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特開2024-157345車両及びハイブリッド車両の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157345
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】車両及びハイブリッド車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20241030BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20241030BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20241030BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20241030BHJP
   B62M 23/02 20100101ALI20241030BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20241030BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241030BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241030BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241030BHJP
【FI】
B60W20/13
B60W20/40 ZHV
B60W20/00 900
B60K6/547
B62M23/02 110
B60K6/442
B60L50/60
B60L58/12
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071656
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 恒介
(72)【発明者】
【氏名】多田 知希
(72)【発明者】
【氏名】劉 夢清
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB00
3D202BB08
3D202BB16
3D202BB19
3D202BB53
3D202BB69
3D202CC01
3D202CC34
3D202CC48
3D202CC59
3D202DD13
3D202DD45
3D202EE24
3D202FF08
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC08
5H125AC12
5H125CA08
5H125CD02
5H125DD01
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】出力変動に伴う運転フィーリングの低下を抑えることのできる車両を提供する。
【解決手段】駆動輪と、前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、前記処理回路は、所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないとユーザ選択による前記第1走行モードの選択を有効化し、前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、前記切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えるように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、
第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、
選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、
所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないとユーザ選択による前記第1走行モードの選択を有効化し、
前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、
所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、
前記切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えるように構成されている、車両。
【請求項2】
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機または前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が、所定の正常範囲から逸れている状態であることを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記切替条件は、前記少なくとも1つの原動機から前記駆動輪に伝達される駆動力が、所定値以下の状態であるとの条件を含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記切替条件は、前記車両が停車したとの条件を含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項5】
前記切替条件は、前記車両の停車が所定時間継続して経過したとの条件を含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項6】
報知装置を更に備え、
前記処理回路は、前記第2走行モードで前記車両の走行中に、前記選択無効条件が成立しなくなると、前記第1走行モードの選択の無効化を解除すると共に、前記第1走行モードの選択の無効化を解除したことを示す情報を前記報知装置によってユーザに報知させるように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項7】
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機または前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が、所定の正常範囲から逸れている状態であることを含み、
前記選択無効条件は、前記第1のエネルギ源のエネルギ残量が閾値未満であることを含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項8】
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機または前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が、所定の正常範囲から逸れている状態であることを含み、
前記選択無効条件は、前記第1走行モードの動作に必要な原動機またはエネルギ源に関係する部分の温度が予め定める範囲外であるとの条件を含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項9】
前記選択無効条件は、前記第1走行モードの動作に必要な原動機またはエネルギ源に関係する部分の異常が検出されたとの条件を含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項10】
前記選択無効条件は、前記内燃機関の始動に異常が検出されたとの条件を含み、
前記切替条件は、運転者による加速要求量が閾値以下であるとの条件を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項11】
前記選択無効条件は、過去の前記第1走行モードへの切替にあたって始動異常が生じたことがあるとの条件を含む、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
駆動輪に伝達される駆動力を生成する2つの原動機を有するハイブリッド車両の制御方法であって、
第1の原動機を主に用いる第1走行モードと、第2の原動機を主に用いる第2走行モードとのうち、いずれかの走行モードに従って、前記原動機を制御することと、
所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないと、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を有効化することと、
前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、前記第1走行モードを継続し、所定の車両状態である切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えることと、を含む、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項13】
駆動輪と、
前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、
第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、
選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、前記第1走行モードで車両走行中に、所定の車両状態である異常条件が成立すると、
所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、
前記切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず、前記第2走行モードに切替えるように構成され、
前記第2走行モードは、前記異常条件が成立することを回避可能な走行モードである、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状況に応じた走行モードの設定を行う車両及びハイブリッド車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンとモータとの両方によって駆動輪が駆動されるハイブリッド車両において、バッテリ電力の残量が低下すると、モータ駆動による出力を制限することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-95703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転者は、モータ駆動による出力の制限に起因した走行中の出力変動により、運転フィーリングに違和感を持ってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、出力変動に伴う運転フィーリングの低下を抑えることのできる車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両は、駆動輪と、前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、前記処理回路は、所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないとユーザ選択による前記第1走行モードの選択を有効化し、前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、前記切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えるように構成されている。
