IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

特開2024-157339マルチ測距カメラの制御装置及び制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157339
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】マルチ測距カメラの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071641
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏秀
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA25
(57)【要約】
【課題】被写体との距離が互いに異なった状態で複数台の測距カメラが配置されていたとしても、各測距カメラによる撮影画像の点群の量を一致させることができるマルチ測距カメラの制御装置を提供する。
【解決手段】演算部31は、被写体2を囲むように配置されており、ズームレンズを含む複数の測距カメラ1A~1Dにおける各測距カメラから被写体2の中心2cまでの距離を算出する。複数の測距カメラ1A~1Dのうちのいずれかを基準の測距カメラとする。ズーム制御部33は、基準の測距カメラ以外の測距カメラが被写体2を撮影するときのズームの焦点距離を、基準の測距カメラが被写体2を撮影するときのズームの焦点距離に、基準の測距カメラから被写体2の中心2cまでの距離を基準の測距カメラ以外の測距カメラから被写体2の中心2cまでの距離で除算した値を乗算した焦点距離とするよう、基準の測距カメラ以外の測距カメラのズームを制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を囲むように配置されており、ズームレンズを含む複数の測距カメラにおける各測距カメラから前記被写体の中心までの距離を算出する演算部と、
前記複数の測距カメラのうちのいずれかを基準の測距カメラとし、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離を、前記基準の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離に、前記基準の測距カメラから前記被写体の中心までの距離を前記基準の測距カメラ以外の測距カメラから前記被写体の中心までの距離で除算した値を乗算した焦点距離とするよう、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラのズームを制御するズーム制御部と、
を備えるマルチ測距カメラの制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記複数の測距カメラのうちの対向する2つの測距カメラ間の距離と、前記各測距カメラから前記被写体の表面までの距離とに基づいて、前記対向する2つの測距カメラの方向の前記被写体の幅を算出し、
前記各測距カメラから前記被写体の表面までの距離と前記被写体の幅とに基づいて、前記各測距カメラから前記被写体の中心までの距離を算出する
請求項1に記載のマルチ測距カメラの制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記各測距カメラのローカルの原点座標と前記各測距カメラが前記被写体までの距離を測距したローカルの点群座標とを、前記基準の測距カメラを基準とするグローバル座標の原点座標及び前記被写体までの距離を示す点群座標に変換し、
前記複数の測距カメラによる前記被写体までの距離を示すグローバル座標の点群座標の平均値に基づいて前記被写体の中心を求め、
前記被写体の中心から前記各測距カメラのグローバル座標の原点座標までの距離を算出する
請求項1に記載のマルチ測距カメラの制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記各測距カメラと前記各測距カメラと隣り合う測距カメラとの間の距離に基づいて、前記各測距カメラのローカルの原点座標と前記各測距カメラが前記被写体までの距離を測距したローカルの点群座標とを、グローバル座標の原点座標及び前記被写体までの距離を示す点群座標に変換する請求項3に記載のマルチ測距カメラの制御装置。
【請求項5】
被写体を囲むように配置された複数の測距カメラを制御するコンピュータ機器が、
前記複数の測距カメラにおける各測距カメラから前記被写体の中心までの距離を算出し、
前記複数の測距カメラのうちのいずれかを基準の測距カメラとし、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離を、前記基準の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離に、前記基準の測距カメラから前記被写体の中心までの距離を前記基準の測距カメラ以外の測距カメラから前記被写体の中心までの距離で除算した値を乗算した焦点距離とするよう、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラのズームを制御する
マルチ測距カメラの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ測距カメラの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボリュメトリック画像生成装置は、複数台の測距カメラによって被写体を360度の角度で撮影して、被写体の3次元モデルであるボリュメトリック画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/105697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被写体と各測距カメラとの距離が互いに異なると、各測距カメラが被写体を撮影するときの画角が一致しないので、各測距カメラによる撮影画像の点群の量が異なってしまう。測距カメラがズームレンズを備え、各測距カメラが異なるズーム量でズーミングした場合も同様に、各測距カメラによる撮影画像の点群の量が異なってしまう。複数台の測距カメラによる点群の量が互いに異なる撮影画像を合成してボリュメトリック画像を生成すると、視覚的に違和感が生じることがある。
【0005】
被写体と各測距カメラとの距離が厳密に管理されたボリュメトリックスタジオと称される専用スタジオで被写体を撮影すれば、各測距カメラによる撮影画像の点群の量は一致する。しかしながら、専用スタジオを借りる費用がかかってしまい、また手軽に被写体を撮影することもできない。
【0006】
本発明は、被写体との距離が互いに異なった状態で複数台の測距カメラが配置されていたとしても、各測距カメラによる撮影画像の点群の量を一致させることができるマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被写体を囲むように配置されており、ズームレンズを含む複数の測距カメラにおける各測距カメラから前記被写体の中心までの距離を算出する演算部と、前記複数の測距カメラのうちのいずれかを基準の測距カメラとし、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離を、前記基準の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離に、前記基準の測距カメラから前記被写体の中心までの距離を前記基準の測距カメラ以外の測距カメラから前記被写体の中心までの距離で除算した値を乗算した焦点距離とするよう、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラのズームを制御するズーム制御部とを備えるマルチ測距カメラの制御装置を提供する。
【0008】
