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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157281
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】伝達振動可変装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 35/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F16D35/00 621
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071552
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 仁志
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 優矢
(72)【発明者】
【氏名】末廣 隆史
(72)【発明者】
【氏名】内田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】壹岐 賢太郎
(57)【要約】
【課題】磁界または電界が印加されると粘性および弾性が変化する機能性材料を用いた伝達振動可変装置であって、シール材を用いる必要のない簡易な構造で伝達振動を変化させることができる伝達振動可変装置を提供すること。
【解決手段】第1ユニット1と、第2ユニット2と、第1ユニット1と第2ユニット2とを接続するユニット間接続部3と、ユニット間接続部3に磁界を印加する印加部4と、を備える。ユニット間接続部3は、印加される磁界または電界の強さに応じて粘性および弾性が変化する機能性材料を含む。機能性材料は、ゲルまたはエラストマーを用いて構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユニットと、
第2ユニットと、
印加される磁界または電界の強さに応じて粘性および弾性が変化する機能性材料を含み、前記第1ユニットと前記第2ユニットとを接続するユニット間接続部と、
前記ユニット間接続部に磁界または電界を印加する印加部と、
を備え、
前記機能性材料は、ゲルまたはエラストマーを用いて構成されている、
ことを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝達振動可変装置であって、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に介在することによって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの離間寸法が一定値以下にならないように規制する規制部材をさらに備えることを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項3】
請求項2に記載の伝達振動可変装置であって、
前記規制部材は、前記規制を行うとき、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの相対移動に伴って他の部材との間で摺動し、
前記規制部材が前記他の部材との間で摺動することにより前記相対移動に対して生じる抗力が、前記ユニット間接続部が磁界および電界が印加されないときに前記相対移動に対して生じる抗力の最小値より小さい、
ことを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項4】
請求項2に記載の伝達振動可変装置であって、
前記規制部材は、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの一方に対して摺動自在となるように、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの他方に固定されていることを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項5】
請求項2に記載の伝達振動可変装置であって、
前記規制部材は、前記規制を行うとき、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの相対移動に伴って、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間で転動する複数の転動体を有する、
ことを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の伝達振動可変装置であって、
前記印加部は、前記ユニット間接続部に磁界を印加する磁界印加部であり、
前記第1ユニットは、
コイルと、
前記コイルの内側に配設された内側ヨークと、
前記コイルの外側に配設された外側ヨークと、
を有し、
前記ユニット間接続部は、
前記内側ヨークの端面と前記第2ユニットとの間に介在する内側ユニット間接続部と、
前記外側ヨークの端面と前記第2ユニットとの間に介在する外側ユニット間接続部と、
を有し、
前記内側ユニット間接続部と、前記外側ユニット間接続部とは、互いに全周に亘って間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項7】
請求項6に記載の伝達振動可変装置であって、
前記ユニット間接続部は、前記内側ユニット間接続部と、前記外側ユニット間接続部とを繋ぐ架設部を更に有することを特徴とする伝達振動可変装置。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の伝達振動可変装置であって、
