(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157337
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241030BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CET
C08K5/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071636
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】大利 隆史
(72)【発明者】
【氏名】平山 周平
(72)【発明者】
【氏名】小暮 直親
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA13
4F074AA32
4F074AA33
4F074AC02
4F074AC17
4F074AD16
4F074AG10
4F074BA32
4F074BA34
4F074BA38
4F074BA53
4F074BA73
4F074BA75
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC22X
4F074CD08
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA18
4F074DA32
4J002BC051
4J002BC111
4J002BP011
4J002EB067
4J002EW046
4J002FD136
4J002FD327
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】優れた難燃性および耐熱性を有する押出発泡板を製造可能であり、かつ、幅300mm以上の押出発泡板の製造においても、押出発泡板の成形性が良好であるポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂、難燃剤および物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m3以上50kg/m3以下、幅300mm以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する方法であって、前記難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体と、融点が80℃以下であるリン系難燃剤とを含み、前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量が前記基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下であり、前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.15を超え0.5以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂、難燃剤および物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m3以上50kg/m3以下、幅300mm以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する方法であって、
前記難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体と、融点が80℃以下であるリン系難燃剤とを含み、
前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量が前記基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下であり、
前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.15を超え0.5以下である、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項2】
前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.18以上0.5以下である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項3】
前記発泡性溶融樹脂組成物はグラファイトを含み、前記グラファイトの添加量が前記基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項4】
前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤がトリフェニルホスフェート及びクレジルジフェニルホスフェートからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項5】
前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、前記基材樹脂中の前記スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が8質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項6】
前記発泡性溶融樹脂組成物中の前記(メタ)アクリル酸エステル成分に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が、0.03~0.15である、請求項5に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項7】
前記発泡性溶融樹脂組成物は前記物理発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含み、前記ハイドロフルオロオレフィンの前記基材樹脂1kgに対する添加量が0.1mol以上1.3mol以下である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材樹脂に気泡調整剤を加え、押出機で加熱混練し、次いで物理発泡剤を押出機中に圧入し更に混練し、得られた発泡性溶融樹脂組成物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出し、押出機のダイ出口に連結された賦形装置により板状に賦形して、ポリスチレン系樹脂押出発泡板を得る方法が知られている。ポリスチレン系樹脂押出発泡板は、熱伝導率が小さく断熱性に優れていることから、建築物の壁、床、屋根等の断熱材として好適に用いられている。
【0003】
本出願人は、優れた断熱性および難燃性を有するポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法を提案している(例えば、特許文献1)。特許文献1のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法においては、押出発泡板に難燃性を付与するために、発泡性溶融樹脂組成物中に臭素系難燃剤が添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリスチレン系樹脂押出発泡板においては、さらに高度な難燃性や耐熱性が求められる場合がある。この場合、例えば特許文献1のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法においては、所望の難燃性をより確実に付与するために発泡性溶融樹脂組成物中の臭素系難燃剤の添加量を増量することも考えられる。
【0006】