【0007】
また、本開示のハイブリッド車両の制御方法は、駆動輪に伝達される駆動力を生成する2つの原動機を有するハイブリッド車両の制御方法であって、第1の原動機を主に用いる第1走行モードと、第2の原動機を主に用いる第2走行モードとのうち、いずれかの走行モードに従って、前記原動機を制御することと、所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないと、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を有効化することと、前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、前記第1走行モードを継続し、所定の車両状態である切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えることと、を含む。
【0008】
また、本開示の車両は、駆動輪と、前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記第1走行モードで車両走行中に、所定の車両状態である異常条件が成立すると、前記第1走行モードを継続し、所定の車両状態である切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず、前記第2走行モードに切替えるように構成され、前記第2走行モードは、前記異常条件が成立することを回避可能な走行モードである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、選択無効条件が成立すると、第1走行モードの選択を無効化するので、第1走行モードの走行機会が過度に増えることによる影響を抑えることができる。また、切替条件が成立するまでは、走行モードが第2走行モードに切り替わらないので、意図せず走行モードが切り替わることで運転フィーリングが低下することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両についての側面図である。
図2】車両の動力系統の模式図である。
図3】車両の制御系統のブロック図である。
図4】ディスプレイの部分について拡大した模式的な平面図である。
図5】バッテリ残量に応じたモード切替動作を示すタイミングチャートである。
図6】バッテリ残量に応じたモード切替動作を示すフローチャートである。
図7】エンジン異常に応じたモード切替動作を示すタイミングチャートである。
図8】エンジンの異常に応じたモード切替動作を示すフローチャートである。
図9】エンジンの始動異常に応じたモード切替動作を示すタイミングチャートである。
図10】エンジン始動異常に応じたモード切替動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る車両及びハイブリッド車両の制御方法について、添付図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る車両1の側面図である。図1に示すように、本実施形態では、車両1は、運転者が跨って乗る鞍乗車両の一例であり、本実施形態においてはハイブリッド車両の自動二輪車である。
【0012】
車両1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続する前サスペンション6と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション7とを備える。前サスペンション6は、操舵軸8の下部に設けられ、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット9に連結されている。ブラケット9に接続される操舵軸8が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持されている。
【0013】
操舵軸8には、運転者が手で握るハンドル10が設けられる。ハンドル10は、操作することによって車両1の加速、減速を調節するアクセル操作子10aを有している。ハンドル10の後側には、燃料タンク11が設けられ、燃料タンク11の後側に運転者が着座するシート12が設けられる。車体フレーム4には、前輪2と後輪3との間において走行駆動源となるパワーユニット13が搭載されている。
【0014】
パワーユニット13は、原動機としての内燃機関であるエンジンEG(第2の原動機)と、駆動軸を有し原動機としての電動モータである駆動モータM(第1の原動機)とを備える。本実施形態では、エンジンEG及び駆動モータMは、後輪3に伝達される回転駆動力を発生させる原動機としての機能を有している。エンジンEGの後側には、変速機14が配置されている。
【0015】
図2に、図1の車両1の動力系統の模式図を示す。変速機14は、入力軸と、出力軸と、減速比の異なる複数組のギヤ列とを有する。変速機14は、ギヤ列を介して入力軸から出力軸に動力伝達可能に構成され、ギヤ列のうち任意の一組を選択して変速する。例えば、変速機14は、ドッグクラッチ式の変速機である。エンジンEGのクランク軸Eaの一端部は、プライマリギヤ15に動力伝達可能に接続されている。
【0016】
プライマリギヤ15は、変速機14の軸回りに、変速機14に相対回転自在に設けられる。プライマリギヤ15は、メインクラッチ16を介して変速機14に動力伝達可能に接続されている。メインクラッチ16は、クランク軸Eaから変速機14への動力経路の切断及び接続を行う。油圧によりメインクラッチ16が駆動されて、クランク軸Eaから変速機14への動力経路の切断及び接続が行われる。
【0017】
プライマリギヤ15と変速機14との間には、スプロケット17が設けられる。駆動モータMは、モータハウジングMaと、モータハウジングMaから突出するモータ駆動軸Mbとを備え、モータ駆動軸Mbにはスプロケット18がモータ駆動軸Mbと共回転するように設けられる。なお、スプロケット17、18の代わりに、回転部材としてギヤやプーリが用いられてもよい。そして、変速機14側のスプロケット17とモータ駆動軸Mb側のスプロケット18とに、チェーン19が接続されている。これにより、駆動モータMの駆動力が、スプロケット17を介して変速機14に伝達される。変速機14は、出力伝達部材20(例えば、チェーン、ベルト等)を介して駆動力を後輪3に伝達する。
【0018】
ECU21(処理回路)は、エンジンEGを制御する。具体的には、スロットル装置T、燃料噴射装置F及び点火装置Iを制御する。また、ECU21は、上述のようにメインクラッチ16の接続及び切断を制御し、エンジンEGの駆動を駆動輪である後輪3に伝達するか否かを切り替える。また、ECU21は、BMU(バッテリ管理ユニット)22、バッテリ23、インバータ24を介して駆動モータMの駆動を制御する。ECU21は、駆動輪である後輪3の駆動形態が異なる複数の走行モードを切り替え可能に構成される。具体的には、ECU21は、後輪3の駆動を、エンジンEGによって行うHEVモードか、駆動モータMによって行うEVモードかを切り替えることができる。
【0019】
本実施形態においては、駆動モータMは、発電機として機能してもよい。エンジンEGによる駆動力が用いられたときに駆動モータMによって発電され、そこで発生した電力をバッテリ23に充電することができる。また、駆動モータMの他に、クランク軸Eaの回転力が与えられることによって発電する発電機Gが設けられる。発電機Gで発電された電力は、バッテリ23で蓄電される。
【0020】
図3は、図1に示す車両1の制御系統のブロック図である。ECU21は、走行モード選択スイッチ25、BMU22、アクセルセンサ26、車速センサ27、エンジン回転数センサ28、スロットルポジションセンサ67等の出力信号を、インタフェース29によって受信する。走行モード選択スイッチ25は、運転者からの車両1へのモード選択指令が入力されるユーザインターフェースとなる、走行モード入力部として機能する。運転者は、走行時のシチュエーションや好みに応じて走行モード選択スイッチを介して走行モードを選択して入力することにより、走行モードを変更することができる。BMU22は、バッテリ23(図2)の残量や電圧等を検出する。アクセルセンサ26は、運転者が操作するアクセル操作子10aの操作量(即ち、加減速要求度)を検出する。車速センサ27は、車両1の走行速度を検出する。エンジン回転数センサ28は、エンジンEGのクランク軸Eaの回転数を検出する。スロットルポジションセンサ67は、エンジンEGのスロットルバルブの位置を検出する。
【0021】
ECU21は、ハードウェア面において、プロセッサ、システムメモリ、ストレージメモリ及び入出力インタフェース29、30を含む。プロセッサは、例えばCPU(中央演算処理装置)を含み得る。システムメモリは、RAM(Random Access Memory)を含み得る。ストレージメモリは、ROM(Read Only Memory)を含み得る。ストレージメモリは、ハードディスク及び/又はフラッシュメモリを含み得る。ストレージメモリは、プログラムを記憶している。システムメモリに読み出されたプログラムをプロセッサが実行する構成は、処理回路の一例である。
【0022】
ECU21は、機能面において、モードプログラム実行部31、走行モード切替部32、モータ制御部33、エンジン制御部34、クラッチ制御部35、ディスプレイ制御部36及びモードプログラム記憶部39を有する。本実施形態においては、ストレージメモリに、モードプログラム記憶部39が含まれている。モードプログラム記憶部39には、走行モードの設定に用いられるモードプログラムが記憶されている。
【0023】
インタフェース30は、インバータ24、燃料インジェクタF、点火装置I、スロットル装置40、クラッチアクチュエータ41及びディスプレイ42に接続されている。インバータ24は、モータMに供給される電力を調節し、モータMによる駆動を制御する。燃料インジェクタFは、エンジンEGの燃焼室に供給される燃料の量を調節する。点火装置Iは、エンジンEGにおけるインジェクタによる着火を制御する。スロットル装置40は、エンジンEGにおける吸気量を調節する。燃料インジェクタF、点火装置I及びスロットル装置40を制御することにより、エンジンEGによる駆動を制御する。クラッチアクチュエータ41は、エンジンEGによる駆動とモータMによる駆動とのいずれを後輪3に伝達するか、あるいは両方による駆動を後輪3へ伝達するかを制御する。
【0024】
モータ制御部33、エンジン制御部34及びクラッチ制御部35は、車両1が走行する際のパワーユニット13の駆動制御を行う。プロセッサ29が、アクセルセンサ26、車速センサ27及び回転数センサ28からの情報、あるいは、走行モード選択スイッチ25を介した運転者からの入力に従い、モードプログラム記憶部39に記憶されたプログラムに従って、モードプログラム実行部31によって演算処理が行われ、走行モードが設定される。
【0025】
モードプログラム実行部31は、設定された走行モードに従い、モータ制御部33、エンジン制御部34及びクラッチ制御部35に、インバータ24、燃料インジェクタF、点火装置Iの出力を制御させることによってモータMの制御及びエンジンEGの出力制御を行う。モードプログラム記憶部39に記憶されたプログラムに従ってモードプログラム実行部31によって設定された走行モードは、走行モード切替部34による切替によって変更することができる。走行モード切替部34からモードプログラム実行部33に走行モードの切替のための信号を送信することにより、設定された走行モードを切り替えることができる。
