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特開2024-157323車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法
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  • 特開-車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157323
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/07 20060101AFI20241030BHJP
   E04H 6/34 20060101ALI20241030BHJP
   B60S 13/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B60P3/07 Z
E04H6/34
B60S13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071620
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(71)【出願人】
【識別番号】502050648
【氏名又は名称】株式会社池戸熔接製作所
(71)【出願人】
【識別番号】520112737
【氏名又は名称】株式会社ブルーヘイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】魚住 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 徹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 佑成
(72)【発明者】
【氏名】茨木 稔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一
(72)【発明者】
【氏名】池戸 孝治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎一
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA02
3D026EA20
3D026EA22
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を招くことなく車輪の支持剛性を高めた車両搬送装置で車両を搬送可能とする。
【解決手段】この車両搬送装置10は、駆動輪11と、車輪2を支持可能な車輪支持部13と、車輪支持部13を昇降可能な昇降駆動部14とを備える。車輪支持部13は、車輪2の前後方向一方側を支持可能な第一支持バー24と、車輪2の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バー25と、第二支持バー25を旋回駆動可能な旋回駆動部26と、第二支持バー25が車輪2の支持位置にある状態で、第二支持バー25の他端部を車両搬送装置10の一部に対してロック可能とするロック機構27とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、車輪を支持可能な車輪支持部と、前記車輪支持部を前記駆動輪に対して昇降可能な昇降駆動部とを備えた車両搬送装置であって、
前記車輪支持部は、水平姿勢で前記車輪の前後方向一方側を支持可能な第一支持バーと、
水平姿勢で前記車輪の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バーと、
前記第二支持バーを旋回駆動可能な旋回駆動部と、
前記第二支持バーが前記車輪の支持位置にある状態で、前記第二支持バーの他端部を前記車両搬送装置の一部に対してロック可能とするロック機構とを有する、車両搬送装置。
【請求項2】
前記第一支持バーは、前記車両の前後方向にスライド可能に構成されている請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、一端側を基点として回動可能に設けられ他端側に切欠き部を有する回動部材と、前記第二支持バーの先端部に設けられ前記切欠き部に係合可能な係合ピンと、前記回動部材を所定の回動方向に付勢する付勢部材とで構成され、
前記第二支持バーの旋回動作により前記係合ピンで前記付勢部材による付勢力に抗して前記回動部材を押し動かすことで、前記係合ピンを前記切欠き部に係合可能に構成されている請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の車両搬送装置に前記車両を搭載する搭載工程を備えた車両の搬送方法であって、
前記車両搭載工程は、
前記車輪を前記車両搬送装置の車輪支持部で下方から支持する車輪支持工程と、
前記支持した車輪をリフトアップするリフトアップ工程とを備え、
前記車輪支持工程は、前記第二支持バーの先端部が前記車両の前後方向他方側を向く位置まで前記第二支持バーを旋回させた後、前記車両搬送装置を移動させて前記車輪を前記第一支持バーに当接する位置まで導入する車輪導入ステップと、前記第二支持バーを旋回させて前記ロック機構により前記第二支持バーの先端部を前記車両搬送装置の一部にロックするロックステップとを有する、車両の搬送方法。
【請求項5】
前記ロックステップで、前記車両搬送装置を移動させて前記第一支持バーを前記車輪に押し当てながら、前記第二支持バーを前記車両搬送装置の一部にロックし、
然る後、前記第一支持バーを前記車両の前後方向他方側に向けてスライドさせて前記車輪を前記第一支持バー及び前記第二支持バーで挟持する請求項4に記載の車両搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法に関し、特に搬送対象となる車両の車輪を支持する部分の剛性を高めるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場で量産された自動車などの完成車両を出荷地など所定の場所まで効率よく輸送するための手段として、コンテナなどの積載容器に複数台の完成車両を積載した状態で、当該積載容器を大型トラックなどの輸送車両で目的地近傍の港まで陸上輸送し、然る後、積載容器を輸送用船舶に積み替えて目的地まで水上輸送を行う方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、牽引車両の無人自動運転により複数の台車を牽引して限定されたエリア内における所定の走行ルート上を走行する形式の搬送移動車両が、搬送対象である完成車両を台車上に搭載した状態で目的地まで搬送するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-123258号公報