本発明は、被写体を囲むように配置された複数の測距カメラを制御するコンピュータ機器が、前記複数の測距カメラにおける各測距カメラから前記被写体の中心までの距離を算出し、前記複数の測距カメラのうちのいずれかを基準の測距カメラとし、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離を、前記基準の測距カメラが前記被写体を撮影するときのズームの焦点距離に、前記基準の測距カメラから前記被写体の中心までの距離を前記基準の測距カメラ以外の測距カメラから前記被写体の中心までの距離で除算した値を乗算した焦点距離とするよう、前記基準の測距カメラ以外の測距カメラのズームを制御するマルチ測距カメラの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法によれば、被写体との距離が互いに異なった状態で複数台の測距カメラが配置されていたとしても、各測距カメラによる撮影画像の点群の量を一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、被写体を囲むように配置された複数の測距カメラを示す図である。
図2図2は、図1に示す複数の測距カメラがズーム量を同じにした状態で被写体を撮影して生成する点群データを示す概念図である。
図3図3は、第1実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が複数の測距カメラにおける互いに対向する測距カメラ間の距離を測定する状態を示す図である。
図4A図4Aは、第1実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が互いに対向する測距カメラ間の距離を測定する部分的な処理を示すフローチャートである。
図4B図4Bは、第1実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が互いに対向する測距カメラ間の距離を測定する、図4Aに続く部分的な処理を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、測距カメラのレンズ鏡筒を正面から見た平面図である。
図5B図5Bは、測距カメラのレンズにレンズキャップを装着した状態を示す平面図である。
図5C図5Cは、測距カメラのレンズに中心部が白でその周囲部が黒のレンズキャップを装着した状態を示す平面図である。
図6図6は、測距カメラのレンズ鏡筒にレンズキャップを装着した状態を示す部分斜視図である。
図7図7は、複数の測距カメラのうちの1つの測距カメラが対向する測距カメラを撮影することによって生成した近赤外画像を概念的に示す図である。
図8図8は、図7に示す近赤外画像におけるレンズキャップを通る垂直位置における水平方向の近赤外光の輝度レベルを示す図である。
図9図9は、複数の測距カメラが被写体を撮影している状態を示す図である。
図10図10は、測距カメラによる被写体までの測距を詳細に示す図である。
図11A図11Aは、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が隣り合う2つの測距カメラまでの距離を測定する部分的な処理を示すフローチャートである。
図11B図11Bは、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が隣り合う2つの測距カメラまでの距離を測定する、図11Aに続く部分的な処理を示すフローチャートである。
図11C図11Cは、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が隣り合う2つの測距カメラまでの距離を測定する、図11Bに続く部分的な処理を示すフローチャートである。
図11D図11Dは、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が隣り合う2つの測距カメラまでの距離を測定する、図11Cに続く部分的な処理を示すフローチャートである。
図11E図11Eは、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が隣り合う2つの測距カメラまでの距離を測定する、図11Dに続く部分的な処理を示すフローチャートである。
図12図12は、複数の測距カメラのうちの1つの測距カメラが隣り合う2つの測距カメラを撮影することによって生成した近赤外画像を概念的に示す図である。
図13A図13Aは、測距カメラ1Aが測距カメラ1B及び1Dを撮影している状態で、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が抽出するレンズキャップの中央における点群座標を示す図である。
図13B図13Bは、測距カメラ1Bが測距カメラ1A及び1Cを撮影している状態で、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が抽出するレンズキャップの中央における点群座標を示す図である。
図13C図13Cは、測距カメラ1Cが測距カメラ1B及び1Dを撮影している状態で、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が抽出するレンズキャップの中央における点群座標を示す図である。
図13D図13Dは、測距カメラ1Dが測距カメラ1A及び1Cを撮影している状態で、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が抽出するレンズキャップの中央における点群座標を示す図である。
図14図14は、測距カメラ1Aから見た測距カメラ1Bの座標系を示す図である。
図15図15は、図14をモデル化した、測距カメラ1Aの軸の方向と、測距カメラ1Bの軸の方向との関係を示す図である。
図16図16は、第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置が被写体の中心を求める際の視野範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法は、複数の測距カメラによって撮影される被写体を、各測距カメラの調整時に一時的に移動させることが可能な場合に用いて好適である。
【0013】
図1において、測距カメラ1A~1Dは被写体2を囲むように配置されている。測距カメラ1A~1Dは同じ性能を有する。測距カメラ1A~1Dは、レンズ鏡筒11内にズームレンズ1ZLを有することによりズーム機能を備える。図1では被写体2を球としているが、被写体2は球でなくてもよい。測距カメラ1A~1Dのうちのいずれかを特定しない測距カメラを測距カメラ1と称することとする。測距カメラ1は、垂直共振型面発光レーザ13(図5A参照)等の赤外光源から例えば近赤外の波長の光を照射し、被写体から反射した反射光をセンサで受光することによって被写体までの距離を算出する。
【0014】
被写体2は、任意の数である複数の測距カメラ1によって囲まれていればよい。測距カメラ1は、TOF(Time Of Flight)カメラまたは3Dスキャナと称されるカメラであってもよい。
【0015】
測距カメラ1A及び1Cは、測距カメラ1Aと測距カメラ1Cとの間に被写体2が配置された状態で、レンズ鏡筒11が互いに向かい合うように配置されている。測距カメラ1B及び1Dは、測距カメラ1Bと測距カメラ1Dとの間に被写体2が配置された状態で、レンズ鏡筒11が互いに向かい合うように配置されている。測距カメラ1A~1Dにおける図示していないセンサから被写体2の中心2cまでの距離を、それぞれDa、Db、Dc、Ddとする。Da~Ddは、Da>Dc>Db>Ddの関係を有するとする。
【0016】
測距カメラ1A~1Dにおけるズーム量が同じであるとする。測距カメラ1A~1Dが生成する距離データを点群データに変換すると、測距カメラ1A~1Dに対応する点群データPCa~PCdは、概念的に図2に示すようになる。点群データPCa~PCdにおける被写体2の大きさは、点群データPCd、PCb、PCc、PCaの順で大きい。よって、被写体2に含まれる点群の量が点群データPCa~PCdで異なる。
【0017】
点群データPCa~PCdを合成して被写体2の3次元モデルであるボリュメトリック画像を生成すると、視覚的に違和感が生じることがある。そこで、測距カメラ1A~1Dにおける各ズーム量は、被写体2の大きさが全て同じになるように個別に調整される必要がある。
【0018】
図3において、第1実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置であるズーム制御装置30は、演算部31、記憶部32、ズーム制御部33を備える。ズーム制御装置30は、パーソナルコンピュータのようなコンピュータ機器によって構成することができる。図3に示すように、図1に示す被写体2は、一時的に、測距カメラ1Aと測距カメラ1Cとの間及び測距カメラ1Bと測距カメラ1Dとの間から外れた任意の位置に移動されている。