前記印加部が前記ユニット間接続部に印加する磁界または電界の強さを制御する制御部を備えることを特徴とする伝達振動可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達する振動を変化させることができる伝達振動可変装置に関し、特に、磁界または電界が印加されると粘性および弾性が変化する機能性材料を用いた伝達振動可変装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機能性材料である電気粘性流体(ER流体)又は電気磁気粘性流体(EMR流体)を用いた振動減衰装置が開示されている。同文献に開示された振動減衰装置は、建物などの構造物を支える基礎と、構造物との間に設置され、基礎から構造物に伝達する伝達振動を減衰させるために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2749268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された振動減衰装置のように、機能性流体を用いた場合、同文献の図2乃至図6に示されるように、機能性流体が外部に漏れ出さないように、シール材を用いて装置の内部に封入する必要がある。そのため、装置の構造が複雑になり、部品点数が増えるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、磁界または電界が印加されると粘性および弾性が変化する機能性材料を用いた伝達振動可変装置であって、シール材を用いる必要のない簡易な構造で伝達振動を変化させることができる伝達振動可変装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る伝達振動可変装置は、第1ユニットと、第2ユニットと、前記第1ユニットと前記第2ユニットとを接続するユニット間接続部と、前記ユニット間接続部に磁界または電界を印加する印加部と、を備える。前記ユニット間接続部は、印加される磁界または電界の強さに応じて粘性および弾性が変化する機能性材料を含む。前記機能性材料は、ゲルまたはエラストマーを用いて構成されている。
【0007】
かかる構成を備える発明によれば、磁界または電界が印加されると粘性および弾性が変化する機能性材料を用いた伝達振動可変装置において、機能性材料がゲルまたはエラストマーを用いて構成されているので、シール材を用いる必要のない簡易な構造で伝達振動を変化させることができる伝達振動可変装置を提供できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に介在することによって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの離間寸法が一定値以下にならないように規制する規制部材をさらに備える。
【0009】
本発明の第3の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記規制部材は、前記規制を行うとき、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの相対移動に伴って他の部材との間で摺動する。前記規制部材が前記他の部材との間で摺動することにより前記相対移動に対して生じる抗力が、前記ユニット間接続部が磁界および電界が印加されないときに前記相対移動に対して生じる抗力の最小値より小さい。
【0010】
本発明の第4の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記規制部材は、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの一方に対して摺動自在となるように、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの他方に固定されている。
【0011】
本発明の第5の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記規制部材は、前記規制を行うとき、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの相対移動に伴って、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間で転動する複数の転動体を有する。
【0012】
本発明の第6の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記印加部は、前記ユニット間接続部に磁界を印加する磁界印加部である。前記第1ユニットは、コイルと、前記コイルの内側に配設された内側ヨークと、前記コイルの外側に配設された外側ヨークと、を有する。前記ユニット間接続部は、前記内側ヨークの端面と前記第2ユニットとの間に介在する内側ユニット間接続部と、前記外側ヨークの端面と前記第2ユニットとの間に介在する外側ユニット間接続部と、を有する。前記内側ユニット間接続部と、前記外側ユニット間接続部とは、互いに全周に亘って間隔をあけて配置されている。
【0013】
本発明の第7の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記ユニット間接続部は、前記内側ユニット間接続部と、前記外側ユニット間接続部とを繋ぐ架設部を更に有する。
【0014】
本発明の第8の態様に係る伝達振動可変装置は、好ましくは、前記構成を備える伝達振動可変装置において、前記印加部が前記ユニット間接続部に印加する磁界または電界の強さを制御する制御部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁界または電界が印加されると粘性および弾性が変化する機能性材料を用いた伝達振動可変装置において、シール材を用いる必要のない簡易な構造で伝達振動を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る伝達振動可変装置の断面図であって、図2のI-I線断面図である。