【特許文献2】特開2019-36036号公報
【特許文献3】特開2019-78099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製造業界においても、来る高齢化社会に向けて、人手不足を補うための対策を講じる必要性が益々高まってきている。このような観点から少人数で効率よく完成車両の輸送を行うことを検討した場合、例えば搬送車を特許文献2に記載のように自走式とし、かつ搬送車を低コストで製作して多数の搬送車を準備することで、完成車両を一台ずつ搬送車に搭載して自動搬送する方法が考えられる。
【0006】
ここで、特許文献3には、車両を搭載して搬送するためのリフト搬送台車が開示されている。この搬送台車は、タイヤの接地部の前後両側にそれぞれ当接してタイヤを支持する一対のアーム部と、一対のアーム部を支持状態及びタイヤから離間した解放状態とに切り替え可能に支持するアーム支持部と、車両の下部に挿入させた状態で各タイヤの内側の側近部に対応する位置にそれぞれ一対のアーム部を配置させるように各アーム支持部を支持する台車フレームと、台車フレームの基端部を昇降自在とする基端昇降部とを備えたリフト搬送台車が開示されている。
【0007】
特許文献3に記載のリフト搬送台車では、タイヤを支持する一対のアーム部はその基端側でアーム支持部に片持ち支持されている。このような構造だと、車両のような重量物を支持するためにアーム支持部に相応の大きさの剛性を持たせる必要が生じ、結果、車輪支持部の大型化を招く。車輪支持部が大型化すると、接地状態の車輪の前後に配置することが難しくなるため、そもそも大型化自体ができないおそれがある。また、アーム部の基端側でのみ支持された構造では、重量物である完成車両を搬送する際に生じ得る衝撃、振動等により一対のアーム部が左右に開く事態が想定される。その結果、車両が位置ずれを生じ、最悪の場合には車輪の脱落を生じるおそれがある等、安全に車両を搬送することが難しい。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、装置の大型化を招くことなく車輪の支持剛性を高めた車両搬送装置で車両を搬送可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る車両搬送装置によって達成される。すなわち、この評価装置は、駆動輪と、車輪を支持可能な車輪支持部と、車輪支持部を駆動輪に対して昇降可能な昇降駆動部とを備え、車輪支持部は、水平姿勢で車輪の前後方向一方側を支持可能な第一支持バーと、水平姿勢で車輪の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バーと、第二支持バーを旋回駆動可能な旋回駆動部と、第二支持バーが車輪の支持位置にある状態で、第二支持バーの他端部を車両搬送装置の一部に対してロック可能とするロック機構とを有する点をもって特徴付けられる。
【0010】
なお、本明細書において車両搬送装置の一部とは、車両搬送装置のうち昇降駆動部により第二支持バーと共に駆動輪に対して昇降可能な部分を意味する。また、鉛直軸線における鉛直とは、完全な鉛直方向のみを意味するわけではなく、少なくとも数度程度の傾きを許容するものとする。
【0011】
上述のように車輪支持部を構成する場合、例えば第二支持バーを水平姿勢でかつ車両の前後方向他端側に向く位置まで旋回させることによって、車両搬送装置を車両の前後方向に移動させるだけで、容易に搭載対象となる車両の車輪を車輪支持部により支持可能なスペースに導入することができる。また、上記スペースに車輪を導入した後は、第二支持バーを第一支持バーと平行になる位置まで旋回させることで、容易に第二支持バーを車輪に当接させて前後方向から車輪を支持することが可能となる。加えて、本発明では、第二支持バーが車輪を支持可能な位置にある状態で、第二支持バーの旋回大径端となる他端部を車両搬送装置の一部にロック可能としたので、第二支持バーを両持ち梁状態で支持することができる。よって、旋回構造をなす第二支持バーであっても支持剛性を高めることができる。以上より、本発明に係る車両搬送装置によれば、円滑に車輪を支持してリフトアップできると共に、車輪支持部の剛性を高めて車輪支持部を大型化させることなく車輪を支持することができる。よって、搭載時ひいては搬送時の車両の姿勢を安定させることができ、安全に車両を搬送することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る車両搬送装置において、第一支持バーは、車両の前後方向にスライド可能に構成されてもよい。
【0013】
例えば第一支持バーに車輪を当接させた状態で、第二支持バーを大きなトルクで旋回させて車輪の前後方向後方側に押し当てることによっても、車輪を第一支持バーと第二支持バーとで挟持することはできる。しかしながら、この場合には、旋回駆動部に出力の大きなモータなどが必要となり、車輪支持部ひいては車両搬送装置の大型化を招く。あるいは、外形寸法が制限された中でかつ多数の部品を装着しなくてはならない状況を鑑みて、実質的に大型のモータを採用できない場合もあり得る。これに対して、第一支持バーを車両の前後方向にスライド可能とすれば、第一支持バーを車輪に向けて押し込んで第二支持バーとの間で車輪を挟持することができる。よって、第二支持バーを第一支持バーと平行になる位置まで旋回させる際には、大きなトルクは必要なく、ひいては旋回駆動部に用いるモータも小型のもので足りる。よって、設置スペースに制約がある状況下においても、車輪を強固に支持した状態で車両を搭載及び搬送することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る車両搬送装置において、ロック機構は、一端側を基点として回動可能に設けられ他端側に切欠き部を有する回動部材と、第二支持バーの先端部に設けられ切欠き部に係合可能な係合ピンと、回動部材を所定の回動方向に付勢する付勢部材とで構成され、第二支持バーの旋回動作により係合ピンで付勢部材による付勢力に抗して回動部材を押し動かすことで、係合ピンを切欠き部に係合可能に構成されてもよい。
