(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157325
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20241030BHJP
E04H 6/34 20060101ALI20241030BHJP
B60P 3/07 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B61B13/00 J
E04H6/34
B60P3/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071623
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(71)【出願人】
【識別番号】502050648
【氏名又は名称】株式会社池戸熔接製作所
(71)【出願人】
【識別番号】520112737
【氏名又は名称】株式会社ブルーヘイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】魚住 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 徹
(72)【発明者】
【氏名】茨木 稔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一
(72)【発明者】
【氏名】池戸 孝治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎一
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BA11
3D101BB16
3D101BB22
3D101BB34
(57)【要約】
【課題】車輪支持部の大型化を避けつつも搬送対象となる車両の車輪を支持してリフトアップ可能な車両搬送装置を低コストに提供する。
【解決手段】車両搬送装置10は、駆動輪11と、車両1の車輪2を支持可能な車輪支持部13と、車輪支持部13を駆動輪11に対して昇降可能な昇降駆動部14とを備える。車輪支持部13は、水平姿勢で車輪2の前後方向一方側を支持可能でかつ前後方向にスライド可能な第一支持バー24と、水平姿勢で車輪2の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線X1まわりに旋回可能な第二支持バー25と、第一支持バー24に入力されたスライド力を第二支持バー25の鉛直軸線X1まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能な第一リンク機構26とを備える。スライド力は、車両搬送装置10を前後方向他方側に移動させて第一支持バー24を車輪2に押当てることで入力される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、搬送対象となる車両の車輪を支持可能な車輪支持部と、前記車輪支持部を前記駆動輪に対して昇降可能な昇降駆動部とを備えた車両搬送装置であって、
前記車輪支持部は、水平姿勢で前記車輪の前後方向一方側を支持可能でかつ前後方向にスライド可能な第一支持バーと、
水平姿勢で前記車輪の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バーと、
前記第一支持バーと前記第二支持バーとを連結し、前記第一支持バーに入力されたスライド力を前記第二支持バーの鉛直軸線まわりの旋回力に変換して前記第二支持バーに伝達可能な第一リンク機構とを備え、
前記スライド力は、前記車両搬送装置を前後方向他方側に移動させて前記第一支持バーを前記車輪に押当てることで入力される、車両搬送装置。
【請求項2】
前記第二支持バーは一端側を基点として水平軸線まわりに旋回可能に構成され、
前記第一支持バーと前記第二支持バーとを連結し、前記スライド力を前記第二支持バーの水平軸線まわりの旋回力に変換して前記第二支持バーに伝達可能な第二リンク機構をさらに備え、
前記第二リンク機構は、前記スライド力が入力された際、前記第一リンク機構よりも先に前記スライド力を前記水平軸線まわりの旋回力に変換して前記第二支持バーに伝達可能に構成されている、請求項1に記載の車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送装置に関し、特に搬送対象となる車両の車輪を支持する部分の大型化を避けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場で量産された自動車などの完成車両を出荷地など所定の場所まで効率よく輸送するための手段として、コンテナなどの積載容器に複数台の完成車両を積載した状態で、当該積載容器を大型トラックなどの輸送車両で目的地近傍の港まで陸上輸送し、然る後、積載容器を輸送用船舶に積み替えて目的地まで水上輸送を行う方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、牽引車両の無人自動運転により複数の台車を牽引して限定されたエリア内における所定の走行ルート上を走行する形式の搬送移動車両が、搬送対象である完成車両を台車上に搭載した状態で目的地まで搬送するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-123258号公報
【特許文献2】特開2019-36036号公報
【特許文献3】特開2019-78099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製造業界においても、来る高齢化社会に向けて、人手不足を補うための対策を講じる必要性が益々高まってきている。このような観点から少人数で効率よく完成車両の輸送を行うことを検討した場合、例えば搬送車を特許文献2に記載のように自走式とし、かつ搬送車を低コストで製作して多数の搬送車を準備することで、完成車両を一台ずつ搬送車に搭載して自動搬送する方法が考えられる。
