(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157294
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20241030BHJP
F16D 35/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G05G5/03 Z
F16D35/00 621
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071575
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 仁志
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 優矢
(72)【発明者】
【氏名】末廣 隆史
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA03
3J070AA13
3J070BA19
3J070BA51
3J070BA84
3J070CB01
3J070CB37
3J070CC71
(57)【要約】
【課題】磁界が印加されると粘性が変化する機能性材料を用いて操作抵抗を変化させる操作装置において、機能性材料の取扱いが容易にできる。
【解決手段】磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部2と、動作部2を動作可能に支持する支持部3と、ヨーク42およびコイル41を有する電磁石4と、動作部2とヨーク42との間に設けられた介在部5を備える。動作部2、ヨーク42および介在部5は、電磁石4に電流が印加されると、動作部2とヨーク42との間で介在部5を貫通する磁束が生じるように配置され、介在部5は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成され、介在部5に印加される磁界が第1の状態の場合、介在部5を介して動作部2とヨーク42が接続され、介在部5に印加される磁界が第2の状態の場合、介在部5を介した動作部2とヨーク42の接続が解除される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部と、
前記動作部を動作可能に支持する支持部と、
ヨークおよびコイルを有する電磁石と、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた介在部と、
を備え、
前記動作部、前記ヨークおよび前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されると、前記動作部と前記ヨークとの間で前記介在部を貫通する磁束が生じるように配置され、
前記介在部は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成され、
前記介在部に印加される磁界が第1の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続され、前記介在部に印加される磁界が第2の状態の場合は、前記介在部を介した前記動作部と前記ヨークとの接続が解除される、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項2】
磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部と、
前記動作部を動作可能に支持する支持部と、
ヨークおよびコイルを有する電磁石と、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた介在部と、
を備え、
前記動作部、前記ヨークおよび前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されると、前記動作部と前記ヨークとの間で前記介在部を貫通する磁束が生じるように配置され、
前記介在部は、磁界に反応して粘性が変化する有形の機能性材料を用いて構成され、
前記介在部に印加される磁界の状態にかかわらず、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続されており、
前記接続の強度が前記介在部に印加される磁界の状態に応じて変化し、
前記介在部に印加される磁界が第1の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続され、前記介在部に印加される磁界が第2の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部に伝達される力が略ゼロとなる、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操作装置であって、
前記第2の状態において、前記動作部と前記ヨークとの間に隙間が形成される、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記機能性材料は、印加される磁界の強さに応じて粘性および形状を変化させる磁気粘性ゲル、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体である、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項5】
請求項1または3に記載の操作装置であって、
前記介在部は、印加される磁界が前記第1の状態において、当該印加される磁界の強さに応じて前記接続の強度を変化させる、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項6】
請求項1または3に記載の操作装置であって、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が1層からなる場合において、
前記介在部が前記ヨークに固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記動作部に、前記介在部が前記動作部に接触した後、前記動作部に対して離反不能に固着しないように、表面処理が施され、
前記介在部が前記動作部に固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記ヨークに、前記介在部が前記ヨークに接触した後、前記ヨークに対して離反不能に固着しないように、表面処理が施されている、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記動作部は、直線方向または平面方向に移動可能に前記支持部に支持されており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項8】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記動作部は、その場で回転可能に前記支持部に支持されており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記動作部は、軸方向に移動可能にまたは軸回転可能に前記支持部に支持された軸部を有しており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記軸部の側面に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの操作に対して可変抵抗を付与することができる操作装置に関し、特に、磁界が印加されると粘性が変化する機能性材料を用いた操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機能性材料である磁気粘性流体を用いた操作装置(1)が開示されている。この操作装置(1)は、ユーザが操作する操作部材(2)の下端部の揺動基部(3)と、揺動基部(3)を支持する受け部(6)との間に磁気粘性流体(7)を封入した構造を備え、磁気粘性流体(7)に印加する磁界の強さを変えることで、操作部材(2)の操作抵抗を可変としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁気粘性流体は、液体の機能性材料であるため装置に注入する際に専門的な知識や技術を要する等取扱いが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたものであり、磁界が印加されると粘性が変化する機能性材料を用いて操作抵抗を変化させることができる操作装置において、機能性材料の取扱いが容易にできる操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る操作装置は、磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部と、前記動作部を動作可能に支持する支持部と、ヨークおよびコイルを有する電磁石と、前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた介在部と、を備える。前記動作部、前記ヨークおよび前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されると、前記動作部と前記ヨークとの間で前記介在部を貫通する磁束が生じるように配置される。前記介在部は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成される。前記介在部に印加される磁界が第1の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続され、前記介在部に印加される磁界が第2の状態の場合は、前記介在部を介した前記動作部と前記ヨークとの接続が解除される。
