(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157326
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
B60P 3/07 20060101AFI20241030BHJP
E04H 6/34 20060101ALI20241030BHJP
B60S 13/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B60P3/07 Z
E04H6/34
B60S13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071624
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(71)【出願人】
【識別番号】502050648
【氏名又は名称】株式会社池戸熔接製作所
(71)【出願人】
【識別番号】520112737
【氏名又は名称】株式会社ブルーヘイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】魚住 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 徹
(72)【発明者】
【氏名】茨木 稔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一
(72)【発明者】
【氏名】池戸 孝治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎一
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA02
3D026EA20
3D026EA22
(57)【要約】
【課題】操舵機構と昇降機構とをコンパクトにすることで、装置全体の小型化を図り、これにより移動自由度の高い車両搬送装置を提供可能とする。
【解決手段】車両搬送装置10は、操舵及び軸回転可能な操舵輪11と、操舵輪11を操舵可能とする操舵機構12と、搬送対象となる車両1の車輪2を支持する車輪支持部13と、車輪支持部13を操舵輪11に対して昇降可能とする昇降機構14とを備える。操舵機構12は、操舵駆動部25と、操舵輪11に連結され操舵駆動部25からの駆動力を受けて軸回転可能な操舵用シャフト部24とを有し、昇降機構14は、昇降駆動部27と、操舵用シャフト部24と同軸に配設されると共に操舵用シャフト部24を介して操舵輪11に接続され、昇降駆動部27からの駆動力を受けて軸方向に伸縮可能な昇降用シャフト部26とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵及び軸回転可能な操舵輪と、前記操舵輪を操舵可能とする操舵機構と、搬送対象となる車両の車輪を支持する車輪支持部と、前記車輪支持部を前記操舵輪に対して昇降可能とする昇降機構とを備えた車両搬送装置であって、
前記操舵機構は、操舵駆動部と、前記操舵輪に連結され前記操舵駆動部からの駆動力を受けて軸回転可能な操舵用シャフト部とを有し、
前記昇降機構は、昇降駆動部と、前記操舵用シャフト部と同軸に配設されると共に前記操舵用シャフト部を介して前記操舵輪に接続され、前記昇降駆動部からの駆動力を受けて軸方向に伸縮可能な昇降用シャフト部とを有する、車両搬送装置。
【請求項2】
前記昇降用シャフト部は、前記昇降駆動部からの回転駆動力を受けて軸回転可能な第一昇降用シャフト部と、前記操舵用シャフト部に対し軸方向移動が規制されかつ軸回転可能に支持される第二昇降用シャフト部と、前記第一昇降用シャフト部と前記第二昇降用シャフト部との間に配設される送りねじ機構とを有し、
前記送りねじ機構は、前記第一昇降用シャフト部の軸回転を前記第二昇降用シャフト部の前記第一昇降用シャフト部に対する軸方向移動に変換して伝達可能に構成されている請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項3】
前記操舵用シャフト部は、前記操舵輪と連結される第一操舵用シャフト部と、前記第一操舵用シャフト部に対し軸回転が規制されかつ軸方向移動可能に支持される第二操舵用シャフト部と、前記第一操舵用シャフト部と前記第二操舵用シャフト部との間に配設される付勢部材とを有し、
前記付勢部材は、前記第一操舵用シャフト部が前記第二操舵用シャフト部から軸方向に遠ざかる向きに前記第一操舵用シャフト部を付勢可能に構成されている請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項4】
前記操舵用シャフト部と前記昇降用シャフト部は何れも中空状をなし、