【0006】
ここで、特許文献3には、車両を搭載して搬送するためのリフト搬送台車が開示されている。この搬送台車は、タイヤの接地部の前後両側にそれぞれ当接してタイヤを支持する一対のアーム部と、一対のアーム部を鉛直軸線まわりに回動させてタイヤから離間した状態からタイヤを支持可能な状態に切り替えるための駆動力を付与可能な回動シリンダと、各アーム支持部を支持する台車フレームの基端部を昇降自在とする基端昇降部とを備えたリフト搬送台車が開示されている。
【0007】
特許文献3に記載のリフト搬送台車では、タイヤを支持する一対のアーム部はその基端側を基点として鉛直軸線まわりに回動可能とされると共に、当該回動させるための駆動力を回動シリンダにより付与可能としている。このようにシリンダなどのアクチュエータが必要な支持構造だと、アクチュエータの分だけ車輪を支持する部分が大型化する。車輪を支持する部分は接地状態の車輪の前後に配置されることから、車輪支持部が大型化すると、接地状態の車輪の前後に配置することが難しくなる。また、アクチュエータを設ける場合には当該アクチュエータを制御する必要も生じるため、アクチュエータと制御装置の追加により製造コストの高騰を招く。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、車輪支持部の大型化を避けつつも搬送対象となる車両の車輪を支持してリフトアップ可能な車両搬送装置を低コストに提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る車両搬送装置によって達成される。すなわち、この搬送装置は、駆動輪と、搬送対象となる車両の車輪を支持可能な車輪支持部と、車輪支持部を駆動輪に対して昇降可能な昇降駆動部とを備えた車両搬送装置であって、車輪支持部は、水平姿勢で車輪の前後方向一方側を支持可能でかつ前後方向にスライド可能な第一支持バーと、水平姿勢で車輪の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バーと、第一支持バーと第二支持バーとを連結し、第一支持バーに入力されたスライド力を第二支持バーの鉛直軸線まわりの旋回力に変換して第二支持バーに伝達可能な第一リンク機構とを備え、スライド力は、車両搬送装置を前後方向他方側に移動させて第一支持バーを車輪に押当てることで入力される点をもって特徴付けられる。なお、鉛直軸線における鉛直とは、完全な鉛直方向のみを意味するわけではなく、少なくとも数度程度の傾きを許容するものとする。
【0010】
上記構成の車輪支持部を備えた車両搬送装置によれば、駆動輪を駆動させて車両搬送装置を移動させることにより、第一支持バーで車輪を支持した状態としながら、第二支持バーを車輪の支持位置に移動させることができる。よって、各支持バーに専用のアクチュエータを設けずとも、双方の支持バーで接地状態の車輪を前後から支持することが可能となる。従って、車輪支持部を大型化させずに済む。また、各支持バーの駆動を制御するための装置も必要ないため、アクチュエータや制御装置の追加によるコストアップの心配もない。以上より、本発明によれば、車輪支持部の大型化を避けつつも搬送対象となる車両の車輪を支持してリフトアップ可能な車両搬送装置を低コストに提供することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る車両搬送装置において、第二支持バーは一端側を基点として水平軸線まわりに旋回可能に構成されてもよい。また、この場合、本発明に係る車両搬送装置は、第一支持バーと第二支持バーとを連結し、スライド力を第二支持バーの水平軸線まわりの旋回力に変換して第二支持バーに伝達可能な第二リンク機構をさらに備え、第二リンク機構は、スライド力が入力された際、第一リンク機構によりも先にスライド力を水平軸線まわりの旋回力に変換して第二支持バーに伝達可能に構成されてもよい。
【0012】
上述のように第二リンク機構を設けて、第一支持バーへのスライド力の入力により第二支持バーを水平軸線まわりに旋回可能とすることによって、第一支持バーと車輪とが当接していない状態では第二支持バーを直立姿勢とすることができる。よって、搬送対象となる完成車両を搭載していない状態では、第二支持バーを直立姿勢にした状態で車両搬送装置を走行させることができる。そのため、第二支持バーが後方側を向いた状態で走行した際に第二支持バーが周辺の物体と干渉する事態を確実に回避して、安全に走行することが可能となる。また、車輪の搭載時には、まず第二リンク機構により第二支持バーを水平軸線まわりに旋回させて、直立姿勢から水平姿勢に第二支持バーを倒した後、当該第二支持バーを鉛直軸線まわりに旋回させて第一支持バーと平行となる姿勢にすることができる。よって、第一支持バーを車輪に押当てて前後方向一方側にスライドさせるだけの動作で、第二支持バーの水平軸線まわりの旋回動作と鉛直軸線まわりの旋回動作を連続的にかつ自動で実施することが可能となる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、車輪支持部の大型化を避けつつも搬送対象となる車両の車輪を支持してリフトアップ可能な車両搬送装置を低コストに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す車輪支持部を左後方側から見た第一斜視図である。
【
図3】
図1に示す車輪支持部を右後方側から見た第二斜視図である。
【
図6】
図2に示すロック機構及びロック解除機構の要部拡大側面図である。
【
図7】
