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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157334
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241030BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071633
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北原 誠
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB01
5H622CB05
5H622DD04
5H622PP20
5H622QA03
(57)【要約】
【課題】ロータの生産性を向上させることのできるロータの製造方法を提供する。
【解決手段】型締め工程では、磁石収容孔13に磁石30が収容された状態のコア11を第1型50と第2型60との間に挟み込む態様で、第1型50及び第2型60の型締めを行う。その後の射出工程では、磁石収容孔13に樹脂31を射出する。その後の取り出し工程では、第1型50及び第2型60の型開きを行うとともに、第1型50と第2型60との間からコア11及び磁石30を取り出す。取り出し工程では、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、コア11及び磁石30の取り出しを行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面に開口する磁石収容孔を有するコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記コアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、
前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記コアを第1型と第2型との間に挟み込む態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う型締め工程と、
前記型締め工程の後に、前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程と、
前記射出工程の後に、前記第1型及び前記第2型の型開きを行うとともに、前記第1型と前記第2型との間から前記コア及び前記磁石を取り出す取り出し工程と、を備え、
前記取り出し工程では、前記磁石収容孔に射出された前記樹脂の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、前記第1型と前記第2型との間からの前記コア及び前記磁石の取り出しを行う、
ロータの製造方法。
【請求項2】
前記取り出し工程の後に、前記コアを形状矯正用の矯正治具に取り付ける矯正工程を備える、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記型締め工程では、前記第1端面を前記第1型に対向させるとともに前記第2端面を前記第2型に接触させる態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行い、
前記射出工程では、前記磁石収容孔への前記樹脂の射出を、前記磁石収容孔に連通する態様で前記第2型に設けられた流路を介して行い、且つ、前記第1型を加熱した状態で行う、
請求項1または2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記型締め工程では、前記第2型によって前記第2端面を押圧することにより、前記第1端面を前記第1型の側に押し付ける態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、
請求項3に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記コアにおける前記第1端面から前記第2端面までの高さを積層高さとするとき、
前記複数の鉄心片の積層方向における前記磁石の長さは、前記積層高さよりも短く、
前記型締め工程では、前記積層方向において前記複数の鉄心片同士を密着させることで前記積層高さを減少させつつ、前記積層方向において前記第2型と前記磁石との間に隙間が生じるように前記第2端面を押圧する、
請求項4に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
前記型締め工程では、前記第1端面を前記第1型に対向させるとともに前記第2端面を前記第2型に接触させる態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行い、
前記射出工程では、前記磁石収容孔への前記樹脂の射出を、前記磁石収容孔に連通する態様で前記第2型に設けられた流路を介して行い、且つ、前記第2型を加熱した状態で行う、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項7】
前記型締め工程では、前記コア及び前記磁石を支持する支持プレートを前記第1型と前記コアの前記第1端面との間に挟み込む態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項8】
前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面を構成する第2鉄心片と、を含み、
前記型締め工程では、前記支持プレートに形成された収容凹部に前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を収容した状態で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、
請求項7に記載のロータの製造方法。
【請求項9】
前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、
前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面または前記第2端面を構成する第2鉄心片と、を含み、