前記何れか一方のシャフト部の外周に他方のシャフト部が配設されている請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項5】
前記操舵輪は軸回転駆動部を内蔵する駆動輪であって、前記車両搬送装置の幅方向両側に、各二個の前記駆動輪が前後方向に並んで配設される請求項1~4の何れか一項に記載の車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場で量産された自動車などの完成車両を出荷地など所定の場所まで効率よく輸送するための手段として、コンテナなどの積載容器に複数台の完成車両を積載した状態で、当該積載容器を大型トラックなどの輸送車両で目的地近傍の港まで陸上輸送し、然る後、積載容器を輸送用船舶に積み替えて目的地まで水上輸送を行う方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、牽引車両の無人自動運転により複数の台車を牽引して限定されたエリア内における所定の走行ルート上を走行する形式の搬送移動車両が、搬送対象である完成車両を台車上に搭載した状態で目的地まで搬送するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-123258号公報
【特許文献2】特開2019-36036号公報
【特許文献3】特開2019-78099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製造業界においても、来る高齢化社会に向けて、人手不足を補うための対策を講じる必要性が益々高まってきている。このような観点から少人数で効率よく完成車両の輸送を行うことを検討した場合、例えば搬送車を特許文献2に記載のように自走式とし、かつ搬送車を低コストで製作して多数の搬送車を準備することで、完成車両を一台ずつ搬送車に搭載して自動搬送する方法が考えられる。
【0006】
ここで、特許文献3には、車両を搭載して搬送するためのリフト搬送台車が開示されている。この搬送台車は、タイヤの接地部の前後両側にそれぞれ当接してタイヤを支持する一対のアーム部と、各アーム部を支持する台車フレームと、台車フレームに連結されて操舵可能なタイヤを有する台車本体と、台車フレームの基端部を昇降自在とする基端昇降部とを備えたリフト搬送台車が開示されている。この場合、基端昇降部は、台車フレームを昇降駆動する基端部昇降シリンダを有する。
【0007】
特許文献3に記載のリフト搬送台車だと、アーム部を昇降するための機構(基端昇降部)と、台車本体の駆動及び操舵のための機構(タイヤの操舵機構)とを別個に設けることになる。例えば工場の敷地内に搬送対象となる複数の完成車両が整列配置されている状態を想定した場合、できる限りコンパクトでかつ小回りが利くことが望ましい。しかしながら、上述のように、操舵機構と昇降機構を別個に設けたのでは、搬送車をコンパクトにすることは難しい。また、完成車両の昇降にシリンダを用いる場合、油圧シリンダなど出力の大きなシリンダが必要となるため、駆動部(シリンダ)が大型化し、この点においても搬送車をコンパクトにすることは難しい。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、操舵機構と昇降機構とをコンパクトにすることで、装置全体の小型化を図り、これにより移動自由度の高い車両搬送装置を提供可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る車両搬送装置によって達成される。すなわち、この搬送装置は、操舵及び軸回転可能な操舵輪と、操舵輪を操舵可能とする操舵機構と、搬送対象となる車両の車輪を支持する車輪支持部と、車輪支持部を操舵輪に対して昇降可能とする昇降機構とを備えた車両搬送装置であって、操舵機構は、操舵駆動部と、操舵輪に連結され操舵駆動部からの駆動力を受けて軸回転可能な操舵用シャフト部とを有し、昇降機構は、昇降駆動部と、操舵用シャフト部と同軸に配設されると共に操舵用シャフト部を介して操舵輪に接続され、昇降駆動部からの駆動力を受けて軸方向に伸縮可能な昇降用シャフト部とを有する点をもって特徴付けられる。
【0010】
上記構成に係る車両搬送装置によれば、操舵輪の操舵に必要な動力を操舵輪に伝達するための機構をなす操舵用シャフト部と、車輪支持部の昇降に必要な動力を操舵輪に伝達するための機構をなす昇降用シャフト部とを共通の場所に配置することができる。これにより、操舵機構と昇降機構の少なくとも動力伝達部をまとめてコンパクトにできるので、従来の機構よりも車両搬送装置を小型化することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る車両搬送装置において、昇降用シャフト部は、昇降駆動部からの回転駆動力を受けて軸回転可能な第一昇降用シャフト部と、操舵用シャフト部に対し軸方向移動が規制されかつ軸回転可能に支持される第二昇降用シャフト部と、第一昇降用シャフト部と第二昇降用シャフト部との間に配設される送りねじ機構とを有し、送りねじ機構は、第一昇降用シャフト部の軸回転を第二昇降用シャフト部の第一昇降用シャフト部に対する軸方向移動に変換して伝達可能に構成されてもよい。