図2】第1実施形態に係る伝達振動可変装置の平面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】第1実施形態に係る伝達振動可変装置の断面図であって、規制部材の変形例を示す図である。
図5図1のIII-III線断面図であって、ユニット間接続部の変形例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る伝達振動可変装置の部分断面図であって、規制部材の変形例を示す図である。
図7】他の実施形態に係る伝達振動可変装置の断面図であって、規制部材の配置の変更例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る伝達振動可変装置の断面図である。
図9】第1実施形態に係る伝達振動可変装置においてユニット間接続部を多層にしたものを示す断面図である。
図10】第2実施形態に係る伝達振動可変装置においてユニット間接続部を多層にしたものを示す断面図である。
図11】第1実施形態に係る伝達振動可変装置においてユニット間接続部の崩壊を防ぐばねを追加した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態に係る伝達振動可変装置について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、伝達振動可変装置100は、第1ユニット1、第2ユニット2、ユニット間接続部3、印加部4、規制部材5および制御部6を備えている。
【0018】
第1ユニット1および第2ユニット2は、後述するユニット間接続部3を介して互いに対向する対向面8,9を有している。本実施形態では、第1ユニット1が有する対向面8と第2ユニット2が有する対向面9は、何れも平面状に形成され、互いに平行に配されている。
【0019】
第1ユニット1および第2ユニット2は、それらの一方が力および振動の入力側となり、それらの他方が力および振動の出力側となる。第1ユニット1および第2ユニット2の一方に、力および振動を入力する入力部材(不図示)が取り付けられ、第1ユニット1および第2ユニット2の他方に、力および振動の出力先となる出力部材(不図示)が取り付けられてもよい。但し、入力部材(不図示)が第1ユニット1および第2ユニット2に取り付けられることなく、直接、第1ユニット1または第2ユニット2に力および振動が入力されてもよい。また、出力部材(不図示)が第1ユニット1および第2ユニット2に取り付けられることなく、直接、第1ユニット1または第2ユニット2から力および振動が外部に出力されてもよい。本実施形態では、第1ユニット1および第2ユニット2に、入力部材または出力部材を取り付けるための取付手段16,17が形成されている。図1および図2に例示する取付手段16,17は、ボルト締結する場合に用いられる雌ねじである。この雌ねじは、第1ユニット1および第2ユニット2の中心線Nを中心とする円周上に間隔をおいて形成されている。
【0020】
第1ユニット1および第2ユニット2の一方に入力され、第1ユニット1および第2ユニット2の他方から出力される力および振動の一例として、第1ユニット1および第2ユニット2の対向面8,9と略直交する軸線(例えば上記中心線N)回りの回転力(以下単に「回転力」ともいう。)および回転振動(以下単に「回転振動」ともいう。)を挙げることができる。また、その他の力および振動の一例として、第1ユニット1および第2ユニット2の対向面8,9と略平行な方向への並進力(以下単に「並進力」ともいう。)および並進振動(以下単に「並進振動」ともいう。)を挙げることができる。なお、図1において矢印31は、中心線N回りの回転振動の向きを示し、矢印32は、並進振動の向きの一例を示している。
【0021】
第1ユニット1は、第1ヨーク11と、第1ヨーク11の周囲に形成された第1規制部材挟み部18と、後述するコイル10とを有する。第2ユニット2は、第2ヨーク12と、第2ヨーク12の周囲に形成された第2規制部材挟み部19とを有する(図2参照)。第1規制部材挟み部18と第2規制部材挟み部19との間には、図1に示すように、規制部材5が介在している。この規制部材5は、第1ユニット1と第2ユニット2との離間寸法が一定値以下にならないように規制する。この規制により、第1ユニット1と第2ユニット2との間に介在するユニット間接続部3が過剰に圧縮され損傷することが防止される。
【0022】
ユニット間接続部3は、第1ユニット1の対向面8と第2ユニット2の対向面9の間に介在し、第1ユニット1の対向面と第2ユニット2の対向面とを接続している。ユニット間接続部3は、第1ユニット1と第2ユニット2との間で回転力、回転振動、並進力および並進振動を伝達することができる。
【0023】
また、ユニット間接続部3は、印加される磁界の強さに応じて粘性および弾性が変化する機能性材料を用いて構成されている。ユニット間接続部3の粘性および弾性が変化すると、ユニット間接続部3が第1ユニット1と第2ユニット2との間で伝達する振動が変化する。例えば、ユニット間接続部3に印加される磁界が弱いほど、ユニット間接続部3は入力された振動を減衰させて出力側に伝達する。一方、ユニット間接続部3に印加される磁界が強いほど、ユニット間接続部3は入力された振動を減衰させずに出力側に伝達する。また例えば、ユニット間接続部3に印加される磁界が特定の強さになると、ユニット間接続部3は、特定周波数の振動を大幅に増幅または減衰させることができる。
【0024】
本実施形態では、機能性材料としてゲル状の機能性材料である磁気粘性ゲルを用いる。磁気粘性ゲルは、磁気粘性流体をゲル化したものであり、磁性粒子をゲル状の分散媒に分散させてなるものである。磁性粒子として、例えばナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)や、ミクロンサイズの金属粒子(金属ミクロン粒子)、金属ナノ粒子と金属ミクロン粒子の混合粒子からなるものを使用することができる。
【0025】
