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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157292
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20241030BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L23/04 E
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071573
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能川 玄之
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA02
4M109DB10
(57)【要約】
【課題】ポッティング材が外部端子の端子部に付着することを防止する。
【解決手段】半導体モジュールは、半導体素子と、端子孔を有し、半導体素子を収容するケースと、端子孔に挿入され、半導体素子に電気的に接続される外部端子と、ケースに接着剤により接合される押え部材と、ケース内に充填されるポッティング材と、を備え、外部端子は、ケースと押え部材との間に配置される板状の脚部を有し、ケースは、脚部を収容する凹部を有し、凹部の深さは、脚部の厚さよりも大きく、凹部内には、脚部の長さ方向での一部に脚部の厚さ方向の全域にわたり接着剤のための通路が設けられ、脚部の幅方向における通路の幅は、凹部の深さと脚部の厚さとの差よりも大きい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
端子孔を有し、前記半導体素子を収容するケースと、
前記端子孔に挿入され、前記半導体素子に電気的に接続される外部端子と、
前記ケースに接着剤により接合される押え部材と、
前記ケース内に充填されるポッティング材と、を備え、
前記外部端子は、前記ケースと前記押え部材との間に配置される板状の脚部を有し、
前記ケースは、前記脚部を収容する凹部を有し、
前記凹部の深さは、前記脚部の厚さよりも大きく、
前記凹部内には、前記脚部の長さ方向での一部に前記脚部の厚さ方向の全域にわたり前記接着剤のための通路が設けられ、
前記脚部の幅方向における前記通路の幅は、前記凹部の深さと前記脚部の厚さとの差よりも大きい、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記脚部の側面には、前記通路を構成する少なくとも1つの切欠きが設けられる、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの切欠きは、前記脚部の幅方向に並ぶ2つの切欠きを含み、
前記2つの切欠きのそれぞれが前記通路を構成する、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記2つの切欠きは、前記脚部の幅方向での両側面に設けられる、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記脚部には、前記脚部の厚さ方向に貫通する少なくとも1つの孔が設けられており、
前記少なくとも1つの孔が前記通路を構成する、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記脚部の長さ方向における前記通路の長さは、前記脚部の幅方向における前記通路の長さよりも長い、
請求項2または5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記脚部の長さ方向における前記通路の長さをLとし、
前記脚部の幅方向における前記通路の幅をWとしたとき、
1.1<L/W<3.0
の関係を満たす、
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記脚部の幅をWaとし、
前記脚部の幅方向における前記通路の幅をWとしたとき、
0.2<W/Wa<0.4
の関係を満たす、
請求項2または5に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記脚部の厚さをTとし、
前記脚部の幅方向における前記通路の幅をWとしたとき、
0.5<W/T<1.5
の関係を満たす、
請求項2または5に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールに代表される半導体モジュールは、一般に、半導体素子と、半導体素子を収容するケースと、半導体素子に電気的に接続される複数の外部端子と、を備える。ケースには、例えば、特許文献1、2に開示されるように、内外を貫通する複数の端子孔が設けられており、各外部端子は、当該複数の端子孔のうちのいずれかに挿入され、ケースの外部に突出する端子部を有する。
【0003】
特許文献1では、外部端子がケースの内側に突き出たL形脚部を有しており、L形脚部がケースと端子押え枠との間に介在する。そして、L形脚部とケースと端子押え枠とが接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-92388号公報
【特許文献2】特開2014-157925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構成では、ケースとL形脚部との間の隙間に接着剤が行き渡らない場合があった。この場合、ケース内にポッティング材を充填すると、ポッティング材が当該隙間および端子孔を通じて外部端子の端子部に至ってしまい、外部端子の導通を損ねてしまう。
