(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157332
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20241030BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071631
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北原 誠
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB01
5H622CB05
5H622DD04
5H622PP20
5H622QA03
(57)【要約】
【課題】ロータを製造する製造装置の構成が複雑化することを抑制できるロータの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータの製造方法は、磁石収容孔13に磁石30が収容された状態のロータコア11の第1端面11aに第1型50を接触させ、且つ樹脂31が流れる流路Pを有する第2型60を第2端面11bに接触させた状態で流路Pを介して磁石収容孔13に樹脂31を射出する射出工程を備える。射出工程では、第1型50を加熱した状態で樹脂31を射出する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面の各々に開口する磁石収容孔を有するロータコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記ロータコアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、
前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記ロータコアの前記第1端面に第1型を接触させ、且つ前記樹脂が流れる流路を有する第2型を前記第2端面に接触させた状態で前記流路を介して前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程を備え、
前記射出工程では、前記第1型を加熱した状態で前記樹脂を射出する、
ロータの製造方法。
【請求項2】
前記射出工程では、前記第2型を加熱した状態で前記樹脂を射出する、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記射出工程の前に、前記第2型によって前記第2端面を押圧することにより、前記第1端面を前記第1型に押し付ける押圧工程を備え、
前記射出工程では、前記第1端面が前記第1型に押し付けられた状態で前記樹脂を射出する、
請求項1または請求項2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記ロータコアにおける前記第1端面から前記第2端面までの高さを積層高さとするとき、
前記複数の鉄心片の積層方向における前記磁石の長さは、前記積層高さよりも短く、
前記押圧工程では、前記積層方向において前記複数の鉄心片同士を密着させることで前記積層高さを減少させつつ、前記積層方向における前記第2型と前記磁石との間に前記樹脂が流通する流通空間が生じるように前記第2端面を押圧する、
請求項3に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面または前記第2端面を構成する第2鉄心片と、を含み、
前記射出工程の前に、前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を押圧することにより、前記突端が前記貫通孔の内部に位置するように前記ダボを潰す潰し工程を備える、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面を構成する第2鉄心片と、を含み、
前記射出工程では、前記第1型に形成された収容凹部に前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を収容した状態で、前記樹脂を射出する、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石埋込型のロータは、磁石収容孔を有するロータコアと、磁石収容孔に収容された磁石とを備えている。磁石は、磁石収容孔に充填された樹脂を介してロータコアに固定されている。
【0003】
磁石収容孔に充填される樹脂としては、主に熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられる。一般的に、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂よりも溶融時の粘度が高い。このため、射出装置を用いて磁石収容孔に熱可塑性樹脂を充填する際の射出圧は、熱硬化性樹脂を充填する場合よりも増大しやすい。その結果、ロータコアが熱可塑性樹脂の射出圧によって変形するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、加熱型によってロータコアの外周面を加熱した状態で、磁石収容孔に熱可塑性樹脂を射出するロータの製造方法が開示されている。加熱型は、ロータコアの径方向にスライド可能に設けられた複数のスライドコア型を有している。各スライドコア型は、ロータコアの外周面を径方向の外側から押圧した状態でロータコアの外周面を加熱する。
【0005】
