(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157331
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車載機器制御装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F25B1/00 341U
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071630
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】511211162
【氏名又は名称】杉谷 康和
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 康和
(57)【要約】
【課題】ブレーキ負圧が不足することを確実に抑制する。
【解決手段】ガソリンエンジン2に負荷をかける第1圧縮機21と、ガソリンエンジン2の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれており、かつ負圧が所定値よりも小さい場合、第1圧縮機21を停止させる第1停止制御を行う第1制御装置40と、ブレーキペダルが踏まれており、かつ負圧が所定値よりも小さい場合、第1圧縮機21が停止しているか否かを判定する停止判定を行い、停止判定の結果、第1圧縮機21が停止していないと判定した場合、第1圧縮機21を停止させる第2停止制御を行う第2制御装置60とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)と、
前記ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれており、かつ前記負圧が所定値よりも小さい場合、前記車載機器(4、21)を停止させる第1停止制御を行う第1制御部(40)と、
前記ブレーキペダルが踏まれており、かつ前記負圧が所定値よりも小さい場合、車載機器(4、21)が停止しているか否かを判定する停止判定を行い、前記停止判定の結果、車載機器(4、21)が停止していないと判定した場合、車載機器(4、21)を停止させる第2停止制御を行う第2制御部(60)とを備える車載機器制御装置。
【請求項2】
前記第2制御部(60)は、前記第2停止制御を行った場合、前記ガソリンエンジン(2)が停止するまで車載機器(4、21)の停止状態を保持する請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
前記第2制御部(60)は、前記第1停止制御を開始してから所定経過時間(T3)経過後に前記停止判定を行う請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項4】
前記第1制御部(40)は、前記第1制御を開始してから所定停止時間(T1)経過後に前記車載機器(4、21)を再稼働し、
前記所定経過時間(T3)は、前記所定停止時間(T1)よりも短い時間である請求項3に記載の車載機器制御装置。
【請求項5】
前記車載機器は、前記ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)である請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車載機器制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンで走行する車両に搭載された車載機器を制御する車載機器制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の車両用冷凍サイクル装置は、ブレーキブースタを有する車両に搭載されている。ブレーキブースタは、車両のガソリンエンジンの吸気系に生ずる負圧をブレーキ負圧として蓄圧して、そのブレーキ負圧によって駆動されることで運転手のブレーキペダル操作力を軽減する。
【0003】
ここで、車両のガソリンエンジンには走行負荷のみならず、オートマチックトランスミッション、圧縮機、オルタネータ等の負荷がかかる。車両のガソリンエンジンがアイドリング状態であるときにこれらの負荷が大きくなると、車両のガソリンエンジンの回転数を維持するようにスロットルバルブが開く方向にアイドルスピードコントロールが働くため、吸気の負圧が小さくなり、ブレーキ負圧も小さくなる。
【0004】
特に、冷凍車のように、車室空調用冷凍サイクル装置と荷室空調用冷凍サイクル装置という2つの冷凍サイクル装置を有する車両では、車室空調用冷凍サイクル装置の圧縮機と荷室空調用冷凍サイクル装置の圧縮機という2つの圧縮機があるので、車両のガソリンエンジンの負荷が大きくなりやすい。そのため、吸気の負圧が小さくなりやすく、ブレーキ負圧も小さくなりやすい。
【0005】
この点、上記特許文献1に記載の車両用冷凍サイクル装置は、ブレーキ負圧がブレーキブースタを作動させるのに必要な値に達していない時に車両用冷凍サイクル装置の駆動が停止されるようになっている。
【0006】
具体的には、車両のガソリンエンジンによって駆動される圧縮機を停止させることで車両エンジンの負荷を低減させるので、車両のガソリンエンジンの吸入空気量が減少してスロットルバルブが閉じ側へ制御される。これにより、吸気の負圧が大きくなり、ブレーキブースタを駆動するのに必要なブレーキ負圧が不足することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術では、ブレーキ負圧がブレーキブースタを作動させるのに必要な値に達していない時にはブレーキペダルが踏まれていなくても圧縮機を停止させるので、圧縮機(換言すれば、ガソリンエンジンに負荷をかける車載機器)を必要以上に停止させることになってしまう。
【0009】
