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特開2024-157347半導体装置、半導体装置の製造方法、および車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157347
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法、および車両
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20241030BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241030BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L23/28 E
H01L25/04 C
H01L23/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071661
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓之
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA21
4M109DB16
4M109EA02
4M109GA02
(57)【要約】
【課題】 導電層に対する封止樹脂の剥離を抑制することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体装置A10は、絶縁層11と、第1方向zの一方側を向く第1主面121を有するとともに、第1方向zにおいて第1主面121が向く側とは反対側が絶縁層11に接合された導電層12と、第1主面121に積層された第1金属層17と、第1金属層17に接合された第1半導体素子21と、第1金属層17および第1半導体素子21を覆う封止樹脂50とを備える。第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
第1方向の一方側を向く第1主面を有するとともに、前記第1方向において前記第1主面が向く側とは反対側が前記絶縁層に接合された導電層と、
前記第1主面に積層された第1金属層と、
前記第1金属層に接合された半導体素子と、
前記第1金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記第1金属層の表面粗さは、前記第1主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁層に接合されたゲート配線層をさらに備え、
前記半導体素子は、前記第1方向において前記第1金属層に対向する側とは反対側に位置するゲート電極を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート配線層に導通している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート配線層に積層された第2金属層をさらに備え、
前記ゲート配線層は、前記第1方向において前記第1主面と同じ側を向く第2主面を有し、
前記第2金属層は、前記第2主面に積層されており、
前記封止樹脂は、前記第2金属層を覆っており、
前記第2金属層の表面粗さは、前記第2主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記第2金属層とに導電接合された導通部材をさらに備える、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属層は、第1領域と、前記第1領域に隣接した第2領域と、を含み、
前記導電層には、前記第1主面から凹む第1凹部が形成されており、
前記第1領域は、前記第1凹部を覆っている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1方向に視て、前記第1領域は、前記第2領域と前記絶縁層の周縁との間に位置する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1方向に視て、前記半導体素子は、前記第2領域に重なっている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1方向に視て、前記第2領域は、前記第1領域に囲まれている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2金属層は、第3領域と、前記第1領域に隣接した第4領域と、を含み、
前記ゲート配線層には、前記第2主面から凹む第2凹部が形成されており、
前記第3領域は、前記第2凹部を覆っている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1方向に視て、前記第3領域は、前記第4領域と前記絶縁層の周縁との間に位置する、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記導通部材は、前記第4領域に導電接合されている、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体素子は、前記第1金属層に対向する第1電極と、前記第1方向において前記第1電極とは反対側に位置する第2電極と、を有し、
前記第1電極は、前記第1金属層に導電接合されている、請求項3ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1金属層に導電接合された第1端子と、前記第2電極に導電接合された第2端子と、をさらに備え、
前記第1端子および前記第2端子の各々は、前記封止樹脂から露出している、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された放熱層をさらに備え、
前記放熱層は、前記封止樹脂から露出している、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記放熱層を基準として前記絶縁層とは反対側に位置するとともに、前記放熱層に積層された第3金属層をさらに備え、
前記第3金属層の表面粗さは、前記第1主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
第1方向の一方側を向く主面を有する導電層であって、前記導電層の前記第1方向において前記主面が向く側とは反対側を絶縁層に接合する工程と、
前記主面に金属層を積層する工程と、
前記導電層および前記金属層の各々の一部を除去する工程と、
前記金属層に半導体素子を接合する工程と、
前記金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程と、を備え、
前記金属層は、スパッタリング法により形成され、
前記主面に前記金属層を積層する工程では、前記金属層の表面粗さが、前記主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きくなるようにする、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記導電層を前記絶縁層に接合する工程と、前記主面に前記金属層を積層する工程と、の間に前記主面から凹む凹部を前記導電層に形成する工程をさらに備え、
前記凹部は、レーザ照射により形成され、