ユニット間接続部3は、接着剤を用いて、第1ユニット1および第2ユニット2に接着されている。接着には、接着剤自身の磁気抵抗を下げるために、磁性体の金属粒子などを含む接着剤を用いることが好ましい。ユニット間接続部3の磁気粘性ゲルが自己融着性を有する場合は、接着剤を用いずに、ユニット間接続部3を第1ユニット1および第2ユニット2に融着により接着してもよい。
【0026】
機能性材料として磁気粘性流体を用いた場合は、磁気粘性流体が外部に漏れ出さないように、シール材等を用いた複雑な構造を採る必要がある。しかし、本実施形態のように、機能性材料として磁気粘性ゲルを用いれば、伝達振動可変装置100全体をシール材等を用いずに簡易な構造とすることができる。
【0027】
印加部4は、本実施形態では、ユニット間接続部3に磁界を印加する磁界印加部である。印加部4は、コイル10、第1ヨーク11および第2ヨーク12によって構成されている。コイル10および第1ヨーク11は、第1ユニット1の構成と印加部4の構成とを兼ねており、第2ヨーク12は、第2ユニット2の構成と印加部4との構成を兼ねている。
【0028】
第1ヨーク11は、コイル10の径方向内側に配設された内側ヨーク11aと、コイル10の径方向外側に配設された外側ヨーク11bとを有する。内側ヨーク11aおよび外側ヨーク11bの第2ユニット2側には、対向面8が形成されている。この対向面8は、内側ヨーク11aに形成された内側対向面8Aと、外側ヨーク11bに形成された外側対向面8Bとで構成されている。内側対向面8Aと外側対向面8Bとは、中心線Nの方向から視て互いに全周に亘って間隔をあけて形成されている。内側ヨーク11aと外側ヨーク11bの第2ユニット2側と反対側は磁路形成可能に繋がっている。
【0029】
このため、ユニット間接続部3も、図3に示すように、中心線Nの方向から視て、内側対向面8Aの形状に対応して形成された内側ユニット間接続部3aと、外側対向面8Bの形状に対応して形成された外側ユニット間接続部3bで構成され、内側ユニット間接続部3aと外側ユニット間接続部3bは、互いに全周に亘って間隔をあけて配置されている。
【0030】
規制部材5は、第1ユニット1の第1規制部材挟み部18と、第2ユニット2の第2規制部材挟み部19との間に介在し、第1ユニット1と第2ユニット2との離間寸法が一定値以下にならないように規制する。本実施形態では、規制部材5は、第1ユニット1の第1規制部材挟み部18に固定され、第2ユニット2の第2規制部材挟み部19に対して摺動自在となっている。但し、規制部材5は、第1ユニット1の第1規制部材挟み部18に固定され、第2ユニット2の第2規制部材挟み部19に対して摺動自在となっていてもよい。規制部材5を第1規制部材挟み部18または第2規制部材挟み部19へ固定する手段として、例えば、接着剤が用いられる。なお、規制部材5を通る磁気回路が形成されないように、規制部材5は非磁性体であることが望ましい。また、規制部材5は、第1ユニット1と第2ユニット2とが中心線Nに対して直交する方向に互いに位置ずれを生じ、ユニット間接続部3が同方向に大きく変形しても当該ユニット間接続部3と接することのない位置に設けられている。このようにすることで、ユニット間接続部3が規制部材5と接触して想定外の振動が伝達されてしまうことが防止される。
【0031】
本実施形態では、規制部材5は、第1ユニット1に固定されているため、上記規制を行うとき、第1ユニット1と第2ユニット2との相対移動に伴って第2ユニット2との間で摺動する。そして、規制部材5が第2ユニット2との間で摺動することにより上記相対移動に対して生じる抗力が、ユニット間接続部3が磁界が印加されないときに上記相対移動に対して生じる抗力の最小値より小さくなるように、規制部材5には、摺動抵抗の小さな部材が用いられる。なお、磁界が印加されないときのユニット間接続部3の上記相対移動に対する抗力は、ユニット間接続部3に生じる歪に応じて変わり、通常、ユニット間接続部3に歪が生じていないときに、当該抗力は最小値となる。
【0032】
上記規制部材5には、摺動抵抗の小さな部材として、PTFE(polytetrafluoroethylene)などのフッ素樹脂が用いられている。また、摺動抵抗が小さな部材として、規制部材5には、スラスト玉軸受などのように、2つの軌道盤が相対回転する際に、2つの軌道盤の間に配された複数の転動体5c(玉)が転動する構造を有するもの(規制部材5A)を用いることもできる(図4参照)。なお、この場合、2つの軌道盤の一方は、第1ユニット1側に固定され第1ユニット1とともに回転し、2つの軌道盤の他方は、第2ユニット2側に固定され第2ユニット2とともに回転する。軌道盤を第1ユニット1側または第2ユニット2側に固定する手段として、例えば、接着剤が用いられる。また、規制部材5Aを通る磁気回路が形成されないように、例えば、転動体5cおよび/または転動体5cの上下の軌道盤は非磁性体であることが望ましい。
【0033】
制御部6は、印加部4がユニット間接続部3に印加する磁界の強さを制御する。制御部6は、所定の操作部21を通じてユーザから指示された強さの電流をバッテリー22等の電源を使用してコイル10に印加する。制御部6は、例えば、印加する電流を調整するために必要な電気回路、マイクロコンピュータ等を用いて構成される。印加部4のコイル10は、印加される電流の大きさに応じた磁束を生じるため、ユニット間接続部3に印加される磁界の強さは、ユーザが指示する電流の強さに応じた値となる。
【0034】