また、圧縮機の停止指令を出しても電気的なトラブル等により圧縮機が停止しない場合、吸気の負圧を大きくすることができず、ブレーキブースタを駆動するのに必要なブレーキ負圧を確保することができなくなる。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキ負圧が不足することを確実に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車載機器制御装置は、
ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)と、
ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれており、かつ負圧が所定値よりも小さい場合、車載機器(4、21)を停止させる第1停止制御を行う第1制御部(40)と、
ブレーキペダルが踏まれており、かつ負圧が所定値よりも小さい場合、車載機器(4、21)が停止しているか否かを判定する停止判定を行い、停止判定の結果、車載機器(4、21)が停止していないと判定した場合、車載機器(4、21)を停止させる第2停止制御を行う第2制御部(60)とを備える。
【0012】
これによると、第1停止制御を行うことによりガソリンエンジン(2)の負荷が小さくなるので、吸気の負圧が大きくなる。これにより、ブレーキペダルが踏まれているときにブレーキ負圧が不足することを抑制できる。
【0013】
万が一、第1停止制御が行われているはずの条件下であっても第1制御部(40)の作動不良等の原因により車載機器(4、21)が稼働したままになっていてブレーキ負圧が不足したままになっている場合、第2停止制御を行って車載機器(4、21)を強制的に停止させることによってブレーキ負圧を正常な負圧に確実に近づけることができる。したがって、ブレーキ負圧が不足することを確実に抑制できる。
【0014】
請求項2に記載の車載機器制御装置は、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、第2制御部(60)は、第2停止制御を行った場合、ガソリンエンジン(2)が停止するまで車載機器(4、21)の停止状態を保持する。これにより、車両の走行中にブレーキ負圧が不足することを確実に抑制できる。
【0015】
請求項3に記載の車載機器制御装置は、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、第2制御部(60)は、第1停止制御を開始してから所定経過時間(T3)経過後に停止判定を行う。
【0016】
これにより、第1停止制御を開始してから吸気の負圧が変化するまでのタイムラグの影響を受けにくくなるので、適切なタイミングで停止判定を行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の車載機器制御装置は、請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置において、
第1制御部(40)は、第1制御を開始してから所定停止時間(T1)経過後に車載機器(4、21)を再稼働し、
所定経過時間(T3)は、所定停止時間(T1)よりも短い時間である。
【0018】
これにより、第1制御部(40)の作動不良等の原因によりブレーキ負圧が不足したままになっている状態を極力速やかに解消することができる。
【0019】
請求項5に記載の車載機器制御装置は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車載機器制御装置において、車載機器は、ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)である。
【0020】
これにより、第1制御部(40)の作動不良等の原因により車載機器(4、21)が稼働したままになっていてブレーキ負圧が不足したままになっている場合、冷凍サイクル装置の圧縮機(21)を強制的に停止させることによって、ブレーキ負圧が不足することを確実に抑制できる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態における輸送用車両を示す模式図である。
【
図2】
図1の輸送用車両に用いられる荷室空調冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図3】
図2の荷室空調冷凍サイクル装置における電子制御部を示すブロック図である。
【
図4】
図2の荷室空調冷凍サイクル装置における他の電子制御部を示すブロック図である。
【
図5】
図3の第1制御装置が実行する制御処理を説明するタイムチャートである。
【
図6】
図4の第2制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のフローチャートによる制御例を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の車両用冷凍サイクル装置が搭載される輸送用車両1を模式的に示す断面図である。
図1中、上下前後の矢印は、輸送用車両1の上下前後方向を示している。
【0024】
本実施形態の輸送用車両1は、車両最前部に配置された運転室10の後方側に荷台11を有している。この荷台11は、断熱材等により箱形状に形成されている。荷台11内には荷室111が形成されている。
【0025】
運転室10の下部には、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン2、変速機構であるオートマチックトランスミッション3、発電機であるオルタネータ4が搭載されている。ガソリンエンジン2は、吸気量を調整するスロットルバルブを有する内燃機関である。車両には、運転手がブレーキペダル(図示せず)を踏込操作する時の操作力を軽減するブレーキブースタ(図示せず)が設けられている。
【0026】
ブレーキブースタは、ガソリンエンジン2の吸気の負圧を利用してブレーキペダルを踏込操作する時の操作力を軽減する。ブレーキブースタにはガソリンエンジン2の吸気管から延びる負圧通路が接続されている。負圧通路は、ガソリンエンジン2の吸気管のうちスロットルバルブよりも下流側の部位から延びている。負圧通路には、ガソリンエンジン2の吸気圧を検出する吸気圧センサ47が配置されている。