前記主面に前記金属層を積層する工程では、前記凹部が前記金属層に覆われるようにする、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
駆動源と、
請求項13に記載の半導体装置と、を備え、
前記半導体装置は、前記駆動源に導通している、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置およびその製造方法と、当該半導体装置が搭載された車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MOSFETが搭載された半導体装置の一例が開示されている。当該半導体装置は、電源電圧が印加されるドレイン端子と、MOSFETに電気信号を入力するためのゲート端子と、当該電源電圧に対応した電力が当該電気信号に基づき変換された後、変換された電力が出力されるソース端子とを備える。MOSFETは、ドレイン端子に導通するドレイン電極と、ソース端子に導通するソース電極と、ゲート端子に導通するゲート電極とを有する。ドレイン電極は、ダイパッド(タブ)に導電接合されている。ドレイン端子は、ダイパッドと一体となっている。ソース電極は、金属クリップに導電接合されている。さらに金属クリップは、ソース端子にも導電接合されている。これにより、当該半導体装置に、より大きな電流を流すことが可能となっている。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体装置は、ダイパッドの少なくとも一部を覆う封止樹脂をさらに備える。ここで、ダイパッドに対する封止樹脂の十分な密着性が確保されていない場合、封止樹脂がダイパッドから剥離するおそれがある。封止樹脂がダイパッドから剥離すると、当該半導体装置の絶縁耐圧の低下や、当該半導体装置が具備するMOSFETに水分等の外的因子が侵入することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-192450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、導電層に対する封止樹脂の剥離を抑制することが可能な半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される半導体装置は、絶縁層と、第1方向の一方側を向く第1主面を有するとともに、前記第1方向において前記第1主面が向く側とは反対側が前記絶縁層に接合された導電層と、前記第1主面に積層された第1金属層と、前記第1金属層に接合された半導体素子と、前記第1金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂とを備える。前記第1金属層の表面粗さは、前記第1主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供される半導体装置の製造方法は、第1方向の一方側を向く主面を有する導電層であって、前記導電層の前記第1方向において前記主面が向く側とは反対側を絶縁層に接合する工程と、前記主面に金属層を積層する工程と、前記導電層および前記金属層の各々の一部を除去する工程と、前記金属層に半導体素子を接合する工程と、前記金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程とを備える。前記金属層は、スパッタリング法により形成される。前記主面に前記金属層を積層する工程では、前記金属層の表面粗さが、前記主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きくなるようにする。
【0008】
本開示の第3の側面によって提供される車両は、駆動源と、半導体装置とを備える。前記半導体装置は、前記駆動源に導通している。前記半導体装置は、本開示の第1の側面によって提供される半導体装置に対して、第2主面を有するゲート配線層と、前記第2主面に積層された第2金属層と、第1端子と、第2端子とをさらに備える。前記半導体装置が具備する半導体素子は、第1電極、第2電極およびゲート電極を有する。前記第1電極および前記第1端子の各々は、前記半導体装置が具備する第1金属層に導電接合されている。前記第2端子は、前記第2電極に導電接合されている。前記ゲート電極は、前記ゲート配線層に導通している。前記第2金属層の表面粗さは、前記第2主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる半導体装置が具備する構成によれば、導電層に対する封止樹脂の剥離を抑制することが可能となる。
【0010】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の平面図である。
図2図2は、図1に対応する平面図であり、封止樹脂を透過している。
図3図3は、図1に示す半導体装置の底面図である。
図4図4は、図1に示す半導体装置の右側面図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図5の部分拡大図であり、第1半導体素子およびその近傍を示している。
図8図8は、図5の部分拡大図であり、第2半導体素子およびその近傍を示している。
図9図9は、図5の部分拡大図である。
図10図10は、図2のX-X線に沿う断面図の部分拡大図である。
図11図11は、図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図12図12は、図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図13図13は、図12の部分拡大図である。
図14図14は、図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図15図15は、図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図16図16は、図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図17図17は、図1に示す半導体装置が搭載された車両の概要図である。
図18図18は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の平面図であり、第1端子、第2端子、第2信号端子および封止樹脂を透過している。
図19図19は、図18のXIX-XIX線に沿う断面図の部分拡大図である。
図20図20は、図18のXX-XX線に沿う断面図の部分拡大図である。
図21図21は、図18に示す半導体装置の製造工程を説明する部分拡大断面図である。
図22図22は、図18に示す半導体装置の製造工程を説明する部分拡大断面図である。
図23図23は、本開示の第3実施形態にかかる半導体装置の平面図であり、第1端子、第2端子、第2信号端子および封止樹脂を透過している。
図24図24は、図23のXXIV-XXIV線に沿う断面図の部分拡大図である。
図25図25は、図23のXXV-XXV線に沿う断面図の部分拡大図である。
図26図26は、本開示の第4実施形態にかかる半導体装置の底面図である。
図27図27は、図26に示す半導体装置の断面図であり、図5に対応している。
図28図28は、図26に示す半導体装置の断面図であり、図6に対応している。