以上の構成を備える伝達振動可変装置100において、ユーザが操作部21を操作することにより、コイル10に電流が印加されると、例えば図1のコイル10の周囲に示す矢印Pに沿った方向に磁路が形成され、磁気粘性ゲルからなるユニット間接続部3を磁束が貫通する。この状態で、第1ユニット1および第2ユニット2の一方に振動が入力されると、第1ユニット1および第2ユニット2の他方から振動が出力される。このとき、入力される振動に対して出力される振動は、ユニット間接続部3に印加される磁界の強さを左右するコイル10に印加される電流値に応じて変化する。振動の変化の態様は、使用されるユニット間接続部の磁気粘性ゲルの物性(磁性体の種類および密度、ゲルの種類、磁性体の含有濃度、含有粒子の粒径など)に左右されるが、概ね、コイル10に印加される電流値がゼロ乃至ゼロ近傍のときは、殆どの周波数において伝達振動が大幅に減衰し、コイル10に印加される電流値が大きくなるにつれて、次第に、何れの周波数に関しても伝達振動が減衰し難くなる。また、コイル10に印加される電流値が大きくなるにつれて、特定の周波数において、伝達振動が増幅される場合がある。
【0035】
このように、本実施形態に係る伝達振動可変装置100によれば、コイル10に印加する電流値を変えることにより、第1ユニット1と第2ユニット2との間で伝達する伝達振動の減衰率を増減させることができ、特定の周波数に関しては、伝達振動を増幅させることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る伝達振動可変装置100では、第1ユニット1と第2ユニット2の相対移動するときに、規制部材5が第1ユニット1に対して摺動することにより上記相対移動に対して生じる抗力が、ユニット間接続部3が磁界が印加されないときに上記相対移動に対して生じる抗力の最小値よりも小さくなっている。仮に、上記抗力の大小関係が逆の場合、ユニット間接続部3に印加される磁界の強さがゼロ~微小値の範囲(コイル10に印加する電流値がゼロ~微小値の範囲)で、伝達振動を変化させることができなくなる。その結果、伝達振動可変装置100における伝達振動の可変幅が狭くなってしまう。しかし、本実施形態に係る伝達振動可変装置100によれば、規制部材5が第1ユニット1に対して摺動することにより上記相対移動に対して生じる抗力の方が、ユニット間接続部3が磁界が印加されていないときに上記相対移動に対して生じる抗力の最小値よりも小さいので、伝達振動可変装置100における伝達振動に対する可変幅を比較的広くすることができる。
【0037】
<ユニット間接続部3の変形例1>
既述した実施形態においては、ユニット間接続部3は、磁気粘性ゲルを用いて構成されていたが、磁気粘性ゲルに代えて磁気粘性エラストマーを用いてもよい。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0038】
<ユニット間接続部3の変形例2>
既述した実施形態においては、ユニット間接続部3は、図3に示したように、内側ユニット間接続部3aと、外側ユニット間接続部3bとで構成され、内側ユニット間接続部3aと外側ユニット間接続部3bは、互いに全周に亘って間隔をあけて配置されていたが、図5に示すように、内側ユニット間接続部3aおよび外側ユニット間接続部3bの他、これらを繋ぐ架設部3cを備えるユニット間接続部3Aとすることも可能である。
【0039】
例えば、ユニット間接続部3Aの磁気粘性ゲルを成型により製造する場合、図5に示すユニット間接続部3Aの輪郭に沿って土手が形成された型枠に、固まる前の磁気粘性ゲルが流し込まれる。架設部3cが設けられていることで、型枠の内側ユニット間接続部3aを形成する部分に流し込まれた磁気粘性ゲルは、型枠の架設部3cを形成する部分を通じて、型枠の外側ユニット間接続部3bを形成する部分に流れ込むため、内側ユニット間接続部3aと外側ユニット間接続部3bとの厚さが等しいものを容易に製造することができる。
【0040】
一方で、架設部3cが設けられたユニット間接続部3Aを採用した場合、図1の矢印Pに沿った方向に形成される磁路のうち、架設部3cを通って第2ヨーク12を迂回する磁路が僅かに形成されることになる。
【0041】
<規制部材5の変形例1>
既述した実施形態においては、規制部材5は、第1規制部材挟み部18と第2規制部材挟み部19との間に1つずつ設けられていたが、例えば図6に示すように、第1規制部材挟み部18と第2規制部材挟み部19の間に2つの規制部材5a,5bを連ねて配置してもよい。規制部材5a,5bには、前述の規制部材5と同様に摺動抵抗の小さな部材(例えば、PTFEなどのフッ素樹脂)が用いられる。一方の規制部材5aは第1規制部材挟み部18に固定され、もう一方の規制部材5bは第2規制部材挟み部19に固定される。固定には例えば接着剤が用いられる。2つの規制部材5a,5bは互いに端面同士を摺動自在に対向させている。摺動抵抗の小さな規制部材5a,5b同士が摺動することになるため、図1に示すように規制部材5を第1規制部材挟み部18と第2規制部材挟み部19との間に1つずつ用いた場合と比較して、摺動抵抗を小さくすることができる。2つの規制部材5a,5bの形状は、特に限定される訳ではないが、規制部材5と同様に円柱形状とすることができる。なお、以下では、規制部材5a,5bをまとめて規制部材5Bと記す場合がある。
【0042】
<規制部材5の変形例2>
既述した実施形態においては、規制部材5,5Bは、第1ヨーク11の周囲に形成された第1規制部材挟み部18と第2ヨーク12の周囲に形成された第2規制部材挟み部19との間に設けられていたが、規制部材5,5Bを設ける位置はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、規制部材5,5Bを、コイル10と第2ユニット2との間に設けてもよい。この場合、規制部材5,5Bは、コイル10に固定することが望ましい。この固定は、例えば接着剤を用いて行うことができる。また、規制部材5,5Bは、第1ユニット1と第2ユニット2とが中心線Nに対して直交する方向に互いに位置ずれを生じ、ユニット間接続部3が同方向に大きく変形しても当該ユニット間接続部3と接することのない位置に設けられている。このようにすることで、ユニット間接続部3が規制部材5,5Bと接触して想定外の振動が伝達されてしまうことが防止される。なお、規制部材5,5Bを安定的に支持するために、コイル10の上面にコーティング層が形成されていてもよい。