【0007】
本発明の第2態様に係る操作装置は、磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部と、前記動作部を動作可能に支持する支持部と、ヨークおよびコイルを有する電磁石と、前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた介在部と、を備える。前記動作部、前記ヨークおよび前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されると、前記動作部と前記ヨークとの間で前記介在部を貫通する磁束が生じるように配置されている。前記介在部は、磁界に反応して粘性が変化する有形の機能性材料を用いて構成されている。前記介在部に印加される磁界の状態にかかわらず、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続されている。前記接続の強度が前記介在部に印加される磁界の状態に応じて変化する。前記介在部に印加される磁界が第1の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部と前記ヨークとが接続され、前記介在部に印加される磁界が第2の状態の場合は、前記介在部を介して前記動作部に伝達される力が略ゼロとなる。
【0008】
本発明の第3態様に係る操作装置は、第1態様に係る操作装置において、前記第2の状態において、前記動作部と前記ヨークとの間に隙間が形成される。
【0009】
本発明の第4態様に係る操作装置は、第1態様~第3態様の何れか1態様に係る操作装置において、前記機能性材料は、印加される磁界の強さに応じて粘性および形状を変化させる磁気粘性ゲル、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体である。
【0010】
本発明の第5態様に係る操作装置は、第1態様または第3態様に係る操作装置において、前記介在部は、前記電磁石に前記一定値以上の電流が印加されるとき、当該電流の大きさに応じて前記接触の度合いを変化させる。
【0011】
本発明の第6態様に係る操作装置は、第1態様または第3態様に係る操作装置において、前記介在部が前記ヨークに固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記動作部に、前記介在部が前記動作部に接触した後、前記動作部に対して離反不能に固着しないように、表面処理が施される。前記介在部が前記動作部に固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記ヨークに、前記介在部が前記ヨークに接触した後、前記ヨークに対して離反不能に固着しないように、表面処理が施されている。
【0012】
本発明の第7態様に係る操作装置は、第1態様~第3態様の何れか1態様に係る操作装置において、前記動作部は、直線方向または平面方向に移動可能に前記支持部に支持されている。前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させている。前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている。
【0013】
本発明の第8態様に係る操作装置は、第1態様~第3態様の何れか1態様に係る操作装置において、前記動作部は、その場で回転可能に前記支持部に支持されている。前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させている。前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている。
【0014】
本発明の第9態様に係る操作装置は、第1態様~第3態様の何れか1態様に係る操作装置において、前記動作部は、軸方向に移動可能にまたは軸回転可能に前記支持部に支持された軸部を有しており支持された軸部を有している。前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記軸部の側面に対向させている。前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、交換など機能性材料の取扱い容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る操作装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る操作装置の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る操作装置において、動作部とヨークとの間に設けられた介在部の形状変化を説明する図である。
【
図3A】第1実施形態の変形例に係る操作装置において、動作部とヨークとの間に設けられた介在部の構造を示す図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る操作装置の断面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る操作装置の断面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る操作装置において、動作部とヨークの間に設けられた2層からなる介在部の形状変化を説明する図である。
【
図7】第2実施形態に係る操作装置の断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る操作装置において、動作部とヨークとの間に設けられた介在部の形状変化を説明する図である。
【
図9】第3実施形態に係る操作装置の断面図である。
【
図10】第3実施形態および第4実施形態に係る操作装置において、動作部とヨークとの間に設けられた介在部の形状変化を説明する図である。
【
図11】第4実施形態に係る操作装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
-第1実施形態-
以下、本発明の第1実施形態に係る操作装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1および
図2に示すように、操作装置1は、動作部2、支持部3、電磁石4、介在部5および給電装置6を備えている。
【0018】
動作部2は、操作装置1においてユーザの操作に伴って動作する部分である。本実施形態では、動作部2は、ユーザが直接操作する操作部材でもある。動作部2は磁性体を用いて構成されている。なお、ユーザが直接操作する操作部材が必ずしも動作部2である必要はない。例えば、ユーザが直接操作する操作部材と動作部2とが別々に設けられ、操作部材が何らかの部材や機構を介して動作部2と連動するように構成されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、動作部2は、平面方向(
図2において紙面に平行な方向)に移動可能に支持部3に支持されている。例えば、ユーザは動作部2の上面に手や指を添えて動作部2を平面方向に移動させることができる。本実施形態では、動作部2は、底部に平面状に形成されたスライド面2aを有している。なお、動作部2の移動の自由度を規制して、動作部2が直線方向にのみ移動できるようにすることも可能である。例えば
図2において左右方向に動作部2が移動しないように規制して同図において上下方向にのみ動作部2が移動できるようにすることが可能である。
【0020】
支持部3は、本実施形態では、動作部2の底部に形成されたスライド面2aをその面に沿った方向にスライド可能に支持している。支持部3は、電磁石4のコイル41上に固定されている。この固定は、例えば接着剤を用いて行うことができる。支持部3を安定的にコイル41上に支持するために、コイル41の上面にコーティング層が形成されていてもよい。また、コイル41をボビンに巻設した上で、当該ボビンを介して支持部3がコイル41に固定されていてもよい。支持部3は、
図2に示すように、円周上に間隔をおいて4箇所設けられているが、設けられる箇所は3カ所以上であればよく、特定の個数に限定されない。また、支持部3は、環状に設けられていてもよい。なお、支持部3には、非磁性体が用いられることが望ましい。また、支持部3には、摺動抵抗の小さな部材として、PTFE(polytetrafluoroethylene)などのフッ素樹脂が用いられている。
【0021】