しかしながら、臭素系難燃剤の添加量を増量すると、押出発泡板の成形性が悪化しやすく、特に、幅300mm以上の押出発泡板の製造においては、押出発泡板の幅方向の端部の成形性がさらに悪化してしまう点に更なる改善の余地があると考えられた。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、所望の難燃性および耐熱性を有する押出発泡板を製造可能であり、かつ、幅300mm以上の押出発泡板の製造においても、押出発泡板の成形性が良好であるポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、以下のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法が提供される。
【0009】
[1]ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂、難燃剤および物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m3以上50kg/m3以下、幅300mm以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する方法であって、
前記難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体と、融点が80℃以下であるリン系難燃剤とを含み、
前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量が前記基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下であり、
前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.15を超え0.5以下である、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[2]前記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.18以上0.5以下である、前記[1]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[3]前記発泡性溶融樹脂組成物はグラファイトを含み、前記グラファイトの添加量が前記基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下である、前記[1]または[2]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[4]前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤がトリフェニルホスフェート及びクレジルジフェニルホスフェートからなる群から選択される1種以上である、前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板板の製造方法。
[5]前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、前記基材樹脂中の前記スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が8質量%以上40質量%以下である、前記[1]から[4]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[6]前記発泡性溶融樹脂組成物中の前記(メタ)アクリル酸エステル成分に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が、0.03~0.15である、前記[1]から[5]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[7]前記発泡性溶融樹脂組成物は前記物理発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含み、前記ハイドロフルオロオレフィンの前記基材樹脂1kgに対する添加量が0.1mol以上1.3mol以下である、前記[1]から[6]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、所望の難燃性および耐熱性を有する押出発泡板を製造することができ、押出発泡板の成形性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法の一実施形態について説明する。
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂、難燃剤および物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む。このような工程により、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法では、見掛け密度20kg/m3以上50kg/m3以下、幅300mm以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板(以下、「押出発泡板」と記載する場合がある)が製造される。
【0013】
具体的には、例えば、基材樹脂に、難燃剤、更に気泡調整剤等の添加剤を加えて押出機に供給し、加熱混練し、次いで物理発泡剤を押出機中に圧入し更に混練して発泡性樹脂組成物とする。この発泡性樹脂組成物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出して発泡させ、得られた発泡体を押出機のダイ出口に連結された賦形装置(ガイダー等)を用いて板状に賦形することにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡板が製造される。賦形装置としては、例えば、上下一対のポリテトラフルオロエチレン製の板で構成される装置を用いることができる。
【0014】
<基材樹脂>
基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂を主成分として含む。本明細書において「主成分として含む」とは、組成物100質量%中に占める所定の成分の含有量が50質量%以上であることを意味する。具体的には、基材樹脂中のポリスチレン系樹脂の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0015】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂は、スチレンを主成分とする重合体であり、スチレン単独重合体や、スチレンと共重合し得るビニル系単量体とスチレンとの共重合体を用いることができる。
【0016】
具体的には、ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。
【0017】
上記共重合体中のスチレン成分の含有量は、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上である。また、ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼンや多分岐状マクロモノマー等の多官能性モノマー単位成分が含まれていてもよい。
【0018】
また、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、発泡性や成形性の観点から、200℃、剪断速度100sec-1の条件下で、500~3000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは1000~2500Pa・s、さらに好ましくは1500~2300Pa・sである。
【0019】
基材樹脂は、主成分として、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが好ましい。この場合には、後述する物理発泡剤としてのハイドロフルオロオレフィンを例えば0.5mоl/kg以上と比較的多量に添加することができ、より高度な断熱性を示す押出発泡板を得ることができる。一方、従来スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分として含む押出発泡板は、(メタ)アクリル酸エステル成分に由来して難燃性が低下しやすかった。これに対し、本発明では、後述する所定の難燃剤を含んでいるため、基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分として含む場合であっても、得られる押出発泡板は難燃性に優れている。