加熱型によってロータコアが加熱されることで熱可塑性樹脂の温度が低下しにくくなる。このため、熱可塑性樹脂の粘度の増大が抑制された状態で磁石収容孔に熱可塑性樹脂が充填される。これにより、熱可塑性樹脂の射出圧の増大が抑制されるため、ロータコアの変形が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のロータの製造方法では、複数のスライドコア型を有する加熱型が必要となる。このため、ロータを製造する製造装置の構成が複雑化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのロータの製造方法は、第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面の各々に開口する磁石収容孔を有するロータコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記ロータコアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記ロータコアの前記第1端面に第1型を接触させ、且つ前記樹脂が流れる流路を有する第2型を前記第2端面に接触させた状態で前記流路を介して前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程を備え、前記射出工程では、前記第1型を加熱した状態で前記樹脂を射出する。
【0009】
上記方法によれば、ロータコアの第2端面に接触する第2型の流路を介して、磁石収容孔に熱可塑性の樹脂が充填される。このとき、射出された樹脂の温度は、磁石収容孔の内部において第2端面から第1端面に近付くほど低下しやすくなる。射出工程では、ロータコアの第1端面に接触する第1型によってロータコアが加熱された状態で、磁石収容孔に樹脂が射出される。これにより、樹脂が磁石収容孔の内部において第2端面側から第1端面側に近付く際に、樹脂の温度が低下しにくくなる。このため、樹脂の粘度が増大しにくくなる。その結果、樹脂の射出圧が増大することを抑制できるため、ロータコアの変形を抑制できる。以上のことから、ロータコアの変形を抑制する上で、ロータコアの外周面を押圧するスライドコア型などの設備が不要となる。したがって、ロータを製造する製造装置の構成が複雑化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態のロータの製造方法によって製造されるロータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のロータの製造装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、ダボが潰された状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、ロータコアが第1型に載置された状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1型と第2型とが型締めされた状態を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、ロータコアが第2型によって押圧される前の状態を示す断面図であり、
図7(b)は、ロータコアが第2型によって押圧されている状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、磁石収容孔に樹脂が射出された状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、変更例の第1型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図8を参照して、ロータの製造方法の一実施形態について説明する。
(ロータ10)
図1及び
図2に示すように、ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁石30と、複数の樹脂31とを備えている。ロータ10は、例えば、磁石埋込型のロータである。
【0012】
ロータコア11は、軸線Cを中心軸とする略円筒状をなしている。ロータコア11は、例えば、電磁鋼板から打ち抜かれた複数の鉄心片20が積層されることにより構成されている。
【0013】
以降において、複数の鉄心片20の積層方向を単に積層方向と称する。ロータコア11の軸線Cを中心とする径方向を単に径方向と称する。ロータコア11の軸線Cを中心とする周方向を単に周方向と称する。
【0014】
ロータコア11は、積層方向において互いに反対側に位置する第1端面11aと第2端面11bとを有している。
ロータコア11は、図示しないシャフトが挿入される中心孔12と、磁石30が収容される複数の磁石収容孔13とを有している。中心孔12及び各磁石収容孔13は、積層方向においてロータコア11を貫通している。すなわち、中心孔12及び各磁石収容孔13は、第1端面11a及び第2端面11bの各々に開口している。
【0015】
複数の鉄心片20は、第1鉄心片21と第2鉄心片22とを含む。ロータコア11は、例えば、複数の第1鉄心片21と1つの第2鉄心片22とが積層されることにより構成されている。第2鉄心片22は、ロータコア11の積層方向における一端面を構成している。第2鉄心片22は、例えば、ロータコア11の第1端面11aを構成している。
【0016】
図2に示すように、各第1鉄心片21は、積層方向の一方側に膨出する複数のダボ21aを有している。複数のダボ21aは、第1鉄心片21の周方向に等間隔に設けられている。積層方向において隣接する第1鉄心片21は、ダボ21a同士がかしめられることにより互いに結合されている。