電磁石4は、コイル41およびヨーク42を備えている。本実施形態では、コイル41は、支持部3を支持し、この支持部3を介して間接的に動作部2を支持している。
【0022】
コイル41には、給電装置6から電流が印加されるようになっている。給電装置6は、給電する電流値を自動または手動で調整することができるように構成されている。
【0023】
ヨーク42は、コイル41の径方向内側に配設された内側ヨーク42aと、コイル41の径方向外側に配設された外側ヨーク42bと有し、内側ヨーク42aと外側ヨーク42bとは支持部3側と反対側で磁路形成可能に繋がっている。内側ヨーク42aおよび外側ヨーク42bの動作部2側には、動作部2のスライド面2aに対向する介在部取付面42a1,42b1が形成されている。この介在部取付面42a1,42b1は、内側ヨーク42aに形成された内側取付面42a1と、外側ヨーク4bbに形成された外側取付面42b1とで構成されている。内側取付面42a1と外側取付面42b1とは、ヨーク42の中心線Nの方向から視て互いに全周に亘って間隔をあけて環状に形成されている。なお、内側取付面42a1と外側取付面42b1は、コイル41に通電されているときに一対の磁極部となる。
【0024】
介在部5は、動作部2とヨーク42との間においてヨーク42側に固定されている。介在部5は、ヨーク42の内側取付面42a1に固定された内側介在部5aと、ヨーク42の外側取付面42b1に固定された外側介在部5bとで構成されている。
図2に示すように、内側介在部5aは円形に形成され、外側介在部5bは環状に形成されている。介在部5は、例えば、接着剤を用いてヨーク42に固定される。接着剤には、接着剤自身の磁気抵抗を下げるために、磁性体の金属粒子などを含む接着剤を用いることが好ましい。介在部5が自己融着性を有する場合は、接着剤を用いずに、介在部5をヨーク42に融着により接着してもよい。なお、外側介在部5bは、必ずしも環状である必要はなく、配線やセンサーの配置に応じて、切り欠きが設けられていてもよい。
【0025】
介在部5は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成されている。本実施形態ではこの有形の機能性材料として磁気粘性ゲルが用いられている。磁気粘性ゲルは有形であるので、液体のみからなる無形の機能性材料と比べて交換作業等の取り扱いが容易である。磁気粘性ゲルは、磁気粘性流体をゲル化したものであり、磁性粒子をゲル状の分散媒に分散させてなるものである。磁性粒子として、例えばナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)や、ミクロンサイズの金属粒子(金属ミクロン粒子)、金属ナノ粒子と金属ミクロン粒子の混合粒子からなるものを使用することができる。なお、介在部5に用いる磁気粘性ゲルは、その表面にコーティングをしたものであってもよい。コーティングをすることにより、介在部5に強い外力が作用しても崩壊し難いものとすることができる。また、使用するコーティングの種類によって、介在部5と介在部5が接触する部材との間の摩擦抵抗を調整することができる。コーティングする場合は、介在部5の変形を妨げないコーティング剤を使用することが好ましい。そのために、コーティング剤に、磁性体の素材が含まれていることが望ましい。
【0026】
電磁石4のコイル41に電流が印加されないとき、介在部5に印加される磁界は第2の状態にあり、介在部5は、
図3(a)に示すように、動作部2と接続されることなく、動作部2との間に隙間Gを形成する。本実施形態において上記「第2の状態」は、介在部5に付与される磁界の強さがゼロであることを意味する。
【0027】
コイル41に電流が印加されると、例えば
図1の矢印Pに沿った方向に磁束(磁路)が形成され、動作部2の中心側と内側ヨーク42aとの間に設けられた内側介在部5aを貫通する磁束と、動作部2の外側と外側ヨーク42bとの間に設けられた外側介在部5bを貫通する磁束とが生じる。介在部5は、磁気粘性ゲルを用いて構成されていることから、磁力によって動作部2A側に引き寄せられ、次第に
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示す状態へと、動作部2側に延出する。そして、コイル41に一定値以上の電流が印加されると、介在部5に印加される磁界が第1の状態となり、介在部5を介して動作部2とヨーク4とが接続される。このとき、介在部5は、
図3(c)に示すように、動作部2に接触し、コイル41に印加される電流の大きさに応じて動作部2に対する接触度合いとその粘度とを変化させる。つまり、コイル41に印加される電流が大きくなるほど、介在部5は動作部2に対する接触面積を増して、動作部2に強く貼り付く(動作部2と接続する強度を増す)とともに、その粘度を高めることになる。本実施形態において上記「第1の状態」は、介在部5に付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0028】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「接続」とは部材同士が接していることを意味し、部材同士が互いに固定される場合も、部材同士が互いに滑りながら接している場合も部材同士が接続されていることになる。また、本明細書および特許請求の範囲において、「接続の強度」とは、部材同士が引き寄せ合う力(貼り付く力)の大きさを意味する。
【0029】
以上のように構成された操作装置1において、電磁石4のコイル41に電流が印加されないときは、動作部2と内側介在部5aおよび外側介在部5bとの間にそれぞれ隙間Gが形成される。このため、動作部2を殆ど無負荷状態で動作させることができ、ユーザの操作に付与される抵抗は最小となる。その後、電磁石4のコイル41に電流が印加されても、動作部2と内側介在部5aおよび外側介在部5bとの間にそれぞれ隙間Gが形成されている間は、引き続き、ユーザの操作に対する抵抗は最小となる。更にその後、電磁石4のコイル41に一定値以上の電流が印加され、内側介在部5aおよび外側介在部5bが動作部2に接触すると、動作部2の動作に対して抵抗が付与されるため、ユーザの操作に対しても抵抗が付与されるようになる。そして、電磁石4のコイル41に一定値以上の電流が印加されている間、その電流値の大きさに応じて、内側介在部5aおよび外側介在部5bが動作部2に貼り付く力が大きくなる(動作部2と接続する強度を増す)とともに、内側介在部5aおよび外側介在部5bの粘度が高くなり、ユーザの操作に対してもコイル41に印加する電流値に応じた大きさの抵抗が付与される。
【0030】
以上に説明した構成を備える操作装置1によれば、装置全体をシール材を用いる必要のない簡易な構造にすることができ、しかも、機能性材料からなる介在部5に磁界を印加しないときに、機能性材料によって生じる操作抵抗をゼロにすることができる。これにより、ユーザが操作するときに受ける抵抗の幅を広くすることができ、幅広い操作抵抗を付与することができる。なお、電流値の大きさだけでなく、電流の周波数や、デューティ比を変更することにより、より幅広い操作抵抗を付与することができる。以下で説明する各実施形態及び、変形例においては電流値の大きさを例に説明するが、電流値に加え周波数や、デューティ比を変更してもよいことは言うまでもない。
【0031】
従来例に係る磁気粘性流体装置では、磁気粘性流体が磁界が印加されない状態でも一定の粘性を示すため、磁気粘性流体を介して操作部材に付与される操作抵抗を完全に無くすことは難しく、その分、操作抵抗の可変領域が狭くなるという問題があった。また、磁気粘性流体は液体であるため、磁気粘性流体が外部に漏れ出さないように、シール材を用いて装置の内部に磁気粘性流体を封入する必要があるため、装置の構造が複雑になり、部品点数が増えるという問題もあった。本実施形態に係る操作装置1および後述する実施形態に係る操作装置によれば、これらの問題が解決される。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る操作装置1および後述する実施形態に係る操作装置によれば、磁界が印加されると粘性が変化する機能性材料を用いて操作抵抗を変化させることができる操作装置において、機能性材料に磁界を印加しないとき、機能性材料によって生じる操作抵抗をゼロにすることができ、しかも、シール材を用いる必要のない簡易な構造の操作装置を提供できる。
【0033】
<第1実施形態の変形例>
つぎに、第1実施形態に係る操作装置1の変形例について
図4に基づいて説明する。なお、第1実施形態に係る操作装置1と同じ構成については図面において同符号を付して説明を省略する。
【0034】
第1実施形態の変形例に係る操作装置100は、第1実施形態に係る操作装置1において、ヨーク42(内側ヨーク42a)の一部を永久磁石101に置き換えたものである。置き換える部位は特に限定されないが、本実施形態では、内側ヨーク42aの一部が永久磁石101に置き換えられている。この操作装置100において、動作部2、ヨーク42、介在部5および永久磁石101は、永久磁石101が生じる磁束が、動作部2とヨーク42との間に設けられた介在部5を貫通するように配置されており、コイル41に電流が印加されると、永久磁石101が生じる磁束を打ち消す磁束が生じるようにもなっている。
