する物資を調達し被災地に届ける活動が行われる。
【0003】
特許文献1は、災害発生時に被災者ニーズと避難所状況とを加味して、限られた物資を適正に分配可能にし、物資の提供を行う物資提供団体を適正に選択、決定することを課題として次に述べる物資分配支援方法及びシステムを開示している。避難所側装置は、被災者自身が入力するニーズ情報、避難所側の責任者等が入力する避難者の人数、避難所周辺の被災状況等の避難所情報を受付けて自治体側装置へ送信する。自治体側装置は、ニーズ情報、物資提供団体の在庫量等を元に、各避難所に対する適正な物資分配を行い、過去の物資提供量、避難所別の1人当りの平均物資消費量等を考慮して、再び各避難所に対する適正な物資分配を行いその結果を登録する。自治体側装置は、避難所と物資提供団体の拠点との距離、物資の在庫量等を指標として、優先的に物資を提供する団体を選択、決定し、物資提供団体が決定すると、当該物資提供団体へ、物資提供先である避難所住所、必要な量等の物資手配情報を送信するという技術を開示している。
【0004】
特許文献2は、ネットワークを介して受発注取引を仲介する場合に、発注元から個別に発注された複数の発注情報を効果的にまとめた一括発注情報を作成して最適な発注先へ送信する一括発注仲介サービスを提供できるようにすることを課題として次に述べる物資分配支援方法及びシステムを開示している。発注仲介サーバは、複数の発注元端末からネットワーク網を介して送信されて来た各個別発注情報を受け付けて収集管理すると共に、各個別発注情報に含まれている発注商品とその希望納期とを元に、発注商品別に希望納期が重複し合う複数の個別発注をまとめる一括発注情報を作成する。発注仲介サーバは、この一括発注情報に基づいて最適な発注先を決定して、その発注先端末に対して一括発注情報を送信するという技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-188331号公報
【特許文献2】特開2003-233737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、異常時(例えば災害発生時)に、特定の供給元への物資の発注が集中して、その供給元の供給可能な量を発注が上回る状況が起き、物資供給が困難になり、特定地域(例えば被災地)での物資不足が起きる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物資の調達の調整を支援する物資調達調整支援システムであって、演算処理を実行する制御部と、前記制御部がアクセス可能な記憶部と、入出力部とを備え、前記物資の発注者が物資事業者に物資を発注し、前記物資事業者が前記発注に対応して前記物資を供給する際の支援をするものであり、前記制御部が、平時である第1の状態における前記物資事業者の取引実績に基づいて、第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、前記第1の状態と異なる第2の状態における過去の調達実績に基づいて、前記第1の前記物資事業者が引き受けた発注量のうち前記第2の物資事業者に外部調達される量を推定し、前記第1の状態における外部調達される量と前記第2の状態における外部調達される量とに基づいて前記第1の物資事業者への発注量を推定し、当該推定された前記第1の物資事業者への発注量を出力することを特徴とする物資調達調整支援システムとする。
【発明の効果】
【0008】
発災時に、特定の供給元への物資の発注過多を避け、物資供給を円滑に進め、特定地域での物資不足のリスクを低減する。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】物資調達調整の流れを示す概念例を示す図である。
図2】物資調達調整支援システムのシステム構成例を示す図である。
図3A】調達調整管理データベースのデータ構成例を示す図である。
図3B】調達調整管理データベースのデータ構成例を示す図である。
図4】平時の取引実績データベースのデータ構成例を示す図である。
図5】災害状況データベースのデータ構成例を示す図である。
図6】過去の災害状況データベースのデータ構成例を示す図である。
図7A】災害時の調達実績データベースのデータ構成例を示す図である。
図7B】災害時の調達実績データベースのデータ構成例を示す図である。
図8】状況判定指針データベースのデータ構成例を示す図である。
図9】協定等管理データベースのデータ構成例を示す図である。
図10A】推奨案提示処理例のフローチャートである。
図10B】推奨案提示処理例のフローチャートである。
図11】再調整画面の例である。
図12A】再調整画面の例を示す図である。
図12B】再調整画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
【0011】
本実施例では、物資調達調整支援システムを用いて災害時に行政が行う物資の調達調整を支援するための例を示す。具体的には、物資調達調整支援システムを用いて都道府県等の地方自治体や政府が同時並行で物資事業者に物資調達のための発注作業を行う際に、物資事業者への実質的な発注量を可視化する。この可視化に伴い、物資調達調整支援システムが、当該物資事業者に対して発注を中止する案や他の代替の物資事業者への発注する案等の推奨案を提示する例を示す。これにより、複数の発注元からの発注が特定の物資事業者に集中して、当該物資事業者に対する発注過多が起こり、物資供給の停滞に繋がることを回避する。
【0012】
本実施例の物資調達調整支援システムは、主に災害時などの物資の発注が集中する状態における物資の調達を調整支援する物資調達調整支援システムである。図1図12を用いて、本実施例の詳細を説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、物資の調達調整を支援するための何れの状況においても、本発明は適用可能である。
【0013】
ここで、実施例の詳細を説明する前に、まず本実施例の概要を、図1を用いて説明する。本実施例では、政府や都道府県等の地方自治体が物資事業者に物資調達のための発注を行う場合である。図1は、物資調達調整の流れを示す概念例を示す図である。図1に、概念例として概念図100を示す。
【0014】
概念図100は、物資の品目や納期を示す欄である品目・納期101と、図式の見方を示す凡例102及び他の構成要素で構成される。ここで納期は、到着希望の日として例示されている。凡例102は、要請/発注の流れを示す矢印、物資の流れを示す別の矢印、物資調達調整支援システム200で推定された流れを示す破線、及び物資調達調整支援システム200からの推奨案を示す二重線等で構成される。
【0015】
概念図100の他の構成要素は、発注元111、供給元(小売)112、供給元(メーカ)113、供給先114である。ここで、発注元111は供給元(小売)112や供給元(メーカ)113に物資を発注し、供給元(小売)112は供給元(メーカ)113に物資を発注して、供給元(小売)112や供給元(メーカ)113から供給先114に物資を供給することを示す。図1において、発注元111、供給元(小売)112、供給元(メーカ)113及び供給先114の各欄は、それぞれの横方向の並びがそれぞれの欄に対応することを示している。供給元(小売)112及び供給元(メーカ)113は、物資事業者に該当する。
【0016】
次に、この実施例における物資の発注や供給の流れを具体的に説明する。発注元111は、被災地で災害対応にあたる地方自治体であるX県121並びに、被災地に対して物資支援を行う政府の物資所管省庁であるK1省122、及びK2省123などである。また、供給元(小売)112は、a1社124や、a2社125や、a3社126等である。また、供給元(メーカ)113は、b1社127や、b2社128、及びb3社129等である。また、供給先114は、被災地の地方自治体の物資倉庫として使うX県物資拠点130等である。本実施例では、X県で災害が発生した場合を例に説明する。
【0017】
ここで、被災地の地方自治体であるX県121は、まず、協定を結んでいる供給元のb1社127に発注131を行い、b1社127から被災地のX県物資拠点130に物資の供給132を行う。ここで協定は、例えば発注元111が供給元(メーカ)113との間で締結している、災害の発生のような緊急事態が発生した場合における相互の対応を取り決めたものである。
【0018】
一方で、被災地であるX県121から政府に物資支援を要請する場合、X県は、まず政府を取り纏めるN府120に要請133を行う。この要請133は物資の支援要請を含むものである。次にN府120はK1省122に物資調達の要請134を行う。
【0019】
この要請を受けたK1省122は、b2社128に物資の発注135を行うと共に、b3社129に物資の発注136を行う。それを受けて、b2社128は、被災地のX県物資拠点130に物資の供給137を行い、b3社129もX県物資拠点130に物資の供給138を行う。
【0020】