【0026】
モードプログラム記憶部39には、複数種類の走行モードプログラムが予め記憶されている。走行モードプログラムは、電動モータM及びエンジンEGの駆動の有無及び電動モータM及びエンジンEGのそれぞれに配分される駆動トルクの割合が決められている。例えば、走行モードプログラムでは、車両条件(例えば、要求トルク及びエンジン回転数等)に応じた電動モータM及びエンジンEGの状態の変化が決められている。
【0027】
モータ制御部33は、モードプログラム実行部31からの指令に応じてインバータ24を制御することによりモータMの動作を制御する。エンジン制御部34は、モードプログラム実行部31からの指令に応じて燃料インジェクタF、点火装置I及びスロットル装置40を制御することによりエンジンEGの動作を制御する。クラッチ制御部35は、モードプログラム実行部31からの指令に応じてクラッチアクチュエータ41を制御する。なお、本実施形態においては、ECU21の内部で、モータ制御部33、エンジン制御部34、クラッチ制御部35及びディスプレイ制御部36がインタフェース30に接続される形態について説明したが、これに限定されない。モータ制御部33、エンジン制御部34、クラッチ制御部35及びディスプレイ制御部36以外の他の制御部がインタフェース30に接続されていてもよい。また、モータ制御部33、エンジン制御部34、クラッチ制御部35及びディスプレイ制御部36のうち、一部の制御部のみがインタフェース30に接続されていてもよい。インタフェース30に接続される制御部は、上記の4つの制御部でなくてもよい。
【0028】
また、ECU21は、スロットル装置などの異常状態を検出するプログラムを記憶することが可能に構成されている。また、ECU21は、エンジン始動時の際の点火不良状態を検出するプログラムを記憶することが可能に構成されている。
【0029】
本実施形態では、車両1において、内燃機関であるエンジンEGと、駆動モータMとが、それぞれ駆動源として用いられる。車両1は、エンジンEGだけを駆動力として用いた走行、駆動モータMだけを駆動力として用いた走行、エンジンEG及び駆動モータMの両方を駆動力として用いた走行が可能である。エンジンEGだけを駆動力として用いる場合には、メインクラッチ16が接続されてエンジンEGによる駆動力を後輪3に伝達させると共に、インバータ24によって駆動モータMによる駆動を停止制御することによって駆動モータMに駆動力を生じさせない。エンジンEGは、点火装置I、スロットル装置T、燃料インジェクタFを制御して、エンジントルクまたはエンジン回転数を制御する。駆動モータMだけを駆動力として用いる場合には、メインクラッチ16を接続しないようにして、エンジンEGのクランク軸Eaと出力伝達部材20とを切断する。また、インバータ24によって駆動モータMの制御を行い、モータトルクまたはモータ回転数を制御する。また、駆動モータMによる駆動力及びエンジンEGによる駆動力の両方を用いる場合には、メインクラッチ16を接続して、エンジンEGによる駆動力を後輪3へ伝達すると共に、インバータ24によって駆動モータMを制御することにより駆動モータMで駆動力を生じさせる。従って、車両1は、走行を行う際の走行モードとして、電動モータMのみを用いて走行駆動するEVモードと、電動モータMとエンジンEGとを用いて走行駆動するHEVモードとが選択可能に設定される。本実施形態ではさらに、HEVモードは、HEV-ELモードと、HEV-EGモードとを有している。車両1は、所定の切替許容条件を満足することで、走行中に走行モードを切り替えることが可能である。
【0030】
HEV-ELモードは、エンジンEGと駆動モータMとを複合的に用いたうえで、主に駆動モータMを用いて走行駆動する。たとえばHEV-ELモードは、エンジンEGが発生する動力よりも駆動モータMが発生する動力を優先的に駆動力として用いる走行モードである。また例えばHEV-ELモードでは、発進時に駆動モータMを用いて駆動輪を駆動する。また、例えば駆動モータMによる発進走行が行われた後に、エンジンEGによる駆動を用いる方が効率の良い領域でエンジンEGによる出力が補助的に用いられるように駆動源が切り替わってもよい。
【0031】
HEV-EGモードは、エンジンEGと駆動モータMとを複合的に用いたうえで、主にエンジンEGを用いて走行駆動する。たとえばHEV-EGモードは、駆動モータMが発生する動力よりもエンジンEGが発生する動力を優先的に駆動力として用いる。たとえばHEV-EGモードは、発進時にエンジンEGを用いて駆動輪を駆動する。
【0032】
たとえばHEV-ELモードのほうが、HEV-EGモードよりも電動モータの利用機会が多くなるように設定される。またHEV-ELモードは、HEV-EGモードに比べて、燃料消費を抑えることを目的としたモードとして設定されてもよい。またHEV-EGモードは、HEV-ELモードに比べて、駆動出力や応答性を高めることを目的としたモードとして設定されてもよい。以下、HEV-EGモードとHEV-ELモードとを合わせて、単にHEVモードということもある。また、本実施形態においては、EVモード、HEV-ELモード及びHEV-EGモードとは別に、WALKモードが設定されている。WALKモードにおいては、駆動モータのみの駆動によって徐行走行が行われる。また、本実施形態においては、WALKモードにおいては、徐行しながら前後進させることができる。WALKモードは、例えば運転者がシート12から降りてハンドル10を操作するときや駐輪作業で用いられる。車両1が走行路面を走行するときには、EVモード、HEV-ELモード及びHEV-EGモードが用いられる。
【0033】
本実施形態では、以下のようにHEV-EGモード、HEV-ELモードがそれぞれ設定される。HEV-ELモードにおいては、エネルギ消費に対する効率が高くなるように駆動源の選択、併用が設定される。例えば、エネルギ効率が高くなるように、エネルギ効率に基づいて、低回転域では駆動モータMによる出力が用いられ、高回転域ではエンジンEGによる出力が用いられるようにそれぞれエンジンEG及び駆動モータMが用いられてもよい。また例えば、エンジンEGによるエネルギ効率が高い回転数領域においてはエンジンEGが用いられて、それ以外の領域では駆動モータMが用いられてもよい。
【0034】
HEV-EGモードにおいては、走行機会の大部分、あるいは全域でエンジンEGによる駆動が用いられる。また、HEV-EGモードにおいては、駆動モータMは、エンジンEGによる動力だけでは要求出力が不足する領域での駆動力付加として用いられる。たとえば、エンジンEGによるトルクが小さい低回転領域での出力付与として駆動モータMが用いられる。また、例えばアクセル急開状態や加速スイッチが操作されるなど、運転者の加速要求が高い状態においては、エンジンEGによる出力に加えて駆動モータMによる出力が用いられる。
【0035】
図4に、車両1におけるディスプレイ42の部分について拡大した模式的な平面図を示す。本実施形態においては、ディスプレイ42に、現モード表示49、モード選択有効表示47、制限状態表示48のそれぞれが表示可能に設けられる。現モード表示49は、走行に用いられている走行モードを表示する。現モード表示49は、たとえばEV、HEV-EL、HEV-EGのうちで、現在走行に用いられている走行モードを表す1つが選択的に有効表示され、残りが消灯表示される。また消灯表示のほか、グレー表示など、視認性が低下するように表示されたりしてもよい。
【0036】
モード選択有効表示47は、予め定める選択範囲条件に基づいて、運転者の選択によって設定することが可能な走行モードを示す。モード選択範囲の具体例については後述する。本実施形態では、車両状態に応じて、運転者の選択可能な走行モード範囲が異なるため、運転者に選択可能な走行モードを表示することで、運転者は、有効に選択できる走行モードを把握することができる。
【0037】
制限状態表示48は、処理回路によって駆動源による駆動が制限された状態を示す。ここでは、駆動源として駆動モータMによる駆動が制限されたときに、制限状態表示48において制限されたことが示される。たとえば、バッテリの交換を促す際や、モータやバッテリ状態が正常状態を逸れている場合に駆動を制限する際に表示してもよい。本実施形態では、亀の外観を模した表示が用いられる。このように、ディスプレイ42に、モード選択有効表示47と、駆動モータMによる駆動が制限されたときに点灯される制限状態表示48とが示される。なお、本実施形態においては、制限状態表示48は、EVモードのときにのみ表示される。HEVモードにおいては、駆動モータによる制限状態の場合には、エンジンによる駆動輪の駆動が実現されてもよい。この場合、制限状態表示48はディスプレイ42に表示されない。また図示しないが、スロットル装置の異常状態を検出すると、エンジンEGによる駆動が制限されたときに点灯される警告表示が設けられてもよい。なお、エンジンの警告表示については、HEVモードのときに表示される。
【0038】
本実施例形態では、モード選択許可表示48は、運転者によるモード選択が制限されていない状態、言い換えると全ての走行モードを選択可能な状態であれば、HEV-EGモード選択有効表示47a、HEV-ELモード選択有効表示47b、EVモード選択有効表示47cのそれぞれが表示される。本実施形態では、車両状態によっては、運転者による選択が制限される場合がある。選択が制限された状態では、運転者によるモード選択が無効となっている走行モードに対応する選択可能表示が消灯表示される。言い換えると、運転者によるモード選択が有効な走行モードに対応する選択可能表示の表示が維持される。
【0039】
図4に示すように、本実施形態においては、モード選択許可表示は、上下/左右の4つの領域に分けられる。この4つの領域のうち、上2つがHEVモード選択有効表示47a、47bに該当し、下2つがEVモード選択有効表示47cに該当する。上2つのHEVモード選択有効表示のうち、左側がHEV-EGモード有効表示47aに該当し、右側がHEV-ELモード有効表示47bに該当する。4つの領域のうち、下2つがEVモード47cに該当する。
【0040】
EVモードに選択可能な状況では、EVモード選択有効表示47cが点灯する。またEVモードの選択が無効となる状況では、EVモード選択有効表示47cが消灯する。HEV-EGモードに選択可能な状況では、HEV-EGモード選択有効表示47aが点灯する。またHEV-EGモードの選択が無効となる状況では、HEV-EGモード選択有効表示47aが消灯する。HEV-ELモードに選択可能な状況では、HEV-ELモード選択有効表示47bが点灯する。またHEV-ELモードの選択が無効となる状況では、HEV-ELモード選択有効表示47bが消灯する。
【0041】
また、車両1は、運転者が走行モードの切替を入力するためのスイッチ25を備える。スイッチ25のうち、HEV-EGモードスイッチ25aを運転者が操作すれば、HEV-EGモードへの選択指令をECUに入力することができる。スイッチ25のうち、HEV-ELモードスイッチ25bを運転者が操作すれば、HEV-ELモードへの選択指令をECUに入力することができる。スイッチ25のうち、EVモードスイッチ25cを運転者が操作すれば、EVモードの選択指令をECUに入力することができる。本実施形態においては、スイッチ25は、図3における走行モード選択スイッチ25に相当する。なお、スイッチ25の構成は、上記の構成に限定されない。ディスプレイ42上でカーソルスイッチを移動させ、選択したい走行モードにカーソルが移動したところで決定スイッチを操作することにより、走行モードの選択が行われてもよい。