【0006】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、ポッティング材(封止樹脂)が外部端子の端子部に付着することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る半導体モジュールは、半導体素子と、端子孔を有し、前記半導体素子を収容するケースと、前記端子孔に挿入され、前記半導体素子に電気的に接続される外部端子と、前記ケースに接着剤により接合される押え部材と、前記ケース内に充填されるポッティング材と、を備え、前記外部端子は、前記ケースと前記押え部材との間に配置される板状の脚部を有し、前記ケースは、前記脚部を収容する凹部を有し、前記凹部の深さは、前記脚部の厚さよりも大きく、前記凹部内には、前記脚部の長さ方向での一部に前記脚部の厚さ方向の全域にわたり前記接着剤のための通路が設けられ、前記脚部の幅方向における前記通路の幅は、前記凹部の深さと前記脚部の厚さとの差よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る半導体モジュールの分解斜視図である。
図2】ケースの底面図である。
図3】ケースの一部を示す斜視図である。
図4図2中のA-A線に沿う半導体モジュールの断面図である。
図5】第1実施形態における外部端子の脚部を説明するための平面図である。
図6】第1実施形態における外部端子の脚部を説明するための断面図である。
図7】第1実施形態におけるケースの凹部内の接着剤のための通路を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
図9】用意工程を説明するための図である。
図10】端子挿入工程を説明するための図である。
図11】接合工程中の塗布工程を説明するための図である。
図12】接合工程中の貼り合せ工程を説明するための図である。
図13】接合工程中の貼り合せ工程における接着剤のための通路の作用を説明するための図である。
図14】第2実施形態における外部端子の脚部を説明するための平面図である。
図15】第2実施形態における外部端子の脚部を説明するための断面図である。
図16】第2実施形態におけるケースの凹部内の接着剤のための通路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.半導体モジュールの全体構成
図1は、第1実施形態に係る半導体モジュール10の分解斜視図である。半導体モジュール10は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール等のパワーモジュールである。半導体モジュール10は、例えば、鉄道車両、自動車または家庭用電気機械等の機器に搭載されるインバーターまたは整流器等の装置での電力制御に用いられる。
【0011】
図1に示すように、半導体モジュール10は、複数の半導体素子30と配線基板20とベース40とケース50と複数の外部端子60とスペーサー70と蓋80とを備える。スペーサー70は、「押え部材」の一例である。図1では、半導体素子30および配線基板20が配線基板20の外形として二点鎖線で簡略的に示される。なお、図1では、図示を省略するが、半導体モジュール10は、前述の構成要素のほか、後述の図4に示すポッティング材PAを備える。
【0012】
以下、まず、図1に基づいて、半導体モジュール10の各部の概略を順次説明する。なお、以下の説明は、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。Z軸は、半導体モジュール10の厚さ方向に平行な軸である。以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。これらの方向と鉛直方向との関係は、特に限定されず、任意である。また、以下では、Z軸に沿う方向にみることを「平面視」という場合がある。
【0013】
配線基板20は、複数の半導体素子30を搭載する基板であり、当該複数の半導体素子30とともに回路を構成する。例えば、配線基板20は、DCB(Direct Copper Bonding)基板またはDBA(Direct Bonded Aluminum)基板等の基板である。図示しないが、配線基板20は、絶縁基板と、当該絶縁基板の両面にそれぞれ設けられる2つの導体層と、を有する。当該絶縁基板は、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化ケイ素等のセラミックスで構成される。当該2つの導体層のそれぞれは、例えば、銅またはアルミニウム等の金属で構成される。当該2つの導体層のうちの一方の導体層には、複数の半導体素子30がはんだ等により接合される。また、当該2つの導体層のうちの他方の導体層には、ベース40がはんだ等により接合される。
【0014】
図1に示す例では、配線基板20の厚さ方向がZ軸に沿う方向である。配線基板20のZ1方向を向く面には、複数の半導体素子30のそれぞれがはんだ等の導電性接合材により接合される。一方、配線基板20のZ2方向を向く面には、ベース40がはんだ等の導電性接合材により接合される。
【0015】
配線基板20に搭載される複数の半導体素子30のうちの少なくとも1つの素子は、IGBT等のパワー半導体チップである。なお、配線基板20には、半導体素子30として、パワー半導体チップのほか、パワー半導体チップの動作を制御するための制御用チップが搭載されてもよいし、負荷電流を転流させるためのFWD(Free Wheeling Diode)等の素子が搭載されてもよい。
【0016】
ベース40は、放熱用の板状部材である。例えば、ベース40は、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される金属板である。ベース40は、高い熱伝導性を有しており、半導体素子30からの熱を放熱する。また、ベース40は、高い導電性も有しており、例えば、接地電位等の基準電位に電気的に接続される。なお、ベース40は金属板としたが、高い熱伝導性を有していれば絶縁体でもよい。
【0017】