【0012】
このように昇降用シャフト部を構成することによって、例えばモータ等の駆動装置で第二昇降用シャフト部を軸方向に移動させることができる。この場合、送りねじ機構によりモータの回転量を第二昇降用シャフト部の軸方向移動量に正確に変換して伝達できるので、車輪支持部の高精度な高さ方向の位置決めを行うことができる。また、送りねじ機構を用いた動力伝達構造であれば、車両の如き重量物であっても支持することができるので、油圧シリンダの如き駆動装置は不要となり(モータで足り)、昇降機構を簡素化できる。もちろん、送りねじ機構自体も単純な構造であるから、これによっても昇降機構の簡素化ひいては小型化を図ることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る車両搬送装置において、操舵用シャフト部は、操舵輪と連結される第一操舵用シャフト部と、第一操舵用シャフト部に対し軸回転が規制されかつ軸方向移動可能に支持される第二操舵用シャフト部と、第一操舵用シャフト部と第二操舵用シャフト部との間に配設される付勢部材とを有し、付勢部材は、第一操舵用シャフト部が第二操舵用シャフト部から軸方向に遠ざかる向きに第一操舵用シャフト部を付勢可能に構成されてもよい。
【0014】
このように操舵用シャフト部を構成することによって、走行時に操舵輪が地面から受ける振動に応じて瞬時に操舵輪を上下動することで振動を吸収できる。また、操舵輪と連結される第一操舵用シャフト部を伸長する向きに、すなわち接地状態においては地面に向けて付勢することができる。これにより、操舵輪にリバウンドストロークを持たせつつ常に接地状態とすることができるので、路面状態に関係なく安定した接地状態ひいては走行状態を確保することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る車両搬送装置において、操舵用シャフト部と昇降用シャフト部は何れも中空状をなし、何れか一方のシャフト部の外周に他方のシャフト部が配設されてもよい。
【0016】
上述のように操舵用と昇降用何れのシャフト部についても中空状とすることによって、内側に位置するシャフト部の内周を、例えば操舵輪側に接続する配線の通り道として利用することができる。よって、操舵輪の側に電力の供給が必要な場合であっても、操舵機構をコンパクトに維持しつつ電力を操舵輪の側に供給することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る車両搬送装置において、操舵輪は軸回転駆動部を内蔵する駆動輪であって、車両搬送装置の幅方向両側に、各二個の駆動輪が前後方向に並んで配設されてもよい。
【0018】
この種の車両搬送装置は、例えば、幅方向両側に装置本体を有し、幅方向中央側に搬送対象となる車両の一部(例えば前輪を含む車両の前方部分)を搭載可能な構造をなす。そのため、車両搬送装置の前後方向寸法に比べて幅方向寸法がどうしても大きくなり、幅方向寸法の縮小は難しい。この点、操舵輪にインホイールモータ等の軸回転駆動部を内蔵した形態とすることで操舵輪(駆動輪)の幅方向寸法を縮小することができる。また、この操舵輪を二つ用いることで車両搬送装置に必要なトルクを賄えるので、各操舵輪に用いる軸回転駆動部(モータなど)を小型化できる。加えて、これら二つの操舵輪を前後方向に並べて配置することによっても車両搬送装置の幅方向寸法を縮小することができる。
【0019】
以上のように、本発明によれば、操舵機構と昇降機構とをコンパクトにすることで、装置全体の小型化を図り、これにより移動自由度の高い車両搬送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す操舵用シャフト部と昇降用シャフト部の断面図で、昇降用シャフト部が収縮した状態を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す操舵用シャフト部と昇降用シャフト部の断面図で、昇降用シャフト部が伸長した状態を示す断面図である。
【