図29図29は、図27の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1図10に基づき、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置A10について説明する。一般的に半導体装置A10は、インバータなどの電力変換回路に用いられる。半導体装置A10は、絶縁層11、導電層12、放熱層13、ゲート配線層14、第1金属層17、第2金属層18、第1半導体素子21、第2半導体素子22、第1端子31、第2端子32、第1信号端子33、第2信号端子34および封止樹脂50を備える。さらに半導体装置A10は、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43を備える。ここで、図2は、理解の便宜上、封止樹脂50を透過している。図2では、透過した封止樹脂50を想像線(二点鎖線)で示している。
【0014】
半導体装置A10の説明においては、便宜上、後述する導電層12の第1主面121の法線方向を「第1方向z」と呼ぶ。第1方向zに対して直交する方向を「第2方向x」と呼ぶ。第1方向zおよび第2方向xの双方に対して直交する方向を「第3方向y」と呼ぶ。
【0015】
封止樹脂50は、図5に示すように、第1半導体素子21および第2半導体素子22を覆っている。図6に示すように、封止樹脂50は、第1金属層17および第2金属層18をさらに覆っている。封止樹脂50は、絶縁体である。封止樹脂50は、たとえば黒色のエポキシ樹脂を含む材料からなる。
【0016】
図4に示すように、封止樹脂50は、頂面51、底面52、第1側面53および第2側面54を有する。図5および図6に示すように、頂面51は、第1方向zにおいて後述する導電層12の第1主面121と同じ側を向く。底面52は、第1方向zにおいて頂面51とは反対側を向く。
【0017】
図1図3および図4に示すように、第1側面53および第2側面54は、第2方向x互いに反対側を向く。第1側面53および第2側面54の各々は、頂面51および底面52につながっている。
【0018】
絶縁層11は、図5および図6に示すように、封止樹脂50に覆われている。絶縁層11は、熱伝導率が比較的高い材料からなる。絶縁層11は、たとえば、窒化ケイ素(Si34)および窒化アルミニウム(AlN)のいずれかを含むセラミックスからなる。この他、絶縁層11は、樹脂を含む材料からなる場合でもよい。
【0019】
導電層12は、図5および図6に示すように、絶縁層11の第1方向zの一方側に接合されている。導電層12は、第1半導体素子21および第2半導体素子22を搭載している。第1方向zに視て、導電層12は、絶縁層11の周縁111に囲まれている。導電層12は、封止樹脂50に覆われている。導電層12は、銅(Cu)を含む。導電層12の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。
【0020】
図2および図5に示すように、導電層12は、第1主面121、主部123および舌部124を有する。第1主面121は、第1方向zにおいて絶縁層11に対向する側とは反対側を向く。主部123は、第1半導体素子21および第2半導体素子22を搭載している。舌部124は、第2方向xにおいて主部123とゲート配線層14との間に位置する。舌部124は、主部123の第2方向xの一方側からゲート配線層14に向けて突出している。舌部124の第3方向yの寸法は、主部123の第2方向xの寸法よりも小さい。主部123および舌部124の各々は、第1主面121を含む。
【0021】
第1金属層17は、図5および図6に示すように、導電層12の第1主面121に積層されている。第1金属層17の第1方向zの寸法は、導電層12の第1方向zの寸法よりも小さい。第1方向zに視て、第1金属層17は、第1主面121の縁の全体に重なっている。第1金属層17は、たとえば銅を含む。図9に示すように、第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【0022】
放熱層13は、図5および図6に示すように、絶縁層11を基準として導電層12とは反対側に位置しており、かつ絶縁層11に接合されている。第1方向zに視て、放熱層13は、絶縁層11の周縁111に囲まれており、かつ導電層12に重なっている。半導体装置A10においては、図3に示すように、放熱層13は、封止樹脂50の底面52から外部に露出している。放熱層13は、銅を含む。半導体装置A10においては、放熱層13の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きく、かつ導電層12の第1方向zの寸法に等しい。この他、絶縁層11および導電層12の各々の第1方向zの寸法に対する放熱層13の第1方向zの寸法の大小関係は、種々にとることが可能である。
【0023】
ゲート配線層14は、図2および図6に示すように、絶縁層11を基準として導電層12と同じ側に位置しており、かつ絶縁層11に接合されている。ゲート配線層14は、第2方向xにおいて導電層12の隣に位置する。ゲート配線層14は、第3方向yに延びている。第1方向zに視て、ゲート配線層14は、絶縁層11の周縁111に囲まれている。ゲート配線層14は、封止樹脂50に覆われている。ゲート配線層14は、銅を含む。ゲート配線層14の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。ゲート配線層14は、第2主面141を有する。第2主面141は、第1方向zにおいて導電層12の第1主面121と同じ側を向く。
【0024】
第2金属層18は、図6に示すように、ゲート配線層14の第2主面141に積層されている。第2金属層18の第1方向zの寸法は、ゲート配線層14の第1方向zの寸法よりも小さい。第1方向zに視て、第2金属層18は、第2主面141の縁の全体に重なっている。第2金属層18は、たとえば銅を含む。図10に示すように、第2金属層18の表面粗さは、第2主面141の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【0025】
第1半導体素子21は、図5および図6に示すように、導電層12の主部123を覆う第1金属層17に接合されている。第1半導体素子21は、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。この他、第1半導体素子21は、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)を含む電界効果トランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなバイポーラトランジスタでもよい。半導体装置A10の説明においては、第1半導体素子21は、nチャネル型であり、かつ縦型構造のMOSFETを対象とする。第1半導体素子21は、化合物半導体基板を含む。当該化合物半導体基板の組成は、炭化ケイ素(SiC)を含む。
【0026】
図7に示すように、第1半導体素子21は、第1電極211、2つの第2電極212、および第1ゲート電極213を有する。
【0027】
図7に示すように、第1電極211は、第1方向zの一方側に位置する。第1電極211は、第1金属層17に対向している。第1電極211は、導電接合層29を介して第1金属層17に導電接合されている。これにより、第1電極211は、導電層12に導通している。導電接合層29は、たとえばハンダである。この他、導電接合層29は、銀などを含む焼結金属でもよい。第1電極211には、第1半導体素子21により変換される前の電力に対応する電流が流れる。すなわち、第1電極211は、第1半導体素子21のドレインに相当する。