図1に示す車両搬送装置を用いた車両の搬送方法の一例を示すフローチャートで、(a)は前輪が接地状態にある車両を搭載するまでの手順を示すフローチャート、(b)は車輪支持工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す車両搬送装置を用いた車両の搬送方法の一例を示すフローチャートで、(a)は搭載状態にある車両を降載するまでの手順を示すフローチャート、(b)は支持解除工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図7(b)に示す水平軸旋回ステップが完了した時点における第二支持バーの状態を示す車輪支持部の平面図である。
【
図10】
図7(a)に示すリフトアップ工程を終えた状態を示す車両搬送装置の左側面図である。
【
図11】
図8(b)に示すロック解除ステップの詳細を示すロック解除機構の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置、及びこの搬送装置を用いた車両の搬送方法の内容を図面に基づいて説明する。本実施形態では、前輪駆動車である完成車両の前輪を車両搬送装置に搭載し、完成車両の後輪を接地させた状態で完成車両を搬送する場合を例にとって、以下に詳細を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置10の全体構成を示している。この車両搬送装置10は、例えば工場で完成した完成車両1(後述する
図12を参照)を、車両待機場であるコンテナヤードに搬送するためのもので、二個又は二の倍数個の駆動輪11と、駆動輪11を回転駆動させる回転駆動部12と、完成車両1の前後何れかの車輪を支持可能な一対の車輪支持部13と、駆動輪11に対して一対の車輪支持部13を昇降可能な昇降駆動部14とを主に備える。
【0017】
本実施形態では、車両搬送装置10は、昇降駆動部14を収容する一対のハウジング15と、バッテリ16と、一対のハウジング15を連結する連結部17と、衛星測位システム(GNSS)の受信部18と、制御部19とをさらに備える。バッテリ16は連結部17に設けられると共に、車輪支持部13は、ハウジング15とバッテリ16との間であって、搭載すべき完成車両1の前輪2(
図8等を参照)に対応した幅方向位置にそれぞれ設けられている。よって、この場合、車輪支持部13は、幅方向に離れた二個の駆動輪11の間に配設される。言い換えると、車輪支持部13は、駆動輪11と車体前後方向で重複する位置に配設される。なお、ここでいう幅方向とは、完成車両1を搭載した状態において車体前後方向に直交する向きを意味する。なお、本実施形態では、車両搬送装置10による搬送対象を完成車両1とした場合を例示したが、もちろんこれには限定されない。例えば量産される車両であって、軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない、言い換えると架装されていない状態の車両(架装前車両)などを搬送対象としてもよい。
【0018】
以下、最初に車両搬送装置10の基本構成について説明し、次いで車輪支持部13の構成について説明する。
【0019】
駆動輪11は車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とで少なくとも各1個配設される。本実施形態では、車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とに、それぞれ二個の駆動輪11が車体前後方向に並んで配設されている(
図1を参照)。各駆動輪11はタイヤ11aを有し、それぞれ独立して回転可能に構成される。また、各駆動輪11には鉛直方向の回転軸20が連結され、この回転軸20を回転させることで各駆動輪11を鉛直軸線まわりに独立して回転可能としている。すなわち、本実施形態では、駆動輪11の回転駆動部12は、各駆動輪11の水平軸線まわりの回転駆動力を付与する第一回転駆動部21と、回転軸20まわりの回転駆動力を付与する第二回転駆動部22とを有する。そのため、これら各駆動輪11に設けられた第一回転駆動部21及び第二回転駆動部22を独立して制御することにより、車両搬送装置10は、前進後退運動や旋回運動、トーイング、平行移動、縁軌道運動、超信地旋回などの各種運動を実施可能としている。
【0020】
受信部18は、衛星測位システム用の複数の衛星(図示は省略)からの信号を受信可能に構成されている。そして、この受信した信号に基づいて所定の演算処理を実行することにより、受信時刻における完成車両1(の受信部18)の地球上の位置を取得可能としている。ここで、位置取得のための演算処理は、受信部18で実行してもよく、あるいは制御部19で実行してもよい。車両搬送装置10に対する受信部18の取付け位置は任意であり、例えば衛星測位システム用の衛星(測位衛星)との円滑な通信を考慮した場合、車両搬送装置10のなるべく高い位置に取付けるのがよい。本実施形態では、ハウジング15の上面から立設した立設部23の先端(上端)に受信部18が配設されている(
図1を参照)。
【0021】
制御部19は、駆動輪11の駆動を担う第一及び第二回転駆動部21,22を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を可能としている。なお、この際、図示は省略するが、車両搬送装置10の制御部19(端末制御部)は、例えば複数の車両搬送装置10の制御を担う統括制御部との間の通信を通じて、統括制御部からの指令を受けた際、当該指令と、受信部18を通じて衛星測位システムにより得られた車両搬送装置10の位置情報(位置データ)、及び車両搬送装置10に装着された各種センサにより取得した走行状態に関する情報(操舵角、速度、加速度データなど)、さらには自動走行の際の目標となる目標経路に関する情報とに基づき駆動輪11を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を実施してもよい。
【0022】
車輪支持部13は、