【0020】
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、スチレンと(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルとの共重合体であり、具体的には、例えば、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸プロピル共重合体などを例示することができる。なかでも、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体であることが好ましく、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。これらのスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は1種又は2種以上を混合して使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを含む概念であり、これらの一方、または双方を意味する。
【0021】
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、10質量%以上80質量%以下の範囲を例示することができる。また、難燃性、耐熱性および成形性を確保する観点から、基材樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル成分が少ないスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが好ましい。この場合、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、5質量%以上40質量%未満であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。なお、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ分析等の公知の方法により求めることができる。
【0022】
前記スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、該共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が10質量%以上50質量%以下の範囲であるものは単独で基材樹脂としてもよい。具体的には、基材樹脂中において、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が10質量%以上50質量%以下の範囲であるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有率は、例えば、20質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、100質量%を含む。一方、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が50質量%を超える範囲であるものは、例えばポリスチレン等の他のポリスチレン系樹脂と併用することにより、基材樹脂中のスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)の含有量を調整するための材料として用いることができる。
【0023】
基材樹脂中のスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)の含有量は、物理発泡剤として、ハイドロフルオロオレフィンを比較的多量に添加した場合であっても成形性の良好な押出発泡板を安定して得ることができる観点、および、得られる押出発泡板の耐熱性をより高める観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは15質量%以上である。一方、基材樹脂中のスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)の含有量は、押出発泡板の難燃性をより確実に確保する観点から、45質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。なお、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量の異なる2種以上のものを併用することができる。この場合、基材樹脂中のスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)の含有量は、それぞれのスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる(メタ)アクリル酸エステル成分含有量の合計量である。
【0024】
基材樹脂中のスチレン成分(St成分)の含有量は、押出発泡板の難燃性、耐熱性および成形性を確保する観点から、好ましくは50質量%以上97質量%以下、より好ましくは60質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0025】
(その他の重合体)
基材樹脂は、押出発泡板の断熱性、難燃性および耐熱性をより高めるために非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体を含むことができる。この場合、非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、基材樹脂中に5質量%以上50質量%未満となるように添加することが好ましく、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、更に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。なお、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体においては、JIS K7122に基づく樹脂の融解に伴う融解熱量が5J/g未満である。融解熱量は、JIS K7122(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置を使用して得られるDSC曲線に基づいて測定されるものである。
【0026】
また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、基材樹脂中に、ポリスチレン系樹脂以外の他の重合体を添加してもよい。他の重合体としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂や、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが例示される。ポリスチレン系樹脂以外の他の重合体の添加量は、基材樹脂中(基材樹脂を100質量%として)に、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
<難燃剤>
本発明において、難燃剤は、所定の臭素系難燃剤とリン系難燃剤とが添加される。具体的には、難燃剤は、臭素系難燃剤としての臭素化スチレン-ブタジエン共重合体と、融点が80℃以下であるリン系難燃剤とを含む。上記の臭素系難燃剤とリン系難燃剤とを所定の添加量及び添加割合で用いることにより、成形性に優れ、良好な難燃性および耐熱性を示す広幅の押出発泡板を製造することができる。
【0028】
臭素化スチレン-ブタジエン共重合体は、例えば、臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等のうちの1種または2種以上を例示することができる。このような臭素化スチレン-ブタジエン共重合体は、たとえばポリスチレン-ポリブタジエン共重合体を臭素化することにより製造される。本発明で好ましく用いられる臭素化スチレン-ブタジエン共重合体としては、Chemtura社のEmerald3000、ICL-IP社のFR122Pなどの市販品が挙げられる。