前記型締め工程の前に、前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を押圧することにより、前記突端が前記貫通孔の内部に位置するように前記突端を潰す潰し工程を備える、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のロータとしては、磁石埋込型のものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のロータは、磁石収容孔を有するコアと、磁石収容孔に収容された磁石とを備えている。磁石は、磁石収容孔に充填された樹脂を介してコアに固定されている。磁石収容孔に充填される樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられる。
【0003】
特許文献1に記載のロータは、金型装置を利用して、以下のように製造される。
先ず、金型装置の型締めを行うことで、磁石収容孔に磁石が収容された状態のコアが金型装置の内部にセットされる。その後、金型装置が有する流路を介して、溶融された樹脂が磁石収容孔に射出及び充填される。その後、磁石収容孔に充填された樹脂を所定期間をかけて冷ますことで、同樹脂を固化させる。そして、磁石収容孔に充填された樹脂が十分に固化したタイミングで、金型装置の型開きが行われるとともに、同金型装置の内部からロータが取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-6088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱可塑性樹脂は、温度が低いときほど粘度が高くなる。そのため、そうした熱可塑性樹脂を用いて金型装置によりロータを製造する場合には、射出する樹脂の温度が低いときに、同樹脂が磁石収容孔に上手く充填されなくなることで歩留まりの低下を招くおそれがある。
【0006】
この場合、射出する樹脂の温度を、同樹脂の粘度が低い状態で保たれる程度に高い温度にすることで、磁石収容孔への樹脂の射出及び充填を適正に行うことは可能になる。ただし、射出する樹脂の温度を高くすることには、射出成形のサイクルタイムを長くするという背反がある。すなわち、射出する樹脂の温度を高い温度に設定すると、その分だけ磁石収容孔に充填された樹脂を冷ます期間が長くなるため、射出成形のサイクルタイムが長くなってしまう。そして、この場合にはロータの生産性の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのロータの製造方法は、第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面に開口する磁石収容孔を有するコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記コアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記コアを第1型と第2型との間に挟み込む態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う型締め工程と、前記型締め工程の後に、前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程と、前記射出工程の後に、前記第1型及び前記第2型の型開きを行うとともに、前記第1型と前記第2型との間から前記コア及び前記磁石を取り出す取り出し工程と、を備え、前記取り出し工程では、前記磁石収容孔に射出された前記樹脂の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、前記第1型と前記第2型との間からの前記コア及び前記磁石の取り出しを行う。
【0008】
熱可塑性樹脂は、その温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときには、液状と硬質のガラス状との間の状態、詳しくは軟質のゴム状になる。このときには、磁石収容孔に射出(充填)された熱可塑性樹脂は、未だ硬質のガラス状になってはいないものの、軟質のゴム状、すなわち磁石収容孔から流出することなく同磁石収容孔の内部に留まる状態になっている。
【0009】
上記製造方法によれば、金型装置(具体的には、第1型と第2型との間)からのロータの取り出しを、熱可塑性樹脂の温度が所定温度(ガラス転移点以上、且つ融点未満)になったタイミングで行うことができる。そのため、磁石収容孔から樹脂を流出させない態様での金型装置からのロータの取り出しを、磁石収容孔内の樹脂が十分に硬化したタイミングで行う場合と比較して、早いタイミングで行うことができる。したがって、射出工程において磁石収容孔に射出する樹脂の温度を低くせずとも、磁石収容孔に充填された樹脂を金型内部で冷ます期間を短くすることが可能になる。これにより、射出成形のサイクルタイムを短くすることが可能になるため、ロータの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態のロータの製造方法によって製造されるロータを示す斜視図である。
図2図2は、図1のロータを示す断面図である。
図3図3は、一実施形態のロータの製造装置を示す断面図である。
図4図4は、ダボが潰された状態を示す断面図である。
図5図5は、コアが第1型に載置された状態を示す断面図である。
図6図6は、コアが第2型によって押圧されている状態を示す断面図である。
図7図7(a)は、型締め前のコアを示す断面図であり、図7(b)は、型締め状態のコアを示す断面図である。
図8図8は、磁石収容孔に樹脂が射出された状態を示す断面図である。
図9図9は、矯正工程を説明するための説明図である。
図10図10は、矯正治具の斜視図である。
図11図11は、変更例の支持プレートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図10を参照して、ロータの製造方法の一実施形態について説明する。
<ロータ10>
図1及び図2に示すように、ロータ10は、コア11と、複数の磁石30と、複数の樹脂31とを備えている。ロータ10は、例えば、磁石埋込型のロータである。
【0012】