図6】完成車両の前輪をリフトアップした状態を示す車両搬送装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置の内容を図面に基づいて説明する。本実施形態では、前輪駆動車である完成車両の前輪を車両搬送装置に搭載し、完成車両の後輪を接地させた状態で完成車両を搬送する場合を例にとって、以下に詳細を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置10の全体構成を示している。この車両搬送装置10は、例えば工場で完成した完成車両1(後述する
図12を参照)を、車両待機場であるコンテナヤードに搬送するためのもので、二個又は二の倍数個の操舵輪11と、操舵輪11を操舵可能とする操舵機構12と、完成車両1の前後何れかの車輪を支持可能な一対の車輪支持部13と、操舵輪11に対して一対の車輪支持部13を昇降可能とする昇降機構14とを主に備える。
【0023】
本実施形態では、車両搬送装置10は、昇降機構14の一部(後述する昇降駆動部27)を収容する一対のハウジング15と、バッテリ16と、一対のハウジング15を連結する連結部17と、衛星測位システム(GNSS)の受信部18と、制御部19とをさらに備える。バッテリ16は連結部17に設けられると共に、車輪支持部13は、ハウジング15とバッテリ16との間であって、搭載すべき完成車両1の前輪2(
図6を参照)に対応した幅方向位置にそれぞれ設けられている。よって、この場合、車輪支持部13は、幅方向に離れた左右の操舵輪11の間に配設される。言い換えると、車輪支持部13は、操舵輪11と車体前後方向で重複する位置に配設される。なお、ここでいう幅方向とは、完成車両1を搭載した状態において車体前後方向に直交する向きを意味する。なお、本実施形態では、車両搬送装置10による搬送対象を完成車両1とした場合を例示したが、もちろんこれには限定されない。例えば量産される車両であって、軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない、言い換えると架装されていない状態の車両(架装前車両)などを搬送対象としてもよい。
【0024】
以下、最初に車両搬送装置10の基本構成について説明し、次いで操舵機構12と昇降機構14の詳細な構成について説明する。
【0025】
車輪支持部13は、完成車両1の前輪2を支持可能とするもので、本実施形態では、水平姿勢で完成車両1の前輪2の前後方向一方側を支持可能でかつ前後方向にスライド可能な第一支持バー20と、水平姿勢で前輪2の前後方向他方側を支持可能でかつ一端側を基点として鉛直軸線まわりに旋回可能な第二支持バー21とを有する。
【0026】
この場合、例えば第一支持バー20を車両搬送装置10の前方側(
図1の左上側)に配置しておくと共に、第二支持バー21を鉛直軸線まわりに旋回して、車両搬送装置10の後方側(
図1の右下側)を向く姿勢にしておく。そして、車両搬送装置10を完成車両1の前方側から接近させていき(車両搬送装置10を後退させていき)、二個の前輪2をそれぞれ車輪支持部13の支持スペースSに導入する。然る後、第二支持バー21を第一支持バー20と平行な姿勢となる位置まで旋回させると共に、第一支持バー20を後方側にスライドさせて前輪2に押し当てる。これにより、前輪2の前方側が第一支持バー20で支持されると共に、前輪2の後方側が第二支持バー21で支持(挟持)された状態となる。よって、この状態から昇降機構14を作動して、車輪支持部13を上昇させることにより、車輪支持部13の各支持バー20,21で支持された状態の前輪2がリフトアップされた状態となる(
図6を参照)。これにより、完成車両1の搭載が完了する。なお、本実施形態に係る車両搬送装置10では、完成車両1の前輪2のみをリフトアップ可能としていることから、前輪2のリフトアップにより、完成車両1の後輪3が地面と接した状態で、完成車両1の前方側のみが車両搬送装置10に搭載された状態となる(
図6を参照)。また、上記リフトアップの際、昇降機構14により車輪支持部13を走行時高さまで上昇させることで、リフトアップ後、直ちに完成車両1の搬送を開始することが可能となる。
【0027】
なお、上述した車輪支持部13の構成は一例に過ぎない。図示は省略するが、搬送対象となる車両の車輪をリフトアップ可能なように支持できる限りにおいて、車輪支持部13は任意の構成をとり得る。
【0028】
受信部18は、衛星測位システム用の複数の衛星(図示は省略)からの信号を受信可能に構成されている。そして、この受信した信号に基づいて所定の演算処理を実行することにより、受信時刻における完成車両1(の受信部18)の地球上の位置を取得可能としている。ここで、位置取得のための演算処理は、受信部18で実行してもよく、あるいは制御部19で実行してもよい。車両搬送装置10に対する受信部18の取付け位置は任意であり、例えば衛星測位システム用の衛星(測位衛星)との円滑な通信を考慮した場合、車両搬送装置10のなるべく高い位置に取付けるのがよい。本実施形態では、ハウジング15の上面から立設した立設部22の先端(上端)に受信部18が配設されている(