同様に、N府120はK2省123にも物資調達の要請139を行う。K2省123は、a1社124に物資の発注140を行い、a2社125に物資の発注141を行い、a3社126に物資の発注142を行う。これを受けて、a1社124、a2社125、a3社126は、それぞれ被災地のX県物資拠点130に物資の供給を行う。ここで、a3社126は、物資の製造能力を有しており、X県物資拠点130への供給143を直接行うことができる。一方で、a1社124とa2社125は、物資の製造能力を持たず、保有している在庫が乏しいことから、a1社124はb3社129に発注150を行い、a2社125も同様にb3社129に発注150を行い、b3社129での被災地のX県物資拠点130への物資の供給138をもって、物資調達に対応する。供給138には、発注136、発注150及び発注151で発注された物資が含まれている。
【0021】
この際、a1社124からb3社129への発注150と、a2社125からb3社129への発注151は、本来の発注元であるK2省123では把握できず、物資調達調整支援システム200にも登録されない情報のため、物資調達調整支援システム200で推定して補完する。推定方法としては、供給元(小売)112と供給元(メーカ)113との平時の取引実績から、実際の供給元がb3社129になることを推定する推定方法160と、供給元(小売)112と供給元(メーカ)113の過去の災害時の調達実績から、実際の供給元がb3社129になることを推定する推定方法161とがある。推定方法160及び推定方法161は、個々に推定するケースと、各々の推定結果を統合して一つの推定結果とするケースの両方がある。また、推定結果に対応して、代替案として、発注の中止を推奨する推奨案152と、他の代替の供給元への発注を推奨する推奨案153を示す。ここでは、特定の供給元に対して発注が集中して発注過多の起こることが事前に推定された場合に、それへの代替案として、発注過多の起きる供給元への発注の中止を推奨する案162と、他の代替の供給元への発注を推奨する案163を例示する。
【0022】
図2は、物資調達調整支援システムのシステム構成例を示す図である。図2を用いて物資調達調整支援システム200の構成を説明する。
【0023】
物資調達調整支援システム200は、演算処理を実行する制御部230、主記憶部210、補助記憶部220、通信部231、及び入出力部232を有する。これらはバスによって相互に接続されている。
【0024】
補助記憶部220は、調達調整管理データベース221、平時の取引実績データベース222、災害状況データベース223、過去の災害状況データベース224、災害時の調達実績データベース225、状況判定指針データベース226、及び協定等管理データベース227を格納している。図2においては、これらデータベースを「DB」と略記している。
【0025】
主記憶部210は、本実施例に係る物資調達調整支援システム200を動作させるプログラムを格納している。調達調整支援部211、発注量推定部212、再調整推奨部213は、プログラムで構成することができる。以降、「…部は」と主体を記した場合は、制御部230が、補助記憶部220から各プログラムを読み出し、主記憶部210にロードしたうえで、各プログラムの機能を実現できるものである。各プログラムの機能の詳細は後に述べる。
【0026】
物資調達調整支援システム200は、例えば政府が被災地の地方自治体に物資支援を行うために、政府が物資事業者に対して物資調達のための発注を行うことを支援するシステムである。また、政府・県連携システム250は、地方自治体が、被災地での災害対応を行う市町村に対して、避難所管理や物資調達などを支援するためのシステムである。具体的には、例えば被災した県が政府に支援要請を行うことなどを扱うものである。また、地方自治体が政府に物資支援を要請して、政府が前記要請に応じて地方自治体への物資供給量を決定するまでを支援するシステムである。政府・県連携システム250は、図1の概念図100において、発注元111から上に記載された範囲を扱うものである。政府・県連携システム250は、物資調達調整支援システム200で扱うような民間の物資事業者は関与しないシステムである。ここで、政府・県連携システム250は一般的なコンピュータを用いて構成されるシステムであり、通信回線240を介して、物資調達調整支援システム200と通信することができる。
【0027】
通信回線240には、LAN(Local Area Network)の他、専用回線、WAN(Wide Area Network)、電灯線ネットワーク、無線ネットワーク、公衆回線網、携帯電話網、衛星通信回線など、様々なネットワークを採用することができる。また、公衆回線網など公開された通信回線を採用する場合は、VPN(Virtual Private Network)技術を用いて通信内容を秘匿して擬似的に専用回線化してもよい。
【0028】
なお、図2では、物資調達調整支援システム200は独立して入出力を行う構成としたが、通信回線240で他の端末と接続し、その端末の入出力部を使用して情報を入出力する構成としてもよい。また、物資調達調整支援システム200は政府・県連携システム250のサブシステムとしてもよく、あるいは物資調達調整支援システム200と政府・県連携システム250の両者を包含するシステムのサブシステムとしてもよい。
【0029】
制御部230が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して物資調達調整支援システム200に提供され、非一時的記憶媒体である補助記憶部220に格納される。このため、物資調達調整支援システム200は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0030】
物資調達調整支援システム200は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、物資調達調整支援システム200の機能を実現する複数のプログラムは、各々が別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0031】
ここで、物資調達調整支援システム200で用いるデータベースの詳細を説明する。
【0032】
図3A図3Bは、調達調整管理データベースのデータ構成例を示す図である。図3A図3Bを用いて調達調整管理データベース221の構成を説明する。
【0033】
調達調整管理データベース221においては、図3Aに示す県から国への要請管理テーブル300と、図3Bに示す現在の調達状況テーブル310とが記憶されている。
【0034】
図3Aに例示する県から国への要請管理テーブル300においては、地方自治体から政府への物資支援の要請内容を示すデータが記憶されている。ここでは、政府・県連携システム250が物資調達調整支援システム200に通信回線240を介して送信した当該物資支援の要請内容を示すデータを送信したものを記憶することができる。なお、この情報を、物資調達調整支援システム200の入出力部232から入力することとしてもよい。
【0035】
県から国への要請管理テーブル300は、災害ID301、要請ID302、要請日時303、要請元304、要請先305、品目306、数量307、納期308、及び納品先(供給先)309で構成される例を示している。県から国への要請管理テーブル300においては、このテーブルの各行がそれぞれレコードを構成するものでよい。各レコードを識別するためのキーは、災害ID301と要請ID302である。県から国への要請管理テーブル300において、太い枠で囲まれた情報が各レコードを識別するためのキーを示している。これと同様に、以降のデータベースに関する説明において、太い枠で囲まれた情報が各レコードを識別するためのキーを示している。
【0036】
災害ID301は、災害を一意に識別するための識別子で、政府・県連携システムで付番したものである。なお、ここで、災害情報を検知した物資調達調整支援システム200が付番するよう構成してもよい。要請ID302は、地方自治体から政府への物資支援の要請を一意に識別するための識別子で、政府・県連携システムで付番したものである。なお、ここで要請ID302は、物資支援の要請を検知した物資調達調整支援システム200が付番するよう構成してもよい。
【0037】
要請日時303は、要請ID302の要請が地方自治体から行われた日時を示す。要請元304は、要請ID302の要請を行った地方自治体を示す。要請先305は、要請ID302の要請の要請先を示し、この例ではN府が該当する。品目306は、要請ID302の要請がどの物資に関するものかを示す。数量307は、要請ID302の要請の数量を示す。納期308は、要請ID302の要請の納期を示す。納品先(供給先)309は、要請ID302の要請の納品先を示し、ここでは供給先と同義である。
【0038】