【0042】
モード選択有効表示47、制限状態表示48及び現モード表示49は、走行中に運転者が視認可能な位置に設けられている。モード選択有効表示47、制限状態表示48及び現モード表示49は、例えば走行状態を示す計器盤の一部の領域に設けられてもよい。計器盤には、走行中に確認が必要な他の情報も表示されてもよい。たとえば計器盤には、走行速度、燃焼残量、バッテリ残量などが合わせて表示されてもよい。また、本実施形態においては、アクセル操作子と反対側のグリップ付近に、走行モード選択スイッチ25が配置されている。
【0043】
上述したように、選択無効条件が満足した場合の走行モードの切り替えについての詳細について説明する。本実施形態では、選択無効条件として、バッテリ残量が予め定める閾値A1未満である場合が含まれる。たとえば、この閾値A1は、モータ駆動が不安定となるバッテリ残量よりも所定量高い値に設定されてもよい。この所定量は、走行時から走行停止するまでに必要と推定される平均的なバッテリ容量に設定されてもよい。
【0044】
走行中の電動モータMの利用によって、車両1のバッテリ残量が減少して閾値A1未満となることがある。本実施形態においては、まず、バッテリ残量が第1閾値A1未満になったか否かが検出される。バッテリ残量が第1閾値A1未満となったときに、車両1の走行モードにおいて、HEV-ELモードの選択が無効化されて、HEV-EGモードへの切り替えが行われる。具体的には、HEV-EGモードに切り替えられる際には、所定時間の停車があったときに、運転者の操作に拘らずに、ECU21によってHEV-EGモードに切り替えられる。本実施形態では、車両1が停車したか否かの判断については、走行速度がゼロであることと、スロットル操作量が全閉状態であることが検出されたときに、停車した状態であると判断する。
【0045】
図5に、車両1のバッテリ残量が減少して閾値A1未満となって車両の走行モードがHEV-ELモードからHEV-EGモードに切り替えられる際の、車両の速度、バッテリ残量、走行モード及びディスプレイ42の表示について示したタイミングチャートを示す。また、図6に、車両1のバッテリ残量の変化に応じたECU21が走行モードを切り替えるときのフローチャートを示す。
【0046】
ECU21は、各電装品への電力供給を開始するスイッチが操作されるなどして、駆動電力が供給されると、処理を開始する。最初の段階では、車両1の走行モードがHEV-ELモードに設定された状態で走行しているものとする。この段階では、ECU21は、全ての走行モードに設定することが可能である。またECU21は、ディスプレイを制御して、すべての選択可能表示47a,47b,47cを点灯表示する。ECU21は、選択無効条件を判断する選択無効判断工程を実行する(S101)。本実施形態では、この選択無効判断工程(S101)において、バッテリ残量が閾値A1未満か否かを判断する。
【0047】
選択無効判断工程(S101)で、ECU21は、バッテリ残量が閾値A1未満となっていないことを判断すると、通常制御工程(S102)に進む。通常制御工程(S102)では、ECU21は、走行モードをHEV-ELモードに選択することを有効化し、エンジンEGや駆動モータMを用いて駆動輪への動力を制御する。従って、車両1は、走行モードを切り替えずにHEV-ELに設定し続けることが可能となる。このとき、ECU21は、いずれの走行モードの設定も禁止していない。したがってECU21は、HEV-EGモード選択可能表示47a、HEV-ELモード選択可能表示47b、EVモード選択可能表示47cのいずれの表示もディスプレイ42に表示維持させる。このとき、ECU21はいずれの走行モードの選択も有効化しているので、運転者は制限されることなく、モード変更を望む運転者による他のモードへの変更が可能である。通常制御工程(S102)では、ECU21は、通常制御を実行したうえで、終了判断工程(S108)に進む。
【0048】
選択無効判断工程(S101)で、ECU21は、バッテリ残量が閾値A1未満となったことを判断すると、選択無効工程(S103)に進む。図5に示されるように、車両1のバッテリ残量が減少し、バッテリ残量が閾値A1未満となると、選択無効条件が成立する。選択無効工程(S103)では、ECU21は、運転者の選択による走行モードがHEV-ELモードに切り替わることを無効化、言い換えると禁止する。この場合、運転者が走行モード選択スイッチを操作してHEV-ELモードへの変更要求を行っても、変更要求が無効化される。このとき、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、HEV-ELモード選択有効表示47bを消灯させる。また、ECU21は、運転者の選択によって走行モードがHEV-EGモードに選択されることは有効化を維持する。この場合、運転者が走行モード選択スイッチを操作してHEV-EGモードへの変更要求を行うと、ECU21は、変更要求を有効化して、HEV-EGモードに切り替える。すなわち、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、HEV-EGモード選択有効表示47aを点灯維持する。またECU21は、運転者からのモード切替選択がない場合には、HEV-EVモードによる走行を継続する。ECU21は、HEV-ELモードへの選択無効工程(S103)を終了すると、停車判断工程(S104)に進む。
【0049】
停車判断工程(S104)では、ECU21は、切替条件を満足するかどうか、具体的には車両1が停車したまま所定時間経過するか否かを判断する。ECU21は、所定時間の停車を検知すると切替工程(S105)に進む。切替工程(S105)では、ECU21は、運転者の操作に拘らず、走行モードをHEV-ELモードからHEV-EGモードに切り替える。このとき、ECU21は、ディスプレイ42の現モード表示49として、HEV-ELモード表示を消灯させて、HEV-EGモード表示を点灯させる。
【0050】
上述した切替条件は、ECU21が走行モードの切替を行ったとしても、運転者の運転フィーリングに影響を与えない状況となるまで待機する条件である。本実施形態においては、選択無効条件が成立したあとで、車両1が停車状態を予め決められた所定期間継続したときに、HEV-EGモードへの切替が行われる。図5に示すように、選択無効条件を満足したうえで、走行停止した時点t2から所定時間(t3-t2)の走行停止状態が維持された時点t3になると、HEV-EGモードへの切替が行われる。すなわち、選択無効条件が成立してから、HEV-EGモードへの切替えが行われるまで、HEV-ELモードを維持する。言い換えると、選択無効条件が成立してから、HEV-EGモードへの切替を待機する走行モード切替待機期間が設定される。例えば、所定時間は3秒に設定されてもよい。
【0051】
本実施形態においては、切替工程(S105)で、ECU21は、走行モードの切替えを行うと、図6の設定解除判断工程(S106)に進む。設定解除判断工程(S106)ではECU21は、バッテリ残量が閾値以上であるか否かを判断する。本実施形態においては、HEV-EGモードで走行することにより駆動モータMの駆動力で走行する期間が短くなり、走行中のエンジンによる発電、電動モータを用いた回生等によってバッテリ残量が回復することがある。これによってバッテリ残量が閾値以上になると、ECU21は、HEV-ELモードでの選択無効化を解除する。このように、ECUは、バッテリ残量が回復すると、HEV-ELモードでの選択無効化を解除して、HEV-ELモードでの走行が可能となるように構成される。
【0052】
バッテリ残量が回復したときのHEV-ELモードの選択無効化を解除する閾値は、選択無効判断工程(S101)で設定される閾値A1と同じでもよいが、閾値A1よりも高い方が好ましい。設定解除判断工程(S106)で、ECUは、バッテリ残量が閾値以上であることを判断すると、解除工程(S107)に進む。解除工程(S107)では、ECU21は、HEV-ELモードに運転手が選択することの無効化が解除される。つまり、ECU21は、HEV-ELモードの選択を有効化する。また、解除工程(S107)では、ECU21は、HEV-ELモード選択有効表示47bを点灯表示して、運転者にHEV-ELモードの選択無効化が解除されたことを報知する。解除工程(S107)を終了すると、終了判断工程(S108)に進む。終了判断工程(S108)では、運転者によって車両の動作の停止操作がされたかどうか判断する。たとえば電装品への電力供給を終了するキルスイッチ操作が行われたとすると、動作を終了する。終了判断工程(S108)で車両の走行終了動作が操作していないと判断すると、選択無効判断工程(S101)に戻る。また各工程の動作中であっても、運転者によって車両の動作停止操作を判断すると、動作を終了する。
【0053】
上述のように、選択無効条件が成立後に、切替条件が成立すると、モータ駆動による電力消費を抑えるように、ECU21は、モータ駆動の機会を抑えたHEV-EGモードに切り替える。本実施形態によれば、バッテリ残量が閾値未満であるときに駆動モータMを主な駆動源として走行する走行モードの選択を無効化して走行モードをHEV-ELモードからHEV-EGモードに切り替える。すなわち、駆動モータMを駆動させるのに必要なバッテリ残量が少なくなったときに、走行モードを、エンジンEGを主な駆動源として用いるHEV-EGモードに切り替える。これによってバッテリ内のエネルギを用いた走行機会が増えることによるエネルギ残量の残量不足を防ぐことができる。
【0054】
本実施形態においては、図5に示すように、ECU21は、選択無効条件の成立を判断すると、モード選択の無効化を報知するために、HEV-ELモード選択有効表示47bを点灯状態から消灯状態に切り替える。これによって運転者は、ECU21によるモード選択の無効化を把握することができ、利便性を向上することができる。たとえば特定の走行モードの選択を行ってもその走行モードへの切替ができない場合に、それがモード選択の無効化によって特定の走行モードを選択できない状態になっていることを示し、スイッチ故障が生じていないことを判断し易くすることができる。またECU21は、切替条件の成立を判断すると、現モード表示49において、HEV-ELモードの表示から、HEV-EGモードの表示に切り替える。これによって、運転者の操作に拘らずに、モードが切り替わったことを把握することができ、利便性を向上することができる。
【0055】
本実施形態においては、HEV-ELモードからHEV-EGモードに切り替える時点は、選択無効条件を満足したうえで、所定の切替条件の成立を条件とする。具体的には、所定時間(t3-t2)継続した停車が確認された時点t3である。すなわちECU21は、車両1の走行中には走行モードの切替を行わずに走行を維持させる。またECU21は、車両1が停車した状態で走行モードを切替える。このように走行モードの切り替わりに適した走行状態を切替条件として設定することで、走行モードが切り替わることに起因する運転フィーリングの低下を防ぐことができる。このようにして本実施形態では、バッテリ残量の過剰低下と、運転フィーリングの低下との両方を防ぐことができる。
【0056】