【0029】
ポリスチレン系樹脂中への分散性などを考慮すると、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、好ましくは100,000~200,000である。また、難燃性の観点から臭素含有率は、50~80重量%であることが好ましい。なお、上記臭素含有率は、JIS K7392:2009に基づき求めることができる。
【0030】
臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量は、基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下である。臭素化スチレン-ブタジエン共重合体を上記の添加量の範囲内において後述する所定のリン系難燃剤と併用することにより、押出発泡板の難燃性、耐熱性及び成形性を良好なものとすることができる。したがって、基材樹脂に添加する臭素系難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体を主成分として含むことが好ましく、臭素系難燃剤として臭素化スチレン-ブタジエン共重合体以外の他の臭素系難燃剤を主成分として用いた場合は、押出発泡板の難燃性、耐熱性及び成形性を満足させることが難しくなるおそれがある。また、より高度な難燃性を発現する観点から、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量は、基材樹脂100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。一方、得られる押出発泡板の成形性をより高める観点から、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量は、基材樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明において用いるリン系難燃剤は、融点が80℃以下であるリン系難燃剤を主成分として含む。融点が80℃以下のリン系難燃剤を添加しない場合には、得られる押出発泡板の難燃性が低下するおそれがある。また、融点が80℃以下のリン系難燃剤を添加しない場合には、成形性が低下し、幅の広い押出発泡板を製造する場合には、押出発泡板の表面性や端部の賦形性が損なわれるおそれがある。また、リン系難燃剤の主成分として融点が80℃を超えるリン系難燃剤を添加する場合は、得られる押出発泡板の難燃性が低下して所望の難燃性を発揮できないおそれがある。かかる観点から、リン系難燃剤の融点は70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることがさらに好ましい。リン系難燃剤の融点の下限は特に制限されないが、-70℃を目安にすることができ、好ましくは-50℃である。リン系難燃剤の融点は、JIS K7121:1987に基づき求められる。具体的には、状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節された試験片を昇温することによりDSC曲線を取得し、該融解ピークの頂点温度を融点とする。加熱速度及び冷却速度は10℃/minとする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0032】
融点が80℃以下のリン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、キシリルジフェニルフォスフェート、レゾルシノルビス(ジフェニル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)などのリン酸エステル類が好ましく例示される。これらは1種を添加してもよく、2種以上を添加してもよい。なかでも、リン系難燃剤は、芳香族リン酸エステル類であることが好ましく、トリフェニルホスフェート(TPP)及びクレジルジフェニルホスフェート(CDP)からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、トリフェニルホスフェート(TPP)であることがさらに好ましい。なお、融点が80℃以下のリン系難燃剤として2種以上を添加する場合には、各リン系難燃剤の融点を別個に測定するものとする。
【0033】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法においては、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の添加量の比(換言すると、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比)は、0.15を超え0.5以下である。臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.15以下の場合、押出発泡板の難燃性が低下したり、成形性が低下するおそれがあり、特に、幅の広い押出発泡板を製造しようとする際には端部の賦形性が不十分となるおそれがある。幅の広い押出発泡板であっても端部の賦形性を十分に高める観点からは、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する前記融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.18以上であることが好ましい。一方、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.5を超える場合、押出発泡板の耐熱性が低下するおそれがある。かかる観点から、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比が0.4以下であることが好ましい。
【0034】
リン系難燃剤の添加量は、押出発泡板の難燃性、耐熱性及び成形性をより確実に良好なものとすることができる観点から、基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以上1.5質量部以下であることがさらに好ましい。リン系難燃剤は、本発明の目的効果を阻害しない範囲において融点が80℃を超えるリン系難燃剤が含まれていてもよい。ただし、融点が80℃を超えるリン系難燃剤の添加量は、融点80℃以下のリン系難燃剤100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、融点が80℃を超えるリン系難燃剤を実質的に含まないことが特に好ましい。
【0035】
難燃剤の添加量は、JIS A9521:2017の燃焼性試験方法に規定される「試験方法A」に記載の押出法ポリスチレンフォーム断熱板を対象とする燃焼性規格のような高度な難燃性を満足する観点から、難燃剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部が好ましく、5質量部以上12質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
基材樹脂として、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合において、基材樹脂中のスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)の含有量(質量%)に対するリン系難燃剤の添加量(質量部)の比(換言すると、発泡性溶融樹脂組成物中の前記(メタ)アクリル酸エステル成分(M成分)に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比(リン系難燃剤/M成分))は、0.03~0.15であることが好ましい。前記の比(リン系難燃剤/M成分)がこの範囲であると、基材樹脂中にスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分を含む場合であっても難燃性をより高めることができるとともに、成形性をより確実に高めることができる。