コア11は、軸線Cを中心軸とする略円筒状をなしている。コア11は、例えば、電磁鋼板から打ち抜かれた複数の鉄心片20が積層されることにより構成されている。以降において、複数の鉄心片20の積層方向を単に積層方向と称する。
【0013】
コア11は、積層方向において互いに反対側に位置する第1端面11aと第2端面11bとを有している。コア11は、図示しないシャフトが挿入される中心孔12と、磁石30が収容される複数の磁石収容孔13とを有している。中心孔12及び各磁石収容孔13は、積層方向においてコア11を貫通している。すなわち、中心孔12及び各磁石収容孔13は、コア11の第1端面11a及び第2端面11bの両方において開口している。
【0014】
中心孔12は、断面略円形状をなしている。中心孔12の内面には、2つのキー12aが設けられている。2つのキー12aは、中心孔12の内面における軸線Cを間に挟んで互いに対向する位置に設けられている。各キー12aは、軸線C方向に延びる突条をなしている。本実施形態では、2つのキー12aが上記シャフトに設けられた図示しないキー溝に嵌合することで、コア11と上記シャフトとの周方向における相対移動が規制される。
【0015】
複数の鉄心片20は、第1鉄心片21と第2鉄心片22とを含む。コア11は、例えば、複数の第1鉄心片21と1つの第2鉄心片22とが積層されることにより構成されている。第2鉄心片22は、コア11の積層方向における一端面(図2における下面)を構成している。第2鉄心片22は、例えば、コア11の第1端面11aを構成している。
【0016】
各第1鉄心片21は、積層方向の一方側に膨出する複数のダボ21aを有している。複数のダボ21aは、第1鉄心片21の周方向に等間隔に設けられている。積層方向において隣接する第1鉄心片21は、ダボ21a同士がかしめられることにより互いに結合されている。
【0017】
第2鉄心片22は、積層方向に貫通する複数の貫通孔22aを有している。複数の貫通孔22aは、第2鉄心片22の周方向に等間隔に設けられている。
第1鉄心片21と第2鉄心片22とは、ダボ21aが貫通孔22aに嵌入することにより互いに結合されている。
【0018】
複数の磁石30は、複数の磁石収容孔13に収容されている。詳しくは、磁石30は、複数の磁石収容孔13の各々に1つずつ収容されている。磁石30は、積層方向に延びる長尺状をなしている。磁石30の積層方向に直交する断面形状は、略長方形状をなしている。
【0019】
磁石30の積層方向における長さは、コア11における第1端面11aから第2端面11bまでの高さである積層高さよりも短い。磁石30の積層方向における一端面(図2における下面)は、例えば、第1端面11aと面一である。磁石30の積層方向における一端面とは反対側の他端面(図2における上面)は、例えば、第2端面11bよりも積層方向の内側(図2における下側)に位置している。
【0020】
磁石30は、磁石収容孔13に充填された樹脂31を介してコア11に固定されている。樹脂31は、磁石30の外周面と磁石収容孔13の内周面との間に介在している。樹脂31は、磁石30の他端面を覆っている。樹脂31としては、例えば、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0021】
<製造装置40>
ロータ10を製造する製造装置40について説明する。
製造装置40は、磁石30が収容された状態のコア11の磁石収容孔13に、熱可塑性の樹脂材料を射出及び充填することで、樹脂31を成形するための装置である。
【0022】
図3に示すように、製造装置40は、第1型50と第2型60とを備えている。
<第1型50>
第1型50は、例えば、金型装置における固定型である。第1型50は、コア11の第1端面11aに対向する第1接触面51を有している。第1接触面51は、平面状をなしている。第1接触面51は、第1端面11aにおいて開口する全ての磁石収容孔13の開口を覆う大きさを有している。第1型50の内部には、例えば、通電により発熱する第1ヒータ52が配置されている。
【0023】
<第2型60>
第2型60は、型本体61と、ゲートプレート65とを備えている。型本体61とゲートプレート65とは、例えば、別体に構成されている。型本体61は、例えば、金型装置の可動型である。型本体61は、第1型50に対して進退可能に構成される。型本体61は、射出装置100から射出された樹脂31が流通するスプルー62を有している。型本体61の内部には、例えば、通電により発熱する第2ヒータ63が配置されている。
【0024】
<ゲートプレート65>
ゲートプレート65は、型本体61とコア11との間に配置される。ゲートプレート65は、コア11の第2端面11bに接触する第2接触面66を有している。第2接触面66は、平面状をなしている。第2接触面66は、第2端面11bに開口する全ての磁石収容孔13の開口を覆う大きさを有している。
【0025】
ゲートプレート65は、スプルー62に連通するランナー67と、ランナー67から延びる複数のゲート68とを有している。ランナー67は、ゲートプレート65における第2接触面66とは反対側の面に開口している。ランナー67は、ゲートプレート65の中央部から放射状に延びている。各ゲート68は、第2接触面66に開口している。各ゲート68は、ランナー67の端部と磁石収容孔13とを連通する。
【0026】
ゲートプレート65は、複数の嵌合孔65aを有している。各嵌合孔65aは、ゲートプレート65の第2接触面66において開口するとともに、同ゲートプレート65の厚さ方向(図3における上下方向)に延びている。複数の嵌合孔65aは、ゲートプレート65の中央部の周囲において等間隔に並ぶ態様で設けられている。
【0027】
<支持部材80>
ロータ10の製造に際しては、支持部材80が用いられる。支持部材80は、コア11及び磁石30を支持する部材である。支持部材80は、略矩形板状の支持プレート81と、同支持プレート81の平面視の中央部から突出する円筒状のポスト部82とを備えている。ポスト部82は支持プレート81の厚さ方向(図3における上下方向)に延びている。支持部材80にコア11を取り付ける際には、支持部材80のポスト部82がコア11の中心孔12に挿入される。
【0028】