【0028】
図7に示すように、2つの第2電極212は、第1方向zにおいて第1電極211とは反対側に位置する。図2に示すように、2つの第2電極212は、第2方向xにおいて互いに離れている。2つの第2電極212の各々には、第1半導体素子21により変換された後の電力に対応する電流が流れる。すなわち、2つの第2電極212は、第1半導体素子21のソースに相当する。
【0029】
図2および図7に示すように、第1ゲート電極213は、第1方向zにおいて2つの第2電極212と同じ側に位置する。第1ゲート電極213には、第1半導体素子21を駆動するためのゲート電圧が印加される。第1ゲート電極213は、ゲート配線層14に導通している。図2に示すように、第1方向zに視て、第1ゲート電極213の面積は、2つの第2電極212の各々の面積よりも小さい。
【0030】
第2半導体素子22は、図5に示すように、導電層12の主部123を覆う第1金属層17に接合されている。第2半導体素子22は、第1半導体素子21と同一の素子である。したがって、第2半導体素子22は、nチャネル型であり、かつ縦型構造のMOSFETである。第2半導体素子22は、第3方向yにおいて第1半導体素子21の隣に位置する。
【0031】
図8に示すように、第2半導体素子22は、第3電極221、2つの第4電極222、および第2ゲート電極223を有する。
【0032】
図8に示すように、第3電極221は、第1方向zの一方側に位置する。第3電極221は、第1金属層17に対向している。第3電極221は、導電接合層29を介して第1主面121に導電接合されている。これにより、第3電極221は、導電層12に導通している。第3電極221には、第2半導体素子22により変換される前の電力に対応する電流が流れる。すなわち、第3電極221は、第2半導体素子22のドレインに相当する。
【0033】
図8に示すように、2つの第4電極222は、第1方向zにおいて第3電極221とは反対側に位置する。図2に示すように、2つの第4電極222は、第2方向xにおいて互いに離れている。2つの第4電極222の各々には、第2半導体素子22により変換された後の電力に対応する電流が流れる。すなわち、2つの第4電極222は、第2半導体素子22のソースに相当する。
【0034】
図2および図8に示すように、第2ゲート電極223は、第1方向zにおいて2つの第4電極222と同じ側に位置する。第2ゲート電極223には、第2半導体素子22を駆動するためのゲート電圧が印加される。第2ゲート電極223は、ゲート配線層14に導通している。図2に示すように、第1方向zに視て、第2ゲート電極223の面積は、2つの第4電極222の各々の面積よりも小さい。
【0035】
第1端子31は、図2に示すように、第1半導体素子21および第2半導体素子22の第2方向xの一方側に位置する。第1端子31は、第1半導体素子21の第1電極211と、第2半導体素子22の第3電極221とに導通している。したがって、第1端子31は、半導体装置A10のドレイン端子に相当する。第1端子31は、銅を含む。
【0036】
図2および図6に示すように、第1端子31は、第1基部311、および複数の第1接合部312を有する。第1方向zに視て、第1基部311は、第1金属層17から離れている。図1に示すように、第1基部311は、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第1側面53から外部に露出する部分とを含む。第1方向zに視て、複数の第1接合部312は、第2方向xにおいて第1半導体素子21および第2半導体素子22が位置する側に第1基部311から延びている。複数の第1接合部312は、第3方向yに沿って配列されている。複数の第1接合部312の各々は、封止樹脂50に覆われている。
【0037】
図6に示すように、複数の第1接合部312の各々は、導電接合層29を介して導電層12の主部123を覆う第1金属層17に導電接合されている。この他、複数の第1接合部312の各々は、溶接により第1金属層17に導電接合されている構成でもよい。
【0038】
第2端子32は、図2および図5に示すように、第1半導体素子21の2つの第2電極212と、第2半導体素子22の2つの第4電極222とに導電接合されている。これにより、第2端子32は、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに導通している。したがって、第2端子32は、半導体装置A10のソース端子に相当する。第2端子32は、銅を含む。
【0039】
図2および図5に示すように、第2端子32は、第2基部321、複数の第2接合部322、および複数の第3接合部323を有する。第1方向zに視て、第2基部321は、導電層12の第1主面121に重なっている。図1に示すように、第2基部321は、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。複数の第2接合部322の各々は、第2基部321につながっており、かつ封止樹脂50に覆われている。図6に示すように、複数の第2接合部322の各々は、第2基部321から第1半導体素子21に向けて突出している。複数の第2接合部322の各々は、導電接合層29を介して第1半導体素子21の2つの第2電極212のいずれかに導電接合されている。複数の第3接合部323の各々は、第2基部321につながっており、かつ封止樹脂50に覆われている。複数の第3接合部323の各々は、第2基部321から第2半導体素子22に向けて突出している。複数の第3接合部323の各々は、導電接合層29を介して第2半導体素子22の2つの第4電極222のいずれかに導電接合されている。
【0040】
第1信号端子33は、図1に示すように、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。第1信号端子33は、第2端子32の第2基部321の第3方向yの一方側に位置する。第1信号端子33は、ゲート配線層14に導通している。したがって、第1信号端子33は、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、第2半導体素子22の第2ゲート電極223とに導通している。すなわち、第1信号端子33は、半導体装置A10のゲート端子に相当する。第1信号端子33は、銅を含む。図4に示すように、第2側面54から外部に露出する第1信号端子33の部分は、第1方向zに沿って延びる部分を含む。
【0041】
第2信号端子34は、図1に示すように、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。第2信号端子34は、第3方向yにおいて第1信号端子33と、第2端子32の第2基部321との間に位置する。半導体装置A10においては、第2信号端子34は、第2基部321につながっている。したがって、第2信号端子34は、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに導通している。第2信号端子34には、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに印加される電圧と等電位の電圧が印加される。第2信号端子34は、銅を含む。第1信号端子33と同様に、第2側面54から外部に露出する第2信号端子34の部分は、第1方向zに沿って延びる部分を含む。
【0042】