【0027】
吸気通路内の負圧によってブレーキブースタ内から負圧通路を介して空気が吸引され、その空気の吸引によってブレーキブースタ内に負圧が生じる。ブレーキブースタ内に生じる負圧によってブレーキブースタが駆動される。
【0028】
図示を省略しているが、荷台11の側面部や後面部等には、荷物を搬入出するための開口部と、この開口部を開閉する開閉扉とが設けられている。荷室111には荷室空調ユニット12が配置されている。
【0029】
図1中の矢印A1、A2に示すように、荷室空調ユニット12は、荷室111の空気を吸い込んで冷却して荷室111に吹き出す。荷室空調ユニット12から吹き出された空気によって、荷室111内が温度調整される。
【0030】
荷室空調ユニット12のユニットケース121には、第1室内送風機122および第1蒸発器123等が収容されている。第1室内送風機122は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0031】
第1室内送風機122が作動することにより、荷室111の空気がユニットケース121内に吸い込まれて第1蒸発器123を通過して冷却され、第1蒸発器123を通過した冷風は、ユニットケース121から荷室111に吹き出される。これにより、荷室111内の空気が冷却されて荷室111内の荷物が冷蔵・冷凍される。
【0032】
運転室10には、運転室空調ユニット13が配置されている。運転室空調ユニット13は、運転室10内の空気または外気を吸い込んで冷却または加熱して運転室10に吹き出す。運転室空調ユニット13から吹き出された空気によって、運転室10が温度調整される。
【0033】
運転室空調ユニット13のユニットケース131には、第2室外送風機132および第2蒸発器133等が収容されている。第2室外送風機132は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0034】
第2室外送風機132が作動することにより、運転室10内の空気または外気がユニットケース131内に吸い込まれて第2蒸発器133を通過して冷却される。
【0035】
ユニットケース131には、図示しないヒータコアや図示しないエアミックスドア等も収容されている。ヒータコアは、第2蒸発器133を通過した空気をエンジン冷却水と熱交換させて加熱する。エアミックスドアは、ヒータコアを流れる空気と、ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって、車室内へ吹き出される空気の温度を調整する。
【0036】
第2蒸発器133およびヒータコアを通過した空気は、
図1中の矢印A3に示すように、ユニットケース131から運転室10に吹き出される。
【0037】
図2は、
図1の輸送用車両1に搭載される荷室空調冷凍サイクル装置20の全体構成図である。荷室空調冷凍サイクル装置20は、第1圧縮機21、第1凝縮器22、第1膨張弁23、第1蒸発器123、第1バイパス弁25および第1均圧弁26を備えている。
【0038】
第1圧縮機21は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。例えば、第1圧縮機21は車両のエンジンルームに配置されている。
【0039】
例えば、第1圧縮機21は、第1マグネットクラッチ(図示せず)を介してガソリンエンジン2によって回転駆動されるエンジン駆動式圧縮機である。第1マグネットクラッチは、ガソリンエンジン2から第1圧縮機21へ伝達される駆動力を断続する駆動力断続部である。
【0040】
荷室空調冷凍サイクル装置20では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、第1圧縮機21を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともに冷凍サイクル装置の冷媒回路を循環する。
【0041】
第1圧縮機21の吐出側には第1凝縮器22が接続されている。第1凝縮器22は第1圧縮機21から吐出された高圧冷媒(ガス冷媒)と、第1室外送風機(図示せず)によって送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて高圧冷媒を冷却・凝縮させる。第1凝縮器22は、冷媒を放熱させる放熱器である。第1室外送風機は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0042】
第1凝縮器22の出口側には第1膨張弁23が接続されている。第1膨張弁23は、第1凝縮器22で凝縮された高圧冷媒(液冷媒)を減圧する第1減圧部である。
【0043】
例えば、第1膨張弁23は、温度式膨張弁であり、第1蒸発器123出口側冷媒の温度および圧力に基づいて第1蒸発器123出口側冷媒の過熱度を検出する感温部を有し、第1蒸発器123出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように機械的機構によって絞り通路面積を調節する。第1膨張弁23は、電気的機構によって絞り通路面積を調節する電気式膨張弁であってもよい。
【0044】
第1膨張弁23の出口側には第1蒸発器123が接続されている。第1蒸発器123には第1膨張弁23で減圧された低圧冷媒(液冷媒)が流入し、この低圧冷媒が第1室内送風機122による送風空気から吸熱して蒸発することによって送風空気を冷却する。第1蒸発器123で蒸発した低圧冷媒(ガス冷媒)は、第1圧縮機21に吸入される。
【0045】
第1圧縮機21の吐出側および第1蒸発器123の入口側には第1バイパス流路27が接続されている。第1バイパス流路27は、第1圧縮機21から吐出された高温冷媒(ホットガス)が第1凝縮器22および第1膨張弁23をバイパスして流れるバイパス部である。第1バイパス流路27には第1バイパス弁25が配置されている。第1バイパス弁25は、第1バイパス流路27を開閉するバイパス開閉部である。