また、コイル10をボビンに巻設した上で、当該ボビンを介して規制部材5,5Bがコイルに固定されていてもよい。なお、図1に示す第1規制部材挟み部18、第2規制部材挟み部19およびこれらの間に設けられた規制部材5,5Bは、図7に示すように、省略することができる。勿論、第1規制部材挟み部18、第2規制部材挟み部19およびこれらの間に設けられる規制部材5,5Bを省略せずに残し、外側ユニット間接続部3bの内側と外側の両側に規制部材5,5Bを設けてもよい。このようにした場合、第2規制部材挟み部19の内側に設けられる規制部材5,5Bの方が伝達トルクが小さくなるので、第2規制部材挟み部19の内側に設けられる規制部材の領域(摺動面積の総和)を多くし、第2規制部材挟み部19の外側に設ける規制部材5,5Bは、モーメントを支持する程度に内側の規制部材5,5Bの領域よりも設けられる領域を小さく(例えば規制部材5,5Bの個数を少なく)することができる。
【0043】
<規制部材5の変形例3>
既述した実施形態においては、規制部材5,5Bならびに第1規制部材挟み部18および第2規制部材挟み部19は、中心線Nの周囲に間隔をおいて3カ所に設けられていたが、これらは、3カ所以上設けられていればよく、特定の個数に限定されない。また、規制部材5,5Bならびに第1規制部材挟み部18および第2規制部材挟み部19は、全周に亘って環状に形成されていてもよい。
【0044】
また、上記の<規制部材5の変形例2>に記載した規制部材5,5Bは、コイル10と第2ユニット2との間において中心線Nの周囲に間隔をおいて3カ所に設けられていたが、この規制部材5,5Bも3カ所以上設けられていればよく、特定の個数に限定されない。また、この規制部材5,5Bも、全周に亘って環状に形成されていてもよい。
【0045】
-第2実施形態-
以下、第2実施形態に係る伝達振動可変装置について説明する。第1実施形態においては、ユニット間接続部3は磁気粘性ゲルを用いて構成されていたが、第2実施形態では、磁気粘性ゲルの代わりに、印加される電界の強さに応じて粘性および弾性が変化する機能性材料である電気粘性ゲルが用いられる。
【0046】
図8に示すように、第2実施形態に係る伝達振動可変装置100Aも、第1実施形態と同様に、第1ユニット1A、第2ユニット2A、ユニット間接続部3B、印加部4A、規制部材5および制御部6Aを備えている。
【0047】
第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aは、ユニット間接続部3Bを介して互いに対向する対向面8C,9Aを有している。本実施形態では、第1ユニット1Aが有する対向面8Cと第2ユニットが有する対向面9Aは、何れも平面状に形成され、互いに平行に配されている。
【0048】
第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aは、それらの一方が力および振動の入力側となり、それらの他方が力および振動の出力側となる。第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの一方に、力および振動を入力する入力部材(不図示)が取り付けられ、第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの他方に、力および振動の出力先となる出力部材(不図示)が取り付けられてもよい。但し、入力部材(不図示)が第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aに取り付けられることなく、直接、第1ユニット1Aまたは第2ユニット2Aに力および振動が入力されてもよい。また、出力部材(不図示)が第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aに取り付けられることなく、直接、第1ユニット1Aまたは第2ユニット2Aから力および振動が外部に出力されてもよい。本実施形態では、第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aに、第1実施形態と同様の取付手段16,17が形成されている。
【0049】
第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの一方に入力され、第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの他方から出力される力および振動は、第1実施形態の第1ユニット1および第2ユニット2に対するものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
第1ユニット1Aは、第1ユニット本体34と、第1電極41と、第1電極41の周囲に形成された第1規制部材挟み部18Aと、第1ユニット本体34と第1電極41との間に固定された第1絶縁膜35とを有する。第2ユニット2Aは、第2ユニット本体36と、第2電極42と、第2電極42の周囲に形成された第2規制部材挟み部19Aと、第2ユニット本体36と第2電極42との間に固定された第2絶縁膜37とを有する。第1規制部材挟み部18Aと第2規制部材挟み部19Aとの間には、規制部材5が介在している。この規制部材5も、第1実施形態と同様に、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの離間寸法が一定値以下にならないように規制する。このように規制することで、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの間に介在するユニット間接続部3Bが過剰に圧縮され損傷することが防止される。
【0051】
ユニット間接続部3Bは、第1ユニット1Aの対向面8Cと第2ユニット2Aの対向面9Aの間に介在し、第1ユニット1Aの対向面と第2ユニット2Aの対向面とを接続している。本実施形態では、第1ユニット1Aの対向面8Cと第2ユニット2Aの対向面9Aは、それぞれ第1電極41と第2電極42によって形成されている。ユニット間接続部3Bは、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの間で回転力、回転振動、並進力および並進振動を伝達することができる。