第1導通部材41は、図2に示すように、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、第2金属層18とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第1ゲート電極213に導通している。第1導通部材41は、封止樹脂50に覆われている。第1導通部材41は、たとえば、アルミニウム(Al)および金(Au)のいずれかを含有するワイヤである。
【0043】
第2導通部材42は、図2に示すように、第2半導体素子22の第2ゲート電極223と、第2金属層18とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第2ゲート電極223に導通している。第2導通部材42は、封止樹脂50に覆われている。第2導通部材42は、たとえば、アルミニウムおよび金のいずれかを含有するワイヤである。
【0044】
第3導通部材43は、図2に示すように、第2金属層18と第1信号端子33とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第1信号端子33に導通している。第3導通部材43は、封止樹脂50に覆われている。第3導通部材43は、たとえば、アルミニウムおよび金のいずれかを含有するワイヤである。半導体装置A10においては、第3導通部材43は、第2導通部材42につながっている。
【0045】
次に、図11図16に基づき、半導体装置A10の製造方法の一例について説明する。ここで、図11図12、および図14図16の各々の断面位置は、図6の断面位置に対応している。
【0046】
最初に、図11に示すように、絶縁層11の第1方向zの一方側に導電層81を接合する。あわせて、絶縁層11の第1方向zの他方側に放熱層82を接合する。導電層81は、半導体装置A10が具備する導電層12およびゲート配線層14を含む要素である。放熱層82は、半導体装置A10が具備する放熱層13を含む要素である。導電層81は、第1方向zの一方側を向く主面811を有する。主面811は、第1方向zにおいて絶縁層11に対向する側とは反対側を向く。
【0047】
次いで、図12に示すように、導電層81の主面811に金属層83を積層する。金属層83は、半導体装置A10が具備する第1金属層17および第2金属層18を含む要素である。金属層83は、スパッタリング法により形成される。図13に示すように、本工程では、金属層83の表面粗さが、主面811の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きくなるようにする。このような表面粗さを具備する金属層83は、スパッタリング法による金属層83の形成において、金属層83の形成にかかる圧力をより高く設定し、かつ主面811に対する金属層83の積層(堆積)時間をより長く設定することによって得ることができる。
【0048】
次いで、図14に示すように、導電層81、放熱層82および金属層83の各々の一部を除去する。本工程では、放熱層82および金属層83の各々に対してフォトリソグラフィパターニングを施した後、当該フォトリソグラフィパターニングにかかるマスク層から露出する部分をウェットエッチングにより除去する。本工程を経ることにより、半導体装置A10が具備する導電層12、放熱層13、ゲート配線層14、第1金属層17および第2金属層18が得られる。
【0049】
次いで、図15に示すように、導電接合層29を介して、導電層12の主部123を覆う第1金属層17に第1半導体素子21および第2半導体素子22の各々を導電接合する。導電接合層29を介して、導電層12の主部123を覆う第1金属層17に第1端子31の複数の第1接合部312を導電接合する。さらに、導電接合層29を介して、第1半導体素子21の2つの第2電極212に、第2端子32の複数の第2接合部322を導電接合する。あわせて、導電接合層29を介して、第2半導体素子22の2つの第4電極222に、第2端子32の複数の第3接合部323を導電接合する。本工程では、第1端子31の第1基部311と、第2端子32の第2基部321とは、金属フレームなどの支持部材(図示略)に支持されている。
【0050】
次いで、図示は省略するが、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、第2金属層18とに第1導通部材41を導電接合する。第2半導体素子22の第2ゲート電極223と、第2金属層18とに第2導通部材42を導電接合する。さらに、第2金属層18と第1信号端子33とに第3導通部材43を導電接合する。
【0051】
次いで、図16に示すように、第1金属層17、第2金属層18、第1半導体素子21および第2半導体素子22を覆う封止樹脂50を形成する。封止樹脂50は、トランスファモールド成形により形成される。その後、支持部材から第1端子31の第1基部311と第2端子32の第2基部321との各々を切り離す。以上の工程を経ることにより、半導体装置A10が得られる。
【0052】
次に、図17に基づき、半導体装置A10が搭載された車両Bについて説明する。車両Bは、たとえば電気自動車(EV)である。
【0053】
図17に示すように、車両Bは、車載充電器91、蓄電池92および駆動系統93を備える。車載充電器91には、屋外に設置された給電施設(図示略)から無線により電力が供給される。この他、給電施設から車載充電器91への電力の供給手段は、有線でもよい。車載充電器91には、昇圧型のDC-DCコンバータが構成されている。車載充電器91に供給された電力の電圧は、当該コンバータにより昇圧された後、蓄電池92に給電される。昇圧された電圧は、たとえば600Vである。
【0054】
駆動系統93は、車両Bを駆動する。駆動系統93は、インバータ931および駆動源932を有する。半導体装置A10は、インバータ931の一部を構成する。蓄電池92に蓄えられた電力は、インバータ931に給電される。蓄電池92からインバータ931に給電される電力は、直流電力である。この他、図17に示す電力系統とは異なり、蓄電池92とインバータ931との間に昇圧型のDC-DCコンバータをさらに設けてもよい。インバータ931は、直流電力を交流電力に変換する。半導体装置A10を含めたインバータ931は、駆動源932に導通している。駆動源932は、交流モータおよび変速機を有する。インバータ931によって変換された交流電力が駆動源932に供給されると、交流モータが回転するとともに、その回転が変速機に伝達される。変速機は、交流モータから伝達された回転数を適宜減じた上で、車両Bの駆動軸を回転させる。これにより、車両Bが駆動する。車両Bの駆動にあたっては、アクセルペダルの変動量などの情報に基づき交流モータの回転数を自在に操作する必要がある。そこで、インバータ931における半導体装置A10は、要求される交流モータの回転数に対応させるべく、周波数が適宜変化された交流電力を出力するために必要である。
【0055】
次に、半導体装置A10の作用効果について説明する。
【0056】
半導体装置A10は、絶縁層11と、絶縁層11に接合された導電層12と、導電層12の第1主面121に積層された第1金属層17と、第1金属層17に接合された第1半導体素子21と、第1金属層17および第1半導体素子21を覆う封止樹脂50とを備える。第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の表面粗さよりも大きい。本構成をとることにより、第1金属層17に対して封止樹脂50には投錨効果(アンカー効果)が発現する。これにより、第1金属層17から封止樹脂50が剥離しにくくなる。したがって、本構成によれば、半導体装置A10においては、導電層12に対する封止樹脂50の剥離を抑制することが可能となる。