図2に示すように、水平姿勢で完成車両1の前輪2の前後方向一方側を支持可能でかつ前後方向にスライド可能な第一支持バー24と、水平姿勢で前輪2の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バー25と、第一支持バー24に入力されたスライド力を第二支持バー25の鉛直軸線まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能な第一リンク機構26とを有する。本実施形態では、車輪支持部13は、スライド力を第二支持バー25の水平軸線まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能な第二リンク機構27と、第二支持バー25が前輪2の支持位置にある状態で、第二支持バー25の他端部を車両搬送装置10の一部(ここでは連結部17)に対してロック可能とするロック機構28、及びロック機構28により第二支持バー25が車両搬送装置10の一部に対してロックされた状態を解除可能なロック解除機構29とを有する。なお、本実施形態では、前後方向一方側を前方側、前後方向他方側を後方側として、以下の説明を行う。
【0023】
第一支持バー24は、水平姿勢で完成車両1の前輪2の前方側(ここでは下部前方側)を支持可能な第一支持面24aを有するもので、
図2に示すように、その長手方向を車両搬送装置10の幅方向に一致させた状態で配設される。本実施形態では、第一支持面24aは円筒形状をなす。そのため、支持対象となる前輪2とは線接触もしくは線接触に近い面接触の状態で支持可能とされる。また、本実施形態では、第一支持バー24は、連結部17に対して前後方向にスライド可能に設けられている。ここで、第一支持バー24は、第一付勢部材30により後方側(
図3では右下方向)に付勢された状態にある。そのため、前輪2と接触していない状態では、第一支持バー24は、前後方向のスライド可能範囲のうち最も後方側に位置している。
【0024】
第二支持バー25は、水平姿勢で前輪2の後方側(ここでは下部後方側)を支持可能な第二支持面25aを有するもので、
図4に示すように、第一支持バー24と平行となる位置で前輪2を支持可能に配設される。本実施形態では、第二支持面25aは円筒形状をなす。そのため、支持対象となる前輪2とは線接触もしくは線接触に近い面接触の状態で支持可能とされる。
【0025】
第二支持バー25はその一端側を基点として鉛直軸線X1まわりに旋回可能に構成されている。この場合、第一支持バー24と平行になる姿勢、すなわち前輪2を支持する際の姿勢(
図4中、実線で示す姿勢)から、前後方向に沿った向きの姿勢(
図4中、二点鎖線で示す姿勢)までの間で、第二支持バー25が旋回可能なように、第二支持バー25の鉛直軸旋回が可能な範囲を設定するのがよい。具体的には、図示しない規制部材等によって第二支持バー25の旋回動作を規制することによって上述した鉛直軸旋回が可能な範囲を設定するのがよい。もちろん、前輪2の支持位置に対して90°を超える範囲まで第二支持バー25を旋回可能としてもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、車両搬送装置10の幅方向外側を基点として第二支持バー25を鉛直軸線X1まわりに旋回可能としているが(
図1及び
図4を参照)、もちろんこれには限られない。図示は省略するが、車両搬送装置10の幅方向中央側を基点として第二支持バー25を鉛直軸線X1まわりに旋回可能としてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、第二支持バー25は、鉛直軸線X1まわりに旋回可能とされると共に、第一水平軸線X2まわりに旋回可能に構成されている(
図2等を参照)。ここでいう第一水平軸線X2が本発明に係る水平軸線に相当する。この場合、鉛直上方を向いた姿勢(
図2及び
図5の実線で示す姿勢)から、車体前後方向に沿った向きとなる姿勢(
図5の二点鎖線で示す姿勢)までの間で、第二支持バー25が旋回可能なように、第二支持バー25の水平軸旋回が可能な範囲を設定するのがよい。具体的には、図示しない規制部材等によって第二支持バー25の旋回動作を規制することによって上述した水平軸旋回が可能な範囲を設定するのがよい。
【0028】
第一リンク機構26は、第一支持バー24と第二支持バー25とを連結して、第一支持バー24に入力されたスライド力を第二支持バー25の鉛直軸線X1まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能に構成される。本実施形態では、第一リンク機構26は、第一支持バー24の前方側(
図3の右上側)へのスライドに伴い第一支持バー24と係合しかつ係合した状態で第一支持バー24と共にスライド可能な第一スライド部材31と、一端側が第一スライド部材31と連結される第一連結バー32と、第一連結バー32の他端側及び第二支持バー25の一端側と連結され所定の鉛直軸線X1まわりに軸回転可能な第一軸回転部材33とで構成される。
【0029】
このうち、第一連結バー32と第一軸回転部材33との連結点P1は、第一軸回転部材33の回転軸線となる鉛直軸線X1から径方向にオフセットしている(
図4を参照)。そのため、第一スライド部材31のスライド動作に連動して第一連結バー32が長手方向に移動することで、第一軸回転部材33に鉛直軸線X1から連結点P1までの最短距離を腕の長さとするトルクが作用し、第一軸回転部材33が鉛直軸線X1まわりに軸回転可能とされる(
図4を参照)。ここで第一軸回転部材33には、第二支持バー25の中心軸線が常に鉛直軸線X1と交差又は一致するように第二支持バー25の一端部が連結されており、第一軸回転部材33の回転量(回転角)に応じて第二支持バー25が旋回するようになっている。
【0030】