【0019】
ズーム制御装置30は、図4A及び図4Bに示すフローチャートに従って、測距カメラ1A~1Dにおける互いに対向する2つの測距カメラ1間の距離を測定する。
【0020】
図4Aにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS1にて、測距カメラ1Aを、測距カメラ1Aが測距カメラ1Cまでの距離を測定するモードに設定する。ユーザは、ステップS2にて、測距カメラ1Cのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。図5Aは、測距カメラ1のレンズ鏡筒11を正面から見た平面図である。レンズ鏡筒11の先端部には、レンズ11Lの周囲に例えば4つの垂直共振型面発光レーザ(VCSEL)13が設けられている。VCSEL13は近赤外光を射出する。図5Bに示すように、ユーザは、ここでは測距カメラ1Cのレンズ11Lを覆うようにレンズキャップ12を装着する。
【0021】
図5Cに示すように、ユーザは、測距カメラ1のレンズ鏡筒11に、光軸を含む中心部12B1が白で、その周囲部12B2が黒のレンズキャップ12Bを装着してもよい。図6に示すように、ユーザは、レンズ鏡筒11の先端部の全体を覆う白のレンズキャップ12Cを装着してもよい。
【0022】
レンズ鏡筒11を含む測距カメラ1の筐体は、黒または灰色のような暗い色の塗料が塗られているか素材自体が黒または灰色のような暗い色である。暗い色の被写体における近赤外光の反射率は低いため、測距カメラ1が対向する測距カメラ1までの距離を測定するときの測距精度が悪化して正確に測距できない。レンズ鏡筒11にレンズキャップ12、12B、または12Cを装着すれば、対向する測距カメラ1までの距離を正確に測距することができる。
【0023】
レンズキャップ12、レンズキャップ12Bの中心部12B1、レンズキャップ12Cは、白の塗料が塗られているか素材自体が白であればよい。白の塗料として、例えば、近赤外光の反射率が高い屋外の遮熱を目的として複合酸化物顔料を用いてもよい。以下、レンズ鏡筒11にレンズキャップ12が装着されているとする。
【0024】
ズーム制御装置30は、ステップS3にて、測距カメラ1Aを次のように制御して、測距カメラ1Aが算出した測距カメラ1Cまでの距離である測距値Daccapを取得する。測距カメラ1は、iToF(Indirect ToF)方式を採用しており、距離データを画素として示す測距画像と同時に近赤外画像を生成する。図7は、測距カメラ1Aが測距カメラ1Cを撮影することによって生成した近赤外画像NIaを概念的に示している。図8は、近赤外画像NIaにおけるレンズキャップ12を通る垂直位置における水平方向の近赤外光の輝度レベルを示している。
【0025】
測距カメラ1Aのセンサは、VCSEL13より射出された近赤外光が測距カメラ1Cのレンズ鏡筒11に装着されたレンズキャップ12で反射して戻ってきた近赤外光を受信する。このとき、ズーム制御装置30は、測距カメラ1B~1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止させている。
【0026】
ズーム制御装置30は、近赤外画像NIaにおけるズーム制御装置30が設定する閾値Thを超えるレンズキャップ12に相当する領域の測距値のみの平均値をとって測距値Daccapを生成するよう測距カメラ1Aを制御する。ズーム制御装置30が測距カメラ1Aをこのように制御すれば、測距カメラ1Aは測距カメラ1Cのレンズ鏡筒11の先端部までの距離を正確に測定することができる。ズーム制御装置30は、測距カメラ1Aがこのように生成した測距値Daccapを取得する。
【0027】
ズーム制御装置30は、近赤外画像NIaにおける閾値Thを超える領域を例えば黄色で着色して、図示していない表示部に近赤外画像NIaを表示してもよい。ユーザは、表示部に表示されている近赤外画像NIaにおける黄色で着色されている領域を確認することにより、測距カメラ1Aがレンズキャップ12に相当する領域の測距値に基づいて測距値Daccapを生成しているか否かを判断することができる。
【0028】
ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS4にて、測距値Daccapに測距カメラ1Cのレンズキャップからセンサまでの図3に示す距離Dsを加算して、測距カメラ1Aから測距カメラ1Cまでの距離Dacを算出する。測距カメラ1のレンズキャップからセンサまでの距離Dsは既知であり、ズーム制御装置30は記憶部32に距離Dsを予め保持している。
【0029】
ズーム制御装置30は、ステップS5にて、測距カメラ1Bを、測距カメラ1Bが測距カメラ1Dまでの距離を測定するモードに設定する。ユーザは、ステップS6にて、測距カメラ1Dのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS7にて、測距カメラ1Aを制御するのと同様に測距カメラ1Bを制御して、測距カメラ1Bが算出した測距カメラ1Dまでの距離である測距値Dbdcapを取得する。このとき、ズーム制御装置30は、測距カメラ1A、1C、及び1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止させている。
【0030】
ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS8にて、測距値Dbdcapに測距カメラ1Dのレンズキャップ12からセンサまでの距離Dsを加算して、測距カメラ1Bから測距カメラ1Dまでの距離Dbdを算出する。
【0031】
図4Bにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS9にて、測距カメラ1Cを、測距カメラ1Cが測距カメラ1Aまでの距離を測定するモードに設定する。ユーザは、ステップS10にて、測距カメラ1Aのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS11にて、測距カメラ1Aを制御するのと同様に測距カメラ1Cを制御して、測距カメラ1Cが算出した測距カメラ1Aまでの距離である測距値Dcacapを取得する。このとき、ズーム制御装置30は、測距カメラ1A、1B、及び1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止させている。
【0032】
ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS12にて、測距値Dcacapに測距カメラ1Aのレンズキャップ12からセンサまでの距離Dsを加算して、測距カメラ1Cから測距カメラ1Aまでの距離Dcaを算出する。
【0033】
ズーム制御装置30は、ステップS13にて、測距カメラ1Dを、測距カメラ1Dが測距カメラ1Bまでの距離を測定するモードに設定する。ユーザは、ステップS14にて、測距カメラ1Bのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS15にて、測距カメラ1Aを制御するのと同様に測距カメラ1Dを制御して、測距カメラ1Dが算出した測距カメラ1Bまでの距離である測距値Ddbcapを取得する。このとき、ズーム制御装置30は、測距カメラ1A、1B、及び1CにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止させている。
【0034】
ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS16にて、測距値Ddbcapに測距カメラ1Bのレンズキャップ12からセンサまでの距離Dsを加算して、測距カメラ1Dから測距カメラ1Bまでの距離Ddbを算出する。
【0035】
ズーム制御装置30は、ステップS17にて、ズーム制御装置30を距離保存モードに設定する。ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS18にて、距離Dacと距離Dcaとの平均値Dacaveを算出し、距離Dbdと距離Ddbの平均値Dbdaveを算出する。演算部31は、ステップS19にて、平均値Dacave及びDbdaveを記憶部32に保存して処理を終了させる。
【0036】