【0035】
具体的には、操作装置100において、コイル41に電流が印加されないとき、介在部5に印加される磁界は第1の状態にあり、介在部5を介して動作部2とヨーク4とが接続されている。このとき、
図4の実線矢印Qが示す方向への磁束(磁路)のみが形成され、動作部2の中心側と内側ヨーク42aとの間に設けられた内側介在部5aを貫通する磁束と、動作部2の外側と外側ヨーク42bとの間に設けられた外側介在部5bを貫通する磁束とが生じる。内側介在部5aおよび外側介在部5bに印加される磁界の強さは、
図3(c)に示すように、内側介在部5aおよび外側介在部5bが動作部2に引き寄せられて接触し、隙間Gが形成されないものとされる。この第1実施形態の変形例において上記「第1の状態」は、介在部5に付与される磁界が永久磁石101のみによって一方向に生じ、その磁界の強さが、内側介在部5aおよび外側介在部5bが動作部2に接触するように、一定値以上であることを意味する。
【0036】
操作装置100において、コイル41に電流が印加されると、
図4の実線矢印Qと逆方向(
図4の破線矢印Pが示す方向)にも磁束(磁路)が形成され、永久磁石101が生じる磁束の一部又は全部が打ち消され、内側介在部5aおよび外側介在部5bを貫通する磁束も打ち消される。そして、コイル41に一定値以上の電流が印加されると、内側介在部5aおよび外側介在部5bに印加される磁界が第2の状態となり、内側介在部5aおよび外側介在部5bを介した動作部2とヨーク42a,42bとの接続が解除される。すなわち、
図3(c)に示す状態から
図3(b)または
図3(a)に示す状態へと、内側介在部5aおよび外側介在部5bは、ヨーク42a,42b側に後退し、動作部2との間に隙間Gを形成するようになる。なお、この第1実施形態の変形例において上記「第2の状態」は、永久磁石101によって介在部5に付与される磁界と、永久磁石101によって介在部5に付与される磁界とを合成した合成磁界の強さが、介在部5を動作部2に接触させることができる一定値に満たないことを意味する。
【0037】
その後、さらにコイル41に印加する電流を強くしていくと、破線矢印Pが示す方向への磁界が更に強くなり、再び、内側介在部5aおよび外側介在部5bは、動作部2側へと延出し、
図3(a)に示す状態から順次
図3(b)に示す状態へと変化し、再び、介在部5に印加される磁界は第1の状態となり、
図3(c)に示す状態へと変化して、内側介在部5aおよび外側介在部5bを介して動作部2とヨーク42a,42bとが接続される。この場合の「第1の状態」は、永久磁石101によって介在部5に付与される磁界と、永久磁石101によって介在部5に付与される磁界とを合成した合成磁界の強さが、介在部5を動作部2に接触させることができる一定値以上であることを意味する。
【0038】
このような操作装置100によれば、電磁石4に電流を印加しないときにユーザの操作に対して抵抗を付与し、電磁石4に一定値以上の電流を印加するときにユーザの操作に対して抵抗を生じさせないようにすることが可能となる。
【0039】
<介在部5の変形例1>
介在部5の形態は、
図1に示した1層構造から、
図5に示すように、2層構造に変更することも可能である。特に、動作部2の移動量が比較的小さく、
図5に示すように、介在部5と支持部3とが大きく離れている場合には有効である。具体的には、
図5に示すように、動作部2とヨーク42の内側取付面42a1および外側取付面42b1との間に各2層の介在部5a,5bを設け、第1層の介在部5a,5bを動作部2に固定する一方で、第2層の介在部5a,5bをヨーク42の内側取付面42a1および外側取付面42b1に固定する。なお、
図5に示す例では、支持部3はヨーク4側に固定され、動作部2側に対してスライド自在に設けられる。あるいは、支持部3は動作部2側に固定され、ヨーク4側に対してスライド自在に設けられてもよい。支持部3の固定には例えば接着剤が用いられる。
【0040】
電磁石4のコイル41に電流が印加されないとき、介在部5a,5bに印加される磁界は第2の状態にあり、
図6(a)に示すように、2層からなる介在部5a,5bは、第1層の介在部5a,5bと第2層の介在部5a,5bとの間に隙間Gを形成する。電磁石4のコイル41に電流が印加されると、第1層および第2層の介在部5a,5bは、磁力によって互いに引き寄せられ、次第に
図6(a)に示す状態から
図6(b)に示す状態へと、互いに接近する。そして、コイル41に一定値以上の電流が印加されると、介在部5a,5bに印加される磁界は第1の状態となり、
図6(c)に示すように、第1層の介在部5a,5bと第2層の介在部5a,5bとは、互いに接触し、コイル41に印加される電流が大きくなるほど、互いに強く貼り付くとともにその粘度を高めることになる。なお、ここで説明する介在部の変形例1において上記「第2の状態」は、介在部5a,5bに付与される磁界の強さがゼロであることを意味し、上記「第1状態」は、介在部5a,5bに付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0041】
<介在部5の変形例2>
既述した実施形態においては、介在部5は、磁気粘性ゲルを用いて構成されていたが、磁気粘性ゲルに代えて磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体を用いてもよい。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。例えば、磁気粘性エラストマーおよび、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体は、有形であるので、無形の機能性材料と比べて交換作業等の取り扱いが容易である。
【0042】
磁気粘性ゲルに代えて、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体を用いる場合、袋体の材質は耐油性ものとし、例えばシリコーン等の形状を保持し易い材質を使用することが好ましい。更に好ましくは、袋体の磁気抵抗を低減するために、袋体の材質は磁性体を含むようなものがよい。また、袋体が重力に負けないような構造にすることが好ましい。重力に負けないようにするために、袋体において伸縮変形が必要な個所以外は、肉厚を増したり、硬質材を使用するなどして、硬くすることが好ましい。例えば
図1に示す形状の介在部5を磁気粘性流体を封入した袋体にする場合、介在部5の側面部分をなす袋体の肉厚を比較的厚くして重力に負けないようにし、介在部5の上面部分をなす袋体の肉厚を比較的薄くすることで、上面部分を上下に伸縮変形(上面が平坦な形状と盛り上がった形状との間での変形)し易くすることが望ましい。また、上面部分をなす袋体の肉厚を比較的薄くすることで、動作部2とヨーク42との間の磁気抵抗が小さくなるという効果も得られる。あるいは、介在部5の側面部分をなす袋体を硬質材料にして重力に負けないようにし、介在部5の上面部分をなす袋体を軟質材料にすることで、上面部分を上下に伸縮変形(平坦な形状と盛り上がった形状との間での変形)し易くするようにしてもよい。
【0043】
<介在部5の変形例3>
既述した実施形態では、介在部5に印加される磁界が第1の状態の場合は、介在部5を介して動作部2とヨーク42とが接続され、介在部5に印加される磁界が第2の状態の場合は、介在部5を介した動作部2とヨーク42との接続が解除されるようになっていたが、介在部5に印加される磁界の強さにかかわらず、介在部5が常に動作部2とヨーク42の両方に接続されるものとしてもよい。
【0044】
介在部5が常に動作部2とヨーク42の両方に接続されるものとする場合、例えば
図3Aに示すように、介在部5を磁気粘性ゲルからなる本体部51と、本体部51の動作部2側の面に形成された滑り層52とを有するもの(以下「介在部5D」という。)に置き換えることが望ましい。滑り層52には、磁気回路の形成を妨げない材料を用いることが望ましく、そのような材料として、例えば、鉄板、薄いPTFE、滑り易く表面処理された薄い膜などが挙げられる。
【0045】
滑り層52を有する介在部5Aを採用した場合、電磁石4のコイル41に電流が印加されないとき、介在部5Dに印加される磁界の状態は第2の状態にあり、介在部5は、可動部2と接した状態にあるものの、介在部5と可動部2と間に磁力が働かないことから、動作部2とヨーク42は介在部5を介して極めて弱い力(第2の力)で接続されていることになる。本実施形態では上記した極めて弱い力の大きさは略ゼロである。このため、動作部2を殆ど無負荷状態で動作させることができ、ユーザの操作に付与される抵抗は最小となる。
【0046】
一方、電磁石4のコイル41に一定値以上の電流が印加されると、介在部5Aに印加される磁界の状態が第1の状態になり、可動部2と介在部5との間に磁力が働くことで、介在部5は、動作部2に対して磁界の強さに応じた強さで貼り付くとともに、その粘度を高めることになる。このとき動作部2とヨーク42とは、介在部5を介して上記第2の力よりも強い第1の力で接続されることとなる。その結果、ユーザの操作に対して、コイル41に印加する電流値の大きさに応じた大きさの抵抗(介在部5に印加される磁界の強さに応じた大きさの抵抗)が付与される。なお、ここで説明する介在部5の変形例3において上記「第2の状態」は、介在部5に付与される磁界の強さがゼロであることを意味し、上記「第1状態」は、介在部5に付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0047】