【0046】
第1圧縮機21の吸入側と第1圧縮機21の吐出側との間には、第1均圧流路28が接続されている。第1均圧流路28は、第1圧縮機21の吸入側と第1圧縮機21の吐出側とを連通させて均圧化する均圧部である。第1均圧流路28には第1均圧弁26が配置されている。第1均圧弁26は、第1均圧流路28を開閉する均圧流路開閉部である。
【0047】
第1バイパス弁25および第1均圧弁26は、第1制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。
【0048】
図1の輸送用車両1に搭載される運転室空調冷凍サイクル装置30の構成は荷室空調冷凍サイクル装置20の構成と同様である。そこで、
図2の括弧内に、運転室空調冷凍サイクル装置30に対応する符号を示し、運転室空調冷凍サイクル装置30の図示を省略する。
【0049】
運転室空調冷凍サイクル装置30は、第2圧縮機31、第2凝縮器32、第2膨張弁33、第2蒸発器133、第2バイパス弁35および第2均圧弁36を備えている。
【0050】
第2圧縮機31は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。例えば、第2圧縮機31は、車両のエンジンルームに配置されている。
【0051】
例えば、第2圧縮機31は、第2マグネットクラッチ(図示せず)を介して車両エンジン(図示せず)によって回転駆動されるエンジン駆動式圧縮機である。第2マグネットクラッチは、ガソリンエンジン2から第2圧縮機31へ伝達される駆動力を断続する駆動力断続部である。
【0052】
運転室空調冷凍サイクル装置30では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、第2圧縮機31を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともに冷凍サイクル装置の冷媒回路を循環する。
【0053】
第2圧縮機31の吐出側には第2凝縮器32が接続されている。第2凝縮器32は第2圧縮機31から吐出された高圧冷媒(ガス冷媒)と、第2室外送風機(図示せず)によって送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて高圧冷媒を冷却・凝縮させる。第2凝縮器32は冷媒を放熱させる放熱器である。第2室外送風機は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0054】
第2凝縮器32の出口側には第2膨張弁33が接続されている。第2膨張弁33は、第2凝縮器32で凝縮された高圧冷媒(液冷媒)を減圧する第2減圧部である。
【0055】
例えば、第2膨張弁33は、温度式膨張弁であり、第2蒸発器133出口側冷媒の温度および圧力に基づいて第2蒸発器133出口側冷媒の過熱度を検出する感温部を有し、第2蒸発器133出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように機械的機構によって絞り通路面積を調節する。第2膨張弁33は、電気的機構によって絞り通路面積を調節する電気式膨張弁であってもよい。
【0056】
第2膨張弁33の出口側には第2蒸発器133が接続されている。第2蒸発器133には第2膨張弁33で減圧された低圧冷媒(液冷媒)が流入し、この低圧冷媒が第2室外送風機132による送風空気から吸熱して蒸発することによって送風空気を冷却する。第2蒸発器133で蒸発した低圧冷媒(ガス冷媒)は、第2圧縮機31に吸入される。
【0057】
第2圧縮機31の吐出側と第2蒸発器133の入口側との間には、第2バイパス流路37が接続されている。第2バイパス流路37は、第2圧縮機31から吐出された高温冷媒(ホットガス)が第2凝縮器32および第2膨張弁33をバイパスして流れるバイパス部である。第2バイパス流路37には第2バイパス弁35が配置されている。第2バイパス弁35は、第2バイパス流路37を開閉するバイパス開閉部である。
【0058】
第2圧縮機31の吸入側および第2圧縮機31の吐出側には第2均圧流路38が接続されている。第2均圧流路38は、第2圧縮機31の吸入側と第2圧縮機31の吐出側とを連通させて均圧化する均圧部である。第2均圧流路38には第2均圧弁36が配置されている。第2均圧弁36は、第2均圧流路38を開閉する均圧流路開閉部である。
【0059】
第2バイパス弁35および第2均圧弁36は、第1制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。
【0060】
第1制御装置40は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0061】
図3に示すように、第1制御装置40は、出力側に接続された第1室内送風機122、第1室外送風機、第1圧縮機21、第1バイパス弁25、第1均圧弁26、第2室外送風機132、第2室外送風機、第2圧縮機31、第2バイパス弁35および第2均圧弁36等の作動を制御する第1制御部である。第1制御装置40は、第1圧縮機21および第2圧縮機31等の車載機器を制御する車載機器制御装置を構成している。
【0062】
第1制御装置40の入力側には、種々の制御用センサ群および種々の制御用スイッチ群が接続されている。種々の制御用センサ群は、荷室内温度センサ41、車室内温度センサ42、外気温度センサ43、日射量センサ44、第1蒸発器温度センサ45、第2蒸発器温度センサ46、吸気圧センサ47等を含んでいる。種々の制御用スイッチ群は、ブレーキスイッチ48等を含んでいる。
【0063】
荷室内温度センサ41は荷室111内の温度を検出する。車室内温度センサ42は車室内の温度を検出する。外気温度センサ43は外気温を検出する。日射量センサ44は車室内の日射量を検出する。
【0064】