【0017】
第2鉄心片22は、積層方向に貫通する複数の貫通孔22aを有している。複数の貫通孔22aは、第2鉄心片22の周方向に等間隔に設けられている。
第1鉄心片21と第2鉄心片22とは、ダボ21aが貫通孔22aに嵌入することにより互いに結合されている。
【0018】
複数の磁石30は、複数の磁石収容孔13にそれぞれ収容されている。各磁石30は、積層方向に延びる長尺状をなしている。磁石30の積層方向に直交する断面形状は、略長方形状をなしている。
【0019】
磁石30の積層方向における長さは、ロータコア11における第1端面11aから第2端面11bまでの高さである積層高さよりも短い。
磁石30の積層方向における一端面は、例えば、第1端面11aと面一である。磁石30の積層方向における一端面とは反対側の他端面は、例えば、第2端面11bよりも積層方向の内側に位置している。
【0020】
磁石30は、磁石収容孔13に充填された樹脂31を介してロータコア11に固定されている。樹脂31は、磁石30の外周面と磁石収容孔13の内周面との間に介在している。樹脂31は、磁石30の他端面を覆っている。
【0021】
樹脂31としては、例えば、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
(製造装置40)
ロータ10を製造する製造装置40について説明する。
【0022】
製造装置40は、磁石30が収容されたロータコア11の磁石収容孔13に樹脂31を充填して固化するための装置である。
図3に示すように、製造装置40は、第1型50と第2型60とを備えている。
【0023】
(第1型50)
第1型50は、例えば、固定型である。
第1型50は、ロータコア11の第1端面11aに接触する第1接触面51を有している。第1接触面51は、平面状をなしている。第1接触面51は、第1端面11aに開口する全ての磁石収容孔13の開口を覆う大きさを有している。
【0024】
第1型50の内部には、例えば、通電により発熱する第1ヒータ52が配置されている。
(第2型60)
第2型60は、型本体61と、ゲートプレート65とを備えている。型本体61とゲートプレート65とは、例えば、別体に構成されている。型本体61は、例えば、第1型50に対して進退可能に構成された可動型である。
【0025】
型本体61は、射出装置100から射出された樹脂31が流通するスプルー62を有している。
型本体61の内部には、例えば、通電により発熱する第2ヒータ63が配置されている。
【0026】
(ゲートプレート65)
ゲートプレート65は、型本体61とロータコア11との間に配置される。ゲートプレート65は、ロータコア11の第2端面11bに接触する第2接触面66を有している。第2接触面66は、平面状をなしている。第2接触面66は、第2端面11bに開口する全ての磁石収容孔13の開口を覆う大きさを有している。
【0027】
ゲートプレート65は、スプルー62に連通するランナー67と、ランナー67から延びる複数のゲート68とを有している。
ランナー67は、ゲートプレート65における第2接触面66とは反対側の面に開口している。ランナー67は、ゲートプレート65の中央部から径方向において放射状に延びている。各ゲート68は、第2接触面66に開口している。各ゲート68は、ランナー67の端部と磁石収容孔13とを連通する。
【0028】
(ロータ10の製造方法)
ロータ10の製造方法は、潰し工程、第1配置工程、第2配置工程、第3配置工程、押圧工程、加熱工程、射出工程、及び固化工程を備えている。潰し工程、第1配置工程、第2配置工程、第3配置工程、押圧工程、加熱工程、射出工程、及び固化工程は、この順で行われる。
【0029】
(潰し工程)
図4に二点鎖線にて示すように、第1鉄心片21と第2鉄心片22とが互いにかしめられた状態において、第2鉄心片22に隣接する第1鉄心片21のダボ21aの突端は、第2鉄心片22の貫通孔22aから外部に突出することがある。
【0030】
潰し工程では、第2鉄心片22の貫通孔22aから突出したダボ21aの突端が押圧治具70によって押圧されることにより、ダボ21aが潰される。潰し工程では、ダボ21aの突端が貫通孔22aの内部に位置するようにダボ21aが潰される。
【0031】
(第1配置工程)
図5に示すように、第1配置工程では、各磁石収容孔13に磁石30が収容された状態のロータコア11が第1型50の第1接触面51に載置される。このとき、第1接触面51によって第1端面11aの全体が覆われる。すなわち、第1接触面51によって第1端面11aに開口する全ての磁石収容孔13の開口が閉塞される。このとき、各磁石30の下面は、第1接触面51に接触している。また、各磁石30の上面は、第2端面11bよりも下方に位置している。なお、第1配置工程では、第2端面11bが第1接触面51に接触するように、ロータコア11が第1型50に載置されてもよい。
【0032】
(第2配置工程)
図6に示すように、第2配置工程では、ゲートプレート65がロータコア11の第2端面11bに載置される。このとき、第2接触面66によって第2端面11bの全体が覆われるとともに各ゲート68が磁石収容孔13に連通する。各ゲート68は、例えば、磁石30の上面に対向する位置に配置される。
【0033】
(第3配置工程)
第3配置工程では、型本体61がロータコア11とは反対側からゲートプレート65に接触する。これにより、型本体61のスプルー62がゲートプレート65のランナー67に連通する。
【0034】
(押圧工程)