この場合、第一支持バー24に所定のスライド力が入力され、第一スライド部材31が第一支持バー24と当接することで、第一スライド部材31が第一支持バー24と共にスライド動作を開始する。このスライド力は、車両搬送装置10の駆動輪11を回転駆動して車両搬送装置10を後方側に移動させて、第一支持バー24を前輪2に押し当てることで入力され得る。
【0031】
第二リンク機構27は、第一リンク機構26と同じく第一支持バー24と第二支持バー25とを連結して、第一支持バー24に入力されたスライド力を第二支持バー25の第一水平軸線X2まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能に構成される。本実施形態では、第二リンク機構27は、第一支持バー24の前方側(
図3の右上側)へのスライドに伴い第一支持バー24と係合しかつ係合した状態で第一支持バー24と共にスライド可能な第二スライド部材34と、一端側が第二スライド部材34と連結される第二連結バー35と、第二連結バー35の他端側及び第二支持バー25の一端側と連結され所定の水平軸線(第二水平軸線X3)まわりに軸回転可能な第二軸回転部材36とで構成される。
【0032】
このうち、第二軸回転部材36はクランク形状をなしており、屈曲部36aを通る第二水平軸線X3まわりに軸回転可能とされている。また、一端部36bに第二連結バー35が軸支により連結され、他端部36cに第二支持バー25が軸支により連結されている。そのため、第二スライド部材34のスライド動作に連動して第二連結バー35が長手方向に移動することで、第二水平軸線X3から第二連結バー35と第二軸回転部材36(一端部36b)との連結点までの最短距離を腕の長さとするトルクが第二軸回転部材36に作用し、第二軸回転部材36が第二水平軸線X3まわりに軸回転可能とされる(
図5を参照)。ここで第二支持バー25の一端部は第一軸回転部材33に軸支により連結されると共に、第二支持バー25の第一軸回転部材33との連結部分(軸支される部分)よりも他端側に離れた位置で、第二支持バー25と第二軸回転部材36の他端部36cとが支持軸37を介して連結されている。また、第二軸回転部材36の支持軸37は、第二支持バー25の長手方向に形成された長穴25bに沿って移動可能とされている。よって、上述のように第二軸回転部材36が第二水平軸線X3まわりに軸回転することで、第二支持バー25がその一端部を基点として第一水平軸線X2まわりに旋回可能とされている(
図5を参照)。なお、この支持軸37は、長穴25bから退避可能に構成されている。そのため、第二支持バー25が鉛直軸線X1まわりに旋回した際、支持軸37は第二支持バー25の長穴25bから引き抜かれて第二軸回転部材36側に残るようになっている(
図4を参照)。
【0033】
この場合、第一支持バー24に所定のスライド力が入力され、第二スライド部材34が第一支持バー24と当接することで、第二スライド部材34が第一支持バー24と共にスライド動作を開始する。このスライド力は、車両搬送装置10の駆動輪11を回転駆動して車両搬送装置10を後方側に移動させて、第一支持バー24を前輪2に押し当てることで入力され得る。
【0034】
本実施形態では、第二スライド部材34が、第一スライド部材31よりも後方側に配置されている(
図3を参照)。そのため、第一支持バー24が前輪2に押し当てられて前方側にスライドを開始した場合、先に第一支持バー24が第二スライド部材34に当接し、第一支持バー24と第二スライド部材34がともに前方側にスライドすることで、第二連結バー35及び第二軸回転部材36が連動して第二支持バー25が第一水平軸線X2まわりに旋回して直立姿勢から第一水平姿勢(後方側を向いた状態)となり、かつそのまま第一支持バー24のスライドを継続することで、第一リンク機構26(第一スライド部材31、第一連結バー32、第一軸回転部材33)が作動して、第二支持バー25が鉛直軸線X1まわりに旋回して第一水平姿勢から第二水平姿勢(第一支持バー24と平行な状態)に移行するようになっている。
【0035】
ロック機構28は、第二支持バー25が前輪2の支持位置にある状態、すなわち第一支持バー24と平行な姿勢にある状態で、第二支持バー25の他端部を車両搬送装置10の一部、ここでは連結部17に対してロック可能に構成される。本実施形態では、ロック機構28は、
図6に示すように、一端側を基点として回動可能に設けられ先端側に切欠き部38を有する回動部材39と、第二支持バー25の先端部に設けられ切欠き部38に係合可能な係合ピン40と、回動部材39を所定の回動方向に付勢する第二付勢部材41とで構成されている。
【0036】
この場合、回動部材39は、連結部17に設けられた水平軸42まわりに回動可能とされる。第二付勢部材41は、例えば引張ばねで、回動部材39の一端側(基端側)を引き上げ、切欠き部38が設けられる他端側を押し下げる回動方向に回動部材39を付勢している。本実施形態では、
図6にある状態から回動部材39の下方への回動動作(
図6でいえば時計回りの回動)が規制部材43により規制されている。また、この規制位置において、第二支持バー25が第一水平姿勢から第二水平姿勢となるべく回動部材39に向けて旋回動作を行った場合、第二支持バー25の先端に設けた係合ピン40が切欠き部38の凹部38aと先端側で隣り合う凸部38bと当接するようになっている。
【0037】
ロック解除機構29は、例えば、第一支持バー24に入力されたスライド力を、回動部材39と係合ピン40との係合状態が解除される向きに回動部材39を回動させる力に変換して伝達可能な第三リンク機構で構成される。本実施形態では、第三リンク機構は、第一支持バー24と同期してスライド可能な第三スライド部材44と、第三スライド部材44に固定され、第三スライド部材44の後方側へのスライド動作により回動部材39の一端側を押込み可能な押込み部材45とで構成される。この場合、押込み部材45による回動部材39の押込みにより、回動部材39と係合ピン40との係合状態が解消される位置(位相)まで回動部材39を押込めるように、第一支持バー24の後方側へのスライド可能な範囲が設定されていればよい。あるいは、第三スライド部材44に固定される押込み部材45の形態ないしサイズが設定されていればよい。