【0057】
半導体装置A10は、絶縁層11に接合されたゲート配線層14と、ゲート配線層14に積層された第2金属層18とをさらに備える。封止樹脂50は、第2金属層18を覆っている。第2金属層18の表面粗さは、ゲート配線層14の第2主面141の少なくとも一部の表面粗さよりも大きい。本構成をとることにより、第2金属層18に対して封止樹脂50には投錨効果(アンカー効果)が発現する。これにより、第2金属層18から封止樹脂50が剥離しにくくなる。したがって、ゲート配線層14に対する封止樹脂50の剥離を抑制することが可能となる。
【0058】
半導体装置A10は、第2金属層18に導電接合された第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43をさらに備える。本構成をとることにより、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の各々には、第4領域182に対する投錨効果が発現する。これにより、第2金属層18に対する第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の接合強度を向上させることができる。
【0059】
第1半導体素子21の第1電極211は、導電接合層29を介して第1金属層17に導電接合されている。本構成をとることにより、導電接合層29には、第1金属層17に対する投錨効果が発現する。これにより、第1金属層17に対する第1半導体素子21の接合強度を向上させることができる。さらに、第1金属層17の表面積が比較的大きいため、第1半導体素子21から導電層12への熱伝導効率の向上を図ることができる。
【0060】
半導体装置A10は、導電層12が接合された絶縁層11と、絶縁層11を基準として導電層12とは反対側に位置し、かつ絶縁層11に接合された放熱層13とをさらに備える。絶縁層11および導電層12は、封止樹脂50に覆われている。放熱層13は、封止樹脂50から外部に露出している。本構成をとることにより、半導体装置A10の絶縁耐圧の低下を抑制しつつ、半導体装置A10の放熱性の向上を図ることができる。
【0061】
第1方向zに視て、導電層12および放熱層13の各々は、絶縁層11の周縁111から離れている。本構成をとることにより、絶縁層11の周縁111の近傍は、第1方向zの両側から封止樹脂50に挟まれたものとなる。これにより、封止樹脂50から絶縁層11および導電層12の脱落を防止できる。
【0062】
導電層12および放熱層13の各々の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。本構成をとることにより、導電層12および放熱層13の各々の第1方向zにおける熱抵抗が低減される。これにより、半導体装置A10の放熱性をより向上させることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図18図20に基づき、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置A20について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図18は、理解の便宜上、第1端子31、第2端子32、第2信号端子34および封止樹脂50を透過している。図18では、透過したこれらの要素を想像線で示している。
【0064】
半導体装置A20においては、導電層12、ゲート配線層14、第1金属層17、第2金属層18、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の構成が、半導体装置A10の当該構成と異なる。
【0065】
図19に示すように、導電層12の主部123の一部には、第1主面121から凹む複数の第1凹部122が形成されている。複数の第1凹部122の各々は、第2方向xに延びる溝である。
【0066】
図18および図19に示すように、第1金属層17は、第1領域171と、第1領域171に隣接した第2領域172とを含む。第1領域171は、複数の第1凹部122を覆っている。第1方向zに視て、第1領域171は、第2領域172と絶縁層11の周縁111との間に位置する。第1方向zに視て、第1半導体素子21および第2半導体素子22の各々は、第2領域172に重なっている。
【0067】
図20に示すように、ゲート配線層14には、第2主面141から凹む複数の第2凹部142が形成されている。複数の第2凹部142の各々は、第2方向xに延びる溝である。第3方向yにおける複数の第2凹部142の形成範囲は、第3方向yにおける複数の第1主面121の形成範囲に対応している。
【0068】
図18および図20に示すように、第2金属層18は、第3領域181と、第3領域181に隣接した第4領域182とを含む。第3領域181、複数の第2凹部142を覆っている。第1方向zに視て、第3領域181は、第4領域182と絶縁層11の周縁111との間に位置する。
【0069】
図18に示すように、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の各々は、第2金属層18の第4領域182に導電接合されている。
【0070】
次に、図21および図22に基づき、半導体装置A20の製造方法の一例のうち、半導体装置A10の製造方法の一例とは異なる点について説明する。図21および図22の各々の断面位置は、図19の断面位置に対応している。
【0071】
半導体装置A20の製造方法においては、導電層81および放熱層82の各々を絶縁層11に接合する工程と、導電層81の主面811に金属層83を積層する工程との間に、主面811から凹む複数の凹部812を形成する工程をさらに備える。
【0072】
図11に示す導電層81および放熱層82の各々を絶縁層11に接合する工程を経た後、図21に示すように、主面811から凹む複数の凹部812を導電層81に形成する。複数の凹部812は、赤外線や紫外線などを光源としたレーザ照射により形成される。
【0073】
次いで、図22に示すように、導電層81の主面811に金属層83を積層する。本工程では、図21に示す工程で形成された複数の凹部812が金属層83に覆われるようにする。
【0074】
半導体装置A20の製造にかかるその後の工程は、半導体装置A10の製造にかかる図14図16に示す工程と同様である。
【0075】
次に、半導体装置A20の作用効果について説明する。
【0076】
半導体装置A20は、絶縁層11と、絶縁層11に接合された導電層12と、導電層12の第1主面121に積層された第1金属層17と、第1金属層17に接合された第1半導体素子21と、第1金属層17および第1半導体素子21を覆う封止樹脂50とを備える。第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の表面粗さよりも大きい。したがって、本構成によれば、半導体装置A20においても、導電層12に対する封止樹脂50の剥離を抑制することが可能となる。さらに半導体装置A20においては、半導体装置A10と共通する構成を具備することにより、半導体装置A10と同等の作用効果を奏する。
【0077】