ポスト部82の外周面には、一対の係合溝83が設けられている。各係合溝83はポスト部82の延設方向に延びている。係合溝83は、コア11のキー12aに対応する形状をなしている。支持部材80にコア11を取り付ける際には、コア11のキー12aが支持部材80の係合溝83に嵌合することで、支持部材80に対するコア11の位置決めがなされる。
【0029】
ロータ10の製造に際して、支持部材80は、コア11及び磁石30を支持した状態で第1型50に載置される。このとき、支持部材80の支持プレート81は、第1型50とコア11との間に挟み込まれた状態になる。詳しくは、支持プレート81の厚さ方向における一端面81aは、コア11の第1端面11aに接触した状態になる。この一端面81aは、コア11の第1端面11aにおいて開口する全ての磁石収容孔13の開口を覆う大きさを有している。また、支持プレート81の厚さ方向における他端面81bは、第1型50の第1接触面51に接触した状態になる。
【0030】
ポスト部82の先端部(図3における上端)には、複数の嵌合ピン84が設けられている。複数の嵌合ピン84は、ポスト部82の周方向に等間隔に設けられている。嵌合ピン84は、ポスト部82の先端側に向かって突出する円柱状をなしている。ロータ10の製造に際しては、ゲートプレート65がコア11の第2端面11bに載置される。このとき、ポスト部82の嵌合ピン84がゲートプレート65の嵌合孔65aに嵌合することで、支持部材80及びコア11に対するゲートプレート65の位置決めがなされる。
【0031】
<ロータ10の製造方法>
ロータ10の製造方法は、潰し工程、第1配置工程、第2配置工程、型締め工程、加熱工程、射出工程、冷まし工程、取り出し工程、矯正工程、及び固化工程を備えている。潰し工程、第1配置工程、第2配置工程、型締め工程、加熱工程、射出工程、冷まし工程、取り出し工程、矯正工程、及び固化工程は、この順で行われる。
【0032】
<潰し工程>
図4に二点鎖線にて示すように、第1鉄心片21と第2鉄心片22とが互いにかしめられた状態において、第2鉄心片22に隣接する第1鉄心片21のダボ21aの突端は、第2鉄心片22の貫通孔22aから外部に突出することがある。
【0033】
潰し工程では、第2鉄心片22の貫通孔22aから突出したダボ21aの突端が押圧治具70によって押圧されることにより、ダボ21aが潰される。潰し工程では、ダボ21aの突端が貫通孔22aの内部に位置するようにダボ21aが潰される。
【0034】
<第1配置工程>
図5に示すように、第1配置工程では、コア11及び磁石30を支持した状態の支持部材80が、第1型50の第1接触面51に載置される。
【0035】
このときコア11は、各磁石収容孔13に磁石30が収容された状態になっている。このとき、コア11の第1端面11aが第1型50の第1接触面51に対向する。また、支持プレート81の一端面81aによってコア11の第1端面11aの全体が覆われる。すなわち、支持プレート81の一端面81aによって第1端面11aにおいて開口する全ての磁石収容孔13の開口が閉塞される。このとき、各磁石30の下面は、支持プレート81の一端面81aに接触する。また、各磁石30の上面は、コア11の第2端面11bよりも下方に位置する。このとき支持プレート81は第1型50とコア11の第1端面11aとの間に挟み込まれた状態になる。
【0036】
<第2配置工程>
図6に示すように、第2配置工程では、ゲートプレート65がコア11の第2端面11bに載置される。このとき、第2接触面66によって第2端面11bの全体が覆われる。また、ゲートプレート65の各ゲート68がコア11の磁石収容孔13に連通される。各ゲート68は、例えば、磁石30の上面に対向する位置に配置される。
【0037】
<型締め工程>
型締め工程では、第1型50及び第2型60の型締めが行われる。
この型締めの途中において、第2型60の型本体61がコア11とは反対側からゲートプレート65に接触する。これにより、型本体61のスプルー62がゲートプレート65のランナー67に連通する。このとき、磁石収容孔13に磁石30が収容された状態のコア11は第1型50と第2型60との間に挟み込まれた状態になる。このときコア11の第1端面11aは第1型50の第1接触面51に対向する状態、詳しくは第1端面11aと第1接触面51との間に支持プレート81が挟み込まれた状態になっている。また、コア11の第2端面11bは第2型60の第2接触面66に接触した状態になっている。
【0038】
その後において第1型50及び第2型60の型締めが進むと、図6中に白抜きの矢印で示すように、第2型60によってコア11の第2端面11bが押圧されることにより、同コア11の第1端面11aが支持プレート81を介して第1型50に押し付けられる。このように本実施形態では、型本体61によってゲートプレート65を介してコア11の第2端面11bが押圧される。
【0039】
ここで、鉄心片20のダボ21a同士がかしめられた状態で積層されたコア11では、隣接する鉄心片20同士の間に、僅かに隙間が生じていることがある。型締め工程では、こうしたコア11の第2端面11bが第2型60によって押圧されることにより、鉄心片20同士の隙間が埋まるように鉄心片20同士が密着する。これにより、コア11の積層高さが減少する。
【0040】
図7(a)及び図7(b)に示すように、コア11の積層高さが減少すると、コア11の第2端面11bから磁石30の上面までの積層方向における距離H1が距離H2に減少する。すなわち、型締め工程では、第2端面11bが第2型60によって押圧されることにより、コア11の積層高さが減少するため、積層方向においてゲートプレート65と磁石30との間に樹脂31が流通する流通空間Sが生じる。ゲート68から吐出される樹脂31は、流通空間Sを介して磁石収容孔13に導入される。
【0041】
ところで、型締め工程において第2型60による押圧力が小さい場合には、その後の射出工程において磁石収容孔13に樹脂31を射出する際に、樹脂31が鉄心片20同士の隙間を通じて磁石収容孔13の外部に漏出するおそれがある。一方、第2型60による押圧力が大きい場合、磁石収容孔13に充填された樹脂31の固化後に当該押圧力が解除された際に、各鉄心片20のスプリングバックによってコア11の積層高さが増大するおそれがある。このとき、各鉄心片20同士の間には、スプリングバックに起因した隙間が生じる。これらをふまえて本実施形態では、型締め工程における第2型60による押圧力が、磁石収容孔13からの樹脂31の漏出が生じない、且つスプリングバックによって各鉄心片20同士の間に隙間が生じない大きさに設定されている。