図1を参照)。
【0029】
制御部19は、操舵輪11の駆動を担う軸回転駆動部23及び操舵駆動部25を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を可能としている。なお、この際、図示は省略するが、車両搬送装置10の制御部19(端末制御部)は、例えば複数の車両搬送装置10の制御を担う統括制御部との間の通信を通じて、統括制御部からの指令を受けた際、当該指令と、受信部18を通じて衛星測位システムにより得られた車両搬送装置10の位置情報(位置データ)、及び車両搬送装置10に装着された各種センサにより取得した走行状態に関する情報(操舵角、速度、加速度データなど)、さらには自動走行の際の目標となる目標経路に関する情報とに基づき操舵輪11を制御することで、車両搬送装置10の操舵を伴う自動走行を実施してもよい。
【0030】
操舵輪11は車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とで少なくとも各1個配設される。本実施形態では、車両搬送装置10の幅方向一方側と他方側とに、それぞれ二個の操舵輪11が車体前後方向に並んで配設されている(
図1を参照)。各操舵輪11はタイヤを有し、それぞれ独立して回転可能に構成される。ここで、操舵輪11はその中心軸線まわりに回転可能に構成されると共に、中心軸線と直交する直交軸線まわりに回転可能に構成される。すなわち、車両搬送装置10の走行時、操舵輪11は、水平軸線まわりに回転駆動すると共に、鉛直軸線まわりに操舵輪11を所定の角度だけ軸回転させることにより、車両搬送装置10の旋回を可能としている。
【0031】
本実施形態では、各操舵輪11は何れも駆動輪であり、操舵輪11に中心軸線まわりの回転駆動力を付与可能な軸回転駆動部23を有する。ここで軸回転駆動部23にはインホイールモータなどホイール内に収容可能な小型のモータが適用され得る。
【0032】
操舵機構12は、上記構成の操舵輪11を操舵可能とするもので、操舵駆動部25と、操舵輪11に連結され操舵駆動部25からの駆動力を受けて軸回転可能な操舵用シャフト部24とを有する。
【0033】
操舵用シャフト部24は、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、操舵輪11と連結される第一操舵用シャフト部28と、第一操舵用シャフト部28に対し軸回転が規制されかつ軸方向移動可能に支持される第二操舵用シャフト部29と、第一操舵用シャフト部28と第二操舵用シャフト部29との間に配設される付勢部材30とを有する。この場合、第一操舵用シャフト部28と第二操舵用シャフト部29とがキー31を介して接続されることで、第一操舵用シャフト部28の第二操舵用シャフト部29に対する軸回転を規制し、かつキー31が嵌合されるキー溝32をキー31よりも軸方向に長く形成することで、第一操舵用シャフト部28の第二操舵用シャフト部29に対する軸方向移動を可能としている。
【0034】
本実施形態では、第二操舵用シャフト部29の外周に第三操舵用シャフト部33が配設されている。この第三操舵用シャフト部33はキー31を介して第二操舵用シャフト部29に接続されることで、第二操舵用シャフト部29の第三操舵用シャフト部33に対する軸回転を規制し、かつキー31が嵌合されるキー溝32をキー31よりも軸方向に長く形成することで、第二操舵用シャフト部29の第三操舵用シャフト部33に対する軸方向移動を可能としている。
【0035】
図4は、操舵駆動部25と操舵用シャフト部24との動力伝達構造を模式的に示している。同図に示すように、操舵駆動部25は例えばモータで、回転軸に出力部としての第一ギヤ34が連結されている。この第一ギヤ34には、入力部としての第二ギヤ35が動力伝達可能に接続されると共に、第二ギヤ35が第三操舵用シャフト部33の外周に固定されている(
図2及び
図4を参照)。よって、この場合、操舵駆動部25で発生させた回転駆動力は、第一ギヤ34及び第二ギヤ35を介して第三操舵用シャフト部33に軸回転力として伝達される。この軸回転力が、それぞれキー31を介して接続された第二操舵用シャフト部29から第一操舵用シャフト部28に伝達されることで、第一~第三操舵用シャフト部28,29,33が一体に軸回転可能とされ、これにより第一操舵用シャフト部28に固定された操舵輪11を操舵可能としている。
【0036】
また、付勢部材30は例えば圧縮ばねで、その伸縮方向を第一及び第二操舵用シャフト部28,29の軸方向に合わせて配設されている(