【0038】
次に、上記構成の車両搬送装置10を用いた完成車両1の搬送方法の一例を、完成車両1の搭載及び降載動作を中心に説明する。
【0039】
まず、制御部19は、図示しない統括制御部から、車両搬送装置10が次になすべきことに関する指令を受け、受けた指令に基づいて車両搬送装置10の動作を制御する。例えば車両搬送装置10がコンテナヤードと工場との間に位置する空の状態(完成車両1を搭載していない状態)の場合、制御部19は、統括制御部から工場に向けて移動する指令を受けて、工場に向けて移動を開始する制御を行う。あるいは、車両搬送装置10が工場の敷地内に位置する場合、制御部19は、統括制御部から搬送対象となる完成車両1を搭載可能な位置に向けて移動する指令を受けて、上記搭載可能な位置に向けて移動を開始する制御を行う。然る後、制御部19は、統括制御部からの指令を受けて、又は制御部19自体が有するプログラムに基づいて、完成車両1の搭載動作を実施しかつ当該動作を制御する。
【0040】
ここで、完成車両1の搭載工程は、
図7(a)に示すように、完成車両1の前輪2を車両搬送装置10の車輪支持部13で支持する車輪支持工程S1と、支持した前輪2をリフトアップするリフトアップ工程S2とを備える。
【0041】
このうち、車輪支持工程S1は、
図7(b)に示すように、前輪2を支持可能なスペースS(
図1を参照)に導入する車輪導入ステップS11と、第二支持バー25を水平軸線(ここでは第一水平軸線X2)まわりに旋回させる第一旋回ステップS12と、第二支持バー25を鉛直軸線X1まわりに旋回させる第二旋回ステップS13と、第二支持バー25を車両搬送装置10の一部にロックするロックステップS14とを備える。以下、各ステップS11~S14の詳細を時系列順に説明する。
【0042】
(S1)車輪支持工程
(S11)車輪導入ステップ
本ステップS11では、車輪支持部13に設けた前輪2を支持するためのスペース(以下、支持可能スペースSと称する。)に前輪2を導入する。本実施形態では、まず車両搬送装置10が搬送対象となる完成車両1の前輪2の前方所定位置まで移動した後、後方側に移動することで、停止状態にある完成車両1の前輪2を支持可能スペースSに導入する。この際、第一支持バー24はスライド可能範囲の最も後方側に位置している。また、第二支持バー25は直立姿勢にある(何れも
図2を参照)。なお、この際、車両搬送装置10に設けた昇降駆動部14(
図1を参照)により車輪支持部13を走行時高さから支持高さまで下降させておくのがよい。
【0043】
(S12)第一旋回ステップ
本ステップS12では、第二リンク機構27の作動により、第二支持バー25を第一水平軸線X2まわりに旋回させる。具体的には、制御部19により車両搬送装置10の駆動輪11を駆動させて、車両搬送装置10を後方側に移動させることで、既に支持可能スペースSに導入した状態の前輪2に第一支持バー24を押し当てる。そして、前輪2に第一支持バー24を押し当てた後も引き続き車両搬送装置10の後方側への移動を継続することで、接地状態の前輪2に押し込まれる形で第一支持バー24が連結部17に対して前方側にスライド動作を開始する。
【0044】
そして、第一支持バー24が、第一スライド部材31よりも車両搬送装置10の後方側に位置する第二スライド部材34に当接し、第一支持バー24と第二スライド部材34がともに前方側にスライドすることで、第二リンク機構27の第二連結バー35及び第二軸回転部材36が上述の如く連動して、第二支持バー25が第一水平軸線X2まわりの旋回を開始する。この旋回動作は、例えば第一支持バー24と第二スライド部材34との連動状態が解消されることにより、第二支持バー25が直立姿勢から第一水平姿勢(後方側を向いた状態)に至った時点で終了する(
図5及び
図9を参照)。
【0045】
(S13)第二旋回ステップ
本ステップS13では、第一リンク機構26の作動により、第二支持バー25を鉛直軸線X1まわりに旋回させる。具体的には、
図9に示す状態から、さらに車両搬送装置10を後方側に移動させて、第一支持バー24を前方側にスライドさせることで、第二スライド部材34よりも車両搬送装置10の前方側に位置する第一スライド部材31に第一支持バー24が当接する。そして、第一支持バー24と第二スライド部材34がともに前方側にスライドすることで、第一リンク機構26の第一連結バー32及び第一軸回転部材33が上述の如く連動して、第二支持バー25が鉛直軸線X1まわりの旋回を開始する。これにより、第二支持バー25が第一水平姿勢(後方側を向いた状態)から第二水平姿勢(第一支持バー24と平行な状態)にまで移動し、前輪2の後方側と当接した状態となる(
図4を参照)。
【0046】
(S14)ロックステップ
本ステップS14では、ロック機構28により第二支持バー25を連結部17に対してロックする。本実施形態では、第二水平姿勢となる位置まで第二支持バー25を旋回させることにより、第二支持バー25の他端に設けた係合ピン40が、切欠き部38の凹部38aと先端側で隣り合う凸部38b(
図3を参照)と当接した後、第二付勢部材41の付勢力に抗して係合ピン40が凸部38bを押し上げて、凹部38aに侵入する。係合ピン40が凹部38aにまで到達すると、係合ピン40による押し上げ力は消失するので、第二付勢部材41の付勢力により再び回動部材39がその先端側を下方に向けて回動し、凸部38bが押し上げ前の位置に復帰する(
図6を参照)。これにより、係合ピン40が切欠き部38に係合した状態となり、これをもって第二支持バー25が回動部材39及び水平軸42を介して連結部17にロックされた状態となる。