【0042】
<加熱工程>
加熱工程では、第1ヒータ52に通電されることにより第1型50が加熱されるとともに、第2ヒータ63に通電されることにより第2型60の型本体61が加熱される。第1ヒータ52及び第2ヒータ63による加熱は、磁石収容孔13に充填された樹脂31の温度を同樹脂31の融点未満にすることが可能になる態様であって、且つ、樹脂31のガラス転移点以上に維持することが可能になる態様で実行される。第1型50の加熱温度及び型本体61の加熱温度としては、例えば、樹脂31のガラス転移点以上、且つ融点未満の温度が設定される。第1型50の加熱温度及び型本体61の加熱温度は、例えば、同一の温度に設定されている。なお、第1型50の熱は支持プレート81を介してコア11に伝達される。また、型本体61の熱はゲートプレート65を介してコア11に伝達される。これらのことから、樹脂31の温度をガラス転移温度以上に維持する上では、第1型50の加熱温度及び型本体61の加熱温度は、ガラス転移点よりも高い温度に設定することが好ましい。
【0043】
<射出工程>
図8に示すように、射出工程では、射出装置100によって、第2型60の流路Pを介して各磁石収容孔13に樹脂31が射出される。詳しくは、射出装置100から射出された樹脂31が、スプルー62、ランナー67、及びゲート68を介して磁石収容孔13に射出される。これにより、磁石収容孔13に樹脂31が充填される。
【0044】
射出工程では、型締め工程における第2型60の押圧が継続された状態で樹脂31が射出される。すなわち、射出工程では、コア11の第1端面11aが第1型50の第1接触面51に押し付けられた状態で樹脂31が射出される。また射出工程では、加熱工程における第1型50及び型本体61の加熱が継続された状態で樹脂31が射出される。
【0045】
<冷まし工程>
冷まし工程では、射出工程における樹脂31の射出が停止された後に、所定時間にわたり、製造装置40がそのままで放置される。このとき、コア11が空冷される。これにより、磁石収容孔13に充填された樹脂31が冷まされる。
【0046】
上記所定時間としては、射出工程における樹脂31の射出が停止されてから、磁石収容孔13に充填された樹脂31の温度が所望の温度(詳しくは、ガラス転移点以上、且つ融点未満の所定温度)に低下するまでに要する時間が定められている。本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、そうした要件を満たす時間が予め求められるとともに、同時間が上記所定時間として定められている。
【0047】
冷まし工程では、型締め工程において第2型60が押圧された状態、すなわちコア11の第1端面11aが第1型50の第1接触面51に押し付けられた状態が維持される。また冷まし工程では、加熱工程において第1型50及び型本体61が加熱された状態が維持される。
【0048】
<取り出し工程>
取り出し工程では、第1型50及び第2型60の型開きを行う。そして、第1型50と第2型60との間から、コア11、磁石30及び樹脂31が支持部材80に支持された状態のままで取り出される。
【0049】
こうしたコア11、磁石30、樹脂31及び支持部材80の取り出しは、冷まし工程が終了したタイミング、詳しくは前記所定時間が経過したタイミングで行われる。これにより、取り出し工程では、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、第1型50と第2型60との間からのコア11及び磁石30の取り出しが行われる。このとき、磁石収容孔13に充填された樹脂31は軟質のゴム状になっている。
【0050】
<矯正工程>
図9に示すように、矯正工程では、磁石30及び樹脂31が設けられたコア11が支持部材80から取り外される。そして、取り外されたコア11が形状矯正用の矯正治具90に取り付けられる。
【0051】
図10に矯正治具90を示す。図10に示すように、矯正治具90は、基本構造が支持部材80と同一になっている。矯正治具90は、略矩形板状の支持プレート91と、同支持プレート91の平面視の中央部から突出する円筒状のポスト部92とを備えている。ポスト部92は、支持プレート91の厚さ方向に延びている。矯正治具90にコア11を取り付ける際には、矯正治具90のポスト部92がコア11の中心孔12に挿入される。ポスト部92の外周面には、一対の係合溝93が設けられている。各係合溝93はポスト部92の延設方向に延びている。係合溝93は、コア11のキー12aに対応する形状をなしている。矯正治具90にコア11を取り付ける際には、コア11のキー12aが矯正治具90の係合溝93に嵌合する。
【0052】
矯正治具90の形状と支持部材80の形状とは、次の点において異なる。矯正治具90のポスト部92の断面形状とコア11の中心孔12の断面形状との差分が、支持部材80のポスト部82の断面形状とコア11の中心孔12の断面形状との差分よりも小さくなっている。詳しくは、矯正治具90のポスト部92の外径が、支持部材80のポスト部82の外径よりも小さい。また、矯正治具90の係合溝93の幅は、支持部材80の係合溝93の幅よりも小さい。
【0053】
矯正工程では、上記矯正治具90にロータ10を取り付けることで、ロータ10の形状が矯正される。詳しくは、支持部材80のポスト部82よりも外径が大きい矯正治具90のポスト部92をコア11の中心孔12に嵌めることで、コア11を構成する各鉄心片20の径方向における位置のずれが矯正される。また、支持部材80の係合溝83よりも幅が狭い矯正治具90の係合溝93にコア11のキー12aを嵌めることで、コア11を構成する各鉄心片20の周方向における位置のずれが矯正される。なお、こうした矯正治具90によるロータ10の形状矯正は、磁石収容孔13に充填された樹脂31が軟質のゴム状になっていることにより実現される。
【0054】
<固化工程>
固化工程では、例えば、コア11を矯正治具90に取り付けた状態のままで所定時間にわたり放置することにより、同コア11を空冷する。これにより、磁石収容孔13に充填された樹脂31が固化する。このようにして、ロータ10が製造される。
【0055】
最後に、ロータ10が矯正治具90から取り外される。