図1に示す例では、ベース40の厚さ方向がZ軸に沿う方向である。ベース40は、Z軸に沿う方向にみて、X軸に沿う方向に延びる1対の長辺とY軸に沿う方向に延びる1対の短辺とを有する形状をなす。ベース40には、各短辺の近傍に、取付孔41が設けられる。取付孔41は、例えば、図示しない放熱フィン等の放熱用部材をベース40に対してねじ留めするのに用いられる貫通孔である。なお、ベース40の平面視形状および数は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、ベース40は、配線基板20と一体で構成されてもよい。すなわち、ベース40が配線基板20の一部を兼ねてもよい。
【0018】
ケース50は、複数の端子孔51を有し、配線基板20に搭載される複数の半導体素子30を収容する枠状部材である。ケース50は、実質的な絶縁体であり、例えば、PPS(Polyphenylene Sulfide)またはPBT(Polybutylene terephthalate)等の樹脂材料で構成される。なお、当該樹脂材料には、ケース50の機械的強度または熱伝導性の向上等の観点から、アルミナまたはシリカ等の無機フィラーが含有されてもよい。
【0019】
複数の端子孔51は、ケース50の周方向に沿って配列される。各端子孔51は、ケース50を貫通する孔である。図1に示す例では、各端子孔51は、Z軸に沿う方向に延びる。
【0020】
図1に示す例では、ケース50の厚さ方向がZ軸に沿う方向である。そして、ケース50は、Z軸に沿う方向にみて、X軸に沿う方向に延びる1対の長辺とY軸に沿う方向に延びる1対の短辺とを有する外形をなす。ケース50に設けられる複数の端子孔51は、各長辺に沿って配列される複数の端子孔51と、各短辺に沿って配列される複数の端子孔51と、に区分される。
【0021】
本実施形態では、ケース50に設けられる複数の端子孔51の数が外部端子60の数よりも多い。当該複数の端子孔51のうち、外部端子60の数に応じた数の複数の端子孔51のそれぞれには、外部端子60が挿入されるが、残りの端子孔51には、外部端子60が挿入されない。このように、ケース50に端子孔51の数を外部端子60の数より多く設けるのは、ケース50を複数種の端子位置の半導体モジュールに適用するためである。なお、複数の端子孔51の配置および数は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、端子孔51の数が外部端子60の数と等しくてもよい。
【0022】
複数の外部端子60のそれぞれは、半導体モジュール10を実装する図示しない基板と半導体素子30とを互いに電気的に接続するための端子であり、端子孔51に挿入され、半導体素子30に電気的に接続される。複数の外部端子60は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成される。また、外部端子60の表面には、例えば、SnめっきまたはSn-Cuめっき等のめっきが施されてもよい。
【0023】
ここで、半導体モジュール10の有する複数の外部端子60のうち、2以上の外部端子60が主電流の流れる端子であり、他の2以上の外部端子60が半導体素子30の動作を制御するための制御端子である。
【0024】
図1に示す例では、外部端子60は、L字状に屈曲した金属板で構成される。ここで、外部端子60は、ピン部61と脚部62とを有する。
【0025】
ピン部61は、端子孔51に挿入される外部端子60の棒状部分である。ピン部61は、端子孔51内でZ軸に沿う方向に延びる。ピン部61のZ1方向での端は、ケース50の外壁面から突出する。このように、ピン部61は、ケース50の外壁面から突出する部分である端子部を有する。当該端子部は、半導体モジュール10を実装する図示しない基板に接続される。一方、ピン部61のZ2方向での端は、脚部62に接続される。なお、ピン部61の形状は、図1に示す例に限定されず、例えば、ピン部61の先端が2つの部分に分岐した形状でもよい。
【0026】
脚部62は、スペーサー70のZ1方向を向く面上に沿って配置される外部端子60の板状部分である。脚部62は、ピン部61のZ2方向での端からケース50内側に向けて延びる。脚部62は、ケース50とスペーサー70との間に挟まれる部分と、ケース50の内側に露出する部分であるパッド部と、を有する。当該パッド部には、図示しないボンディングワイヤー等のワイヤーの一端が接合される。当該ワイヤーの他端は、配線基板20または半導体素子30に接続される。この接続により、外部端子60および半導体素子30が互いに電気的に接続される。なお、当該ワイヤーは、後述の図4に示すワイヤーBWである。
【0027】
このように、外部端子60は、ケース50とスペーサー70との間に配置される板状の脚部62を有する。ここで、脚部62は、ケース50とスペーサー70とを接合する接着剤が脚部62とケース50との間の隙間に好適に行き渡るように工夫した形状をなす。なお、脚部62の詳細については、後に図5および図6に基づいて説明する。
【0028】
スペーサー70は、ベース40とケース50との間に介在する枠状部材である。スペーサー70は、ケース50に向けて複数の外部端子60を押さえ付ける機能と、複数の外部端子60のそれぞれとベース40との間の電気的絶縁を確保する機能と、を有する。スペーサー70は、実質的な絶縁体であり、例えば、ベース40と同様、PPS(Polyphenylene Sulfide)またはPBT(Polybutylene terephthalate)等の樹脂材料で構成される。なお、当該樹脂材料には、スペーサー70の機械的強度の向上等の観点から、アルミナまたはシリカ等の無機フィラーが含有されてもよい。また、スペーサー70を構成する材料は、樹脂材料に限定されず、例えば、セラミックス材料でもよい。
【0029】