理論的には、距離Dacと距離Dcaとは同じ値であり、距離Dbdと距離Ddbとは同じ値である。実際には、測距カメラ1による測距値は誤差を含む。距離Dacと距離Dcaとの平均値Dacaveを算出し、距離Dbdと距離Ddbの平均値Dbdaveを算出することにより、測距カメラ1Aと測距カメラ1Cとの間の正確な距離、及び測距カメラ1Bと測距カメラ1Dとの間の正確な距離を取得することができる。
【0037】
このように、距離Dacと距離Dcaとの平均値Dacaveを算出し、距離Dbdと距離Ddbの平均値Dbdaveを算出することが好ましい。距離Dacのみ、または距離Dcaのみを算出して、測距カメラ1Aと測距カメラ1Cとの間の距離を測定する処理を簡略化してもよい。距離Dbdのみ、または距離Ddbのみを算出して、測距カメラ1Bと測距カメラ1Dとの間の距離を測定する処理を簡略化してもよい。
【0038】
以上のようにして、ズーム制御装置30は、測距カメラ1A~1Dにおける互いに対向する2つの測距カメラ1間の距離の測定を完了して、距離を測定するモードを終了させる。
【0039】
続けて、ズーム制御装置30は、被写体2を撮影するモードに移行する。図9に示すように、図1に示す被写体2は、測距カメラ1Aと測距カメラ1Cとの間及び測距カメラ1Bと測距カメラ1Dとの間の位置に戻される。図9において、ズーム制御装置30は、測距カメラ1Aより測距カメラ1Aのセンサから被写体2の表面までの距離D2aを取得し、測距カメラ1Cより測距カメラ1Cのセンサから被写体2の表面までの距離D2cを取得する。また、ズーム制御装置30は、測距カメラ1Bより測距カメラ1Bのセンサから被写体2の表面までの距離D2bを取得し、測距カメラ1Dより測距カメラ1Dのセンサから被写体2の表面までの距離D2dを取得する。
【0040】
ズーム制御装置30の演算部31は、式(1)に従って、被写体2の測距カメラ1Aの及び1Cを結ぶ方向の幅Wacを算出し、式(2)に従って、被写体2の測距カメラ1Bの及び1Dを結ぶ方向の幅Wbdを算出する。
Wac=Dacave-D2a-D2c …(1)
Wbd=Dbdave-D2b-D2d …(2)
【0041】
演算部31は、式(3)~(6)に従って、それぞれ、測距カメラ1A~1Dから被写体2の中心2cまでの距離Da~Ddを算出する。被写体2の中心2cは、Wac/2及びWbd/2に位置する。
Da=D2a+Wac/2 …(3)
Db=D2b+Wbd/2 …(4)
Dc=D2c+Wac/2 …(5)
Dd=D2d+Wbd/2 …(6)
【0042】
演算部31は、測距カメラ1A~1Dが生成する測距画像のフレームごとに距離Da~Ddを算出する。被写体2が静止物体ではなく動体であるとき、演算部31は、被写体2が変化したり動いたりしたときに距離Da~Ddを算出してもよい。
【0043】
次に、ユーザは、ズーム制御装置30によって測距カメラ1A~1Dのうちのいずれかの測距カメラ1を基準の測距カメラに指定する。ユーザは測距カメラ1Aを基準の測距カメラに指定したとする。ユーザは、ズーム制御装置30のズーム制御部33によって測距カメラ1Aにおけるズーム量を任意に設定する。測距カメラ1Aのズームの焦点距離をFAとする。
【0044】
ズーム制御部33は、測距カメラ1B~1Dにおけるズームの焦点距離FB~FDをそれぞれ式(7)~(9)に基づき制御する。ズーム制御部33は、測距カメラ1B~1Dにおけるズームが式(7)~(9)に示す焦点距離FB~FDとなるように測距カメラ1B~1Dにズーム制御値を供給する。
FB=FA×Da/Db …(7)
FC=FA×Da/Dc …(8)
FD=FA×Da/Dd …(9)
【0045】
このように、ユーザが基準の測距カメラである測距カメラ1Aのズームの焦点距離をFAに設定すると、ズーム制御部33は測距カメラ1B~1Dにおけるズームの焦点距離FB~FDをそれぞれ式(7)~(9)に基づき制御する。測距カメラ1A~1Dにおけるズーム量が被写体2と各測距カメラ1との距離に応じて制御されるから、被写体2は測距カメラ1A~1Dによってほぼ同じ大きさで撮影される。
【0046】
その結果、測距カメラ1A~1Dが被写体2を撮影するときの画角がほぼ一致するので、各測距カメラ1による撮影画像の点群の量がほぼ一致する。よって、測距カメラ1A~1Dによる撮影画像を合成してボリュメトリック画像を生成すると、視覚的な違和感はほとんど生じない。
【0047】
ユーザが測距カメラ1Aのズームの焦点距離を変化させれば、ズーム制御部33は、測距カメラ1B~1Dにおけるズームの焦点距離を、測距カメラ1Aの焦点距離の変化に対応するように即座に制御する。測距カメラ1A~1Dによる撮影画像の点群の量は常時ほぼ一致し、視覚的な違和感がほとんどないボリュメトリック画像を生成することができる。
【0048】
ところで、測距カメラ1におけるズームレンズ1ZLが移動可能な範囲には限界があるから、ズーム制御装置30(ズーム制御部33)は、ズームレンズ1ZLの移動可能な範囲内で、測距カメラ1B~1Dにおけるズームの焦点距離を制御する必要がある。測距カメラ1A~1Dにおけるズームレンズ1ZLは同じ性能を有し、ズームレンズ1ZLはワイド端からテレ端まで、焦点距離W(mm)からT(mm)まで可変するとする。
【0049】
測距カメラ1Aがメインカメラに指定されているとき、距離Db~Ddのうち、距離Daより大きい最大の距離を最大距離Dmaxとする。距離Db~Ddがいずれも距離Daより大きくないとき、距離Daを最大距離Dmaxとする。距離Db~Ddのうち、距離Daより小さい最小の距離を最小距離Dminとする。距離Db~Ddがいずれも距離Daより小さくないとき、距離Daを最小距離Dminとする。最大距離Dmaxのときの焦点距離をFmax、最小距離Dminのときの焦点距離をFminとすると、焦点距離Fmax及びFminは式(10)及び(11)で表される。
【0050】
Fmax=FA×Dmax/Da …(10)
Fmin=FA×Dmin/Da …(11)
【0051】
焦点距離Fminが焦点距離Wより小さく、焦点距離Fmaxが焦点距離Tより小さい第1の条件を満たすとき、ズーム制御装置30は、式(10)及び(11)における焦点距離FAを式(12)に示す焦点距離Faに置換する。
Fa=W×W/Fmin …(12)
【0052】
焦点距離Fminが焦点距離Wより大きく、焦点距離Fmaxが焦点距離Tより大きい第2の条件を満たすとき、ズーム制御装置30は、式(10)及び(11)における焦点距離FAを式(13)に示す焦点距離Faに置換する。
Fa=T×T/Fmax …(13)
【0053】
焦点距離Fminが焦点距離Wより小さく、焦点距離Fmaxが焦点距離Tより大きく、焦点距離FAが(T-W)/2+Wより小さい第3の条件を満たすとき、ズーム制御装置30は、式(10)及び(11)における焦点距離FAを式(14)に示す焦点距離Faに置換する。
Fa=W×W/Fmin …(14)
【0054】
焦点距離Fminが焦点距離Wより小さく、焦点距離Fmaxが焦点距離Tより大きく、焦点距離FAが(T-W)/2+Wより大きい第4の条件を満たすとき、ズーム制御装置30は、式(10)及び(11)における焦点距離FAを式(15)に示す焦点距離Faに置換する。
Fa=T×T/Fmax …(15)
【0055】
第1~第4の条件のいずれも満たさなければ、ズーム制御装置30は、式(16)に示すように、式(10)及び(11)における焦点距離FAをそのまま焦点距離Faとする。
Fa=FA …(16)
【0056】
ズーム制御装置30は、測距カメラ1Aのズームの焦点距離FAを式(12)~(16)に示す焦点距離Faとする。ズーム制御装置30は、式(7)~(9)における焦点距離FAを式(12)~(16)に示す焦点距離Faに置換した上で測距カメラ1B~1Dにおける焦点距離FB~FDを算出する。
【0057】
以上のように、ズーム制御装置30の演算部31は、被写体2を囲むように配置されており、ズームレンズ1ZLを含む複数の測距カメラ1における各測距カメラ1から被写体2の中心2cまでの距離を算出する。
【0058】
ズーム制御装置30のズーム制御部33は、複数の測距カメラ1のうちのいずれかを基準の測距カメラ1とする。ズーム制御部33は、基準の測距カメラ1以外の測距カメラ1が被写体2を撮影するときのズームの焦点距離を次のように制御する。ズーム制御部33は、基準の測距カメラ1が被写体2を撮影するときのズームの焦点距離に、基準の測距カメラ1から被写体2の中心2cまでの距離を基準の測距カメラ1以外の測距カメラ1から被写体2の中心2cまでの距離で除算した値を乗算した焦点距離を求める。ズーム制御部33は、このように求めた焦点距離とするよう、基準の測距カメラ1以外の測距カメラ1のズームを制御する。