【0037】
さらに、本発明おいては、押出発泡板の難燃性をさらに向上させることを目的として、その他の臭素系難燃剤や難燃助剤を併用して添加することができる。
【0038】
その他の臭素系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2-ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等のうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの他の臭素系難燃剤の添加量は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体以外の他の臭素系難燃剤を実質的に含まないことが特に好ましい。
【0039】
難燃助剤としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン等のリン系化合物等のうちの1種または2種以上を例示することができる。難燃助剤を添加する場合、その添加量は、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.01~1質量部であり、0.05~0.5質量部であることが好ましい。
【0040】
難燃剤を基材樹脂を含む熱可塑性樹脂へ添加する方法としては、所定割合の難燃剤を熱可塑性樹脂と共に押出機の上流部に設けられている原料供給部に供給し、押出機中にて熱可塑性樹脂と共に混練する方法を例示することができる。その他、押出機中に設けられた難燃剤供給部より熱可塑性樹脂溶融物中に難燃剤を供給することもできる。なお、難燃剤を押出機に供給する場合、難燃剤と熱可塑性樹脂とをドライブレンドしたものを押出機に供給する方法、予め加熱溶融させた液状の難燃剤を押出機内に供給する方法や、難燃剤およびベースレジンとしての熱可塑性樹脂を含むマスターバッチを作製して押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の観点から難燃剤を含むマスターバッチを作製して押出機に供給する方法を採用することが好ましい。なお、難燃剤を含むマスターバッチを作製して押出機に供給する方法を採用する場合、上記臭素化スチレン-ブタジエン共重合体とリン系難燃剤とは、同一のマスターバッチ中に配合したマスターバッチとして供給してもよく、それぞれ別々のマスターバッチとして供給してもよい。なお、難燃助剤の配合方法についても同様である。
【0041】
<物理発泡剤>
物理発泡剤は、オゾン破壊係数がゼロ又は極めて低く、かつ地球温暖化係数の低いものであることが好ましい。物理発泡剤は、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の熱伝導率を低下させることを目的に、少なくとも炭素数3~5の飽和炭化水素及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選択される1以上の物理発泡剤を使用することが好ましい。
【0042】
炭素数3~5の飽和炭化水素としては、具体的には、プロパン、ブタン、及びペンタンを例示することができる。これらの発泡剤は単独でまたは2種以上を併用することもできる。なお、前記炭素数3~5の飽和炭化水素は、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が非常に小さい他、気体状態の熱伝導率が低い。
【0043】
ハイドロフルオロオレフィンは、具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、HFO1234zeともいう)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、HFO1233zdともいう)、1-クロロ-2,3,3,3-テロラフルオロプロペン(以下、HFO1224ydともいう)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)等を例示することができる。これらの発泡剤は単独でまたは2種以上を併用することもできる。なお、前記ハイドロフルオロオレフィンは、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が非常に小さい他、気体状態の熱伝導率が低く、不燃性である。
【0044】
また、ハイドロフルオロオレフィンの中でも、特に熱伝導率が低い押出発泡板を得る観点からは、HFO1234ze、HFO1233zdおよびHFO1224ydから選択される1種以上を用いることが好ましい。得られる押出発泡板の成形性をより高めるとともに、長期断熱性をより高める観点からは、ハイドロフルオロオレフィンとしてHFO1234zeとHFO1233zdとを併用することが好ましい。
【0045】
ハイドロフルオロオレフィンの添加量は、基材樹脂1kg当たり0.1mol以上1.5mol以下であることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの添加量がこの範囲であると、押出発泡板の成形性が安定して良好であり、また、押出発泡後の発泡断熱板中にハイドロフルオロオレフィンが有効量残存して、長期断熱性を有する押出発泡板となる。この観点から、ハイドロフルオロオレフィンの添加量は、基材樹脂1kg当たり0.3mol以上1.3mol以下であることがより好ましく、0.5mol以上1.3mol以下であることがより好ましく、0.7mol以上1.3mol以下であることがさらに好ましい。特に、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を基材樹脂の主成分として含む場合には、ハイドロフルオロオレフィンを例えば0.5mоl/kg以上と比較的多量に添加した場合であっても良好な成形性を確保することができる。
【0046】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、物理発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを添加する場合、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対するリン系難燃剤の添加量の比を0.15超の範囲としても、十分な難燃性を確保することができる。かかる観点から、ハイドロフルオロオレフィンの添加量は、基材樹脂1kg当たり0.1mol以上1.5mol以下であることが好ましく、0.3mol以上1.3mol以下であることがより好ましく、0.5mol以上1.3mol以下であることがさらに好ましい。
【0047】
また、物理発泡剤の添加量の合計100mol%に対するハイドロフルオロオレフィンの添加量の割合が50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましく、70mol%以上であることがさらに好ましい。
【0048】
ハイドロフルオロオレフィン以外の物理発泡剤としては、例えば、炭素数1~5の脂肪族アルコール、水、アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテル、二酸化炭素等を例示することができる。これらの物理発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンとともに添加することが好ましい。炭素数1~5の脂肪族アルコールとして、好ましくはエタノールを例示することができる。また、アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルとしては、好ましくはジメチルエーテルを例示することができる。
【0049】