図1に示す例では、スペーサー70の厚さ方向がZ軸に沿う方向である。スペーサー70のZ1方向を向く面70aは、ケース50に対して接着剤により接合される。図1では図示を省略するが、当該接着剤は、後述の接着剤B1である。一方、スペーサー70のZ2方向を向く面70bは、ベース40に対して接着剤により接合される。図1では図示を省略するが、当該接着剤は、後述の接着剤B2である。なお、配線基板20がベース40の全域にわたり配置される場合、または、ベース40が省略される場合、スペーサー70の面70bは、配線基板20に対して接着剤により接合されてもよい。
【0030】
また、図1に示す例では、スペーサー70の外周面に周方向に並ぶ複数の突起71が設けられる。このため、スペーサー70をケース50の内側に挿入させやすくしつつ、ケース50およびスペーサー70を互いに嵌合させることができる。なお、突起71の数、位置および形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、複数の突起71のそれぞれは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0031】
蓋80は、ケース50のZ1方向を向く面に接合される板状部材である。蓋80は、例えば、ケース50と同様、PPS(Polyphenylene Sulfide)またはPBT(Polybutylene terephthalate)等の樹脂材料で構成される。蓋80は、蓋80とケース50との間の隙間を封止するように、ケース50に接着剤等により接合される。
【0032】
ここで、ベース40とケース50と蓋80とで囲まれる空間には、半導体素子30を覆うポッティング材が充填される。図1では図示を省略するが、当該ポッティング材は、後述のポッティング材PAである。当該ポッティング材は、例えば、シリコーンゲル等のシリコーン樹脂で構成される。
【0033】
以上の概略の半導体モジュール10では、外部端子60の脚部62がケース50とスペーサー70との間に介在した状態で、ケース50およびスペーサー70が接着剤により互いに接合される。ここで、ケース50と外部端子60との間の隙間は、当該接着剤により埋められる。これにより、ケース50内のポッティング材が当該隙間および端子孔51を通じて外部端子60の端子部に至ることが防止される。以下、この点を詳述する。
【0034】
1-2.外部端子
図2は、ケース50の底面図、すなわち、複数の外部端子60を装着した状態のケース50をZ1方向にみた図である。図3は、ケース50の一部を示す斜視図である。図3では、隔壁55を説明するための便宜上、Z1方向に対して若干傾斜した方向でケース50をみた図が示される。図2および図3に示すように、ケース50には、複数の隔壁55が設けられる。各隔壁55は、互いに隣り合う2つの端子孔51同士の間を隔てる。
【0035】
図2および図3に示す例では、各端子孔51は、外部端子60のピン部61の形状に対応する形状をなす。具体的には、各端子孔51は、ケース50のZ1方向を向く面に開口する第1部分と、ケース50のZ2方向を向く面に開口する第2部分と、を有する。当該第1部分および当該第2部分は、互いに連通する。本実施形態では、当該第1部分および当該第2部分の厚さが互いに等しいが、当該第2部分の幅が当該第1部分の幅よりも狭い。
【0036】
ここで、ケース50は、複数の凸部57と複数の凹部56とを有する。
【0037】
複数の凸部57は、複数の凹部56を区画する突起である。各凸部57の頂面は、Z2方向を向く平坦面であり、スペーサー70の面70aに対して接着剤B1により接合される。図2に示す例では、各凸部57が平面視でT字状をなす。なお、凸部57の平面視形状は、図2に示す例に限定されず、任意である。
【0038】
各凹部56は、脚部62を収容する窪みであり、互いに隣り合う2つの凸部57により区画される。凹部56は、端子孔51ごとに、端子孔51からケース50の内側に向けて延びており、ケース50の内側と端子孔51とを連通させる。凹部56には、当該凹部56に対応する端子孔51に外部端子60が挿入される場合、外部端子60の脚部62の一部が配置される。凹部56は、平面視で脚部62の一部に沿う形状をなしており、外部端子60の姿勢変化を規制する。
【0039】
図4は、図2中のA-A線に沿う半導体モジュール10の断面図である。図4に示すように、ベース40とケース50との間には、スペーサー70が介在する。
【0040】
スペーサー70の面70aには、接着剤B1により、ケース50および複数の外部端子60が接合される。また、スペーサー70の面70bには、接着剤B2により、ベース40が接合される。
【0041】
接着剤B1および接着剤B2のそれぞれは、絶縁性の接着剤である。より具体的には、接着剤B1は、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤またはシリコーン系接着剤である。ここで、接着剤B1および接着剤B2の種類は、互いに同じであっても異なってもよい。また、接着剤B1および接着剤B2は、図4に示す例では、スペーサー70により互いに分断されるが、これに限定されず、一体であってもよい。例えば、接着剤B2は、スペーサー70とベース40との間から広がることによりベース40とケース50との間に至ってもよい。この場合、接着剤B2は、ベース40およびスペーサー70を互いに接合するだけでなく、ベース40およびケース50を互いに接合する。なお、接着剤B1、B2は、アルミナまたはシリカ等の絶縁性の無機フィラーを含んでもよい。
【0042】
接着剤B1は、熱硬化型接着剤であることが好ましい。熱硬化型接着剤は、硬化前に、加熱により一時的に軟化する性質を有する。したがって、接着剤B1として熱硬化型接着剤を用いることにより、硬化前の接着剤B1をケース50と外部端子60との間に導きやすいという利点がある。また、熱硬化型接着剤は、所望のタイミングで硬化させることができる。したがって、接着剤B1として熱硬化型接着剤を用いることにより、接着剤B1の必要以上の広がりを防止することもできる。