【0059】
ズーム制御装置30が、ズームレンズ1ZLの移動可能な範囲内で、測距カメラ1A~1Dにおけるズームの焦点距離を制御することにより、測距カメラ1A~1Dによる撮影画像の点群の量をほぼ一致させて、視覚的な違和感がほとんどないボリュメトリック画像を生成することができる。
【0060】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法は、複数の測距カメラによって撮影される被写体を、各測距カメラの調整時に一時的に移動させることが不可能な場合に用いて好適である。被写体を一時的に移動できなければ、第1実施形態における距離Dac、Dca、Dbd、Ddbのような対向する2つの測距カメラ1間の距離を算出することはできない。第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置及び制御方法は、対向する2つの測距カメラ1間の距離を算出することができない場合に用いて好適である。
【0061】
第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置は、図3または図9に示すズーム制御装置30で構成することができる。第2実施形態において、第1実施形態と共通する事項の説明を省略することがある。第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置は、図9に示すように測距カメラ1A~1Dの間に被写体2を配置した状態で以下のようにして被写体2の中心2cを求める。
【0062】
図10は、測距カメラ1による被写体2までの測距を詳細に示している。図10においては、測距カメラ1における矩形状に簡略化したレンズ鏡筒11とセンサ14のみを示している。測距カメラ1による測距値は、一点鎖線で示す、被写体2の表面から入射瞳位置までの距離HRaと、入射瞳位置から像側主平面までの距離HRbと、像側主平面からセンサ14までの距離HRcとの合計値で表される。図10においては、センサ14の左端部に入射する近赤外光を例示している。測距カメラ1は、距離データを点群データに変換するとき、センサ14の表面から焦点Fpまでの焦点距離の位置を原点にした(x,y,z)座標で表される点群を生成する。
【0063】
第2実施形態に係るマルチ測距カメラの制御装置であるズーム制御装置30は、図11A図11Eに示すフローチャートに従って、対向する測距カメラ1ではなく、隣り合う2つの測距カメラ1までの距離を(x,y,z)座標で表されるグローバル空間で測定する。
【0064】
図11Aにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS21にて、測距カメラ1Aを、測距カメラ1Aが測距カメラ1B及び1Dまでの距離を測定するモードに設定する。ズーム制御装置30は、測距カメラ1AにおけるVCSEL13から近赤外光を射出させ、測距カメラ1B~1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止さる。
【0065】
ユーザは、ステップS22にて、測距カメラ1B及び1Dのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS23にて、表示部に近赤外画像を表示する。このとき、ズーム制御装置30は、表示部にさらに測距画像及び点群画像を表示してもよい。
【0066】
ズーム制御装置30は、ステップS24にて、測距カメラ1Bまでの測距値Dabcap及び測距カメラ1Dまでの測距値Dadcapを取得する。ズーム制御装置30は、ステップS25にて、測距値Dabcap及びDadcapをそれぞれ測距値Dabcapに対応する点群座標PA[x,y,z]及び測距値Dadcapに対応する点群座標PA[x,y,z]に変換する。ユーザは、ステップS26にて、カーソルによってレンズキャップ12の中央を指定する。
【0067】
図12は、ステップS23で表示部に表示される近赤外画像NIa2を示している。図12に示すように、近赤外画像NIa2においてレンズキャップ12の正面が見えている場合には、ユーザはステップS26でカーソルによってレンズキャップ12の中央を指定すればよい。測距カメラ1Bまたは1Dの向きによって近赤外画像NIa2においてレンズキャップ12の正面が見えていない場合には、ユーザはステップS22で測距カメラ1Bまたは1Dのレンズ鏡筒11に図6に示すレンズキャップ12Cを装着すればよい。ユーザはステップS26でカーソルによってレンズキャップ12の中央に相当するレンズキャップ12Cの位置を指定すればよい。
【0068】
ズーム制御装置30は、ステップS27にて、各点群座標PA[x,y,z]からレンズキャップ12の中央における点群座標PA[xb,yb,zb]及びPA[xd,yd,zd]を抽出して、記憶部32に保存する。
【0069】
図13Aは、ズーム制御装置30がステップS27で抽出する点群座標PA[xb,yb,zb]及びPA[xd,yd,zd]を示している。測距カメラ1Aにおける焦点Fpの点群座標を原点座標PA[0,0,0]とすると、点群座標PA[xb,yb,zb]は原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの距離を示し、点群座標PA[xd,yd,zd]は原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Dのレンズキャップ12までの距離を示す。
【0070】
ステップS27に続けて、図11Bにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS28にて、測距カメラ1Bを、測距カメラ1Bが測距カメラ1A及び1Cまでの距離を測定するモードに設定する。ズーム制御装置30は、測距カメラ1BにおけるVCSEL13から近赤外光を射出させ、測距カメラ1A、1C、及び1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止さる。
【0071】
ユーザは、ステップS29にて、測距カメラ1A及び1Cのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS30にて、表示部に近赤外画像を表示する。このとき、ズーム制御装置30は、表示部にさらに測距画像及び点群画像を表示してもよい。ステップS29においても、測距カメラ1Aまたは1Cの向きによっては、レンズ鏡筒11にレンズキャップ12の代わりにレンズキャップ12Cを装着してもよい。
【0072】
ズーム制御装置30は、ステップS31にて、測距カメラ1Aまでの測距値Dbacap及び測距カメラ1Cまでの測距値Dbccapを取得する。ズーム制御装置30は、ステップS32にて、測距値Dbacap及びDbccapをそれぞれ測距値Dbacapに対応する点群座標PB[x,y,z]及び測距値Dbccapに対応する点群座標PB[x,y,z]に変換する。ユーザは、ステップS33にて、カーソルによってレンズキャップ12の中央を指定する。
【0073】
ズーム制御装置30は、ステップS34にて、各点群座標PB[x,y,z]からレンズキャップ12の中央における点群座標PB[xa,ya,za]及びPB[xc,yc,zc]を抽出して、記憶部32に保存する。
【0074】
図13Bは、ズーム制御装置30がステップS34で抽出する点群座標PB[xa,ya,za]及びPB[xc,yc,zc]を示している。測距カメラ1Bにおける焦点Fpの点群座標を原点座標PB[0,0,0]とすると、点群座標PB[xa,ya,za]は原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの距離を示し、点群座標PB[xc,yc,zc]は原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Cのレンズキャップ12までの距離を示す。
【0075】
ステップS34に続けて、図11Cにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS35にて、測距カメラ1Cを、測距カメラ1Cが測距カメラ1B及び1Dまでの距離を測定するモードに設定する。ズーム制御装置30は、測距カメラ1CにおけるVCSEL13から近赤外光を射出させ、測距カメラ1A、1B、及び1DにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止さる。