次に、図3Bに例示する現在の調達状況テーブル310においては、地方自治体や政府が物資事業者に対して行う物資の調達状況の現状を示すデータが記憶されている。現在の調達状況テーブル310は、地方自治体や政府が物資事業者に物資の供給可能量を問い合わせ、物資事業者が回答した供給可能量に関するデータを含んでいる。また、現在の調達状況テーブル310は、地方自治体や政府は、物資事業者の回答に応じて物資を発注する際に、地方自治体や政府、物資事業者が各々の作業内容を登録したデータを含んでいる。
【0039】
現在の調達状況テーブル310は、災害ID311、要請ID312、発注元313、発注先314、供給元315、品目316、発注日時317、納期318、納品先(供給先)319、供給可能量320、発注量321、供給元市町村ID322、及び納品日323で構成される例が示されている。各レコードを識別するためのキーは、災害ID311、要請ID312、発注元313、発注先314、供給元315、品目316、発注日時317、納期318、及び納品先(供給先)319である。
【0040】
災害ID311は、災害ID301と同様に、災害を一意に識別するための識別子である。要請ID312は、要請ID302と同様に、地方自治体から政府への物資支援の要請を一意に識別するための識別子である。発注元313は、要請ID312の要請に関して、物資調達のための発注を行う発注元を示し、ここでは地方自治体や政府が該当する。発注先314は、その発注先が属するレコードにおける発注の発注先を示し、ここでは物資事業者が該当する。供給元315は、その発注元が属するレコードにおける発注において、発注先314が手配した物資の供給元を示し、発注先314の拠点である倉庫や工場が該当する。また、供給元315は、発注先314からの外部調達先となった物資事業者の拠点である倉庫や工場が該当する。品目316は、その品目が属するレコードにおける発注がどの物資に関するものかを示す。多くの場合、品目316は、要請ID312の品目と一致するが、物資不足などにより別の品目で代替する場合は一致しない場合もある。発注日時317は、その発注日時が属するレコードにおける発注が、発注元313で行われた日時を示す。納期318は、前記発注の納期を示す。納品先(供給先)319は、その納期が属するレコードにおける発注の納品先を示し、ここでは供給先と同義である。
【0041】
供給可能量320は、その供給可能量が属するレコードにおける発注に関して、発注先314が発注元313にどのくらいの物資の供給が可能か、発注前に回答した際の数量を示す。発注量321は、その発注量が属するレコードにおける発注での数量を示す。供給元市町村ID322は、供給元315の置かれている場所の市町村を一意に識別するため識別子である。納品日323は、その納品日が属するレコードにおける発注での納品がされた期日を示す。
【0042】
図4は、平時の取引実績データベースのデータ構成例を示す図である。図4を用いて平時の取引実績データベース222の構成を説明する。
【0043】
平時の取引実績データベース222においては、図4に例示する平時の取引実績テーブル400が記憶されている。これは、災害の起きていない平時において、物資事業者の間で、どのくらいの物資の取引が行われているか、その実績を示すデータである。ここでは、物資事業者取引管理システム251が物資調達調整支援システム200に通信回線240を介してデータを送信したものを記憶するよう構成することができる。物資事業者取引管理システム251は、民間業者で受発注など、どのような取引が行われているかに関する情報、また民間業者における在庫状況などの情報を常時蓄積しているシステムである。物資事業者取引管理システム251には、民間業者における取引実績に関する情報が蓄積されている。なお、この情報を、物資調達調整支援システム200の入出力部232から入力することとしてもよい。また、物資事業者の各システムから物資調達調整支援システム200に通信回線240を介してデータを送信したものを記憶するとしてもよい。また、こうしたデータの代わりに、物資事業者の間でどのくらいの量の取引を行っているのか、それを物資事業者の間の比率とし、そのデータを記憶することとしてもよい。
【0044】
平時の取引実績テーブル400は、発注元401、発注先402、供給元403、品目404、発注日時405、納期406、納品先(供給先)407、発注量408、及び納品日409で構成される。各レコードを識別するためのキーは、発注元401、発注先402、供給元403、品目404、発注日時405、納期406、及び納品先(供給先)407である。
【0045】
発注元401は、発注元313と同様に、物資調達のための発注を行う発注元を示す。発注先402は、発注先314と同様に、その発注先が属するレコードにおける発注の発注先を示す。供給元403は、供給元315と同様に、その供給元が属するレコードにおける発注において、発注元401が手配した物資の供給元を示す。品目404は、品目316と同様に、その品目が属するレコードにおける発注がどの物資に関するものかを示す。発注日時405は、発注日時317と同様に、その発注日時が属するレコードにおける発注が発注元401で行われた日時を示す。納期406は、納期318と同様に、その納期が属するレコードにおける発注での納期を示す。納品先(供給先)407は、その納品先(供給先)319と同様に、その納品先(供給先)が属するレコードにおける発注での納品先を示す。発注量408は、発注量321と同様に、その発注量が属するレコードにおける発注での数量を示す。納品日409は、納品日323と同様に、その納品日が属するレコードにおける発注での納品の期日を示す。
【0046】
図5は、災害状況データベースのデータ構成例を示す図である。図5を用いて災害状況データベース223について説明する。
【0047】
図5に例示される災害状況データベース223においては、現在の災害状況テーブル500(図5)が記憶されている。現在の災害状況テーブル500に記憶されているのは、現在起きている災害の状況を示すデータである。この例では、災害情報共有システム252が物資調達調整支援システム200に通信回線240を介してデータを送信したものを記憶するものとする。災害情報共有システム252は、災害時に国の中で災害の情報を共有するシステムであって、例えば土砂災害が発生している場所の情報、避難所が開設されている場所の情報、及び通行止めとなっている道路の情報などの情報を蓄積し、提供しているシステムである。なお、この情報を、物資調達調整支援システム200の入出力部232から入力することとしてもよい。また、災害状況を監視している各システムから物資調達調整支援システム200に通信回線240を介して送信したデータを記憶するとしてもよい。
【0048】
図5に例示される現在の災害状況テーブル500は、災害ID501、災害種別502、市町村ID503、市町村名504、年月日505、及び災害規模506で構成される。各レコードを識別するためのキーは、災害ID501、災害種別502、及び市町村ID503である。
【0049】
災害ID501は、災害ID301と同様に、災害を一意に識別するための識別子である。災害種別502は、地震や風水害など、災害ID501の災害がどのような種類の災害なのか、その種別を示す。市町村ID503は、市町村を一意に識別するため識別子である。
【0050】
市町村名504は、市町村ID503が示す市町村の名称である。年月日505は、災害ID501の災害が発生した年月日を示す。災害規模506は、災害ID501の災害の規模を示す。
【0051】
図6は、過去の災害状況データベースのデータ構成例を示す図である。図6を用いて過去の災害状況データベース224について説明する。
【0052】
図6に例示する過去の災害状況データベース224においては、過去の災害状況テーブル600が記憶されている。過去の災害状況テーブル600に記憶されているのは、過去に起きた災害の状況を示すデータである。ここでは、過去の災害状況テーブル600にあるデータは、災害状況データベース223のデータを災害の対応後にコピーして記憶するものとする。なお、この情報を、物資調達調整支援システム200の入出力部232から入力するよう構成してもよい。
【0053】
過去の災害状況テーブル600は、災害ID601、災害種別602、市町村ID603、市町村名604、年月日605、及び災害規模606で構成される。各レコードを識別するためのキーは、災害ID601、災害種別602、及び市町村ID603である。
【0054】
災害ID601は、災害ID301と同様に、災害を一意に識別するための識別子である。災害種別602は、災害種別502と同様に、災害ID601がどのような種類の災害なのか、その種別を示す。災害ID601の災害が発生した市町村名604は、市町村名504と同様に、市町村ID603が示す市町村の名称である。年月日605は、年月日505と同様に、災害ID601の災害が発生した年月日を示す。災害規模606は、災害規模506と同様に、災害ID601の災害の規模を示す。
【0055】