押圧工程では、第1型50と第2型60との型締めに伴って、第2型60によって第2端面11bを押圧することにより、第1端面11aを第1型50に押し付ける。押圧工程では、型本体61によってゲートプレート65を介して第2端面11bが押圧される。
【0035】
ここで、ダボ21a同士がかしめられた状態で積層されたロータコア11では、隣接する鉄心片20同士の間に、僅かに隙間が生じていることがある。こうしたロータコア11の第2端面11bが第2型60によって押圧されることにより、鉄心片20同士の隙間が埋まるように鉄心片20同士が密着する。これにより、ロータコア11の積層高さが減少する。
【0036】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ロータコア11の積層高さの減少に伴って、ロータコア11の第2端面11bから磁石30の上面までの積層方向における距離H1が距離H2に減少する。すなわち、押圧工程では、第2端面11bが第2型60によって押圧されることにより、ロータコア11の積層高さが減少しつつ、積層方向においてゲートプレート65と磁石30との間に樹脂31が流通する流通空間Sが生じる。ゲート68から吐出される樹脂31は、流通空間Sを介して磁石収容孔13に導入される。
【0037】
ところで、押圧工程において、第2型60による押圧力が小さい場合、射出工程において、鉄心片20同士の隙間を通じて樹脂31が磁石収容孔13の外部に漏出するおそれがある。一方、第2型60による押圧力が大きい場合、磁石収容孔13に充填された樹脂31の固化後に当該押圧力が解除された際に、各鉄心片20のスプリングバックによってロータコア11の積層高さが増大するおそれがある。このとき、各鉄心片20同士の間には、スプリングバックに起因した隙間が生じる。このため、第2型60による押圧力は、磁石収容孔13からの樹脂31の漏出が生じない、且つスプリングバックによって各鉄心片20同士の間に隙間が生じない大きさに設定されている。
【0038】
(加熱工程)
加熱工程では、第1ヒータ52に通電されることにより第1型50が加熱されるとともに、第2ヒータ63に通電されることにより第2型60の型本体61が加熱される。第1型50及び型本体61の加熱温度は、例えば、同一の温度に設定されている。第1型50及び型本体61の加熱温度は、例えば、樹脂31のガラス転移温度以下に設定されている。
【0039】
加熱工程では、第1型50及び型本体61が所定期間加熱される。ゲートプレート65は、型本体61を介して加熱される。
(射出工程)
図8に示すように、射出工程では、射出装置100によって、第2型60の流路Pを介して各磁石収容孔13に樹脂31が射出される。より詳しくは、射出装置100から射出された樹脂31が、スプルー62、ランナー67、及びゲート68を介して磁石収容孔13に射出される。これにより、磁石収容孔13に樹脂31が充填される。
【0040】
射出工程では、押圧工程における第2型60の押圧が継続された状態で樹脂31が射出される。すなわち、射出工程では、ロータコア11の第1端面11aが第1型50の第1接触面51に押し付けられた状態で樹脂31が射出される。
【0041】
射出工程では、加熱工程における第1型50及び型本体61の加熱が継続された状態で樹脂31が射出される。
(固化工程)
固化工程では、例えば、第1型50及び型本体61の加熱を停止することにより、ロータコア11を空冷する。これにより、磁石収容孔13に充填された樹脂31が固化する。このようにして、ロータ10が製造される。
【0042】
最後に、ロータ10が第1型50と第2型60との間から取り出される。
本実施形態の作用について説明する。
ロータコア11の第2端面11bに接触する第2型60の流路Pを介して、磁石収容孔13に熱可塑性の樹脂31が充填される。このとき、射出された樹脂31の温度は、磁石収容孔13の内部において第2端面11bから第1端面11aに近付くほど低下しやすくなる。射出工程では、ロータコア11の第1端面11aに接触する第1型50によってロータコア11が加熱された状態で、磁石収容孔13に樹脂31が射出される。これにより、樹脂31が磁石収容孔13の内部において第2端面11b側から第1端面11a側に近付く際に、樹脂31の温度が低下しにくくなる。このため、樹脂31の粘度が増大しにくくなる。その結果、樹脂31の射出圧が増大することを抑制できるため、ロータコア11の変形を抑制できる。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)射出工程では、第1型50が加熱された状態で磁石収容孔13に樹脂31が射出される。
【0044】
上記方法によれば、ロータコア11の変形を抑制する上で、ロータコア11の外周面を押圧するスライドコア型などの設備が不要となる。したがって、ロータ10を製造する製造装置40の構成が複雑化することを抑制できる。
【0045】
(2)射出工程では、第2型60が加熱された状態で磁石収容孔13に樹脂31が射出される。
上記方法によれば、第2型60が加熱されることにより、樹脂31が流路Pを通過する際に樹脂31の温度が低下しにくくなる。このため、樹脂31が磁石収容孔13に到達するまでの間に樹脂31の温度が低下しにくくなる。したがって、樹脂31の射出圧が増大することを一層抑制できる。
【0046】
(3)射出工程では、第1端面11aが第1型50に押し付けられた状態で磁石収容孔13に樹脂31が射出される。