-第2実施形態-
以下、本発明の第2実施形態に係る操作装置について、図面を参照しつつ説明する。
図7に示すように、第2実施形態に係る操作装置1Aは、動作部2A、支持部3A、電磁石4A、介在部5Aおよび給電装置6を備えている。
【0048】
動作部2Aは、操作装置1Aにおいてユーザの操作に伴って動作する部分であり、本実施形態では、動作部2Aは、操作部材である操作レバー21の基部に設けられている。したがって、動作部2Aは、ユーザの操作レバー21の操作に伴って動作する。この動作部2Aは磁性体を用いて構成されている。なお、操作レバー21を省略して動作部2Aを、例えばコンピュータ入力装置であるマウスのトラックボールのように、ユーザが直接操作する操作部材とすることも可能である。なお、操作レバー21の動作部2A以外は、磁性体でなくてもよい。
【0049】
動作部2Aは、その場で回転可能に支持部3Aに支持されている。本実施形態では、動作部2Aに、球体が用いられている。なお、動作部2Aは、必ずしも球体である必要はなく、支持部3Aと接触する部分が球面状であればよい。
【0050】
支持部3Aは、動作部2Aを回転可能かつ移動不能に支持している。本実施形態では、支持部3Aは、第1支持部3A1と第2支持部3A2とで構成されている。なお、支持部3Aには、非磁性体が用いられることが望ましい。また、第1支持部3A1および第2支持部3A2の端部に形成された玉受面に、摺動抵抗の小さな部材、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂を取り付けて、動作部2Aとの摺動抵抗を低減させることも可能である。この場合、フッ素樹脂等の摺動抵抗の小さな部材は、磁気抵抗の増加を抑えるために、できるだけ薄くすることが望ましい。
【0051】
第1支持部3A1は、部分球面状の支持面を有し、当該支持面によって動作部2Aを支持している。本実施形態では、第1支持部3A1は、電磁石4Aのコイル41Aの内側に配置された内側ヨーク42Aaの先端部が第1支持部3A1として機能している。
【0052】
第2支持部3A2は、動作部2Aが移動することなくその場で回転するように、第1支持部3A1とともに当該動作部2Aを支持している。第1支持部3A1が動作部2Aの中心より低い位置で動作部2Aを支持する一方で、第2支持部3A2は、動作部2Aの中心より高い位置で動作部2Aを支持している。第2支持部3A2は、動作部2Aの表面形状に対応した部分球面状の支持面を内側に有する環状に形成され、その外周部は電磁石4Aのコイル41Aの外側に形成された外側ヨーク42Abに固定されている。なお、第2支持部3A2には非磁性体が用いられている。
【0053】
電磁石4Aは、コイル41Aおよびヨーク42Aを備えている。コイル41Aには、給電装置6から電流が印加されるようになっている。給電装置6は、給電する電流値を自動または手動で調整することができるように構成されている。ヨーク42Aは、コイル41Aの径方向内側に配設された内側ヨーク42Aaと、コイル41Aの径方向外側に配設された外側ヨーク42Abと、外側ヨーク42Abから動作部2Aに向かって延出した介在部用ヨーク42Acと有し、内側ヨーク42Aaと外側ヨーク42Abとは支持部3側と反対側で磁路形成可能に繋がっている。介在部用ヨーク42Acの動作部2A側の面には、介在部5Aが取り付けられる介在部取付面42Ac1が形成されている。
【0054】
介在部5Aは、動作部2Aと介在部用ヨーク42Acとの間に設けられ、外側ヨーク42Abの介在部取付面42Ac1に固定されている。介在部5Aは、動作部2Aの表面形状に対応した部分球面状の対向面5A1を内側に有する環状に形成され、外周部は外側ヨーク42Ab1に固定されている。介在部5Aの対向面5A1は、第1支持部3A1の動作部2Aを支持する支持面と、第2支持部3A2の動作部2Aを支持する支持面との間の領域に配されている。なお、介在部5Aは、第1実施形態で説明した接着剤と同様の接着剤を用いてヨーク42Aに固定される。また、介在部5Aには、第1実施形態で説明した介在部5の材料と同様の磁気粘性ゲルが用いられる。なお、外側介在部5Aは、必ずしも環状である必要はなく、配線やセンサーの配置に応じて、切り欠きが設けられていてもよい。
【0055】
電磁石4Aのコイル41Aに電流が印加されないとき、介在部5Aに印加される磁界は第2の状態にあり、介在部5Aは、
図8(a)に示すように、動作部2Aと接続されることなく、動作部2Aとの間に隙間Gを形成する。本実施形態において上記「第2の状態」は、介在部5Aに付与される磁界の強さがゼロであることを意味する。
【0056】
コイル41Aに電流が印加されると、例えば
図7の矢印Pに沿った方向に磁束(磁路)が形成され、動作部2Aと介在部用ヨーク42Acとの間に設けられた介在部5Aを貫通する磁束が生じる。介在部5Aは、磁気粘性ゲルを用いて構成されていることから、磁力によって動作部2A側に引き寄せられ、次第に
図8(a)に示す状態から
図8(b)に示す状態へと、動作部2A側に延出する。そして、コイル41Aに一定値以上の電流が印加されると、介在部5Aに印加される磁界が第1の状態となり、介在部5Aを介して動作部2Aと介在部用ヨーク42Acとが接続される。このとき、介在部5Aは、
図8(c)に示すように、動作部2Aに接触し、コイル41Aに印加される電流の大きさに応じて動作部2Aに対する接触度合いとその粘度とを変化させる。つまり、コイル41Aに印加される電流が大きくなるほど、介在部5Aは動作部2Aに対する接触面積を増して、動作部2Aに強く貼り付く(動作部2Aと接続する強度を増す)とともに、その粘度を高めることになる。本実施形態において上記「第1の状態」は、介在部5に付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0057】
以上のように構成された操作装置1Aにおいて、電磁石4Aのコイル41Aに電流が印加されないときは、動作部2Aと介在部5Aとの間に隙間Gが形成される。このため、動作部2Aを殆ど無負荷状態で動作させることができ、ユーザが操作レバー21を操作する際に、その操作に付与される抵抗は最小となる。その後、電磁石4Aのコイル41Aに電流が印加されても、動作部2Aと介在部5Aとの間に隙間Gが形成されている間は、引き続き、操作レバー21の操作抵抗は最小のまま変わらない。更にその後、電磁石4Aのコイル41に一定値以上の電流が印加され、介在部5Aが動作部2Aに接触すると、動作部2Aの動作に対して抵抗が付与されるため、ユーザが操作レバー21を操作する際に、操作抵抗が付与されるようになる。そして、電磁石4Aのコイル41Aに一定値以上の電流が印加されている間、その電流値の大きさに応じて、介在部5Aが動作部2Aに貼り付く力が大きくなる(動作部2Aと接続する強度を増す)とともに、介在部5Aの粘度が高くなり、ユーザの操作に対してもコイル41Aに印加する電流値に応じた大きさの抵抗が付与される。
【0058】
以上に説明した構成を備える操作装置1Aによっても、装置全体をシール材を用いる必要のない簡易な構造にすることができ、しかも、機能性材料からなる介在部5Aに磁界を印加しないときに、機能性材料によって生じる操作抵抗をゼロにすることができる。これにより、ユーザが操作するときに受ける抵抗の幅を広くすることができ、幅広い触感を付与することができる。
【0059】
<第2実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例(
図4参照)で説明したように、第2実施形態に係る操作装置1Aにおいても、ヨーク42Aの一部を永久磁石に置き換えることにより、電磁石4Aに電流を印加しないときにユーザの操作に対して抵抗を付与し、電磁石4Aに一定値以上の電流を印加するときにユーザの操作に対して抵抗を生じさせないようにすることが可能である。
【0060】
<第2実施形態の介在部5Aの変形例1>
第1実施形態の変形例1(
図6参照)で説明したように、第2実施形態に係る操作装置1Aにおいても、介在部5Aの形態は、1層構造から2層構造に変更することが可能である。特に、動作部2Aの回転量が小さく、介在部5Aと支持部3Aとがある程度離れている場合には有効である。
【0061】
<第2実施形態の介在部5Aの変形例2>
第1実施形態の変形例2で説明したように、第2実施形態に係る操作装置1Aにおいても、介在部5Aとして、磁気粘性ゲルの代わりに、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体を用いることができる。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。例えば、磁気粘性エラストマーおよび、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体は、有形であるので、無形の機能性材料と比べて交換作業等の取り扱いが容易である。