また、バッテリ残量が回復することによってバッテリ残量が閾値以上となったときには、HEV-ELモードの選択無効化が解除されるので、運転者は、再びHEV-ELモードの選択を行うことが可能になる。その際、HEV-ELモードに選択可能であることを報知するために、HEV-ELモード選択可能表示47bが消灯状態から点灯状態に切り替わる。これによって、運転者への認知を高めて、運転者によるモード選択肢を広げることができる。また本実施形態では、バッテリ残量が回復しHEV-ELモードの選択無効化が解除されるときのバッテリ残量の閾値をA2とすると、閾値A2が閾値A1よりも大きい。従って、バッテリ残量が閾値の境界付近の領域で、走行モードが頻繁に切り替わることを防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、車両の停車が所定時間継続すると、走行モードの切替条件が成立して走行モードがHEV-EGモードに切り替わるので、停車後すぐに発進操作され車体が不安定な状態の期間に走行モードの切替が行われて運転者による運転フィーリングの低下が生じることを抑えることができる。これによって、車両1の車体が安定した状態で走行モードの切替が行われるので、走行モードの切り替わりに起因する車体挙動の変化をより防ぐことができる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、バッテリ残量が閾値未満となったときに、運転者の選択によるHEV-ELモードの選択を無効化する形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。バッテリ残量が閾値未満となったときには、運転者の選択によるEVモードへの選択が無効化される形態であってもよい。つまり、選択無効条件が成立したときに運転者の選択による選択が無効化される第1走行モードは、EVモードであってもよい。つまり、EVモードの選択無効条件が成立してから、所定の切替条件が成立すると、走行モードがEVモードからHEV-EGモードに切り替わってもよい。その際、HEV-ELモードからHEV-EGモードに切り替わるときの切替条件と、EVモードからHEV-EGモードに切り替わるときの切替条件とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、バッテリ残量が減少したときに駆動モータMによる駆動の機会を減少させる形態であれば、HEV-ELモードの設定を禁止するのではなく、EVモードの設定が禁止されてもよい。また、バッテリ残量が閾値未満となったときには、運転者の選択によるHEV-ELモードの選択とEVモードの選択の両方を禁止する形態であってもよい。また、バッテリ残量が閾値未満となったときに、運転者選択によるWALKモードの選択が無効化される形態であってもよい。
【0059】
なお、通常、発進時に必要とされるバッテリ残量は、通常走行に必要とされるバッテリ残量よりも大きい。そのため、選択無効条件は、バッテリ残量が、発進時に必要とされるバッテリ残量未満となったときに、選択無効条件が成立することとしてもよい。また、通常走行時に必要とされるバッテリ残量未満となったときに、選択無効条件が成立することとしてもよい。このように駆動モータM(第1の原動機)にエネルギを供給するバッテリ(第1のエネルギ源)の状態が所定の正常範囲から逸れている状態は、バッテリ残量が閾値未満となった状態を含んでいてもよい。
【0060】
また、選択無効条件が成立した後に切替条件が成立せずにバッテリ残量が減少し、バッテリ残量がさらに低い閾値未満になると、バッテリ保護のために、走行中であっても走行モードの切替が行われてもよい。これにより、強制的に走行モードが切り替えられることにより駆動モータによる出力が抑制され、バッテリ内の電力の使用量が抑制される。この場合、制限状態表示48がディスプレイ42に表示されてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、選択無効条件は、駆動モータMにエネルギを供給するバッテリの状態が所定の正常範囲から逸れている状態が含まれる。走行モードのモード切り替わりに適した所定の走行条件が成立するとエンジンEGを主に用いる走行モードに切り替わることで、駆動モータMを使用し続けることによる駆動モータMの駆動に関連する装置への影響を少なく抑えることができる。また、たとえば、選択無効条件は、バッテリ残量が少なくなった場合のほかに、バッテリ温度やモータ温度が所定範囲外であることが含まれていてもよい。また、選択無効条件には、単位時間当たりの電流量が閾値を超えている場合や、バッテリの劣化の程度が所定の程度を超えたことなどがあってもよい。
【0062】
選択無効条件としてバッテリ温度が採用される場合には、ECU21は、バッテリ温度が閾値以上となったときに、駆動モータMの使用頻度を少なく抑えるために、HEV-EGモードに切り替えてもよい。たとえば、バッテリ温度の測定値が閾値B1以上となり、その後、車両1が所定期間に亘って停車を継続すると、ECU21は、切替条件の成立を判断し、HEV-ELモードあるいはEVモードからHEV-EGモードに走行モードを切り替える。これにより、バッテリ温度が低下しバッテリ温度の測定値が閾値よりも低い温度となるまで駆動モータMの使用頻度を少なくすることができる。これによってバッテリ内のエネルギを用いた走行機会が増えることによるバッテリ温度の更なる上昇を防ぐことができる。
【0063】
またHEV-ELモードまたはEVモードからHEV-EGモードに走行モードを切り替えると、HEV-EGモードで走行することにより駆動モータMの駆動力で走行する期間が短くなる。これによってバッテリの使用頻度が少なくなることによりバッテリ温度が低下することがある。バッテリ温度が閾値温度以下になると、HEV-ELモードまたはEVモードの選択無効が解除されてもよい。また、車両1がHEV-ELモードまたはEVモードによって走行している間に、バッテリ温度が、閾値B1よりもさらに高い温度に設定される第2の閾値B2以上となったときには、モータ及びバッテリを保護するために、ECU21は、切替条件が成立するのを待たずに、走行中でもHEV-EGモードに切替えてもよい。また、その場合、HEV-ELモードによって走行する際に、駆動モータMによる出力が抑制されるように、駆動モータMの駆動が行われてもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、選択無効条件が成立すると、駆動モータMを主に用いる走行モードの選択を無効化する。そのうえで、切替条件が成立すると、走行モードをHEV-EGモードに切り替えることとした。これに限らず、選択無効条件が成立したときには、バッテリの状態が正常範囲から逸れると、駆動モータMの駆動を停止させてもよい。
【0065】
選択無効条件は、他の、駆動モータMにエネルギを供給するバッテリの状態が所定の正常範囲から逸れている状態を含んでいてもよい。例えば、バッテリによる電流の放出量が極端に弱くなったような状態が選択無効条件に含まれていてもよい。また、駆動モータMに異常が生じたことが選択無効条件に含まれていてもよい。
【0066】
また、選択無効条件には、駆動モータMの駆動によって車両1が発進できないような状態となることが含まれてもよい。つまり、駆動モータMの駆動による車両1の発進ができないような状態になったことが検出された場合に、HEV-ELモードあるいはEVモードへの選択無効条件が成立するように車両1の制御が行われてもよい。その場合、駆動モータMの駆動による車両1の発進ができないような状態になったことが検出され、且つ、走行停止が検出されたときに、HEV-ELモードあるいはEVモードへの走行モードの選択が無効化されてもよい。また、そのときに、ディスプレイ42によって、HEV-ELモード選択可能表示47b及びEVモード選択可能表示47cを消灯させ、HEV-ELモードあるいはEVモードへの走行モードの選択が無効であることが表示されてもよい。
【0067】
また、駆動モータMによる走行を主に用いる走行モード(例えばHEV-ELモード)による走行中に選択無効条件が成立するのは、駆動モータMによる発進ができない状態にだけ成立するものでなくてもよい。駆動モータMによる発進ができず、且つ、エンジンEGを用いた走行が可能な状態であるときに、選択無効条件が成立するように、車両1の制御が行われてもよい。例えば、駆動モータMによる発進ができず、且つ、駆動モータMを主に用いる走行モード以外の走行モード(例えばHEV-EGモード)に切り替え可能な状態であるときに、選択無効条件が成立するように、車両1の制御が行われてもよい。また、駆動モータMによる発進ができず、且つ、エンジンEGによる発進が可能である場合に、選択無効条件が成立するように、車両1の制御が行われてもよい。
【0068】
また、駆動モータMによる発進可能な状態は、例えば以下の条件を全て満足する場合に成立するものであってもよい。例えば、バッテリ残量が所定値以上である場合、駆動モータMによる駆動時の最大出力が所定値以上である場合、ISG(Integrated Starter Generator)を用いたエンジンEGの始動が可能である状態、エンジン始動異常でない状態、駆動モータによる駆動が行われたときに駆動力を駆動輪に伝達するパワートレインに異常が生じていない場合、との条件が全て満足されたときに、駆動モータMによる発進可能な状態であると判断されてもよい。なお、駆動モータMによる最大出力は、バッテリ温度、駆動モータMの温度に応じて変化する。また、ISGを用いた始動が可能な状態であるか否かは、バッテリ温度、駆動モータMの温度に応じて変化する。
【0069】
また、駆動モータMによる発進ができない状態であると判断される条件(モータ発進無効条件)の閾値と、駆動モータMによる発進が可能な状態であると判断される条件(モータ発進可能条件)の閾値とは、値が異なっていてもよい。駆動モータMによる発進ができない状態であると判断される条件の閾値は、駆動モータMによる発進が可能な状態であると判断される条件の閾値よりも小さく設定されていてもよい。また、駆動モータMによる発進ができない状態であると判断される条件の閾値と、駆動モータMによる発進が可能な状態であると判断される条件の閾値とは、同じ値であってもよい。
【0070】
また、HEV-ELモードにおいて駆動モータMによる発進ができない状態であると判断される条件の閾値と、EVモードにおいて駆動モータMによる発進ができない状態であると判断される条件の閾値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、選択無効条件が成立したときに切替条件が成立して走行モードが切り替えられる形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。上述の選択無効条件が成立せずに走行モードの切替が行われてもよい。所定の車両状態である異常条件が成立したときに、走行モードが継続され、そこで切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず、走行モードが切替えるように車両1の制御が行われてもよい。その際に切り替えられる走行モードは、異常条件が成立することを回避できるような走行モードであってもよい。その際の異常条件としては、例えば、駆動モータMの駆動によって車両1が発進できないような状態が含まれていてもよい。そこで切り替えられる走行モードは、上記の状態を回避できるような走行モードであってもよい。駆動モータMの駆動によって車両1が発進できないような状態となって異常条件が成立したときには、ユーザ選択に拘らず、車両1の走行モードが、エンジンEGが用いられる走行モード(例えばHEV-EGモード)に切り替えられてもよい。この場合、異常条件が成立したことが、ディスプレイ42に表示されなくてもよい。