第1蒸発器温度センサ45は、第1蒸発器123における冷媒蒸発温度(第1蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。第1蒸発器温度センサ45は、第1蒸発器123の熱交換フィン温度や第1蒸発器123の出口側冷媒の温度を検出している。
【0065】
第2蒸発器温度センサ46は、第2蒸発器133における冷媒蒸発温度(第2蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。第2蒸発器温度センサ46は、第2蒸発器133の熱交換フィン温度や第2蒸発器133の出口側冷媒の温度を検出している。
【0066】
吸気圧センサ47は、ガソリンエンジン2の吸気圧を検出する吸気圧検出部である。ブレーキスイッチ48は、運転手によるブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ踏込検出部である。
【0067】
第1制御装置40には、操作パネル50から種々の操作信号が入力される。操作パネル50は、車室内の計器盤付近に配置されている。操作パネル50には、荷室空調冷凍サイクル装置20の運転・停止(具体的には、第1圧縮機21の稼動・停止)を切り替える荷室空調運転スイッチや、運転室空調冷凍サイクル装置30の運転・停止(具体的には、第2圧縮機31の稼動・停止)を切り替える運転室空調運転スイッチ、荷室111内の目標温度を設定する荷室目標温度設定スイッチ、運転室10内の目標温度を設定する運転室目標温度設定スイッチ等が設けられている。
【0068】
第1圧縮機21および第2圧縮機31は、第2制御装置60によっても制御される。第2制御装置60は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0069】
第2制御装置60は、出力側に接続された第1圧縮機停止回路61および第2圧縮機停止回路62の作動を制御する圧縮機制御部(第2制御部)である。
【0070】
第1圧縮機停止回路61は、第1制御装置40の出力側かつ第1圧縮機21の入力側に接続されている。第1圧縮機停止回路61は、第1制御装置40から出力される第1圧縮機21の制御信号を断続するリレー回路である。すなわち、第1圧縮機停止回路61は、第1制御装置40が第1圧縮機21を駆動するように制御している場合であっても第1圧縮機21を停止させることが可能である。
【0071】
第2圧縮機停止回路62は、第1制御装置40の出力側かつ第2圧縮機31の入力側に接続されている。第2圧縮機停止回路62は、第1制御装置40から出力される第2圧縮機31の制御信号を断続するリレー回路である。すなわち、第2圧縮機停止回路62は、第1制御装置40が第2圧縮機31を駆動するように制御している場合であっても第2圧縮機31を停止させることが可能である。
【0072】
図4に示すように、第2制御装置60の入力側には、吸気圧センサ47およびブレーキスイッチ48が接続されている。
【0073】
次に、上記構成における作動を説明する。操作パネル50の荷室空調運転スイッチがオンされると荷室空調冷凍サイクル装置20を運転させるために第1圧縮機21が稼働する。荷室空調冷凍サイクル装置20の通常運転時には、第1バイパス弁25および第1均圧弁26は閉弁されている。
【0074】
第1圧縮機21が稼働すると、第1圧縮機21から吐出されたガス冷媒が第1凝縮器22に流入して凝縮液化された後、第1膨張弁23で減圧されて第1蒸発器123に供給されるので、第1蒸発器123で荷室111への送風空気を冷却できる。
【0075】
第1圧縮機21の冷媒吐出量(換言すれば、冷媒吐出能力)は、荷室内温度センサ41が検出した荷室111内の温度、および第1蒸発器温度センサ45が検出した第1蒸発器123の温度等に基づいて制御される。
【0076】
第1蒸発器123に着霜が生じたと判定された場合、除霜運転を行う。例えば、第1蒸発器温度センサ45で検出した第1蒸発器123の温度が着霜判定温度以下となっている時間が着霜判定時間以上となった場合、第1蒸発器123に着霜が生じたと判定される。
【0077】
除霜運転では第1バイパス弁25が開弁される。これにより、第1圧縮機21から吐出された高温のガス冷媒が第1バイパス流路27を通じて第1蒸発器123に導入されるので、第1蒸発器123が除霜される。
【0078】
操作パネル50の運転室空調運転スイッチがオンされると運転室空調冷凍サイクル装置30を運転させるために第2圧縮機31が稼働する。運転室空調冷凍サイクル装置30の通常運転時には、第2バイパス弁35および第2均圧弁36は閉弁されている。第2圧縮機31から吐出されたガス冷媒が第2凝縮器32に流入して凝縮液化された後、第2膨張弁33で減圧されて第2蒸発器133に供給されるので、第2蒸発器133で運転室10への送風空気を冷却できる。
【0079】
第2圧縮機31の冷媒吐出量(換言すれば、冷媒吐出能力)は、車室内温度センサ42が検出した車室内の温度、外気温度センサ43が検出した外気温、日射量センサ44が検出した車室内の日射量、および第2蒸発器温度センサ46が検出した第2蒸発器133の温度等に基づいて制御される。
【0080】
第2蒸発器133に着霜が生じたと判定された場合、除霜運転を行う。例えば、第2蒸発器温度センサ46で検出した第2蒸発器133の温度が着霜判定温度以下となっている時間が着霜判定時間以上となった場合、第2蒸発器133に着霜が生じたと判定される。
【0081】
除霜運転では第2バイパス弁35が開弁される。これにより、第2圧縮機31から吐出された高温のガス冷媒が第2バイパス流路37を通じて第2蒸発器133に導入されるので、第2蒸発器133が除霜される。
【0082】
次に、
図5のタイムチャートに示す均圧制御およびエンジン負荷制御について説明する。運転手がブレーキペダルを踏み込んでおり、かつブレーキ負圧が不足すると判定された場合(
図5のタイムチャートではNGと判定された場合)、第1制御装置40は均圧制御とエンジン負荷制御とを行う。
【0083】