図7A及び図7Bは、災害時の調達実績データベースのデータ構成例を示す図である。図7を用いて災害時の調達実績データベース225について説明する。
【0056】
災害時の調達実績データベース225においては、図7Aに例示する県から国への要請管理テーブル700、及び図7Bに例示する過去の調達実績テーブル710が記憶されている。
【0057】
図7Aに例示する県から国への要請管理テーブル700においては、地方自治体から政府への過去の物資支援の要請内容を示すデータが記憶されている。ここでは、調達調整管理データベース221の県から国への要請管理テーブル300のデータを災害の対応後にコピーして記憶するものとする。なお、この情報を、物資調達調整支援システム200の入出力部232から入力することとしてもよい。
【0058】
県から国への要請管理テーブル700は、県から国への要請管理テーブル300と同様に、災害ID701、要請ID702、要請日時703、要請元704、要請先705、品目706、数量707、納期708、及び納品先(供給先)709で構成されている。各レコードを識別するためのキーは、災害ID701と要請ID702である。
【0059】
災害ID701は、災害ID301と同様に、災害を一意に識別するための識別子である。要請ID702は、要請ID302と同様に、地方自治体から政府への物資支援の要請を一意に識別するための識別子である。
【0060】
要請日時703は、要請日時303と同様に、要請ID702の要請が地方自治体で行われた日時を示す。要請元704は、要請元304と同様に、要請ID702の要請を行った地方自治体を示す。要請先705は、要請先305と同様に、要請ID302の要請の要請先を示す。品目706は、品目306と同様に、要請ID702の要請がどの物資に関するものかを示す。数量707は、数量307と同様に、要請ID702の要請の数量を示す。納期708は、納期308と同様に、要請ID702の要請の納期を示す。納品先(供給先)709は、納品先(供給先)309と同様に、要請ID702の要請の納品先を示す。
【0061】
次に、図7Bで例示する過去の調達実績テーブル710においては、現在の調達状況テーブル310と同様に、地方自治体や政府が物資事業者に対して過去に行った物資の調達実績を示すデータが記憶されている。過去の調達実績テーブル710は、災害ID711、要請ID712、発注元713、発注先714、供給元715、品目716、発注日時717、納期718、納品先(供給先)719、供給可能量720、発注量721、供給元市町村ID722、及び納品日723で構成される。各レコードを識別するためのキーは、災害ID711、要請ID712、発注元713、発注先714、供給元715、品目716、発注日時717、納期718、及び納品先(供給先)719である。
【0062】
災害ID711は、災害ID301と同様に、災害を一意に識別するための識別子である。要請ID712は、要請ID302と同様に、地方自治体から政府への物資支援の要請を一意に識別するための識別子である。発注元713は、発注元313と同様に、要請ID712の要請に関して、物資調達のための発注を行う発注元を示す。発注先714は、発注先314と同様に、その発注先が属するレコードにおける発注の発注先を示す。供給元715は、供給元315と同様に、その供給元が属するレコードにおける発注において、発注先714が手配した物資の供給元を示す。品目716は、品目316と同様に、その品目が属するレコードにおける発注がどの物資に関するものかを示す。発注日時717は、発注日時317と同様に、その発注日時が属するレコードにおける発注が、発注元713で行われた日時を示す。納期718は、納期318と同様に、その納期が属するレコードにおける発注の納期を示す。納品先(供給先)719は、納品先(供給先)319と同様に、その納品先(供給先)が属するレコードにおける発注の納品先を示す。
【0063】
供給可能量720は、供給可能量320と同様に、その供給可能量が属するレコードにおける発注に関して、発注先714が発注元713にどのくらいの物資の供給が可能か、発注前に回答した際の数量を示す。発注量721は、発注量321と同様に、その発注量が属するレコードにおける発注での数量を示す。供給元市町村ID722は、供給元市町村ID322と同様に、供給元715の置かれている市町村を一意に識別するための識別子である。納品日723は、納品日323と同様に、その納品日が属するレコードにおける発注での納品の期日を示す。
【0064】
図8は、状況判定指針データベースのデータ構成例を示す図である。図8を用いて状況判定指針データベース226について説明する。
【0065】
状況判定指針データベース226においては、判定指標テーブル800が記憶されている。これは、災害による道路被害や停電などの図8に例示する周辺環境の悪化により、供給元から回答された物資の供給可能量が、実質的にはどの程度まで低下するかを示すデータである。言い換えると、判定指標テーブル800は、災害による物資の供給が低下する情報である。この物資の供給の低下が発生する要因には、前述の災害による道路被害や停電に限らず、物資の供給に関わる人員や運搬手段の不足など様々な場合が含まれる。ここでは、物資調達調整支援システム200のユーザが、物資調達調整支援システム200の入出力部232から該当する情報を入力することとする。なお、この情報を、政府・県連携システム250や物資事業者取引管理システム251や災害情報共有システム252等が、物資調達調整支援システム200に通信回線240を介してデータを送信したものを記憶するよう構成してもよい。
【0066】
判定指標テーブル800は、災害種別801、災害規模802、及び指標803で構成される。各レコードを識別するためのキーは、災害種別801と、災害規模802である。
【0067】
災害種別801は、災害種別502と同様に、該当する災害がどのような種類の災害なのか、その種別を示す。災害規模802は、災害規模506と同様に、災害の規模を示す。指標803は、災害種別801で災害規模802の場合に、災害による道路被害や停電などの周辺環境の悪化により、供給元から回答された物資の供給可能量が、実質的に低下する程度をそのパーセンテージで示す。
【0068】
図9は、協定等管理データベースのデータ構成例を示す図である。図9を用いて協定等管理データベース227について説明する。
【0069】
協定等管理データベース227においては、図9に例示する協定等テーブル900が記憶されている。これは、災害が発生したときに被災地の地方自治体や政府が被災地への物資支援や人命救助等の支援を円滑に進められるように、災害発生前の平時において、地方自治体と物資事業者との間や、政府と物資事業者との間で、災害時の支援内容を事前に取り決めたものである。ここでは、物資調達調整支援システム200のユーザが物資調達調整支援システム200の入出力部232から情報を入力することとする。なお、この情報を、政府・県連携システム250や物資事業者取引管理システム251や災害情報共有システム252等が、物資調達調整支援システム200に通信回線240を介してデータを送信したものを記憶するとしてもよい。
【0070】
協定等テーブル900は、協定等ID901、協定等種別902、受援者903、支援者904、支援予定日905、支援対象906、及び支援量上限907で構成される。各レコードを識別するためのキーは、協定等ID901、協定等種別902、受援者903、支援者904、及び支援予定日905である。
【0071】
協定等ID901は、災害時の支援内容を事前に取り決めた協定等など支援内容を一意に識別するための識別子で、一つの支援内容には、物資支援や人命救助や避難所支援など多岐に亘る項目が含まれる。協定等種別902は、物資支援や人命救助や避難所支援等、支援内容の小項目に当たるものとして、その内容を種別として示すものである。受援者903は、支援を受ける者を示し、物資支援の場合は地方自治体や政府が該当する。支援者904は、支援を行う者を示し、物資支援の場合は物資事業者が該当する。支援対象906は、協定等種別902に関する具体的な内容を示し、協定等種別902が物資支援の場合は、食料品なのか生活用品なのか、物資の品目の種別を示す。支援量上限907は、協定等種別902における支援対象906に関して、支援者側の努力義務に当たる上限量を示し、上限を定めない場合や、支援者904の当日の在庫の50%を上限にする等が該当する。例えば、支援量上限907において、「不問」は、その支援者が保有する在庫のすべてを支援に回すことができることを示している。支援量上限907において「当時の在庫の50%」は、その支援者が保有する在庫の50%までを支援に回せることを示している。
【0072】