【0072】
このように、異常条件は、車両1が2つの原動機を有している場合に、いずれかの原動機の駆動力によって車両1の発進ができないような状態になったときに成立する条件であってもよい。その場合、異常条件が成立したときに有効化される、異常条件が成立することを回避可能な走行モードは、車両1の発進ができない状態になった原動機とは異なる原動機が駆動輪の駆動に用いられる走行モードであってもよい。また、異常条件は、車両1が1つの原動機のみを有する場合に成立する条件であってもよい。その場合、車両1が複数の走行モードを有しており、異常条件は、複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードで車両1が発進できないようになると、成立するような条件であってもよい。例えば、車両1が原動機として駆動モータMのみを有し、車両1が、複数の走行モードとして、第1走行モードと、同一の運転条件下において第1走行モードよりもバッテリ内の電力消費量の少ない第2走行モードとを有する場合に、異常条件は、第1走行モードが継続されると車両1が発進できない状態になるときに成立するような条件であってもよい。また、異常条件は、第1走行モードによって車両1が発進できない状態になったときに成立する条件であってもよい。その場合、異常条件が成立したときに有効化される、異常条件が成立することを回避可能な走行モードは、第2走行モードであってもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、切替条件は、車両1が所定時間に亘って停車したときに成立する形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。切替条件は、車両1において、エンジンEGあるいは駆動モータMから駆動輪に伝達される駆動力が、所定値以下の状態であるときに成立するものであってもよい。つまり、切替条件は、車両1が完全に停車した状態のときだけではなく、車両1が走行していたとしても、車両1が加速している状態でなければ成立するものであってもよい。車両1が加速している状態でなければ、走行していたとしても、走行モードの切替によって運転者の運転フィーリングへの影響が少なく抑えられる。
【0074】
また、本実施形態においては、切替条件は、車両1が所定時間に亘って停車したときに成立する形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。車両1の停車を検出すれば切替条件が成立するように構成されていてもよい。つまり、車両1が所定時間に亘って停車してなくても、一瞬でも車両1が停車したことが検出されれば切替条件が成立するものであってもよい。このとき、車両1の停車が検出されたときにHEV-EGモードへ走行モードが切り替わるので、駆動輪に伝達される駆動力がゼロの状態で走行モードの切替を行うことができる。従って、走行モードの切替に起因する車体挙動の変化を低減することができる。これによって運転者が違和感として認識することを抑えることができる。
【0075】
また、切替条件は、上記の条件以外の条件であってもよい。運転者の運転フィーリングに影響を与えない走行状態であれば、他の走行状態のときに切替条件が成立するように構成されてもよい。たとえば、一定速走行時、変速走行時、ニュートラル走行時などに走行モードの切替が行われるように構成されてもよい。
【0076】
なお、本実施形態においては、バッテリ残量が閾値未満になると、運転者によってHEV-ELモードに走行モードを選択することを無効化したが、そのときのバッテリ残量の閾値としては、エンジンEGの駆動に必要とされる電力を供給可能な電力がバッテリに残存していることが望ましい。本実施形態においては、駆動モータMを駆動するバッテリが、エンジンEGの電装部品に向けて電力を供給している。エンジンEGに付属の電装品としては、例えばスタータモータ、点火プラグ、電子スロットル、ECU等が挙げられる。バッテリ残量が少なくなり、HEV-EGモードに走行モードが切り替えられたときに、エンジンEGの駆動に必要とされる電力がバッテリに残っていれば、エンジンEGを駆動させることにより走行を継続させることが可能になる。そのため、運転者によってHEV-ELモードに選択することを無効化する際のバッテリ残量の閾値は、エンジンEGの駆動に必要とされる電力を供給可能な残存量であることが望ましい。
【0077】
また、上記実施形態においては、第1の原動機が駆動モータMである場合について説明したが、上記実施形態に限定されない。第1の原動機は、エンジンEGであってもよい。つまり、エンジンEGにエネルギを供給する第1のエネルギ源が、燃料タンク内部のガソリンであり、燃料タンク内部のガソリンの量が閾値未満となったときに、HEV-EGモードの設定が禁止され、HEV-ELモードあるいはEVモードの設定が行われるように構成されてもよい。
【0078】
第1の原動機がエンジンEGである場合には、走行中は、HEV-EGモードが選択され、主にエンジンEGが用いられる。燃料タンク内の燃料が少なくなると、走行停止の判断が行われて、エンジンEGによる燃料消費が抑制される走行モードに切り替えられてもよい。例えば、HEV-ELに設定される。その際、HEV-EGモードへの選択が無効化されてもよい。また、走行モードがHEV-EGからHEV-ELに切り替わる際には、切替条件が成立したときに走行モードが切り替わってもよい。その後、燃料タンク内への燃料の供給が行われ、燃料の残量が予め定められている量を超えると、HEV-EGモードの選択の無効化が解除されてもよい。走行モードがHEV-EGからHEV-ELに切り替わる際の待期期間には、HEV-EL表示が消灯されてもよい。
【0079】
次に、車両1のエンジンEGの異常が検出されたときに、エンジンEGを用いる走行モードの選択を無効化する場合について説明する。エンジンEGの異常があったか否かが検出され、エンジンEGの異常が検出されたときに、車両1の走行モードにおいて、HEVモード(第1走行モード)の選択が無効化される。この状態で、切替条件が成立すると、ECU21は、EVモード(第2走行モード)へ切り替える。たとえば切替条件は、所定時間の停車があったときに設定される。
【0080】
本実施形態では、車両1は、エンジンEGの状態を検出することが可能なセンサを有している。エンジンEGの状態を検出するセンサとしては、例えば、エンジンEGにおいて、スロットルバルブの動作異常を検出するためのスロットルポジションセンサ67が挙げられる。スロットルバルブの動作異常が検出される場合として、例えば、運転者がアクセル操作を行っても、スロットルバルブの動作が不十分となる場合が挙げられる。
【0081】
図7に、車両1のエンジンEGの異常が検出されたときに、車両の走行モードが、車両1のECU21によってHEVモードからEVモードに切り替えられる場合の、時間ごとの車両の速度、タイミングチャート、走行モード及びディスプレイ表示について示したタイミングチャートを示す。図8に、車両1のエンジンEGの異常が検出されたときに、車両の走行モードが、車両1のECU21によって走行モードがHEVモードからEVモードに切り替えられる場合のフローチャートを示す。
【0082】
本実施形態においては、ECU21は、各電装品への電力供給を開始するスイッチが操作されるなどして、駆動電力が供給されると、処理を開始する。最初の段階では、走行モードがHEV-EGモードに設定されているものとする。この段階では、ECU21は、全ての走行モードを選択することが可能である。またECU21は、ディスプレイを制御して、すべての選択可能表示47a,47b,47cを点灯表示する。まず、ECU21は、エンジンEGの異常が検出されたか否かを判断するエンジン異常判断工程を実行する(S301)。ECU21は、エンジンEGの状態を検出するセンサの検出信号に基づいてエンジンEGに異常が発生したか否かを判断する。エンジン異常判断工程(S301)において、エンジンEGの異常が検出された場合には、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、エンジン異常警告用のランプを点灯させる。またECU21は、エンジン異常の程度に応じて出力を抑制するようにエンジンEGを制御する。たとえばエンジン異常の程度が大きい場合には、車両の走行速度を、エンジンEGの異常検出時から徐々に低下させる。エンジン異常判断工程を実行すると、ECU21は、選択無効工程(S302)に進む。選択無効工程(S302)では、ECU21は、運転者の選択によって走行モードが、HEVモードに切り替わることを無効化、言い換えると禁止する。このとき、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、HEV-EGモード選択有効表示47aおよびHEV-ELモード選択有効表示47bの両方を消灯させる。
【0083】
また、ECU21は、運転者の選択によって走行モードがEVモードに選択されることを有効化すると共に、有効化の状態を維持する。この場合、運転者が走行モード選択スイッチを操作してEVモードへの変更要求を行うと、ECU21は、変更要求を有効化して、EVモードに切り替える。すなわち、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、EVモード選択有効表示47cを点灯維持する。またECU21は、運転者からのモード切替選択がない場合には、HEV-EGモードによる走行を継続する。ECU21は、HEVモードへの選択無効工程(S302)を終了すると、停車判断工程(S303)に進む。
【0084】
停車判断工程(S303)では、ECU21は、切替条件を満足するかどうか、具体的には車両1が停車したまま所定時間経過するか否かを判断する。ECU21は、所定時間の停車を検知すると、フローは切替工程(S304)に進む。切替工程(S304)では、ECU21は、運転者の操作に拘らず、走行モードをHEVモードからEVモードに切り替える。このとき、ECU21は、ディスプレイ42の現モード表示49として、HEVモード表示を消灯させて、EVモード表示を点灯させる。切替条件は、図6で示したフローチャートと同様の条件であってもよい。また切替工程(S304)では、エンジンの異常に起因する出力抑制状態が解除されて、通常のEVモードによる走行が可能となる。
【0085】
ECU21は、走行モードの切り替えを行うと、フローは終了判断工程(S306)に進む。終了判断工程(S306)では、運転者によって車両の動作の停止操作がされたかどうかをECU21が判断する。たとえば電装品への電力供給を終了するキルスイッチ操作されたとすると、動作を終了する。終了判断工程(S306)で車両の走行終了動作が操作していないと判断すると、フローはエンジン異常判断工程(S301)に戻る。また各工程の動作中であっても、運転者によって車両の動作停止操作を判断すると、ECU21は動作を終了する。
【0086】