【0043】
接着剤B1は、ケース50およびスペーサー70を互いに接合するだけでなく、ケース50およびスペーサー70に対して外部端子60の脚部62を接合する。ここで、脚部62が凹部56に収容されており、接着剤B1がケース50の凹部56の壁面と脚部62との間の隙間を埋める。なお、図示しないが、端子孔51が接着剤B1により封止されてもよい。
【0044】
ここで、図4に示すように、外部端子60の脚部62は、Z2方向を向く面60aと、Z1方向を向く面60bと、を有する。面60aは、スペーサー70の面70aに接着剤B1により接合される。一方、面60bは、ケース50の凹部56の底面に接着剤B1により接合される。また、面60bは、凹部56から露出する部分であるパッド部を有する。このパッド部には、ボンディングワイヤー等のワイヤーBWの一端が接合される。
【0045】
また、凹部56の深さdは、脚部62の厚さTよりも大きい。これにより、凹部56および脚部62の製造誤差等により深さdおよび厚さTが変動しても、凹部56内に脚部62を収めることができる。深さdと厚さTとの差ΔZは、製造誤差等よりも若干大きい程度であり、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上0.1mm以下程度である。また、具体的な厚さTは、特に限定されないが、例えば、1mm程度である。
【0046】
図5は、第1実施形態における外部端子60の脚部62を説明するための平面図である。図6は、第1実施形態における外部端子60の脚部62を説明するための断面図である。図7は、第1実施形態におけるケース50の凹部56内の接着剤B1のための通路PBを説明するための図である。なお、図5は、外部端子60を装着した状態のケース50の一部を前述の図2と同様にZ1方向にみた図である。図6は、図2中のB-B線断面図である。図5および図6では、説明の便宜上、接着剤B1およびスペーサー70の図示が省略される。
【0047】
図5に示すように、脚部62の側面には、2つの切欠き62aが設けられる。各切欠き62aは、凹部56内で面60aから面60bにわたり設けられており、接着剤B1のための通路PBを構成する。すなわち、凹部56内には、脚部62の長さ方向での一部に脚部62の厚さ方向の全域にわたり接着剤B1のための通路PBを構成する各切欠き62aが設けられる。
【0048】
ここで、脚部62の幅方向における各切欠き62aの長さ、すなわち、脚部62の幅方向における通路PBの幅Wは、凹部56の深さdと脚部62の厚さTとの差ΔZよりも大きい。なお、「脚部62の長さ方向」とは、外部端子が端子孔からケース50の内側に向かう方向である。「脚部62の幅方向」とは、脚部62の厚さ方向と長さ方向との双方に直交する方向である。
【0049】
このように、差ΔZよりも大きい幅Wの通路PBが凹部56内に脚部62の厚さ方向にわたり設けられることにより、後述の図12および図13に示すように、脚部62をケース50の凹部56内に収容した状態でケース50とスペーサー70とを互いに接着する際、接着剤B1が通路PBに進入しやすい。このため、接着剤B1が通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間に好適に流入するので、図7に示すように、脚部62の全周にわたり接着剤B1を行き渡らせることにより、凹部56の壁面と脚部62との間の隙間を接着剤B1により塞ぐことができる。この結果、ケース50内のポッティング材PAが当該隙間を通じて外部端子60の端子部に至ることが防止される。ここで、通路PBは、ケース50の凹部56内で脚部62の長さ方向での一部に設けられるので、ケース50の凹部56の壁面を脚部62に部分的に接触させることにより、脚部62を位置決めすることができる。
【0050】
ここで、接着剤B1は、凹部56の壁面と脚部62との間の隙間を塞ぐだけでなく、当該隙間と外部端子60のピン部61との間の範囲にわたりケース50と外部端子60の脚部62との間の隙間を塞ぐことが好ましい。これにより、ケース50内のポッティング材PAが外部端子60の端子部に至るのをより確実に防止することができる。
【0051】
図5に示す例では、2つの切欠き62aが脚部62の幅方向での両側面に設けられており、各切欠き62aが平面視で矩形をなす。また、各切欠き62aは、凹部56内に位置する。このように各切欠き62aが凹部56内に位置することにより、切欠き62aが通路PBを構成する。また、脚部62の側面は、切欠き62aの部分を除いて、凹部56の側面に沿う形状をなす。このため、凹部56により脚部62の位置決めがなされる。このように、通路PBがケース50の凹部56内で脚部62の長さ方向での一部に設けられるので、ケース50の凹部56の壁面を脚部62に部分的に接触させることにより、脚部62を位置決めすることができる。
【0052】
なお、切欠き62aの平面視形状は、図5に示す形状に限定されず、例えば、三角形、半円形等であってもよい。また、脚部62の切欠き62aによる側面は、Z軸に対して傾斜してもよいし、屈曲または湾曲した形状であってもよい。すなわち、各切欠き62aによる通路PBのZ軸に直交する断面積は、一定でなくともよく、例えば、Z1方向に向けて大きくなってもよいし、Z1方向に向けて小さくなってもよい。
【0053】
このように切欠き62aにより通路PBを構成する態様では、凹部56の壁面と脚部62との間に通路PBを設けることができる。このため、後述の第2実施形態のように脚部62を貫通する孔で通路PBを構成する態様に比べて、凹部56の壁面と脚部62との間に接着剤B1のない隙間が形成され難い。
【0054】
本実施形態では、図5および図6に示すように、2つの切欠き62aが脚部62の幅方向に並ぶ。そして、当該2つの切欠き62aのそれぞれが通路PBを構成する。このため、切欠き62aの数が1つである態様に比べて、接着剤B1が脚部62と凹部56の底面との間の隙間に回り込みやすい。