上記方法によれば、ロータコア11の第1端面11aが第1型50に押し付けられることにより、第1型50と第1端面11aとの接触面積が増加するとともに、第1型50と第1端面11aとの間の空気層が減少する。これにより、加熱された第1型50の温度がロータコア11に熱伝達しやすくなる。したがって、ロータコア11を所望の温度まで上昇させるために要する時間を短くできる。
【0047】
(4)押圧工程では、積層方向において複数の鉄心片20同士を密着させることでロータコア11の積層高さを減少させつつ、積層方向における第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じるように第2端面11bが押圧される。
【0048】
積層方向に隣り合う鉄心片20同士の間に隙間が存在する場合、射出工程において、当該隙間から樹脂31が漏出するおそれがある。この場合、鉄心片20同士の隙間を埋めるべく、ロータコア11を押圧した状態で射出工程を行うことが考えられる。しかしながら、ロータコア11を押圧することでロータコア11の積層高さが過度に小さくなると、第2型60が磁石収容孔13に収容された磁石30の端面に接触するおそれがある。この場合、磁石30の端面によって第2型60の流路Pが閉塞されるため、磁石収容孔13に樹脂31が充填されないおそれがある。なお、鉄心片20同士の隙間から樹脂31が漏出するといった課題は、熱硬化性樹脂よりも射出圧が大きくなりやすい熱可塑性樹脂の場合に特に顕著となる。
【0049】
この点、上記方法によれば、ロータコア11が押圧されることにより鉄心片20同士が密着することでロータコア11の積層高さが減少しつつ、第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じる。したがって、鉄心片20同士の隙間からの樹脂31の漏出を抑制しつつ、磁石収容孔13に樹脂31を充填することができる。
【0050】
(5)潰し工程では、貫通孔22aから突出したダボ21aの突端が貫通孔22aの内部に位置するようにダボ21aが潰される。
ロータコア11の第1端面11aに開口する貫通孔22aからダボ21aが突出している場合、第1型50を第1端面11aに接触させる際に、第1型50と第1端面11aとの間に隙間が生じるおそれがある。また、ロータコア11の第2端面11bに開口する貫通孔22aからダボ21aが突出している場合、第2型60を第2端面11bに接触させる際に、第2型60と第2端面11bとの間に隙間が生じるおそれがある。これらの場合、射出工程において、ロータコア11と第1型50または第2型60との隙間から樹脂31が漏出するおそれがある。
【0051】
この点、上記方法によれば、射出工程の前に、ダボ21aの突端が貫通孔22aの内部に位置するようにダボ21aが潰される。これにより、ロータコア11と第1型50または第2型60との間に隙間が生じにくくなるため、当該隙間から樹脂31が漏出することを抑制できる。
【0052】
また、上記方法によれば、ロータコア11の第1端面11aに開口する貫通孔22aからダボ21aが突出した状態で射出工程が行われる場合と比較して、第1型50と第1端面11aとの接触面積を増加させることができる。その結果、加熱された第1型50の温度がロータコア11に熱伝達しやすくなる。したがって、ロータコア11を所望の温度まで上昇させるために要する時間を短くできる。
【0053】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・
図9に示すように、第1型50は、第1接触面51に形成された複数の収容凹部51aを有するものであってもよい。各収容凹部51aは、第1端面11aに開口する貫通孔22aから突出したダボ21aの突端を収容する。この場合、射出工程では、収容凹部51aに貫通孔22aから突出したダボ21aの突端が収容された状態で、磁石収容孔13に樹脂31が射出される。この方法によれば、第1型50がロータコア11の第1端面11aに接触する際に、ダボ21aの突端が収容凹部51aに収容される。これにより、第1型50が収容凹部51aを有していない場合と比較して、第1型50と第1端面11aとの接触面積を増加させることができる。その結果、加熱された第1型50の温度がロータコア11に熱伝達しやすくなる。したがって、ロータコア11を所望の温度まで上昇させるために要する時間を短くできる。また、上記実施形態における潰し工程を省略することができる。
【0055】
・ロータコア11は、複数の第1鉄心片21と1つの第2鉄心片22とが積層されることにより構成された積層ブロックが複数積層されることにより構成されるものであってもよい。この場合、積層ブロック同士は、例えば、樹脂31によって互いに固定される。
【0056】
・鉄心片20同士は、ダボ21aがかしめられることにより互いに結合されるものでなくてもよい。鉄心片20同士は、例えば、樹脂31によって互いに接合されるものであってもよい。
【0057】
・押圧工程では、第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じなくてもよい。この場合、ゲート68の位置は、磁石収容孔13のうち磁石30が存在しない位置に設定されることが好ましい。
【0058】
・射出工程の前に押圧工程が行われなくてもよい。
・第1型50の加熱温度は、型本体61の加熱温度よりも高くてもよい。この場合、磁石収容孔13の積層方向における温度勾配が小さくなるため、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度が低下しにくくなる。
【0059】