特に、早期散逸性が高く押出発泡板の形状を早期に安定化させることができる観点、ハイドロフルオロオレフィンとの併用により、より見掛け密度の低い押出発泡板を安定して得られるという観点からは、物理発泡剤として、水及び/又はアルコールを使用することが好ましく、水およびアルコールの双方を使用することがさらに好ましい。水及び/又はアルコールの添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは0.01mol以上0.6mоl以下であり、より好ましくは0.03mol以上0.3mоl以下である。当該水及び/又はアルコールの添加量は、水およびアルコールのいずれか一方のみを使用する場合にはその添加量を意味し、水およびアルコールの双方を使用する場合にはその合計添加量を意味する。上記の効果をより確実に奏する観点から、水及びアルコールの双方を用い、かつ合計添加量を上記範囲内とすることが好ましい。また、両者の配合割合に制限はないが、水:アルコール=90mol%:10mol%~50mol%:50mol%が好ましく、80mol%:20mol%~60mol%:40mol%がより好ましい。
【0050】
また、ポリスチレン系樹脂への相溶性が高く、ハイドロフルオロオレフィンとの併用により、軽量で、外観の良好な押出発泡板が得られやすいという観点からは、物理発泡剤として、ジメチルエーテルを使用することが好ましい。ジメチルエーテルの添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは0.05mol以上0.5mоl以下が好ましく、0.1mоl以上0.3mоl以下であることがより好ましい。
【0051】
(輻射抑制剤)
基材樹脂に、輻射抑制剤を添加してさらに断熱性を向上することができる。輻射抑制剤としては、例えば、グラファイト、酸化チタン等の金属酸化物、アルミ等の金属、セラミック、カーボンブラック、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイトなどが例示される。これらは1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、輻射抑制剤は、グラファイトであることが好ましい。グラファイトとしては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛等が挙げられ、主成分が鱗片状黒鉛であるものを用いることが好ましい。
【0052】
輻射抑制剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対し、0.3~5質量部、好ましくは0.5~4質量部の範囲を例示することができる。基材樹脂が、輻射抑制剤としてグラファイトを含む場合、発泡性溶融樹脂組成物中のグラファイトの含有量は、基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0053】
一般に、基材樹脂が輻射抑制剤としてグラファイトを含む場合、押出発泡板の難燃性と成形性が低下しやすく、特に、幅の広い押出発泡板を製造する場合には、押出発泡板の端部の賦形性が低下しやすかった。しかしながら、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法においては、上記の通り、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量が、基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下であり、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対する所定のリン系難燃剤の添加量の比が0.15を超え0.5以下であるため、基材樹脂が輻射抑制剤としてグラファイトを含む場合であっても、押出発泡板の優れた難燃性と成形性が実現される。
【0054】
(その他の添加剤)
また、本発明においては基材樹脂に、必要に応じて、気泡調整剤、顔料,染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を適宜添加することができる。
【0055】
気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。なかでも難燃性を阻害することがなく気泡径を調整することが容易であるタルクが好適である。特にJIS Z8901(2006年)に規定される粒径が0.1~20μm、更に0.5~15μmの大きさのタルクを用いることが好ましい。気泡調整剤の添加量は、気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、基材樹脂100質量部に対し、概ね、0.01~8質量部、更に0.01~5質量部、特に0.05~3質量部が好ましい。
【0056】
以下、押出発泡板の諸物性について詳述する。
【0057】
[見掛け密度]
押出発泡板の見掛け密度は、発泡板の製造安定性や機械強度を向上させる観点から、その下限は20kg/m3であることが好ましく、25kg/m3であることがより好ましく、30kg/m3であることがさらに好ましい。また、断熱性を向上させることおよび軽量性を確保する観点から、見掛け密度の上限は50kg/m3であることが好ましく、45kg/m3であることがより好ましく、40kg/m3であることがさらに好ましい。押出発泡板の見掛け密度は、JIS K6767(1999年)に準拠して測定することができる。
【0058】
[厚み]
押出発泡板の厚みは、その使用目的に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、断熱材として使用する観点から25mm以上であることが好ましく、35mm以上であることがより好ましく、45mm以上であることがさらに好ましい。厚みの上限は概ね150mmである。
【0059】
[幅]
押出発泡板の幅は、300mm以上である。押出発泡板の幅の上限は特に限定されないが、例えば2000mm以下である。押出発泡板の幅とは、発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する際の発泡板の幅をいう。一般に、押出発泡板の幅が広いほど押出発泡板の幅方向の端部の成形性が悪化しやすいが、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法では、押出発泡板の幅方向の端部の成形性も良好である。なお、端部の成形性が悪い押出発泡板は、端部を切削することにより製品上問題ないものとすることができるが、その場合、押出発泡板の収率が損なわれるといった問題がある。
【0060】
[独立気泡率]
押出発泡板の独立気泡率は、長期断熱性の観点から、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。
押出発泡板の独立気泡率は、押出発泡板の無作為に選択した計5箇所からカットサンプルを切り出して測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を求め、5箇所の独立気泡率の算術平均値を採用する。なお、カットサンプルは、押出発泡板から縦45mm×横20mm×厚み25mmの大きさに切断された、表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に25mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば、縦45mm×横20mm×厚み12.5mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。また、独立気泡率S(%)は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定されたポリスチレン系樹脂押出発泡板の真の体積Vxを用い、下記式(1)により算出される。
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(VA-W/ρ)・・・(1)