【0062】
<第2実施形態の介在部5Aの変形例3>
第1実施形態における介在部5の変形例3で説明したように、第2実施形態に係る操作装置1Aにおいても、介在部5Aが常に動作部2Aと介在部用ヨーク42Acの両方に接続されるものとし、介在部5Aを磁気粘性ゲルからなる本体部51と、本体部51の動作部2側の面に形成された滑り層52とを有するものに置き換えることができる。
【0063】
-第3実施形態-
以下、本発明の第3実施形態に係る操作装置について、図面を参照しつつ説明する。
図9に示すように、第3実施形態に係る操作装置1Bは、動作部2B、支持部3B、電磁石4B、介在部5B、給電装置6および筐体7を備えている。
【0064】
動作部2Bは、操作装置1Bにおいてユーザの操作に伴って動作する部分であり、本実施形態では、動作部2Bは、ユーザが直接操作する操作部材である。動作部2Bは磁性体を用いて構成されている。なお、ユーザが直接操作する操作部材が必ずしも動作部2Bである必要はない。例えば、ユーザが直接操作する操作部材と動作部2Bとが別々に設けられ、操作部材が何らかの部材や機構を介して動作部2Bと連動するように構成されてもよい。
【0065】
動作部2Bは、軸線方向に移動可能に支持部3Bに支持されている。本実施形態では、動作部2Bは、直線方向に延びた棒状部(軸部)を有する。
【0066】
支持部3Bは、動作部2Bを軸線方向にスライド自在に支持している。本実施形態では、支持部3Bは、第1支持部3B1と第2支持部3B2とで構成されている。なお、第2支持部3B2には、非磁性体が用いられることが望ましい。また、第1支持部3B1および第2支持部3B2の端部に形成された軸受面に、摺動抵抗の小さな部材、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂を取り付けて、動作部2Bとの摺動抵抗を低減させることも可能である。第1支持部3B1の端部に形成された軸受面に取り付けるフッ素樹脂等の摺動抵抗の小さな部材は、磁気抵抗の増加を抑えるためにできるだけ薄くすることが望ましい。一方、第2支持部3B2は磁気回路から外れた位置にあるため、その端部に取り付けられる部材は摺動抵抗が小さいものであれば、厚さや材質は特に問われない。
【0067】
第1支持部3B1は、動作部2Bの形状に対応した軸受面を有し、当該軸受面によって動作部2Bを支持している。本実施形態では、第1支持部3B1は、電磁石4Bのヨーク42Bの一方の磁極となる部分(コイル41Bの通電時に磁極となる部分の一方)が第1支持部3B1として機能している。
【0068】
第2支持部3B2も、動作部2Bの断面形状に対応した軸受面を有し、当該軸受面によって、第1支持部3B1とは異なる位置で動作部2Bを支持している。なお、第2支持部3B2には非磁性体が用いられている。
【0069】
電磁石4Bは、コイル41Bおよびヨーク42Bを備えている。コイル41Bには、給電装置6から電流が印加されるようになっている。給電装置6は、給電する電流値を自動または手動で調整することができるように構成されている。コイル41Bは、ヨーク42Bの内周面42B2に沿って、動作部2Bを中心とする環状に配設されている。ヨーク42Bは、中空円柱状に形成され、動作部2Bがその中空円柱の両端面を貫通している。ヨーク42Bは、動作部2Bが貫通する貫通部において、動作部2Bの側面に対向する対向面42Baおよび介在部取付面42Bbを形成している。対向面42Baは、動作部2Bと微小隙間を介して動作部2Bの側面に対向しており、動作部2Bをスライド自在に支持している。介在部取付面42Bbには、後述する介在部5Bが取り付けられており、介在部取付面42Bbは、介在部5Bを介して動作部2Bの側面に対向している。
【0070】
介在部5Bは、動作部2Bの表面形状に対応した形状面を内側に有する環状に形成され、外周部はヨーク42Bの介在部取付面42Bbに固定されている。なお、介在部5Bは、第1実施形態で説明した接着剤と同様の接着剤を用いてヨーク42Bに固定される。また、介在部5Bには、第1実施形態で説明した介在部5の材料と同様の磁気粘性ゲルが用いられる。なお、外側介在部5Bは、必ずしも環状である必要はなく、配線やセンサーの配置に応じて、切り欠きが設けられていてもよい。
【0071】
筐体7は、非磁性体を用いて構成されており、例えば有底筒状に形成されている。筐体7の内周面には、ヨーク42Bの外周面と第2支持部3B2の外周部が固定されている。第2支持部3B2は、ヨーク42Bと筐体7の底部との間の位置に設置されている。また、筐体7の底部と動作部2Bの端部との間に、ユーザの操作によって押し込まれた動作部2Bが元の位置に復帰するように、リターンスプリング8が介装されている。
【0072】
電磁石4Bのコイル41Bに電流が印加されないとき、介在部5Bに印加される磁界は第2の状態にあり、介在部5Bは、
図10(a)に示すように、動作部2Bと接続されることなく、動作部2Bとの間に隙間Gを形成する。本実施形態において上記「第2の状態」は、介在部5Bに付与される磁界の強さがゼロであることを意味する。
【0073】
コイル41Bに電流が印加されると、例えば
図9の矢印Pに沿った方向に磁束(磁路)が形成され、介在部5Bを貫通する磁束が生じる。介在部5Bは、磁気粘性ゲルを用いて構成されていることから、磁力によって動作部2B側に引き寄せられ、次第に
図10(a)に示す状態から
図10(b)に示す状態へと、動作部2B側に延出する。そして、コイル41Bに一定値以上の電流が印加されると、介在部5Bに印加される磁界が第1の状態となり、介在部5Bを介して動作部2Bとヨーク42Bの介在部取付面42Bbとが接続される。このとき、介在部5Bは、
図10(c)に示すように、動作部2Bに接触し、コイル41Bに印加される電流の大きさに応じて動作部2Bに対する接触度合いとその粘度とを変化させる。つまり、コイル41Bに印加される電流が大きくなるほど、介在部5Bは動作部2Bに対する接触面積を増して、動作部2Bに強く貼り付く(動作部2Bと接続する強度を増す)とともに、その粘度を高めることになる。本実施形態において上記「第1の状態」は、介在部5Bに付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0074】
以上のように構成された操作装置1Bにおいて、電磁石4Bのコイル41Bに電流が印加されないときは、動作部2Bと介在部5Bとの間に隙間Gが形成される。このため、動作部2Bを殆ど無負荷状態で軸方向に移動させることができ、ユーザが動作部2Bを操作する際に、その操作に付与される抵抗は最小となる。その後、電磁石4Bのコイル41Bに電流が印加されても、動作部2Bと介在部5Bとの間に隙間Gが形成されている間は、引き続き、動作部2Bの操作抵抗は最小のまま変わらない。更にその後、電磁石4Bのコイル41Bに一定値以上の電流が印加され、介在部5Bが動作部2Bに接触すると、動作部2Bの動作に対して抵抗が付与されるため、ユーザが動作部2Bを操作する際に、操作抵抗が付与されるようになる。そして、電磁石4Bのコイル41Bに一定値以上の電流が印加されている間、その電流値の大きさに応じて、介在部5Bが動作部2Bに密着する力が大きくなる(動作部2Bと接続する強度を増す)とともに、介在部5Bの粘度が高くなり、ユーザの操作に対してもコイル41Bに印加する電流値に応じた大きさの抵抗が付与される。
【0075】
以上に説明した構成を備える操作装置1Bによっても、装置全体をシール材を用いる必要のない簡易な構造にすることができ、しかも、機能性材料からなる介在部5Bに磁界を印加しないときに、機能性材料によって生じる操作抵抗をゼロにすることができる。これにより、ユーザが操作するときに受ける抵抗の幅を広くすることができ、幅広い操作抵抗を付与することができる。
【0076】
<第3実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例(
図4参照)で説明したように、第3実施形態に係る操作装置1Bにおいても、ヨーク42Bの一部を永久磁石に置き換えることにより、電磁石4Bに電流を印加しないときにユーザの操作に対して抵抗を付与し、電磁石4Bに一定値以上の電流を印加するときにユーザの操作に対して抵抗を生じさせないようにすることが可能である。
【0077】
<第3実施形態の介在部5Bの変形例1>
第1実施形態の変形例1(
図6参照)で説明したように、第3実施形態に係る操作装置1Bにおいても、介在部5Bの形態は、1層構造から2層構造に変更することが可能である。特に、動作部2Bの移動量が小さく、介在部5Bと支持部3Bとがある程度離れている場合には有効である。
【0078】
<第3実施形態の介在部5Bの変形例2>
第1実施形態の変形例2で説明したように、第3実施形態に係る操作装置1Bにおいても、介在部5Bとして、磁気粘性ゲルの代わりに、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体を用いることができる。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。例えば、磁気粘性エラストマーおよび、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体は、有形であるので、無形の機能性材料と比べて交換作業等の取り扱いが容易である。