【0015】
このようにロック機構を構成することによって、第二支持バーのロック時には、第二支持バーが回動部材の他端側に向けて旋回し、回動部材に作用する付勢力に抗して回動部材を押し動かすことで、係合ピンが切欠き部に導入される。切欠き部に導入されると、回動部材は付勢部材からの付勢力により係合ピンが導入される前の位置に復帰するので、係合ピンが切欠き部に収容され、係合ピンと切欠き部の押し動かされた部分とが係合した状態となる。よって、第二支持バーを旋回させるだけで自動的に第二支持バーをロックすることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る車両搬送装置において、車輪支持部は、ロック機構により第二支持バーが車両搬送装置の一部に対してロックされた状態を解除可能なロック解除機構をさらに有してもよい。この場合、ロック解除機構は、回動部材を押込んでロック状態が解除される位置まで回動部材を回動可能な押込み部と、押込み部を駆動可能な押込み駆動部とを有してもよい。
【0017】
このようにロック解除機構を設けることにより、ロック解除時、押込み部を駆動して回動部材を押込むことで、係合ピンと切欠き部との係合状態が解消される位置まで回動部材を回動させることができる。よって、この状態で、旋回駆動部により第二支持バーを旋回させることで、よって、この状態で、旋回駆動部により第二支持バーを旋回させて、車輪の前後方向他方側を開いた状態にすることで、容易に前輪を支持可能なスペースから退避させることが可能となる。また、車両の搭載時には、押込み部の駆動により第二支持バーのロック状態を容易に解除することができるので、ロック解除動作の直後に車輪を第一支持バーに当接可能な位置まで導入することが可能になる。よって、上述した一連の搭載動作と降載動作とを容易に繰り返すことが可能となる。
【0018】
あるいは、本発明に係る車両搬送装置において、係合ピンのうち少なくとも切欠き部との係合部位が偏心形状をなし、ロック解除機構は、上記構成の係合ピンを軸回転させる軸回転駆動部が設けられたロック解除機構をさらに備えてもよい。この場合、ロック解除機構は、係合ピンが切欠き部と係合した状態で係合ピンを軸回転させることで、回動部材を付勢力に抗して回動させてロック状態を解除可能に構成されてもよい。
【0019】
このように係合ピンを偏心形状としかつ軸回転可能とすることによっても、係合ピンと切欠き部との係合状態を容易に解消することができる。また、係合ピンへの動力伝達機構を工夫することで旋回駆動部と軸回転駆動部に共通のモータを用いることも可能となるので、車輪支持部ひいては車両搬送装置の大型化を招くおそれもない。
【0020】
また、以上の説明に係る車両搬送装置は、例えばこの搬送装置に車両を搭載する搭載工程を備えた車両の搬送方法としても提供可能である。この場合、搭載工程は、車輪を車両搬送装置の車輪支持部で支持する車輪支持工程と、支持した車輪をリフトアップするリフトアップ工程とを備え、車輪支持工程は、第二支持バーの先端部が車両の前後方向他方側を向く位置まで第二支持バーを旋回させた後、車両搬送装置を移動させて車輪を第一支持バーに当接又はもしくは近接する位置まで導入する車輪導入ステップと、第二支持バーを旋回させてロック機構により第二支持バーの先端部を車両搬送装置の一部にロックするロックステップとを有してもよい。
【0021】
このように、本発明に係る搬送方法によれば、第二支持バーとの干渉を確実に避けて車輪を支持可能なスペースまで導入することができる。また、支持可能なスペースまで導入した車輪を双方の支持バーで支持した状態では、第二支持バーは車両搬送装置の一部にロックされた状態にあるため、第二支持バーの支持剛性を高めて車輪を安定的に支持することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る車両の搬送方法においては、ロックステップで、車両搬送装置を移動させて第一支持バーを車輪に押し当てながら、第二支持バーを車両搬送装置の一部にロックし、然る後、第一支持バーを車両の前後方向他方側に向けてスライドさせて車輪を第一支持バー及び第二支持バーで挟持してもよい。
【0023】
このように、第一支持バーを車輪に押し当てながら、第二支持バーを車両搬送装置の一部にロックすることによって、わずかながらも支持位置における第二支持バーと車輪との間に前後方向の隙間を設けることができる。そして、この隙間は、第一支持バーを車輪に向けてスライドさせて車輪を押込むことにより詰めることができるので、旋回動作時に第二支持バーを車輪に強く押し当てる必要がない。よって、出力の大きな旋回駆動部を用いずに済み、旋回駆動部ひいては車輪支持部の大型化を避けつつも、双方の支持バーで車輪を確実に挟持してより安定的に支持することが可能となる。
【0024】
以上のように、本発明によれば、装置の大型化を招くことなく車輪の支持剛性を高めた車両搬送装置で車両を搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る車両搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示す車輪支持部の平面図である。
図3図2に示す車輪支持部のA-A断面図である。
図4図1に示す車両搬送装置を用いた車両の搬送方法の一例を示すフローチャートで、(a)は全輪が接地状態にある車両を搭載するまでの手順を示したフローチャート、(b)は車輪支持工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
図5図4(b)に示す車輪導入ステップの詳細な手順を示すフローチャートである。