【0055】
また、2つの切欠き62aは、脚部62の幅方向での両側面に設けられる。このため、脚部62の幅方向での一方側面のみに切欠き62aを設ける態様に比べて、接着剤B1が脚部62と凹部56の底面との間の隙間に脚部62の幅方向に均一に回り込みやすい。、また、脚部62の端子孔51に近い側面に切欠き62aを設ける態様に比べて、接着剤B1が凹部56の底面との間の隙間だけでなく脚部62と凹部56の側面との間の隙間にも回り込みやすい。
【0056】
図5に示す例では、脚部62の長さ方向における通路PBの長さLが脚部62の幅方向における通路PBの幅Wよりも長い。このため、長さLが幅Wよりも短い態様に比べて、脚部62とスペーサー70との間に介在する接着剤B1が通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に流入しやすい。
【0057】
なお、長さLが幅W以下であってもよい。ただし、長さLは、脚部62の長さ方向における凹部56の長さLaよりも短いことが好ましい。この場合、脚部62の大型化を防止しつつ脚部62にワイヤーボンディングに必要な面積のパッド部を確保することができる。
【0058】
通路PBの幅Wは、差ΔZよりも大きければよい。ただし、幅Wが小さすぎると、接着剤B1の種類等によっては、通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に接着剤B1を流入させる作用が低下する傾向を示す。一方、幅Wが大きすぎると、脚部62の厚さTまたは構成材料等によっては、脚部62の必要な機械的強度および導電性を確保することが難しい。
【0059】
このような観点から、脚部62の長さ方向における各通路PBの長さをLとし、脚部62の幅方向における各通路PBの幅をWとしたとき、1.1<L/W<3.0の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たす場合、凹部56による脚部62の位置決めの安定化を図りつつ、脚部62とスペーサー70との間に介在する接着剤B1を通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に好適に流入させることができる。
【0060】
脚部62の幅をWaとし、脚部62の幅方向における通路PBの幅をWとしたとき、0.2<W/Wa<0.4の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たす場合、脚部62の必要な機械的強度および導電性を確保しつつ、脚部62とスペーサー70との間に介在する接着剤B1を通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に好適に流入させることができる。
【0061】
これに対し、W/Waが小さすぎると、接着剤B1の種類等によっては、通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に接着剤B1を流入させる作用が低下する傾向を示す。一方、W/Waが大きすぎると、脚部62の厚さTまたは構成材料等によっては、脚部62の必要な機械的強度を確保することが難しい。
【0062】
脚部62の厚さをTとし、脚部62の幅方向における通路PBの幅をWとしたとき、0.5<W/T<1.5の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たす場合、脚部62の必要な強度を確保しつつ、脚部62とスペーサー70との間に介在する接着剤B1を通路PBを通じて脚部62とケース50の凹部56の底面との間の隙間に好適に流入させることができる。
【0063】
1-3.半導体モジュールの製造方法
図8は、第1実施形態に係る半導体モジュール10の製造方法を示すフローチャートである。図8に示すように、半導体モジュール10の製造方法は、用意工程S10と端子挿入工程S20と接合工程S30とをこの順で含む。ここで、接合工程S30は、塗布工程S31と貼り合せ工程S32と軟化工程S33と硬化工程S34とをこの順で含む。以下、各工程を順次説明する。なお、以下では、前述の接着剤B1が熱硬化型接着剤である場合を例に説明する。また、軟化工程S33は、必要に応じて実行され、省略されてもよい。
【0064】
1-3-1.用意工程
図9は、用意工程S10を説明するための図である。図9では、ケース50の一部をZ1方向にみた図が示される。用意工程S10では、図9に示すように、ケース50が用意される。ケース50は、例えば、射出成形により形成される。
【0065】
なお、図示しないが、用意工程S10では、ケース50のほか、複数の外部端子60とスペーサー70等も用意される。外部端子60は、例えば、金属板をプレス加工および折り曲げ加工することにより形成される。スペーサー70は、例えば、射出成形により形成される。
【0066】
1-3-2.端子挿入工程
図10は、端子挿入工程S20を説明するための図である。図10では、ケース50の一部をZ1方向にみた図が示される。端子挿入工程S20では、図10に示すように、ケース50の有する複数の端子孔51のうちの所定の複数の端子孔51のそれぞれに外部端子60が挿入される。より具体的には、外部端子60の脚部62が凹部56に配置されるとともに、外部端子60のピン部61が端子孔51に挿入される。このとき、ピン部61が端子孔51に嵌合したり、脚部62が凹部56に嵌合したりしてもよい。
【0067】
1-3-3.接合工程
接合工程S30では、塗布工程S31と貼り合せ工程S32と軟化工程S33と硬化工程S34とがこの順で行われることにより、ケース50およびスペーサー70が互いに接着剤B1により接合される。
【0068】
1-3-3a.塗布工程