【0079】
<第3実施形態の介在部5Bの変形例3>
第1実施形態における介在部5の変形例3で説明したように、第3実施形態に係る操作装置1Bにおいても、介在部5Bが常に動作部2Bとヨーク42の介在部取付面42Bbの両方に接続されるものとし、介在部5Bを磁気粘性ゲルからなる本体部51と、本体部51の動作部2B側の面に形成された滑り層52とを有するものに置き換えることができる。
【0080】
-第4実施形態-
以下、本発明の第4実施形態に係る操作装置について、図面を参照しつつ説明する。
図11に示すように、第4実施形態に係る操作装置1Cは、動作部2C、支持部3C、電磁石4C、介在部5C、給電装置6および筐体7を備えている。
【0081】
動作部2Cは、操作装置1Cにおいてユーザの操作に伴って軸回転動作をする部分(軸部)であり、本実施形態では、動作部2Cには、操作部材である回転レバー22の基部が取り付けられている。したがって、動作部2Cは、ユーザの回転レバー22の回転操作に伴って軸回転する。動作部2Bは磁性体を用いて構成されている。なお、回転レバー22は、動作部2Aを軸回転させるための操作部材の一例であり、ユーザが直接動作部2Cを軸回転させたり、回転レバー22以外の部材や機構を動作部2Cに取付て動作部2Cを軸回転できるようにしてもよい。
【0082】
動作部2Cは、軸回転可能に支持部3Cに支持されている。本実施形態では、動作部2Cは、直線方向に延びた棒状に形成されている。
【0083】
支持部3Cは、動作部2Cを軸回転可能に支持している。本実施形態では、支持部3Cは、第1支持部3C1と第2支持部3C2とで構成されている。
【0084】
第1支持部3C1は、動作部2Cの断面形状に対応した軸受面を有し、当該軸受面によって動作部2Cを支持している。本実施形態では、第1支持部3C1は、電磁石4Cのヨーク42Cの一方の磁極となる部分(コイル41Cの通電時に磁極となる部分)が第1支持部3C1として機能している。なお、第1支持部3C1の端部に形成された軸受面に、摺動抵抗の小さな部材、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂を取り付けて、動作部2Cとの摺動抵抗を低減させることも可能である。
【0085】
第2支持部3C2は、動作部2Cの下端部形状に対応したラジアル軸受面31およびアキシャル軸受面32を有し、動作部2Cの下端部を軸方向および軸に直交する方向に支持している。なお、第2支持部3C2には、非磁性体が用いられることが望ましい。また、動作部2Cの摺動抵抗を下げるために、第2支持部3C2には、摺動抵抗の小さな部材として、PTFEなどのフッ素樹脂が用いられることが望ましい。
【0086】
電磁石4Cは、コイル41Cおよびヨーク42Cを備えている。コイル41Cには、給電装置6から電流が印加されるようになっている。給電装置6は、給電する電流値を自動または手動で調整することができるように構成されている。コイル41Cは、ヨーク42Cの内周面42C2に沿って、動作部2Cを中心とする環状に配設されている。ヨーク42Cは、中空円柱状に形成され、動作部2Cがその中空円柱の両端面を貫通している。ヨーク42Cは、動作部2Cが貫通する貫通部において、動作部2Cの側面に対向する対向面42Caおよび介在部取付面42Cbを形成している。対向面42Caは、動作部2Cと微小隙間を介して対向しており、動作部2Cを回転自在に支持している。介在部取付面42Cbには、後述する介在部5Cが取り付けられており、介在部取付面42Cbは、介在部5Cを介して動作部2Cの側面に対向している。
【0087】
介在部5Cは、動作部2Cの表面形状に対応した形状面を内側に有する環状に形成され、外周部はヨーク42Cの介在部取付面42Cbに固定されている。なお、介在部5Cは、第1実施形態で説明した接着剤と同様の接着剤を用いてヨーク42Cに固定される。また、介在部5Cには、第1実施形態で説明した介在部5の材料と同様の磁気粘性ゲルが用いられる。なお、外側介在部5Cは、必ずしも環状である必要はなく、配線やセンサーの配置に応じて、切り欠きが設けられていてもよい。
【0088】
筐体7は、非磁性体を用いて構成されており、例えば有底筒状に形成されている。筐体7の内周面には、ヨーク42Cの外周面と第2支持部3C2の外周部が固定されている。第2支持部3C2は、筐体7の内側の底部に固定されている。
【0089】
電磁石4Cのコイル41Cに電流が印加されないとき、介在部5Cに印加される磁界は第2の状態にあり、介在部5Cは、
図10(a)に示すように、動作部2Cと接続されることなく、動作部2Cとの間に隙間Gを形成する。本実施形態において上記「第2の状態」は、介在部5Cに付与される磁界の強さがゼロであることを意味する。
【0090】
コイル41Cに電流が印加されると、例えば
図11の矢印Pに沿った方向に磁束(磁路)が形成され、介在部5Cを貫通する磁束が生じる。介在部5Cは、磁気粘性ゲルを用いて構成されていることから、磁力によって動作部2C側に引き寄せられ、次第に
図10(a)に示す状態から
図10(b)に示す状態へと、動作部2C側に延出する。そして、コイル41Cに一定値以上の電流が印加されると、介在部5Cに印加される磁界が第1の状態となり、介在部5Cを介して動作部2Cとヨーク42Cの介在部取付面42Cbとが接続される。このとき、介在部5Cは、
図10(c)に示すように、動作部2Cに接触し、コイル41Cに印加される電流の大きさに応じて動作部2Cに対する接触度合いとその粘度とを変化させる。つまり、コイル41Cに印加される電流が大きくなるほど、介在部5Cは動作部2Cに対する接触面積を増して、動作部2Cに強く貼り付く(動作部2Cと接続する強度を増す)とともに、その粘度を高めることになる。本実施形態において上記「第1の状態」は、介在部5Cに付与される磁界の強さが一定値以上であることを意味する。
【0091】
以上のように構成された操作装置1Cにおいて、電磁石4Cのコイル41Cに電流が印加されないとき、動作部2Cと介在部5Cとの間に隙間Gが形成される。このため、動作部2Cを殆ど無負荷状態で軸回転させることができ、ユーザが回転レバー22を操作する際に、その操作に付与される抵抗は最小となる。その後、電磁石4Cのコイル41Cに電流が印加されても、動作部2Cと介在部5Cとの間に隙間Gが形成されている間は、引き続き、動作部2Cの操作抵抗は最小のまま変わらない。その後、電磁石4Cのコイル41Cに一定値以上の電流が印加され、介在部5Cが動作部2Cに接触すると、動作部2Cの動作に対して抵抗が付与されるため、ユーザが回転レバー22を操作する際に、操作抵抗が付与されるようになる。そして、電磁石4Cのコイル41Cに一定値以上の電流が印加されている間、その電流値の大きさに応じて、介在部5Cが動作部2Cに密着する力が大きくなる(動作部2Cと接続する強度を増す)とともに、介在部5Cの粘度が高くなり、ユーザの回転レバー22の操作に対してもコイル41Cに印加する電流値に応じた大きさの抵抗が付与される。
【0092】
以上に説明した構成を備える操作装置1Cによっても、装置全体をシール材を用いる必要のない簡易な構造にすることができ、しかも、機能性材料からなる介在部5Cに磁界を印加しないときに、機能性材料によって生じる操作抵抗をゼロにすることができる。
【0093】
<第4実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例(
図4参照)で説明したように、第4実施形態に係る操作装置1Cにおいても、ヨーク42Cの一部を永久磁石に置き換えることにより、電磁石4Cに電流を印加しないときにユーザの操作に対して抵抗を付与し、電磁石4Cに一定値以上の電流を印加するときにユーザの操作に対して抵抗を生じさせないようにすることが可能である。
【0094】
<第4実施形態の介在部5Cの変形例1>
第1実施形態の変形例1(
図6参照)で説明したように、第4実施形態に係る操作装置1Cにおいても、介在部5Cの形態は、1層構造から2層構造に変更することが可能である。
【0095】
<第4実施形態の介在部5Bの変形例2>
第1実施形態の変形例2で説明したように、第4実施形態に係る操作装置1Cにおいても、介在部5Cとして、磁気粘性ゲルの代わりに、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体を用いることができる。この場合も既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。例えば、磁気粘性エラストマーおよび、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体は、有形であるので、無形の機能性材料と比べて交換作業等の取り扱いが容易である。
【0096】
<第4実施形態の介在部5Cの変形例3>