【0076】
ユーザは、ステップS36にて、測距カメラ1B及び1Dのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS37にて、表示部に近赤外画像を表示する。このとき、ズーム制御装置30は、表示部にさらに測距画像及び点群画像を表示してもよい。ステップS36においても、測距カメラ1Bまたは1Dの向きによっては、レンズ鏡筒11にレンズキャップ12の代わりにレンズキャップ12Cを装着してもよい。
【0077】
ズーム制御装置30は、ステップS38にて、測距カメラ1Bまでの測距値Dcbcap及び測距カメラ1Dまでの測距値Dcdcapを取得する。ズーム制御装置30は、ステップS39にて、測距値Dcbcap及びDcdcapをそれぞれ測距値Dcbcapに対応する点群座標PC[x,y,z]及び測距値Dcdcapに対応する点群座標PC[x,y,z]に変換する。ユーザは、ステップS40にて、カーソルによってレンズキャップ12の中央を指定する。
【0078】
ズーム制御装置30は、ステップS41にて、各点群座標PC[x,y,z]からレンズキャップ12の中央における点群座標PC[xb,yb,zb]及びPC[xd,yd,zd]を抽出して、記憶部32に保存する。
【0079】
図13Cは、ズーム制御装置30がステップS41で抽出する点群座標PC[xb,yb,zb]及びPC[xd,yd,zd]を示している。測距カメラ1Cにおける焦点Fpの点群座標を原点座標PC[0,0,0]とすると、点群座標PC[xb,yb,zb]は原点座標PC[0,0,0]から測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの距離を示し、点群座標PC[xd,yd,zd]は原点座標PC[0,0,0]から測距カメラ1Dのレンズキャップ12までの距離を示す。
【0080】
ステップS41に続けて、図11Dにおいて、ズーム制御装置30は、ステップS42にて、測距カメラ1Dを、測距カメラ1Dが測距カメラ1A及び1Cまでの距離を測定するモードに設定する。ズーム制御装置30は、測距カメラ1DにおけるVCSEL13から近赤外光を射出させ、測距カメラ1A~1CにおけるVCSEL13からの近赤外光の射出を停止さる。
【0081】
ユーザは、ステップS43にて、測距カメラ1A及び1Cのレンズ鏡筒11に白のレンズキャップ12を装着する。ズーム制御装置30は、ステップS44にて、表示部に近赤外画像を表示する。このとき、ズーム制御装置30は、表示部にさらに測距画像及び点群画像を表示してもよい。ステップS42においても、測距カメラ1Aまたは1Cの向きによっては、レンズ鏡筒11にレンズキャップ12の代わりにレンズキャップ12Cを装着してもよい。
【0082】
ズーム制御装置30は、ステップS45にて、測距カメラ1Aまでの測距値Ddacap及び測距カメラ1Cまでの測距値Ddccapを取得する。ズーム制御装置30は、ステップS46にて、測距値Ddacap及びDdccapをそれぞれ測距値Ddacapに対応する点群座標PD[x,y,z]及び測距値Ddccapに対応する点群座標PD[x,y,z]に変換する。ユーザは、ステップS47にて、カーソルによってレンズキャップ12の中央を指定する。
【0083】
ズーム制御装置30は、ステップS48にて、各点群座標PD[x,y,z]からレンズキャップ12の中央における点群座標PD[xa,ya,za]及びPD[xc,yc,zc]を抽出して、記憶部32に保存する。
【0084】
図13Dは、ズーム制御装置30がステップS48で抽出する点群座標PD[xa,ya,za]及びPD[xc,yc,zc]を示している。測距カメラ1Dにおける焦点Fpの点群座標を原点座標PD[0,0,0]とすると、点群座標PD[xa,ya,za]は原点座標PD[0,0,0]から測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの距離を示し、点群座標PD[xc,yc,zc]は原点座標PD[0,0,0]から測距カメラ1Cのレンズキャップ12までの距離を示す。
【0085】
ステップS48に続けて、図11Eにおいて、ズーム制御装置30の演算部31は、ステップS49にて、後述する回転角度θbrt及び原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]を算出して記憶部32に保存する。演算部31は、ステップS50にて、後述する回転角度θdrt及びPA[xcamd,ycamd,zcamd]を算出して記憶部32に保存する。演算部31は、ステップS51にて、後述する回転角度θcrt及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]を算出して記憶部32に保存し、処理を終了させる。
【0086】
測距カメラ1A~1Dのうちのどの測距カメラ1を基準とするかは任意であり、測距カメラ1Aを基準とすることに限定されない。
【0087】
ステップS49~S51の処理を具体的に説明する。ズーム制御装置30が抽出した点群座標PA[xb,yb,zb]及びPA[xd,yd,zd]、PB[xa,ya,za]及びPB[xc,yc,zc]、PC[xb,yb,zb]及びPC[xd,yd,zd]、PD[xa,ya,za]及びPD[xc,yc,zc]は、各測距カメラ1のローカルの点群座標である。そこで、演算部31は、ステップS49~S51で、基準とする測距カメラ1以外で測距したときの点群座標をグローバル座標に変換する。
【0088】
図14及び図15を用いて、点群座標からグローバル座標への変換を具体的に説明する。図14に示すように、測距カメラ1Aに対して測距カメラ1Bが直角ではなく斜めに設置されていると、測距カメラ1Aから見て測距カメラ1Bの座標は斜めの座標となる。よって、測距カメラ1Bの座標系は、測距カメラ1Aの座標系とは一致しない。
【0089】
図15は、図14をモデル化した図である。図15を用いて、測距カメラ1Bによる点群座標PB[xa,ya,za]及びPB[xc,yc,zc]の向きを、測距カメラ1Aによる点群座標PA[xb,yb,zb]及びPA[xd,yd,zd]の座標系の向きに変換する方法を説明する。
【0090】
図15において、測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Aの光軸方向を軸ZA、測距カメラ1Aの水平方向であり軸ZAと直交する方向を軸XAとする。測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]からレンズキャップ12までの距離をLCとする。距離LCは既知である。測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Bの光軸方向を軸ZB、測距カメラ1Bの水平方向であり軸ZBと直交する方向を軸XBとする。測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]からレンズキャップ12までの距離を、測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]からレンズキャップ12までの距離LCと同じLCとする。
【0091】
測距カメラ1Aのローカルのレンズキャップ12の点群座標はPA[0,0,LC]であり、測距カメラ1Bのローカルの点群座標による測距カメラ1Aのレンズキャップ12の点群座標はPB[xa,ya,za]である。測距カメラ1Bのローカルのレンズキャップ12の点群座標はPB[0,0,LC]であり、測距カメラ1Aのローカルの点群座標による測距カメラ1Bのレンズキャップ12の点群座標はPA[xb,yb,zb]である。
【0092】
ここで、測距カメラ1Aの点群座標を基準として、軸XA、ZA、及び図15では図示していない軸XA及びZAと直交する軸YA上の点群座標をグローバル座標とする。軸XAと平行の原点座標PB[0,0,0]を通る軸を軸XA’、軸ZAと平行の原点座標PB[0,0,0]を通る軸を軸ZA’とする。軸XA’は、軸XBを角度θrtだけ回転させた軸であり、軸ZA’は軸ZBを角度θrtだけ回転させた軸である。
【0093】