半導体装置A20においては、第1金属層17は、第1領域171および第2領域172を含む。導電層12には、第1主面121から凹む第1凹部122が形成されている。第1領域171は、第1凹部122を覆っている。本構成をとることにより、第1方向zにおける第1領域171の表面積がより拡大するため、第1領域171に対する封止樹脂50の投錨効果がさらに大きくなる。これにより、導電層12に対する封止樹脂50の剥離を効果的に抑制できる。
【0078】
第1方向zに視て、第1金属層17の第1領域171は、第1金属層17の第2領域172と、絶縁層11の周縁111との間に位置する。ここで、一般的に、導電層12から封止樹脂50が剥離する起点は、絶縁層11の周縁111の近傍である。第1領域171に対する封止樹脂50の投錨効果は、第2領域172に対する封止樹脂50の投錨効果よりも大きい。したがって、本構成をとることにより、導電層12に対する封止樹脂50の剥離をより効果的に抑制することが可能となる。
【0079】
半導体装置A20においては、第2金属層18は、第3領域181および第4領域182を含む。ゲート配線層14には、第2主面141から凹む第2凹部142が形成されている。第3領域181は、第2凹部142を覆っている。本構成をとることにより、第1方向zにおける第3領域181の表面積がより拡大するため、第3領域181に対する封止樹脂50の投錨効果がさらに大きくなる。これにより、ゲート配線層14に対する封止樹脂50の剥離を効果的に抑制できる。
【0080】
第1方向zに視て、第2金属層18の第3領域181は、第2金属層18の第4領域182と、絶縁層11の周縁111との間に位置する。ここで、一般的に、ゲート配線層14から封止樹脂50が剥離する起点は、絶縁層11の周縁111の近傍である。第3領域181に対する封止樹脂50の投錨効果は、第4領域182に対する封止樹脂50の投錨効果よりも大きい。したがって、本構成をとることにより、ゲート配線層14に対する封止樹脂50の剥離をより効果的に抑制することが可能となる。
【0081】
第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の各々は、第2金属層18の第4領域182に導電接合されている。本構成をとることにより、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の各々には、第4領域182に対する投錨効果が発現する。さらに、ゲート配線層14の第2凹部142の深さが過度である場合、これに起因した第2金属層18に対する第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の各々の接合面積の縮小が抑制される。したがって、第2金属層18に対する第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の接合強度をより確実に向上させることができる。
【0082】
〔第3実施形態〕
図23図25に基づき、本開示の第3実施形態にかかる半導体装置A30について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図23は、理解の便宜上、第1端子31、第2端子32、第2信号端子34および封止樹脂50を透過している。図23では、透過したこれらの要素を想像線で示している。
【0083】
半導体装置A30においては、導電層12、ゲート配線層14、第1金属層17、第2金属層18、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43の構成が、半導体装置A20の当該構成と異なる。
【0084】
図23に示すように、第1金属層17の第2領域172は、第1金属層17の第1領域171に囲まれている。図23および図24に示すように、導電層12の複数の第1凹部122は、主部123の一部に加えて、舌部124の全体にわたって形成されている。したがって、第1領域171は、舌部124の第1主面121、および舌部124に形成された複数の第1凹部122の全体を覆っている。
【0085】
図23および図25に示すように、ゲート配線層14の複数の第2凹部142は、ゲート配線層14の全体にわたって形成されている。したがって、半導体装置A30においては、第2金属層18は、第3領域181のみを含む。
【0086】
次に、半導体装置A30の作用効果について説明する。
【0087】
半導体装置A30は、絶縁層11と、絶縁層11に接合された導電層12と、導電層12の第1主面121に積層された第1金属層17と、第1金属層17に接合された第1半導体素子21と、第1金属層17および第1半導体素子21を覆う封止樹脂50とを備える。第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の表面粗さよりも大きい。したがって、本構成によれば、半導体装置A30においても、導電層12に対する封止樹脂50の剥離を抑制することが可能となる。さらに半導体装置A30においては、半導体装置A10と共通する構成を具備することにより、半導体装置A10と同等の作用効果を奏する。
【0088】
半導体装置A30においては、第1方向zに視て、第1金属層17の第2領域172は、第1金属層17の第1領域171に囲まれている。本構成をとることにより、第1方向zに視て、導電層12の第1主面121の縁の全体が、第1金属層17に重なる。これにより、導電層12に対する封止樹脂50の剥離をさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0089】
〔第4実施形態〕
図26図29に基づき、本開示の第4実施形態にかかる半導体装置A40について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図27の断面位置は、半導体装置A10を示す図5の断面位置に対応している。図28の断面位置は、半導体装置A10を示す図6の断面位置に対応している。
【0090】
半導体装置A40においては、第3金属層19をさらに具備することが、半導体装置A10の場合と異なる。
【0091】
第3金属層19は、図26図28に示すように、放熱層13に積層されている。第3金属層19は、第1方向zにおいて放熱層13を基準として絶縁層11とは反対側に位置する。第3金属層19は、封止樹脂50の底面52から外部に露出している。第3金属層19の第1方向zの寸法は、放熱層13の第1方向zの寸法よりも小さい。第1方向zに視て、第3金属層19は、放熱層13の全体に重なっている。第3金属層19は、たとえば銅を含む。図29に示すように、第3金属層19の表面粗さは、導電層12の第1主面121の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。
【0092】
次に、半導体装置A40の作用効果について説明する。
【0093】
半導体装置A40は、絶縁層11と、絶縁層11に接合された導電層12と、導電層12の第1主面121に積層された第1金属層17と、第1金属層17に接合された第1半導体素子21と、第1金属層17および第1半導体素子21を覆う封止樹脂50とを備える。第1金属層17の表面粗さは、第1主面121の少なくとも一部の表面粗さよりも大きい。したがって、本構成によれば、半導体装置A40においても、導電層12に対する封止樹脂50の剥離を抑制することが可能となる。さらに半導体装置A40においては、半導体装置A10と共通する構成を具備することにより、半導体装置A10と同等の作用効果を奏する。
【0094】