【0047】
(S2)リフトアップ工程
以上のようにして第二支持バー25を第二水平姿勢で連結部17にロックした後、昇降駆動部14により車輪支持部13を上昇させる。これにより、第一及び第二支持バー24,25により下部を支持された状態の前輪2をリフトアップする。仮に、ロックステップS14の終了時点で、第二支持バー25と前輪2との間にわずかな隙間が存在して非接触の状態であったとしても、昇降駆動部14により車輪支持部13を上昇させることで、第一支持バー24と第二支持バー25が前輪2に対して上昇するので、第二支持バー25が前輪2の後方側と当接し、第一支持バー24とで前輪2を支持した状態でリフトアップし得る。ここで、完成車両1の後輪3は地面と接した状態であるから、前輪2のリフトアップにより、完成車両1の前方側のみが車両搬送装置10に搭載された状態となる(
図10を参照)。また、上記リフトアップの際、車輪支持部13を走行時高さまで上昇させることで、リフトアップ後、直ちに完成車両1の搬送を開始することが可能となる。
【0048】
次に、完成車両1の降載動作を説明する。
【0049】
上述のようにして完成車両1を車両搬送装置10に搭載して目的地まで完成車両1を搬送した後、完成車両1を車両搬送装置10から降ろす(降載する)。この降載動作は、搭載動作時と同じく、制御部19が、統括制御部からの指令を受けて、又は制御部19自体が有するプログラムに基づいて実施しかつ制御され得る。
【0050】
ここで、完成車両1の降載工程は、
図8(a)に示すように、支持した前輪2をリフトダウンするリフトダウン工程S3と、車輪支持部13による前輪2の支持状態を解除する支持解除工程S4と、前輪2を車輪支持部13の支持可能スペースSから退避させる退避工程S5とを備える。
【0051】
(S3)リフトダウン工程
本工程S3では、車輪支持部13で支持した状態の前輪2をリフトダウンする。リフトダウン動作の開始時、車輪支持部13は地面から走行時高さだけ鉛直上方に離れた位置にある。よって、走行時高さから支持高さを減じた値だけ車輪支持部13を下降させる。これにより前輪2は引き続き第一支持バー24と第二支持バー25とで支持された状態で地面に接した状態となる。
【0052】
(S4)支持解除工程
(S41)ロック解除ステップ
本ステップS41では、第二支持バー25のロック状態を解除する。本実施形態では、
図6に示すように、ロック機構28をなす回動部材39の切欠き部38に第二支持バー25先端の係合ピン40が係合した状態を解消することにより、第二支持バー25のロック状態を解除する。具体的には、車両搬送装置10を前方側に移動させることで、前輪2による第一支持バー24の前方側への押込み状態が解消される。これにより、第一支持バー24に付与されていた前方側へのスライド力が消失するので、第一付勢部材30による付勢力で、第一支持バー24は後方側へのスライドを開始する。ここで第一支持バー24にはその後方側で第三スライド部材44と係合可能とされており(
図2を参照)、第一支持バー24の後方側へのスライド動作に同期して第三スライド部材44も後方側へのスライドを開始する。これにより、第三スライド部材44に固定された押込み部材45が後方側に移動し、回動部材39の一端側を押込む(
図11を参照)。これにより、回動部材39はその一端側を押し下げ、切欠き部38が設けられる他端側を押し上げる向き(
図11中、二点鎖線で示す状態から実線で示す状態)に回動し、切欠き部38が上方に移動することで、切欠き部38と係合ピン40との係合状態が解消される。これにより、第二支持バー25の連結部17に対するロック状態が解除される。
【0053】
(S42)第三旋回ステップ
本ステップS42では、ロック状態が解除された第二支持バー25を前輪2が支持可能スペースSから退避可能な位置まで旋回させる。具体的には、上述のように第一支持バー24が後方側へのスライドを開始することで、第一支持バー24と連結された第一スライド部材31が同期して後方側へのスライドを開始する。これにより、第一リンク機構26の第一連結バー32と第一軸回転部材33とが第二旋回ステップS13のときと反対の向きに連動し、結果、第二支持バー25が第二水平姿勢(
図4に示す状態)から第一水平姿勢(
図9に示す状態)にまで鉛直軸線X1まわりに旋回する。これにより第二支持バー25が前輪2から離れるので、第一支持バー24と第二支持バー25による前輪2の支持状態が解除される。
【0054】
(S43)第四旋回ステップ
本実施形態では、第一スライド部材31の後方側に第二スライド部材34が配設されている。そのため、上述のように第一支持バー24が第一スライド部材31とともに後方側にスライドして第二支持バー25が第一水平姿勢に至った時点で、第一支持バー24と第二スライド部材34とが当接し、第二スライド部材34が第一支持バー24とともに後方側へのスライドを開始する。これにより、第二リンク機構27の第二連結バー35と第二軸回転部材36とが第一旋回ステップS12のときと反対の向きに連動し、結果、第二支持バー25が第一水平姿勢(
図9に示す状態)から直立姿勢(
図5の実線で示す状態)にまで第一水平軸線X2まわりに旋回する。
【0055】
(S5)退避工程
本工程S5では、前輪2を車輪支持部13の支持可能スペースSから退避させる。具体的には、直前の第三旋回ステップS42又は第四旋回ステップS43で、前輪2の後方側に位置する第二支持バー25が開いた位置まで旋回移動しているので、車両搬送装置10を前進させることで、第二支持バー25の旋回により開いた部分から前輪2が退避し得る。これにより、完成車両1の降載動作が完了する。然る後、詳細な説明は割愛するが、車輪支持部13を昇降駆動部14により走行時高さまで上昇させることで、次の搬送作業に向けて車両搬送装置10を移動可能な状態とし得る。
【0056】