本例では、ブレーキスイッチ48の検出信号に基づいて、運転手がブレーキペダルを踏み込んでいるか否かが判定される。本例では、吸気圧センサ47の検出信号に基づいて、ガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい(すなわち、負圧が所定値よりも0に近い)と判定された場合、ブレーキ負圧が不足すると判定される。
【0084】
エンジン負荷制御は、第1圧縮機21を所定停止時間T1の間、停止させる第1停止制御である。所定停止時間T1は、吸気圧センサ47で検出した負圧が正常値になるまでに要する時間に所定の余裕時間を加えた時間として予め設定されている。所定停止時間T1は、例えば2~3秒程度である。
【0085】
エンジン負荷制御によりガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。これにより、ブレーキ負圧も正常な負圧に戻る。
【0086】
均圧制御は、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を所定開弁時間T2の間、開弁させる制御である。所定開弁時間T2は所定停止時間T1よりも長い時間である。所定開弁時間T2は、例えば5秒程度である。第1圧縮機21の停止時間が所定停止時間T1になったら第1圧縮機21を稼働させる。
【0087】
第1圧縮機21が停止している間に均圧制御を行うことにより、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化される。荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化された状態で第1圧縮機21が再駆動されるので、第1圧縮機21を稼働させるときにマグネットクラッチで大きな作動音がしたりマグネットクラッチが滑って摩耗したりすることを抑制できる。
【0088】
第1均圧弁26および第1バイパス弁25の開弁時間が所定開弁時間T2になったら、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を閉弁させる。所定開弁時間T2は所定停止時間T1よりも長い時間であるので、第1圧縮機21が再駆動される前に第1均圧弁26および第1バイパス弁25が閉弁されることを防止できる。そのため、第1圧縮機21が再駆動される前に荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを確実に均圧化できる。
【0089】
次に、第2制御装置60が実行する圧縮機強制停止制御について、
図6に示すフローチャートおよび
図7を示すタイムチャートに基づいて説明する。圧縮機強制停止制御は、エンジン負荷制御を行っても第1圧縮機21が停止しないときに第1圧縮機21を強制的に停止させる第2停止制御である。
【0090】
ステップS100では、運転手がブレーキペダルを踏み込んでおり、かつブレーキ負圧が不足しているか否かが判定される。すなわち、
図5のタイムチャートで説明したエンジン負荷制御が行われているか否かが判定される。
【0091】
ステップS100にて運転手がブレーキペダルを踏み込んでおり、かつブレーキ負圧が不足していると判定された場合、すなわちエンジン負荷制御が行われていると判定した場合、ステップS110へ進み、エンジン負荷制御が開始されてから所定経過時間T3が経過し、かつブレーキ負圧が不足しているか否かが判定される。所定経過時間T3は、吸気圧センサ47で検出した負圧が正常値になるまでに要する時間よりも長い時間として予め設定されている。所定経過時間T3は、所定停止時間T1よりも短い時間であるのが好ましい。
【0092】
図5のタイムチャートで説明したとおり、エンジン負荷制御により第1圧縮機21を停止させるとガソリンエンジン2の負荷が小さくなって吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。
【0093】
しかしながら、エンジン負荷制御を行っても第1制御装置40の作動不良等の原因により第1圧縮機21が停止していない場合はガソリンエンジン2の負荷が小さくならず、
図7中の二点鎖線に示すように、ブレーキ負圧が不足したままとなる。したがって、ステップS110における判定は、第1圧縮機21が停止しているか否かを判定する停止判定である。
【0094】
ステップS110にてエンジン負荷制御が開始されてから所定経過時間T3が経過し、かつブレーキ負圧が不足していると判定された場合、ステップS120へ進み、第1圧縮機21が停止されるように第1圧縮機停止回路61を制御する。
【0095】
これにより、エンジン負荷制御が行われているはずの条件下であっても第1制御装置40の作動不良等の原因により第1圧縮機21が稼働したままになっていてブレーキ負圧が正常な負圧に戻らない場合、
図7中の実線に示すように第1圧縮機21が強制的に停止され、その結果ブレーキ負圧が正常な負圧に戻る。
【0096】
図7中の二点鎖線は、比較例として、第1圧縮機21が強制的に停止させない場合の状態、すなわちエンジン負荷制御が行われているはずの条件下であっても第1制御装置40の作動不良等の原因により第1圧縮機21が稼働したままになっていてブレーキ負圧が正常な負圧に戻らない状態を示している。
【0097】
さらに、ステップS120では、車室内の計器盤に設けられた警告ランプを点灯させるとともに警告ブザーを鳴らす。これにより、第1圧縮機21を強制的に停止されていることを運転手に認識させることができる。
【0098】
ステップS120にて第1圧縮機21が停止されるように第1圧縮機停止回路61を制御した場合、その制御状態を車両のイグニッションスイッチがOFFされるまで保持し、車両のイグニッションスイッチがOFFされたら保持を解除する。これにより、車両の走行中にブレーキ負圧を正常な負圧に確実に戻すことができる。
【0099】