図6図4(b)に示すロックステップの詳細な手順を示すフローチャートである。
図7図1に示す車両搬送装置を用いた車両の搬送方法の一例を示すフローチャートで、(a)は搭載状態にある車両を降載するまでの手順を示したフローチャート、(b)は支持解除工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
図8図2に示す車輪支持部の要部B-B断面図で、車輪を支持可能なスペースに導入した状態を示す要部B-B断面図である。
図9】第二支持バーをロック可能な位置に向けて旋回する直前の状態を示す車輪支持部の要部B-B断面図である。
図10】第二支持バーをロック可能な位置まで旋回した状態を示す車輪支持部の(a)要部B-B断面図と(b)平面図である。
図11】第一支持バーを車輪に押込む向きにスライドさせた状態を示す車輪支持部の要部B-B側面図である。
図12図3に示すリフトアップ工程を終えた状態を示す車両搬送装置の側面図である。
図13図7(b)に示すロック解除ステップの詳細を示すロック解除機構の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法の内容を図面に基づいて説明する。本実施形態では、前輪駆動車である完成車両の前輪を車両搬送装置に搭載し、完成車両の後輪を接地させた状態で完成車両を搬送する場合を例にとって、以下に詳細を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置10の全体構成を示している。この車両搬送装置10は、例えば工場で完成した完成車両1(後述する図12を参照)を、車両待機場であるコンテナヤードに搬送するためのもので、二個又は二の倍数個の駆動輪11と、駆動輪11を回転駆動させる回転駆動部12と、完成車両1の前後何れかの車輪を支持可能な一対の車輪支持部13と、駆動輪11に対して一対の車輪支持部13を昇降可能な昇降駆動部14とを主に備える。
【0028】
本実施形態では、車両搬送装置10は、昇降駆動部14を収容する一対のハウジング15と、バッテリ16と、一対のハウジング15を連結する連結部17と、衛星測位システム(GNSS)の受信部18と、制御部19とをさらに備える。バッテリ16は連結部17に設けられると共に、車輪支持部13は、ハウジング15とバッテリ16との間であって、搭載すべき完成車両1の前輪2(図8等を参照)に対応した幅方向位置にそれぞれ設けられている。よって、この場合、車輪支持部13は、幅方向に離れた二個の駆動輪11の間に配設される。言い換えると、車輪支持部13は、駆動輪11と車体前後方向で重複する位置に配設される。なお、ここでいう幅方向とは、完成車両1を搭載した状態において車体前後方向に直交する向きを意味する。なお、本実施形態では、車両搬送装置10による搬送対象を完成車両1とした場合を例示したが、もちろんこれには限定されない。例えば量産される車両であって、軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない、言い換えると架装されていない状態の車両(架装前車両)などを搬送対象としてもよい。
【0029】
以下、最初に車両搬送装置10の基本構成について説明し、次いで車輪支持部13の構成について説明する。
【0030】
駆動輪11は車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とで少なくとも各1個配設される。本実施形態では、車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とに、それぞれ二個の駆動輪11が車体前後方向に並んで配設されている(図1を参照)。各駆動輪11はタイヤ11aを有し、それぞれ独立して回転可能に構成される。また、各駆動輪11には鉛直方向の回転軸20が連結され、この回転軸20を回転させることで各駆動輪11を鉛直軸線まわりに独立して回転可能としている。すなわち、本実施形態では、駆動輪11の回転駆動部12は、各駆動輪11の水平軸線まわりの回転駆動力を付与する第一回転駆動部21と、回転軸20まわりの回転駆動力を付与する第二回転駆動部22とを有する。そのため、これら各駆動輪11に設けられた第一回転駆動部21及び第二回転駆動部22を独立して制御することにより、車両搬送装置10は、前進後退運動や旋回運動、トーイング、平行移動、縁軌道運動、超信地旋回などの各種運動を実施可能としている。
【0031】
受信部18は、衛星測位システム用の複数の衛星(図示は省略)からの信号を受信可能に構成されている。そして、この受信した信号に基づいて所定の演算処理を実行することにより、受信時刻における完成車両1(の受信部18)の地球上の位置を取得可能としている。ここで、位置取得のための演算処理は、受信部18で実行してもよく、あるいは制御部19で実行してもよい。車両搬送装置10に対する受信部18の取付け位置は任意であり、例えば衛星測位システム用の衛星(測位衛星)との円滑な通信を考慮した場合、車両搬送装置10のなるべく高い位置に取付けるのがよい。本実施形態では、ハウジング15の上面から立設した立設部23の先端(上端)に受信部18が配設されている(図1を参照)。
【0032】
制御部19は、駆動輪11の駆動を担う第一及び第二回転駆動部21,22を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を可能としている。なお、この際、図示は省略するが、車両搬送装置10の制御部19(端末制御部)は、例えば複数の車両搬送装置10の制御を担う統括制御部との間の通信を通じて、統括制御部からの指令を受けた際、当該指令と、受信部18を通じて衛星測位システムにより得られた車両搬送装置10の位置情報(位置データ)、及び車両搬送装置10に装着された各種センサにより取得した走行状態に関する情報(操舵角、速度、加速度データなど)、さらには自動走行の際の目標となる目標経路に関する情報とに基づき駆動輪11を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を実施してもよい。
【0033】