半導体装置A40は、放熱層13を基準として絶縁層11とは反対側に位置するとともに、放熱層13に積層された第3金属層19をさらに備える。第3金属層19の表面粗さは、導電層12の第1主面121の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい。本構成をとることにより、第3金属層19の表面積が比較的大きいため、半導体装置A40の放熱性をより向上させることができる。さらに、半導体装置A40をヒートシンクに接合させる際、当該ヒートシンクと第3金属層19との間に位置する接着層には、第3金属層19に対して投錨効果が発現する。これにより、ヒートシンクに対する半導体装置A40の接合強度の向上を図ることができる。
【0095】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0096】
本開示は、以下の付記に記載した実施形態を含む。
[付記1]
絶縁層と、
第1方向の一方側を向く第1主面を有するとともに、前記第1方向において前記第1主面が向く側とは反対側が前記絶縁層に接合された導電層と、
前記第1主面に積層された第1金属層と、
前記第1金属層に接合された半導体素子と、
前記第1金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記第1金属層の表面粗さは、前記第1主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、半導体装置。
[付記2]
前記絶縁層に接合されたゲート配線層をさらに備え、
前記半導体素子は、前記第1方向において前記第1金属層に対向する側とは反対側に位置するゲート電極を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート配線層に導通している、付記1に記載の半導体装置。
[付記3]
前記ゲート配線層に積層された第2金属層をさらに備え、
前記ゲート配線層は、前記第1方向において前記第1主面と同じ側を向く第2主面を有し、
前記第2金属層は、前記第2主面に積層されており、
前記封止樹脂は、前記第2金属層を覆っており、
前記第2金属層の表面粗さは、前記第2主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、付記2に記載の半導体装置。
[付記4]
前記ゲート電極と前記第2金属層とに導電接合された導通部材をさらに備える、付記3に記載の半導体装置。
[付記5]
前記第1金属層は、第1領域と、前記第1領域に隣接した第2領域と、を含み、
前記導電層には、前記第1主面から凹む第1凹部が形成されており、
前記第1領域は、前記第1凹部を覆っている、付記4に記載の半導体装置。
[付記6]
前記第1方向に視て、前記第1領域は、前記第2領域と前記絶縁層の周縁との間に位置する、付記5に記載の半導体装置。
[付記7]
前記第1方向に視て、前記半導体素子は、前記第2領域に重なっている、付記6に記載の半導体装置。
[付記8]
前記第1方向に視て、前記第2領域は、前記第1領域に囲まれている、付記7に記載の半導体装置。
[付記9]
前記第2金属層は、第3領域と、前記第1領域に隣接した第4領域と、を含み、
前記ゲート配線層には、前記第2主面から凹む第2凹部が形成されており、
前記第3領域は、前記第2凹部を覆っている、付記7に記載の半導体装置。
[付記10]
前記第1方向に視て、前記第3領域は、前記第4領域と前記絶縁層の周縁との間に位置する、付記9に記載の半導体装置。
[付記11]
前記導通部材は、前記第4領域に導電接合されている、付記10に記載の半導体装置。
[付記12]
前記半導体素子は、前記第1金属層に対向する第1電極と、前記第1方向において前記第1電極とは反対側に位置する第2電極と、を有し、
前記第1電極は、前記第1金属層に導電接合されている、付記3ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
[付記13]
前記第1金属層に導電接合された第1端子と、前記第2電極に導電接合された第2端子と、をさらに備え、
前記第1端子および前記第2端子の各々は、前記封止樹脂から露出している、付記12に記載の半導体装置。
[付記14]
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された放熱層をさらに備え、
前記放熱層は、前記封止樹脂から露出している、付記13に記載の半導体装置。
[付記15]
前記放熱層を基準として前記絶縁層とは反対側に位置するとともに、前記放熱層に積層された第3金属層をさらに備え、
前記第3金属層の表面粗さは、前記第1主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きい、付記14に記載の半導体装置。
[付記16]
第1方向の一方側を向く主面を有する導電層であって、前記導電層の前記第1方向において前記主面が向く側とは反対側を絶縁層に接合する工程と、
前記主面に金属層を積層する工程と、
前記導電層および前記金属層の各々の一部を除去する工程と、
前記金属層に半導体素子を接合する工程と、
前記金属層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程と、を備え、
前記金属層は、スパッタリング法により形成され、
前記主面に前記金属層を積層する工程では、前記金属層の表面粗さが、前記主面の少なくとも一部の領域の表面粗さよりも大きくなるようにする、半導体装置の製造方法。
[付記17]
前記導電層を前記絶縁層に接合する工程と、前記主面に前記金属層を積層する工程と、の間に前記主面から凹む凹部を前記導電層に形成する工程をさらに備え、
前記凹部は、レーザ照射により形成され、
前記主面に前記金属層を積層する工程では、前記凹部が前記金属層に覆われるようにする、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
[付記18]
駆動源と、
付記13に記載の半導体装置と、を備え、
前記半導体装置は、前記駆動源に導通している、車両。
【符号の説明】
【0097】
A10,A20,A30,A40:半導体装置
11:絶縁層
111:周縁
12:導電層
121:第1主面
122:第1凹部
123:主部
124:舌部
13:放熱層
14:ゲート配線層
141:第2主面
142:第2凹部
17:第1金属層
171:第1領域
172:第2領域
18:第2金属層
181:第3領域
182:第4領域
19:第3金属層
21:第1半導体素子
211:第1電極
212:第2電極
213:第1ゲート電極
22:第2半導体素子
221:第3電極
222:第4電極
223:第2ゲート電極
29:導電接合層
31:第1端子
311:第1基部
312:第1接合部
32:第2端子
321:第2基部
322:第2接合部
323:第3接合部
33:第1信号端子
34:第2信号端子
41:第1導通部材
42:第2導通部材
43:第3導通部材
50:封止樹脂
51:頂面
52:底面
53:第1側面
54:第2側面
81:導電層
811:主面
812:凹部
82:放熱層
83:金属層
91:車載充電器
92:蓄電池
93:駆動系統
931:インバータ
932:駆動源
z:第1方向
x:第2方向
y:第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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