以上述べたように、本実施形態に係る車両搬送装置10によれば、駆動輪11を駆動させて車両搬送装置10を移動させて、第一支持バー24に前方側へのスライド力を付与することにより、第一支持バー24で前輪2を支持した状態としながら、第二支持バー25を前輪2の支持位置に移動させることができる。よって、各支持バー24,25に専用のアクチュエータを設けずとも、駆動輪11の駆動装置(回転駆動部12)を利用して、双方の支持バー24,25で接地状態の前輪2を前後から支持することが可能となる。従って、車輪支持部13を大型化させずに済む。また、各支持バー24,25の駆動を制御するための装置も必要ないため、アクチュエータや制御装置の追加によるコストアップの心配もない。以上より、本実施形態に係る車両搬送装置10によれば、車輪支持部13の大型化を避けつつも搬送対象となる完成車両1の前輪2を支持してリフトアップ可能な車両搬送装置10を低コストに提供することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、第二支持バー25をその一端側を基点として第一水平軸線X2まわりに旋回可能に構成すると共に、第一支持バー24と第二支持バー25とを連結し、第一支持バー24に入力される前方側へのスライド力を第二支持バー25の第一水平軸線X2まわりの旋回力に変換して第二支持バー25に伝達可能な第二リンク機構27を設けるようにした。このように第二リンク機構27を設けることで、第一支持バー24と前輪2とが当接していない状態では第二支持バー25を直立姿勢とすることができる。よって、搬送対象となる完成車両1を搭載していない状態では、第二支持バー25を直立姿勢にした状態で車両搬送装置10を走行させることができる。そのため、第二支持バー25が後方側を向いた状態で走行した際に第二支持バー25が周辺の物体と干渉する事態を確実に回避して、安全に走行することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、第二リンク機構27の第二スライド部材34を第一リンク機構26の第一スライド部材31よりも後方側に配置して、第一支持バー24の前方側へのスライド時、第一スライド部材31よりも先に第二スライド部材34が第一支持バー24と共に前方側へのスライドを開始して、第二リンク機構27が作動するようにした。このように第二リンク機構27を構成することで、前輪2の搭載時には、まず第二支持バー25を第一水平軸線X2まわりに旋回させて、直立姿勢から第一水平姿勢となるように第二支持バー25を倒した後、第二支持バー25を鉛直軸線X1まわりに旋回させて第一支持バー24と平行となる姿勢(第二水平姿勢)まで移動させることができる。よって、第一支持バー24を前輪2に押当てて車両搬送装置10の前方側にスライドさせるだけの動作で、第二支持バー25の第一水平軸線X2まわりの旋回動作と鉛直軸線X1まわりの旋回動作を連続的にかつ自動で実施することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る車両搬送装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0060】
例えば上記実施形態では、ロック解除機構29を、第一支持バー24に入力されたスライド力を、回動部材39と係合ピン40との係合状態が解除される向きに回動部材39を回動させる力に変換して伝達可能な第三リンク機構(第三スライド部材44、押込み部材45)で構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成をとることも可能である。例えば図示は省略するが、ロック解除機構29を、押込み部材45と、押込み部材45を押込み方向に駆動する駆動装置とで構成し、昇降駆動部14により前輪2が接地する位置まで第一支持バー24又は第二支持バー25が下降したことをセンサで検知した場合、駆動装置を駆動し、押込み部材45を押込み方向に駆動させてもよい。これにより、ロック状態で前輪2が第二支持バー25を後方側に押し込む事態を確実に回避して、円滑に第二支持バー25を第二水平姿勢から第一水平姿勢まで旋回させることが可能となる。
【0061】
また、第一リンク機構26と第二リンク機構27は上記例示の形態には限定されない。第一支持バー24の前方側へのスライド力を鉛直軸線X1まわりの旋回力、又は第一水平軸線X2まわりの旋回力に変換して伝達可能な限りにおいて、各リンク機構26,27の構成は任意である。
【0062】
また、以上の説明では、完成車両1の前輪2を車輪支持部13で支持してリフトアップする場合を例示したが、もちろんこれには限られない。図示は省略するが、完成車両1の後輪3(
図10を参照)を車輪支持部13で支持してリフトアップすることにより完成車両1を車両搬送装置10に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 完成車両
2 前輪
3 後輪
10 車両搬送装置
11 駆動輪
11a タイヤ
12 回転駆動部
13 車輪支持部
14 昇降駆動部
15 ハウジング
16 バッテリ
17 連結部
18 受信部
19 制御部
20 回転軸
21,22 回転駆動部
23 立設部
24 第一支持バー
24a 第一支持面
25 第二支持バー
25a 第二支持面
25b 長穴
26 第一リンク機構
27 第二リンク機構
28 ロック機構
29 ロック解除機構
30 第一付勢部材
31 第一スライド部材
32 第一連結バー
33 第一軸回転部材
34 第二スライド部材
35 第二連結バー
36 第二軸回転部材
36a 屈曲部
36b 一端部
36c 他端部
37 支持軸
38 切欠き部
39 回動部材
40 係合ピン
41 第二付勢部材
42 水平軸
43 規制部材
44 第三スライド部材
45 押込み部材
P1 連結点
S 支持可能スペース
X1 鉛直軸線
X2 第一水平軸線
X3 第二水平軸線