図10A及び図10Bは、推奨案提示処理例のフローチャートである。このフローチャートでは、都道府県等の地方自治体や政府が同時並行的に物資事業者から物資調達をする際に、物資調達調整支援システム200が、物資事業者への実質的な発注量を可視化し、当該物資事業者への発注中止や代替の物資事業者への発注等の物資の発注の扱いについて推奨案を提示する処理を示している。これ以降に図10A及び図10Bに示す処理フローを説明する。以降の説明で、ユーザは、特に断らない場合は、物資調達調整支援システム200のユーザをいう。本実施例において、物資調達調整支援システム200のユーザは、典型的には、政府のN府、発注元111である都道府県等の地方自治体及び省庁の担当者、供給元(小売)112及び供給元(メーカ)の担当者、並びに供給先114の担当者である。これらユーザは、自部署に備えられた入出力部232を用いて物資調達調整支援システム200にアクセスできる。
【0073】
処理S1000にて、物資調達調整支援システム200の制御部230が、処理フローを開始すると、次いで、処理S1001に進む。
【0074】
処理S1001にて、物資調達調整支援システム200から政府・県連携システム250への要求に対応して、政府・県連携システム250が、地方自治体からの物資支援の要請を送信し、物資調達調整支援システム200の調達調整支援部211で受け付ける。調達調整支援部211は、調達調整管理データベース221の県から国への要請管理テーブル300に前記要請の内容を登録する。
【0075】
次いで、処理S1002における処理を説明する。N府のユーザが、入出力部232から、調達調整の開始や物資所管省庁への支援物資の品目の割り振りを含む、調達調整のトリガ情報の入力を行う。そのトリガ情報の入力を基に、調達調整支援部211において物資の調達調整を開始することができる。なお、このトリガ情報は、例えばN府のユーザが、入出力部232から調達調整開始コマンドを入力するものでよいし、これらの他のトリガを与えるものでもよい。
【0076】
調達調整支援部211は、調達調整管理データベース221の現在の調達状況テーブル310の災害ID311、要請ID312、品目316、納期318、及び納品先(供給先)319に、県から国への要請管理テーブル300の該当箇所の値をコピーして格納する。ここで、発注元313には、N府が入力したトリガ情報に含まれる物資所管省庁を格納する。物資の品目毎に物資所管省庁が分かれるため等で、発注元313が複数ある場合は、その発注元313の数に応じてレコードを作成して格納する。
【0077】
省庁のユーザは、入出力部232により発注元313を参照して、発注元313に自身の省庁を示す値が格納されているレコードに関して、入出力部232から、発注先314と発注量321を仮登録する。調達調整支援部211は、それら仮登録された値をデータベースに格納する。発注先の物資事業者のユーザは、発注先314に自身の物資事業者を示す値が格納されているレコードに関して、入出力部232から、自社や外部調達先を使って供給可能な量を示す供給可能量320を登録する。また、自社の倉庫又は工場や外部調達先のうち、どこから供給するか定まっている場合はその場所を登録し、どこから供給するかまだ定まっていない場合は自社の本社等の仮の値を供給元315に仮登録する。調達調整支援部211は、登録された値、仮登録された値をデータベースに格納する。
【0078】
省庁のユーザは、入出力部232で供給可能量320を確認し、発注先314と発注量321を確定させて、それに応じて、調達調整支援部211は、発注先314と発注量321に確定された値を格納し、発注日時317に確定時の日時を格納する。また、発注先のユーザは、供給元315と納品日323の値を確定し次第、入出力部232から値を更新し、登録して、調達調整支援部211でそれらのデータを供給元315や納品日323に格納する。
【0079】
また、この際、地方自治体での調達状況は、前述した地方自治体からの物資支援の要請と共に報知されると共に、その後も情報共有のために政府・県連携システム250から逐次送信される。その送信される情報を調達調整支援部211が現在の調達状況テーブル310に都度格納する。
【0080】
処理S1003にて、物資調達調整支援システム200の発注量推定部212が、平時の取引実績データベース222から平時の取引実績を取得して、平時の取引関係を判定する。ここで、ある発注元401に対して、供給元403が複数に分かれる場合は、供給元403毎に発注量408を合計すると共に、発注元401からの発注量408の全体の総計も算出する。次に、この算出した総計の値に対するそれぞれの合計の値の割合を供給元403毎に算出する。この算出結果を、その発注元401に対する供給元403の平時の取引割合として、補助記憶部220に一時記憶する。ここに述べた処理を、供給元403が複数に分かれる場合がある発注元401に対して繰り返す。
【0081】
処理S1004にて、発注量推定部212が、処理S1003にて補助記憶部220に平時の取引割合が一時記憶されていれば、平時の取引有として、処理S1005に進む。一時記憶されていなければ、平時の取引無として、処理S1006に進む。
【0082】
処理S1005にて、発注量推定部212が、処理S1003で補助記憶部220に一時記憶された平時の取引割合に基づいて按分した、供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)に対応する発注量を算出する。すなわち、調達調整管理データベース221における現在の調達状況テーブル310の発注先314について、その発注先314への発注量321を、前述の補助記憶部220に一時記憶された平時の取引割合を用いて供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)毎に按分する。このようにして、按分した結果の供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)への発注量を算出する。ここで、その発注先314からは物資が外部調達されると想定して算出処理を行うものである。
【0083】
こうして按分して算出された発注量は、その発注を受ける物資事業者(その倉庫又は工場)にとっては、その物資事業者への発注量の実質的な増加に当たる。そこで、こうして按分された量を、前記物資事業者(その倉庫又は工場)に一致する供給元315への発注量321に対する、平時の取引割合に基づく実質の増加分として、補助記憶部220に一時記憶する。この発注量の実質的な増加については、前述した按分して算出された発注量は、発注元111のレベルでは直接把握されないため、実質的には増加すると推定して、増加分として見込むものである。このようにして、平時の取引割合に基づく発注量の実質的な増加分を推定できる。
【0084】
前述したように、ここにおける処理は、平時におけるある物資事業者すなわちある取引事業者の取引実績に基づいて、その物資事業者が引き受けた発注量のうちその事業者とは異なる物資事業者に外部調達される量を算出、すなわち推定することができる。ここで、「ある物資事業者」を「第1の前記物資事業者」と呼び、「その事業者とは異なる物資事業者」を「第2の前記物資事業者」と呼ぶことができる。
【0085】
処理S1006にて、発注量推定部212が、現在の災害と類似する災害が過去に発生していたか否かについて、過去の災害のデータを用いて類似性判定を行う。まず、現在の災害状況を、災害状況データベース223から取得し、過去の災害状況を過去の災害状況データベース224から取得し、両者を比較する。類似性判定では、災害種別の類似性、災害規模の類似性、市町村IDによる場所の類似性、年月日による時期の類似性等から判定する。類似性判定においては、完全に一致する場合に類似性有りと判定してもよいし、部分的な一致から類似性有りと判定してもよい。類似性の判定には、さまざまな公知の方法を用いることができる。例えばユークリッド距離を用いる距離ベースにより両者間の距離を算出し、その距離をあらかじめ設定した閾値と比較することで類比を判別するなどの方法を用いることができる。類似性の判定の方法については、以降の類似性の判定においても同様である。
【0086】
例えば、市町村が異なっていても同じ県内であれば、部分的に一致するものとして、類似性有りと判定してもよく、また、市町村や県が異なっていても、同じ地方(九州地方、中国地方等)であれば、部分的に一致するものとして、類似性有りと判定してもよい。また、年月日による時期の類似性に関しても、同じ季節や同じ月なら類似性有りと判定してもよいし、月は一致しなくても5日、10日などの五十日に当たるもの同士なら、類似性有りと判定してもよいし、同じ曜日なら類似性有りと判定してもよいし、平日と休日を区別して平日同士や休日同士なら類似性有りと判定してもよい。また、災害規模に関しては、例えば地震であれば、同じ震度で類似性有りと判定してもよいし、震度5以上なら類似性有りと判定してもよいし、風水害であれば、降水量100mm/時以上なら類似性有りと判定してもよいし、このように幅を持たせて類似性を判定してもよい。なお、ここで、年月日に関しては、日付だけでなく、時刻や朝・夕・晩・深夜等の時間帯も記憶しておき、時間帯の類似性も判定基準に加えてもよい。