図11は、接合工程S30中の塗布工程S31を説明するための図である。図11では、ケース50の一部をZ1方向にみた図が示される。塗布工程S31では、図11に示すように、ケース50のZ2方向を向く面に硬化前の接着剤B1aが塗布される。より具体的には、Z2方向が鉛直方向での上方を向く状態で、端子挿入工程S20後のケース50のZ2方向を向く面に、ケース50の周方向に沿って全周にわたり硬化前の接着剤B1aが塗布される。ここで、接着剤B1aは、ケース50の凸部57の頂面と外部端子60の面60aとのそれぞれに接着剤B1aが塗布される。また、当該塗布は、例えば、ディスペンサーを用いて行われる。
【0069】
なお、塗布工程S31では、スペーサー70の面70aに接着剤B1aが塗布されてもよい。この場合、塗布工程S31では、ケース50の凸部57の頂面に対する接着剤B1aの塗布が省略されてもよい。また、塗布工程S31での接着剤B1aの塗布領域は、後述の貼り合せ工程S32によりケース50またはスペーサー70の全周にわたり広がることができればよく、ケース50またはスペーサー70の周方向での一部で欠損してもよい。
【0070】
1-3-3b.貼り合せ工程
図12は、接合工程S30中の貼り合せ工程S32を説明するための図である。図13は、接合工程S30中の貼り合せ工程S32における接着剤B1のための通路PBの作用を説明するための図である。図12では、ケース50およびスペーサー70の互いに貼り合せる状態が図6および図7に対応する断面で示される。図13では、ケース50およびスペーサー70の互いに貼り合せた後の状態が図6および図7に対応する断面で示される。
【0071】
貼り合せ工程S32では、塗布工程S31の後、図12に示すように、接着剤B1aの塗布されたケース50に向けてスペーサー70を押し付ける。これにより、図13に示すように、ケース50とスペーサー70とが接着剤B1aを介して互いに貼り合わされる。このとき、接着剤B1aは、凹部56の壁面と脚部62との間を埋めるように流動する。ここで、図13中の破線矢印で示すように、接着剤B1aが通路PBを通じて凹部56の底面と脚部62の面60bとの間に進入する。これにより、脚部62の全周にわたり硬化前の接着剤B1aを行き渡らせることにより、凹部56の壁面と脚部62との間の隙間を硬化後の接着剤B1により塞ぐことができる。
【0072】
ここで、前述のように通路PBの幅Wが差ΔZよりも大きいので、脚部62をケース50の凹部56内に収容した状態でケース50とスペーサー70とを互いに接着する際、接着剤B1aが通路PBに侵入しやすい。これに対し、通路PBを省略した従来の態様では、脚部62の側面と凹部56の側面との間には、嵌め合い公差程度の隙間しかないため、接着剤B1aを脚部62と凹部56の底面との間に行き渡らせることが難しい。このため、従来の態様では、ケース50と脚部62との間の隙間に接着剤B1aが行き渡らない場合がある。
【0073】
1-3-3c.軟化工程
図示しないが、軟化工程S33では、接着剤B1aが軟化されることにより、ケース50とスペーサー70との密着性が高められる。これにより、外部端子60とケース50との間の隙間が接着剤B1aにより好適に埋められる。軟化工程S33では、接着剤B1aは、ヒーターまたはオーブン等により、硬化温度よりも低い温度で加熱されることにより軟化される。軟化工程S33の処理温度および処理時間のそれぞれは、接着剤B1aの種類等に応じて決められ、特に限定されず、任意である。
【0074】
1-3-3d.硬化工程
図示しないが、硬化工程S34では、軟化工程S33の後、接着剤B1aがさらに加熱されることにより、接着剤B1aが硬化される。これにより、接着剤B1aの硬化物として接着剤B1が形成される。硬化工程S34は、軟化工程S33の後に時間間隔を隔てて行われてもよいし、軟化工程S33の直後に連続的に行われてもよい。ここで、硬化工程S34が軟化工程S33の直後に連続的に行われる場合、軟化工程S33は、硬化工程S34の一部と捉えてもよい。言い換えると、軟化工程S33は、硬化工程S34の一部に重複して行われてもよい。
【0075】
硬化工程S34の後、図示しないが、配線基板20を積層したベース40が接着剤B2によりスペーサー70に接合される。その後、超音波接合等によりワイヤーBWが脚部62および配線基板20に接合されることにより、外部端子60と半導体素子30とが電気的に接続される。そして、ポッティング材PAがケース50内に充填された後、蓋80がケース50に接着剤等により接合される。以上により、半導体モジュール10が製造される。
【0076】
ここで、ポッティング材PAをベース40とケース50とで囲まれる空間に充填する際、外部端子60の脚部62とケース50との間に隙間が存在すると、ポッティング材PAが当該隙間を通じて外部端子60の端子部に至る場合がある。この場合、半導体モジュール10を実装する基板と外部端子60との間の導通が損なわれる。
【0077】
これに対し、半導体モジュール10では、前述のように、凹部56の壁面および底面と脚部62との間の隙間を接着剤B1により塞ぐことができる。この結果、ケース50内のポッティング材PAが当該隙間を通じて外部端子60の端子部に至ることが防止される。
【0078】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0079】
図14は、第2実施形態における外部端子60Aの脚部62Aを説明するための平面図である。図15は、第2実施形態における外部端子60Aの脚部62Aを説明するための断面図である。図16は、第2実施形態におけるケース50の凹部56内の接着剤B1のための通路PBを説明するための図である。なお、図14および図15では、説明の便宜上、接着剤B1およびスペーサー70の図示が省略される。
【0080】
本実施形態の半導体モジュール10Aは、第1実施形態の外部端子60に代えて外部端子60Aを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール10と同様に構成される。また、外部端子60Aは、第1実施形態の脚部62に代えて脚部62Aを備えること以外は、第1実施形態の外部端子60と同様に構成される。