車輪支持部13は、水平姿勢で完成車両1の前輪2の前後方向一方側を支持可能な第一支持バー24と、水平姿勢で前輪2の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バー25と、第二支持バー25を旋回駆動可能な旋回駆動部26と、第二支持バー25が前輪2の支持位置にある状態で、第二支持バー25の他端部を車両搬送装置10の一部に対してロック可能とするロック機構27とを有する。
【0034】
また、車輪支持部13は、本実施形態では、第一支持バー24を車体前後方向(完成車両1を搭載した状態における車体前後方向)にスライド可能なスライド機構28と、ロック機構27により第二支持バー25が車両搬送装置10の一部に対してロックされた状態を解除可能なロック解除機構29とをさらに有する。
【0035】
第一支持バー24は、水平姿勢で完成車両1の前輪2の前後方向一方側(ここでは下部前方側)を支持可能な第一支持面24aを有するもので、図2に示すように、その長手方向を車両搬送装置10の幅方向に一致させた状態で配設される。また、本実施形態では、第一支持バー24は、スライド機構28により連結部17に対して車体前後方向にスライド可能に設けられている。ここで、スライド機構28は、スライド駆動部30と、スライド駆動部30で発生させた駆動力(例えば回転駆動力)をスライド方向の力に変換する動力変換機構31とで構成される。そのため、例えばスライド駆動部30をモータで構成することにより、第一支持バー24のスライド動作を制御部19で容易に制御し得る。
【0036】
第二支持バー25は、水平姿勢で前輪2の前後方向他方側(ここでは下部後方側)を支持可能な第二支持面25aを有するもので、図2に示すように、第一支持バー24と平行に配設される。また、第二支持バー25の一端側(基端側)にはモータ等の旋回駆動部26が配設されており、旋回駆動部26の駆動により、第二支持バー25はその一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能に構成されている。これにより、第二支持バー25の旋回動作を制御部19で容易に制御し得る。
【0037】
この場合、第一支持バー24と平行になる前輪2の支持位置(図2中、実線で示す位置)から、車体前後方向に沿った向きとなる位置(図2中、二点鎖線で示す位置)までの間で、第二支持バー25が旋回可能なように、第二支持バー25の旋回許容範囲を設定するのがよい。具体的には、図示しない規制部材等によって第二支持バー25の旋回動作を規制するのがよい。もちろん、前輪2の支持位置に対して90°を超える範囲まで第二支持バー25を旋回可能としてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、車両搬送装置10の幅方向外側を基点として第二支持バー25を鉛直軸線まわりに旋回可能としているが(図1及び図2を参照)、もちろんこれには限られない。図示は省略するが、車両搬送装置10の幅方向中央側を基点として第二支持バー25を鉛直軸線まわりに旋回可能としてもよい。
【0039】
ロック機構27は、第二支持バー25が前輪2の支持位置にある状態、すなわち第一支持バー24と平行な位置にある状態で、第二支持バー25の他端部を車両搬送装置10の一部、ここでは連結部17に対してロック可能に構成される。本実施形態では、ロック機構27は、図3に示すように、一端側を基点として回動可能に設けられ先端側に切欠き部32を有する回動部材33と、第二支持バー25の先端部に設けられ切欠き部32に係合可能な係合ピン34と、回動部材33を所定の回動方向に付勢する付勢部材35とで構成されている。
【0040】
この場合、回動部材33は、連結部17に設けられた水平軸36まわりに回動可能とされ、付勢部材35は、例えば引張ばねで、回動部材33の一端側(基端側)を引き上げ、切欠き部32が設けられる他端側を押し下げる回動方向に回動部材33を付勢している。本実施形態では、図3にある状態から回動部材33の下方への回動動作(図3でいえば時計回りの回動)が規制部材37により規制されている。また、この規制位置において、第二支持バー25が回動部材33に向けて旋回動作を行った場合、第二支持バー25の先端に設けた係合ピン34が切欠き部32の凹部32aと先端側で隣り合う凸部32bと当接するようになっている。
【0041】
ロック解除機構29は、本実施形態では、回動部材33の一端側を押込み可能な押込み部38と、押込み部38を駆動可能な押込み駆動部39とを有する。この場合、押込み駆動部39は例えばソレノイドアクチュエータであってもよく、押込み部38はソレノイドアクチュエータのストロークピンであってもよい。何れにしても、押込み駆動部39による押込み部38の押込みにより、回動部材33と係合ピン34との係合状態が解消される位置(位相)まで回動部材33を押込めるように構成されていればよい。
【0042】
次に、上記構成の車両搬送装置10を用いた完成車両1の搬送方法の一例を、完成車両1の搭載及び降載動作を中心に説明する。
【0043】
まず、制御部19は、図示しない統括制御部から、車両搬送装置10が次になすべきことに関する指令を受け、受けた指令に基づいて車両搬送装置10の動作を制御する。例えば車両搬送装置10がコンテナヤードと工場との間に位置する空の状態(完成車両1を搭載していない状態)の場合、制御部19は、統括制御部から工場に向けて移動する指令を受けて、工場に向けて移動を開始する制御を行う。あるいは、車両搬送装置10が工場の敷地内に位置する場合、制御部19は、統括制御部から搬送対象となる完成車両1を搭載可能な位置に向けて移動する指令を受けて、上記搭載可能な位置に向けて移動を開始する制御を行う。然る後、制御部19は、統括制御部からの指令を受けて、又は制御部19自体が有するプログラムに基づいて、完成車両1の搭載動作を実施しかつ当該動作を制御する。
【0044】
ここで、完成車両1の搭載工程は、図4(a)に示すように、完成車両1の前輪2を車両搬送装置10の車輪支持部13で支持する車輪支持工程S1と、支持した前輪2をリフトアップするリフトアップ工程S2とを備える。
【0045】