本実施形態では、第1制御装置40は、ブレーキペダルが踏まれており、かつガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合、ガソリンエンジン2からの駆動力が遮断されて第1圧縮機21が停止するように第1圧縮機21のマグネットクラッチを制御するエンジン負荷制御を行うとともに、第1圧縮機21の吸入側と吐出側とが連通するように第1均圧弁26を開弁させる均圧制御を行う。
【0100】
これによると、ブレーキペダルが踏まれており、かつガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合に第1圧縮機21を停止させるので、ブレーキペダルが踏まれていないときに第1圧縮機21を停止させることを回避できる。
【0101】
また、ブレーキペダルが踏まれており、かつガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合に第1均圧弁26を開弁させるので、第1圧縮機21が停止している間に冷凍サイクルの高圧と低圧とを均圧化できる。そのため、第1圧縮機21内の圧力が極力低い状態で第1圧縮機21を再駆動できるので、マグネットクラッチでガソリンエンジン2と第1圧縮機21とを連結させる際に大きな作動音がしたり、マグネットクラッチが滑って摩耗してしまうことを抑制できる。
【0102】
以上のことから、第1圧縮機21の停止頻度を低減し、かつ第1圧縮機21の再駆動を円滑化することができる。
【0103】
本実施形態では、第1制御装置40は、エンジン負荷制御において第1圧縮機21の停止時間が所定停止時間T1以上になったら駆動力が第1圧縮機21に伝達されるようにマグネットクラッチを制御してエンジン負荷制御を終了する。これにより、簡素な制御にて第1圧縮機21を再駆動させることができる。
【0104】
本実施形態では、第1制御装置40は、均圧制御において第1均圧弁26の開弁時間が所定開弁時間T2以上になったら第1均圧弁26を閉弁させて均圧制御を終了する。これにより、簡素な制御にて第1均圧弁26を閉弁させて荷室空調冷凍サイクル装置20を通常運転に戻すことができる。
【0105】
本実施形態では、第1均圧弁26の所定開弁時間T2は、第1圧縮機21の所定停止時間T1よりも長い時間である。これにより、第1圧縮機21が再駆動される前に第1均圧弁26および第1バイパス弁25が閉弁されることを防止できるので、第1圧縮機21が再駆動される前に荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを確実に均圧化できる。第1圧縮機21を再駆動させる前に、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを均圧化できる。
【0106】
本実施形態では、第1制御装置40は、均圧制御において、第1均圧弁26を開弁させるとともに、第1圧縮機21から吐出された冷媒が第1凝縮器22および第1膨張弁23をバイパスして第1蒸発器123に導かれるように第1バイパス弁25を開弁させる。
【0107】
これにより、均圧制御において、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを第1バイパス流路27をも通じて均圧化できるので、冷凍サイクルの高圧と低圧とを確実に均圧化できる。
【0108】
本実施形態では、第1制御装置40は、均圧制御において、第1均圧弁26の開弁時間が所定開弁時間T2以上になったら第1均圧弁26を閉弁させるとともに第1バイパス弁25を閉弁させて均圧制御を終了する。
【0109】
これにより、簡素な制御にて第1均圧弁26および第1バイパス弁25を閉弁させて荷室空調冷凍サイクル装置20を通常運転に戻すことができる。
【0110】
本実施形態では、第2制御装置60は、ブレーキペダルが踏まれており、かつ負圧が所定値よりも小さい場合、第1圧縮機21が停止しているか否かを判定する停止判定を行い、停止判定の結果、第1圧縮機21が停止していないと判定した場合、第1圧縮機21を停止させる圧縮機強制停止制御を行う。
【0111】
これによると、万が一、エンジン負荷制御が行われているはずの条件下であっても第1制御装置40の作動不良等の原因により第1圧縮機21が稼働したままになっていてブレーキ負圧が不足したままになっている場合、圧縮機強制停止制御を行って第1圧縮機21を強制的に停止させることによってブレーキ負圧を正常な負圧に確実に近づけることができる。したがって、ブレーキ負圧が不足することを確実に抑制できる。
【0112】
本実施形態では、第2制御装置60は、圧縮機強制停止制御を行った場合、ガソリンエンジン2が停止するまで第1圧縮機21の停止状態を保持する。これにより、車両の走行中にブレーキ負圧が不足することを確実に抑制できる。
【0113】
本実施形態では、第2制御装置60は、エンジン負荷制御を開始してから所定経過時間T3経過後に、停止判定を行って第1圧縮機21が停止しているか否かを判定する。これにより、第1停止制御を開始してから吸気の負圧が変化するまでのタイムラグの影響を受けにくくなるので、適切なタイミングで停止判定を行うことができる。
【0114】
所定経過時間T3は、所定停止時間T1よりも短い時間であるので、第1制御装置40の作動不良等の原因によりブレーキ負圧が不足したままになっている状態を極力速やかに解消することができる。
【0115】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のごとく種々変形可能である。
【0116】
(1)上述の実施形態では、
図5のタイムチャートに示すエンジン負荷制御を所定停止時間T1で終了するが、ガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値以上になったらエンジン負荷制御を終了するようにしてもよい。
【0117】
上述の実施形態では、
図5のタイムチャートに示す均圧制御を所定開弁時間T2で終了するが、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧との差圧が所定圧力以下になったら均圧制御を終了するようにしてもよい。