【0081】
図14および図15に示すように、脚部62Aは、第1実施形態の2つの切欠き62aに代えて孔62bを有すること以外は、第1実施形態の脚部62と同様に構成される。
【0082】
孔62bは、凹部56内で面60aから面60bにわたり設けられる貫通孔であり、接着剤B1のための通路PBを構成する。すなわち、凹部56内には、脚部62Aの長さ方向での一部に脚部62Aの厚さ方向の全域にわたり接着剤B1のための通路PBを構成する孔62bが設けられる。
【0083】
ここで、脚部62Aの幅方向における孔62bの長さ、すなわち、脚部62Aの幅方向における通路PBの幅Wは、凹部56の深さdと脚部62の厚さTとの差ΔZよりも大きい。このように孔62bで構成される通路PBによっても、接着剤B1が通路PBを通じて脚部62Aとケース50の凹部56の底面との間に好適に流入するので、脚部62Aの全周にわたり接着剤B1を行き渡らせることにより、凹部56の壁面と脚部62との間の隙間を接着剤B1により塞ぐことができる。
【0084】
図14および図15に示す例では、孔62bが脚部62Aの幅方向での中央に設けられており、孔62bが平面視で矩形をなす。また、孔62bは、凹部56内に位置する。このように孔62bが凹部56内に位置することにより、孔62bが通路PBを構成する。また、脚部62Aの側面は、凹部56の側面に沿う形状をなす。このため、凹部56により脚部62Aの位置決めがなされる。
【0085】
なお、孔62bの平面視形状は、図14に示す形状に限定されず、例えば、三角形、半円形等であってもよい。また、孔62bのZ軸に直交する断面積は、一定でなくともよい。すなわち、孔62bによる通路PBのZ軸に直交する断面積は、一定でなくともよく、例えば、Z1方向に向けて大きくなってもよいし、Z1方向に向けて小さくなってもよい。
【0086】
以上のような第2実施形態によっても、脚部62Aの全周にわたり接着剤B1を行き渡らせることにより、凹部56の壁面と脚部62Aとの間の隙間を接着剤B1により塞ぐことができる。この結果、ケース50内のポッティング材PAが当該隙間を通じて外部端子60の端子部に至ることが防止される。
【0087】
本実施形態では、前述のように、脚部62Aには、脚部62の厚さ方向に貫通する孔62bが設けられており、孔62bが通路PBを構成する。このように孔62bにより通路PBを構成する態様では、前述の第1実施形態のような切欠き62aにより通路PBを構成する態様に比べて、脚部62Aの機械的強度を高めたり、ケース50の凹部56の壁面により脚部62Aを位置決めしたりしやすいという利点がある。なお、脚部62Aに設けられる孔62bの数は、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。また、脚部62Aに第1実施形態のような切欠き62aを追加してもよい。
【0088】
3.変形例
本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0089】
3-1.変形例1
前述の実施形態では、通路PBの数が1つまたは2つである態様が例示されるが、この態様に限定されず、当該数は、3つ以上であってもよい。
【0090】
具体的には、前述の第1実施形態では、脚部62に設けられる切欠き62aの数が2つである態様が例示されるが、当該数は、2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、複数の切欠き62aの寸法が互いに異なってもよい。
【0091】
同様に、前述の第2実施形態では、脚部62Aに設けられる孔62bの数が1つである態様が例示されるが、当該数は、1つに限定されず、2以上であってもよい。また、複数の孔62bの寸法が互いに異なってもよい。
【0092】
3-2.変形例2
前述の第1実施形態では、2つの切欠き62aが脚部62の幅方向に並ぶ態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、2つの切欠き62aが脚部62の長さ方向にずれて配置されてもよい。
【0093】
3-3.変形例3
前述の第1実施形態では、2つの切欠き62aが脚部62の幅方向での両側面に設けられる態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、少なくとも1つの切欠き62aが脚部62の端子孔51に近い側面に設けられてもよい。
【0094】
3-4.変形例4
前述の実施形態では、スペーサー70が「押え部材」である態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、スペーサー70を省略した場合、ベース40を「押え部材」として用いることもできる。この場合、ベース40と脚部62との間の電気的な絶縁を図るべく、例えば、ベース40の少なくとも脚部62と接着される部分は、絶縁体で構成される。
【符号の説明】
【0095】
10…半導体モジュール、10A…半導体モジュール、20…配線基板、30…半導体素子、40…ベース、41…取付孔、50…ケース、51…端子孔、55…隔壁、56…凹部、57…凸部、60…外部端子、60A…外部端子、60a…面、60b…面、61…ピン部、62…脚部、62A…脚部、62a…切欠き、62b…孔、70…スペーサー(押え部材)、70a…面、70b…面、71…突起、80…蓋、B1…接着剤、B1a…接着剤、B2…接着剤、BW…ワイヤー、PA…ポッティング材、PB…通路、S10…用意工程、S20…端子挿入工程、S30…接合工程、S31…塗布工程、S32…貼り合せ工程、S33…軟化工程、S34…硬化工程、T…厚さ、W…幅、d…深さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16