図2を参照)。また、付勢部材30は、自然状態よりも圧縮された状態で第一操舵用シャフト部28と第二操舵用シャフト部29との間に配設され、その一端部が第一操舵用シャフト部28と接続又は当接し、他端部が第二操舵用シャフト部29と接続又は当接している。これにより、付勢部材30は、常に、第一操舵用シャフト部28が第二操舵用シャフト部29から軸方向に遠ざかる向きに第一操舵用シャフト部28を付勢している。
【0037】
また、本実施形態では、第一操舵用シャフト部28と第二操舵用シャフト部29はともに中空形状をなし、第一操舵用シャフト部28の外周に第二操舵用シャフト部29が配設される。第一操舵用シャフト部28の中空部28aには図示しない導線が挿通され、第一操舵用シャフト部28の下端に固定された操舵輪11の軸回転駆動部23に接続されている。
【0038】
昇降機構14は、
図2に示すように、主に昇降用シャフト部26と、昇降用シャフト部26に昇降力(駆動力)を付与するための昇降駆動部27とを有する。ここで、昇降用シャフト部26は、昇降駆動部27からの駆動力を受けて軸方向に伸縮可能に構成されている。
【0039】
昇降用シャフト部26は、本実施形態では、操舵用シャフト部24(ここでは第二操舵用シャフト部29)に対し軸方向移動が規制されかつ軸回転可能に支持される第一昇降用シャフト部36と、昇降駆動部27からの回転駆動力を受けて軸回転可能な第二昇降用シャフト部37と、第一昇降用シャフト部36と第二昇降用シャフト部37との間に配設される送りねじ機構38とを有する。
【0040】
cffv
ここで、送りねじ機構38の雌ねじ部が、相対的に外側に位置する第二昇降用シャフト部37の内周に設けられ、送りねじ機構38の雄ねじ部が相対的に内側に位置する第一昇降用シャフト部36の外周に設けられる。これにより、送りねじ機構38は、第二昇降用シャフト部37の軸回転を第一昇降用シャフト部36の第二昇降用シャフト部37に対する軸方向移動に変換して伝達可能としている。
【0041】
この場合、第一昇降用シャフト部36と第二昇降用シャフト部37との間にはラジアル軸受39が配設され、送りねじ機構38による第一昇降用シャフト部36と第二昇降用シャフト部37との相対軸回転を支持可能としている。
【0042】
また、この場合、第二昇降用シャフト部37とその内側に位置する第二操舵用シャフト部29との間には、一又は複数のニードルローラ軸受40が配設され、第二昇降用シャフト部37に対する第二操舵用シャフト部29の軸回転を支持可能にしている。また、第二昇降用シャフト部37と第二操舵用シャフト部29との間に1又は複数のスラスト軸受41が配設され、このスラスト軸受41が止め輪42で軸方向に係止されることで、第二操舵用シャフト部29からの軸方向荷重を支持可能としている。
【0043】
また、本実施形態では、第一昇降用シャフト部36と第三操舵用シャフト部33との間に一又は複数のニードルローラ軸受40が配設され、第一昇降用シャフト部36に対する第三操舵用シャフト部33の軸回転を支持可能にしている。また、第一昇降用シャフト部36と第二操舵用シャフト部29との間にはラジアル軸受39が配設され、第二操舵用シャフト部29からのラジアル荷重を支持可能としている。
【0044】
本実施形態では、第一昇降用シャフト部36の外周に第三昇降用シャフト部43が配設されている。この第三昇降用シャフト部43は、例えば円すいころ軸受44を介して第一昇降用シャフト部36に軸回転可能に支持されており、第一昇降用シャフト部36からのラジアル荷重及びスラスト荷重を支持可能としている。また、この円すいころ軸受44が止め輪42で軸方向に係止されることで、第三昇降用シャフト部43の第一昇降用シャフト部36に対する軸方向移動が規制されている。この第三昇降用シャフト部43には、ハウジング15の下部をなすと共に、車輪支持部13と連結される下側フレーム部45が固定されており、昇降用シャフト部26の伸縮動作に伴い、第一昇降用シャフト部36と第三昇降用シャフト部43、及び下側フレーム部45と車輪支持部13とが一体に昇降可能とされている。
【0045】
上述のように操舵用シャフト部24と昇降用シャフト部26とを構成する場合、第一、第二、及び第三操舵用シャフト部28,29,33と、第一、第二、及び第三昇降用シャフト部36,37,43は全て同軸に配設されている。正確には、何れのシャフト部28,29,33,36,37,43も中空形状をなし、最も内側から第一操舵用シャフト部28、第二操舵用シャフト部29、第三操舵用シャフト部33と第二昇降用シャフト部37(ともに径方向で第二操舵用シャフト部29と第一昇降用シャフト部36との間)、第一昇降用シャフト部36、第三昇降用シャフト部43の順に同軸に配設されている。
【0046】