【0052】
また、ユニット間接続部3Bは、印加される電界の強さに応じて粘性および弾性が変化する電気粘性ゲルを用いて構成されている。電気粘性ゲルは、電気粘性流体をゲル化したものである。ユニット間接続部3Bの粘性および弾性が変化すると、ユニット間接続部3Bが第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの間で伝達する振動が変化する。例えば、ユニット間接続部3Bに印加される電界が弱いほど、ユニット間接続部3Bは入力された振動を減衰させて出力側に伝達する。一方、ユニット間接続部3Bに印加される電界が強いほど、ユニット間接続部3Bは入力された振動を減衰させずに出力側に伝達する。また例えば、ユニット間接続部3Bに印加される電界が特定の強さになると、ユニット間接続部3Bは、特定周波数の振動を大幅に増幅または減衰させることができる。
【0053】
ユニット間接続部3Bは、接着剤を用いて、第1ユニット1A(第1電極41)と第2ユニット2A(第2電極42)に接着されている。接着には、接着剤自身の電気抵抗を下げるために、導電性の金属粒子などを含む接着剤(導電性の接着剤)を用いることが好ましい。非導電性の接着剤を使う場合は、ユニット間接続部3Bの一部、例えば、その周囲のみに接着剤を用いることも可能である。ユニット間接続部3Bの電気粘性ゲルが自己融着性を有する場合は、接着剤を用いずに、ユニット間接続部3Bを第1ユニット1および第2ユニット2に融着により接着してもよい。
【0054】
機能性材料として電気粘性流体を用いた場合は、電気粘性流体が外部に漏れ出さないように、シール材等を用いた複雑な構造を採る必要がある。しかし、本実施形態のように、機能性材料として電気粘性ゲルを用いれば、伝達振動可変装置100A全体をシール材等を用いずに簡易な構造とすることができる。
【0055】
印加部4Aは、本実施形態では、ユニット間接続部3Bに電界を印加する電界印加部である。印加部4Aは、第1電極41、第2電極42、電線43,44などによって構成されている。第1電極41は、第1ユニット1Aの構成と印加部4Aの構成を兼ねており、第2電極42は、第2ユニット2Aの構成と印加部4Aの構成を兼ねている。
【0056】
規制部材5は、第1ユニット1Aの第1規制部材挟み部18Aと、第2ユニット2Aの第2規制部材挟み部19Aとの間に介在し、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの離間寸法が一定値以下にならないように規制する。本実施形態では、規制部材5は、第2ユニット2Aの第2規制部材挟み部19Aに対して摺動自在となるように、第1ユニット1Aの第1規制部材挟み部18Aに固定されている。但し、規制部材5は、第2ユニット2Aの第2規制部材挟み部19Aに対して摺動自在となるように、第1ユニット1Aの第1規制部材挟み部18Aに固定されていてもよい。なお、規制部材5は、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとが中心線Nに対して直交する方向に互いに位置ずれを生じ、ユニット間接続部3Bが同方向に大きく変形しても当該ユニット間接続部3Bと接することのない位置に設けられている。このようにすることで、ユニット間接続部3Bが規制部材5と接触して想定外の振動が伝達されてしまうことが防止される。
【0057】
本実施形態では、規制部材5が上記規制を行いながら、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとが相対移動するとき、規制部材5が摺動することにより上記相対移動に対して生じる抗力が、ユニット間接続部3Aが電界が印加されないときに上記相対移動に対して生じる抗力の最小値より小さくなるように、規制部材5には、摺動抵抗の小さな部材が用いられる。電界が印加されないときのユニット間接続部3Aの上記相対移動に対する抗力は、ユニット間接続部3Aに生じる歪に応じて変わり、通常、ユニット間接続部3Aに歪が生じていないときに、当該抗力は最小値となる。なお、上記規制部材5に採用し得る具体的な部材は、第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0058】
制御部6Aは、印加部4Aがユニット間接続部3Aに印加する電界の強さを制御する。制御部6Aは、所定の操作部21を通じてユーザから指示された強さの電圧をバッテリー22等の電源を使用して第1電極41と第2電極42の間に印加する。制御部6Aは、例えば、印加する電圧を調整するために必要な電気回路、マイクロコンピュータ等を用いて構成される。第1電極41および第2電極42は、印加される電圧の大きさに応じた電界を生じるため、ユニット間接続部3Aに印加される電界の強さは、ユーザが指示する電圧の強さに応じて増減する。
【0059】
以上の構成を備える伝達振動可変装置100Aにおいて、ユーザが操作部21を操作することにより、第1電極41と第2電極42の間に電圧が印加されると、電気粘性ゲルからなるユニット間接続部3Aを電界が貫通する。この状態で、第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの一方に振動が入力される。このとき、第1ユニット1Aおよび第2ユニット2Aの他方から振動が出力され、入力される振動に対して出力される振動は、電極41,42に印加される電圧に応じて変化する。振動の変化の態様は、使用されるユニット間接続部の電気粘性ゲルの物性に左右されるが、概ね、電極41,42に印加される電圧値がゼロ乃至ゼロ近傍のときは、殆どの周波数において伝達振動が大幅に減衰し、電極41,42に印加される電圧値が大きくなるにつれて、次第に、何れの周波数に関しても伝達振動が減衰し難くなる。また、電極41,42に印加される電圧値が大きくなるにつれて、特定の周波数において、伝達振動が増幅される場合がある。