Vx:空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm3)(発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:ポリスチレン系樹脂押出発泡板を構成する基材樹脂の密度(g/cm3)
【0061】
[熱伝導率]
押出発泡板の製造後10日経過後の熱伝導率は、0.024W/(m・K)以下であることが好ましく、0.023W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.022W/(m・K)以下であることがさらに好ましい。
【0062】
熱伝導率は、製造直後の押出発泡板から縦200mm×横200mm×厚み任意の表皮が存在しない試験片を切り出し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に10日保存した試験片について、JIS A 1412-2(1999)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定することができる。
【0063】
[耐熱性(加熱寸法変化率)]
押出発泡板の加熱寸法変化率は、厚み方向、幅方向、長さ方向の各々において、80℃雰囲気下で22時間加熱した際の寸法変化率が20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。80℃の寸法変化率が上記範囲であれば、寸法変化が小さいため、例えば、押出発泡板を夏場の太陽光の下に平積みで載置した場合であっても、寸法が変化しにくく施工性に優れる。なお、加熱寸法変化率は、加熱による収縮及び膨張による寸法の変化率を意味する。
【0064】
加熱寸法変形率の測定は、以下の方法により求めることができる。まず、発泡板の長さ方向に平行であり、かつ幅方向の中央部で二等分し、該二等分により露出した面を含む中央部から長さ100mm、横100mm、厚み50mmの直方体形状の試験片を切り出し、この試験片をさらに23℃で一日以上安置した後、ノギスで試験片の縦、横の各部位の寸法を測定する。次いで、寸法測定後の試験片を80℃の雰囲気に調整されたオーブン内で22時間加熱し、次いで、加熱後の試験片を23℃で一日安置した後、加熱前と同じ箇所の寸法を測定する。
【0065】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【実施例0066】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
実施例および比較例において、以下の装置および原料を用いて押出発泡板を製造した。
【0068】
<押出装置>
内径180mmの第一押出機と内径225mmの第二押出機を直列に連結し、第一押出機の終端付近に物理発泡剤注入口を設け、第二押出機の出口に間隙2.5mm×幅400mmまたは1000mmの横断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイを連結した製造装置を用いた。
【0069】
フラットダイの樹脂出口には上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂板からなる賦形装置(ガイダー)を上下の樹脂板が平行となるように付設した。
【0070】
実施例、比較例において使用した基材樹脂、難燃剤、物理発泡剤、気泡調整剤および輻射抑制剤を以下に示す。
<基材樹脂>
MS750:スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、東洋スチレン(株)製、MS750 M成分-75質量%・スチレン成分-25質量%、溶融粘度(200℃、100sec-1)2440Pa・s
MS600:スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、東洋スチレン(株)製、MS600 M成分-60質量%・スチレン成分-40質量%、溶融粘度(200℃、100sec-1)2570Pa・s
MS200:スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、東洋スチレン(株)製、MS200 M成分-20質量%・スチレン成分-80質量%、溶融粘度(200℃、100sec-1)1980Pa・s
SPET:非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体(エチレングリコール/スピログリコール=70mol%/30mol%)ALTESTER30(三菱ガス化学社製)
PS:GPPS、DIC社製、HP600ANJ、溶融粘度(200℃、100sec-1)、1420Pa・s
<難燃剤>
(臭素系難燃剤)
臭化ブタジエン-スチレンブロック共重合体:ランクセス(株)製「Emerald innovation 3000」(E3000)
テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル):第一工業製薬「SR-130」/[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル):第一工業製薬「SR-720」=60質量% / 40質量%の混合難燃剤を含有する難燃剤マスターバッチ:第一工業製薬(株)製「GR-134B」
(リン系難燃剤)
TPP(トリフェニルホスフェート) 融点50℃、リン量9.5%、大八化学工業(株)製
TPPO(トリフェニルホスフィンオキシド)融点157℃、リン量11.0%、北興化学工業(株)製
PX-200(芳香族縮合リン酸エステル)融点95℃、リン量9.0%、大八化学工業(株)製
CDP(クレジルジフェニルホスフェート)融点-38℃、リン量9.1%、大八化学工業(株)製
<気泡調整剤>
タルク:松村産業(株)製「ハイフィラー#12」
<物理発泡剤>
ハイドロフルオロオレフィン(HFO):1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd)
イソブタン(i-Bu)
ジメチルエーテル(DME)
二酸化炭素(CO2)
エタノール(EtOH)
水
<輻射抑制剤>
グラファイト:日本黒鉛工業(株)製「CP-N」(鱗片状黒鉛)、一次粒径(d50)=10μm
酸化チタン:テイカ(株)製「JR-405」、一次粒径(d50)=0.2μm
【0071】
臭素化スチレン-ブタジエン共重合体とリン系難燃剤とを併用した場合の難燃性の向上効果について確認するため、以下の手順で非発泡状態の樹脂シートを作成し、酸素指数を測定した。具体的には、基材樹脂としてのMS200と表1に示す種類、量の難燃剤とを押出機に供給し、200℃で溶融混練し、厚み4mmのシート状に押し出した。当該シートを用いて後述する方法によりLOI(酸素指数)を測定した。表1に示したように、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対していずれのリン系難燃剤を併用した場合であっても酸素指数は同程度向上することが確認された。
【表1】
【0072】
基材樹脂、難燃剤、気泡調整剤、輻射抑制剤の各々を下記表1~表4に示す配合割合で押出機に供給し、さらに物理発泡剤を物理発泡剤供給口より供給し、溶融混練して、溶融混練物を押出機の先端のダイリップから大気圧下に押出した後、成形具である賦形装置(ガイダー)により表1~4に示す幅を有する、厚み55mmの板状に成形し(原板)、次いで両面の成形スキンを均等に切削して、厚み50mmとして実施例1~14および比較例1~12のポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造した。
【0073】
製造した押出発泡板について、見掛け密度、独立気泡率、難燃性、成形性(表面、端部)、LOI(酸素指数)および耐熱性(加熱寸法変化率)を以下の方法で測定した。
<見掛け密度>
見掛け密度の測定は、JIS K6767(1999年)に準拠して行なった。各押出発泡板の幅方向中央部および幅方向両端部付近の計3箇所から縦50mm×横50mm×厚み50mmの直方体のサンプルを切り出して各々のサンプルについて見掛け密度を測定し、3箇所の測定値の相加平均値を見掛け密度とした。