<作用効果>
以下、本実施形態におけるロータ10の製造方法の作用効果について説明する。
【0056】
(1)型締め工程では、磁石収容孔13に磁石30が収容された状態のコア11を第1型50と第2型60との間に挟み込む態様で、第1型50及び第2型60の型締めを行う。その後の射出工程では、磁石収容孔13に樹脂31を射出する。その後の取り出し工程では、第1型50及び第2型60の型開きを行うとともに、第1型50と第2型60との間からコア11及び磁石30が取り出す。取り出し工程では、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、コア11及び磁石30の取り出しを行う。
【0057】
熱可塑性の樹脂31は、その温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときには、液状と硬質のガラス状との間の状態、詳しくは軟質のゴム状になる。このときには、磁石収容孔13に射出された樹脂31は、未だ硬質のガラス状になってはいないものの、軟質のゴム状、すなわち磁石収容孔13から流出することなく同磁石収容孔13の内部に留まる状態になっている。
【0058】
上記方法によれば、第1型50と第2型60との間からのロータ10の取り出しを、樹脂31の温度が、ガラス転移点以上、且つ融点未満の所定温度になったタイミングで行うことができる。そのため、磁石収容孔13から樹脂31を流出させない態様でのロータ10の取り出しを、磁石収容孔13内の樹脂31が十分に固化したタイミングで行う場合と比較して、早いタイミングで行うことができる。したがって、射出工程において磁石収容孔13に射出する樹脂31の温度を低くせずとも、磁石収容孔13に充填された樹脂31を第1型50と第2型60との間で冷ます期間を短くすることが可能になる。これにより射出成形のサイクルタイムを短くすることが可能になるため、ロータ10の生産性を向上させることができる。
【0059】
(2)取り出し工程の後の矯正工程では、コア11が形状矯正用の矯正治具90に取り付けられる。
上記方法によれば、温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときには軟質のゴム状になるといった熱可塑性の樹脂31の特性を利用して、ロータ10の製造を以下のように実行することができる。すなわち、射出工程においては、コア11についてのある程度の形状誤差を許容した状態で、磁石収容孔13への樹脂31の射出を行うことができる。その後の矯正工程において、コア11を矯正治具90に取り付けることで、コア11の形状を誤差の小さい形状に矯正することができる。
【0060】
(3)型締め工程では、コア11の第1端面11aを第1型50に対向させるとともにコア11の第2端面11bを第2型60に接触させる態様で、第1型50及び第2型60の型締めを行う。その後の射出工程では、磁石収容孔13への樹脂31の射出を、磁石収容孔13に連通する態様で第2型60に設けられた流路Pを介して行い、且つ、第1型50を加熱した状態で行う。
【0061】
上記方法によれば、射出工程では、コア11の第2端面11bに接触する第2型60の流路Pを介して、磁石収容孔13に熱可塑性の樹脂31が充填される。このとき、射出された樹脂31の温度は、磁石収容孔13の内部において第2端面11bから第1端面11aに近付くほど低下しやすくなる。射出工程では、コア11の第1端面11aの側に配置された第1型50により支持プレート91を介してコア11が加熱された状態で、磁石収容孔13に樹脂31が射出される。これにより、樹脂31が磁石収容孔13の内部において第2端面11bから第1端面11aに近付く際に、樹脂31の温度が低下しにくくなる。このため、樹脂31の粘度が増大しにくくなる。その結果、樹脂31の射出圧が増大することを抑制できる。また、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度がガラス転移点を下回ることを抑えることができる。
【0062】
(4)型締め工程では、第2型60によってコア11の第2端面11bを押圧することにより、同コア11の第1端面11aを支持プレート81を介して第1型50に押し付ける態様で、第1型50及び第2型60の型締めを行う。
【0063】
上記方法によれば、コア11の第1端面11aが支持プレート81を介して第1型50に押し付けられることにより、第1端面11aと支持プレート81との接触面積が増加するとともに、第1端面11aと支持プレート81との間の空気層が減少する。その結果、加熱された第1型50の温度が支持プレート81を介してコア11に熱伝達しやすくなるため、コア11を早期に加熱することができる。したがって、ロータ10の生産性を向上させることができる。
【0064】
(5)型締め工程では、積層方向において複数の鉄心片20同士を密着させることでコア11の積層高さを減少させつつ、積層方向において第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じるように第2端面11bが押圧される。
【0065】
積層方向に隣り合う鉄心片20同士の間に隙間が存在する場合、射出工程において、当該隙間から樹脂31が漏出するおそれがある。この場合、鉄心片20同士の隙間を埋めるべく、コア11を押圧した状態で射出工程を行うことが考えられる。しかしながら、コア11を押圧することでコア11の積層高さが過度に小さくなると、第2型60が磁石収容孔13に収容された磁石30の端面に接触するおそれがある。この場合、磁石30の端面によって第2型60の流路Pが閉塞されるため、磁石収容孔13に樹脂31が充填されないおそれがある。なお、鉄心片20同士の隙間から樹脂31が漏出するといった課題は、熱硬化性樹脂よりも射出圧が大きくなりやすい熱可塑性樹脂の場合に特に顕著となる。
【0066】
この点、上記方法によれば、コア11が押圧されることにより鉄心片20同士が密着することでコア11の積層高さが減少しつつ、第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じる。したがって、鉄心片20同士の隙間からの樹脂31の漏出を抑制しつつ、磁石収容孔13に樹脂31を充填することができる。
【0067】
(6)射出工程では、第2型60が加熱された状態で磁石収容孔13に樹脂31が射出される。