【0087】
処理S1007にて、処理S1006において発注量推定部212が、類似する災害が過去にあるとした場合は、類似性有として、その災害ID601を取得して、処理S1008に進む。類似する災害が過去に見付からない場合は、類似性無として、処理S1009に進む。
【0088】
処理S1008にて、発注量推定部212が、処理S1007において類似する災害として取得した災害ID601と、災害ID701及び要請ID702とを取得する。ここで取得する災害ID701及び要請ID702は、本処理(処理S1008)で発注量を推定する品目に関して、災害時の調達実績データベース225の県から国への要請管理テーブル700から、災害ID701と品目706が一致するレコードを絞り込み、その絞り込まれたレコードの災害ID701及び要請ID702である。この災害ID701と要請ID702に関して、過去の調達実績テーブル710から、災害ID711と要請ID712の一致するレコードを絞り込み、当該一致するレコードを類似する災害での調達実績として取得する。
【0089】
ここで、ある発注先714に対して、供給元715が複数に分かれる場合は、供給元715毎に発注量721を合計すると共に、発注先714への発注量721の全体の総計も算出する。次に、この算出した総計の値に対するそれぞれの合計の値の割合を供給元715毎に算出する。当該割合を発注先714の受けた発注量に対する外部調達先毎の比率として、供給元毎に算出する。この算出結果を、その発注先714に対する供給元715の災害時の取引割合として、補助記憶部220に一時記憶する。ここに述べた処理を、供給元715が複数に分かれる場合がある発注先714に対して繰り返す。なお、平時を第1の状態と呼び、災害時を第2の状態と呼ぶことができる。第2の状態は第1の状態と異なるものである。
【0090】
ここで、発注量推定部212が、補助記憶部220に一時記憶された災害時の取引割合に基づいて按分した、供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)に対応する発注量を算出する。すなわち、調達調整管理データベース221における現在の調達状況テーブル310の発注先314について、その発注先314への発注量321を、前述の補助記憶部220に一時記憶された災害時の取引割合を用いて供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)毎に按分する。このようにして、按分した結果の供給元の物資事業者(その倉庫又は工場)への発注量を算出する。ここで、その発注先314からは物資が外部調達されると想定して算出処理を行うものである。ここにおける処理は、災害時における物資事業者のような取引事業者の過去の取引実績に基づいて、ある物資事業者が引き受けた発注量のうちその事業者とは異なる物資事業者に外部調達される量を算出、すなわち推定するものである。ここで、「ある物資事業者」を「第1の前記物資事業者」と呼び、「その事業者とは異なる物資事業者」を「第2の前記物資事業者」と呼ぶことができる。ここで、「ある物資事業者」と「その事業者とは異なる物資事業者」は、前述した平時における物資事業者のような取引事業者の取引実績に基づいて推定を行う際の「ある物資事業者」と「その事業者とは異なる物資事業者」と、それぞれ同じであってもよいし異なるものであってもよい。
【0091】
こうして按分して算出された発注量は、その発注を受ける外部調達先に当たる物資事業者(その倉庫又は工場)にとっては、その物資事業者への発注量の実質的な増加に当たる。そこで、こうして按分された量を、前記物資事業者(その倉庫又は工場)に一致する供給元315への発注量321に対する、災害時の取引割合に基づく実質の増加分として、補助記憶部220に一時記憶する。この発注量の実質的な増加については、前述した按分して算出された発注量は、発注元111のレベルでは直接把握されないため、実質的には増加すると推定して、増加分として見込むものである。これは、災害時の取引割合に基づく発注量の実質的な増加分を推定できるものである。
【0092】
前述したように、災害時における過去の同一又は類似する調達実績に基づいて、ある物資事業者が引き受けた発注量のうちこの事業者とは異なる物資事業者に外部調達される量である災害時における外部調達される量を推定することができる。
【0093】
処理S1009にて、災害状況データベース223の現在の災害状況テーブル500から、市町村ID503毎の災害種別502と災害規模506を取得する。また、調達調整管理データベース221の現在の調達状況テーブル310の供給元市町村ID322が、市町村ID503と一致するレコードを、現在の調達状況テーブル310から取得し、当該レコードに前述した処理S1009で取得した災害種別502と災害規模506とを関連付け、この関連付けを補助記憶部220に一時記憶する。
【0094】
次に、状況判定指針データベース226の判定指標テーブル800の災害種別801と災害規模802が、災害種別502と災害規模506に一致する場合に、指標803を取得し、処理S1009において供給元市町村ID322が、市町村ID503と一致する前記レコードと関連付けて、この関連付けを補助記憶部220に一時記憶する。
【0095】
処理S1010にて、発注量推定部212が、補助記憶部220に一時記憶されている当該レコードに指標803が関連付けられている場合は、供給元の周辺環境が悪化しているとして、処理S1011に進む。関連付けられていない場合は、供給元の周辺環境は悪化していないとして、処理S1012に進む。この関連付けられていない場合は、供給可能量320を実質の供給可能量として補助記憶部220に一時記憶し、処理S1012に進む。したがって、この場合は、実質の供給可能量は、供給可能量320に等しいものである。
【0096】
処理S1011にて、発注量推定部212が、当該レコードと指標803に基づいて、当該レコードの供給可能量320が災害による道路被害や停電等の周辺環境の悪化により実質的には低下しているとして、供給可能量320と指標803を掛け合わせ、それを実質の供給可能量として算出する。この実質の供給可能量は、災害による物資の供給が制約された供給可能量である。指標803は、災害による物資の供給が低下する程度を表す情報である。この算出した結果を、当該レコードと関連付けて、補助記憶部220に一時記憶する。なお、処理S1011においては、発注量推定部212の行う実質の供給可能量の算出は、前述の供給可能量320に代えて、供給可能量720を用いることもできる。あるいは、平時に供給可能量を取得して補助記憶部220の平時の取引実績データベース222等に格納しておき、前述の供給可能量320に代えて、その平時の供給可能量を用いることもできる。
【0097】
前述したように、災害による物資の供給が低下する情報に基づいて、災害時における災害による物資の供給が制約された供給可能量を推定する処理を行う。
【0098】
処理S1012にて、実質の発注量を推定する。すなわち、発注量推定部212が、調達調整管理データベース221の現在の調達状況テーブル310の供給元315の発注量321に対して、処理S1005にて補助記憶部220に一時記憶した平時の取引割合に基づく発注量の実質的な増加分と、処理S1008にて補助記憶部220に一時記憶した災害時の取引割合に基づく発注量の実質的な増加分とを供給元315の発注量321に追加する。この追加処理により、供給元315への実質の発注量として推定する。ここで推定した値を、供給元315への実質の発注量として、現在の調達状況テーブル310の該当レコードと関連付けて、補助記憶部220に一時記憶する。
【0099】
なお、ここでは、平時の取引割合に基づく実質の増加分と、災害時の取引割合に基づく実質の増加分の両方を、発注量321に追加して実質の発注量として推定したが、平時の取引割合に基づく実質の増加分のみを追加して推定することとしてもよい。あるいは、災害時の取引割合に基づく実質の増加分のみを追加して推定することとしてもよい。あるいは、平時の取引割合に基づく実質の増加分と、災害時の取引割合に基づく実質の増加分を、事前にユーザの定義した比率に基づいて重み付けして統合し、その統合の増加分を追加して推定することとしてもよい。
【0100】