<独立気泡率>
押出発泡板の幅方向の中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を採用した。なお、カットサンプルは押出発泡板から縦25mm×横25mm×厚み25mmの大きさに切断されたものを用いた。サンプルの独立気泡率を、ASTM-D2856-70の手順Cにより空気比較式比重計(東芝ベックマン(株)製 型式:930型)を使用して測定して上記式(1)から求め、3箇所の算術平均値を独立気泡率とした。
<断熱性>
製造直後の押出発泡板から、縦200mm×横200mm×厚み25mmの試験片を切り出し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に10日間保存した試験片について、熱伝導率をJIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定し、断熱性については、下記の基準により評価した。
○:製造10日後の熱伝導率が0.024W/(m・K)以下
×:製造10日後の熱伝導率が0.024W/(m・K)を超える
<難燃性(JIS燃焼性)>
製造後、温度23℃、湿度50%の雰囲気下にて7日間経過させた後の押出発泡板について、JIS A9521:2017の燃焼性試験方法の測定方法Aに準拠して燃焼性試験を行った。測定は1つの押出発泡板に対して試験片を無作為に5個切り出し、以下の基準により難燃性を評価した。
〇:全ての試験片において3秒以内で炎が消え、残塵がなく、かつ燃焼限界線を超えて燃焼しない。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を超える。
<成形性(表面)>
成形性(表面)について、成形スキンを切削する前の原板及び成形スキンを切削した後の押出発泡板の表面を目視にて観察し、以下の評価を行った。
◎:原板と押出発泡板の表面が極めて良好であった。
〇:原板の表面に割れや裂けが発生するものの、押出発泡板の表面は極めて良好であった。
△:原板の表面に割れや裂けが発生し、原板を切削しても押出発泡板の表面に割れや裂けが稀に残存していた。
×:原板の表面に割れや裂けが多数発生し、良好な押出発泡板が安定して得られなかった。
<成形性(端部)>
成形性(端部)について、成形スキンを切削する前の原板の幅方向端部(側面の表面)を目視にて観察し、以下の評価を行った。
〇:端部表面が平滑な原板が安定して製造され、良好な押出発泡板が得られた。
△:安定して製造が可能であるが、原板の端部表面に割れや裂けが稀に発生した。
×:原板の端部表面に割れや裂けが見られ、良好な押出発泡板が安定して得られなかった。
<LOI(酸素指数)>
製造直後の押出発泡板を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、押出発泡板から試験片を切り出し、JIS K7201-2007に準拠して測定し、難燃性を評価した。点火器の熱源の種類は、液化石油ガス(LPG)を使用し、点火手順はA法を使用し、試験片を試験機内の所定の位置に自立させて行った。試験場所の温度は23℃、湿度50%で行った。
<耐熱性(加熱寸法変化率)>
サンプルの厚み方向、幅方向、長さ方向の各々について、80℃寸法変化率を以下のようにして測定した。寸法変形率の測定は、まず、発泡板の長さ方向に平行であり、かつ幅方向の中央部で二等分し、該二等分により露出した面を含む中央部から長さ100mm、横100mm、厚み25mmの直方体形状の試験片を切り出し、この試験片をさらに23℃で一日以上安置した後、ノギスで試験片の厚み方向、幅方向及び長さ方向の各部位の寸法を測定した。寸法測定後の試験片をそれぞれ80℃のオーブンで22時間加熱し、次いで、加熱後の試験片を23℃で一日安置した後、加熱前と同じ箇所の寸法を測定し、厚み方向、幅方向及び長さ方向の加熱前後の寸法変化率の絶対値を以下の式からそれぞれ求めた。
寸法変化率=(1-[加熱後の試験片の寸法/加熱前の試験片の寸法])×100
上記操作を3つの試験片について行い、厚み方向、幅方向及び長さ方向のそれぞれの絶対値について算術平均した値を加熱寸法変化率とした。押出発泡板の耐熱性は、上記に算出された押出発泡板の加熱寸法変化率(%)の結果に基づいて、次に示す基準で評価された。
〇(良好):加熱寸法変化率が20%以下である。
×(不良):加熱寸法変化率が20%を超える。
【0074】
結果を表2~表5に示す。
【0075】
【0076】
実施例1-12および比較例1-8の押出発泡板は、基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含んでいる。実施例13、14および比較例9-12の押出発泡板は、基材樹脂としてポリスチレンのみを含んでいる。
【0077】
また、実施例1-14の押出発泡板は、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体からなる臭素系難燃剤と、融点が80℃以下であるリン系難燃剤とを含んでおり、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量が基材樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下であり、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の添加量の比(臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比)が0.15を超え0.5以下である。実施例1-14の押出発泡板は、難燃性および耐熱性に優れており、成形性も良好であることが確認された。
【0078】
これに対し、リン系難燃剤を含んでいない比較例1は、難燃性および成形性が十分でないことが確認された。臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対するリン系難燃剤の添加量の比が0.5を超える比較例2は、耐熱性が十分でないことが確認された。
【0079】
リン系難燃剤の融点が80℃を超える比較例3、4は、難燃性が十分でないことが確認された。表1に示したように、非発泡状態の樹脂シートの場合、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体(臭素系難燃剤)と各リン系難燃剤(TPP、TPPO、PX-200、CDP)との併用による効果(酸素指数の測定結果)がそれぞれ同等であったことを考慮すると、実施例1-14における上記の効果は、押出発泡板に特有の効果であると考えられ、表1の結果からは予測できないものである。
【0080】
臭素系難燃剤が臭素化ビスフェノール系難燃剤である比較例5は難燃性が十分でなく、また、臭素化ビスフェノール系難燃剤の添加量を増加させた比較例6は成形できなかった。臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の添加量の比(臭素化スチレン-ブタジエン共重合体に対する融点が80℃以下であるリン系難燃剤の質量比)が0.15以下である比較例7は、難燃性および成形性が十分でないことが確認された。臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対するリン系難燃剤の添加量の比を増加させたものの、依然としてその比が0.15以下である比較例8は、端部における賦形性が悪く、成形性が十分でないことが確認された。
【0081】
臭素化スチレン-ブタジエン共重合体の添加量に対するリン系難燃剤の添加量の比が0.15以下である比較例9及びリン系難燃剤を含んでいない比較例10は、実施例13と比べて酸素指数が低下していた。また、比較例9および比較例10は、端部における賦形性が悪く、成形性が十分でないことが確認された。リン系難燃剤として融点が80℃を超えるPX-200を使用した比較例11は、実施例14と比べて酸素指数が低下していた。リン系難燃剤として融点が80℃を超えるTPPOを使用した比較例12は、実施例13と比べて酸素指数が低下していた。