上記方法によれば、第2型60が加熱されることにより、樹脂31が流路Pを通過する際に樹脂31の温度が低下しにくくなる。このため、樹脂31が磁石収容孔13に到達するまでの間に樹脂31の温度が低下しにくくなる。したがって、樹脂31の射出圧が増大することを抑制できる。
【0068】
(7)型締め工程では、コア11及び磁石30を支持する支持プレート81を第1型50とコア11の第1端面11aとの間に挟み込む態様で、第1型50及び第2型60の型締めを行う。
【0069】
上記方法によれば、コア11及び磁石30を支持した支持プレート81を型開きされた第1型50と第2型60との間に移動させることにより、コア11及び磁石30を第1型50と第2型60との間に搬送することができる。また、コア11及び磁石30を支持した支持プレート81を第1型50と第2型60との間から移動させることにより、コア11及び磁石30を第1型50と第2型60との間から搬送することができる。したがって、第1型50と第2型60との間へのコア11及び磁石30の搬送や、第1型50と第2型60との間からのコア11及び磁石30の搬送を、支持プレート81を利用して容易に行うことができる。
【0070】
(8)コア11における複数の鉄心片20の積層方向の端部には第2鉄心片22が位置する。この第2鉄心片22の貫通孔22aから第1鉄心片21のダボ21aが突出している場合、第1型50と第2型60との型締め時に上記ダボ21aの突端が支持プレート81に接触する。その結果、コア11と支持プレート81との間に隙間が生じるおそれがある。また、コア11の上下を図5と逆にして支持プレート81に支持した場合には、第1型50と第2型60との型締め時に上記ダボ21aの突端がゲートプレート65に接触する。その結果、コア11とゲートプレート65との間に隙間が生じるおそれがある。これらの場合、射出工程でコア11の磁石収容孔13に射出された樹脂31が上記隙間から漏れる。しかし、射出工程の前に潰し工程で、上記ダボ21aの突端が貫通孔22aの内部に位置するように押し潰されるため、上記隙間が生じることは抑制される。したがって、射出工程でコア11の磁石収容孔13に射出された樹脂31が上記隙間から漏れることも抑制される。また、上記隙間がコア11と支持プレート81との間に生じた場合、両者の接触面積が減少することにより、第1型50の熱が支持プレート81を介してコア11に伝達されにくくなる。こうしたことが抑制される。
【0071】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
図11に示すように、支持プレート81は、コア11側の端面である一端面81aに形成された複数の収容凹部81cを有するものであってもよい。各収容凹部81cは、コア11の第1端面11aに開口する貫通孔22aから突出したダボ21aの突端を収容する。この場合、射出工程では、収容凹部81cに貫通孔22aから突出したダボ21aの突端が収容された状態で、磁石収容孔13に樹脂31が射出される。この方法によれば、支持プレート81がコア11の第1端面11aに接触する際に、ダボ21aの突端が収容凹部81cに収容される。これにより、支持プレート81が収容凹部81cを有していない場合と比較して、支持プレート81と第1端面11aとの接触面積を増加させることができる。その結果、加熱された第1型50の温度が支持プレート81を介してコア11に熱伝達しやすくなる。したがって、コア11を所望の温度まで上昇させるために要する時間を短くできる。また、上記実施形態における潰し工程を省略することができる。
【0073】
・コア11は、複数の第1鉄心片21と1つの第2鉄心片22とが積層されることにより構成された積層ブロックが複数積層されることにより構成されるものであってもよい。この場合、積層ブロック同士は、例えば、樹脂31によって互いに固定される。
【0074】
・鉄心片20同士は、ダボ21aがかしめられることにより互いに結合されるものでなくてもよい。鉄心片20同士は、例えば、樹脂31によって互いに接合されるものであってもよい。
【0075】
・型締め工程では、第2型60と磁石30との間に流通空間Sが生じなくてもよい。この場合、ゲート68の位置は、磁石収容孔13のうち磁石30が存在しない位置に設定されることが好ましい。
【0076】
・型締め工程では、第2型60によってコア11の第2端面11bが押圧されなくてもよい。
・第1型50の加熱温度は、第2型60の加熱温度よりも高くてもよい。この場合、磁石収容孔13の積層方向における温度勾配が小さくなるため、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度が低下しにくくなる。
【0077】
・加熱工程では、型本体61が加熱されなくてもよい。この場合、ゲートプレート65が加熱されないため、射出工程後に流路Pに残留した樹脂31が早期に固化する。このため、固化工程後にゲートプレート65をロータ10から早期に分離することができる。
【0078】
・射出工程において、第1型50及び第2型60の加熱を停止した直後に、樹脂31を射出してもよい。すなわち、樹脂31の射出直前にコア11が十分に加熱されていれば、樹脂31の射出時には、第1型50及び第2型60の加熱が停止されていてもよい。
【0079】
・射出工程の前に、コア11が予備加熱されてもよい。
・加熱工程では、第1型50が加熱されなくてもよい。要は、磁石収容孔13に射出された樹脂31の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、第1型50と第2型60との間からコア11を取り出すことができればよい。
【0080】
・製造装置40は、可動型である第1型50と、固定型である第2型60とを備えていてもよい。この場合、第2型60に載置されたコア11に対して第1型50が近接することで型締めが行われる。
【0081】
・ゲートプレート65は、第2型60に対して進退可能に連結されたものであってもよい。
・ゲートプレート65は、第2型60から省略されてもよい。この場合、第2型60の内部に、ランナー67及びゲート68に相当する流路Pが形成されていればよい。
【0082】
・矯正工程を省略してもよい。この場合、支持部材80として、矯正治具90と同一形状のものを用いることで、ロータ10を高い精度で製造することができる。