【0060】
このように、本実施形態に係る伝達振動可変装置100Aによれば、電極41,42に印加する電圧値を変えることにより、第1ユニット1Aと第2ユニット2Aとの間で伝達する伝達振動の減衰率を増減させることができ、特定の周波数に関しては、伝達振動を増幅させることができる。
【0061】
<ユニット間接続部3Aの変形例1>
既述した実施形態においては、ユニット間接続部3Aは、電気粘性ゲルを用いて構成されていたが、電気粘性ゲルに代えて電気粘性エラストマーを用いてもよい。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
<規制部材5の変形例1>
既述した実施形態においては、規制部材5は、第1規制部材挟み部18Aと第2規制部材挟み部19Aとの間に1つずつ設けられていたが、第1実施形態における<規制部材5の変形例1>または<規制部材5の変形例3>での説明に倣って第2実施形態の規制部材5を別の規制部材に変更してもよい。
【0063】
<その他の実施形態>
既述した実施形態において、第1ユニット1,1Aおよび第2ユニット2,2Aに対するユニット間接続部3,3Bの接着性・粘着性を向上させるために、第1ユニット1,1Aの対向面8,8Aと第2ユニット2,2Aの対向面9,9Aのうち、ユニット間接続部3,3Bが接続される部分を、梨地処理等により微細な凹凸が形成されたものや、複数の穴が形成されたものとしてもよい。一方、第1ユニット1,1Aの対向面8,8Aまたは第2ユニット2,2Aの対向面9,9Aのうち規制部材5と摺動する部分は、摺動抵抗を抑えるために、表面粗度を小さくすることが望ましく、例えば算術平均粗さを6.3μm以下とすることが望ましい。
【0064】
既述した実施形態において、第1ユニット1,1Aの対向面8,8Aと第2ユニット2,2Aの対向面9,9Aは互いに平行に配されていたが、必ずしも平行に配されている必要はない。例えば、対向面8,8Aおよび/または対向面9,9Aに中心線Nを中心とする円錐状の傾斜が形成されていてもよい。吸収したい振動の種類に応じて、個所ごとにユニット間接続部3,3Bの厚みを変えることができる。
【0065】
既述した実施形態では、ユニット間接続部3,3Bは、単層で構成されていたが、例えば図9または図10に示すように、ユニット間接続部3,3Bを複数の層で構成することも可能である。同図はユニット間接続部3,3Bが2層の場合を例示しているが、ユニット間接続部3,3Bは3層以上であってもよい。ユニット間接続部3,3Bを複数の層で構成する場合は、ユニット間接続部3,3Bの層の間に磁性体からなる板材が固定される。板材の材質は、特に限定されず、装置の使用目的に応じて適宜決定されるべきものである。また、ユニット間接続部3,3Bを複数の層で構成する場合、規制部材5は、各層毎に設けられてもよいし、規制部材5が設けられる層と設けられない層とがあってもよい。また、本例のように、第1規制部材挟み部18、板材、第2規制部材挟み部19で規制部材5を挟むのではなく、既述した各実施形態同様に第1規制部材挟み部18と第2規制部材挟み部19だけで規制部材5を挟むこともできる。この場合、板材が規制部材5に接触しないように、図9で示したものより径方向の長さを短くする必要がある。このように、ユニット間接続部3,3Bを複数の層で構成することにより第1ユニット1,1Aと第2ユニット2,2Aの相対変位量を、ユニット間接続部3,3Bを単層で構成する場合よりも広くすることができる。
【0066】
既述した実施形態に係る伝達振動可変装置100,100Aにおいては、第1ユニット1,1Aに対する第2ユニット2,2Aの変位(回転方向または面方向の変位)が過大になると、ユニット間接続部3,3Bが崩壊する可能性があるが、そのようなユニット間接続部3,3Bの崩壊を防止するために、第1ユニット1,1Aに対する第2ユニット2,2Aの変位を抑制するバネを設けてもよい。
【0067】
例えば、図11に示すように、有底筒状のアタッチメント51の底壁部51aに伝達振動可変装置100の第1ユニット1の端部を固定し、アタッチメント51の周壁部51bと第2ユニット2との間にばね53を設けて第2ユニット2が第1ユニット1に対して過剰に面方向(中心線Nに対して直交する方向)に移動しないようにしてもよい。図11は、第1実施形態に係る伝達振動可変装置100の場合を例示しているが、第2実施形態に係る伝達振動可変装置100Aの場合も同様にして第1ユニット1Aに対する第2ユニット2Aの面方向の変位を抑制することができる。この場合、ばね53は、規制部材としても機能し、この場合、規制部材5,5Bを設けなくとも同様の効果が得られる。
【0068】
また、図示しないが、第1ユニット1に対する第2ユニット2の回転方向の変位を抑制するために、ばね53が第2ユニット2の接線方向に伸縮するようにしてもよい。すなわち、ばね53の一端部を第2ユニット2の周囲に取付け、ばねの伸縮方向が第2ユニット2の接線方向を向くようにばね53の他端部をアタッチメント51の周壁部51bに取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば、伝達する振動を変化させることができる伝達振動可変装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A 第1ユニット
2,2A 第2ユニット
3,3A,3B ユニット間接続部
3a 内側ユニット間接続部
3b 外側ユニット間接続部
3c 架設部
4,4A 印加部
5,5A 規制部材
5a,5b 規制部材
5c 転動体
6,6A 制御部
10 コイル
11 第1ヨーク
11a 内側ヨーク
11b 外側ヨーク
100,100A 伝達振動可変装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11