このうち、車輪支持工程S1は、図4(b)に示すように、前輪2を支持可能なスペースS(図1等を参照)に導入する車輪導入ステップS11と、第二支持バー25をロックするロックステップS12と、第一支持バー24を前輪2に向けてスライドさせるスライドステップS13とを備える。以下、各ステップS11~S13の詳細を時系列順に説明する。
【0046】
(S1)車輪支持工程
(S11)車輪導入ステップ
本ステップS11では、車輪支持部13に設けた前輪2を支持するためのスペースSに前輪2を導入する。本実施形態では、図5に示すように、まず車両搬送装置10が搬送対象となる完成車両1の前輪2に向けた接近動作を開始する(ステップS111)。また、車両搬送装置10に設けた昇降駆動部14(図1を参照)により車輪支持部13を走行時高さh0から第一支持高さh1まで下降させる(ステップS112)。また、第二支持バー25が前輪2の支持位置にある場合(図2に示す位置)にある場合、旋回駆動部26により第二支持バー25を車体前後方向に沿った姿勢となる位置(図2中、二点鎖線で示す位置)まで旋回させる(ステップS113)。
【0047】
これら一連のステップS111~S113は、同時に行うのが作業効率の観点から好ましい。これにより、支持可能スペースSのすぐ後方に前輪2が到達する位置まで車両搬送装置10を接近させた状態では、車輪支持部13は地面Gから第一支持高さh1にあり(図8を参照)、かつ第二支持バー25は、前輪2を支持可能スペースSに導入可能なように車体前後方向に沿った姿勢まで開いた状態にある。よって、そのまま、車両搬送装置10を後退させることで、他の動作が完了するのを待つことなく即時に前輪2を支持可能スペースSに導入することができる。本実施形態では、図8に示すように、連結部17と共に支持可能スペースSを区画形成する第一支持バー24と前輪2とが当接する位置まで車両搬送装置10を後退させる(ステップS114)。この時点で、第二支持バー25を旋回させて第一支持バー24と平行な位置(図2中、実線で示す位置)まで移動させた場合、第二支持バー25の第二支持面25aと前輪2の後方側とは互いに当接する位置関係にある(図8を参照)。
【0048】
(S12)ロックステップ
本ステップS12では、前輪2を車輪支持部13の支持可能スペースSに導入した後、第二支持バー25を旋回駆動してロック可能な位置まで移動させ、ロック機構27により第二支持バー25を連結部17に対してロックする。本実施形態では、図6及び図9に示すように、まず車輪支持部13を昇降駆動部14により下降させて、第一支持バー24を第一支持高さh1から第二支持高さh2までさらに下降させる(ステップS121)。これにより、第一支持バー24と前輪2との間に車体前後方向の隙間が生じるので、この隙間を埋めるように車両搬送装置10を後方に移動させる。言い換えると、第一支持バー24が再び前輪2と当接する位置まで車両搬送装置10を後方に移動させる(図10(a)を参照)。この際、第一支持バー24を前輪2に押込む位置まで車両搬送装置10を後方に移動させるのがよい(ステップS122)。これにより、第二支持バー25と前輪2との間に所定の大きさの車体前後方向隙間を確保し得る(図10(a)を参照)。
【0049】
然る後、第二支持バー25を旋回駆動部26により旋回させて、図10(b)に示すように、第一支持バー24と平行な位置、すなわちロック可能な位置まで第二支持バー25を移動させる(ステップS123)。これにより、第二支持バー25の先端部に設けた係合ピン34が、切欠き部32の凹部32aと先端側で隣り合う凸部32b(図3を参照)と当接する。よって、そのまま旋回駆動部26により第二支持バー25の旋回駆動を継続することにより、付勢部材35の付勢力に抗して係合ピン34が凸部32bを押し上げて、凹部32aに侵入する。係合ピン34が凹部32aにまで到達すると、係合ピン34による押し上げ力は消失するので、付勢部材35の付勢力により再び回動部材33がその先端側を下方に向けて回動し、凸部32bが押し上げ前の位置に復帰する(図3を参照)。これにより、係合ピン34が切欠き部32に係合した状態となり、これをもって第二支持バー25が回動部材33及び水平軸36を介して連結部17にロックされた状態となる。
【0050】
なお、ロック直前の状態において、第二支持バー25と前輪2との間には所定の車体前後方向隙間が存在しているため(図10(a)を参照)、第二支持バー25を旋回させて連結部17にロックした状態においても、第二支持バー25は前輪2の後方側に離れた位置にある(非接触状態にある)。
【0051】
(S13)スライドステップ
本ステップS13では、第一支持バー24を前輪2に向けてスライドさせる。そして、第一支持バー24が前輪2に当接した後も、引き続き第一支持バー24をスライドさせて、スライド駆動部30によるスライド力Fで前輪2を後方側に押込む。これにより、相対的に軽量な車両搬送装置10が完成車両1(の前輪2)に対してスライド力Fと反対の向きに押戻され、第一支持バー24がスライドするにつれて、車輪支持部13の第一支持バー24を除く部分が前輪2の前方側に移動する。よって、第一支持バー24のスライド動作に伴い、第二支持バー25が連結部17と共に前方側に移動し、第一支持バー24と第二支持バー25との最小の前後方向間隔が間隔D1から間隔D2に縮まる(図10(a)及び図11を参照)。これにより、第二支持バー25が前輪2の後方側と当接して、第一支持バー24と第二支持バー25とで前輪2の下部を挟持して支持する。
【0052】
なお、この際、駆動輪11を回転フリーな状態(ブレーキをかけていない状態)としておくことで、比較的小さな力で第一支持バー24の押戻しにより第二支持バー25を前輪2に向けて移動させることができる。よって、スライド駆動部30に大型のモータ等を用いずとも押戻しにより第二支持バー25を前輪2に押し当てることが可能となる。
【0053】
(S2)リフトアップ工程
以上のようにして前輪2を第一及び第二支持バー24,25で支持した後、昇降駆動部14により車輪支持部13を上昇させて、第一及び第二支持バー24,25により下部を支持された状態の前輪2をリフトアップする。この際、完成車両1の後輪3は地面Gと接した状態であるから、前輪2のリフトアップにより、完成車両1の前方側のみが車両搬送装置10に搭載された状態となる(図12を参照)。また、上記リフトアップの際、車輪支持部13を走行時高さh0まで上昇させることで、リフトアップ後、直ちに完成車両1の搬送を開始することが可能となる。