第1実施形態における介在部5の変形例3で説明したように、第4実施形態に係る操作装置1Cにおいても、介在部5Cが常に動作部2Cとヨーク42Cの介在部取付面42Cbの両方に接続されるものとし、介在部5Cを磁気粘性ゲルからなる本体部51と、本体部51の動作部2C側の面に形成された滑り層52とを有するものに置き換えることができる。
【0097】
<その他の実施形態>
以上に説明した何れかの実施形態において、介在部5,5A,5B,5Cおよび/または動作部2,2A,2B,2Cには、介在部5,5A,5B,5Cが動作部2,2A,2B,2Cに接触した後、動作部2,2A,2B,2Cに対して離反不能に固着しないように、表面処理が施されていてもよい。この表面処理として、介在部5,5A,5B,5Cおよび/または動作部2,2A,2B,2Cに対する塗装処理、コーティング処理またはプラズマ処理を例示することができる。
【0098】
第1実施形態において、介在部5は、コイル41に通電する際にヨーク42において磁極となる両方の磁極部(ヨーク42の内側取付面42a1およびヨーク42の外側取付面42b1)と動作部2との間に設けられていたが、片方の磁極部(ヨーク42の内側取付面42a1またはヨーク42の外側取付面42b1)と動作部2との間にのみ設けられていてもよい。また、介在部5は、ヨーク42側に固定されて動作部2側に隙間を生じるようにされていても、動作部2側に固定されてヨーク42側に隙間を生じるようにされていてもよい。但し、支持部3の数、位置、形状等は適宜変更される場合がある。
【0099】
第2~第4実施形態において、介在部5A~5Cは、コイル41A~41Cに通電する際にヨーク42A~42Cにおいて磁極となる片方の磁極部42Ab1,42Bb、42Cbと動作部2A~2Cとの間に設けられていたが、両方の磁極部と動作部2A~2Cとの間に設けられていてもよい。介在部5A~5Cは、ヨーク42A~42C側に固定されて動作部2A~2C側に隙間を生じるようにされていても、動作部2A~2C側に固定されてヨーク42A~42C側に隙間を生じるようにされていてもよい。但し、支持部3A~3Cの数、位置、形状等は適宜変更される場合がある。
【0100】
<付記>
既述した実施形態は、以下のような技術思想を含む。
【0101】
[構成1]
磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部(2,2A,2B,2C)と、
前記動作部を動作可能に支持する支持部(3,3A,3B,3C)と、
ヨーク(42,42A,42B,42C)およびコイル(41,41A,41B,41C)を有する電磁石(4,4A,4B,4C)と、
前記動作部と前記ヨークとの間に1層または2層に設けられた介在部(5,5A,5B,5C)と、
を備え、
前記動作部、前記ヨークおよび前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されると、前記動作部と前記ヨークとの間で前記介在部を貫通する磁束が生じるように配置され、
前記介在部は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成され、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が1層である場合は、前記介在部は、
前記動作部および前記ヨークの一方に固定され、
前記電磁石に電流が印加されないとき、前記動作部および前記ヨークの他方との間に隙間(G)を形成し、前記電磁石に一定値以上の電流が印加されるとき、前記隙間を解消して前記動作部および前記ヨークの他方と接触し、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が2層である場合は、
第1層の前記介在部は前記動作部に固定され、第2層の前記介在部は前記ヨークに固定され、
前記第1層の前記介在部と前記第2層の前記介在部は、前記電磁石に電流が印加されないとき、互いの間に隙間を形成し、前記電磁石に一定値以上の電流が印加されるとき、前記隙間を解消して互いに接触する、
ことを特徴とする操作装置(1,1A,1B,1C)。
【0102】
[構成2]
磁性体を用いて構成され、ユーザの操作に伴って動作する動作部(2,2A,2B,2C)と、
前記動作部を動作可能に支持する支持部(3,3A,3B,3C)と、
ヨーク(42,42A,42B,42C)およびコイル(41,41A,41B,41C)を有する電磁石(4,4A,4B,4C)と、
前記動作部と前記ヨークとの間に1層または2層に設けられた介在部(5,5A,5B,5C)と、
永久磁石(101)と、
を備え、
前記動作部、前記ヨーク、前記介在部および前記永久磁石は、前記永久磁石が生じる磁束が前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部を貫通するように配置され、かつ、前記電磁石に電流が印加されると、前記永久磁石が生じる前記磁束を打ち消す別の磁束が生じるように配置されており、
前記介在部は、磁界に反応して粘性および形状が変化する有形の機能性材料を用いて構成され、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が1層である場合は、前記介在部は、
前記動作部および前記ヨークの一方に固定され、
前記電磁石に電流が印加されないとき、前記動作部および前記ヨークの他方と接触し、前記電磁石に一定値以上の電流が印加されるとき、前記動作部および前記ヨークの他方との間に隙間を形成し、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が2層である場合は、
第1層の前記介在部は前記動作部に固定され、第2層の前記介在部は前記ヨークに固定され、
前記第1層の前記介在部と前記第2層の前記介在部は、前記電磁石に一定値以上の電流が印加されるとき、互いの間に隙間を形成し、前記電磁石に電流が印加されないとき、前記隙間を解消して互いに接触する、
ことを特徴とする操作装置(100)。
【0103】
[構成3]
構成1または2に記載の操作装置であって、
前記機能性材料は、印加される磁界の強さに応じて粘性および形状を変化させる磁気粘性ゲル、磁気粘性エラストマーまたは、磁気粘性流体が封入された伸縮性を有する立体形状の袋体である、
ことを特徴とする操作装置。
【0104】
[構成4]
構成1~3の何れか1に記載の操作装置であって、
前記介在部は、前記電磁石に前記一定値以上の電流が印加されるとき、当該電流の大きさに応じて前記接触の度合いを変化させる、
ことを特徴とする操作装置。
【0105】
[構成5]
構成1~4の何れか1に記載の操作装置であって、
前記動作部と前記ヨークとの間に設けられた前記介在部が1層である場合において、
前記介在部が前記ヨークに固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記動作部に、前記介在部が前記動作部に接触した後、前記動作部に対して離反不能に固着しないように、表面処理が施され、
前記介在部が前記動作部に固定される場合にあっては、前記介在部および/または前記ヨークに、前記介在部が前記ヨークに接触した後、前記ヨークに対して離反不能に固着しないように、表面処理が施されている、
ことを特徴とする操作装置。
【0106】
[構成6]
構成1~5の何れか1に記載の操作装置であって、
前記動作部は、直線方向または平面方向に移動可能に前記支持部に支持されており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【0107】
[構成7]
請求項1~6の何れか1に記載の操作装置であって、
前記動作部は、その場で回転可能に前記支持部に支持されており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記動作部に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【0108】
[構成8]
構成1~7の何れか1に記載の操作装置であって、
前記動作部は、軸方向に移動可能にまたは軸回転可能に前記支持部に支持された軸部を有しており、
前記ヨークは、前記コイルに通電する際に磁極となる一対の磁極部を前記軸部の側面に対向させており、
前記介在部は、前記一対の磁極部の片方の磁極部と前記動作部との間、または前記一対の磁極部の両方の磁極部と前記動作部との間に設けられている、
ことを特徴とする操作装置。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、例えば、ユーザの操作に対して可変抵抗を付与することができる操作装置であって、磁界が印加されると粘性が変化する機能性材料を用いた操作装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0110】
G 隙間
1,1A,1B,1C,100 操作装置
2,2A,2B,2C 動作部
3,3A,3B,3C 支持部
4,4A,4B,4C 電磁石
5,5A,5B,5C 介在部
41,41A,41B,41C コイル
42,42A,42B,42C ヨーク
42a1 内側取付面(磁極部)
42b1 外側取付面(磁極部)
42Ab1 介在部取付面(磁極部)
42Ba 対向面(磁極部)
42Bb 介在部取付面(磁極部)
101 永久磁石