測距カメラ1Bによる点群座標を軸XB及びZBの双方で角度θrtだけ回転させ、原点座標PB[0,0,0]を原点座標PA[0,0,0]に変更すれば、測距カメラ1Bによる近赤外画像NIa2に基づく点群座標PB[xa,ya,za]及びPB[xc,yc,zc]を測距カメラ1Aの点群座標を基準としたグローバル座標で表すことができる。
【0094】
ズーム制御装置30は、次のようにして角度θrtを求める。測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの直線と軸ZAとがなす角度をθabcapとする。測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの直線と軸ZBとがなす角度をθbacapとする。角度θabcap及び角度θbacapは、次の式(17)及び式(18)で求められる。
【0095】
θabcap=arctan(-PA[xb]/PA[zb]) …(17)
θbacap=arctan(PB[xa]/PB[za]) …(18)
【0096】
測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの直線と、測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの直線との交点における角度をθoとすると、角度θrtは角度θabcap及び角度θbacapと角度θoとで次の式(19)で表される。
【0097】
θrt=180-θabcap-(180-(180-(θbacap+θo)))
=180-θabcap-θbacap-θo …(19)
【0098】
角度θoは次のように求めることができる。測距カメラ1Aのレンズキャップ12の位置から、測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの直線に直交する位置を点PLaとする。点PLaから測距カメラ1Aのレンズキャップ12の位置までの距離をAp、点PLaから測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの距離をLaとする。測距カメラ1Bのレンズキャップ12の位置から、測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]から測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの直線に直交する位置を点PLbとする。点PLbから測距カメラ1Bのレンズキャップ12までの距離をBp、点PLbから測距カメラ1Aのレンズキャップ12までの距離をLbとする。
【0099】
距離Ap及び距離Bpは次の式(20)及び式(21)で求められる。
Ap=LC(sinθabcap) …(20)
Bp=LC(sinθbacap) …(21)
【0100】
距離La及び距離Lbは次の式(22)及び式(23)で求められる。
【0101】
【数1】
【0102】
【数2】
【0103】
角度θoは次の式(24)または式(25)で求められる。
θo=arctan(Bp/(Lb×Bp/(AP+Bp))) …(24)
θo=arctan(AP/(La×Ap/(Ap+Bp))) …(25)
【0104】
距離La及びLbは、それぞれ、点群座標PA[xb,yb,zb]及びPB[xa,ya,za]のX軸及びZ軸の値を用いて計算しており、ノイズ等による測定誤差を含むことがある。そこで、式(24)で計算された角度θoと式(25)で計算された角度θoとを平均した値を角度θoとすることが好ましい。式(19)に平均した角度θoを入力することによって角度θrtが求められる。
【0105】
式(26)は、測距カメラ1Bによる点群座標を軸XB及びZBの双方で角度θrtだけ回転させて、測距カメラ1Bによる点群座標を測距カメラ1Aの点群座標を基準としたグローバル座標に変換するための演算式である。
【0106】
【数3】
【0107】
式(26)のx、y、zに測距カメラ1Bのレンズキャップ12の点群座標PB[0,0,LC]を入力することによって得られたx’、y’、z’を点群座標BCAP[xb’,yb’,zb’]とする。点群座標BCAP[xb’,yb’,zb’]は、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標である。測距カメラ1Aの原点座標PA[0,0,0]から測距カメラ1Bの原点座標PB[0,0,0]を見ると、測距カメラ1Bの原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]は、式(27)のように、点群座標PA[xb,yb,zb]から点群座標BCAP[xb’,yb’,zb’]をベクトル的に減算した値となる。原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]は、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標である。
【0108】
PA[xcamb,ycamb,zcamb]=PA[xb,yb,zb]-BCAP[xb’,yb’,zb’] …(27)
【0109】
図15に示す角度θrtは、測距カメラ1Aのローカルの点群座標に対する測距カメラ1Bのローカルの点群座標の回転角度であり、角度θbrtと称することとする。測距カメラ1Aのローカルの点群座標に対する測距カメラ1Dのローカルの点群座標の回転角度を角度θdrtと称する。測距カメラ1Dについても同様にして、演算部31は、角度θdrtを求め、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標DCAP[xd’,yd’,zd’]及び原点座標PA[xcamd,ycamd,zcamd]を求める。
【0110】
測距カメラ1Aのローカルの点群座標に対する測距カメラ1Cのローカルの点群座標の回転角度を角度θcrtと称する。測距カメラ1Cについては、ズーム制御装置30は、グローバル座標における測距カメラ1Bの点群座標BCAP[xb’,yb’,zb’]及び原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]に基づいて、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標CCAP[xc’,yc’,zc’]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]を求める。
【0111】
まず、演算部31は、測距カメラ1Bで捕らえた測距カメラ1Cのレンズキャップ12の点群座標PB[xc,yc,zc]を、測距カメラ1Aが基準とするグローバル座標PA[xc,yc,zc]に変換する。式(26)に、角度θbrtと点群座標PB[xc,yc,zc]とを入力することによって得られたグローバル座標PA[xc,yc,zc]を得ることによって、測距カメラ1Cのレンズキャップ12の点群座標PB[xc,yc,zc]を測距カメラ1Aが基準とするグローバル座標PA[xc,yc,zc]に変換することができる。
【0112】
次に、式(17)~(25)におけるPAの代わりに、原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]を一時的にPA[0,0,0]として、測距カメラ1Bのレンズキャップ12の位置PA[xb’-xcamb,yb’-ycamb,zb’-zcamb]と測距カメラ1Bが捕らえた測距カメラ1Cのグローバル座標PA[xc,yc,zc]とを入力する。さらに式(17)~(25)におけるPBの代わりに、測距カメラ1Cのローカルの原点座標PC[0,0,0]に対する測距カメラ1Bのレンズキャップ12の点群座標PC[xb,yb,zb]を入力することによって、角度θcrtを求める。
【0113】
式(26)におけるθrtに角度θcrtを入力し、x、y、zに測距カメラ1Cのレンズキャップ12の点群座標PC[0,0,LC]を入力することによって得られたx’、y’、z’を点群座標CCAP[xc’,yc’,zc’]とする。式(28)に示すように、測距カメラ1Bから見た測距カメラ1Cのレンズキャップ12のグローバル座標PA[xc,yc,zc]から、測距カメラ1Cの原点からの測距カメラ1Cのレンズキャップ12のグローバル座標CCAP[xc’,yc’,zc’]を減算することで、原点座標PA[xcamc - xcamb, ycamc - ycamb, zcamc -zcamb]を得る。