処理S1013にて、補助記憶部220に一時記憶されているデータのうち、処理S1012にて推定した実質の発注量と、処理S1011にて推定した実質の供給可能量とを、発注量推定部212が比較する。その結果、実質の発注量が実質の供給可能量を超過する場合は、処理S1012で補助記憶部220に一時記憶したレコードの供給元315で発注過多が発生したものと判定として、処理S1014に進む。超過していない場合は、発注過多は発生していないものと判定して、処理S1015に進む。実質の発注量は、前述の補助記憶部220に一時記憶されているデータである。すなわち、実質の発注量は、補助記憶部220に一時記憶されている当該レコードに指標803が関連付けられていない場合は、供給可能量320を実質の供給可能量として補助記憶部220に一時記憶されたものである。また、実質の発注量は、補助記憶部220に一時記憶されている当該レコードに指標803が関連付けられている場合は、処理S1012にて推定された値が、現在の調達状況テーブル310の該当レコードと関連付けて、補助記憶部220に一時記憶されたものである。なお、処理S1013においては、発注量推定部212が行う比較は、前述の処理S1011にて推定した実質の供給可能量に代えて、供給可能量320又は供給可能量720を用いることもできる。あるいは、平時に供給可能量を取得して補助記憶部220の平時の取引実績データベース222等に格納しておき、前述の実質の供給可能量に代えて、その平時の供給可能量を用いることもできる。
【0101】
処理S1014にて、発注元のユーザに種々の推奨案を提示することができる。すなわち、再調整推奨部213が、処理S1013にて発注過多と判定された供給元315に関して、供給元315そのものや、供給元315を外部調達先とする他の物資事業者(発注先314が供給元315とは別の物資事業者であるもの)に関する発注に対して、発注中止を推奨する案を提示できる。さらに、その中止した分の代替として、発注過多になっていない別の物資事業者を代替の発注先として推奨する案を、各々の供給元への実質の発注量と併せて、入出力部232から発注元のユーザに提示することができる(図11図12A及び図12B参照)。ここで、推奨する代替となる発注は、発注を中止した発注量の一部を代替するものであってもよい。また、推奨する代替となる発注は、複数からなるものでもよい。また、前述の説明で、推奨する案における発注の中止は、ある発注の一部を中止、すなわちその発注量の削減をする場合を含むものであってもよい。また、前述の説明で、その中止した分の代替として、発注過多になっていない別の物資事業者を代替の発注先として推奨する案は、その一部を中止したその一部の分の代替として、発注過多になっていない別の物資事業者を代替の発注先として推奨する案であってもよい。なお、発注中止と、中止した分の代替の発注先との推奨については、発注中止のみを推奨するものであってもよい。
【0102】
なお、発注先314が供給元315とは別の物資事業者である発注に関しては、発注自体を中止するのではなく、当該供給元315への外部調達のみの中止を発注先314に促すように、当該供給元315が関わる発注量321だけを減じた発注量にして推奨するものとしてもよい。
【0103】
その際、協定等管理データベース227の協定等テーブル900を参照し、協定等種別902が物資支援であるレコードに関して、発注元と物資の支援を受ける者である受援者903が一致し、物資の品目と支援対象906に齟齬が無い場合に、発注元に他の支援者904を代替の発注先として推奨する。ここで、物資の品目と支援対象906に齟齬が無いかどうかの判定は、物資の品目の分類表をユーザで別に定義しておき、その分類表と支援対象906の項目を物資調達調整支援システム200が突き合わせることで判定するとしてもよい。
【0104】
なお、ここで、協定等テーブル900において、他の受援者903に関する支援者904を当該発注元に推奨することとしてもよい。その際は、協定等テーブル900に格納されている支援者904全てを当該発注元に推奨してもよいし、受援者903同士の関係性を別に定義しておき、当該発注元との関係性の高い受援者903に関して、その支援者904を当該発注元に推奨することとしてもよい。
【0105】
次に、ユーザが推奨された案に基づいて再調整を行うため、処理S1002に進むことができる。
【0106】
処理S1015にて、再調整推奨部213が、処理S1012にて補助記憶部220に一時記憶された実質の発注量に対して、その総量を実質の総発注量として計算する。次に、調達調整管理データベース221の県から国への要請管理テーブル300において、処理S1002にて対応中の災害ID301と要請ID302に関して、数量307の総量を総要請量として算出する。次に、実質の総発注量と、総要請量を比較する。
【0107】
総要請量に対して実質の総発注量が不足している場合は、追加の調達調整を行うために、処理S1002に進むことができる。一方で、実質の総発注量から総要請量を差し引いた差分が別に定める閾値以上に多い場合は、余剰が発生しているとして、処理S1016に進むことができる。また、一方で、総要請量に対して実質の総発注量が不足せず、実質の総発注量から総要請量を差し引いた差分が別に定める閾値以内である場合は、総要請量と実質の総発注量でバランスがとれたものとして、処理S1017に進むことができる。
【0108】
処理S1016にて、再調整推奨部213が、処理S1015で比較した際の、実質の総発注量から総要請量を差し引いた差分の余剰分に対して、発注元への発注の中止や、別の供給先への再配分を推奨する案を、実質の総発注量や総要請量と併せて、入出力部232から発注元のユーザに推奨する。次に、ユーザが推奨された案に基づいて再調整を行うため、処理S1002に進むことができる。
【0109】
前述したように、物資調達調整支援システム200は、物資の発注及び物資事業者の供給の間の比較をし、物資の発注及び物資事業者の供給を調整する情報を提供するものである。
【0110】
処理S1017にて、制御部230が、処理フローを終了する。
【0111】
次に、物資の発注等の調整を支援する再調整画面について説明する。図11は、再調整画面の例である。この画面例では、図10Bの処理S1014で、発注元である省庁のユーザに対して、入出力部232を介して物資事業者への実質的な発注量の可視化を行っている。さらに、当該物資事業者への発注量の削減、当該物資事業者への発注中止の推奨案や代替の物資事業者への発注等の推奨案を、入出力部232から出力して可視化して表示している。また、図11の一部を拡大したものを図12A及び図12Bに示す。図12A及び図12Bは、再調整画面の例を示す図である。ここで、それらの推奨案の対象となる発注は、すでに行われているものでよく、今後行われるものも対象にできる。
【0112】
図11で示した再調整画面は、概念図1100と詳細表1160と推奨案1170で構成される。詳細表1160と推奨案1170の構成は、それぞれ図12A及び図12Bに例を示す。概念図1100、詳細表1160及び推奨案1170で提示される情報は、図10A及び図10Bに示したフローチャートにおいて、随時のタイミングで表示されるものでよく、例えば処理S1014や処理S1016で表示されるものでよい。
【0113】
図11の概念図1100は、物資の品目や納期の示す品目・納期1101、図式の見方として凡例1102、及び他の構成要素で構成される。凡例1102は、要請/発注の流れを示す矢印、物資の流れを示す別の矢印、物資調達調整支援システム200で推定された流れを示す破線、及び物資調達調整支援システム200からの推奨案を示す二重線等で構成される。
【0114】
概念図1100の他の構成要素は、発注元1111、供給元(小売)1112、供給元(メーカ)1113、及び供給先1114である。ここで、発注元1111は供給元(小売)1112や供給元(メーカ)1113に物資を発注することを示す。供給元(小売)1112は、供給元(メーカ)1113に物資を発注し、供給元(小売)1112や供給元(メーカ)1113から供給先1114に物資を供給することを示す。図11において、発注元1111、供給元(小売)1112、供給元(メーカ)1113及び供給先1114の各欄は、それぞれの横方向の並びがそれぞれの欄に対応することを示している。
【0115】
次に、この物資の発注や供給の流れを具体的に示す。発注元1111は、被災地で災害対応に当たる地方自治体であるX県1121、被災地に対して物資支援を行う政府の物資所管省庁であるK1省1122及びK2省1123などである。また、供給元(小売)1112は、a1社1124、a2社1125、及びa3社1126などである。また、供給元(メーカ)1113は、b1社1127、b2社1128、及びb3社1129などである。また、供給先1114は、被災地の地方自治体の物資倉庫として使うX県物資拠点1130などである。
【0116】
ここで、被災地の地方自治体であるX県1121は、まず、協定を結んでいる供給元のb1社1127に発注1131を行い、b1社1127から被災地のX県物資拠点1130に物資の供給1132を行う。
【0117】
一方で、被災地であるX県1121から政府に物資支援を要請する場合、まず政府を取り纏めるN府1120に要請1133を上げ、次にN府1120はK1省1122に物資調達の要請1134を行う。
【0118】
要請を受けたK1省1122は、b2社1128に物資の発注1135を行い、b3社1129に物資の発注1136を行う。それを受けて、b2社1128は、被災地のX県物資拠点1130に物資の供給1137を行い、b3社1129もX県物資拠点1130に物資の供給1138を行う。