図5は、昇降用シャフト部26と昇降駆動部27との動力伝達構造を模式的に示している。同図に示すように、昇降駆動部27は、例えばモータ等の回転駆動部46と、回転駆動部46の回転力をベルト47に伝達するベルト伝達機構48と、ベルト47が巻き掛けられるプーリ49とを有する。ここでは二個のプーリ49に共通のベルト47が巻き掛けられており、回転駆動部46からの回転駆動力を各プーリ49に等しく伝達可能としている。ここで各プーリ49は例えばキー31を介して第一昇降用シャフト部36に連結されており、各プーリ49に入力された回転駆動力を第一昇降用シャフト部36に伝達可能としている(
図2及び
図5を参照)。これにより、第二昇降用シャフト部37が、送りねじ機構38の作用により第一昇降用シャフト部36に対して軸方向に移動した場合、第二操舵用シャフト部29と第一操舵用シャフト部28とが第二昇降用シャフト部37と一体に軸方向に移動可能とされている。ここで、第一操舵用シャフト部28が下方に向けて移動することで、第一操舵用シャフト部28の下端に連結された操舵輪11は地面で支持されると共に、地面から反力を受ける。そのため、この反力により、第二昇降用シャフト部37に対して第一昇降用シャフト部36が上昇し、この第一昇降用シャフト部36と共に第三昇降用シャフト部43と下側フレーム部45、さらには下側フレーム部45に接続された車輪支持部13が上昇可能とされている。
【0047】
従って、車輪支持部13により完成車両1の前輪2を支持した状態で、昇降駆動部27(の回転駆動部46)を駆動させることにより、昇降用シャフト部26が伸長して車輪支持部13が上昇し、車輪支持部13に支持された状態の前輪2がリフトアップされた状態となる(
図6を参照)。これにより車両搬送装置10による完成車両1の搭載が完了し、後輪3を接地させた状態で完成車両1を走行可能な状態となる。
【0048】
以上述べたように、本実施形態に係る車両搬送装置10によれば、操舵輪11の操舵に必要な動力を操舵輪11に伝達するための機構をなす操舵用シャフト部24と、車輪支持部13の昇降に必要な動力を操舵輪11に伝達するための機構をなす昇降用シャフト部26とを共通の場所、ここでは同軸に配置することができる。これにより、操舵機構12と昇降機構14の少なくとも動力伝達部をまとめてコンパクトにできるので、従来の機構よりも車両搬送装置10を小型化することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、昇降用シャフト部26を、昇降駆動部27からの回転駆動力を受けて軸回転可能な第一昇降用シャフト部36と、操舵用シャフト部24に対し軸方向移動が規制されかつ軸回転可能に支持される第二昇降用シャフト部37と、第一昇降用シャフト部36と第二昇降用シャフト部37との間に配設される送りねじ機構38とで構成し、かつ送りねじ機構38を、第一昇降用シャフト部36の軸回転を第二昇降用シャフト部37の第一昇降用シャフト部36に対する軸方向移動に変換して伝達可能に構成した。
【0050】
このように昇降用シャフト部26を構成することによって、昇降駆動部27をモータなどの回転駆動部46で第二昇降用シャフト部37を軸方向に移動させることができる。この場合、送りねじ機構38により回転駆動部46の回転量を第二昇降用シャフト部37の軸方向移動量に正確に変換して伝達できるので、車輪支持部13の高精度な高さ方向の位置決めを行うことができる。また、送りねじ機構38を用いた動力伝達構造であれば、完成車両1の如き重量物であっても支持することができるので、油圧シリンダの如き駆動装置は不要となり(モータなどの回転駆動部46で足り)、昇降機構14を簡素化できる。もちろん、送りねじ機構38自体も単純な構造であるから、これによっても昇降機構14の簡素化ひいては小型化を図ることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、ベルト47を介して一個の回転駆動部46を二個のプーリ49に動力伝達可能に接続した構造としたので(
図5を参照)、前後二本の昇降用シャフト部26の伸縮動作を一個の回転駆動部46で実施することができる。これにより、昇降駆動部27を簡素化ひいては小型化できるので、これによっても昇降機構14の簡素化ひいては小型化を図ることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、操舵用シャフト部24を、操舵輪11と連結される第一操舵用シャフト部28と、第一操舵用シャフト部28に対し軸回転が規制されかつ軸方向移動可能に支持される第二操舵用シャフト部29と、第一操舵用シャフト部28と第二操舵用シャフト部29との間に配設される付勢部材30とで構成し、かつ付勢部材30を、第一操舵用シャフト部28が第二操舵用シャフト部29から軸方向に遠ざかる向きに第一操舵用シャフト部28を付勢可能に構成した。