・支持部材80を省略してもよい。この場合、コア11の第1端面11aを第1型50の第1接触面51に接触させるとともに同コア11の第2端面11bを第2型60の第2接触面66に接触させる態様で同コア11を第1型と第2型との間に挟み込んだ状態で型締めすればよい。
【0083】
・樹脂31は、液晶ポリマーに限定されず、他に例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、及び66ナイロンなどのPA(ポリアミド)であってもよい。
【0084】
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]第1端面、及び前記第1端面とは反対側に位置する第2端面に開口する磁石収容孔を有するコアと、前記磁石収容孔に収容されるとともに熱可塑性の樹脂を介して前記コアに固定される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石が収容された状態の前記コアを第1型と第2型との間に挟み込む態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う型締め工程と、前記型締め工程の後に、前記磁石収容孔に前記樹脂を射出する射出工程と、前記射出工程の後に、前記第1型及び前記第2型の型開きを行うとともに、前記第1型と前記第2型との間から前記コア及び前記磁石を取り出す取り出し工程と、を備え、前記取り出し工程では、前記磁石収容孔に射出された前記樹脂の温度がガラス転移点以上、且つ融点未満であるときに、前記第1型と前記第2型との間からの前記コア及び前記磁石の取り出しを行う、ロータの製造方法。
【0085】
[付記2]前記取り出し工程の後に、前記コアを形状矯正用の矯正治具に取り付ける矯正工程を備える、[付記1]に記載のロータの製造方法。
[付記3]前記型締め工程では、前記第1端面を前記第1型に対向させるとともに前記第2端面を前記第2型に接触させる態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行い、前記射出工程では、前記磁石収容孔への前記樹脂の射出を、前記磁石収容孔に連通する態様で前記第2型に設けられた流路を介して行い、且つ、前記第1型を加熱した状態で行う、[付記1]または[付記2]に記載のロータの製造方法。
【0086】
[付記4]前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記型締め工程では、前記第2型によって前記第2端面を押圧することにより、前記第1端面を前記第1型の側に押し付ける態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、[付記3]に記載のロータの製造方法。
【0087】
[付記5]前記コアにおける前記第1端面から前記第2端面までの高さを積層高さとするとき、前記複数の鉄心片の積層方向における前記磁石の長さは、前記積層高さよりも短く、前記型締め工程では、前記積層方向において前記複数の鉄心片同士を密着させることで前記積層高さを減少させつつ、前記積層方向において前記第2型と前記磁石との間に隙間が生じるように前記第2端面を押圧する、[付記4]に記載のロータの製造方法。
【0088】
[付記6]前記型締め工程では、前記第1端面を前記第1型に対向させるとともに前記第2端面を前記第2型に接触させる態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行い、前記射出工程では、前記磁石収容孔への前記樹脂の射出を、前記磁石収容孔に連通する態様で前記第2型に設けられた流路を介して行い、且つ、前記第2型を加熱した状態で行う、[付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載のロータの製造方法。
【0089】
[付記7]前記型締め工程では、前記コア及び前記磁石を支持する支持プレートを前記第1型と前記コアの前記第1端面との間に挟み込む態様で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、[付記1]~[付記6]のいずれか一つに記載のロータの製造方法。
【0090】
[付記8]前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面を構成する第2鉄心片と、を含み、前記型締め工程では、前記支持プレートに形成された収容凹部に前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を収容した状態で、前記第1型及び前記第2型の型締めを行う、[付記7]に記載のロータの製造方法。
【0091】
[付記9]前記コアは、複数の鉄心片が積層されることにより構成されるものであり、前記複数の鉄心片は、前記複数の鉄心片の積層方向における一方側に膨出するダボを有し、前記ダボ同士が互いに結合された状態で積層された複数の第1鉄心片と、前記ダボが挿入される貫通孔を有し、前記第1端面または前記第2端面を構成する第2鉄心片と、を含み、前記型締め工程の前に、前記貫通孔から突出した前記ダボの突端を押圧することにより、前記突端が前記貫通孔の内部に位置するように前記突端を潰す潰し工程を備える、[付記1]~[付記7]のいずれか一つに記載のロータの製造方法。
【符号の説明】
【0092】
P…流路
S…流通空間
10…ロータ
11…コア
11a…第1端面
11b…第2端面
12…中心孔
12a…キー
12b…
13…磁石収容孔
20…鉄心片
21…第1鉄心片
21a…ダボ
22…第2鉄心片
22a…貫通孔
30…磁石
31…樹脂
40…製造装置
50…第1型
51…第1接触面
52…第1ヒータ
60…第2型
61…型本体
62…スプルー
63…第2ヒータ
65…ゲートプレート
65a…嵌合孔
66…第2接触面
67…ランナー
68…ゲート
70…押圧治具
80…支持部材
81…支持プレート
81a…一端面
81b…他端面
81c…収容凹部
82…ポスト部
83…係合溝
84…嵌合ピン
90…矯正治具
91…支持プレート
92…ポスト部
93…係合溝
100…射出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11