またECU21は、エンジン異常判断工程(S301)で、エンジンEGに異常があると判断しない場合には、通常制御工程(S305)に進む。通常制御工程(S305)では、ECU21は、走行モードをHEVモードに選択することを有効化し、エンジンEGや駆動モータMを用いて駆動輪への動力を制御する。従って、車両1は、走行モードを切り替えずにHEVモードに設定し続けることが可能となる。このとき、ECU21は、いずれの走行モードの設定も禁止していない。したがってECU21は、HEV-EGモード選択可能表示47a、HEV-ELモード選択可能表示47b、EVモード選択可能表示47cのいずれの表示もディスプレイ42に表示維持させる。このとき、ECU21はいずれの走行モードの選択も有効化しているので、運転者は制限されることなく、モード変更を望む運転者による他のモードへの変更が可能である。通常制御工程(S305)では、ECU21が通常制御を実行したうえで、フローは終了判断工程(S306)に進む。
【0087】
本実施形態によれば、選択無効条件が、エンジンEGの異常が検出されたときに成立する。したがって選択無効条件が成立したときには、所定の切替条件を満足すると、ECU21がEVモードへ走行モードを自動的に切り替える。従って、切替条件が成立した後には、車両1はエンジンEGによる駆動を用いずに走行する。従って、内燃エンジンの異常の影響を受けずに車両の走行を継続することができる。なお、好ましくは、エンジン異常が解消されるまで、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、エンジン警告ランプの点灯状態を維持し続けてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態においては、エンジンEGの異常が検出された場合として、エンジンEGのスロットルバルブに異常が生じた場合について説明したが、ここで検出されるエンジンEGの異常は上記実施形態に限定されない。例えば、センサの異常、配線の断線、短絡などの通電異常、クラッチアクチュエータの動作異常などが検出されたときに、エンジンEGに異常が生じたとECU21が判断してもよい。また、水温計によって検出された冷却水の温度が高温となったときに、エンジンEGに異常が生じたとECU21が判断してもよい。
【0089】
上述のように、予め定める選択無効条件を満足する場合には、ECU21は運転者の選択を無効化する。また予め定める切替条件を満足する場合には、運転者のモード選択とは無関係に、ECU21の判断でECU21が走行モードを変更することがある。選択無効条件を満足したうえで、さらに予め定める切替条件を満足した場合には、運転者の選択に拘らずに、強制的に走行モードを切替える。
【0090】
次に、車両1の走行モードをHEV-EGモードあるいはHEV-ELモードに設定し、そこでクランキングの失敗や燃料の不足からエンジンEGの始動異常が検出されたときに、ECU21が走行モードをEVモードに設定する場合について説明する。このようにエンジン始動異常があったことが検出されたときには、HEVモードからEVモードへの切替が行われる。走行モードがEVモードに切り替えられる際には、加速要求量が閾値以下であると判断すると、自動的にEVモードに切り替えられる。
【0091】
図9に、車両1のエンジン始動の異常が検出されたときに走行モードをEVモードに設定する場合の、タイミングチャートを示す。また、図10に、車両1のエンジン始動の異常が検出されたときに走行モードをEVモードに設定する場合のフローチャートを示す。
【0092】
本実施形態においては、ECU21は、各電装品への電力供給を開始するスイッチが操作されるなどして、駆動電力が供給されると、処理を開始する。最初の段階では、車両1の走行モードがEVモードに設定されているものとする。この段階では、ECU21は、全ての走行モードに設定することが可能である。またECU21は、ディスプレイを制御して、すべての選択可能表示47a,47b,47cを点灯表示する。ECU21は、エンジン始動判断工程を実行する(S501)。ECU21は、エンジン始動判断工程(S501)で、エンジン始動を判断するまで、エンジン始動判断工程(S501)を繰り返す。本実施形態では、エンジン始動判断工程(S501)では、ユーザ選択によって走行モードがHEV-EGモードに選択されたかどうかを判断する。ECU21は、HEV-EGモードが選択されると、エンジン始動開始を判断し、フローが異常履歴判断工程(S502)に進む。異常履歴判断工程(S502)では、ECU21は、メモリ内に記憶された情報を読み出して、過去にエンジンEGの始動の異常があったか否かを判断する。ECU21は、過去にエンジンEGの始動の異常があったことを判断すると、現モード表示としてEVモードを表示して、エンジン始動を開始せずに駆動モータMのみによる走行状態を継続して、フローが選択無効工程(S503)に進む。選択無効工程(S503)では、ECU21は、運転者の選択による走行モードがHEVモードに切り替わることを無効化する。このとき、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、HEV-EGモード選択有効表示47aおよびHEV-ELモード選択有効表示47bを消灯させる。またECU21は、ディスプレイ42を制御して、EVモード選択有効表示47cを点灯維持する。ECU21は、選択無効工程(S503)を実行すると、終了判断工程(S508)に進む。
【0093】
ECU21は、異常履歴判断工程(S502)において、過去のエンジン始動異常がなかったことを判断すると、エンジン始動工程(S504)に進む。ECU21は、予め定めるエンジン始動条件を満足するまで、EV走行状態を維持する。ECU21は、予め定めるエンジン始動条件を満足すると、エンジン始動制御を実行する。本実施形態では、エンジン始動条件は、運転者による加速要求量が閾値C1以下となる条件を含む。たとえば閾値C1は、ゼロに設定される。ECU21は、走行中において、運転者からの加速要求量が閾値C1以下になったと判断すると、始動開始判断工程(S501)で運転者が選択したHEV-EGモードに切替えて、点火プラグ、燃料噴射装置、スロットルバルブを制御して、エンジンの点火始動制御を実行する。なお、本実施形態では、エンジン始動条件として、加速要求量が設定されたが、車速や加速度が所定以下などの他の条件が設定されてもよい。ECU21は、エンジンの点火始動を実行すると、始動異常判断工程(S505)に進む。
【0094】
ECU21は、始動異常判断工程(S505)で、エンジン始動の異常が生じたかどうかを判断する。ECU21は、エンジンに設けられるセンサからエンジン始動不良を示す信号が与えられると、始動異常であると判断する。たとえばクランク角センサから与えられる信号に基づいて、複数回の点火タイミングを過ぎてもエンジン回転数の増加がみられない場合には、ECU21は始動不良として判断してもよい。ECU21が始動異常判断工程(S505)でエンジンの始動不良を判断すると、フローは選択無効工程(S506)に進む。選択無効工程では、ECU21は、運転者の選択によって走行モードが、HEVモードに切り替わることを無効化、言い換えると禁止する。このとき、ECU21は、ディスプレイ42を制御して、HEV-EGモード選択有効表示47aおよびHEV-ELモード選択有効表示47bの両方を消灯させる。ECU21が選択無効工程(S506)を終了すると、フローはEVモード維持工程(S507)に進む。ECU21は、EVモード維持工程(S507)で、エンジンの始動制御を中止して、現モード表示としてEVモードを表示して、エンジン始動開始せずに駆動モータMのみによる走行状態を継続する。またEVモード維持工程では、ECU21は、内部または外部メモリに対して、エンジン始動異常があったことを示す情報を記憶する。ECU21がエンジン始動異常をメモリに記憶すると、フローは終了判断工程(S508)に進む。
【0095】
終了判断工程(S508)では、ECU21は、運転者によって車両の動作の停止操作がされたかどうか判断する。ECU21は、車両の動作の停止判断として、電装品への電力供給を終了するキルスイッチ操作されたとすると、メモリに記憶したエンジン始動異常情報を消去、すなわちリセットして、動作を終了する。終了判断工程(S508)で、ECU21は、動作の終了を判断しないと、フローはエンジン始動判断工程(S501)に戻る。また各工程の動作中であっても、ECU21は、運転者によって車両の動作停止操作が行われたと判断すると、動作を終了する。
【0096】
またECU21が始動異常判断工程(S505)で、エンジン始動の異常を判断しないと、言い換えると正常にエンジン始動が実行されたことを判断すると、フローは始動異常判断工程(S505)の前に戻り、始動異常判断工程(S505)が繰り返される。つまり、始動異常判断工程(S505)でエンジン始動の異常が生じたことが検出されるまで、始動異常判断工程(S505)が繰り返し行われる。
【0097】
本実施形態では、エンジン始動不良が生じた場合には、車両1は、モータ駆動による走行に切り替わる。これによってエンジン不良動作が繰り返されることに起因する走行中のフィーリングへの悪影響を防ぐことができる。また始動不良が生じたとしても、キルスイッチのOFF操作を経ることで、メモリに記憶された始動不良の情報が消去される。これによって、キルスイッチのOFF操作後に、改めて始動操作を行うことにより、再度エンジン始動を試みることが可能である。また本実施形態では、エンジン始動工程(S504)で行われる走行モードの切替は、エンジン始動判断工程(S501)で運転者の選択を反映した走行モードの切替である。したがって、走行停止を経ずに走行中にモードを切り替えたとしても、運転者へのフィーリングへの影響が少なく、速やかなモード切替えを実現することができる。またエンジン始動判断工程(S501)にて、運転者の選択とは別のエンジン始動条件を満足したとしても、エンジン始動工程(S504)で、加速要求量が閾値C1以下とするエンジン始動条件を満足することで、エンジン始動を開始するので、運転者へのフィーリングへの影響を少なくすることができる。またエンジン始動への切替のフィーリング変化を、運転者が許容できる状況であれば、エンジン始動条件が緩和されてもよい。たとえばエンジン始動条件が緩和される例として、運転者による変速操作時や、加速要求量の時間変化が大きい場合が想定される。これにより、エンジンEGの始動が成功した場合には、運転者は、エンジンEGの駆動による走行を行うことができる。
【0098】
本実施形態においては、エンジンの点火不良が検出されてからは、停車中でなくても、走行モードがHEV-EGモードからEVモードに切り替えられる。これによって車両1の走行中に走行モードがEVモードに切り替えられるので、走行の連続性を確保することができる。たとえば、EVモード維持工程(S507)は、運転者の加速要求量が閾値C1以下である条件を満足すると、EVモードに切り替えられてもよいが、そうでなくてもよい。たとえば走行速度や加速度が所定値以下となるような切替条件を満足することで、EVモードに切り替わってもよい。また切替条件が設定されずに、始動異常判断工程(S505)で始動異常が判断されるとすぐに、走行モードがEVモードに切り替えられてもよい。
【0099】
本実施形態においては、エンジンEGの始動異常が検出されたときに、HEVモードの選択を無効化するので、選択無効条件として、エンジンEGの始動に異常が検出されたとの条件が設定されている。また、本実施形態においては、運転者による加速要求量が閾値以下であるときに、走行モードがEVモードに切り替えられるので、切替条件として、運転者による加速要求量が閾値以下であるとの条件が設定されている。また、上述のように、切替条件としては、車速や加速度が所定以下になるなどの他の条件が設定されていてもよい。
【0100】