【0118】
(2)上述の実施形態では、
図5のタイムチャートおよび
図6のフローチャートに示すエンジン負荷制御、均圧制御および圧縮機強制停止制御を荷室空調冷凍サイクル装置20に対して実行する。すなわち、エンジン負荷制御では第1圧縮機21を停止・再稼働させ、均圧制御では第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させ、圧縮機強制停止制御では第2圧縮機31を強制停止させる。
【0119】
これに対して、
図4のタイムチャートおよび
図6のフローチャートに示すエンジン負荷制御、均圧制御および圧縮機強制停止制御を運転室空調冷凍サイクル装置30に対して実行してもよい。すなわち、エンジン負荷制御では第2圧縮機31を停止・再稼働させ、均圧制御では第2均圧弁36および第2バイパス弁35を開弁させ、圧縮機強制停止制御では第2圧縮機31を強制停止させてもよい。
【0120】
(3)上述の実施形態のエンジン負荷制御は第1圧縮機21または第2圧縮機31を停止・再稼働させる制御であり上述の実施形態の圧縮機強制停止制御は第1圧縮機21または第2圧縮機31を強制停止させる制御であるが、エンジン負荷制御はオルタネータ4、サブオルタネータ(図示せず)、油圧ポンプ(図示せず)、ウォーターポンプ(図示せず)等の車載機器を停止・再稼働させる制御で圧縮機強制停止制御はこれらの車載機器を強制させる制御であってもよい。
【0121】
オルタネータ4は、ガソリンエンジン2によって駆動される発電機である。オルタネータ4で発電された電力は車載バッテリの充電に用いられる。サブオルタネータは、ガソリンエンジン2によって駆動される発電機である。サブオルタネータで発電された電力は車載サブバッテリの充電に用いられる。油圧ポンプは、ガソリンエンジン2によって駆動されて油圧を発生させるポンプである。ウォーターポンプは、ガソリンエンジン2によって駆動されて冷却水を循環させるポンプである。
【0122】
すなわち、エンジン負荷制御は、ガソリンエンジン2に負荷をかける車載機器を停止させる制御であればよい。これにより、ブレーキペダルが踏まれており、かつガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合に車載機器が停止されることによってガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。
【0123】
ブレーキペダルが踏まれており、かつガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合に車載機器が停止されるので、ガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値よりも小さい場合にブレーキペダルが踏まれているか否かにかかわらず車載機器が停止される場合と比較して車載機器の停止頻度を低減させることができる。
【0124】
エンジン負荷制御において停止させる車載機器は、停止させても車両の走行に直ちに影響が出ない機器であるのが望ましい。これにより、車両の走行の安全を損なうことなく車載機器の停止頻度を低減させることができる。
【0125】
(4)上述の実施形態では、冷凍サイクル装置の冷媒として、オゾン層破壊能力が低いHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しているが、これに限定されるものではなく、他の種々の冷媒(例えば、地球温暖化係数が小さい、いわゆる新冷媒)を採用してもよい。
【0126】
(5)上述の実施形態では、冷凍サイクル装置として荷室空調冷凍サイクル装置20および運転室空調冷凍サイクル装置30を備えているが、これに限定されるものではなく、種々の用途の冷凍サイクル装置を備えていてもよい。
【0127】
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置を輸送用車両1に適用した例について説明したが、これに限定されることなく、冷凍サイクル装置を種々の車両に適用可能である。
【0128】
本明細書に開示された車載機器制御装置の特徴を以下のとおり示す。
(項目1)
ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)と、
前記ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれており、かつ前記負圧が所定値よりも小さい場合、前記車載機器(4、21)を停止させる第1停止制御を行う第1制御部(40)と、
前記ブレーキペダルが踏まれており、かつ前記負圧が所定値よりも小さい場合、車載機器(4、21)が停止しているか否かを判定する停止判定を行い、前記停止判定の結果、車載機器(4、21)が停止していないと判定した場合、車載機器(4、21)を停止させる第2停止制御を行う第2制御部(60)とを備える車載機器制御装置。
(項目2)
前記第2制御部(60)は、前記第2停止制御を行った場合、前記ガソリンエンジン(2)が停止するまで車載機器(4、21)の停止状態を保持する項目1に記載の車載機器制御装置。
(項目3)
前記第2制御部(60)は、前記第1停止制御を開始してから所定経過時間(T3)経過後に前記停止判定を行う項目1または2に記載の車載機器制御装置。
(項目4)
前記第1制御部(40)は、前記第1制御を開始してから所定停止時間(T1)経過後に前記圧縮機(21)を再稼働し、
前記所定経過時間(T3)は、前記所定停止時間(T1)よりも短い時間である項目3に記載の車載機器制御装置。
(項目5)
前記車載機器は、前記ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)である項目1ないし4のいずれか1つに記載の車載機器制御装置。
【符号の説明】
【0129】
2 ガソリンエンジン
21 第1圧縮機(車載機器、圧縮機)
40 第1制御装置(第1制御部)
60 第2制御装置(第2制御部)