・加熱工程では、型本体61が加熱されなくてもよい。この場合、ゲートプレート65が加熱されないため、射出工程後に流路Pに残留した樹脂31が早期に固化する。このため、固化工程後にゲートプレート65をロータ10から早期に分離することができる。
【0060】
・製造装置40は、可動型である第1型50と、固定型である第2型60とを備えていてもよい。この場合、第2型60に載置されたロータコア11に対して第1型50が近接することで型締めが行われる。
【0061】
・ゲートプレート65は、第2型60に対して相対移動可能に連結されたものであってもよい。
・射出工程では、第1型50及び型本体61の加熱を停止した直後に、樹脂31を射出してもよい。すなわち、樹脂31の射出直前にロータコア11が所望の温度範囲に加熱されていれば、樹脂31の射出時には、第1型50及び型本体61の加熱が停止されていてもよい。
【0062】
・ゲートプレート65は、第2型60から省略されてもよい。この場合、第2型60の内部に、ランナー67及びゲート68に相当する流路Pが形成されていればよい。
・第1型50は、第1接触面51から突出するとともにロータコア11の外周面を取り囲む側壁を有するものであってもよい。側壁は、ロータコア11の外周面に接触するものであってもよいし、ロータコア11の外周面との間に隙間を有するものであってもよい。こうした第1型50を用いることにより、ロータコア11の外周面からの放熱が抑制されるため、第1型50によるロータコア11の加熱効率を高めることができる。
【0063】
・射出工程の前に、ロータコア11が予備加熱されてもよい。
・固化工程において、それぞれ冷却流路を有する第1型50と第2型60とを用いて、ロータ10を冷却してもよい。
【0064】
・樹脂31は、液晶ポリマーに限定されず、他に例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、及びPA(ポリアミド)などであってもよい。
【0065】
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面の各々に開口する磁石収容孔を有するロータコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記ロータコアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記ロータコアの前記第1端面に第1型を接触させ、且つ前記樹脂が流れる流路を有する第2型を前記第2端面に接触させた状態で前記流路を介して前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程を備え、前記射出工程では、前記第1型を加熱した状態で前記樹脂を射出する、ロータの製造方法。
【0066】
[付記2]前記射出工程では、前記第2型を加熱した状態で前記樹脂を射出する、[付記1]に記載のロータの製造方法。
[付記3]前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記射出工程の前に、前記第2型によって前記第2端面を押圧することにより、前記第1端面を前記第1型に押し付ける押圧工程を備え、前記射出工程では、前記第1端面が前記第1型に押し付けられた状態で前記樹脂を射出する、[付記1]または[付記2]に記載のロータの製造方法。
【0067】
[付記4]前記ロータコアにおける前記第1端面から前記第2端面までの高さを積層高さとするとき、前記複数の鉄心片の積層方向における前記磁石の長さは、前記積層高さよりも短く、前記押圧工程では、前記積層方向において前記複数の鉄心片同士を密着させることで前記積層高さを減少させつつ、前記積層方向における前記第2型と前記磁石との間に前記樹脂が流通する流通空間が生じるように前記第2端面を押圧する、[付記3]に記載のロータの製造方法。
【0068】
[付記5]前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面または前記第2端面を構成する第2鉄心片と、を含み、前記射出工程の前に、前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を押圧することにより、前記突端が前記貫通孔の内部に位置するように前記ダボを潰す潰し工程を備える、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載のロータの製造方法。
【0069】
[付記6]前記ロータコアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面を構成する第2鉄心片と、を含み、前記射出工程では、前記第1型に形成された収容凹部に前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を収容した状態で、前記樹脂を射出する、[付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載のロータの製造方法。
【符号の説明】
【0070】
P…流路
S…流通空間
10…ロータ
11…ロータコア
11a…第1端面
11b…第2端面
12…中心孔
13…磁石収容孔
20…鉄心片
21…第1鉄心片
21a…ダボ
22…第2鉄心片
22a…貫通孔
30…磁石
31…樹脂
40…製造装置
50…第1型
51…第1接触面
51a…収容凹部
52…第1ヒータ
60…第2型
61…型本体
62…スプルー
63…第2ヒータ
65…ゲートプレート
66…第2接触面
67…ランナー
68…ゲート
70…押圧治具
100…射出装置