また本実施形態では、エンジン始動判断工程(S501)として、運転者によるHEV-EGモードの選択指令が与えられたことを判断したが、他の条件を満足すると、エンジンの始動開始を判断してもよい。たとえばECU21は、予めプログラムされるエンジン始動の条件を満足したことを判断して、エンジンの始動開始を判断してもよい。具体的には、HEV-ELモードにおいて、エンジン始動開始の条件を満足した場合に、エンジン始動判断工程(S501)を実行してもよい。
【0101】
本実施形態によれば、エンジンEGの始動の異常が生じた場合にエンジンEGによる駆動を用いる走行モードへの切替が防がれる。これによってエンジンEGの始動の異常による影響を抑えて、走行を継続することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、過去にエンジンEGの始動に異常が検出されたときに、エンジン駆動が用いられるHEVモードの設定が禁止される。従って、エンジンEGの始動に異常が生じる可能性が高いと考えられるケースで再度エンジンEGの始動が行われることを防ぐことができる。これにより、エンジン始動の異常が繰り返されることを防ぐことができる。
【0103】
なお、上記実施形態においては、加速要求量についての閾値C1をゼロとしているが、上記実施形態に限定されない。走行モードの切替が行われるときの加速要求量の閾値C1はゼロでなくてもよい。車両1によって走行モードの切替が行われるときに安定した状態で走行モードの切替を行うことができるような小さな値の加速要求量であれば、加速要求量についての閾値C1はゼロでなくてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、図4に、車両1におけるディスプレイ42の表示の一例について示しているが、上記実施形態に限定されない。ディスプレイの表示は、他の形態であってもよい。各表示の色が異なっていてもよいし、形状が異なっていてもよい。また、タコメータ等、他の機能についての表示があってもよい。また、図4に示された現モード表示49、モード選択有効表示47、制限状態表示48と同様の機能について、他の形態によってディスプレイ上に表示されてもよい。
【0105】
また、上記実施形態においては、車両1は、ハイブリッド車両である形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。車両は、ハイブリッド車両でなくてもよい。車両がエンジンのみを有するエンジン車あるいは駆動モータのみを有する電気自動車であっても、複数の走行モードを有していれば、本開示の車両制御が適用されてもよい。例えば、車両が原動機として駆動モータのみを有する場合に、バッテリ残量が不足して選択無効条件が成立したときには、切替条件が成立したときに、ユーザ選択に拘わらず複数の走行モードのうちのバッテリの電力消費のペースの少ない走行モードに切り替えられるように車両制御が行われてもよい。また、車両が原動機としてエンジンのみを有する場合に、燃料が不足して選択無効条件が成立したときには、切替条件が成立したときに、ユーザ選択に拘わらず複数の走行モードのうちの燃料の消費量の少ない走行モードに切り替えられるように車両制御が行われてもよい。上記のエンジン形態、モータ形態は一例であり、既存の構造が適用可能である。
【0106】
また、上記実施形態においては、車両1は、図1に示されるように、鞍乗車両である形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。本開示によれば、切替条件が成立するまでは、走行モードが切り替わらないので、意図せず走行モードが切り替わることで運転フィーリングが低下することを抑えることができ、走行フィーリングの影響を受け易い鞍乗車両において好適であるが、他の乗物にも本開示の車両制御が適用可能である。例えば、4輪の乗用車に本開示の車両制御が適用可能である。4輪の乗用車であっても、意図せず走行モードが切り替わることを抑えることができるので、乗用車において運転フィーリングが低下することを抑えることができる。
【0107】
また、上記実施形態においては、選択無効条件として、バッテリ残量が所定値未満となった場合、エンジンの異常が検出された場合及びエンジンの始動異常が検出された場合について説明したが、上記実施形態に限定されない。選択無効条件は、他の条件であってもよい。例えば、エンジンや駆動モータによる出力が著しく低下した場合等、選択無効条件は、他の場合であってもよい。また、切替条件として、所定時間に亘って停車したことが検出された場合及び加速要求量が所定値以下である場合について説明したが、上記実施形態に限定されない。切替条件は、他の条件であってもよい。例えば、駆動輪に伝達される駆動力が、所定値以下の状態であるとの条件や、車両が一瞬でも停車したとの条件等が切替条件として適用されてもよい。
【0108】
選択無効条件としては、複数の条件を含む場合において、複数の条件のうちの少なくともいずれか1つが満足した場合に選択無効として判断してもよい。また、複数の条件のうちの複数又はすべてが満足した場合に、選択無効として判断してもよい。
【0109】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0110】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0111】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0112】
[項目1]
駆動輪と、
前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、
第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、
選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、
所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択によって前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないとユーザ選択による前記第1走行モードの選択を有効化し、
前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、
所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、
前記切替条件が成立すると、前記第2走行モードに切替えるように構成されている、車両。
【0113】
[項目2]
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機または前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が所定の正常範囲から逸れている状態であることを含む、項目1に記載の車両。
【0114】
[項目3]
前記切替条件は、前記少なくとも1つの原動機から前記駆動輪に伝達される駆動力が、所定値以下の状態であるとの条件を含む、項目1または2に記載の車両。
【0115】
[項目4]
前記切替条件は、前記車両が停車したとの条件を含む、項目1から3のいずれかに記載の車両。
【0116】
[項目5]
前記切替条件は、前記車両の停車が所定時間継続して経過したとの条件を含む、項目1から4のいずれかに記載の車両。
【0117】
[項目6]
報知装置を更に備え、
前記処理回路は、前記第2走行モードで前記車両の走行中に、前記選択無効条件が成立しなくなると、前記第1走行モードの選択の無効化を解除すると共に、前記第1走行モードの選択の無効化を解除したことを示す情報を前記報知装置によってユーザに報知させるように構成されている、項目1から5のいずれかに記載の車両。
【0118】
[項目7]
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が所定の正常範囲から逸れている状態であることを含み、
前記選択無効条件は、前記第1のエネルギ源のエネルギ残量が閾値未満であることを含む、項目1から6のいずれかに記載の車両。
【0119】
[項目8]
前記少なくとも1つの原動機は、複数の原動機を含み、
前記第1走行モードは、前記複数の原動機のうちの第1の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記第2走行モードは、前記複数の原動機のうちの第2の原動機を主に用いる走行モードであり、
前記選択無効条件は、前記第1の原動機にエネルギを供給する第1のエネルギ源の状態が所定の正常範囲から逸れている状態であることを含み、
前記選択無効条件は、前記第1走行モードの動作に必要な原動機またはエネルギ源に関係する部分の温度が予め定める範囲外であるとの条件を含む、項目1から7のいずれかに記載の車両。
【0120】
[項目9]
前記選択無効条件は、前記第1の走行モードの動作に必要な原動機またはエネルギ源に関係する部分の異常が検出されたとの条件を含む、項目1から8のいずれかに記載の車両。
【0121】
[項目10]
前記選択無効条件は、前記内燃機関の始動に異常が検出されたとの条件を含み、
前記切替条件は、運転者による加速要求量が閾値以下であるとの条件を含む、項目1から9のいずれかに記載の車両。
【0122】
[項目11]
前記選択無効条件は、過去の前記第1走行モードへの切替にあたって始動異常が生じたことがあるとの条件を含む項目10に記載の車両。
【0123】
[項目12]
駆動輪に伝達される駆動力を生成する2つの原動機を有するハイブリッド車両の制御方法であって、
第1の原動機を主に用いる第1走行モードと、第2の原動機を主に用いる第2走行モードとのうち、いずれかの走行モードに従って、前記原動機を制御することと、
所定の車両状態である選択無効条件が成立すると、ユーザ選択による前記第1走行モードへの選択を無効化し、前記選択無効条件が成立しないと、前記第1走行モードへの選択を有効化することと、
前記第1走行モードで車両走行中に、前記選択無効条件が成立すると、前記第1走行モードを継続し、所定の車両状態である切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず前記第2走行モードに切替えることと、を含む、ハイブリッド車両の制御方法。
[項目13]
駆動輪と、
前記駆動輪に伝達される駆動力を生成する少なくとも1つの原動機と、
第1走行モード又は第2走行モードのユーザ選択を受け付けるユーザインターフェースと、
選択された走行モードに従って前記原動機を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、前記第1走行モードで車両走行中に、所定の車両状態である異常条件が成立すると、
所定の車両状態である切替条件が成立するまで前記第1走行モードを継続し、
前記切替条件が成立すると、ユーザ選択に拘らず、前記第2走行モードに切替えるように構成され、
前記第2走行モードは、前記異常条件が成立することを回避可能な走行モードである、車両。
【符号の説明】
【0124】
1 車両(ハイブリッド車両)
3 駆動輪
21 ECU(処理回路)
23 バッテリ
25 走行モード選択スイッチ
42 ディスプレイ
67 スロットルポジションセンサ(センサ)
E エンジン(内燃機関)
M 駆動モータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10