【0054】
次に、完成車両1の降載動作を説明する。
【0055】
上述のようにして完成車両1を車両搬送装置10に搭載して目的地まで完成車両1を搬送した後、完成車両1を車両搬送装置10から降ろす(降載する)。この降載動作は、搭載動作時と同じく、制御部19が、統括制御部からの指令を受けて、又は制御部19自体が有するプログラムに基づいて実施しかつ制御され得る。
【0056】
ここで、完成車両1の降載工程は、図7(a)に示すように、支持した前輪2をリフトダウンするリフトダウン工程S3と、車輪支持部13による前輪2の支持状態を解除する支持解除工程S4と、前輪2を車輪支持部13の支持可能スペースSから退避させる退避工程S5とを備える。
【0057】
(S3)リフトダウン工程
本工程S3では、車輪支持部13で支持した状態の前輪2をリフトダウンする。リフトダウン動作の開始時、車輪支持部13は地面Gから走行時高さh0だけ鉛直上方に離れた位置にある。よって、走行時高さh0から第二支持高さh2を減じた値だけ車輪支持部13を下降させる。これにより前輪2は引き続き第一支持バー24と第二支持バー25とで挟持された状態で地面Gに接した状態となる。
【0058】
(S4)支持解除工程
(S41)スライドステップ
本ステップS41では、第一支持バー24を前輪2から離れる向きにスライドさせる。これにより、第一支持バー24と第二支持バー25との車体前後方向の間隔を間隔D2から間隔D1に広げる。これにより、第一支持バー24と第二支持バー25とによる挟持状態は解消される。一方で、第二支持バー25と前輪2との位置関係は維持されるため、第一支持バー24を前輪2から離した時点においても、第二支持バー25は依然として前輪2に押し付けられた状態にある。
【0059】
(S42)ロック解除ステップ
本ステップS42では、第二支持バー25のロック状態を解除する。本実施形態では、図3に示すように、ロック機構27をなす回動部材33の切欠き部32に第二支持バー25先端の係合ピン34が係合した状態を解消することにより、第二支持バー25のロック状態を解除する。具体的には、図13に示すように、回動部材33の一端側に隣接して配設された押込み部38を押込み駆動部39により駆動させて、回動部材33の一端側を押込む。これにより、回動部材33はその一端側を押し下げ、切欠き部32が設けられる他端側を押し上げる向き(図13中、二点鎖線で示す状態から実線で示す状態)に回動し、切欠き部32が上方に移動することで、切欠き部32と係合ピン34との係合状態が解消される。これにより、第二支持バー25の連結部17に対するロック状態が解除される。
【0060】
(S43)旋回ステップ
本ステップS43では、ロック状態が解除された第二支持バー25を前輪2が支持可能スペースSから退避可能な位置まで旋回させる。具体的には、第二支持バー25を旋回駆動部26により駆動させて、車体前後方向に沿った姿勢となる位置まで第二支持バー25を旋回させる。これにより第二支持バー25が前輪2から離れるので、第一支持バー24と第二支持バー25による前輪2の支持状態が解除される。
【0061】
なお、ロック解除ステップS42及び旋回ステップS43の実施時、既述の如く、第二支持バー25は依然として前輪2に押し付けられた状態にある。よって、押込み部38の押込み動作の前に、前輪2から第二支持バー25から車体前後方向に離れる向きに車両搬送装置10を移動(後退)させるのがよい。これにより、前輪2への第二支持バー25の押込みにより切欠き部32の凸部32bと係合ピン34とが噛み込んだ状態が解消される。よって、ソレノイド等の小さな出力の押込み駆動部39による押込み部38の押込み動作であっても、回動部材33を係合状態が解消される向きに回動させることが可能となる。また、前輪2への第二支持バー25の押込み状態が解消されることで、第二支持バー25の基端側に作用する反力も解消されるので、比較的小さなトルクで第二支持バー25を旋回駆動させることが可能となる。
【0062】
(S5)退避工程
本工程S5では、前輪2を車輪支持部13の支持可能スペースSから退避させる。具体的には、直前のステップS43で、前輪2の後方側に位置する第二支持バー25が車体前後方向に沿った姿勢まで旋回移動させているので、車両搬送装置10を前進させることで、第二支持バー25の旋回により開いた部分から前輪2が退避し得る。これにより、完成車両1の降載動作が完了する。然る後、詳細な説明は割愛するが、車輪支持部13を昇降駆動部14により走行時高さh0まで上昇させると共に、第二支持バー25をロック位置まで旋回駆動させてロックすることで、次の搬送作業に向けて車両搬送装置10を移動可能な状態とし得る。
【0063】
以上述べたように、本実施形態に係る車両搬送装置10によれば、予め第二支持バー25を完成車両1の車体前後方向に沿った姿勢となる位置まで旋回させておき、車両搬送装置10を完成車両1の車体前後方向に移動させることによって、容易に完成車両1の前輪2を車輪支持部13による支持可能スペースSに導入することができる。また、支持可能スペースSに前輪2を導入した後は、第二支持バー25を第一支持バー24と平行になる位置まで旋回させることで、容易に第二支持バー25を前輪2に当接させて車体前後方向の両側から前輪2を支持することが可能となる。加えて、本実施形態では、第二支持バー25が前輪2を支持可能な位置にある状態で、第二支持バー25の旋回大径端となる他端部を車両搬送装置10の一部となる連結部17にロック可能としたので、第二支持バー25を両持ち梁状態で支持することができる。よって、旋回構造をなす第二支持バー25であっても支持剛性を高めることができる。以上より、本実施形態に係る車両搬送装置10によれば、円滑に前輪2を支持してリフトアップできると共に、車輪支持部13の剛性を高めて車輪支持部13を大型化させることなく前輪2を支持することができる。よって、搭載時ひいては搬送時の完成車両1の姿勢を安定させることができ、安全に完成車両1を搬送することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、第一支持バー24を、車両搬送装置10の接地側(駆動輪11など)に対して車体前後方向にスライド可能に構成したので、第一支持バー24を前輪2に向けて押し込んで第二支持バー25との間で前輪2を挟持することができる。