【0053】
このように、各操舵輪11に連結される第一操舵用シャフト部28を第二操舵用シャフト部29に対して上下動可能に構成することによって、走行時、例えば路面の凹凸に対しても各操舵輪11が独立して昇降することにより振動又は衝撃を吸収して、安定した走行状態を維持することが可能となる。加えて、本実施形態では、第一操舵用シャフト部28が付勢部材30により常時下方に付勢された状態にあるため、一時的な操舵輪11の浮き上がりから瞬時に接地状態に回復して、これによっても安定した走行状態を維持することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、車両搬送装置10に設けられた全ての操舵輪11を駆動輪とし、独立して駆動可能としたので、これら各操舵輪11に設けられた各操舵駆動部25を制御部19で独立して制御することにより、車両搬送装置10に、前進後退運動や旋回運動、トーイング、平行移動、縁軌道運動、超信地旋回などの各種運動を実施させることが可能となる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る車両搬送装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0056】
例えば上記実施形態では、操舵用シャフト部24の構成要素として、第一操舵用シャフト部28と、第二操舵用シャフト部29と、第三操舵用シャフト部33とが設けられ、第三操舵用シャフト部33の外周に操舵駆動部25からの回転駆動力を入力する第二ギヤ35を設けた場合を例示したが、これには限定されない。例えば図示は省略するが、操舵用シャフト部24の構成要素として、第一操舵用シャフト部28と、第二操舵用シャフト部29とが設けられ、第二操舵用シャフト部29の外周に第二ギヤ35を設けてもよい。もちろん第二ギヤ35も例示に過ぎず、操舵駆動部25からの操舵力を回転駆動力として操舵用シャフト部24に伝達可能な限りにおいて、任意の動力伝達機構を適用することが可能である。
【0057】
また、上記実施形態では、昇降用シャフト部26を、第一昇降用シャフト部36と、第二昇降用シャフト部37と、第三昇降用シャフト部43とで構成し、第三昇降用シャフト部43の外周に、回転駆動部46からの回転駆動力をベルト47により伝達可能なプーリ49を設けた場合を例示したが、これには限定されない。例えば図示は省略するが、昇降用シャフト部26を、第一昇降用シャフト部36と、第二昇降用シャフト部37とで構成し、第一昇降用シャフト部36の外周にプーリ49を設けてもよい。もちろんプーリ49も例示に過ぎず、昇降駆動部27からの昇降力を回転駆動力として昇降用シャフト部26に伝達可能な限りにおいて、任意の動力伝達機構を適用することが可能である。
【0058】
また、本実施形態では、第一昇降用シャフト部36と第二昇降用シャフト部37との間に送りねじ機構38を設けて、一方のシャフト部(ここでは第一昇降用シャフト部36)に回転駆動力を付与することで、第二昇降用シャフト部37を軸方向に相対移動可能とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、軸方向に伸縮可能な限りにおいて、昇降用シャフト部26は任意の構成をとることが可能である。この場合、シリンダ等により軸方向の移動力を直接付与してもかまわない。
【0059】
また、以上の説明では、操舵用シャフト部24の外周に中空状の昇降用シャフト部26を配設した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、昇降用シャフト部26の外周に中空状の操舵用シャフト部24を同軸に配設してもかまわない。
【符号の説明】
【0060】
1 完成車両
2 前輪
3 後輪
10 車両搬送装置
11 操舵輪
12 操舵機構
13 車輪支持部
14 昇降機構
15 ハウジング
16 バッテリ
17 連結部
18 受信部
19 制御部
20 第一支持バー
21 第二支持バー
22 立設部
23 軸回転駆動部
24 操舵用シャフト部
25 操舵駆動部
26 昇降用シャフト部
27 昇降駆動部
28 第一操舵用シャフト部
28a 中空部
29 第二操舵用シャフト部
30 付勢部材
31 キー
32 キー溝
33 第三操舵用シャフト部
34 第一ギヤ
35 第二ギヤ
36 第一昇降用シャフト部
37 第二昇降用シャフト部
38 送りねじ機構
39 ラジアル軸受
40 ニードルローラ軸受
41 スラスト軸受
42 止め輪
43 第三昇降用シャフト部
44 円すいころ軸受
45 下側フレーム部
46 回転駆動部
47 ベルト
48 ベルト伝達機構
49 プーリ
S 支持スペース