【0119】
同様に、N府1120はK2省1123にも物資調達の要請1139を行う。K2省1123は、a1社1124に物資の発注1140を行い、a2社1125に物資の発注1141を行い、a3社1126に物資の発注1142を行う。これを受けて、a1社1124、a2社1125、a3社1126は、被災地のX県物資拠点1130に物資の供給を行う。ここで、a3社1126は、物資の製造能力を有しており、X県物資拠点1130への供給1143を直接行う。一方で、a1社1124とa2社1125は、物資の製造能力を持たず、保有している在庫が乏しいことから、a1社1124はb3社1129に発注1150を行い、a2社1125も同様にb3社1129に発注1151を行い、b3社1129での被災地のX県物資拠点1130への物資の供給1138をもって、物資調達に対応する。なお、物資の供給1138には、発注1150及び発注1151に対応する供給と、前述した発注1136に対応する供給とが含まれている。
【0120】
この際、a1社1124からb3社1129への発注1150と、a2社1125からb3社1129への発注1151は、物資調達調整支援システム200に登録されない情報のため、物資調達調整支援システム200で推定して補完する。その補完した結果が、発注1150と、発注1151である。
【0121】
ここで、こうした発注によって、b3社1129への実質の発注量等は増えるため、実質の発注量や、それによる実質の供給量の過不足量を物資調達調整支援システム200で推定・補完し、それを詳細表1160でユーザに示す。図12Aに示す詳細表1160の例については後に述べる。また、こうした発注に対して、物資調達調整支援システム200から代替案として、発注の中止を推奨する推奨案1152や、代替の供給元への発注を推奨する推奨案1153を、ユーザに提示する。この推奨案の具体的な内容を、推奨案1170でユーザに示す。図12Bに示す推奨案1170の例については後に述べる。ユーザは推奨案に基づいて、調達調整について再調整を行うことができる。
【0122】
一方で、実際の発注量等を詳細に示すのが詳細表1160であり、推奨案を具体的に示すのが推奨案1170である。それらの例を、図12A及び図12Bに示す。
【0123】
図12Aに例示した詳細表1160は、実質の発注量や供給可能量等の情報を可視化したものである。詳細表1160は、物資事業者1161、供給可能量1162、当該事業者への発注量1163、当該事業者への実質の発注量1164、当該事業者からの実質の供給量1165、実質対応事業者及び実質の供給量1166、及び実質の発注量に対する実質の供給量の過不足量1167で構成される。
【0124】
物資事業者1161は、地方自治体や政府からの発注を受けた物資事業者を示し、物資を被災地に供給する役割を担う。供給可能量1162は、地方自治体や政府からの問い合わせを受けて、物資事業者1161にて回答したもので、自社や外部調達先を使って供給可能な物資の量を示す。当該事業者への発注量1163は、地方自治体や政府が、供給可能量1162に基づいて決定した、物資事業者1161への物資の発注量を示す。
【0125】
当該事業者への実質の発注量1164は、地方自治体や政府から物資事業者1161に発注された発注量そのものや、地方自治体や政府から他の物資事業者1161に発注され、その他の物資事業者1161が外部調達先として当該物資事業者1161に発注してきた発注量を示している。この後者の量(他の物資事業者1161が外部調達先として当該物資事業者1161に発注してきた発注量)は物資調達調整支援システム200で推定したものである。概念図1100では、発注1150、発注1151に相当する。当該事業者への実質の発注量1164では、そうした発注量を発注元毎に内訳で示しつつ、その合計も示す。
【0126】
当該事業者からの実質の供給量1165は、物資事業者1161が実際に供給できる量を示す。これは、供給可能量1162と当該事業者への実質の発注量1164から、物資調達調整支援システム200で推定したものである。物資事業者1161が外部調達先に発注すると推定される場合は、当該物資事業者1161からは供給されないため、数量を0として推定する(本処理は計算が単純なため、前述の図10A及び図10Bの処理フローの説明では省略している)。
【0127】
実質対応事業者及び実質の供給量1166は、物資調達調整支援システム200が、物資事業者1161は外部調達先に発注すると推定した場合に表示するもので、外部調達先の物資事業者の名称と、そこから供給される物資の量を示す。
【0128】
実質の発注量に対する実質の供給量の過不足量1167は、物資事業者1161にて供給すべき量に対して、どのくらいの過不足量が発生するかを示す。これは、物資調達調整支援システム200が、当該事業者からの実質の供給量1165と実質対応事業者及び実質の供給量1166を合算した数量から、当該事業者への実質の発注量1164を差し引いた、その差分を示すことができる(本処理は計算が単純なため、前述の図10A及び図10Bの処理フローの説明では省略している)。またこれは、当該事業者からの実質の供給量1165から、当該事業者への実質の発注量1164を差し引いた、その差分を示すこともできる。なお、詳細表1160では、供給可能量1162を提示した例を示したが、供給可能量1162に代えて処理S1011にて推定した実質の供給可能量を提示して作成した詳細表とすることもできる。
【0129】
また、図12Bに示す推奨案1170は、個別の推奨案で構成される。図12Bの画面例では、K2省への推奨案1171とX県への推奨案1172で構成される例である。
【0130】
K2省への推奨案1171とX県への推奨案1172の各々では、推奨案の提示相手を示す対象1173と、どの物資事業者に関する推奨かを示す範囲1174と、具体的な推奨内容を示す内容1175で構成される。本例では、K2省に対して、a2社に発注を一部中止(マスク3,000枚分)することを推奨し、a3社に発注を一部追加(マスク3,000枚分)することを推奨する。また、X県に対して、b2社に発注を新規実施(マスク3,000枚分)することを推奨する。図12Bは、これらの推奨を例示したものである。
【0131】
前述の説明では図10A及び図10Bの処理フローについて、処理S1000スタートから処理S1017エンドまでの処理を説明した。この処理フローをスタートさせる者は、例えば実施例で説明した政府におけるN府や省庁のユーザや都道府県等の地方自治体のユーザであってよい。あるいは、この処理フローは、処理S1017エンドに至った後、処理S1000スタートへ戻り、割り込みなどによる実行の中止などの指令があるまで常時動作するものでもよい。この処理フローにおいて、補助記憶部220にある各データベースの内容は、政府・県連携システム250、物資事業者取引管理システム251、災害情報共有システム252、及び入出力部232から随時更新されるものであってよい。また、この処理フローにおいて、補助記憶部220にある各データベースの内容は、物資調達調整支援システム200から、政府・県連携システム250、物資事業者取引管理システム251、及び災害情報共有システム252への要求により随時更新されるものであってよい。また、前述の説明では、平時を第1の状態とし、災害時を第2の状態とした例で説明したが、第2の状態は災害時に限らず、障害が発生した状態など平常でない状態について本システムは用いることができ、有利な効果を奏する。言い換えると、第2の状態ではない状態を第1の状態すなわち平時ということができる。
【0132】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。
【0133】
前述の実施例では、物資調達調整支援システム200は物資の発注などについて、政府機関及び地方自治体の機関が行う例で説明したが、物資の発注などについては、これらに限らず、政府機関及び地方自治体の機関と類似の働きをする機関であってもよい。
【0134】
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0135】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0136】
200 物資調達調整支援システム
210 主記憶部
211 調達調整支援部
212 発注量推定部
213 再調整推奨部
220 補助記憶部
221 調達調整管理データベース
222 平時の取引実績データベース
223 災害状況データベース
224 過去の災害状況データベース
225 災害時の調達実績データベース
226 状況判定指針データベース
227 協定等管理データベース
230 制御部
231 通信部
232 入出力部
240 通信回線
250 政府・県連携システム
251 物資事業者取引管理システム
252 災害情報共有システム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B