【0114】
PA[xcamc-xcamb, ycamc-ycamb, zcamc-zcamb]=PA[xc,yc,zc]-CCAP[xc’,yc’,zc’] …(28)
【0115】
式(28)までは一時的に測距カメラ1Bの原点を[0,0,0]にしている。式(29)に示すように、原点を元に戻すため、式(28)にPA[xcamb,ycamb,zcamb]を加算することによって。測距カメラ1Cの原点座標PA[xcamc, ycamc, zcamc]を得る。
PA[xcamc, ycamc, zcamc]=PA[xc,yc,zc]-CCAP[xc’,yc’,zc’]+ PA[xcamb,ycamb,zcamb] …(29)
【0116】
測距カメラ1Cの位置の精度を向上させるために、演算部31は次のように演算してもよい。演算部31は、グローバル座標の点群座標DCAP[xb’,yb’,zb’]及び原点座標PA[xcamd,ycamd,zcamd]に基づいて角度θcrtを求める。演算部31は、測距カメラ1Dの座標に基づいて、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標CCAP[x,y,z]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]を求める。
【0117】
演算部31は、測距カメラ1Dの座標に基づく点群座標CCAP[x,y,z]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]と、上記のように測距カメラ1Bの座標に基づいて求めた点群座標CCAP[x,y,z]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]との平均を求める。演算部31は、求めた平均値の点群座標CCAP[x,y,z]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]を最終的な点群座標CCAP[x,y,z]及び原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]とする。
【0118】
以上のようにして、ズーム制御装置30は、測距カメラ1Aを基準として、回転角度θbrt、θcrt、θdrt、測距カメラ1Bの原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]、測距カメラ1Cの原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]、測距カメラ1Dの原点座標PA[xcamd,ycamd,zcamd]を得ることができる。
【0119】
ズーム制御装置30(演算部31)は、これらの値を用いることによって、測距カメラ1B~1Dのローカルの点群座標PB[x,y,z]、PC[x,y,z]、PD[x,y,z]を、測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標PA[x,y,z]に変換する。
【0120】
図13Bにおいて、測距カメラ1Bが被写体2を測距して得た測距カメラ1Bのローカルの点群座標をPB[xhb,yhb,zhb]とする。演算部31は、式(26)における角度θrtに角度θbrtに代入し、x、y、zに点群座標PB[xhb,yhb,zhb]を代入して、x’、y’、z’としてPA[x’hb,y’hb,z’hb]を求める。演算部31は、PA[x’hb,y’hb,z’hb]に測距カメラ1Bの原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]をベクトル的に加算して測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標PA[x,y,z]を求める。
【0121】
図13Cにおいて、測距カメラ1Cが被写体2を測距して得た測距カメラ1Cのローカルの点群座標をPC[xhc,yhc,zhc]とする。演算部31は、式(26)における角度θrtに角度θcrtに代入し、x、y、zに点群座標PC[xhc,yhc,zhc]を代入して、x’、y’、z’としてPA[x’hc,y’hc,z’hc]を求める。演算部31は、PA[x’hc,y’hc,z’hc]に測距カメラ1Cの原点座標PA[xcamc,ycamc,zcamc]をベクトル的に加算して測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標PA[x,y,z]を求める。
【0122】
図13Dにおいて、測距カメラ1Dが被写体2を測距して得た測距カメラ1Dのローカルの点群座標をPD[xhd,yhd,zhd]とする。演算部31は、式(26)における角度θrtに角度θdrtに代入し、x、y、zに点群座標PD[xhd,yhd,zhd]を代入して、x’、y’、z’としてPA[x’hd,y’hd,z’hd]を求める。演算部31は、PA[x’hd,y’hd,z’hd]に測距カメラ1Dの原点座標PA[xcamd,ycamd,zcamd]をベクトル的に加算して測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標PA[x,y,z]を求める。
【0123】
図16を用いて、被写体2の中心2cを求める方法を説明する。演算部31は、測距カメラ1A~1Dが被写体2を測距して点群化した測距カメラ1Aを基準とするグローバル座標の点群座標PA[x,y,z]の平均値を、被写体2の中心2cを示す座標PA[Hcx,Hcy,Hcz]とする。
【0124】
図16において、測距カメラ1A~1Dの視野角であるAFOV(Angle Field Of View)で囲われた範囲を視野範囲FV0とする。図15における軸XA、ZA、及び、軸XA及びZAと直交する図示していない軸YAの方向で、視野範囲FV0を、内側に距離FVoffsetだけオフセットした範囲をオフセット視野範囲FV1とする。演算部31は、オフセット視野範囲FV1内の測距カメラ1A~1Dによる点群座標PA[x,y,z]のみの平均値を被写体2の中心2cの座標PA[Hcx,Hcy,Hcz]とすることが好ましい。
【0125】
演算部31は、被写体2の中心2cの座標PA[Hcx,Hcy,Hcz]から測距カメラ1A~1Dの原点座標PA[xcamb,ycamb,zcamb]、PA[xcamc,ycamc,zcamc]、PA[xcamd,ycamd,zcamd]までのそれぞれの距離Da~Ddを式(30)~(33)に基づいて求める。
【0126】
【数4】
【0127】
以上のようにして、ズーム制御装置30(演算部31)は、被写体2が測距カメラ1A~1Dに囲まれた状態のままであっても、測距カメラ1A~1Dから被写体2の中心2cまでの距離Da~Ddを求めることができる。演算部31は、測距カメラ1A~1Dが生成する測距画像のフレームごとに距離Da~Ddを算出する。演算部31は、被写体2が変化したり動いたりしたときに距離Da~Ddを算出してもよい。
【0128】
ズーム制御装置30(ズーム制御部33)は、第1実施形態と同様に、ユーザが基準の測距カメラである測距カメラ1Aのズームの焦点距離をFAに設定すると、測距カメラ1B~1Dにおけるズームの焦点距離FB~FDをそれぞれ式(7)~(16)に基づき制御する。ズーム制御部33は、ズームレンズ1ZLの移動可能な範囲内で、測距カメラ1A~1Dにおけるズームの焦点距離を制御する。
【0129】
第2実施形態においても、ズーム制御部33は測距カメラ1A~1Dにおけるズーム量を被写体2と各測距カメラ1との距離に応じて制御するから、被写体2は測距カメラ1A~1Dによってほぼ同じ大きさで撮影される。その結果、測距カメラ1A~1Dが被写体2を撮影するときの画角がほぼ一致するので、各測距カメラ1による撮影画像の点群の量がほぼ一致する。よって、測距カメラ1A~1Dによる撮影画像を合成してボリュメトリック画像を生成すると、視覚的な違和感はほとんど生じない。
【0130】
本発明は以上説明した第1または第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更である。
【符号の説明】
【0131】
1A~1D 測距カメラ
2 被写体
30 ズーム制御装置(マルチ測距カメラの制御装置)
31 演算部
32 記憶部
33 ズーム制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16