よって、第二支持バー25を第一支持バー24と平行になる位置まで旋回させる際には、大きなトルクは必要なく、ひいては旋回駆動部26に用いるモータも小型のもので足りる。よって、設置スペースに制約がある状況下においても、前輪2を強固に支持した状態で完成車両1を搭載及び搬送することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、ロック機構27を、一端側を基点として回動可能に設けられ他端側に切欠き部32を有する回動部材33と、第二支持バー25の先端部に設けられ切欠き部32に係合可能な係合ピン34と、回動部材33を所定の回動方向に付勢する付勢部材35とで構成し、第二支持バー25の旋回動作により係合ピン34で付勢部材35による不勢力に抗して回動部材33を押し動かすことで、係合ピン34を切欠き部32に係合可能に構成した。このようにロック機構27を構成することによって、第二支持バー25を回動部材33の他端側に向けて旋回させて、係合ピン34を切欠き部32の凸部32bに押込むだけで、係合ピン34を切欠き部32に係合させることができる。収容され、係合ピン34と切欠き部の押し動かされた部分とが係合した状態となる。よって、第二支持バー25を旋回させるだけで自動的に第二支持バー25をロックすることが可能となる。
【0066】
また、この際、車両搬送装置10を移動させて第一支持バー24を前輪2に押し当てながら、第二支持バー25を車両搬送装置10の一部にロックすることによって、わずかながらも支持位置(ロック位置)における第二支持バー25と前輪2との間に車体前後方向の隙間を設けることができる。この隙間は、第一支持バー24を前輪2に向けてスライドさせて前輪2を押込むことにより詰めることができるので(図11を参照)、旋回動作時に第二支持バー25を前輪2に強く押し当てる必要がない。よって、出力の大きな旋回駆動部26を用いずに済み、旋回駆動部26ひいては車輪支持部13の大型化を避けつつも、双方の支持バー24,25で前輪2を確実に挟持してより安定的に支持することが可能となる。
【0067】
加えて、本実施形態では、車輪支持部13に、ロック機構27により第二支持バー25が車両搬送装置の一部(連結部17)に対してロックされた状態を解除可能なロック解除機構29をさらに設けると共に、このロック解除機構29を、回動部材33を押込んでロック状態が解除される位置まで回動部材33を回動可能な押込み部38と、押込み部38を駆動可能な押込み駆動部39とで構成した。このようにロック解除機構29を構成することにより、押込み部38を駆動して回動部材33を押込むだけの動作で、係合ピン34と切欠き部32との係合状態が解消される位置まで回動部材33を回動させることができる。よって、この状態で、旋回駆動部26により第二支持バー25を旋回させることで、支持可能スペースSの後方側を開いた状態として、容易に前輪2を支持可能スペースSから退避させることが可能となる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0069】
例えば上記実施形態では、ロック解除機構29を、回動部材33を押込んでロック状態が解除される位置まで回動部材33を回動可能な押込み部38と、押込み部38を駆動可能な押込み駆動部39とで構成した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、係合ピン34のうち少なくとも切欠き部32との係合部位を偏心形状とし、係合ピン34を軸回転させる軸回転駆動部を設けてもよい。また、この場合、係合ピンが切欠き部32と係合した状態で係合ピン34を軸回転させることで、回動部材33を付勢部材35の付勢力に抗して回動させてロック状態が解除可能なように、ロック解除機構29を構成してもよい。
【0070】
また、何れも図示は省略するが、車輪支持部13の少なくとも一部の可動部分の状態を任意の検知部で検知してもよい。例えば第二支持バー25を前輪2が支持可能なスペースSに導入可能な位置まで旋回したか否かを検知部で検知可能とし、検知した場合に、前輪2と第一支持バー24とが当接可能な位置まで車両搬送装置10を自動的に移動させるように制御してもよい。同様に、第一支持バー24に前輪2が当接したことを検知部で検知可能とし、検知した場合に、次のステップとなるロックステップS12を自動的に実施するように制御してもよい。同様に、第二支持バー25をロック位置まで旋回させたこと、及び回動部材33の切欠き部32と係合ピン34とが係合したことをそれぞれ検知部で検知可能とし、ともに検知した場合に、次のステップとなるスライドステップS13を自動的に実施するように制御してもよい。
【0071】
また、以上の説明では、完成車両1の前輪2を車輪支持部13で支持してリフトアップする場合を例示したが、もちろんこれには限られない。図示は省略するが、完成車両1の後輪3(図12を参照)を車輪支持部13で支持してリフトアップすることにより完成車両1を車両搬送装置10に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 完成車両
2 前輪
3 後輪
10 車両搬送装置
11 駆動輪
11a タイヤ
12 回転駆動部
13 車輪支持部
14 昇降駆動部
15 ハウジング
16 バッテリ
17 連結部
18 受信部
19 制御部
20 回転軸
21 第一回転駆動部
22 第二回転駆動部
23 立設部
24 第一支持バー
24a 第一支持面
25 第二支持バー
25a 第二支持面
26 旋回駆動部
27 ロック機構
28 スライド機構
29 ロック解除機構
30 スライド駆動部
31 動力変換機構
32 切欠き部
32a 凹部
32b 凸部
33 回動部材
34 係合ピン
35 付勢部材
36 水平軸
37 規制部材
38 押込み部
39 押込み駆動部
F スライド力
G 地面
S 支持可能スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13